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特許7545581補強された支持構造体を有する非空気圧式タイヤ及びその作製方法
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  • 特許-補強された支持構造体を有する非空気圧式タイヤ及びその作製方法 図1
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  • 特許-補強された支持構造体を有する非空気圧式タイヤ及びその作製方法 図6
  • 特許-補強された支持構造体を有する非空気圧式タイヤ及びその作製方法 図7A
  • 特許-補強された支持構造体を有する非空気圧式タイヤ及びその作製方法 図7B
  • 特許-補強された支持構造体を有する非空気圧式タイヤ及びその作製方法 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】補強された支持構造体を有する非空気圧式タイヤ及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 7/14 20060101AFI20240828BHJP
   D07B 1/06 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
B60C7/14
D07B1/06 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023521096
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 US2021071398
(87)【国際公開番号】W WO2022082135
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】63/090,859
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515168916
【氏名又は名称】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレーションズ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トゥプタ、アンドリュー アール.
(72)【発明者】
【氏名】リマイ、ベンジャミン イー.
(72)【発明者】
【氏名】バートン、クリストファー ダブリュー.
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-030348(JP,A)
【文献】特開2009-035050(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0366767(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 7/00-7/14
D07B 1/06
B60B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非空気圧式タイヤであって、
第1の直径を有するインナーリングと、
前記第1の直径よりも大きい第2の直径を有し、前記インナーリングと実質的に同軸であるアウターリングと、
前記インナーリングと前記アウターリングとの間に延在する支持構造体と、を備え、前記支持構造体が、その内部に配置された補強材層を含み、前記補強材層が、複数のフィラメント又はフィラメントのストランドを含む1つ又は複数のコードを含み、前記コードが、以下の関係:
x*y<18,000を満たし、
式中、xがメガパスカルで測定されたコードの剛性であり、
yが、mmで測定された前記コード中の最大フィラメントの直径であり、
前記コードが、スチールコードである、非空気圧式タイヤ
【請求項2】
記コードが、ラング撚り構造を有する、請求項1に記載の非空気圧式タイヤ
【請求項3】
記支持構造体が、エラストマー材料を含む、請求項1に記載の非空気圧式タイヤ
【請求項4】
記支持構造体が、前記非空気圧式タイヤの第1の側から前記非空気圧式タイヤの第2の側まで横方向に延在する複数のループを含み、
前記複数のループのそれぞれが、前記非空気圧式タイヤの前記第1の側から視認可能である開口部を画定し、
前記複数のループのそれぞれが、前記インナーリング及び前記アウターリングの両方と直接接触しており、
