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特許7545587導電性ペースト組成物、導電性シートの製造方法、導電性シート及び電子部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】導電性ペースト組成物、導電性シートの製造方法、導電性シート及び電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/20 20060101AFI20240828BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20240828BHJP
   B22F 1/054 20220101ALI20240828BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240828BHJP
   B22F 1/103 20220101ALI20240828BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240828BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20240828BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20240828BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
H01B1/20 A
H01B1/22 A
B22F1/054
B22F1/00 L
B22F1/103
C08K3/08
C08K5/09
C08L33/06
H01B5/14 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023533987
(86)(22)【出願日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2023018142
(87)【国際公開番号】W WO2023224010
(87)【国際公開日】2023-11-23
【審査請求日】2024-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2022082234
(32)【優先日】2022-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022110558
(32)【優先日】2022-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】山内 健司
(72)【発明者】
【氏名】大塚 丈
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-202041(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235907(WO,A1)
【文献】特開2006-219660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/20
H01B 1/22
H01B 5/14
B22F 1/054
B22F 1/00
B22F 1/103
C08K 3/08
C08K 5/09
C08L 33/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル樹脂(A)、無機粒子(B)、溶剤(C)及び焼結助剤(D)を含有し、
前記(メタ)アクリル樹脂(A)は、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントを50重量%以上含有し、
前記無機粒子(B)は、平均粒子径が10nm以上1,000nm以下の導電性金属粒子を含み、
前記溶剤(C)は、沸点が120℃以上250℃以下であり、
前記焼結助剤(D)は、1分子中の酸素元素含有量が30重量%以上である、導電性ペースト組成物。
【請求項2】
無機粒子(B)は銅を含有する導電性金属粒子を含み、焼結助剤(D)はアジピン酸及びその誘導体、グルタル酸及びその誘導体、ピメリン酸及びその誘導体、スベリン酸及びその誘導体、クエン酸及びその誘導体、コハク酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、マロン酸及びその誘導体、トリカルバリル酸及びその誘導体、トリメリット酸及びその誘導体、イタコン酸及びその誘導体、シトラコン酸及びその誘導体、ジグリコール酸及びその誘導体、2-メトキシ酢酸及びその誘導体、ブタンテトラカルボン酸及びその誘導体、グリセリン誘導体、並びに、ペンタエリスリトール誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項3】
焼結助剤(D)が多価カルボン酸無水物である、請求項2に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項4】
(メタ)アクリル樹脂(A)は、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントとして、メタクリル酸イソブチルに由来するセグメント及びメタクリル酸2-エチルヘキシルに由来するセグメントからなる群から選ばれる少なくとも1種を有する、請求項1~3の何れかに記載の導電性ペースト組成物。
【請求項5】
(メタ)アクリル樹脂(A)は、更に、メタクリル酸n-ブチルに由来するセグメントを有する、請求項4に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項6】
(メタ)アクリル樹脂(A)におけるメタクリル酸イソブチルに由来するセグメント、メタクリル酸n-ブチルに由来するセグメント及びメタクリル酸2-エチルヘキシルに由来するセグメントの合計含有量が80重量%以上である、請求項3に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項7】
焼結助剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)100重量部に対して10重量部以上30重量部以下である、請求項1~の何れかに記載の導電性ペースト組成物。
【請求項8】
(メタ)アクリル樹脂(A)は、更に、酸素元素含有量が10重量%以上であり、直鎖状のアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールに由来するセグメントを有する、請求項1~の何れかに記載の導電性ペースト組成物。
【請求項9】
厚さ0.3mmに印刷し、送風オーブン内で120℃1時間の条件で乾燥した後、窒素雰囲気下で昇温速度10℃/分で280℃まで昇温、280℃で1時間保持した際の無機粒子(B)を除いた分解率が95重量%以上である、請求項1~の何れかに記載の導電性ペースト組成物。
【請求項10】
請求項1~の何れかに記載の導電性ペースト組成物を離形基材上に塗工する工程と、塗工された離形基材を乾燥する工程とを有する、導電性シートの製造方法。
【請求項11】
(メタ)アクリル樹脂(A)、無機粒子(B)及び焼結助剤(D)を含有し、
前記(メタ)アクリル樹脂(A)は、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントを50重量%以上含有し、
前記無機粒子(B)は、平均粒子径が10nm以上1,000nm以下の導電性金属粒子を含み、
前記焼結助剤(D)は1分子中の酸素元素含有量が30重量%以上である、導電性シート。
【請求項12】
焼結助剤(D)はアジピン酸及びその誘導体、グルタル酸及びその誘導体、ピメリン酸及びその誘導体、スベリン酸及びその誘導体、クエン酸及びその誘導体、コハク酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、マロン酸及びその誘導体、トリカルバリル酸及びその誘導体、トリメリット酸及びその誘導体、イタコン酸及びその誘導体、シトラコン酸及びその誘導体、ジグリコール酸及びその誘導体、2-メトキシ酢酸及びその誘導体、ブタンテトラカルボン酸及びその誘導体、グリセリン誘導体、並びに、ペンタエリスリトール誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項11に記載の導電性シート。
【請求項13】
焼結助剤(D)が多価カルボン酸無水物である、請求項12に記載の導電性シート。
【請求項14】
(メタ)アクリル樹脂(A)は、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントとして、メタクリル酸イソブチルに由来するセグメント及びメタクリル酸2-エチルヘキシルに由来するセグメントからなる群から選ばれる少なくとも1種を有する、請求項11~13の何れかに記載の導電性シート。
【請求項15】
(メタ)アクリル樹脂(A)は、更に、メタクリル酸n-ブチルに由来するセグメントを有する、請求項14に記載の導電性シート。
【請求項16】
(メタ)アクリル樹脂(A)におけるメタクリル酸イソブチルに由来するセグメント、メタクリル酸n-ブチルに由来するセグメント及びメタクリル酸2-エチルヘキシルに由来するセグメントの合計含有量が80重量%以上である、請求項13に記載の導電性シート。
【請求項17】
焼結助剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)100重量部に対して10重量部以上30重量部以下である、請求項11~13の何れかに記載の導電性シート。
【請求項18】
(メタ)アクリル樹脂(A)は、更に、酸素元素含有量が10重量%以上であり、直鎖状のアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールに由来するセグメントを有する、請求項11~13の何れかに記載の導電性シート。
【請求項19】
請求項1~の何れかに記載の導電性ペースト組成物を乾燥する工程、及び、乾燥後に280℃以下の温度で焼成処理する工程を含む、電子部品の製造方法。
【請求項20】
請求項11~13の何れかに記載の導電性シートを280℃以下の温度で焼成処理する工程を含む、電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト組成物、導電性シートの製造方法、導電性シート及び電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント配線板や太陽電池等の基材上に電極や導電回路パターンを形成するため、導電ペーストが広く用いられている。導電ペーストは、導電性金属粒子をバインダー樹脂溶液に分散させたものであり、印刷方式にあわせて溶剤の種類が選定される。
【0003】
近年、パワー半導体をはじめとする半導体接合の高温信頼性を確保するため、ナノ金属ペーストに注目が集まっている。金属粒子の平均粒子径が数nm~数十nm程度であるとき、粒子表面に存在するエネルギー状態の高い原子の占める割合が大きくなり、金属原子の表面拡散が極度に大きくなることに起因して、バルク金属の融点よりも格段に低い温度で焼結が起こる。つまり、ナノ金属ペーストを用いることで、はんだリフローに相当する温度以下で焼結させることができ、はんだよりも信頼性の高い接合状態を得ることができる。
このようなナノサイズの金属粒子としては、銀をはじめとして様々な遷移金属でアトマイズ方法が検討されてきたが、なかでも銅はエレクトロマイグレーションを起こしにくく、比較的安価であるため、好ましく用いられる。一方で、銅は金属表面が容易に酸化されてしまうため、実用化するためには焼成時の酸化を防ぐ必要がある。
【0004】
導電性銅ペーストとしては、例えば、特許文献1には、銅粉、微細銅粉、脂肪族モノカルボン酸の銅塩、(ジアルキルアミノ)アルキルアミン、アルコール性ヒドロキシル基を有する有機溶剤を含む導電性銅ペーストが記載されている。また、導電性銅ペーストの塗布膜を水素ガスを含む還元性雰囲気中において、350℃以上400℃以下の温度で加熱して焼成することが記載されている。
また、特許文献2には、一次粒子の平均粒子径が1~150nmである金属粒子(P)、アミド基を有する化合物からなる有機溶剤(A)、常温における沸点が100℃以上のアルコール類からなる有機溶剤(B)、アルデヒド化合物からなる有機溶剤(C)、アミン化合物からなる有機溶剤(D)を含有する金属粒子分散溶液が記載されている。また、このような組成により、150~200℃で加熱することで金属粒子(P)の表面で還元作用を発揮して、焼結体が酸化を受けることを抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5506042号公報
