(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】車両の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステム
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/00 20060101AFI20240828BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20240828BHJP
H05B 47/125 20200101ALI20240828BHJP
H05B 47/19 20200101ALI20240828BHJP
【FI】
B60Q1/00
B60Q1/04 E
H05B47/125
H05B47/19
(21)【出願番号】P 2023578939
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2022026674
(87)【国際公開番号】W WO2024009381
(87)【国際公開日】2024-01-11
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 穣
(72)【発明者】
【氏名】山崎 研太郎
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 聡
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-221414(JP,A)
【文献】国際公開第2012/086053(WO,A1)
【文献】特開2014-174091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00
B60Q 1/04
H05B 47/125
H05B 47/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対応する仮想車両をドライバの操作の下で仮想空間を走行させる際に前記車両に設けられる前灯制御装置を動作させる、評価用シミュレーションシステムであって、
前記ドライバに対して前記仮想空間についての走行中の前記仮想車両からの視野画像を表示するドライバ用モニタと、
前記ドライバにより操作される操作部材と、
前記仮想車両のモデル制御を実行することにより、前記操作部材に対する前記ドライバの操作に基づく前記仮想車両の動きを演算することができるモデル演算部と、
前記モデル演算部により演算される前記仮想車両の動きに基づく前記仮想車両の前記仮想空間での移動後の位置および向きを少なくとも演算して、移動した後の前記視野画像を生成するモニタ画像生成部と、
前記仮想車両に設けられる車外カメラに対して、前記モニタ画像生成部の生成に基づく画像を表示するカメラモジュールと、
前記車外カメラの撮像画像に基づいて、前記仮想空間を走行中の前記仮想車両の周囲に存在する配光制御の仮想的な対象物を抽出して、前記仮想的な対象物の情報を前記前灯制御装置へ出力して前灯制御装置を動作させる検出制御装置と、
を有し、
前記前灯制御装置は、独立して制御可能な複数の光源を有するフロントライト装置の点灯を、前記仮想的な対象物の情報に応じて制御するものであり、
前記モデル演算部は、さらに、
前記仮想車両のモデル制御を実行することにより前記前灯制御装置の制御出力情報を生成し、
前記モニタ画像生成部は、
前記モデル演算部が演算した前記前灯制御装置の制御出力情報を取得して、前記前灯制御装置に照らされた前記視野画像を生成して前記ドライバ用モニタに表示させる、ことができる、
車両の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステム。
【請求項2】
前記モニタ画像生成部は、
前記前灯制御装置の制御の下でのフロントライト装置の投光とともに自然光により照らされている前記仮想空間についての前記視野画像を生成する、
請求項1記載の、車両の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステム。
【請求項3】
前記モニタ画像生成部は、
前記仮想空間を照らす前記自然光を調光して、少なくとも薄暮での前記視野画像を生成することができる、
請求項2記載の、車両の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステム。
【請求項4】
前記モニタ画像生成部は、
前記仮想空間に存在する前記仮想的な対象物の照度を、前記ドライバ用モニタに表示させる前記視野画像の輝度に基づいて演算する、
請求項1から3のいずれか一項記載の、車両の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステム。
【請求項5】
前記モニタ画像生成部は、
前記仮想空間に存在する前記仮想的な対象物の照度を、前記ドライバ用モニタに表示させる前記視野画像の輝度に基づいて、前記仮想的な対象物を複数に分割する部分ごとに、演算する、
請求項4記載の、車両の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステム。
【請求項6】
前記モニタ画像生成部は、
前記ドライバ用モニタに表示させる前記視野画像を複数の区画に分割して、前記視野画像の各区画についての照度を、前記ドライバ用モニタに表示させる前記視野画像の輝度に基づいて演算し、
前記仮想空間に存在する前記仮想的な対象物の照度を、前記視野画像において前記仮想的な対象物を含んでいる複数の前記区画の照度に基づいて演算する、
請求項5記載の、車両の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステム。
【請求項7】
前記車両の前記前灯制御装置および前記検出制御装置を含む複数の制御装置を接続することができる車両通信ネットワークと、前記モデル演算部および前記モニタ画像生成部とが接続される情報通信ネットワークとに接続される中継装置、を有し、
前記前灯制御装置は、前記車両通信ネットワークに接続され、
前記中継装置は、前記モデル演算部または前記モニタ画像生成部と前記前灯制御装置との間で通信する情報を中継する、
請求項6記載の、車両の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステム。
【請求項8】
前記モニタ画像生成部は、
前記前灯制御装置の制御出力による照度を含まない走行環境画像を生成して、前記モデル演算部へ出力し、
前記モデル演算部は、
前記走行環境画像を用いて前記仮想車両のモデル制御を実行することにより前記前灯制御装置の制御出力情報を生成する、
請求項7記載の、車両の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステム。
【請求項9】
前記モニタ画像生成部は、
前記視野画像を生成するに先立って、対象物を含む仮想空間を生成する処理を実行し、
前記仮想空間において移動する仮想的な対象物の位置情報を生成し、
前記モデル演算部は、
前記モニタ画像生成部により生成される前記仮想的な対象物の位置情報を用いて前記仮想車両のモデル制御を実行することにより前記前灯制御装置の制御入力情報および制御出力情報を生成する、
請求項7記載の、車両の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車といった車両では、フロントライト装置を用いて、車両の進行方向である前側へ光を照射している。
そして、車両では、このようなフロントライト装置の点灯を、車両に設けられる前灯制御装置により、走行環境などに応じて適応的に制御することが提案され、その一部が実用化されつつある。
たとえば、特許文献1は、光の照射範囲を、対向車のドライバや歩行者の幻惑を抑制するように制御可能なフロントライト装置を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両に設けられるフロントライト装置は、自動車の走行安全性をさらに高めることが求められている。
このため、たとえば、車両のフロントライト装置では、たとえば遠方へ照射するハイビームのために複数の光源を用いることが考えられ始めている。このように高度対応のフロントライト装置であれば、たとえば複数の光源の一部を消灯して、対向車や歩行者といった対象物に対して強い光を照射しないようにしながら、それ以外の照射範囲については所望の強い光を照射して車両のドライバの視認性を確保できるようになると考えられる。車両の走行安全性が高まる。
【0005】
その一方で、上述したような高度対応のフロントライト装置についての前灯制御装置の開発には、多大な労力が求められると考えられる。
そして、前灯制御装置は、高度対応のフロントライト装置の複数の光源の点灯制御において、その内容、開始タイミング、終了タイミング、制御の度合い、などを、光源ごとに制御することが求められる。
前灯制御装置は、一般的に、自動車に設けられる他の制御装置と同様にCPUがプログラムを実行することにより、フロントライト装置の光の照射を制御している。
前灯制御装置は、自動車の他の制御装置と連携して、その制御動作を所望のとおりに実行することが求められる。前灯制御装置は、たとえば車外カメラの撮像画像を処理する検出制御装置と連携して、所望の制御を実行することが求められる。
【0006】
また、自動車といった車両では、多数の制御装置が実装されることから、たとえば検出系の制御装置と制御を実行する制御装置というように、各制御装置が基本的に別々のグループにより開発されることが多い。この場合、車両の開発は、その車両についての各社の設計思想、規格、社会要請などに応じて、各制御装置の機能や仕様が割り当てられ、その機能や仕様に対して各制御装置の制御の内容が合わせ込まれる。機能や仕様を開発した後、その開発した機能や仕様について設計思想などへの適合性を検証する必要がある。また、開発した機能や仕様に基づいて、プログラムおよび設定データを開発し、検証する必要がある。
このように車両の設計では、たとえば検出制御装置の開発が完了しないと、前灯制御装置の作り込みが進まないことになる。前灯制御装置の開発は、検出制御装置の開発と同時に進めることが難しくなる。
【0007】
しかも、前灯制御装置のプログラムおよび設定データの完成度を高めようとする場合、その検証および修正に多大な作業工数が生じ易い。
特に、自動車といった車両では、前灯制御装置だけでなく、それ以外にも多数の制御装置が用いられる。そして、これらの前灯制御装置を含む多数の制御装置は、それらが設けられる車両において良好に協働することが求められる。このような高度で複雑な制御系に用いられる前灯制御装置のプログラムおよび設定データについて、上述したような高度化を図りつつ、その完成度を高めようとする場合、その開発には、従来での前灯制御装置の開発のものとは比べにならないほどの作業が発生する可能性がある。また、検証および修正の回数も、飛躍的に増大する可能性がある。
【0008】
このように車両のフロントライト装置を制御するために車両に設けられる前灯制御装置では、その開発の労力を削減できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る車両の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステムは、車両に対応する仮想車両をドライバの操作の下で仮想空間を走行させる際に前記車両に設けられる前灯制御装置を動作させる、評価用シミュレーションシステムであって、前記ドライバに対して前記仮想空間についての走行中の前記仮想車両からの視野画像を表示するドライバ用モニタと、前記ドライバにより操作される操作部材と、前記仮想車両のモデル制御を実行することにより、前記操作部材に対する前記ドライバの操作に基づく前記仮想車両の動きを演算することができるモデル演算部と、前記モデル演算部により演算される前記仮想車両の動きに基づく前記仮想車両の前記仮想空間での移動後の位置および向きを少なくとも演算して、移動した後の前記視野画像を生成するモニタ画像生成部と、前記仮想車両に設けられる車外カメラに対して、前記モニタ画像生成部の生成に基づく画像を表示するカメラモジュールと、前記車外カメラの撮像画像に基づいて、前記仮想空間を走行中の前記仮想車両の周囲に存在する配光制御の仮想的な対象物を抽出して、前記仮想的な対象物の情報を前記前灯制御装置へ出力して前灯制御装置を動作させる検出制御装置と、を有し、前記前灯制御装置は、独立して制御可能な複数の光源を有するフロントライト装置の点灯を、前記仮想的な対象物の情報に応じて制御するものであり、前記モデル演算部は、さらに、前記仮想車両のモデル制御を実行することにより前記前灯制御装置の制御出力情報を生成し、前記モニタ画像生成部は、前記モデル演算部が演算した前記前灯制御装置の制御出力情報を取得して、前記前灯制御装置に照らされた前記視野画像を生成して前記ドライバ用モニタに表示させる、ことができる、ものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、車両に対応する仮想車両をドライバの操作の下で仮想空間を走行させる際に車両に設けられる前灯制御装置を動作させる。これにより、本発明では、前灯制御装置を、仮想車両がドライバの操作の下で仮想空間を走行する制御下で、車両の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションを実行することができる。このような評価用シミュレーションシステムを、前灯制御装置の制御の開発に活用することにより、前灯制御装置の制御の完成度を高めることができる。しかも、その評価用シミュレーションシステムは、仮想車両がドライバの操作の下で仮想空間を走行する制御下でのものであるため、実際にその前灯制御装置を車両に設けた場合での動作確認や検証の結果に近い確からしいものになることが期待できる。本発明の評価用シミュレーションシステムを用いることにより、車両のフロントライト装置を制御するために車両に設けられる前灯制御装置の開発の労力は、効果的に削減され得る。