前記複数のループが、少なくとも第1のループ及び第2のループを含み、前記第1のループが、前記第2のループと直接接触している、請求項1に記載の非空気圧式タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、補強材層を含む支持構造体を有する非空気圧式タイヤ及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤが非膨張状態又は膨張不足状態で走行することを可能にする種々のタイヤの構造が開発されている。非空気圧式タイヤは膨張を必要としないが、「ランフラットタイヤ」は、パンクして加圧空気が完全に又は部分的に失われた後に、長期間、比較的高速で動作し続けることができる。非空気圧式タイヤは、複数のスポーク、ウェビング、又はインナーリングをアウターリングに接続するその他の支持構造体を含んでもよい。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態では、非空気圧式タイヤは、第1の直径を有するインナーリングと、第1の直径よりも大きい第2の直径を有するアウターリングと、を含む。アウターリングは、インナーリングと実質的に同軸である。タイヤは、インナーリングとアウターリングとの間に延在している支持構造体を更に含む。支持構造体は、少なくとも1つの補強材層を含む。補強材層は、複数のフィラメント又はフィラメントのストランドを含む1つ以上のコードを含み、コードは、以下の関係:
x*y<18,000を満たし、
式中、xはメガパスカルで測定されたコードの剛性であり、
yは、mmで測定されたコード中の最大フィラメントの直径である。
【0004】
別の実施形態では、非空気圧式タイヤは、第1の直径を有するインナーリングと、第1の直径よりも大きい第2の直径を有するアウターリングと、を含む。アウターリングは、インナーリングと実質的に同軸である。タイヤは、インナーリングとアウターリングとの間に延在している支持構造体を更に含む。支持構造体は、非空気圧式タイヤの第1の側から非空気圧式タイヤの第2の側まで横方向に延在している複数のループを含む。複数のループのそれぞれは、非空気圧式タイヤの第1の側から視認可能である開口部を画定する。複数のループのそれぞれは、インナーリング及びアウターリングと直接接触している。複数のループは、少なくとも第1のループ及び第2のループを含み、第1のループは、第2のループと直接接触している。複数のループの少なくとも1つは、少なくとも1つの補強材層を含む。補強材層は、複数のフィラメント又はフィラメントのストランドを含む1つ以上のコードを含み、コードは、以下の関係:
x*y<18,000を満たし、
式中、xはメガパスカルで測定されたコードの剛性であり、
yは、mmで測定されたコード中の最大フィラメントの直径である。
【0005】
更に別の実施形態では、非空気圧式タイヤは、第1の直径を有するインナーリングと、第1の直径よりも大きい第2の直径を有するアウターリングと、を含む。アウターリングは、インナーリングと実質的に同軸である。タイヤは、インナーリングとアウターリングとの間に延在している支持構造体を更に含む。支持構造体は、第1のスポーク端部及び第2のスポーク端部を有する複数のスポークを含む。複数のスポークのそれぞれは、第1のスポーク端部と第2のスポーク端部との間で完全な直線からずれた経路をたどる。複数のスポークのそれぞれは、少なくとも1つの補強材層を含む。補強材層は、複数のフィラメント又はフィラメントのストランドを含む1つ以上のコードを含み、コードは、以下の関係:
x*y<18,000を満たし、
式中、xはメガパスカルで測定されたコードの剛性であり、
yは、mmで測定されたコード中の最大フィラメントの直径である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
添付の図面では、以下に提供される詳細な説明とともに、特許請求される本発明の代表的実施形態を説明する構造が例解される。同様の要素は、同一の参照番号で特定される。単一の構成要素として示される要素を、多数の構成要素に置き換えてもよく、多数の構成要素として示される要素を、単一の構成要素に置き換えてもよいことが理解されるべきである。図面は正確な縮尺ではなく、特定の要素の比率が例解のために誇張されている場合がある。
【0007】
図1】非空気圧式タイヤの一実施形態の正面図である。
図2図1の非空気圧式タイヤの部分拡大正面図である。