【文献】特許第5809918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の導電性銅ペーストは、焼成温度が350~400℃と高すぎるため、半導体接合に用いることができない。また、高温で焼成すると有機溶剤や分散剤の熱分解によって窒素雰囲気下であっても金属粒子が酸化してしまう。また、特許文献2の金属粒子分散溶液は、バインダー樹脂を用いることがなく、スクリーン印刷等により印刷することができない。
このため、低温で分解可能であり、導電性金属粒子の酸化を抑制でき、印刷性にも優れる導電性ペースト組成物が求められている。
【0007】
本発明は、低温分解性に優れ、はんだリフロー相当の280℃での脱脂が可能であり、導電性金属粒子の酸化を抑制することができ、印刷性にも優れる導電性ペースト組成物を提供することを目的とする。また、該導電性ペースト組成物を用いた導電性シートの製造方法、導電性シート、電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示(1)は、(メタ)アクリル樹脂(A)、無機粒子(B)、溶剤(C)及び焼結助剤(D)を含有し、前記(メタ)アクリル樹脂(A)は、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントを50重量%以上含有し、前記無機粒子(B)は、平均粒子径が10nm以上1,000nm以下の導電性金属粒子を含み、前記溶剤(C)は、沸点が120℃以上250℃以下であり、前記焼結助剤(D)は、1分子中の酸素元素含有量が30重量%以上である、導電性ペースト組成物である。
本開示(2)は、無機粒子(B)は銅を含有する導電性金属粒子を含み、焼結助剤(D)はアジピン酸及びその誘導体、グルタル酸及びその誘導体、ピメリン酸及びその誘導体、スベリン酸及びその誘導体、クエン酸及びその誘導体、コハク酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、マロン酸及びその誘導体、トリカルバリル酸及びその誘導体、トリメリット酸及びその誘導体、イタコン酸及びその誘導体、シトラコン酸及びその誘導体、ジグリコール酸及びその誘導体、2-メトキシ酢酸及びその誘導体、ブタンテトラカルボン酸及びその誘導体、グリセリン誘導体、並びに、ペンタエリスリトール誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、本開示(1)の導電性ペースト組成物である。
本開示(3)は、焼結助剤(D)が多価カルボン酸無水物である、本開示(2)の導電性ペースト組成物である。
本開示(4)は、(メタ)アクリル樹脂(A)は、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントとして、メタクリル酸イソブチルに由来するセグメント及びメタクリル酸2-エチルヘキシルに由来するセグメントからなる群から選ばれる少なくとも1種を有する、本開示(1)~(3)の何れかとの任意の組み合わせの導電性ペースト組成物である。
本開示(5)は、(メタ)アクリル樹脂(A)は、更に、メタクリル酸n-ブチルに由来するセグメントを有する、本開示(4)の導電性ペースト組成物である。
本開示(6)は、(メタ)アクリル樹脂(A)におけるメタクリル酸イソブチルに由来するセグメント、メタクリル酸n-ブチルに由来するセグメント及びメタクリル酸2-エチルヘキシルに由来するセグメントの合計含有量が80重量%以上である、本開示(3)~(5)の何れかとの任意の組み合わせの導電性ペースト組成物である。
本開示(7)は、焼結助剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)100重量部に対して10重量部以上30重量部以下である、本開示(1)~(6)の何れかとの任意の組み合わせの導電性ペースト組成物である。
本開示(8)は、(メタ)アクリル樹脂(A)は、更に、酸素元素含有量が10重量%以上であり、直鎖状のアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールに由来するセグメントを有する、本開示(1)~(7)の何れかとの任意の組み合わせの導電性ペースト組成物である。
本開示(9)は、厚さ0.3mmに印刷し、送風オーブン内で120℃1時間の条件で乾燥した後、窒素雰囲気下で昇温速度10℃/分で280℃まで昇温、280℃で1時間保持した際の無機粒子(B)を除いた分解率が95重量%以上である、本開示(1)~(8)の何れかとの任意の組み合わせの導電性ペースト組成物である。
本開示(10)は、本開示(1)~(9)の何れかの導電性ペースト組成物を離形基材上に塗工する工程と、塗工された離形基材を乾燥する工程とを有する、導電性シートの製造方法である。
本開示(11)は、(メタ)アクリル樹脂(A)、無機粒子(B)及び焼結助剤(D)を含有し、前記(メタ)アクリル樹脂(A)は、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントを50重量%以上含有し、前記無機粒子(B)は、平均粒子径が10nm以上1,000nm以下の導電性金属粒子を含み、前記焼結助剤(D)は1分子中の酸素元素含有量が30重量%以上である、導電性シートである。
本開示(12)は、焼結助剤(D)はアジピン酸及びその誘導体、グルタル酸及びその誘導体、ピメリン酸及びその誘導体、スベリン酸及びその誘導体、クエン酸及びその誘導体、コハク酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、マロン酸及びその誘導体、トリカルバリル酸及びその誘導体、トリメリット酸及びその誘導体、イタコン酸及びその誘導体、シトラコン酸及びその誘導体、ジグリコール酸及びその誘導体、2-メトキシ酢酸及びその誘導体、ブタンテトラカルボン酸及びその誘導体、グリセリン誘導体、並びに、ペンタエリスリトール誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、本開示(11)の導電性シートである。
本開示(13)は、焼結助剤(D)が多価カルボン酸無水物である、本開示(12)の導電性シートである。
本開示(14)は、(メタ)アクリル樹脂(A)は、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントとして、メタクリル酸イソブチルに由来するセグメント及びメタクリル酸2-エチルヘキシルに由来するセグメントからなる群から選ばれる少なくとも1種を有する、本開示(11)~(13)の何れかとの任意の組み合わせの導電性シートである。
本開示(15)は、(メタ)アクリル樹脂(A)は、更に、メタクリル酸n-ブチルに由来するセグメントを有する、本開示(14)の導電性シートである。
本開示(16)は、(メタ)アクリル樹脂(A)におけるメタクリル酸イソブチルに由来するセグメント、メタクリル酸n-ブチルに由来するセグメント及びメタクリル酸2-エチルヘキシルに由来するセグメントの合計含有量が80重量%以上である、本開示(13)~(15)の何れかとの任意の組み合わせの導電性シートである。
本開示(17)は、焼結助剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)100重量部に対して10重量部以上30重量部以下である、本開示(11)~(16)の何れかとの任意の組み合わせの導電性シートである。
本開示(18)は、(メタ)アクリル樹脂(A)は、更に、酸素元素含有量が10重量%以上であり、直鎖状のアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールに由来するセグメントを有する、本開示(11)~(17)の何れかとの任意の組み合わせの導電性シートである。
本開示(19)は、本開示(1)~(9)の何れかの導電性ペースト組成物を乾燥する工程、及び、乾燥後に280℃以下の温度で焼成処理する工程を含む、電子部品の製造方法である。
本開示(20)は、本開示(11)~(18)の何れかの導電性シートを280℃以下の温度で焼成処理する工程を含む、電子部品の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、窒素雰囲気下、はんだリフローに相当する280℃以下で脱脂、焼成できる導電性ペースト組成物を開発するため、様々な(メタ)アクリル樹脂の分解温度特性を検証した。その結果、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントを所定の割合で含む(メタ)アクリル樹脂(A)と、1分子中の酸素を所定の割合で含む焼結助剤(D)とを組み合わせることで、窒素雰囲気下、はんだリフローに相当する280℃以下で熱分解を完了できることを見出した。また、これらと、平均粒子径が所定の範囲である無機粒子(B)と、沸点が所定の範囲である溶剤(C)とを組み合わせた導電性ペースト組成物や、これを乾燥させた導電性シートを採用することで、導電性金属粒子の酸化を抑制できることを見出した。更に、このような導電性ペースト組成物は、貯蔵安定性が高く、印刷性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
<(メタ)アクリル樹脂(A)>
上記導電性ペースト組成物は、(メタ)アクリル樹脂(A)を含有する。
上記(メタ)アクリル樹脂(A)は、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントを有する。
エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする(メタ)アクリル樹脂は、エステル置換基が直鎖状の(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする(メタ)アクリル樹脂よりも分解終了温度が低い。(メタ)アクリル樹脂は天井温度を超える環境ではモノマーに分解される解重合反応を示すが、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルは再度重合し難い特性を有するため分解終了温度が低い。このため、上記構造を有する(メタ)アクリル樹脂(A)は、低温分解性に優れる。
【0011】
上記エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、分岐構造を有するアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
上記エステル置換基の炭素数は、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、12以下が更に好ましく、例えば10以下である。
上記エステル置換基の炭素数は3~20が好ましく、4~15がより好ましく、4~12が更に好ましく、4~10が更により好ましい。
【0012】
上記分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシル等が挙げられる。
なかでも、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシルが好ましく、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸s-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシルがより好ましく、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルが更に好ましい。
【0013】
上記分岐構造を有するアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールとしては、プロピレングリコール単位を有するもの等が挙げられる。また、上記分岐構造を有するアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールは、末端にアルコキシ基を有するものであってもよい。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
上記分岐構造を有するアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールは、アルキレングリコール単位の数は3以上が好ましく、4以上がより好ましく、10以下が好ましく、8以下がより好ましい。
上記アルキレングリコール単位の数は、3~10が好ましく、4~8がより好ましい。
【0014】
上記(メタ)アクリル樹脂(A)における上記エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントの含有量は50重量%以上である。
上記範囲であると、低温分解性に優れた導電性ペースト組成物とすることができる。