しかも、車両の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステムに用いられる検出制御装置は、カメラモジュールでの車外カメラの撮像画像に基づいて、仮想空間を走行中の仮想車両の周囲に存在する配光制御の仮想的な対象物を抽出して、仮想的な対象物の情報を前灯制御装置へ出力して前灯制御装置を動作させる。本発明の評価用シミュレーションシステムでは、前灯制御装置がそれとともに車両に設けられる検出制御装置とともに車両通信ネットワークに接続されて連携している状態において、その制御を実行することができる。本発明の評価用シミュレーションシステムは、前灯制御装置の単独での動作確認や検証をすることができるだけでなく、前灯制御装置と検出制御装置とが連携する制御についても動作確認や検証をすることができる。前灯制御装置の制御について、他の制御装置との連携を含めて、実車に近い環境下で、動作を確認し、検証することができる。
また、モデル演算部は、操作部材に対するドライバの操作に基づく仮想車両の動きを演算することに加えて、さらに、仮想車両のモデル制御を実行することにより前灯制御装置の制御出力情報を生成する。モデル演算部は、前灯制御装置および検出制御装置とは別に、前灯制御装置が生成する制御出力情報を生成する。モニタ画像生成部は、モデル演算部が演算した前灯制御装置の制御出力情報を取得して、前灯制御装置に照らされた視野画像を生成してドライバ用モニタに表示させる、ことができる。ドライバは、自らの操作に追従するように変化するドライバ用モニタの視野画像により、実際の車両を運転している感覚で、評価用シミュレーションシステムの操作部材を違和感なく操作することができる。
これに対し、仮にたとえばモニタ画像生成部が、開発中の前灯制御装置の制御出力を取得して、前灯制御装置に照らされた視野画像を生成する場合、モニタ画像生成部は、開発中の前灯制御装置からの制御出力が得られないと、視野画像を生成することができない。また、前灯制御装置から制御出力を取得する場合、制御遅れが大きくなる。本発明では、モデル演算部が演算した前灯制御装置の制御出力情報を取得しているため、このようなドライバを含む走行制御ループのリアルタイム的なループ処理を阻害してしまうことはない。評価用シミュレーションシステムは、前灯制御装置の制御の適否にかかわらず、ドライバの操作の下で仮想車両を仮想空間で走行させて、その走行中に前灯制御装置に制御を実行させることができる。評価用シミュレーションシステムは、そのリアルタイム的なシミュレーションを、前灯制御の遅延に影響されることなく実行することができる。
このようなドライバの操作の下で車両に対応する仮想車両を仮想空間で走行させる評価用シミュレーションを用いることにより、車両のフロントライト装置を制御するために車両に設けられる前灯制御装置の開発の労力が削減されることが期待できる。フロントライト装置が、独立して制御可能な複数の光源を有するものであるために、前灯制御装置にあっては複雑な制御を要求されることになるとしても、本発明を利用することにより、その制御の開発の労力を削減することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、ドライバの操作により走行することができる自動車の走行環境の一例の説明図である。
【
図2】
図2は、
図1の自動車の前灯制御装置を含む制御系の説明図である。
【
図3】
図3は、自動車の各種の制御装置の基本的なハードウェア構成の説明図である。
【
図4】
図4は、前灯制御装置についての制御の入出力関係の一例の説明図である。
【
図5】
図5は、前灯制御装置により制御されるフロントライト装置の具体的な構成の一例の説明図である。
【
図6】
図6は、前灯制御装置のCPUにより実行される、前灯防眩制御の基本的なフローチャートである。
【
図7】
図7は、ドライバのための第一の視野画像の説明図である。
【
図8】
図8は、ドライバのための第二の視野画像の説明図である。
【
図9】
図9は、自動車の開発手順の一例の説明図である。
【
図10】
図10は、本発明の第一実施形態に係る、自動車の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステムの構成図である。
【
図11】
図11は、ドライバの操作により仮想空間を走行する仮想自動車の走行環境の一例の説明図である。
【
図12】
図12は、
図10の評価用シミュレーションシステムにおいて視野画像に先立って走行環境画像を生成するための処理のタイミングチャートである。
【
図13】
図13は、自然光を含む、ドライバのための第三の視野画像の説明図である。
【
図14】
図14は、自然光を含む、ドライバのための第四の視野画像の説明図である。
【
図15】
図15は、本発明の第二実施形態に係る、自動車の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステムの構成図である。
【
図16】
図16は、
図15の評価用シミュレーションシステムにおいて視野画像を生成するまでの制御のタイミングチャートである。
【
図17】
図17は、本発明の第三実施形態に係る評価用シミュレーションシステムでの対象物の照度を得る処理を説明するための、ドライバのための第五の視野画像の説明図である。
【
図18】
図18は、本発明の第四実施形態に係る評価用シミュレーションシステムでの対象物の照度を得る処理についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0013】
[第一実施形態]
図1は、ドライバの操作により走行することができる自動車1の走行環境の一例の説明図である。
図1の自動車1は、車両の一例である。車両には、この他にもたとえば、トラックなどの大型自動車、モータサイクル、パーソナルモビリティ、がある。
【0014】
図1において、自動車1は、直線状の道路を、道路に沿ってまっすぐに走行している。道路は、歩行者3、他の自動車なども使用するものである。この場合、自動車1の前へ歩行者3が出てきたり、対向車2が寄ってきたり、する可能性がある。このような状態が生じると、自動車1のドライバは、それらの走行障害に対応するように自動車1の走行を操作する必要がある。なお、自動車1は、自動運転により走行可能なものもある。このような自動運転により走行可能な自動車1であっても、たとえば緊急時などにおいては乗員がドライバとして自動車1を走行できるようにする必要性がある。このように、自動運転により走行可能な自動車1であっても、同様の回避制御を自動的にまたはドライバの操作に基づいて実行する必要がある。
また、
図1には、自動車1のフロントライト装置33による光の照射範囲として、左ハイビームの照射範囲4、右ハイビームの照射範囲5、左ロービームの照射範囲6、右ロービームの照射範囲7、が示されている。このような照射がなされることにより、自動車1のドライバは、夜間においても自動車1が進行する方向の走行環境を視認でき、上述したような歩行者3や対向車2がいる場合にはそれに対する回避操作をすることができる。自動車1の走行安全性は、高まる。
【0015】
図2は、
図1の自動車1の前灯制御装置17を含む制御系10の説明図である。
図2の自動車1に設けられる制御系10は、複数の制御装置と、複数の制御装置が接続される車両通信ネットワーク18と、を有する。
【0016】
車両通信ネットワーク18には、たとえば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、といった自動車1のための情報通信ネットワーク96でよい。このような車両通信ネットワーク18は、一般的に、複数のバスケーブルと、複数のバスケーブルがバス接続されるセントラルゲートウェイ(CGW)と、で構成される。複数の制御装置は、複数のバスケーブルに分散して接続される。各制御装置は、バスケーブルへ情報を含むパケットを送出し、バスケーブルから自身宛てのパケットを受入する。セントラルゲートウェイは、パケットの宛先に基づいて、複数のバスケーブルの間でのルーティング処理を実行する。このような車両通信ネットワーク18の制御により、自動車1に設けられる複数の制御装置は、各々の制御を実行しながら、必要な情報を相互に送受することができる。自動車1に設けられる複数の制御装置は、協働して自動車1の走行などを制御することができる。
そして、
図2には、複数の制御装置として、操作制御装置11、走行制御装置12、駆動制御装置13、制動制御装置14、操舵制御装置15、検出制御装置16、前灯制御装置17、が例示されている。自動車1には、この他にもたとえば、車内監視制御装置、空調制御装置、ランプ制御装置、などが設けられてよい。また、各制御装置は、たとえば制御装置の機能や制御装置に接続されるデバイスごとに、複数の制御装置に分けて、自動車1に設けられてもよい。
【0017】
操作制御装置11には、たとえば、ステアリングホイール21、アクセルペダル22、ブレーキペダル23、シフトレバ24、タッチパネル25、が接続される。操作制御装置11には、それ以外のドライバにより操作される操作部材が接続されてよい。タッチパネル25には、たとえばフロントライト装置33の動作を、点灯と消灯との間で切り替える不図示の操作ボタンなどが表示されてよい。操作制御装置11は、各操作部材の作動を制御し、各操作部材についてのドライバによる操作入力を取得する。操作制御装置11は、操作入力の情報を、車両通信ネットワーク18を通じて、たとえば走行制御装置12へ送出する。
【0018】
走行制御装置12は、自動車1の走行を制御する。走行制御装置12は、操作制御装置11からの操作入力の情報を受入すると、ドライバによる操作に応じた制御量を生成し、車両通信ネットワーク18を通じて、たとえば駆動制御装置13、制動制御装置14、または操舵制御装置15へ送出する。走行制御装置12は、たとえばブレーキペダル23の操作量に応じた減速についての制御量を生成して、車両通信ネットワーク18を通じて制動制御装置14へ送出してよい。
なお、走行制御装置12は、ドライバによる操作量に対応する制御量を生成して、ドライバによる操作量を調整した制御量を生成して、もよい。後者の場合、ドライバの運転を調整により支援することができる。また、走行制御装置12は、ドライバの操作によらずに制御量を生成して送出してもよい。この場合、走行制御装置12は、自動運転により自動車1を走行させることができる。
【0019】
駆動制御装置13には、自動車1を加速させるためのエンジン26、トランスミッション27などが接続される。駆動制御装置13は、たとえばアクセルペダル22の操作に応じた加速についての制御量を受入すると、その制御量に対応するようにエンジン26の動作を制御する。
【0020】
制動制御装置14には、自動車1を減速させるためのブレーキ装置28が接続される。制動制御装置14は、たとえばブレーキペダル23の操作に応じた減速についての制御量を受入すると、その制御量に対応するようにブレーキ装置28の動作を制御する。
【0021】
操舵制御装置15には、自動車1の進行方向を維持または変化させるための操舵装置29が接続される。操舵制御装置15は、たとえばステアリングホイール21の操作に応じた操舵についての制御量を受入すると、その制御量に対応するように操舵装置29の動作を制御する。
【0022】
前灯制御装置17には、フロントライト装置33が接続される。フロントライト装置33は、自動車1の前部において前向きに設けられて、自動車1の前側へ光を照射する。フロントライト装置33は、基本的に、ハイビーム用の光源と、ロービーム用の光源と、を有する。
そして、前灯制御装置17は、たとえば操作制御装置11から取得する操作入力の情報に基づいて、フロントライト装置33の点灯、消灯、などの作動状態を制御してよい。
また、前灯制御装置17は、フロントライト装置33に設けられる複数の光源について、光源ごとに点灯、消灯、を制御してもよい。
また、前灯制御装置17は、フロントライト装置33に設けられる各光源について、光源ごとに向き、光量、を制御してもよい。
前灯制御装置17の制御内容は、それが制御するデバイスであるフロントライト装置33の機能や性能に応じて異なる。
【0023】
検出制御装置16には、自動車1に設けられて自動車1の走行の状態や走行環境などを検出するための複数の車載センサが接続される。複数の車載センサには、たとえば、車外カメラ30、Lidar31、レーザ装置32、がある。