図3】構築中の非空気圧式タイヤの部分正面図を例解する概略図である。
図4】非空気圧式タイヤの代替的実施形態の正面図である。
図5】非空気圧式タイヤの別の代替的実施形態の斜視図である。
図6図5の非空気圧式タイヤの近接正面図である。
図7a】右ラング撚りコード構造の部分正面図である。
図7b】左ラング撚りコード構造の部分正面図である。
図8】コード構造の一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、非空気圧式タイヤ100の一実施形態の正面図である。非空気圧式タイヤ100は、第1の直径を有するインナーリング110と、第1の直径よりも大きい第2の直径を有するアウターリング120と、を含む。アウターリング120は、インナーリング110と実質的に同軸である。例解される実施形態では、インナーリング110は、ハブHに取り付けられているものとして示されている。複数のスポーク130は、インナーリング110とアウターリング120との間に延在する。代替的実施形態では、スポークの代わりにウェビング又はその他の支持構造体が採用されてもよい。「支持構造体(support structure)」という用語は、ウェビング又はスポークのいずれかを意味する場合があることを理解されたい。
【0009】
例解される実施形態では、アウターリング120の周りに周方向トレッド140が配置されている。トレッド140は、溝、リブ、ブロック、ラグ、サイプ、スタッド、及びその他の要素などのトレッド要素を含んでもよい。剪断バンド若しくはその他の剪断要素又は補強構造体(図示せず)が、アウターリング120とトレッド140との間に配置されてもよい。代替的実施形態(図示せず)では、別々のトレッドが省略されてもよく、代わりに、トレッド要素がアウターリング上に直接形成されてもよい。
【0010】
図2は、図1の非空気圧式タイヤの部分拡大正面図である。この図を見て分かるように、スポーク130は、タイヤの周りに周方向で連続して配置された複数のループによって形成される。個々のループのそれぞれは、非空気圧式タイヤ100の第1の側から非空気圧式タイヤ100の第2の側まで横方向に延在する。複数のループのそれぞれは、タイヤの第1の側から視認可能である開口部を画定する。
【0011】
例解される実施形態では、複数のループのそれぞれは、インナーリング110及びアウターリング120の両方と直接接触している。複数のフィレット150もまた、インナーリング110とアウターリング120との間に配置されている。複数のフィレット150は、内側フィレット150iと、外側フィレット150oと、を含む。内側フィレット150iは、インナーリング110、並びに第1のループ及び第2のループの両方のそれぞれの隣接する一対のループと直接接触している。外側フィレット150oは、アウターリング120、並びに第1のループ及び第2のループの両方のそれぞれの隣接する一対のループと直接接触している。
【0012】
インナーリング110及びアウターリング120は、天然ゴム若しくは合成ゴムなどのポリマー材料、又はその他のエラストマー材料で構築されてもよい。代替的に、インナーリング110及びアウターリング120は、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、及びポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)などの、より硬いポリマー材料で構築されてもよい。スポーク130は、その内部に配置された単一の補強材層を有するエラストマー材料で構築され得るループで形成される。ループは、エラストマー材料のシートから、又はその内部に配置された単一の補強材層を有するエラストマー材料の螺旋状のリボンから構築されてもよい。ループがシートによって形成される場合、シートの端部は、一緒に突き合わせ接合されてもよい。接合部は、非空気圧式タイヤのインナーリング又はアウターリングに位置付けられてもよい。ループが螺旋状のリボンによって形成される場合は、突き合わせ接合が省略されてもよい。
【0013】
どちらの場合でも、補強材は、スチールコードであってもよい。その他の実施形態では、補強材は、ナイロン、ポリエステル、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド、ガラス、ポリエチレン(ポリエチレンテレフタレート)、又はその他の補強材で構築されたコードによって形成されてもよい。代替的実施形態では、ループは、2層以上の補強材を有するエラストマー材料で構築されてもよい。