上記エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントの含有量は、60重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、100重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。
上記(メタ)アクリル樹脂(A)における上記エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントの含有量は50~100重量%が好ましく、60~90重量%がより好ましく、70~90重量%が更に好ましい。
上記含有量は、例えば、熱分解GC-MSにより測定することができる。
【0015】
上記(メタ)アクリル樹脂(A)は、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントとして、メタクリル酸イソブチルに由来するセグメント及びメタクリル酸2-エチルヘキシルに由来するセグメントからなる群から選ばれる少なくとも1種を有することが好ましい。
上記構成を有することで、低温分解性により優れた導電性ペースト組成物とすることができる。
【0016】
上記(メタ)アクリル樹脂(A)は、更に、エステル置換基が直鎖状である(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメント、エステル置換基が環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメント等の他のセグメントを含んでいてもよい。
上記エステル置換基が直鎖状である(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、直鎖状のアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
上記エステル置換基の炭素数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、10以下が好ましく、6以下がより好ましい。
上記エステル置換基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6がより好ましい。
【0017】
上記直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル等が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルが好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチルがより好ましい。また、低温分解性により優れた導電性ペースト組成物とすることができることから、上記(メタ)アクリル樹脂(A)は、更に、メタクリル酸n-ブチルに由来するセグメントを有することが好ましい。
【0018】
上記直鎖状のアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールとしては、エチレングリコール単位を有するもの、トリメチレングリコール単位を有するもの等が挙げられる。また、上記直鎖状のアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールは、末端にアルコキシ基を有するものであってもよい。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。上記アルコキシ基は分岐構造を有さないものである。なかでも、エチレングルコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールが好ましく、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールがより好ましい。
上記直鎖状のアルキレングリコール単位を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートは、アルキレングリコール単位の数は4以上が好ましく、10以上がより好ましく、23以下が好ましく、20以下がより好ましい。
上記アルキレングリコール単位の数は4~23が好ましく、10~20がより好ましい。
【0019】
上記エステル置換基が環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の環状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸グリシジル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0020】
特に、上記(メタ)アクリル樹脂(A)は、モノマーとして酸素を多く含むものを用いることが好ましく、直鎖状のアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールは酸素元素含有量が多く、このような(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントを有することが好ましい。
上記直鎖状のアルキレングリコール単位を有する(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールは、酸素元素含有量が10重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、35重量%以上であることが更に好ましい。
(メタ)アクリル樹脂の解重合反応は吸熱反応であり、低温分解では分解に必要な熱量が得られにくい。上記のような酸素を多く含むモノマーに由来するセグメントを有することで、窒素雰囲気下であっても(メタ)アクリル樹脂の天井温度付近で自己の酸素を用いて燃焼分解するため、低温分解性をより高めることができる。
【0021】
上記(メタ)アクリル樹脂(A)における上記エステル置換基が直鎖状である(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントの含有量は、例えば0重量%以上であり、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
上記(メタ)アクリル樹脂(A)における上記エステル置換基が直鎖状である(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントの含有量は、0~20重量%が好ましく、1~10重量%がより好ましく、5~10重量%が更に好ましい。
上記範囲とすることで、印刷性等の取り扱い性が向上する。
上記含有量は、例えば、熱分解GC-MSにより測定することができる。
【0022】
上記(メタ)アクリル樹脂(A)におけるメタクリル酸イソブチルに由来するセグメント、メタクリル酸n-ブチルに由来するセグメント及びメタクリル酸2-エチルヘキシルに由来するセグメントの合計含有量は60重量%以上であることが好ましい。
上記構成を満たすことで、低温分解性により優れた導電性ペースト組成物とすることができる。
上記合計含有量は、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上が更に好ましい。上限は特に限定されず、例えば、100重量%以下であり、90重量%以下がより好ましい。
上記合計含有量は、60~100重量%が好ましく、70~100重量%がより好ましく、80~90重量%が更に好ましい。
上記含有量は、例えば、熱分解GC-MSにより測定することができる。
【0023】
上記(メタ)アクリル樹脂(A)は分子末端にカルボキシル基、水酸基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有することが好ましい。
上記構造を有することで、無機粒子(B)の分散性が向上する。
これらの基は、例えば、(メタ)アクリル樹脂(A)を作製する際に連鎖移動剤としてメルカプトコハク酸、メルカプトプロパンジオール等のメルカプト誘導体を用いることや重合開始剤として過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等を用いることで分子末端に導入することができる。
【0024】
上記(メタ)アクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、2万以上が好ましく、20万以上がより好ましく、200万以下が好ましく、40万以下がより好ましい。
上記(メタ)アクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、2万~200万が好ましく、20万~40万がより好ましい。
上記(メタ)アクリル樹脂(A)を用いて導電性ペースト組成物を作製する場合、導電性ペースト組成物はスクリーン印刷やディスペンス塗布によって塗工されるため、分子量が高くなりすぎると印刷性が悪化するため、分子量は低い方が好ましい。また、分子量が低くなりすぎると得られる導電性シートが脆くなるため、分子量はある程度高いことが好ましい。上記Mwが2万以上であると、導電性ペースト組成物の粘度が低くなり過ぎることがなく、また、無機粒子の分散性も良好なものとなる。また、上記Mwが20万以上であると、得られる導電性シートの強度をより高めることができる。上記Mwが200万以下であると、導電性ペースト組成物の粘度が充分に高くなり、貯蔵安定性を向上させて、印刷性に優れたものとすることができる。また、上記Mwが40万以下であると、印刷性をより向上させることができる。
【0025】
上記(メタ)アクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、通常1以上であり、1.5以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。
上記Mw/Mnは、1.5~5が好ましく、2~3がより好ましい。
上記範囲内とすることで、低重合度の成分が適度に含有されるため、導電性ペースト組成物の粘度が好適な範囲となり、生産性を高めることができる。
なお、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ポリスチレン換算による平均分子量であり、カラムとして例えばカラムLF-804(昭和電工社製)を用いてGPC測定を行うことで得ることができる。
【0026】
上記(メタ)アクリル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、60℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましい。
上記ガラス転移温度(Tg)は、20~60℃が好ましく、30~50℃がより好ましい。
なお、上記ガラス転移温度(Tg)は、例えば、示差走査熱量計(DSC)等を用いて測定することができる。
【0027】
上記導電性ペースト組成物における上記(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量は特に限定されないが、3重量%以上であることが好ましく、3.5重量%以上であることがより好ましく、4重量%以上であることが更に好ましく、30重量%以下であることが好ましく、12重量%以下であることがより好ましい。
上記導電性ペースト組成物における上記(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量は、3~30重量%が好ましく、3.5~30重量%がより好ましく、4~12重量%が更に好ましい。
上記(メタ)アクリル樹脂の含有量を上記範囲内とすることで、低温で焼成できる導電性ペースト組成物が製造できる。
【0028】
上記(メタ)アクリル樹脂(A)を製造する方法としては特に限定されない。例えば、まず、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル等を含む原料モノマー混合物に有機溶剤等を加えてモノマー混合液を調製し、更に、得られたモノマー混合液に重合開始剤を添加して、重合させて原料(メタ)アクリル樹脂(A)を作製する方法が挙げられる。
重合させる方法は特に限定されず、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、界面重合、溶液重合等が挙げられる。なかでも、溶液重合が好ましい。
【0029】
上記重合開始剤としては、例えば、ジラウリルパーオキサイド、P-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロキシパーオキサイド、t-ブチルハイドロキシパーオキサイド、過酸化シクロヘキサノン、ジコハク酸パーオキサイド等が挙げられる。
これらの市販品としては、例えば、パーメンタH、パークミルP、パーオクタH、パークミルH-80、パーロイル355、パーブチルH-69、パーヘキサH、パーロイルSA、パーロイルL(何れも日油社製)、トリゴノックス27、トリゴノックス421(いずれもNouryon社製)等が挙げられる。
