(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】差動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 48/08 20060101AFI20240828BHJP
【FI】
F16H48/08
(21)【出願番号】P 2024504280
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2022009206
(87)【国際公開番号】W WO2023166679
(87)【国際公開日】2023-09-07
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000154347
【氏名又は名称】株式会社ユニバンス
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】加藤 忠彦
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102016218747(DE,A1)
【文献】特開昭61-81226(JP,A)
【文献】特開昭63-315327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 48/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸上に連結した第1の出力軸および第2の出力軸と、
前記中心軸を中心に自転する第1のサイドギヤと、
前記第1の出力軸が結合し前記中心軸を中心に自転する第2のサイドギヤと、
前記第1のサイドギヤ及び前記第2のサイドギヤにかみあい、前記中心軸に垂直な第1軸を中心に自転し前記中心軸の周りを公転する第1のピニオンと、
前記第1のピニオンと一体に前記第1軸を中心に自転し前記中心軸の周りを公転する第2のピニオンと、
前記第2のピニオンにかみあい、前記中心軸を中心に自転する第3のサイドギヤと、
前記第2の出力軸が結合し前記中心軸を中心に自転する第4のサイドギヤと、
前記第3のサイドギヤ及び前記第4のサイドギヤにかみあい、前記中心軸に直交する第2軸を中心に自転する第3のピニオンと、を備える差動装置。
【請求項2】
前記中心軸の周りの回転が規制された支持部を備え、
前記第2軸は、前記支持部に配置されている請求項1記載の差動装置。
【請求項3】
前記第2軸は、前記第1軸が公転する軌跡を含む平面上に配置され、前記第2のピニオンより前記中心軸の近くに位置する請求項1又は2に記載の差動装置。
【請求項4】
前記第3のサイドギヤは、前記第2のピニオンにかみあう歯面と前記第3のピニオンにかみあう歯面とが、前記第3のサイドギヤの歯幅方向に連続している請求項1から3のいずれかに記載の差動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの出力軸にトルクを配分する差動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中心軸上に連結した第1の出力軸および第2の出力軸と、中心軸を中心に自転する第1のサイドギヤ及び第2のサイドギヤと、第1のサイドギヤ及び第2のサイドギヤの軸方向の内側にそれぞれ配置された第3のサイドギヤ及び第4のサイドギヤと、第1のサイドギヤと第2のサイドギヤとにかみあう第1のピニオンと、第3のサイドギヤと第4のサイドギヤとにかみあい第1のピニオンと一体に自転し中心軸の周りを公転する第2のピニオンと、を備える差動装置は知られている(非特許文献1)。非特許文献1に開示された先行技術は、第1のサイドギヤから入力されたトルクを配分し、第2のサイドギヤから第1の出力軸へ、第4のサイドギヤから第2の出力軸へそれぞれ出力する。先行技術は第1のサイドギヤからトルクが入力されると、第2のサイドギヤが第4のサイドギヤと逆の向きに回転するので、第1の出力軸が第2の出力軸と同じ向きに回転するように、第2のサイドギヤと第1の出力軸との間にアイドラーギヤを含む機構が配置されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】ヘルマン・シュタットフェルト(Hermann J. Stadtfeld)、島田哲也、EV・HEV向けダブルディファレンシャル装置の開発、歯車装置の設計・製造・評価に関する革新技術のための試験・調査研究分科会、一般社団法人日本機械学会、2021年5月14日、VIII-6、p. 23, 24, 28