【0014】
一実施形態では、補強材層は、複数のフィラメント又はフィラメントのストランドを含む1つ以上のコードを含み、コードは、以下の関係:
x*y<18,000を満たし、
式中、xはメガパスカルで測定されたコードの剛性であり、
yは、mmで測定されたコード中の最大フィラメントの直径である。
【0015】
本開示及び本明細書の任意の実施形態で論じられるコードの剛性を決定するために、コードは、660mmのゲージ長を使用して、ASTM D-2969に従って引張強度試験にかけられる。応力は、コード上の荷重(N)をコードの断面積(mm)で割ることによって計算される。コードの断面積は、コード中の個々のフィラメントの実際の断面積の合計であり、コード全体の周りの円に外接することによって得られる面積ではない。所与の歪み(mm/mm)に対する応力値(MPa)をコード破断点までプロットし、曲線全体を線形傾向線に適合させる。傾向線の傾きは、コードの剛性を表す。
【0016】
補強材層の耐疲労性能を改善することが判明しているが、比較的低い剛性を有するコードを、比較的小さい直径を有するコードと組み合わせて使用することが望ましい。一実施形態では、コードは、90,000MPa未満の剛性を有してもよい。別の実施形態では、コードは、70,000MPa未満の剛性を有してもよく、更に別の実施形態では、剛性は、50,000MPa未満であってもよい。一実施形態では、コード内の最大フィラメントの直径は0.2mm以下であってもよい。別の実施形態では、コード内の最大フィラメントの直径は、0.19mm未満の直径を有してもよく、更に別の実施形態では、0.18mm未満の直径を有してもよい。
【0017】
一実施形態では、コードはラング撚り構造(Lang Lay construction)を有する。ラング撚り構造は、ストランドを構成するフィラメントが螺旋パターンで配置され、コードを構成するためにストランドが配置され撚られるのと同じ方向に撚られる構造である。ラング撚り構造は、非空気圧式タイヤの支持構造体に有益である、改善された耐疲労性を提供する。
【0018】
ループが1つ又は複数の補強材層を有する場合、少なくとも1つの層は、以下の関係:
x*y<18,000を満たし、
式中、xはメガパスカルで測定されたコードの剛性であり、
yは、mmで測定されたコード中の最大フィラメントの直径である、コードを有する。
【0019】
複数層の補強材を有するその他の実施形態では、1つ又は複数の層、あるいは全ての層が、以下の関係:
x*y<18,000を満たし、
式中、xはメガパスカルで測定されたコードの剛性であり、
yは、mmで測定されたコード中の最大フィラメントの直径である、コードを有してもよい。
【0020】
同様に、ループが1つ又は複数の補強材層を有する場合、一実施形態では、1つの層がラング撚り構造を有するコードを有してもよい。代替的実施形態では、1つ又は複数の層は、ラング撚り構造を有するコードを有してもよい。その他の代替的実施形態では、補強材の全ての層は、ラング撚り構造を有するコードを有してもよい。
【0021】
トレッド140及びフィレット150は両方とも、天然ゴム又は合成ゴムなどのエラストマー材料、その他のエラストマー材料で構築されてもよい。
【0022】
図1及び図2に示される非空気圧式タイヤのループの追加的な詳細は、その構築中の非空気圧式タイヤ200の部分正面図を例解する概略図である図3に示されてもよい。非空気圧式タイヤ200は、第1の直径を有するインナーリング210と、第1の直径よりも大きい第2の直径を有するアウターリング220と、を含む。アウターリング220は、インナーリング210と実質的に同軸である。この図に示されるように、スポーク230は、第1のループ240a及び第2のループ240bによって形成されている。第1のループは、補強コードの第1の層250aを含み、第1のループは、第1の実質的に径方向範囲260a及び第2の実質的に径方向範囲260bを形成する。第2のループは、補強コードの第2の層250bを含み、第2のループは、第3の実質的に径方向範囲260c及び第4の実質的に径方向範囲260dを形成する。
【0023】
加えて、第1のフィレット270aは、第1のループ240aと、第2のループ240bと、インナーリング210と、の間に配置されている。同様に、第2のフィレット270bは、第1のループ240aと、第2のループ240bと、アウターリング220と、の間に配置されている。
【0024】