【0030】
また、重合の際に連鎖移動剤としてメルカプトコハク酸、メルカプトプロパンジオール等のメルカプト誘導体を用いることや重合開始剤として過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等を用いることで分子末端にカルボキシル基、水酸基、スルホン酸基等の基を導入することができる。
【0031】
<無機粒子(B)>
上記導電性ペースト組成物は、無機粒子(B)を含有する。
上記無機粒子(B)は、平均粒子径が10nm以上1,000nm以下の導電性金属粒子を含む。
上記導電性金属粒子の材料となる金属としては、例えば、銅、鉄、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、アルミニウム、タングステン及びこれらの合金等が挙げられる。
特に、抵抗値が低く、エレクトロマイグレーションの問題が起こりにくいため、銅を含有する導電性金属粒子が最も好ましい。
なお、銅としては、後述する焼結助剤(D)の燃焼効果により表面酸素を除去して好ましい導通性能を確保できることから亜酸化銅(CuO)を用いてもよい。また、無機粒子(B)は銅及び亜酸化銅を含有してもよい。
また、焼成により表面保護剤が燃焼、分解、蒸発して好ましい導通性能を確保できることから、アミン類、ジオール類、ポリオール類、チオール類、カルボン酸類等によって表面保護されたものであってもよい。
上記のような平均粒子径の小さいナノ銅粒子の製造方法は特に限定されず、液相還元法、気相法(電解還元法)、ミセル法等を用いることができる。
【0032】
上記導電性金属粒子の平均粒子径は10nm以上1,000nm以下である。
上記範囲であると、低温焼結性を得ることができる。
上記平均粒子径は、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましく、500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。
上記平均粒子径は、10~1000nmが好ましく、50~500nmがより好ましく、100~200nmが更に好ましい。
上記平均粒子径は、BET法により測定することができる。より具体的には、「The Big Problem of Small Particles: A Comparison of Methods for Determination of Particle Size in Nanocrystalline Anatase Powders Weibel, A. et al. Chem. Mater. 2005, 17, 2378.」の記載に基づいて測定することができる。
【0033】
上記導電性ペースト組成物における上記導電性金属粒子の含有量は特に限定されないが、80重量%以上が好ましく、85重量%以上がより好ましく、95重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。
上記導電性ペースト組成物における上記導電性金属粒子の含有量は、80~95重量%が好ましく、85~90重量%がより好ましい。
上記範囲とすることで印刷性に優れた導電性ペースト組成物とすることができる。
【0034】
上記無機粒子(B)は、上記導電性金属粒子以外の他の無機粒子を含有していてもよい。
上記他の無機粒子としては、例えば、ガラス粉末が挙げられる。ガラス粉末を含むことで、導電性ペースト組成物を焼結した際に導電性金属粒子を凝集させて緻密な層を形成することができる。
上記ガラス粉末は特に限定されず、例えば、酸化ビスマスガラス、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、亜鉛ガラス、ボロンガラス等のガラス粉末や、CaO-Al-SiO系、MgO-Al-SiO系、LiO-Al-SiO系等の各種ケイ素酸化物のガラス粉末等が挙げられる。また、上記ガラス粉末として、SnO-B-P-Al混合物、PbO-B-SiO混合物、BaO-ZnO-B-SiO混合物、ZnO-Bi-B-SiO混合物、Bi-B-BaO-CuO混合物、Bi-ZnO-B-Al-SrO混合物、ZnO-Bi-B混合物、Bi-SiO混合物、P-NaO-CaO-BaO-Al-B混合物、P-SnO混合物、P-SnO-B混合物、P-SnO-SiO混合物、CuO-P-RO混合物、SiO-B-ZnO-NaO-LiO-NaF-V混合物、P-ZnO-SnO-RO-RO混合物、B-SiO-ZnO混合物、B-SiO-Al-ZrO混合物、SiO-B-ZnO-RO-RO混合物、SiO-B-Al-RO-RO混合物、SrO-ZnO-P混合物、SrO-ZnO-P混合物、BaO-ZnO-B-SiO混合物等のガラス粉末も用いることができる。なお、Rは、Zn、Ba、Ca、Mg、Sr、Sn、Ni、Fe及びMnからなる群より選択される元素である。
特に、PbO-B-SiO混合物のガラス粉末や、鉛を含有しないBaO-ZnO-B-SiO混合物又はZnO-Bi-B-SiO混合物等の無鉛ガラス粉末が好ましい。
【0035】
上記導電性ペースト組成物における上記導電性金属粒子以外の他の無機粒子の含有量は特に限定されないが、0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。
上記導電性ペースト組成物における上記他の無機粒子の含有量は、0.1~5重量%が好ましく、1~3重量%がより好ましい。
【0036】
<溶剤(C)>
上記導電性ペースト組成物は、溶剤(C)を含有する。
上記溶剤(C)は、沸点が120℃以上250℃以下の有機溶剤である。
上記溶剤(C)を用いることで、蒸発が早くなり過ぎず、また、(メタ)アクリル樹脂の分解開始温度以下の乾燥条件で除去でき、電子部品の生産性を向上できる。
なお、上記溶剤(C)は後述する焼結助剤(D)とは異なるものである。
【0037】
上記有機溶剤としては特に限定されないが、電子部品を作製する際に、塗工性、乾燥性、導電性無機粒子の分散性等に優れたものであることが好ましい。
例えば、エチレングリコールエチルエーテル(135℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(171℃)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(246℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(196℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(193℃)、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(160℃)、ブチルカルビトール(231℃)、ブチルカルビトールアセテート(247℃)、テルピネオール(219℃)、テルピネオールアセテート(220℃)、ジヒドロテルピネオール(246℃)、ジヒドロテルピネオールアセテート(246℃)、テキサノール(244℃)、イソホロン(215℃)、酢酸イソアミル(142℃)、酢酸ヘキシル(172℃)、酢酸ブチル(126℃)、乳酸ブチル(170℃)、ジオクチルフタレート(220℃)、ジオクチルアジペート(214℃)、ベンジルアルコール(205℃)、フェニルプロピレングリコール(244℃)、o-クレゾール(192℃)、m-クレゾール(202℃)、p-クレゾール(202℃)、キシレン(139℃)等が挙げられる。なかでも、テルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テキサノール、酢酸イソアミル、酢酸ブチル、キシレンが好ましい。また、テルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテートがより好ましい。なお、これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。カッコ内は沸点を表す。
【0038】
上記有機溶剤の沸点は120℃以上250℃以下である。
上記沸点が120℃以上であると、蒸発が早くなりすぎず、取り扱い性に優れた導電性ペースト組成物とすることができる。上記沸点が250℃以下であると、電子部品の生産性を向上できる。
上記沸点は、160℃以上が好ましく、220℃以下が好ましい。
上記沸点は、120~250℃が好ましく、160~220℃がより好ましい。
【0039】
上記導電性ペースト組成物における上記溶剤(C)の含有量としては特に限定されないが、4重量%以上が好ましく、4.5重量%以上がより好ましく、5重量%以上が更に好ましく、16重量%以下が好ましく、12重量%以下がより好ましく、10重量%以下が更に好ましく、8重量%以下が更により好ましく、例えば6重量%以下である。
上記導電性ペースト組成物における上記溶剤(C)の含有量は、4~16重量%が好ましく、4~12重量%がより好ましく、4.5~10重量%が更に好ましく、5~10重量%が更により好ましく、5~8重量%が特に好ましく、5~6重量%が特により好ましい。
上記範囲内とすることで、塗工性、導電性金属粒子の分散性を向上できる。
【0040】
<焼結助剤(D)>
上記導電性ペースト組成物は、焼結助剤(D)を含有する。
上記焼結助剤(D)は、1分子中の酸素元素含有量が30重量%以上である。
上記焼結助剤(D)は、バインダー樹脂である(メタ)アクリル樹脂を可塑化させ、導電性ペースト組成物を印刷した際に基材への密着性を向上させる効果を有する。また、窒素雰囲気下で250℃付近に加熱することで燃焼する際に自己の酸素を消費して(メタ)アクリル樹脂の分解を促進することができ、更に、金属表面の酸化被膜を除去する効果を発揮する。このため、上記焼結助剤(D)を用いることで、(メタ)アクリル樹脂の低温分解性を高めるとともに、導電性金属粒子の酸化を抑制することができる。
上記焼結助剤(D)は、1分子中の酸素元素含有量が35重量%以上であることがより好ましい。上限は特に限定されないが、例えば65重量%以下であり、55重量%以下が好ましい。
上記酸素元素含有量は、30~65重量%が好ましく、35~55重量%がより好ましい。
なお、上記酸素元素含有量は、焼結助剤(D)の分子量及び酸素の原子量に基づいて算出できる。
【0041】
上記焼結助剤(D)としては、例えば、カルボン酸及びその誘導体、多価アルコール及びその誘導体等が挙げられる。
上記誘導体としては、エステル、無水物等が挙げられる。
カルボン酸及びその誘導体としては、モノカルボン酸及びその誘導体、多価カルボン酸及びその誘導体が挙げられ、具体的には、例えば、マロン酸(62重量%)、無水マロン酸(56重量%)、アセチルマロン酸ジエチル(40重量%)、メトキシマロン酸ジメチル(49重量%)、メトキシマロン酸ジエチル(42重量%)、エトキシマロン酸ジエチル(39重量%)、コハク酸(54重量%)、無水コハク酸(48重量%)、アセチルコハク酸ジメチル(43重量%)、アセチルコハク酸ジエチル(37重量%)、コハク酸ジエチル(37重量%)、マレイン酸(55重量%)、無水マレイン酸(49重量%)、グルタル酸(48重量%)、無水グルタル酸(42重量%)、アジピン酸(44重量%)、アジピン酸ジメチル(37重量%)、アジピン酸モノメチル(40重量%)、アジピン酸モノエチル(37重量%)、ピメリン酸(40重量%)、スベリン酸(37重量%)、アゼライン酸(34重量%)、セバシン酸(32重量%)、トリカルバリル酸(55重量%)、無水トリカルバリル酸(51重量%)、トリメリット酸(46重量%)、無水トリメリット酸(42重量%)、トリメリット酸トリメチル(38重量%)、ブタンテトラカルボン酸(55重量%)、ブタンテトラカルボン酸2無水物(48重量%)、3-オキソグルタル酸(55重量%)、イタコン酸(49重量%)、イタコン酸無水物(43重量%)、シトラコン酸(49重量%)、シトラコン酸無水物(43重量%)、ジグリコール酸(60重量%)、ジグリコール酸無水物(55重量%)、2-メトキシ酢酸(53重量%)、2-メトキシ酢酸無水物(49重量%)、シクロペンタンテトラカルボン酸(52重量%)、シクロペンタンテトラカルボン酸無水物(46重量%)、クエン酸(58重量%)、クエン酸トリエチル(41重量%)、クエン酸トリプロピル(35重量%)、クエン酸トリブチル(31重量%)、アセチルクエン酸トリメチル(46重量%)、アセチルクエン酸トリエチル(40重量%)、アセチルクエン酸トリブチル(32重量%)、無水クエン酸(55重量%)等が挙げられる。
多価アルコール及びその誘導体としては、例えば、グリセリン(52重量%)、ペンタエリスリトール(47重量%)、トリアセチン(44重量%)、トリプロピオニン(37重量%)、ペンタエリスリトールテトラアセテート(42重量%)等が挙げられる。
上記焼結助剤(D)は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。括弧内は酸素元素含有量を表す。