車外カメラ30は、自動車1の周囲の走行環境を撮像する。車外カメラ30は、少なくとも自動車1が走行する方向である、自動車1の前側を撮像することが好ましい。複数の車外カメラ30が、自動車1の全周を分割して撮像してもよい。また、車外カメラ30は、単眼カメラであっても、たとえばステレオカメラのような複眼カメラであってもよい。ステレオカメラでは、2つのカメラの配置が規定される。このため、ステレオカメラは、2つのカメラの配置差に基づく視差に基づいて、撮像されている対象物についての自車から相対的な距離および方向の情報を演算することが可能である。
Lidar31は、可視光より高い周波数の出力波で自動車1の周囲を走査して、自動車1の周囲の走行環境を示す空間情報を生成する。
レーザ装置32は、自動車1の前方へレーザ光を出力して、自動車1の前方にある物体までの距離を計測する。レーザ装置32は、自動車1の前側をレーザ光で走査してもよい。
検出制御装置16は、これらの車載センサの検出結果の情報、またはそれに基づいて生成した二次的な検出結果の情報を、車両通信ネットワーク18を通じて、たとえば走行制御装置12、前灯制御装置17などへ送出する。検出制御装置16は、たとえば車外カメラ30などによる車外の検出結果を解析して、自動車1の前側などの周囲にいる歩行者3、先行車、対向車2、などについての二次的な検出結果の情報を生成してよい。この場合の二次的な検出結果の情報には、自動車1の周囲にいる対象物について判断した対象物の種類(属性)、相対距離、相対方向などの情報が含まれるとよい。ここで、対象物の種類(属性)の情報は、たとえば歩行者、車両などの対象物そのものの属性の情報でよい。また、車両は、同一車線の先行車、他の車線の並走車、対向車などに分類された情報であってもよい。これにより、走行制御装置12は、自動車1の状態や走行環境の状態を、走行中にリアルタイムに取得して、歩行者3などの対象物との干渉を回避するように、自動車1の走行を制御することができる。
【0024】
図3は、自動車1の各種の制御装置40の基本的なハードウェア構成の説明図である。
図2に示す各種の制御装置40、たとえば検出制御装置16や前灯制御装置17は、
図3のようなハードウェア構成を備えている。
図3の制御装置40は、通信ポート41、入出力ポート43、タイマ42、メモリ44、CPU(Central Processing Unit)45、および、これらが接続される内部バス46、を有する。
【0025】
通信ポート41は、上述した車両通信ネットワーク18に接続される。通信ポート41は、車両通信ネットワーク18を通じた他の制御装置との間でパケットを送受することにより、情報を送受する。
【0026】
入出力ポート43には、制御装置40に接続される各種のデバイス47が接続される。たとえば検出制御装置16では、車外カメラ30などのデバイス47が、入出力ポート43に接続される。また、前灯制御装置17では、フロントライト装置33が、デバイス47として、出力ポート43に接続される。
また、入出力ポート43には、特段の図示をしないが、信号線を用いて、他の制御装置が必要に応じて接続されてよい。この場合、
図3の制御装置40は、入出力ポート43を通じて他の制御装置との間で、遅延量が変動しない高速な情報の送受が可能になる。
【0027】
タイマ42は、時刻、経過時間、などを計測する。タイマ42の時刻は、不図示のGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機が生成する時刻や、セントラルゲートウェイの時刻により校正されてよい。
【0028】
メモリ44は、CPU45が実行する制御プログラム48、およびCPU45が制御プログラム48を実行する際に使用する制御データ49、などが記録される。制御データ49には、制御に使用する各種の設定データ、パラメータなどの情報が含まれてよい。これらの制御プログラム48および制御データ49は、開発においてコーディングされて作成されるものである。また、メモリ44は、CPU45の制御ログなどが記録されてもよい。メモリ44は、半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、などで構成されてよい。半導体メモリ44には、揮発性のものと、不揮発性のものとがある。
【0029】
CPU45は、メモリ44に記録される制御プログラム48を読み込んで実行する。これにより、制御装置40には、制御部が実現される。制御装置40の制御部としてのCPU45は、制御装置40の全体動作を制御し、制御装置40に接続されているデバイス47の動作を制御する。
【0030】
図4は、前灯制御装置17についての制御の入出力関係の一例の説明図である。
図4には、車外カメラ30、検出制御装置16、前灯制御装置17、フロントライト装置33、が示されている。
そして、検出制御装置16には、CPU45が実行する入出力制御プログラム52と、CPU45が実行する制御プログラム51と、が示されている。また、制御データは、制御プログラム51に含まれるものとして図示している。
また、前灯制御装置17には、CPU45が実行する入出力制御プログラム54と、CPU45が実行する制御プログラム53と、が示されている。また、制御データは、制御プログラム53に含まれるものとして図示している。
【0031】
この例の場合、車外カメラ30は、自動車1の前側を撮像した撮像画像を、検出制御装置16の入出力ポート43へ出力する。検出制御装置16では、CPU45が入出力制御プログラム52を実行することにより、撮像画像を取得する。また、CPU45が制御プログラム51を実行することにより、撮像画像を解析して、自動車1の前側にいる対象物の種類(属性)、相対距離、相対方向の情報を生成し、前灯制御装置17へ送出する。
前灯制御装置17では、CPU45が制御プログラム53を実行することにより、自動車1の前側にいる対象物の情報を、制御入力情報として受入し、フロントライト装置33の制御出力情報を生成する。また、検出制御装置16では、CPU45が入出力制御プログラム54を実行することにより、生成された制御出力情報に基づく制御信号を、入出力ポート43から出力する。フロントライト装置33は、入出力ポート43から入力される制御信号に基づいて、フロントライト装置33に設けられる複数の光源の点灯、消灯、光量、向きなどを制御する。
【0032】
図5は、前灯制御装置17により制御されるフロントライト装置33の具体的な構成の一例の説明図である。
図5のフロントライト装置33は、右フロントランプモジュール61、左フロントランプモジュール62、右発光制御部63、左発光制御部64、アクチュエータ65、を有する。
【0033】
右フロントランプモジュール61は、ロービーム用光源71、複数のハイビーム用光源72、を有する。
左フロントランプモジュール62は、ロービーム用光源71、複数のハイビーム用光源72、を有する。
右発光制御部63は、前灯制御装置17がフロントライト装置33へ出力する制御出力情報にしたがって、右フロントランプモジュール61に設けられる複数の光源71,72の消灯、発光、光量を、光源ごとに個別に制御する。
左発光制御部64は、前灯制御装置17がフロントライト装置33へ出力する制御出力情報にしたがって、左フロントランプモジュール62に設けられる複数の光源71,72の消灯、発光、光量を、光源ごとに個別に制御する。
アクチュエータ65は、右フロントランプモジュール61に設けられる複数の光源71,72の各々の向きと、左フロントランプモジュール62に設けられる複数の光源71,72の各々の向きを、光源ごとに個別に制御する。
このようなフロントライト装置33は、前灯制御装置17が生成して出力する制御出力情報にしたがって、フロントライト装置33に設けられる複数の光源71,72を、光源ごとに個別に制御することができる。
【0034】
そして、
図5には、フロントライト装置33の複数のハイビーム用光源72の光が照射される範囲73が、ハイビーム用光源72ごとの点線円により図示されている。
たとえば、フロントライト装置33の複数のすべてのハイビーム用光源72を点灯している場合、複数の照射範囲73のすべてに対して光が照射され、広い照射範囲が得られる。
その状態から図中左端のハイビーム用光源72を消灯すると、照射範囲は、図中にハッチングを付していない複数の照射範囲73によるものに切り替わる。
このように前灯制御装置17は、フロントライト装置33の複数のハイビーム用光源72の動作状態を制御することにより、フロントライト装置33による光の照射範囲73を制御することができる。前灯制御装置17は、フロントライト装置33を用いて、自動車1の進行方向である前側へ光を照射することができる。
【0035】
図6は、前灯制御装置17のCPU45により実行される、前灯防眩制御の基本的なフローチャートである。
前灯制御装置17のCPU45は、フロントライト装置33の複数のハイビーム用光源72を点灯させて走行している場合に、歩行者3、対向車2のドライバ、先行車のドライバなどの防眩を抑制するために、
図6の前灯防眩制御を繰り返しに実行してよい。
そして、
図6の前灯防眩制御は、前灯制御装置17のCPU45が実行する制御プログラムの一部として、前灯制御装置17のメモリ44に記録されている。
【0036】
ステップST11において、前灯制御装置17のCPU45は、自動車1の前側環境情報を取得する。
図4に示すように、検出制御装置16は、たとえば車外カメラ30の撮像画像を解析し、その結果である自車の前側にいる対象物の種類(属性)、相対距離、相対方向の情報を前灯制御装置17へ送出している。前灯制御装置17のCPU45は、このような検出制御装置16からの制御入力情報を、自動車1の前側環境情報として取得してよい。
【0037】
ステップST12において、前灯制御装置17のCPU45は、ステップST11で取得した前側環境情報に基づいて、フロントライト装置33の複数のハイビーム用光源72の照射範囲に、防眩制御の対象物がいるか否かを判断する。ここで、防眩制御の対象物は、たとえば歩行者3の属性を有する対象物、対向車2の属性を有する対象物、先行車の属性を有する対象物、でよい。防眩制御の対象物がいる場合、CPU45は、処理をステップST13へ進める。防眩制御の対象物がいない場合、CPU45は、処理をステップST14へ進める。
【0038】
ステップST13において、前灯制御装置17のCPU45は、照射範囲にいる防眩制御の対象物への光の照射を抑制するために、防眩制御を開始する。CPU45は、たとえば、対象物へ光を照射しているハイビーム用光源72を消灯または減光するとともにその他のハイビーム用光源72については点灯を維持する制御出力情報を生成し、フロントライト装置33へ出力する。
これにより、フロントライト装置33は、防眩制御の対象物へ光を照射しないようにしながら、その他のハイビーム用光源72を点灯させることができる。その後、CPU45は、本制御を終了する。
【0039】
ステップST14において、前灯制御装置17のCPU45は、照射範囲には防眩制御の対象物が存在しないことから、防眩制御を終了するための処理を実行する。CPU45は、たとえば、すべてのハイビーム用光源72を点灯させる制御出力情報を生成し、フロントライト装置33へ出力する。
これにより、フロントライト装置33は、すべてのハイビーム用光源72を点灯させることができる。その後、CPU45は、本制御を終了する。
【0040】
図7は、ドライバのための第一の視野画像110の説明図である。
図8は、ドライバのための第二の視野画像110の説明図である。
視野画像110とは、仮想空間を走行する自動車1(仮想自動車120)のドライバに視認させるための、自動車1から見た自動車1の前方を含む周囲の視野画像110である。
自動車1が実際の道路を走行する場合においても、自動車1のドライバは、フロントライト装置33を点灯させている場合に、自動車1の車内から、
図7や
図8の視野画像110に相当する視野を視認している。
【0041】
そして、
図7の第一の視野画像110は、フロントライト装置33のすべてのハイビーム用光源72が点灯している状態である。この場合、歩行者112と、対向車111とは、ハイビーム用光源72の照射範囲113,114の内に存在する。
これに対し、
図8の第二の視野画像110は、フロントライト装置33の一部のハイビーム用光源72が消灯している状態である。この場合、歩行者112と、対向車111とは、ハイビーム用光源72の照射範囲113,114の外に存在する。
前灯制御装置17のCPU45は、たとえば
図7のハイビーム用光源72の照射範囲で走行中に、検出制御装置16が歩行者112と対向車111とを対象物として抽出すると、
図6の前灯防眩制御を実行して、ハイビーム用光源72の照射範囲を
図8のように切り替える。
また、ハイビーム用光源72の照射範囲から対象物がいなくなると、前灯制御装置17のCPU45は、たとえば
図8のハイビーム用光源72の照射範囲で走行中に、検出制御装置16による対象物の抽出にしたがって
図6の前灯防眩制御により、ハイビーム用光源72の照射範囲を
図7に戻すように切り替える。自動車1の走行安全性が高まる。
【0042】
このような防眩制御が走行環境などに応じて良好に実行されるためには、前灯制御装置17のCPU45が実行する前灯防眩制御のための制御プログラムおよび制御データの完成度を高めることが大切である。
また、前灯制御装置17の制御プログラムと、検出制御装置16の制御プログラムとが、実車において良好に協働するようにプログラミングされていることが大切である。