図3に示される段階では、第1のループ240aは、第2のループ240bから離間されている。この間隔は、例解の目的で強調されてもよい。非空気圧式タイヤを形成するプロセスの間、硬化工程中に熱及び圧力が印加される。具体的には、第1のループ240aの第2の範囲260b及び第2のループ240bの第3の範囲260cに圧力が印加されて、第2の範囲260bを第3の範囲260cに接触させる。熱及び圧力が印加される際に、第2の範囲260bが第3の範囲260cと接合され、それによって、第1のループ240a及び第2のループ240bが、補強コード250a、bの第1の層及び第2の層によって形成された2層の補強コードの2つの層を有する単一のスポーク230を形成する。結果として生じるスポーク230は、図1及び図2のスポーク130と同じ様式で、実質的に径方向に延在する。
【0025】
一実施形態では、第2の範囲260bの少なくとも半分が、第3の範囲260cの少なくとも半分と接触している。代替的実施形態では、第2の範囲260bのうちの少なくとも2/3が、第3の範囲260cの少なくとも2/3と接触している。
【0026】
例解される実施形態では、補強コードの第1の層250a及び第2の層250bのそれぞれは、結果として生じるスポーク130の実質的に径方向に延在する。代替的実施形態では、補強コードの層の一方又は両方が、径方向に対して偏向している。このような一実施形態では、補強コードの層の一方又は両方が、50°~90°の角度で偏向している。このような実施形態では、突き合わせ接合もまた角度付けされ得る。
【0027】
代替的実施形態では、インナーリングとアウターリングとの間の範囲が、直線状ではなく、湾曲している。湾曲した範囲は、タイヤが回転する際のスポークの座屈の方向及び規模を制御するために使用されてもよい。このような湾曲した範囲は、依然として、実質的に径方向であるとみなされてもよい。このような一実施形態では、補強コードは、範囲と同じ湾曲部を有してもよい。代替的実施形態では、補強コードは、範囲とは異なる湾曲部を有してもよい。別の代替的実施形態では、補強コードは直線状に延在してもよいが、一方で、範囲は湾曲している。
【0028】
その他の代替的実施形態では、範囲は実質的に直線状であるが、一方で、補強コードの層のうちの1つ以上は径方向に対して湾曲している。補強コードの湾曲した層は、タイヤが回転する際のスポークの座屈の方向及び規模を制御するために使用されてもよい。このような実施形態では、補強コードの層のうちの1つ以上が湾曲している場合であっても、結果として生じるスポークは、依然として、非圧縮状態にある場合に直線状に延在してもよい。このような構成では、スポークは、補強材予備曲率を有するとして説明されてもよい。
【0029】
非空気圧式タイヤ100、200などの非空気圧式タイヤを構築するために、操作者は、エラストマー材料のインナーリングを提供する工程と、エラストマー材料のアウターリングを提供する工程と、インナーリングがアウターリングと実質的に同軸であるようにインナーリング及びアウターリングを配置する工程と、を実施してもよい。一実施形態では、操作者は、強化エラストマー材料のシートを提供して、強化エラストマー材料のシートを用いた複数のループを形成する。エラストマー材料は、以下の関係:
x*y<18,000を満たし、
式中、xはメガパスカルで測定されたコードの剛性であり、
yは、mmで測定されたコード中の最大フィラメントの直径である、コードで補強される。
【0030】
コードは、ラング撚り構造を有してもよい。各ループは、シートの端部を一緒に突き合わせ接合させることによって形成されてもよい。操作者は、次に、強化エラストマー材料のループをインナーリングとアウターリングとの間に置く。ループは、突き合わせ接合がインナーリング又はアウターリングのいずれかに接するように配列されてもよい。
【0031】
別の実施形態では、操作者は、強化エラストマー材料のリボンを提供する。特定の一実施形態では、操作者は、ちょうど2本のスチールコードと共にグリーンゴムのリボンを押出加工することによってリボンを形成し、これによって、その内部に2本のスチールコードが埋設されているグリーンゴムのリボンを形成する。
【0032】
更に別の実施形態では、操作者は、1本のスチールコードと共にグリーンゴムのリボンを押出加工することによって、リボンを形成する。更に別の実施形態では、操作者は、3本以上のスチールコードと共にグリーンゴムのリボンを押出加工することによって、リボンを形成する。
【0033】