【0042】
なかでも、有機溶剤(C)との相溶性の観点から、アジピン酸及びその誘導体、グルタル酸及びその誘導体、ピメリン酸及びその誘導体、スベリン酸及びその誘導体、クエン酸及びその誘導体、コハク酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、ブタンテトラカルボン酸及びその誘導体、トリカルバリル酸及びその誘導体、トリメリット酸及びその誘導体、イタコン酸及びその誘導体、シトラコン酸及びその誘導体、ジグリコール酸及びその誘導体、2-メトキシ酢酸及びその誘導体、シクロペンタンテトラカルボン酸及びその誘導体、グリセリン誘導体、ペンタエリスリトール誘導体が好ましく、アジピン酸誘導体、クエン酸誘導体、コハク酸誘導体、マレイン酸誘導体、グリセリン誘導体、ペンタエリスリトール誘導体がより好ましい。また、クエン酸及びその誘導体、コハク酸及びその誘導体、グリセリン誘導体、ペンタエリスリトール誘導体、グルタル酸及び誘導体、アジピン酸及び誘導体、スベリン酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、ジグリコール酸及びその誘導体、2-メトキシ酢酸及びその誘導体、ブタンテトラカルボン酸及びその誘導体が更に好ましく、クエン酸トリプロピル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸トリブチル、アセチルコハク酸ジメチル、トリプロピオニン、トリアセチン、ペンタエリスリトールテトラアセテート、3-オキソグルタル酸、アジピン酸モノメチル、スベリン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジグリコール酸無水物、2-メトキシ酢酸無水物、無水クエン酸、ブタンテトラカルボン酸2無水物が更により好ましい。
【0043】
また、分子中の酸素元素含有量が多いことから、酸無水物が好ましく、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水クエン酸、無水マロン酸、無水トリカルバリル酸、無水トリメリット酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、ジグリコール酸無水物、2-メトキシ酢酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸無水物がより好ましい。更に、焼成時に脱炭酸することでアルデヒド構造が生成し、導電金属の酸素を奪う還元性が発現するため、カルボン酸無水物がより好ましい。
【0044】
上記焼結助剤(D)は、沸点が200℃以上であることが好ましい。
上記沸点とすることで、導電性ペースト組成物を塗工乾燥させた際、溶剤(C)とともに蒸発してしまうことがなく、(メタ)アクリル樹脂の脱脂を促進する効果を発揮することができる。
上記沸点は、260℃以上がより好ましく、270℃以上が更に好ましく、390℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましい。
上記沸点は、200~390℃が好ましく、260~390℃がより好ましく、270~350℃が更により好ましい。
上記沸点が270℃以上であると可塑剤として機能することができる。
なお、上記焼結助剤(D)は、空気雰囲気下では200℃未満で燃焼してしまうため、沸点の測定は減圧条件下で行うことが好ましい。減圧条件下での沸点の換算方法としては、Science of Petroleum, Vol.II. p.1281 (1938).等の方法を用いることができる。
【0045】
また、上記焼結助剤(D)は酸素元素含有量が多い方が好ましいが、低分子量である場合、(メタ)アクリル樹脂の天井温度までに蒸発してしまうおそれがあるため、沸点、分子量が高いものを用いることが好ましい。
特にクエン酸及びその誘導体は、酸素元素含有量と沸点とのバランスがよく、好ましく用いることができる。一方、水にしか溶解しないような多価アルコールや多価カルボン酸は酸素元素含有量が高いが、導電性ペースト組成物を保管した際、吸湿する原因ともなるため望ましくない。また、上記焼結助剤(D)は、ペースト組成物の低温焼結性の観点から、芳香族基を有さないことが好ましい。
【0046】
上記焼結助剤(D)は、常温、単独で固体であってもよく、液体であってもよい。ガラス転移温度が低い(メタ)アクリル樹脂を用いる場合、常温で固体の焼結助剤は、導電性ペースト組成物を印刷した際の保持性を高める効果が期待できる。
【0047】
上記導電性ペースト組成物における上記焼結助剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)100重量部に対して10重量部以上が好ましく、15重量部以上がより好ましく、30重量部以下が好ましく、25重量部以下がより好ましい。
上記導電性ペースト組成物における上記焼結助剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)100重量部に対して10~30重量部が好ましく、15~25重量部がより好ましい。
上記範囲とすることで有機物の脱脂性と印刷像の基材密着性を両立させることができる。
【0048】
上記導電性ペースト組成物における上記焼結助剤(D)の含有量は、無機粒子(B)100重量部に対して0.2重量部以上が好ましく、0.4重量部以上がより好ましく、3重量部以下が好ましく、2.5重量部以下がより好ましい。
上記導電性ペースト組成物における上記焼結助剤(D)の含有量は、無機粒子(B)100重量部に対して0.2~3重量部が好ましく、0.4~2.5重量部がより好ましい。
【0049】
また、上記導電性ペースト組成物における上記焼結助剤(D)の含有量は特に限定されないが、0.1重量%以上が好ましく、0.4重量%以上がより好ましく、3重量%以下が好ましく、2.5重量%以下がより好ましい。
上記導電性ペースト組成物における上記焼結助剤(D)の含有量は、0.1~3重量%が好ましく、0.4~2.5重量%がより好ましい。
上記範囲とすることで、(メタ)アクリル樹脂(A)と焼結助剤(D)との焼成残渣を少なくすることができる。
【0050】
<その他>
上記導電性ペースト組成物は、更に、金属酸化物等の1分子中の酸素元素含有量が30重量%未満である焼成助剤等の添加剤を含有してもよい。
【0051】
上記導電性ペースト組成物の粘度は特に限定されないが、20℃においてB型粘度計を用いプローブ回転数を5rpmに設定して測定した場合の粘度の好ましい下限が0.1Pa・s、好ましい上限が100Pa・sである。
上記導電性ペースト組成物の粘度は、20℃においてB型粘度計を用いプローブ回転数を5rpmに設定して測定した場合の粘度が0.1~100Pa・sであることが好ましい。
上記粘度を0.1Pa・s以上とすることで、ダイコート印刷法等により塗工した後、得られる導電性金属粒子分散シートが所定の形状を維持することが可能となる。また、上記粘度を100Pa・s以下とすることで、スルービアに導電性ペースト組成物を充填した際の垂れを防止して、印刷性を向上できる。
【0052】
上記導電性ペースト組成物は、厚さ0.3mmに印刷し、送風オーブンで120℃1時間の条件で乾燥した後、窒素雰囲気下で昇温速度10℃で280℃まで昇温した際の無機粒子(B)を除いた分解率が95重量%以上であることが好ましい。
上記範囲であると、(メタ)アクリル樹脂(A)と焼結助剤(D)との焼成残渣を少なくすることができる。
上記分解率は、96重量%以上が好ましく、97重量%以上がより好ましい。上限は特に限定されず、例えば、100重量%以下である。
上記分解率は、95~100重量%が好ましく、96~100重量%がより好ましく、97~100重量%が更に好ましい。
上記分解率は熱重量示差熱同時測定装置(TG-DTA)を用いて測定することができる。より具体的には、導電性ペースト組成物を印刷して得られた成形体の加熱前の重量WA及び加熱後の重量WBを測定し、成形体中の無機粒子の重量WCを除いて、以下の式に基づいて算出することができる。
分解率(重量%)=(WA-WB)/(WA-WC)×100
【0053】
上記導電性ペースト組成物を作製する方法は特に限定されず、従来公知の攪拌方法が挙げられ、具体的には、例えば、上記(メタ)アクリル樹脂(A)、上記無機粒子(B)、上記溶剤(C)、上記焼結助剤(D)及び必要に応じて添加される他の成分を3本ロール等で攪拌する方法等が挙げられる。また、上記(メタ)アクリル樹脂(A)を作製する際に得られる反応後の樹脂溶液に無機粒子(B)、焼結助剤(D)及び必要に応じて添加される追加の溶剤(C)や他の成分を添加して3本ロール等で撹拌する方法等が挙げられる。
【0054】
上記導電性ペースト組成物を離形基材上に塗工し、乾燥により有機溶剤を除去することで、導電性シートを作製することができる。
上記導電性ペースト組成物を離形基材上に塗工する工程と、塗工された離形基材を乾燥する工程とを有する導電性シートの製造方法もまた本発明の1つである。
【0055】
上記印刷する方法は特に限定されず、例えば、スクリーン印刷法、ダイコート印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、インクジェット印刷法等を用いることができる。
【0056】
上記乾燥方法は特に限定されず、例えば、送風オーブン等を用いることができる。また、乾燥温度は特に限定されず、例えば、100℃以上150℃以下である。
【0057】
上記のように得られる導電性シートは、上記導電性ペーストから有機溶剤を除去したものである。
(メタ)アクリル樹脂(A)、無機粒子(B)及び焼結助剤(D)を含有し、前記(メタ)アクリル樹脂(A)は、エステル置換基に分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するセグメントを50重量%以上含有し、前記無機粒子(B)は、平均粒子径が10nm以上1,000nm以下の導電性金属粒子を含み、前記焼結助剤(D)は1分子中の酸素元素含有量が30重量%以上である、導電性シートもまた本発明の1つである。
【0058】
上記(メタ)アクリル樹脂(A)、無機粒子(B)、焼結助剤(D)としては、上記導電性ペースト組成物を構成するものと同様のものが挙げられる。
【0059】
上記導電性シートにおける上記(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量は特に限定されないが、2重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、4重量%以上であることが更に好ましく、15重量%以下であることが好ましく、12重量%以下であることがより好ましい。
上記導電性シートにおける上記(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量は、2~15重量%が好ましく、3~12重量%がより好ましく、4~12重量%が更に好ましい。
【0060】
上記導電性シートにおける上記導電性金属粒子の含有量は特に限定されないが、75重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、85重量%以上であることが更に好ましく、95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましい。
上記導電性シートにおける上記導電性金属粒子の含有量は、75~95重量%が好ましく、80~95重量%がより好ましく、85~90重量%が更に好ましい。
【0061】
上記導電性シートにおける上記導電性金属粒子以外の他の無機粒子の含有量は特に限定されないが、0.1重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがより好ましく、1重量%以上であることが更に好ましく、4重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましい。
上記導電性シートにおける上記他の無機粒子の含有量は、0.1~4重量%が好ましく、0.5~4重量%がより好ましく、1~3重量%が更に好ましい。
【0062】
上記導電性シートにおける上記焼結助剤(D)の含有量は特に限定されないが、0.1重量%以上であることが好ましく、0.4重量%以上であることがより好ましく、0.5重量%以上であることが更に好ましく、4重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましい。
上記導電性シートにおける上記焼結助剤(D)の含有量は、0.1~4重量%が好ましく、0.4~4重量%がより好ましく、0.5~3重量%が更に好ましい。
【0063】
上記導電性シートにおける上記焼結助剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)100重量部に対して10重量部以上が好ましく、15重量部以上がより好ましく、30重量部以下が好ましく、25重量部以下がより好ましい。