たとえば適切な条件およびタイミングで制御が実行されるように、自動車1の全体でプログラミングがなされ、適切な遷移変化を生じるように、自動車1の全体のプログラミングがなされていることが大切である。
【0043】
図9は、自動車1の開発手順の一例の説明図である。
自動車1を新たに開発する場合、メーカの開発者は、まず、自動車1の大枠のシステム設計を行って、自動車1に設ける制御装置およびデバイスを決定する(ステップST1)。
次に、開発者は、自動車1の大枠のシステム設計にしたがって自動車1に設ける各制御装置の要件を定義し(ステップST2)、さらに各制御装置の機能を開発し(ステップST4)、さらに各制御装置の制御プログラムの実装開発をすることになる(ステップST6)。
このような開発作業中に、開発者は、たとえばレビューなどの会議において、各制御装置の要件を検証し(ステップST3)、機能を検証する(ステップST5)。また、開発者は、試験場や試験機関において、実装を検証する(ステップST8)。
検証結果が思わしくない場合、各制御装置の要件定義、機能、制御プログラムの内容を修正する必要がある。場合によっては、実装検証の結果に基づいて、機能の内容を修正することもある。また、デバイスの修正などが必要になることもある。これらの修正作業には、時間と工数がかかることが多い。開発期間の長期化を招く。このような検証を容易化し、大きな修正を減らすために、メーカでは、SILS(Software In the-Loop Simulation)、HILS(Hardware In the-Loop Simulation)などのシミュレーションシステムを使用することがある。要件定義をプログラミング化したり、機能のプログラムを作成したり、してシミュレーションシステムを用いることにより、各制御装置の要件定義や機能について、検証をしながら開発作業を進めることができる。また、実装する制御プログラムを、シミュレーションシステムを用いてシミュレーションすることにより、制御プログラムについて、検証をしながら開発作業を進めることができる。シミュレーションシステムを開発に用いることにより、開発の成果物の実検証や修正の回数などを削減し得る。
そして、すべての検証が良好に済むと、自動車1の開発が終了し、自動車1を制作することになる(ステップST8)。
なお、ここでは、制御装置に用いられる制御プログラムの開発について主に説明しているが、制御装置に用いられるハードウェア、たとえばASIC、車両向けGPUなどの開発についても、上述した説明は成立する。ASIC、車両向けGPUは、一般的に、コンピュータ装置のプログラム上で機能結合などを定義することにより開発されている。開発途中では、ハードウェアに組み込まれる機能は、プログラムに具現化されている。
【0044】
前灯制御装置17およびフロントライト装置33の開発も、このような一連の自動車1の開発の一部として、開発者により実施される。
そして、上述した防眩制御についても、その目的に応じた制御を実行できるようにすることが肝要である。制御は、その内容、開始タイミング、終了タイミング、制御の度合い、などが目的に合致することが望ましい。
一方で、自動車1といった自動車1では、上述したように多数の制御装置が実装される。このため、各制御装置は、基本的に別々の開発グループにより開発されることが多い。この場合、自動車1の開発は、その自動車1についての各社の設計思想、規格、社会要請などに応じて、各制御装置の機能や仕様が割り当てられ、その機能や仕様に対して各制御装置の制御の内容が合わせ込まれる。機能や仕様を開発した後、その開発した機能や仕様について設計思想などへの適合性を検証する必要がある。また、開発した機能や仕様に基づいて、制御プログラムおよび制御データを開発し、検証する必要がある。このような地道な作業を積み上げけることにより、秀逸な自動車1が生成される。前灯制御装置17の開発においても、同様のことが言える。
【0045】
しかしながら、このような前灯制御装置17などの自動車1の制御装置の制御プログラムおよび制御データの完成度を高めようとする場合、その検証および修正に多大な作業工数が生じ易い。
特に、自動車1といった自動車1では、前灯制御装置17だけでなく、それ以外にも多数の制御装置が用いられる。そして、これらの前灯制御装置17を含む多数の制御装置は、それらが設けられる自動車1において良好に協働することが求められる。このような高度で複雑な制御系10に用いられる前灯制御装置17の制御プログラムおよび制御データについて、上述したような高度化を図りつつ、その完成度を高めようとする場合、その開発には、従来での前灯制御装置17の開発のものとは比べにならないほどの作業が発生する可能性がある。また、検証および修正の回数も、飛躍的に増大する可能性がある。
【0046】
また、フロントライト装置33の動作状態についての検証は、これまでは、たとえば
図1に示すように試験場の道路に複数の照度計81を並べて、その複数の照度計81の計測値に基づいて評価している。試験場は、屋外のものがあり、天候により検証作業の遅れが生じる。仮想空間であれば、そのような天候の影響を受けないようにできる。また、仮想空間であれば、たとえば
図5に示すように、仮想空間中に、フロントライト装置33の各光源の照射範囲ごとに、光源ごとの仮想的な照度計74を設置することも可能である。
【0047】
このように自動車1の開発では、フロントライト装置33を制御するために自動車1に設けられる前灯制御装置17の開発を含めて、その開発の労力を削減できるようにすることが求められている。
【0048】
図10は、本発明の実施形態に係る、自動車1の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステム90の構成図である。
図10の評価用シミュレーションシステム90は、車両通信ネットワーク18、情報通信ネットワーク96、および、これらが接続される同期中継装置95、を有する。
【0049】
図11は、評価用シミュレーションシステム90でのドライバの操作により仮想空間を走行する仮想自動車120の走行環境の一例の説明図である。
図11の仮想自動車120は、
図1の自動車1に対応するものである。
そして、仮想自動車120は、
図1の自動車1と同様に直線状の道路を、道路に沿ってまっすぐに走行している。仮想空間には、歩行者3に対応する仮想歩行者121、対向車2に対応する仮想対向車が、存在している。
また、
図11には、仮想自動車120のフロントライト装置による光の照射範囲として、左ハイビームの照射範囲4、右ハイビームの照射範囲5、左ロービームの照射範囲6、右ロービームの照射範囲7、が示されている。これらは、基本的に自動車1と同じになることが望まれる。このような照射がなされることにより、仮想自動車120のドライバ99は、夜間の仮想空間においても自動車1が進行する方向の走行環境を視認でき、上述したような仮想歩行者121や仮想対向車122がいる場合にはそれに対する回避操作をすることができる。
また、
図11には、仮想空間に対して、自然光を模した平行光を出力する太陽モデル39が、併せて図示されている。
【0050】
車両通信ネットワーク18は、上述した自動車1で使用するものと同等のものでも、複数の量産の自動車1で共用可能な汎用的なものであってもよい。このように車両通信ネットワーク18は、自動車1において複数の前灯制御装置17を接続するために用いられるものでよい。そして、車両通信ネットワーク18には、検証対象の前灯制御装置17が接続される。これにより、評価用シミュレーションシステム90は、前灯制御装置17の接続状態として、自動車1の制御系10と同等な環境を再現することができる。
【0051】
情報通信ネットワーク96は、車両通信ネットワーク18とは別のネットワークである。情報通信ネットワーク96には、基本的に、量産の自動車1で汎用されている車両通信ネットワーク18より高速な通信が可能なものにするとよい。このような情報通信ネットワーク96には、たとえばIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.3abの規格またはそれ以上の通信能力を有するたとえばIEEE802.3zといった規格に準拠したものを使用するとよい。なお、車両通信ネットワーク18向けのIEEE 802.3bpを使用することも可能と考えられる。
【0052】
同期中継装置95は、車両通信ネットワーク18と、情報通信ネットワーク96とに接続される。同期中継装置95は、車両通信ネットワーク18と情報通信ネットワーク96との間で、それらの間を行き来する情報のパケットを中継する。同期中継装置95は、たとえば後述するモデル演算装置92またはモニタ画像生成装置91と前灯制御装置17との間で通信する情報を中継できる。
同期中継装置95は、リアルタイムを追求するために、基本的に高速な処理が可能なものとするとよい。これにより、同期中継装置95は、車両通信ネットワーク18の側の情報を、ほぼ遅延が生じない状態で、情報通信ネットワーク96の側へ中継し、かつ、情報通信ネットワーク96の側の情報を、ほぼ遅延が生じない状態で、車両通信ネットワーク18の側へ中継する、ことができる。
また、このような同期中継装置95を用いることにより、後述するモデル演算装置92およびモニタ画像生成装置91は、前灯制御装置17が接続される車両通信ネットワーク18へ直接に接続されずに、それとは別の情報通信ネットワーク96に接続される。これにより、モデル演算装置92とモニタ画像生成装置91との間の通信は、車両通信ネットワーク18に制限されることなく、高速化を図ることができる。しかも、情報通信ネットワーク96と車両通信ネットワーク18とは同期中継装置95に接続されて、同期中継装置95は、モデル演算装置92またはモニタ画像生成装置91と前灯制御装置17との間で通信する情報を中継する。これにより、モデル演算装置92とモニタ画像生成装置91との間の通信を高速化しつつ、これらと前灯制御装置17との間での通信を実行させることができる。
【0053】
そして、
図10の評価用シミュレーションシステム90は、仮想自動車120をドライバ99の操作の下で仮想空間において走行させて、前灯制御装置17の制御を検証する場合での接続状態を示している。この場合、車両通信ネットワーク18には、前灯制御装置17と、それとともに仮想自動車120に設けられる操作制御装置11、および検出制御装置16と、が接続されてよい。前灯制御装置17には、検証のためのフロントライト装置33が接続される。フロントライト装置33の正面には、その投光範囲を表示するための照度計98が配置されてもよい。
操作制御装置11には、ドライバ99により操作される仮想自動車120の操作部材として、自動車1の操作部材21~25が接続される。
検出制御装置16には、それとともに自動車1に設けられる車外カメラ30と同等の車外カメラ105が接続される。車外カメラ105は、カメラ用モニタ104とともに、カメラモジュール103として、
図10の評価用シミュレーションシステム90に設けられている。カメラモジュール103は、たとえば閉じたケース内に、車外カメラ105とカメラ用モニタ104とが向かい合わせに配置される。これにより、車外カメラ105は、カメラ用モニタ104に表示される画像を撮像することができる。
そして、カメラモジュール103のカメラ用モニタ104には、カメラ画像生成装置102が接続される。カメラ画像生成装置102は、モニタ画像生成装置101にも接続される。なお、カメラ画像生成装置102は、直接的には情報通信ネットワーク96に接続されて、モニタ画像生成装置101と通信可能とされてもよい。このようなカメラ画像生成装置102は、モニタ画像生成装置101から、それが生成する仮想空間の画像、たとえば視野画像110が入力される。そして、カメラ画像生成装置102は、モニタ画像生成装置101から取得した画像、またはそれに基づく所定の画像をカメラ用モニタ104に表示する。これにより、車外カメラ105は、ドライバ99がドライバ用モニタ101において視認する自動車1の車内から見たものと同等の自動車1の前側の仮想空間の画像を撮像することができる。
なお、自動車1に設けられる車外カメラ30がステレオカメラである場合、カメラモジュール103は、車外カメラ105とカメラ用モニタ104とを二組で備えるとよい。車外カメラ105とカメラ用モニタ104とは、組ごとに向かい合わせに配置されてよい。そして、カメラ画像生成装置102は、モニタ画像生成装置101から取得した視野画像110などから、所定の視差を有する2つの画像を生成して、2つのカメラ用モニタ104に別々に表示させるとよい。これにより、車外カメラ105は、自動車1に設けられる車外カメラ30と同様に、ステレオカメラとして機能し得る。視差を持つ2つの視野画像110は、モニタ画像生成装置101が生成してもよい。
また、車両通信ネットワーク18には、たとえば
図2に示す制御系10の他の制御装置12~15が接続されてよい。車両通信ネットワーク18には、たとえば図中に破線で示す他の制御装置12~15として、走行制御装置12、駆動制御装置13、制動制御装置14、操舵制御装置15、が接続されてよい。このような評価用シミュレーションシステム90では、自動車1に設けられる検証対象外の各種の制御装置が車両通信ネットワーク18に接続されて、シミュレーションでの車両通信ネットワーク18の通信環境として実車に近い環境を作り出すことができる。