代替的実施形態では、リボンは、押出加工作業ではなく、カレンダー加工作業によって作製されてもよい。例えば、一実施形態では、リボンは、ゴムをコードの上にカレンダー加工し、カレンダー加工したシートを、1本、2本、又はより多くのコードを含む薄いリボンへとスリット加工することによって作製される。
【0034】
図4は、非空気圧式タイヤ300の代替的実施形態を示す。非空気圧式タイヤ300は、第1の直径を有するインナーリング310と、第1の直径よりも大きい第2の直径を有するアウターリング320と、を含む。アウターリング320は、インナーリング310と実質的に同軸である。例解される実施形態では、インナーリング310は、ハブ330に取り付けられるように示されている。
【0035】
周方向トレッド340は、アウターリング320の周りに配置されている。トレッド340は、溝、リブ、ブロック、ラグ、サイプ、スタッド、及びその他の要素などのトレッド要素を含んでもよい。剪断バンド若しくはその他の剪断要素又は補強構造体(図示せず)は、アウターリング320とトレッド340との間に配置されてもよい。代替的実施形態では、別々のトレッドが省略されてもよく、代わりに、トレッド要素が上部リングに直接形成されてもよい。
【0036】
例解される実施形態では、複数の個々のスポーク350は、インナーリング310とアウターリング320との間に延在している。この実施形態では、複数のスポーク350のうちのそれぞれ1つの設計は、実質的に同一である。しかしながら、代替的実施形態では、複数のスポークは、異なる設計を有するスポークを含んでもよい。
【0037】
スポーク350はそれぞれ、第1のスポーク端部370と第2のスポーク端部380と、を有し、第1のスポーク端部370と第2のスポーク端部380との間で完全な直線からずれた経路をたどる。
【0038】
インナーリング310及びアウターリング320は、天然ゴム若しくは合成ゴムなどのポリマー材料、又はその他のエラストマー材料で構築されてもよい。代替的に、インナーリング310及びアウターリング320は、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、及びポリ塩化ビニル(PVC)などの、より硬いポリマー材料で構築されてもよい。スポーク350は、その内部に配置された単一の補強材層360を有するエラストマー材料で構築されてもよい。より具体的には、スポーク350は、その内部に配置された単一の補強材層360を有するエラストマー材料のシートから構築されてもよい。
【0039】
補強材は、スチールコードであってもよい。その他の実施形態では、補強材は、ナイロン、ポリエステル、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド、ガラス、ポリエチレン(ポリエチレンテレフタレート)、又はその他の補強材で構築されたコードによって形成されてもよい。代替的実施形態(図示せず)では、スポークは、2層以上の補強材を有するエラストマー材料で構築されてもよい。
【0040】
補強材層は、以下の関係:
x*y<18,000を満たし、
式中、xはメガパスカルで測定されたコードの剛性であり、
yは、mmで測定されたコード中の最大フィラメントの直径である、コードを含む。
【0041】
一実施形態では、コードは、90,000MPa未満の剛性を有してもよい。別の実施形態では、コードは、70,000MPa未満の剛性を有してもよく、更に別の実施形態では、剛性は、50,000MPa未満であってもよい。一実施形態では、コード内の最大フィラメントの直径は0.2mm以下であってもよい。別の実施形態では、コード内の最大フィラメントの直径は、0.19mm未満の直径を有してもよく、更に別の実施形態では、0.18mm未満の直径を有してもよい。一実施形態では、コードはラング撚り構造を有する。
【0042】
スポークが1つ又は複数の補強材層を有する場合、少なくとも1つの層は、以下の関係:
x*y<18,000を満たし、
式中、xはメガパスカルで測定されたコードの剛性であり、
yは、mmで測定されたコード中の最大フィラメントの直径である、コードを有する。
【0043】
複数層の補強材を有するその他の実施形態では、1つ又は複数の層、あるいは全ての層が、以下の関係:
x*y<18,000を満たし、
式中、xはメガパスカルで測定されたコードの剛性であり、
yは、mmで測定されたコード中の最大フィラメントの直径である、コードを有してもよい。
【0044】