上記導電性シートにおける上記焼結助剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)100重量部に対して10~30重量部が好ましく、15~25重量部がより好ましい。
上記範囲とすることで有機物の脱脂性と印刷像の基材密着性を両立させることができる。
【0064】
上記導電性シートにおける上記焼結助剤(D)の含有量は、無機粒子(B)100重量部に対して0.2重量部以上が好ましく、0.4重量部以上がより好ましく、3重量部以下が好ましく、2.5重量部以下がより好ましい。
上記導電性シートにおける上記焼結助剤(D)の含有量は、無機粒子(B)100重量部に対して0.2~3重量部が好ましく、0.4~2.5重量部がより好ましい。
【0065】
上記導電性シートの厚みは、特に限定されないが、20μm以上が好ましく、100μm以下が好ましい。
上記導電性シートの厚みは、20~100μmが好ましい。
【0066】
上記導電性ペースト組成物、上記導電性シートを用いることで電子部品を作製することができる。
上記電子部品としては、例えば、ダイアタッチペースト(ACP)、ダイアタッチフィルム(ACF)、TSV、TGV用ビア電極、タッチパネル、RFIDやセンサー基板の各種回路、各種ダイボンディング剤、MEMSデバイスの封止剤、太陽電池、積層セラミックスコンデンサ、LTCC、シリコンコンデンサ、全固体電池等の電極材料、スルーホール電極、IGBT半導体接合材、SAWフィルター等が挙げられる。また、上記電極回路用途以外に、抗菌部材や電磁波シールド、触媒、蛍光材料等にも用いることができる。
【0067】
上記導電性ペースト組成物を基材上に印刷し、乾燥により有機溶剤を除去し、その後、焼成炉にて窒素等の不活性ガス雰囲気下で加熱して(メタ)アクリル樹脂を脱脂し、導電性金属粒子を焼結することで、高い導電性能を発揮する電子部品が得られる。
上記印刷する方法は特に限定されず、例えば、スクリーン印刷法、ダイコート印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、インクジェット印刷法等を用いることができる。
【0068】
上記導電性ペーストの乾燥方法は特に限定されず、例えば、送風オーブン等を用いることができる。また、乾燥温度は特に限定されず、例えば、100℃以上150℃以下である。
【0069】
また、焼成条件は特に限定されないが、280℃以下の温度で焼成することが好ましく、250℃以下の温度で焼成することがより好ましい。
また、昇温速度は20℃/分以上が好ましい。
また、窒素雰囲気下で焼成することが好ましく、導電性金属粒子の表面酸化が激しい場合、焼成炉に導入する窒素ガスに水素を含有させてもよい。
上記焼成処理は、焼結助剤(D)の還元性効果をより高めるため、窒素等の不活性ガス雰囲気下で電気炉、マッフル炉、プラズマ炉等で行われることが好ましい。
【0070】
また、平面状の電子部品の場合、熱プレスによって焼成することもできる。
熱プレスの条件は特に限定されないが、200℃以上280℃以下の温度で1MPa以上5MPa以下のプレス圧で焼成することが好ましい。
【0071】
また、焼成後の金属電極等に表面保護して酸化を防止してもよい。表面保護する方法としては、例えば、液状のエポキシ樹脂組成物をコートする方法やEVA、スチレン等を含有する溶液をキャストする方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0072】
本発明によれば、低温分解性に優れ、はんだリフロー相当の280℃での脱脂が可能であり、導電性金属粒子の酸化を抑制することができ、印刷性にも優れる導電性ペースト組成物を提供できる。また、該導電性ペースト組成物を用いた導電性シートの製造方法、導電性シート、電子部品の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0074】
(実施例1)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>
撹拌機、冷却器、温度計、湯浴及び窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコを用意した。2Lセパラブルフラスコにメタクリル酸イソブチル(iBMA)65重量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)35重量部を加えた。更に、有機溶剤としてテルピネオール100重量部とを混合し、モノマー混合液を得た。
【0075】
得られたモノマー混合液を窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより溶存酸素を除去して窒素ガスで置換し、攪拌しながら内温を80℃として、酢酸ブチルで希釈した重合開始剤溶液を加えた。また、重合中に重合開始剤溶液を数回添加した。なお、重合開始剤としては、ジラウリルパーオキサイドを用いた。
重合開始剤から7時間後、室温まで冷却して重合を終了させ、(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を乾燥させ、テトラヒドロフラン(THF)中に樹脂濃度0.1重量%にて溶解させてカラムとしてSHODEX LF-804を用い、GPCによりポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、Mwは10万であった。
また、得られた(メタ)アクリル樹脂について、日本電子社製JMS-Q1500GC装置を用いて熱分解GC-MSにより成分含有量を確認した。
【0076】
<導電性金属粒子の作製>
水2重量部、メタノール40重量部に塩化銅5.4重量部、分散安定剤としてオレイン酸0.8重量部を加え、更に還元剤としてヒドラジン3重量部を加えて室温で反応させ、ナノ銅粒子コロイドを調製し、遠心分離により固形分を沈降させてナノ銅粉末を回収した。得られたナノ銅粉末をテルピネオール50重量部に分散させた。この銅ナノ粒子分散液を0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、粗大粒子を除去後、ろ液にナノ銅粉末が懸濁するまでメタノールを加え、遠心分離(4000rpm、10分)、自然乾燥により平均粒子径10nmの酸化銅(CuO)粉末を得た。
なお、平均粒子径は、ゼータタイザーにより測定した。
【0077】
<導電性ペースト組成物の作製>
上記(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物について、送風オーブンによって固形分測定を行い、樹脂濃度を確認した。
上記(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表1に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し撹拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0078】
(実施例2)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)80重量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)20重量部、溶剤としてジヒドロテルピネオールを用いて実施例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0079】
<導電性金属粒子>
導電性金属粒子として、酸化銅(II)粉末(CuO、シグマアルドリッチ社製、平均粒子径50nm)を用いた。
【0080】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表1に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し撹拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0081】
(実施例3)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>
撹拌機、冷却器、温度計、湯浴及び窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコを用意した。2Lセパラブルフラスコにメタクリル酸イソブチル(iBMA)70重量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)20重量部、メタクリル酸イソデシル(iDMA)10重量部を加えた。更に、有機溶剤として酢酸イソアミル20重量部とを混合し、モノマー混合液を得た。
【0082】
得られたモノマー混合液を窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより溶存酸素を除去して窒素ガスで置換し、攪拌しながら内温を80℃として、酢酸イソアミルで希釈した重合開始剤溶液を加えた。また、重合中に重合開始剤溶液を数回添加した。なお、重合開始剤としては、ジラウリルパーオキサイドを用いた。
重合開始剤から7時間後、室温まで冷却して重合を終了させ、(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0083】
<導電性金属粒子>
導電性金属粒子として、酸化銅(II)粉末(CuO、シグマアルドリッチ社製、平均粒子径70nm)を用いた。
【0084】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表1に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し撹拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0085】
(実施例4)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)80重量部、メタクリル酸イソデシル(iDMA)20重量部、溶剤としてジヒドロテルピネオールを用いて実施例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0086】
<導電性金属粒子>
導電性金属粒子として、酸化銅(I)粉末(CuO、シグマアルドリッチ社製、平均粒子径350nm)を用いた。
【0087】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表1に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し撹拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0088】
(実施例5)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)50重量部、メタクリル酸n-ブチル(nBMA)50重量部、溶剤として酢酸ブチルを用いて実施例3と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0089】
<導電性金属粒子>
導電性金属粒子として、銀粉末(Ag、Filgen社製、平均粒子径100nm)を用いた。
【0090】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表1に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し撹拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0091】
(実施例6)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)50重量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)30重量部、メタクリル酸n-ブチル(nBMA)20重量部、溶剤としてキシレンを用いて実施例3と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0092】
<導電性金属粒子>
導電性金属粒子として、酸化銅(II)粉末(CuO、高純度化学研究所社製、平均粒子径1000nm)を用いた。
【0093】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表1に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し撹拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0094】