ここで、評価用シミュレーションシステム90のドライバ99は、開発者であっても、それ以外のたとえば試験機関や評価部門の担当者であってもよい。
【0054】
また、情報通信ネットワーク96には、たとえば、モニタ画像生成装置91、モデル演算装置92、走行環境生成装置93、イベント発生装置94、が接続される。これらの装置には、コンピュータ装置を用いてよい。また、各装置は、複数のコンピュータ装置で構成されてもよい。コンピュータ装置は、
図3の制御装置40と同様のハードウェアを有するものでよい。ただし、コンピュータ装置のCPUがブログラムを実行することにより、上述した各装置91~94には、各装置91~94の動作を制御する制御部が実現される。このような各装置91~94の制御部は、以下に説明する各種の制御を実行する。
【0055】
モデル演算装置92は、自動車1に設けられる各種の制御装置の制御を、仮想自動車120のモデル制御として実行する。
自動車1を仮想空間で走行させようとする場合、モデル演算装置92は、少なくとも、自動車1を走行させる制御装置の制御を、仮想自動車120のモデル制御として実行すればよい。
図2の制御系10の場合、モデル演算装置92は、少なくとも、駆動制御装置13、制動制御装置14、操舵制御装置15、の制御を、仮想自動車120のモデル制御として実行すればよい。
ただし、本実施形態の評価用シミュレーションシステム90は、ドライバ99の操作の下で、仮想自動車120を仮想空間で走行させるものである。この場合、モデル演算装置92は、さらに、少なくとも操作制御装置11の制御を、仮想自動車120のモデル制御として実行する。
また、本実施形態の例のように評価対象の前灯制御装置17によりフロントライト装置33を制御する場合、モデル演算装置92は、さらに、少なくとも操作制御装置11の制御を、仮想自動車120のモデル制御として実行するとよい。また、
図4のように操作制御装置11が検出制御装置16の出力情報を、その制御入力として受入する場合、モデル演算装置92は、さらに、検出制御装置16の制御を、仮想自動車120のモデル制御として実行することが望ましい。
これらの仮想自動車120のモデル制御には、たとえば
図9において1つ前の段階として開発したもの、たとえば実装する制御プログラムの場合には機能開発でのモデルを実行可能化したもの、を使用することができる。また、仮想自動車120のモデル制御には、自動車のモデルを実行可能化したものを使用しても、これらを組み合わせたものを使用してもよい。ここで、実行可能化とは、動作そのものをプログラム化する場合のみならず、たとえば入出力関係をテーブル化したようなものであってもよい。
また、たとえば自動車1のエンジンなどの駆動系の動作については、その動作モデルが想定し得る。駆動系の動作モデルとしては、たとえば、アクセルペダルの操作量に応じてエンジンへの燃料注入量を演算し、燃料注入量からエンジンでの燃焼反応を演算し、燃焼反応からエンジン出力を取得する、ものを作成し得る。モデル演算装置92は、このような駆動系の動作モデルを実行して、仮想自動車120の操作後の速度や加速度を演算してもよい。
また、駆動系の動作モデルは、上述したような抽象度が高い一般化された駆動系によるものではなく、自動車1に実際に設けられる特定の車種の駆動系の構成に対応させたものでもよい。駆動系の構成に対応させた動作モデルは、たとえば、自動車1に実際に設けられる駆動制御装置13の制御プログラムと、それとともに自動車1に実際に設けられるエンジン26を抽象化したモデルと、を組み合わせたものとしてよい。自動車1に実際に設けられるエンジン26を抽象化したモデルは、たとえば上述したエンジン本体でのトルク発生モデルとともに、エンジン26の作動条件を設定するインジェクタなどの各種のアクチュエータのモデル、エンジン26の作動状態を検出する各種のセンサのモデルにより、で構成されてよい。この場合、モデル演算装置92は、駆動制御装置13の制御プログラムを実行するとともに、複数のモデルの動作を演算することにより、自動車1に実際に設けられる特定の車種の駆動系での制御出力情報を生成することができる。
なお、モデル演算装置92は、駆動系以外についても、同様の動作モデルを採用してよい。
【0056】
そして、このようなモデル演算装置92は、基本的に、同期中継装置95により中継された車両通信ネットワーク18の側の情報を用いて、操作部材21~25に対するドライバ99の操作により走行する自動車1の動きとして、仮想空間での仮想自動車120の操作後の位置および向きを演算により生成する。モデル演算装置92は、仮想自動車120の姿勢などを演算により生成してもよい。これにより、モデル演算装置92は、モデル演算部として、仮想自動車120のモデル制御を実行することにより、操作部材21~25に対するドライバ99の操作に基づく仮想自動車120の動きを演算することができる。
また、モデル演算装置92は、上述したもの以外の仮想自動車120の制御装置の制御を、仮想自動車120のモデル制御として実行して、各種の情報を生成してもよい。
図9に示すように、制御装置の要件定義を検証する際には、通常は、それ以前に自動車1の全体についての車両システム設計がなされている。たとえば、制御装置の機能を検証する際には、通常は、その制御装置についての要件定義がなされている。これらの車両システム設計や要件定義の内容や入出力関係をモデル化してプログラミングすることにより、前灯制御装置17の機能検証の際にモデル演算装置92により実行させる各種のプログラムを得ることが可能である。また、実装する前灯制御装置17の制御プログラムおよび制御データを検証する際には、前灯制御装置17の機能や入出力関係をモデル化してプログラミングすることにより、前灯制御装置17の機能検証の際にモデル演算装置92により実行させる各種のプログラムを得ることが可能である。
【0057】
走行環境生成装置93は、仮想自動車120が走行する仮想空間を生成する。走行環境生成装置93は、仮想自動車120を走行させる仮想空間のデータを有し、それを展開して、仮想自動車120が走行する仮想空間を生成してよい。仮想空間のデータは、少なくとも仮想自動車120を走行させる道路データを含むものであればよく、たとえば、現実の道路環境をサンプリングした道路データを含むものであっても、検証などのために仮想的に設定される道路データを含むものであっても、よい。たとえば日本国内で自動車1の実走検証をする場合、他国のたとえば米国と同様の走行環境を現実に再現して検証することが難しいことがある。仮想空間では、このような実走検証が難しい走行環境についても、仮想的に再現することが可能である。
【0058】
イベント発生装置94は、仮想空間において、仮想自動車120のイベントを生成する。仮想自動車120のイベントには、たとえば仮想対向車122などの他の仮想自動車の走行、仮想歩行者121や仮想自転車の移動、仮想信号機や仮想踏切の切り替わり、などがある。イベント発生装置94は、他の仮想自動車、仮想歩行者121、仮想自転車などを、予め設定された進路で仮想空間を移動させる。また、イベント発生装置94は、予め設定されたタイミングで、仮想信号機や仮想踏切の状態を変更する。これにより、仮想自動車120は、他の仮想的な移動体が移動している仮想空間を走行することができる。
【0059】
モニタ画像生成装置91には、ドライバ99へ向けて視野画像110を表示するドライバ用モニタ101が接続される。視野画像110には、たとえば
図7または
図8に示すものがある。モニタ画像生成装置91は、情報通信ネットワーク96に接続されている他の装置から情報を取得し、それに基づいて、仮想空間を走行する仮想自動車120のドライバ99の視野画像110を生成する。
たとえば、モニタ画像生成装置91は、走行環境生成装置93が生成する仮想空間に、イベント発生装置94が発生する他の移動体を配置する。また、モニタ画像生成装置91は、モデル演算装置92が生成した仮想自動車120の操作後の位置および向きを基準にして、他の移動体が配置された仮想空間を二次元平面へ写像して、視野画像110を生成する。たとえば
図7、
図8または
図11のように仮想自動車1201の前側に、イベント発生装置94が発生する仮想歩行者121や仮想対向車122がいる場合、その視野画像110には、仮想歩行者121の像や仮想対向車122の像が含まれることになる。
このように、モニタ画像生成装置91は、モニタ画像生成部として、モデル演算部により演算される仮想自動車120の動きに基づく仮想自動車120の仮想空間での移動後の位置および向きを少なくとも演算して、移動した後の視野画像110を生成する。そして、ドライバ用モニタ101は、ドライバ99に対して仮想空間を走行中の仮想自動車120からの視野画像110を表示する。
【0060】
そして、評価用シミュレーションシステム90は、上述した各種の処理を、たとえば仮想自動車120の制御系10での制御周期の時間内で処理する。仮想自動車120の制御周期は、たとえば自動車1の制御周期と同じでよい。これにより、評価用シミュレーションシステム90は、ドライバ用モニタ101の視野画像110を、ドライバ99の操作に対して大きな遅れを生じないように更新し続けることができる。評価用シミュレーションシステム90は、ドライバの操作の下での仮想自動車120の仮想空間での移動を、リアルタイムにシミュレーションすることができる。
評価用シミュレーションシステム90は、自動車1を開発する際に、その自動車1に設けられる前灯制御装置17などの各制御装置の要件定義の検証、機能の検証、および、制御プログラムおよび制御データの検証などのために、好適に用いることが可能になる。開発者の検証作業の負荷が格段に削減されることが期待できる。また、開発した各制御装置の制御が、車両システム設計に適合した完成度の高いものになることが期待できる。設計の確からしさは、格段に向上し得る。
【0061】
次に、評価用シミュレーションシステム90を用いて前灯制御装置17を検証する場合について、さらに詳しく説明する。
【0062】
図7または
図8に示すように、前灯制御装置17がフロントライト装置33を点灯させる場合、ドライバ用モニタ101に表示する視野画像110には、フロントライト装置33の光による照射範囲が含まれることになる。したがって、自動車1の走行環境を再現してドライバ99に臨場感を与えようとする場合、視野画像110は、フロントライト装置33の動作状態に応じて変化させることが望ましい。また、このように視野画像110をフロントライト装置33の動作状態に応じて変化させることにより、視野画像110そのものを、前灯制御装置17によるフロントライト装置33の制御状態を検証するために利用することができるようになる。
このためには、モデル演算装置92に前灯制御装置17のモデル制御を実行させて、モニタ画像生成装置91は、その前灯制御装置17のモデル制御の結果を反映した視野画像110を生成する必要がある。
【0063】
その一方で、前灯制御装置17は、その制御を実行するためには、上述した
図4に例示するように、検出制御装置16などから制御入力情報を取得する必要がある。
なお、前灯制御装置17は、それとともに車両通信ネットワーク18に接続される他の制御装置から直接に、制御を実行するために必要な制御入力情報を取得してもよい。たとえば操作制御装置11は、ステアリングホイール21の操作によるハンドル角、アクセルペダル22の操作によるアクセル開度などの検出量を、前灯制御装置17へ直接に出力し、前灯制御装置17は、これを取得してよい。ただし、同図においては、車両通信ネットワーク18には、検出制御装置16が接続されていない。前灯制御装置17の制御実行のために不足している制御入力情報は、モデル演算装置92によるモデル制御により生成する必要がある。
モデル演算装置92は、その演算結果を反映した視野画像110をモニタ画像生成装置91から取得して、検出制御装置16のモデル制御を実行することができる。また、モデル演算装置92は、検出制御装置16のモデル制御の結果を、前灯制御装置17の制御入力情報として用いて、前灯制御装置17のモデル制御を実行することができる。これを用いることにより、モニタ画像生成装置91は、検出制御装置16のモデル制御を反映した視野画像110を生成することができる。
ここで説明する制御は、一見成立するようにも見受け得るが、実際には破綻している。すなわち、モニタ画像生成装置91が検出制御装置16および前灯制御装置17のモデル制御により前灯制御装置17の制御出力情報を生成するタイミングは、仮想自動車120の走行のモデル制御により仮想自動車120の位置などを生成するタイミングから完全に遅れるようにずれてしまう。その結果、モニタ画像生成装置91は、視野画像110に基づいて前灯制御装置17のモデル制御により生成される制御出力情報を、その次の視野画像110にしか反映することできない。このような処理の下で生成される視野画像110は、その視野画像110のタイミングでの前灯制御装置17のモデル制御の結果である照射範囲を、正しく表示するものとはなり得ない。視野画像110は、ドライバ99に表示したり、検証の基準に用いたりするものとして適切なものとはなり得ない。このように、上述した処理では、評価用シミュレーションシステム90によるシミュレーションのリアルタイム性能を劣化させることになる。