同様に、スポークが1つ又は複数の補強材層を有する場合、一実施形態では、1つの層がラング撚り構造を有するコードを有してもよい。代替的実施形態では、1つ又は複数の層は、ラング撚り構造を有するコードを有してもよい。その他の代替的実施形態では、補強材の全ての層は、ラング撚り構造を有するコードを有してもよい。
【0045】
トレッド340は、天然ゴム又は合成ゴムなどのエラストマー材料、その他のエラストマー材料で構築されてもよい。
【0046】
図5は、非空気圧式タイヤ400の別の代替的実施形態を示し、図6は、図5に示される非空気圧式タイヤ400の近接正面図を示す。非空気圧式タイヤ400は、アウターリング410を含む。アウターリング410は、ゴムプライ420から構築されてもよい。あるいは、アウターリング410は、ゴム以外の材料で構築されてもよい。代替的実施形態では、アウターリングは、発泡ポリマー、ポリウレタン、熱可塑性プラスチック、樹脂、又はその他のエラストマー材料若しくはポリマー材料から構築されたプライによって形成される。別の代替的実施形態では、プライは、ポリマー材料の代わりに金属で構築されている。別の代替的実施形態では、アウターリング410は中実フープである。
【0047】
タイヤ400は、外側フープ410から内向きに延在する複数のループ430を更に含む。例解される実施形態では、蛇行スポークプライの長手方向軸線が、タイヤ400の赤道面に実質的に平行となるように、ループ430は、タイヤ400の中心軸を中心として連続的に配置された蛇行スポークプライによって形成される。蛇行スポーク経路が、内径の周りに、実質的に周方向に延在する複数の内側部分430を有するように、蛇行スポークプライは、内径と外径との間の迂曲経路をたどる。蛇行スポーク経路は、外径の周りに、実質的に周方向に延在する複数の外側部分430を更に有する。複数のスポーク部分430は、内径と外径との間に実質的に径方向に延在する。
【0048】
例解される実施形態では、内側部分430の全ては、実質的に同じ弧長を有する。同様に、各外側部分430もまた実質的に同じ弧長を有し、外側部分430の弧長は内側部分430の弧長よりも長い。一実施形態では、内側部分430の総弧長は、120°~240°である。外側部分430の総弧長はまた、120°~240°である。一実施形態では、内側部分430の総弧長と外側部分430の総弧長との合計は、360°である。代替的実施形態では、内側部分の総弧長と外側部分の総弧長との合計は、360°未満である。別の代替的実施形態では、内側部分の総弧長と外側部分の総弧長との合計は、360°超である。
【0049】
代替的実施形態では、異なる内側部分は、異なる弧長を有してもよい。同様に、異なる外側部分はまた、異なる弧長を有してもよい。
【0050】
例解される実施形態では、ループ430は、タイヤ400の幅に等しい幅を有するプライで構築されている。代替的実施形態では、ループは、タイヤよりも狭いプライで構築されている。このような実施形態では、プライは、タイヤの赤道面に対して偏向されてもよい。このような一実施形態では、蛇行スポークプライのスポーク部分のそれぞれは、径方向に対して45°未満の角度で延在する。同様に、蛇行スポークプライの内側部分のそれぞれは、赤道面に対して45°未満の角度で延在し、蛇行スポークプライの外側部分のそれぞれは、赤道面に対して45°未満の角度で延在する。
【0051】
ループ430は、その内側に配置された単一の補強材層450を有するエラストマー材料で構築されてもよい。補強材は、スチールコードであってもよい。その他の実施形態では、補強材は、ナイロン、ポリエステル、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド、ガラス、ポリエチレン(ポリエチレンテレフタレート)、又はその他の補強材で構築されたコードによって形成されてもよい。代替的実施形態では、ループは、2層以上の補強材を有するエラストマー材料で構築されてもよい。
【0052】
補強材450の層は、以下の関係:
x*y<18,000を満たし、
式中、xはメガパスカルで測定されたコードの剛性であり、
yは、mmで測定されたコード中の最大フィラメントの直径である、コードを含む。
【0053】
一実施形態では、コードは、90,000MPa未満の剛性を有してもよい。別の実施形態では、コードは、70,000MPa未満の剛性を有してもよく、更に別の実施形態では、剛性は、50,000MPa未満であってもよい。一実施形態では、コード内の最大フィラメントの直径は0.2mm以下であってもよい。別の実施形態では、コード内の最大フィラメントの直径は、0.19mm未満の直径を有してもよく、更に別の実施形態では、0.18mm未満の直径を有してもよい。一実施形態では、コードはラング撚り構造を有する。