(実施例7)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)90重量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)5重量部、メタクリル酸エチル(EMA)5重量部、溶剤としてテキサノールを用いて実施例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0095】
<導電性金属粒子>
導電性金属粒子として、銀粉末(Ag、高純度化学研究所社製、平均粒子径1000nm)を用いた。
【0096】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表1に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し撹拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0097】
(実施例8)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)72重量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)8重量部、メタクリル酸s-ブチル(sBMA)20重量部、溶剤としてジヒドロテルピネオールアセテートを用い実施例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0098】
<導電性金属粒子>
導電性金属粒子として、銀粉末(Ag、Filgen社製、平均粒子径10nm)を用いた。
【0099】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表1に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し撹拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0100】
(実施例9)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)40重量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)40重量部、メタクリル酸イソプロピル(iPMA)20重量部、溶剤として酢酸ヘキシルを用い実施例3と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0101】
<導電性金属粒子の作製>
実施例1の<導電性金属粒子の作製>において、銅ナノ粒子分散液100重量部に保護剤としてネオペンチルグリコール9.4重量部を添加することにより平均粒子径50nmのジオール保護ナノ銅粉末を得た。
【0102】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表2に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し撹拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0103】
(実施例10)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)40重量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)30重量部、メタクリル酸n-ブチル(nBMA)30重量部、溶剤としてテルピネオールを用い実施例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0104】
<導電性金属粒子>
導電性金属粒子として、酸化銅(II)(CuO、日本イオン社製、平均粒子径100nm)を用いた。
【0105】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表2に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し攪拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0106】
(実施例11)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)40重量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)40重量部、メタクリル酸n-ブチル(nBMA)20重量部、溶剤として酢酸ブチルを用い実施例3と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0107】
<導電性金属粒子>
導電性金属粒子として、酸化銅(II)(CuO、日本イオン社製、平均粒子径100nm)を用いた。
【0108】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表2に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し攪拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0109】
(比較例1)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)80重量部、メタクリル酸メチル(MMA)20重量部、溶剤として酢酸ブチルを用い実施例3と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0110】
<導電性金属粒子>
導電性金属粒子として、酸化銅(II)粉末(CuO、日本イオン社製、平均粒子径100nm)を用いた。
【0111】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表2に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し攪拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0112】
(比較例2)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)40重量部、メタクリル酸エチル(EMA)60重量部、溶剤としてテルピネオールを用い実施例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0113】
<導電性金属粒子>
導電性金属粒子として、比較例1と同様の酸化銅(II)粉末を用いた。
【0114】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表2に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し攪拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0115】
(比較例3)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)60重量部、メタクリル酸エチル(EMA)40重量部、溶剤としてテルピネオールを用い実施例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0116】
<導電性金属粒子の作製>
導電性金属粒子として、比較例1と同様の酸化銅(II)粉末を用いた。
【0117】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表2に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し攪拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0118】
(比較例4)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)80重量部、メタクリル酸メチル(MMA)20重量部、溶剤としてジエチレングリコールモノ(2-エチルヘキシル)エーテルを用い実施例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0119】
<導電性金属粒子の作製>
導線性金属粒子として、比較例1と同様の酸化銅(II)粉末を用いた。
【0120】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表2に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し攪拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0121】
(比較例5)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)80重量部、メタクリル酸メチル(MMA)20重量部、溶剤としてトルエンを用い実施例3と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0122】
<導電性金属粒子の作製>
導電性金属粒子として、比較例1と同様の酸化銅(II)粉末を用いた。
【0123】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表2に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し攪拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0124】
(比較例6)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)80重量部、メタクリル酸メチル(MMA)20重量部、溶剤としてジエチレングリコールモノ(2-エチルヘキシル)エーテルを用い実施例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0125】
<導電性金属粒子の作製>
導線性金属粒子として、実施例5と同様の銀粉末(Ag、Filgen社製、平均粒子径100nm)を用いた。
【0126】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表2に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し攪拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0127】
(実施例12)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)50重量部、メタクリル酸n-ブチル(nBMA)40重量部、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(エチレングリコール単位の数:9)10重量部、溶剤としてテルピネオールを用い実施例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0128】
<導電性金属粒子>
導電性金属粒子として、酸化銅(II)(CuO、日本イオン社製、平均粒子径100nm)を用いた。
【0129】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表3に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し攪拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0130】
(実施例13)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)80重量部、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(エチレングリコール単位の数:23)20重量部、溶剤としてブチルカルビトールを用い実施例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0131】
<導電性金属粒子>
導電性金属粒子として、Cu粉末(シグマアルドリッチ社製、平均粒子径25nm)を用いた。
【0132】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表3に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し攪拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0133】