このため、本実施形態では、視野画像110に先立って走行環境画像を生成して利用するために、モニタ画像生成装置91と、モデル演算装置92とに、処理を追加する。
【0064】
図12は、
図10の評価用シミュレーションシステム90において視野画像110に先立って走行環境画像を生成するための処理のタイミングチャートである。
図12には、評価用シミュレーションシステム90の構成として、モニタ画像生成装置91、モデル演算装置92、同期中継装置95、前灯制御装置17、が示されている。同図において、時間は上から下へ進む。
【0065】
ステップST20において、モニタ画像生成装置91は、仮想空間についての自然光情報を取得する。自然光情報は、たとえば仮想空間における仮想的な太陽についての設定情報でよい。自然光情報には、仮想空間における太陽についての位置および向き、太陽の光の色成分および輝度などの情報で構成されてよい。このような仮想空間の環境情報は、評価用シミュレーションシステム90を作動させる前に、開発者が設定してよい。太陽の光の色成分の値および輝度の値を変更することにより、自然光は、昼間の明るさを生じさせるものから、夜の明るさを生じさせるものまでに調光することができる。
そして、モニタ画像生成装置91は、取得した自然光情報に基づいて、たとえば
図11に示すように、仮想空間における太陽の位置および向きに、平行光を出力する太陽モデル39を設定する。
図11の走行環境での道路に対する太陽モデル39の位置および向きは、自然光情報の設定に応じたものとなる。
【0066】
ステップST21において、モニタ画像生成装置91は、視野画像110を生成することに先立って、走行環境画像を生成する。
ここで、走行環境画像は、視野画像110とは異なり、前灯制御装置17により制御されるフロントライト装置33の照射を含まない仮想空間から切り出した画像でよい。この場合、モニタ画像生成装置91は、モデル演算装置92が生成する仮想自動車120の位置および向きを基準として、走行環境生成装置93が生成する仮想空間から切り出した走行環境画像を生成する。仮想空間を移動している歩行者112や対向車111がいる場合、走行環境画像には、それらの対象物の像が含まれる。これにより、モニタ画像生成装置91は、モニタ画像生成部として、前灯制御装置17の制御出力による照度を含まない走行環境画像を生成できる。
ここで、モニタ画像生成装置91は、
図11の仮想自動車120、仮想対向車122、仮想歩行者121、道路などの被照射物の輝度として、各々が本来的に持っている色と、太陽モデル39から照射される平行光の色成分および輝度とに応じたものを演算してよい。被照射物についての太陽モデル39から影となる部分の輝度は、太陽モデル39から平行光が照射されている部分より暗くなる。これにより、モニタ画像生成装置91は、自然光により照らされている仮想空間についての走行環境画像を生成するができる。モニタ画像生成装置91は、たとえば昼間の仮想空間についての走行環境画像、夜の仮想空間についての走行環境画像、夕方の薄暮の仮想空間についての走行環境画像、などを生成することができる。
【0067】
ステップST22において、モニタ画像生成装置91は、生成した走行環境画像を、情報通信ネットワーク96を通じて、モデル演算装置92へ送出する。そして、モデル演算装置92は、モニタ画像生成装置91が送出した走行環境画像を、情報通信ネットワーク96から受入する。
【0068】
ステップST23において、モデル演算装置92は、受入している走行環境画像を解析し、走行環境画像に含まれる対象物を抽出する。
【0069】
ステップST24において、モデル演算装置92は、抽出した対象物についての自車からの相対的な位置および方向を演算する。対象物は、走行環境画像において、自車からの相対的な位置および方向に応じた部位に撮像され得る。モデル演算装置92は、走行環境画像における対象物の撮像位置に基づいて、抽出した対象物についての自車からの相対的な位置および方向を演算することができる。
モデル演算装置92は、ステップST23およびステップST24の処理において、車外カメラ30の撮像画像に基づく検出制御装置16のモデル制御を実行することにより、対象物の情報を生成する。
ステップST23およびステップST24の処理により、モデル演算装置92は、モデル演算部として、自動車1の検出制御装置16が車外カメラ30の撮像画像について処理するものと同様の処理を実行する。これにより、モデル演算装置92は、検出制御装置16が前灯制御装置17へ出力する前灯制御装置17の制御入力情報を生成することができる。
【0070】
ステップST25において、モデル演算装置92は、前灯制御装置17のモデル制御を実行する。モデル演算装置92は、ステップST24までの処理において生成した対象物の情報を、前灯制御装置17の制御入力情報として用いて、前灯制御装置17のモデル制御を実行する。その結果、モデル演算装置92は、前灯制御装置17がフロントライト装置33へ出力する制御出力情報を生成する。
ステップST25の処理により、モデル演算装置92は、モデル演算部として、自動車1の前灯制御装置17がその制御入力に基づいて実行するものと同様の処理を実行する。これにより、モデル演算装置92は、前灯制御装置17がフロントライト装置33へ出力する前灯制御装置17の制御出力情報を生成することができる。
【0071】
ステップST26において、モデル演算装置92は、走行環境画像に基づいて生成した前灯制御装置17の制御入力情報を、情報通信ネットワーク96を通じて、モニタ画像生成装置91へ送出する。モニタ画像生成装置91は、モデル演算装置92が生成した前灯制御装置17の制御入力情報を、情報通信ネットワーク96から受入する。
【0072】
ステップST27において、モニタ画像生成装置91は、ステップST21において生成している走行環境画像の輝度を、モデル演算装置92が生成した前灯制御装置17の制御入力情報に基づいて修正する。モニタ画像生成装置91は、走行環境画像の中で、前灯制御装置17の制御入力情報に基づいてフロントライト装置33が光を照射する範囲の輝度を、フロントライト装置33の光量に応じて調整する。これにより、モニタ画像生成装置91は、フロントライト装置33から出力される光の照射範囲が、その他の部分より明るくなっている画像を生成することができる。この画像は、視野画像110として用いることができる。
なお、モニタ画像生成装置91は、ステップST27の処理において、ステップST21の処理を併せて実行して、走行環境画像の輝度を修正するのではなく、フロントライト装置33の照射を含む視野画像110を一から生成してもよい。ただし、既に同じ視野範囲について生成されている走行環境画像を用いることにより、モニタ画像生成装置91によるステップST27の処理の負荷が削減され得る。
また、ステップST21において生成する走行環境画像において自然光を反映していない場合、モニタ画像生成装置91は、自然光情報を用いて、ステップST21において生成している走行環境画像の輝度を、さらに修正する。
これにより、モニタ画像生成装置91は、モニタ画像生成部として、前灯制御装置17の制御の下でのフロントライト装置33の投光とともに、自然光により照らされている仮想空間についての視野画像110を生成することができる。モニタ画像生成装置91は、仮想空間を照らす自然光の調光に応じて、たとえば昼間の仮想空間についての視野画像110、夜の仮想空間についての視野画像110、夕方の薄暮の仮想空間についての視野画像110、などを生成することができる。
【0073】
ステップST28において、モニタ画像生成装置91は、生成した視野画像110を、ドライバ用モニタ101に表示する。これにより、操作部材21~25を操作するドライバ99は、その操作の結果として、フロントライト装置33の照射を含む視野画像110を視認することができる。
このようにモニタ画像生成装置91は、モニタ画像生成部として、検証対象である前灯制御装置17の制御出力の替わりに、モデル演算装置92が演算した前灯制御装置17の制御出力情報を取得して、前灯制御装置17に照らされた視野画像110を生成してドライバ用モニタ101に表示させる、ことができる。
【0074】
ステップST29において、モニタ画像生成装置91は、生成した視野画像110での仮想的な対象物の輝度に基づいて、仮想的な対象物の照度を演算する。モニタ画像生成装置91は、たとえば、生成した視野画像110において、仮想的な対象物の像の部分を特定し、さらに特定した仮想的な対象物の像の輪郭範囲内にある複数の画素の輝度を抽出する。そして、モニタ画像生成装置91は、たとえば抽出した複数の画素の輝度の輝度値の平均値を演算し、その平均の輝度値から、仮想的な対象物の照度を演算する。
たとえば
図7の視野画像110には、歩行者112に対応する仮想歩行者121と、対向車111に対応する仮想対向車122とが含まれる。この場合、モニタ画像生成装置91は、視野画像110において仮想歩行者121の像を含む範囲116を特定し、特定した範囲116内の画素の輝度の輝度値から、対象物である仮想歩行者121の照度を演算してよい。また、モニタ画像生成装置91は、視野画像110において仮想対向車122の像を含む範囲115を特定し、特定した範囲115内の画素の輝度の輝度値から、対象物である仮想対向車122の照度を演算してよい。
これにより、モニタ画像生成装置91は、モニタ画像生成部として、仮想空間において仮想自動車120の周囲で移動する仮想的な対象物の照度を、ドライバ用モニタ101に表示させる視野画像110での仮想的な対象物の輝度に基づいて演算することができる。ステップST23およびステップST24の処理の後にステップST29の処理を実行することにより、評価用シミュレーションシステム90のモニタ画像生成装置91は、仮想空間において仮想自動車120の周囲で移動する仮想的な対象物の照度を演算することができる。
【0075】
ステップST31において、モニタ画像生成装置91は、ステップST27で生成した視野画像110を、カメラ画像生成装置102へ送出する。カメラ画像生成装置102は、カメラモジュール103のカメラ用モニタ104に視野画像110またはそれに基づく画像を表示する。これにより、カメラモジュール103の車外カメラ105は、視野画像110またはそれに基づく画像を撮像し、検出制御装置16へ出力する。
【0076】
ステップST32において、検出制御装置16は、その制御プログラム51を実行して視野画像110を解析し、視野画像110に含まれる仮想的な対象物を抽出する。また、検出制御装置16は、抽出した仮想的な対象物についての自車からの相対的な位置および方向を演算する。
【0077】
ステップST33において、検出制御装置16は、抽出した視野画像110に含まれる仮想的な対象物の情報を、車両通信ネットワーク18を通じて、前灯制御装置17へ送出する。前灯制御装置17は、検出制御装置16から、車両通信ネットワーク18を通じて、制御入力情報として用いることができる仮想的な対象物の情報を受入する。前灯制御装置17は、自動車1に設けられる場合と同様に車両通信ネットワーク18から、その制御のための制御入力情報を受入することができる。
【0078】
ステップST34において、前灯制御装置17は、たとえば制御プログラムおよび制御データに基づく前灯制御を実行する。前灯制御装置17は、前灯制御の1つとして、
図6の前灯防眩制御を実行する。
そして、前灯制御装置17は、
図6の前灯防眩制御などの前灯制御の結果として、制御出力情報を、フロントライト装置33へ出力する。フロントライト装置33は、前灯制御装置17により生成された制御出力情報にしたがって、その複数の光源の点灯を制御する。照度計98には、フロントライト装置33の動作状態に対応する光の照射パターンが表示される。
このように、検出制御装置16は、それが自動車1に設けられる場合と同様に、生成した制御入力情報を、前灯制御装置17へ送出する。また、前灯制御装置17は、評価用シミュレーションシステム90による前灯制御のシミュレーションと連動して自らについて開発された制御プログラムに基づく制御を実行し、フロントライト装置33を連動して動作させることができる。
【0079】
制御プログラムおよび制御データが、前灯制御装置17のモデル制御と良好に対応するように高品質に開発されている場合、フロントライト装置33の光の照射パターンは、視野画像110での照射範囲と良好に対応し得る。光の照射パターンの時間変化と、視野画像110での照射範囲の時間変化とも、良好に対応し得る。
これに対して、制御プログラムおよび制御データの品質が十分でない場合、フロントライト装置33の光の照射パターンは、視野画像110での照射範囲とは異なるものとなる。また、光の照射パターンの時間変化と、視野画像110での照射範囲の時間変化とも、良好に対応し得る。
開発者は、これらを対比して検証することなどにより、制御プログラムおよび制御データの品質を高めるように、制御プログラムおよび制御データを修正することができる。
【0080】
図13は、自然光を含む、ドライバのための第三の視野画像110の説明図である。
図13の視野画像110は、夜の仮想空間についての視野画像110である。この場合、太陽モデル39の輝度が低いため、フロントライト装置33の照射範囲113,114の画像部分は、明るい。これに対し、照射範囲113,114の外の画像部分は、暗い。
これに対し、たとえば
図7および