【0054】
ループが1つ又は複数の補強材層を有する場合、少なくとも1つの層は、以下の関係:
x*y<18,000を満たし、
式中、xはメガパスカルで測定されたコードの剛性であり、
yは、mmで測定されたコード中の最大フィラメントの直径である、コードを有する。
【0055】
複数層の補強材を有するその他の実施形態では、1つ又は複数の層、あるいは全ての層が、以下の関係:
x*y<18,000を満たし、
式中、xはメガパスカルで測定されたコードの剛性であり、
yは、mmで測定されたコード中の最大フィラメントの直径である、コードを有してもよい。
【0056】
同様に、ループが1つ又は複数の補強材層を有する場合、一実施形態では、1つの層がラング撚り構造を有するコードを有してもよい。代替的実施形態では、1つ又は複数の層は、ラング撚り構造を有するコードを有してもよい。その他の代替的実施形態では、補強材の全ての層は、ラング撚り構造を有するコードを有してもよい。
【0057】
図7aは、右ラング撚り構造を有するコードの部分正面図であり、図7bは、左ラング撚り構造を有するコードの部分図である。ストランド510の撚りは、フィラメント520の撚りと同じ方向であることが理解され得る。
【0058】
図8は、本明細書で説明する実施形態のいずれかの補強材層に使用され得る代表的なコード構造の断面図である。図示の実施例では、コード600は3×3のコードであり、これは、3つのフィラメント610が巻かれてストランド620を形成し、3つのストランド620が巻かれてコード600を形成することを意味する。コード600はエラストマー材料630で被覆されている。特定の一実施形態では、コードは、3×3×0.17のラング撚り構造を有するスチールコードであり、これは、3本のフィラメントが巻かれてストランドを形成し、3本のストランドが巻かれてコードを形成し、フィラメントのそれぞれが0.17mmの直径を有することを意味する。
【0059】
本明細書又は特許請求の範囲で使用される範囲において、「含む(comprising)」という用語が特許請求項で移行句として用いられる際の解釈と同様に、「含む(includes)」又は「含むこと(including)」という用語が包括的であることが意図される。更に、「又は(or)」という用語が用いられる範囲において(例えば、A又はB)、「A若しくはB、又両方」を意味することが意図されている。本出願人らが「両方ではなくA又はBのみ」を示すことを意図する場合、「両方ではなくA又はBのみ(only A or B but not both)」という用語が用いられる。したがって、本明細書における「又は」という用語の使用は、排他的ではなく、包括的である。Bryan Garner,A Dictionary of Modern Legal Usage 624(2d.Ed.1995)を参照されたい。また、「中(in)」又は「中へ(into)」という用語が、本明細書又は特許請求の範囲において使用される範囲において、「上(on)」又は「上へ(onto)」を追加的に意味することが意図される。更に、「接続する(connect)」という用語が本明細書又は特許請求の範囲において使用される範囲において、「~と直接接続する(directly connected to)」ことだけではなく、別の構成要素を介して接続することなどのように「~と間接的に接続する(indirectly connected to)」ことも同様に意味することが意図される。
【0060】
本出願をその実施形態の記述によって例解し、またその実施形態をかなり詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲の範囲をこのような詳細に制限するか、又はいかなる形式でも限定することは、出願人らの本意するものではない。追加の利点及び改良が、当業者には容易に明らかとなるであろう。したがって、そのより広い態様における本出願は、図示及び説明される、特定の詳細、代表的な装置及び方法、並びに例示的実施例に限定されるものではない。このため、出願人の一般的な発明概念の趣旨又は範囲から逸脱することなく、そのような詳細からの逸脱がなされてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8