(実施例14)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)70重量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)10重量部、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(エチレングリコール単位の数:4)20重量部、溶剤として酢酸ブチルを用い実施例3と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0134】
<導電性金属粒子>
導電性金属粒子として、銀粉末(Ag、Filgen社製、平均粒子径50nm)を用いた。
【0135】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表3に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し攪拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0136】
(比較例7)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)30重量部、メタクリル酸エチル(EMA)60重量部、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(エチレングリコール単位の数:2)10重量部、溶剤としてテキサノールを用い実施例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
【0137】
<導電性金属粒子>
導電性金属粒子として、銀粉末(Ag、Filgen社製、平均粒子径50nm)を用いた。
【0138】
<導電性ペースト組成物の作製>において、得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を表3に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し攪拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0139】
(実施例15)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>
撹拌機、冷却器、温度計、湯浴及び窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコを用意した。2Lセパラブルフラスコにメタクリル酸イソブチル(iBMA)50重量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)20重量部、メタクリル酸n-ブチル(nBMA)30重量部を加えた。更に、有機溶剤として酢酸ブチル10重量部とを混合し、モノマー混合液を得た。
【0140】
得られたモノマー混合液を窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより溶存酸素を除去して窒素ガスで置換し、攪拌しながら内温を80℃として、酢酸ブチルで希釈した重合開始剤溶液を加えた。また、重合中に重合開始剤溶液を数回添加した。なお、重合開始剤としては、ジラウリルパーオキサイドを用いた。
重合開始剤から7時間後、室温まで冷却して重合を終了させ、(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を得た。
得られた(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物を乾燥させ、テトラヒドロフラン(THF)中に樹脂濃度0.1重量%にて溶解させてカラムとしてSHODEX LF-804を用い、GPCによりポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、Mwは50万であった。
また、得られた(メタ)アクリル樹脂について、日本電子社製JMS-Q1500GC装置を用いて熱分解GC-MSにより成分含有量を確認した。
【0141】
<導電性金属粒子の作製>
導電性金属粒子として、酸化銅(I)(CuO、希少金属材料研究所社製、平均粒子径50nm)を用いた。
【0142】
<導電性ペースト組成物の作製>
上記(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物について、送風オーブンによって固形分測定を行い、樹脂濃度を確認した。
上記(メタ)アクリル樹脂を含有する組成物に表4に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加し撹拌して、導電性ペースト組成物を得た。
【0143】
<導電性シート及び積層サンプルの作製>
得られた導電性ペースト組成物を離形PETフィルム上にアプリケーターを用いて乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工し、100℃の送風オーブンで1時間乾燥させて導電性シートを得た。
得られた導電性シートを厚さ50μmのSiC基板に張り合わせ、離形PETフィルムを剥がして銅基板に張り合わせて、銅基板-導電性シート-SiC基板の積層体を得た。得られた積層体をプレス機によって100℃、3MPaにてプレスした後、窒素雰囲気下の焼成炉にて250℃で20分間焼成し、導電性シート内の有機物を熱分解させて、銅を焼結させた。その後、窒素雰囲気下で室温まで冷却し、積層サンプルを得た。
【0144】
(実施例16)
焼結助剤の種類を表4の通りに変更した以外は実施例15と同様にして、導電性ペースト組成物、導電性シート、積層サンプルを得た。
【0145】
(実施例17)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸イソブチル(iBMA)30重量部、メタクリル酸イソデシル(iDMA)40重量部、メタクリル酸メチル(MMA)30重量部を用い、表4に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加した以外は実施例15と同様にして、導電性ペースト組成物、導電性シート、積層サンプルを得た。
【0146】
(実施例18)
焼結助剤の種類を表4の通りに変更した以外は実施例17と同様にして、導電性ペースト組成物、導電性シート、積層サンプルを得た。
【0147】
(比較例8)
<(メタ)アクリル樹脂の作製>において、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)40重量部、メタクリル酸エチル(EMA)30重量部、メタクリル酸n-ブチル(nBMA)30重量部を用い、表4に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加した以外は実施例15と同様にして、導電性ペースト組成物、導電性シート、積層サンプルを得た。
【0148】
(比較例9)
表4に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加した以外は比較例8と同様にして、導電性ペースト組成物、導電性シート、積層サンプルを得た。
【0149】
(比較例10)
表4に記載の種類及び配合となるように導電性金属粒子、焼結助剤及び追加の溶剤を添加した以外は比較例8と同様にして、導電性ペースト組成物、導電性シート、積層サンプルを得た。
【0150】
【表1】
【0151】
【表2】
【0152】
【表3】
【0153】
【表4】
【0154】
<評価>
実施例及び比較例で得られた導電性ペースト組成物について以下の評価を行った。結果を表5~7に示した。
【0155】
(1)ペースト貯蔵安定性
実施例1~14、比較例1~7で得られた導電性ペースト組成物を室温で1日間養生し、ペースト組成物の分散状態を確認し、以下の基準で評価した。
なお、ペースト貯蔵安定性に優れる導電性ペースト組成物は、印刷性に優れるといえる。
〇:分散状態に変化なし
△:透明な上澄み層があり、容器底には金属の沈殿層はなし
×:容器底に金属の沈殿層あり
【0156】
(2)残留炭素
(2-1)導電性シートの作製
実施例1~14、比較例1~7で得られた導電性ペースト組成物を離型PETフィルム上にアプリケーターを用いて乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工し、150℃の送風オーブンで1時間乾燥させて、導電性シートを得た。
【0157】
(2-2)残留炭素
得られた導電性シートを窒素ガスを還流させた電気炉で280℃の条件で焼成し、30分後オーブンから取り出して、窒素雰囲気下で冷却し、焼成後導電性シート(焼成体)を得た。得られた焼成体について、炭素硫黄分析装置(エルトラ社製「CA-i」)を用いて残留炭素量を測定し、以下の基準で評価した。
なお、残留炭素量が少ないと低温分解性に優れた導電性ペースト組成物であるといえる。
〇:残留炭素量が20ppm以下
×:残留炭素量が20ppm超
【0158】
(3)体積抵抗率
「(2)残留炭素」で得られた焼結体について、三菱電機アナリテック社製「ロレスタAX-MCP-T370」を用いて体積抵抗率を測定し、以下の基準で評価した。
なお、体積抵抗率が低いと、導電性金属粒子の酸化を充分に防止できているといえる。
〇:体積抵抗率が10μΩ・cm以上50μΩ・cm以下
△:体積抵抗率が50μΩ・cm超100μΩ・cm以下
×:体積抵抗率が100μΩ・cm超
【0159】
(4)酸化度
「(2)残留炭素」で得られた焼結体について、顕微ラマン分光装置(東京インスツルメンツ社製「Nanofinder」)を用いてスペクトルを確認し、以下の基準で評価した。
なお、実施例1~4、6及び10~12では、導電性金属粒子として酸化銅(I)粉末(CuO)又は酸化銅(II)粉末(CuO)を用いたが、CuO、CuOのいずれの散乱バンドもなく、窒素雰囲気下での焼成により酸化銅が銅になったと考えられる。また、酸化銅や酸化鉄の散乱バンドがないことは、導電性金属粒子の表面酸化を充分に抑制できていることを示すといえる。
〇:200cm-1付近の酸化銅の散乱バンドなし、かつ、700cm-1付近の酸化銀の散乱バンドなし
×:200cm-1付近の酸化銅の散乱バンドあり、又は、700cm-1付近の酸化銀の散乱バンドあり
【0160】
(5)分解率
実施例1~14、比較例1~7で得られた導電性ペースト組成物を離型PETフィルム上にアプリケーターを用いて乾燥後の厚さが300μmとなるように塗工し、送風オーブンにて120℃の条件で1時間乾燥させて成形体を得た。得られた成形体の重量WAを測定した。得られた成形体について、熱重量示差熱同時測定装置(TG-DTA)を用いて、窒素雰囲気下で昇温速度10℃/分で常温から280℃まで昇温した後、1時間保持し、重量WBを測定した。WA、WB及び成形体中の無機粒子の含有量WCに基づく、下記式に基づいて分解率を算出した。
分解率(重量%)=(WA-WB)/(WA-WC)×100
【0161】
(6)シート貯蔵安定性
実施例15~18、比較例8~10で得られた導電性シートを室温で1日間養生し、シートの分散状態を確認し、以下の基準で評価した。
〇:分散状態に変化なし
×:有機物が分離し、析出している
【0162】
(7)体積抵抗率
実施例15~18、比較例8~10で得られた積層サンプルについて、三菱電機アナリテック社製「ロレスタAX-MCP-T370」を用いて体積抵抗率を測定し、以下の基準で評価した。
なお、体積抵抗率が低いと、導電性金属粒子の酸化を充分に防止できているといえる。
〇:体積抵抗率が10μΩ・cm以上100μΩ・cm以下
×:体積抵抗率が100μΩ・cm超
【0163】
(8)酸化度
実施例15~18、比較例8~10で得られた積層サンプルについて、顕微ラマン分光装置(東京インスツルメンツ社製「Nanofinder」)を用いてスペクトルを確認し、以下の基準で評価した。
〇:200cm-1付近の酸化銅の散乱バンドなし
×:200cm-1付近の酸化銅の散乱バンドあり
【0164】
(9)断面観察
実施例15~18、比較例8~10で得られた積層サンプルについて、走査型電子顕微鏡を用いて接合部分の断面を確認し、以下の基準で評価した。
〇:断面に大きな亀裂、ボイドが見られない
×:断面に大きな亀裂、ボイドが見られる
実施例15~18は何れも良好な結果が得られた。一方、比較例8及び9では銅の焼結が進んでおらず、断面が歪で接合面に亀裂が見られた。比較例10では添加したマロン酸が分離しており、ボイドが見られた。
【0165】
【表5】
【0166】
【表6】
【0167】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明によれば、低温分解性に優れ、はんだリフロー相当の280℃での脱脂が可能であり、導電性金属粒子の酸化を抑制することができ、印刷性にも優れる導電性ペースト組成物を提供できる。また、該導電性ペースト組成物を用いた導電性シートの製造方法、導電性シート、電子部品の製造方法を提供できる。