図8は、昼間の仮想空間についての視野画像110である。太陽モデル39の輝度が高いため、フロントライト装置33の照射範囲113,114の内外において、明るさに差が生じない。
【0081】
図14は、自然光を含む、ドライバのための第四の視野画像の説明
図120である。
図14の視野画像110は、薄暮の仮想空間についての視野画像110である。この場合、太陽モデル39の輝度が中間であるため、
図13と比べて画像全体が明るい。ただし、
図7および
図8と比べては暗い。また、フロントライト装置33の照射範囲113,114の画像部分は、照射範囲113,114の外の画像部分よりも、明るい。
【0082】
このように、本実施形態の評価用シミュレーションシステム90は、仮想空間における自動車1の走行環境として、昼夜の走行環境を再現し、その昼夜の走行環境についての視野画像110を生成することができる。開発者は、前灯制御装置17および検出制御装置16を、自動車1が実際に走行することになる昼夜の走行環境の下でシミュレーションして、評価することができる。
なお、今現在行われている自動車1の検査では、このような事項について詳しく評価するものはない。本実施形態の評価用シミュレーションシステム90は、そのためのブレークスルとなり得る。自動車1の完成度を高めることができる。
【0083】
以上のように、本実施形態では、前灯制御装置17を、自動車1に対応する仮想自動車120がドライバ99の操作の下で仮想空間を走行する制御下でシミュレーション動作させることができる。このような評価用シミュレーションシステム90を、前灯制御装置17の制御の開発に活用することにより、前灯制御装置17の制御の完成度を高めることができる。しかも、その前灯制御装置17の動作シミュレーションは、仮想自動車120がドライバ99の操作の下で仮想空間を走行する制御下でのものであるため、実際にその前灯制御装置17を自動車1に設けた場合での動作確認や検証の結果に近い確からしいものになることが期待できる。本実施形態の評価用シミュレーションシステム90を用いることにより、自動車1のフロントライト装置33を制御するために自動車1に設けられる前灯制御装置17の開発の労力は、効果的に削減され得る。
しかも、自動車1の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステム90に用いられる検出制御装置16は、カメラモジュール103での車外カメラ105の撮像画像に基づいて、仮想空間を走行中の仮想自動車120の周囲に存在する配光制御の仮想的な対象物を抽出して、仮想的な対象物の情報を前灯制御装置17へ出力して前灯制御装置17を動作させる。本実施形態の評価用シミュレーションシステム90では、前灯制御装置17がそれとともに自動車1に設けられる検出制御装置16とともに車両通信ネットワーク18に接続されて連携している状態において、その制御を実行することができる。本実施形態の評価用シミュレーションシステム90は、前灯制御装置17の単独での動作確認や検証をすることができるだけでなく、前灯制御装置17と検出制御装置16とが連携する制御についても動作確認や検証をすることができる。前灯制御装置17の制御について、他の制御装置との連携を含めて、実車に近い環境下で、動作を確認し、検証することができる。
また、自動車1の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステム90のモデル演算装置92は、操作部材21~25に対するドライバ99の操作に基づく仮想自動車120の動きを演算することに加えて、さらに、仮想自動車120のモデル制御を実行することにより前灯制御装置17の制御入力情報および制御出力情報を生成して、制御入力情報を前灯制御装置17へ出力して前灯制御装置17を連動して動作させる。また、モニタ画像生成装置91は、前灯制御装置17の制御出力の替わりに、モデル演算装置92が演算した前灯制御装置17の制御出力情報を取得して、前灯制御装置17に照らされた視野画像110を生成してドライバ用モニタ101に表示させる、ことができる。ドライバ99は、自らの操作に追従するように変化するドライバ用モニタ101の視野画像110により、仮想自動車120の動きを実際の自動車1を運転している感覚で把握して、動作シミュレーションの操作部材21~25を違和感なく操作することができる。
【0084】
これに対し、仮にたとえばモニタ画像生成装置91が、開発中の前灯制御装置17の制御出力を取得して、前灯制御装置17に照らされた視野画像110を生成する場合、モニタ画像生成装置91は、開発中の前灯制御装置17からの制御出力が得られないと、視野画像110を生成することができない。たとえば、開発中の前灯制御装置17がその制御結果を出力できない場合、ドライバ99の操作に遅れてしか制御結果を出力できない場合、モニタ画像生成装置91は、ドライバ99の操作がなされた際に、その直後にその操作を反映した視野画像110を生成することができない。また、前灯制御装置17から制御出力を取得する場合、制御遅れが大きくなる。本実施形態では、モデル演算装置92が演算した前灯制御装置17の制御出力情報を取得しているため、このようなドライバ99を含む走行制御ループのリアルタイム的なループ処理を阻害してしまうことはない。評価用シミュレーションシステム90は、前灯制御装置17の制御の適否にかかわらず、仮想自動車120をドライバ99の操作の下で仮想空間を走行させて、その走行中に前灯制御装置17に制御を実行させることができる。評価用シミュレーションシステム90は、そのリアルタイム的なシミュレーションを、前灯制御装置17の制御の適否や遅れに影響されることなく実行することができる。
【0085】
特に、本実施形態において、モニタ画像生成装置91は、ドライバ用モニタ101に表示させるための視野画像110を生成するだけでなく、さらに、前灯制御装置17の制御出力による照度を含まない走行環境画像を生成する。そして、モデル演算装置92は、走行環境画像を用いて仮想自動車120のモデル制御を実行することにより前灯制御装置17の制御入力情報および制御出力情報を生成する。生成された制御入力情報は、前灯制御装置17へ出力されて、前灯制御装置17の動作に用いられる。これにより、前灯制御装置17は、モニタ画像生成装置91により視野画像110が生成されることを待つことなく、それ以前に生成可能な走行環境画像が生成されることにより、制御入力情報を取得して制御を実行することができる。
これに対して、仮にたとえばモデル演算装置92が、モニタ画像生成装置91により生成される視野画像110を用いて仮想自動車120のモデル制御を実行して、前灯制御装置17の制御入力情報および制御出力情報を生成する場合、前灯制御装置17が、制御入力情報を取得するタイミングは遅れる。前灯制御装置17の動作が、評価用シミュレーションシステム90の動作に対して遅れる。本実施形態では、このような遅れを抑制して、前灯制御装置17を、評価用シミュレーションシステム90の動作と同期的に動作させることができる。
【0086】
本実施形態では、モニタ画像生成装置91は、仮想空間において仮想自動車120の周囲で移動する仮想的な対象物の照度を、ドライバ用モニタ101に表示させる視野画像110での仮想的な対象物の輝度に基づいて演算する。これにより、評価用シミュレーションシステム90は、照度計を用いた実車での前灯制御装置17の検証の場合と同様に、前灯制御装置17の制御の下でのフロントライト装置33による照度を評価することができる。
しかも、本実施形態で演算する照度は、仮想空間に固定設置される仮想的な照度計によるものではなく、仮想空間で移動する仮想的な対象物についてのものである。これにより、減光などの制御により照射範囲を切り替えることができる前灯制御装置17の制御が、移動する仮想的な対象物について所望の照度が得られるように照射できているかについて評価することが可能となる。実車での検証では、このような移動する対象物の照度を検出することは、容易ではない。
【0087】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。本実施形態では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を使用して図示および説明を省略し、主に上述した実施形態との相違点について説明する。
【0088】
図15は、本発明の第二実施形態に係る、自動車1の前灯制御を含む制御についての評価用シミュレーションシステム90の構成図である。
図15の評価用シミュレーションシステム90において、情報通信ネットワーク96には、モニタ画像生成装置140と、モデル演算装置92と、が接続される。
【0089】
モニタ画像生成装置140は、イベント発生部141、走行環境生成部142、モニタ画像生成部143、対象物情報取得部144、を有する。
イベント発生部141は、モニタ画像生成装置140において、上述したイベント発生装置94と同様に、仮想空間における仮想自動車120のイベントを生成する。
走行環境生成部142は、モニタ画像生成装置140において、上述した走行環境生成装置93と同様に、仮想自動車120が走行する仮想空間を生成する。
モニタ画像生成部143は、モニタ画像生成装置140において、上述したモニタ画像生成装置91と同様に、視野画像110を生成して、ドライバ用モニタ101に表示する。
対象物情報取得部144は、モニタ画像生成装置140によるこれら一連の視野画像110を生成するまでの処理において生成される対象物の情報を取得して、モデル演算装置92へ送出する。
【0090】
図16は、
図15の評価用シミュレーションシステム90において視野画像を生成するまでの制御のタイミングチャートである。
本実施形態では、
図12の替わりに、
図15の制御を実行する。
図16には、評価用シミュレーションシステム90の構成として、モニタ画像生成装置140、モデル演算装置92、同期中継装置95、前灯制御装置17、が示されている。同図において、時間は上から下へ進む。
また、
図12と同様の処理については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0091】
ステップST51において、モニタ画像生成装置140は、視野画像110を生成することに先立って、イベント発生部141として、仮想空間における仮想自動車120のイベントを生成する。
【0092】
ステップST52において、モニタ画像生成装置140は、走行環境生成部142として、仮想自動車120が走行する仮想空間を生成する。
ここで、モニタ画像生成装置140は、ステップST51でイベントとして生成した対向車122などの対象物が配置された仮想空間を生成する。
また、モニタ画像生成装置140は、仮想空間についての自然光情報を取得し、たとえば
図11に示すように、仮想空間における太陽の位置および向きに、平行光を出力する太陽モデル39を設定してよい。
【0093】
ステップST53において、モニタ画像生成装置140は、対象物情報取得部144として、仮想自動車120が走行する仮想空間に存在する対向車122などの対象物の情報を取得する。
ステップST52において生成される仮想空間には、ステップST51でイベントとして生成した対向車122などの対象物が割り当てられている。
モニタ画像生成装置140は、たとえば、ステップST52において生成される仮想空間に基づいて、仮想空間における対象物の位置情報を取得してよい。
また、モデル演算装置92から仮想自動車120の位置および向きの情報を取得している場合、モニタ画像生成装置140は、その情報に基づいて、仮想空間における仮想自動車120の位置および向きを推定して、仮想空間における対象物についての、仮想自動車120からの相対的な位置情報を取得してもよい。
【0094】
ステップST54において、モニタ画像生成装置140は、対象物情報取得部144として、ステップST53において取得した対象物の情報を、情報通信ネットワーク96を通じて、モデル演算装置92へ送出する。
このように対象物の情報を取得することにより、モデル演算装置92は、対象物の情報を取得すると直ちに、ステップST25の前灯防眩制御を開始することができる。
その後、モデル演算装置92は、生成した前灯制御装置17の制御入力情報を、情報通信ネットワーク96を通じて、モニタ画像生成装置140へ送出する。モニタ画像生成装置140は、モデル演算装置92が生成した前灯制御装置17の制御入力情報を、情報通信ネットワーク96から受入する。
【0095】
ステップST55において、モニタ画像生成装置140は、モニタ画像生成部143として、フロントライト装置33の照射を含む視野画像110を生成する。
なお、ステップST52において太陽モデル39を設定していない場合、モニタ画像生成装置140は、それを設定し、太陽による自然光とフロントライト装置33の照射を含む視野画像110を生成する。
その後の処理は、
図12と同様である。
【0096】
以上のように、本実施形態のモニタ画像生成装置140は、視野画像110を生成するモニタ画像生成部143としての制御とともに、それに先立って、イベント発生部141および走行環境生成部142としての制御を実行する。これにより、モニタ画像生成装置140は、仮想的な対象物を含む仮想空間を生成する処理を実行して、仮想空間において移動する仮想的な対象物の位置情報を生成することができる。
そして、モニタ画像生成装置140は、その一連の制御において生成され得る対象物の情報を取得して、モデル演算装置92へ送出する。これにより、モデル演算装置92は、モデル演算部として、モニタ画像生成装置140により生成される仮想的な対象物の位置情報を用いて、仮想自動車120のモデル制御を実行することにより、前灯制御装置17の制御入力情報および制御出力情報を生成できる。また、モデル演算装置92は、上述した実施形態のように走行環境画像を解析して対象物の情報を自ら生成することなく、ステップST25の前灯防眩制御を開始することができる。
そして、モニタ画像生成装置140が実行するイベント発生部141、走行環境生成部142、およびモニタ画像生成部143としての一連の制御は、評価シミュレーションを実行するために本来的に必要な制御である。したがって、モデル演算装置92での処理を削減したことにより、
図14の制御による遅延は、上述した実施形態のものより抑えられる。評価用シミュレーションシステム90による制御についてのリアルタイム性への影響は、上述した実施形態より抑えることができる。
【0097】
また、本実施形態では、
図15に示すように、情報通信ネットワーク96に接続される装置を、モニタ画像生成装置140と、モデル演算装置92と、に二分することにより、各装置の最適化を図ることが可能になる。
たとえば、モニタ画像生成装置140には、GPU、並列計算などの機能を有して、大容量の処理が可能な高性能なコンピュータ装置を採用することができる。
また、モデル演算装置92には、一定時間内に処理を完了できるラピッドCPUなどを採用して、車両通信ネットワーク18に接続される各種の制御装置との間で同期性を確保できるようなリアルタイム性を有するコンピュータ装置を採用することができる。
このような装置の組み合わせで評価用シミュレーションシステム90を構成することにより、評価用シミュレーションシステム90は、自動車1における高度な制御状態を、仮想空間を用いてリアルタイムに実行することが可能である。
【0098】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。本実施形態では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を使用して図示および説明を省略し、主に上述した実施形態との相違点について説明する。
本実施形態の説明は、上述した各実施形態に対して、その変形例として適用することができる。
【0099】
図17は、本発明の第三実施形態に係る評価用シミュレーションシステム90での対象物の照度を得る処理を説明するための、ドライバ99の第五の視野画像110の説明図である。
図17のドライバ99の第三の視野画像110には、その全体を分割する複数の区画117が対応付けて設定されている。
なお、複数の区画117は、第三の視野画像110の一部を分割するように、たとえばフロントライト装置33が光を照射している範囲113,114を分割するように、設定されてもよい。
【0100】
本実施形態のモニタ画像生成装置91は、このような複数の区画117を用いて、
図12のステップST29での視野画像110での輝度に基づく仮想的な対象物121,122の照度演算処理を実行する。
具体的には、モニタ画像生成装置91は、まず、輝度を修正して生成した視野画像110の全体を、複数の区画117に分割する。
次に、モニタ画像生成装置91は、各区画117に含まれる1乃至複数の画素の輝度に基づいて、各区画117の照度を演算する。
次に、モニタ画像生成装置91は、視野画像110において、仮想的な対象物121,122の像の位置範囲を特定し、さらに特定した仮想的な対象物121,122の像を含む1乃至複数の区画117を特定する。ここで、仮想的な対象物121,122の像と重なる区画117は、仮想的な対象物121,122の像を含む区画117としてよい。仮想的な対象物121,122の像が重ならない区画117は、仮想的な対象物121,122の像を含まない区画117としてよい。この場合、モニタ画像生成装置91は、視野画像110において仮想的な対象物121,122の像と各区画117との位置の重なりを判断することにより、視野画像110において仮想的な対象物121,122の像と重なるすべての区画117を特定することができる。この場合の処理の繰り返しは、視野画像110から仮想的な対象物121,122の像の各画素を特定する場合より、少なくなる。
次に、モニタ画像生成装置91は、特定した仮想的な対象物121,122の像を含む1乃至複数の区画117について予め演算している区画117ごとの照度の平均値を演算して、仮想的な対象物121,122の照度を取得する。
【0101】
これにより、モニタ画像生成装置91は、視野画像110から仮想的な対象物121,122の像と重なる画素を選択する場合のように、視野画像110の画素数での繰り返し処理を実行する必要が無くなる。視野画像110に複数の仮想的な対象物121,122が含まれている場合であっても、各対象物についての照度を得る処理を簡略化でき、総合的な処理時間を短縮させることができる。モニタ画像生成装置91は、
図12のステップST29の処理を、短くなり得る時間で実行することができる。
その結果、本実施形態では、
図12のステップST21において走行環境画像を生成してから、ステップST27において視野画像110を生成するまでの期間が増大してしまうことを抑制して、その期間が所望の期間に収まることを期待できる。たとえば仮想空間を移動する仮想的な対象物121,122の個数を増やしたとしても、
図12の走行環境画像についての処理による遅延を抑制でき、評価用シミュレーションシステム90のシミュレーションについてのリアルタイム性を維持することができる。
【0102】
以上のように、本実施形態において、モニタ画像生成装置91は、ドライバ用モニタ101に表示させる視野画像110を複数の区画117に分割して、各区画117の輝度を用いて、視野画像110での仮想的な対象物121,122の輝度を演算する。モニタ画像生成装置91による仮想的な対象物121,122の照度を演算するための処理負荷は、軽減される。
本実施形態では、評価用シミュレーションシステム90に対して仮想的な対象物121,122の照度を得る処理を追加しても、その処理による制御遅れを生じ難くできる。本実施形態では、評価用シミュレーションシステム90のリアルタイム的なシミュレーションを損なわないようにでき得る。
また、視野画像110を分割する上述した複数の区画117は、複数の照度計を二次元的に配列した状態を、仮想的に実現するものとなり得る。
【0103】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について説明する。本実施形態では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を使用して図示および説明を省略し、主に上述した実施形態との相違点について説明する。
本実施形態の説明は、上述した各実施形態に対して、その変形例として適用することができる。
【0104】
図18は、本発明の第四実施形態に係る評価用シミュレーションシステム90での対象物の照度を得る処理についての説明図である。
図18には、仮想空間の仮想的な対象物として、仮想歩行者121が示されている。仮想歩行者121は、下肢、胴体、頭部、を有する。防眩制御では、仮想歩行者121の少なくとも頭部に対して強い光を照射しないことが望まれる。これに対し、仮想自動車120のドライバ99からの視認性を考えると、防眩制御中であっても、仮想歩行者121の一部、たとえば下肢や胴体に対しては光を照射することが望まれる。
前灯制御装置17は、同図に示すように、仮想歩行者121の下肢および胴体に対して光を照射し、頭部に対しては光を照射しないように、フロントライト装置33の照射範囲113,114を制御することが望ましい。
【0105】
このため、本実施形態の評価用シミュレーションシステム90において、モニタ画像生成装置91は、
図12のステップST29の対象物照度の演算処理において、対象物である仮想歩行者121を複数の部分に分割し、その分割した部分ごとの輝度に基づいて照度を演算する。
図18の場合、モニタ画像生成装置91は、対象物である仮想歩行者121を下肢、胴体および頭部に分割し、下肢の照度、胴体の照度、および頭部の照度を演算する。
このために、モニタ画像生成装置91は、同図に示すように、対象物である仮想歩行者121の下肢についての仮想的な照度計133、胴体についての仮想的な照度計132、および、頭部についての仮想的な照度計131、を用いてよい。そして、これらの分割部分ごとの仮想的な照度計131~120は、対象物である仮想歩行者121が仮想空間を移動すると、それに追従して仮想空間を移動することになる。
【0106】
このように、本実施形態のモニタ画像生成装置91は、モニタ画像生成部として、仮想空間において仮想自動車120の周囲に存在する仮想的な対象物である仮想歩行者121の照度を、ドライバ用モニタ101に表示させる視野画像110での仮想歩行者121の輝度に基づいて、仮想歩行者121を複数に分割する部分ごとに、演算する、ことができる。
開発者は、この対象物である仮想歩行者121の下肢の照度、胴体の照度、および頭部の照度を比較できる。そして、開発者は、前灯制御装置17が、防眩制御において所望の照射範囲113,114を得ながら仮想歩行者121の頭部への照射をしないように制御できていることを評価することができる。
【0107】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0108】
たとえば上述した実施形態では、評価用シミュレーションシステム90を、開発中の前灯制御装置17の検証に用いる場合を例に説明している。
評価用シミュレーションシステム90は、この他にも、自動車1に設けられる前灯制御装置17以外の制御装置の検証に用いることもできる。評価用シミュレーションシステム90は、自動車1に設けられる前灯制御装置17以外の制御装置について、自動車1に対応する仮想自動車120がドライバ99の操作の下で仮想空間を走行する制御下で動作シミュレーションすることができる。
また、評価用シミュレーションシステム90で検証可能な制御装置は、開発中の自動車1のものに限られない。評価用シミュレーションシステム90は、たとえば、販売した実車に設けられていた前灯制御装置17などの制御装置の検証のためにも利用することができる。
【0109】
上述した実施形態では、評価用シミュレーションシステム90のモデル演算装置92は、開発中の自動車1について既に作成している設計リソースを用いて、モデル演算を実行している。
この他にもたとえば、自動車1のメーカや試験機関では、既に開発している他の自動車についての設計リソースを有している。モデル演算装置92は、このような他の自動車について既に作成している設計リソースを用いて、モデル演算を実行してもよい。
さらに他にもたとえば、モデル演算装置92は、実用化される実車ではなく、仮想的に規定されたモデル車両についてのプログラムを実行して、モデル演算を実行してもよい。
【符号の説明】
【0110】
1…自動車(車両)、2…対向車、3…歩行者、4…左ハイビームの照射範囲、5…右ハイビームの照射範囲、6…左ロービームの照射範囲、7…右ロービームの照射範囲、10…制御系、11…操作制御装置、12…走行制御装置、13…駆動制御装置、14…制動制御装置、15…操舵制御装置、16…検出制御装置、17…前灯制御装置、18…車両通信ネットワーク、21…ステアリングホイール(操作部材)、22…アクセルペダル(操作部材)、23…ブレーキペダル(操作部材)、24…シフトレバ(操作部材)、25…タッチパネル(操作部材)、26…エンジン、27…トランスミッション、28…ブレーキ装置、29…操舵装置、30…車外カメラ、31…Lidar、32…レーザ装置、33…フロントライト装置、39…太陽モデル、40…制御装置、41…通信ポート、42…タイマ、43…出力ポート、43…入出力ポート、44…メモリ、45…CPU、46…内部バス、47…デバイス、48…制御プログラム、49…制御データ、51…制御プログラム、52…入出力制御プログラム、53…制御プログラム、54…入出力制御プログラム、61…右フロントランプモジュール、62…左フロントランプモジュール、63…右発光制御部、64…左発光制御部、65…アクチュエータ、71…ロービーム用光源、72…ハイビーム用光源、73…照射範囲、74…光源ごとの仮想的な照度計、81…照度計、90…評価用シミュレーションシステム、91…モニタ画像生成装置、92…モデル演算装置、93…走行環境生成装置、94…イベント発生装置、95…同期中継装置、96…情報通信ネットワーク、98…照度計、99…ドライバ、101…ドライバ用モニタ、102…カメラ画像生成装置、103…カメラモジュール、104…カメラ用モニタ、105…車外カメラ、110…視野画像、111…対向車(対象物)、112…歩行者(対象物)、113,114…照射範囲、117…区画、120…仮想自動車(仮想車両)、121…仮想歩行者、122…仮想対向車、131~133…対象物を分割する部分ごとの仮想的な照度計、140…モニタ画像生成装置、141…イベント発生部、142…走行環境生成部、143…モニタ画像生成部、144…対象物情報取得部