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術では、第2のサイドギヤと第1の出力軸との間に配置されたアイドラーギヤを含む機構の分だけ差動装置の寸法が大きくなるという問題点がある。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、寸法を小さくできる差動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の差動装置は、中心軸上に連結した第1の出力軸および第2の出力軸と、中心軸を中心に自転する第1のサイドギヤと、第1の出力軸が結合し中心軸を中心に自転する第2のサイドギヤと、第1のサイドギヤ及び第2のサイドギヤにかみあい、中心軸に垂直な第1軸を中心に自転し中心軸の周りを公転する第1のピニオンと、第1のピニオンと一体に第1軸を中心に自転し中心軸の周りを公転する第2のピニオンと、第2のピニオンにかみあい、中心軸を中心に自転する第3のサイドギヤと、第2の出力軸が結合し中心軸を中心に自転する第4のサイドギヤと、第3のサイドギヤ及び第4のサイドギヤにかみあい、中心軸に直交する第2軸を中心に自転する第3のピニオンと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
第1の態様によれば、第1のサイドギヤ及び第2のサイドギヤは中心軸を中心に自転し、第1の出力軸は第2のサイドギヤに結合する。第1のサイドギヤと第2のサイドギヤとにかみあう第1のピニオンは、中心軸に垂直な第1軸を中心に自転し中心軸の周りを公転する。第2のピニオンは、第1のピニオンと一体に第1軸を中心に自転し中心軸の周りを公転する。第2のピニオンにかみあう第3のサイドギヤ、及び、第2の出力軸が結合する第4のサイドギヤは、中心軸を中心に自転する。第3のサイドギヤと第4のサイドギヤとにかみあう第3のピニオンは、中心軸に直交する第2軸を中心に自転する。
【0008】
第1のサイドギヤからトルクが入力されると、第3のサイドギヤは第2のサイドギヤと逆の向きに回転し、第3のピニオンによって、第4のサイドギヤは第3のサイドギヤと逆の向きに回転する。その結果、第4のサイドギヤは第2のサイドギヤと同じ向きに回転するので、第4のサイドギヤに結合する第2の出力軸は、第2のサイドギヤに結合する第1の出力軸と同じ向きに回転する。先行技術が有するアイドラーギヤを含む機構が不要になるので、寸法を小さくできる。
【0009】
第2の態様によれば、第1の態様において、中心軸の周りの回転が規制された支持部に第2軸が配置されている。よって第2軸を中心に自転する第3のピニオンが中心軸の周りを公転しないように、第2軸を支持部に固定できる。
【0010】
第3の態様によれば、第1又は第2の態様において、第2軸は、第2のピニオンより中心軸の近くに位置し、第1軸が公転する軌跡を含む平面上に配置されている。これにより第3のピニオンを配置するスペースを確保できる。
【0011】
第4の態様によれば、第1から第3の態様のいずれかにおいて、第3のサイドギヤは、第2のピニオンにかみあう歯面と第3のピニオンにかみあう歯面とが、第3のサイドギヤの歯幅方向に連続している。これにより第2のピニオンにかみあうサイドギヤと第3のピニオンにかみあうサイドギヤをそれぞれ設けずに済むようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施の形態における差動装置のスケルトン図である。
【
図2】第2実施の形態における差動装置のスケルトン図である。
【
図3】第3実施の形態における差動装置のスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1を参照して第1実施の形態の差動装置10を説明する。
図1は第1実施の形態における差動装置10のスケルトン図である。差動装置10は、入力されたトルクをギヤのかみあいによって配分しつつ回転速度を減速する装置である。本実施形態では、自動車に配置された差動装置10を説明する。
【0014】
差動装置10は、中心軸O上に連結した第1の出力軸11及び第2の出力軸12と、中心軸Oを中心に自転する第1のサイドギヤ13及び第2のサイドギヤ14と、第1のサイドギヤ13及び第2のサイドギヤ14にかみあう第1のピニオン15と、第1のピニオン15よりも中心軸Oの近くに配置された第2のピニオン16と、中心軸Oを中心に自転する第3のサイドギヤ18及び第4のサイドギヤ21と、第3のサイドギヤ18及び第4のサイドギヤ21にかみあう第3のピニオン22と、を備えている。サイドギヤ13,14,18,21及びピニオン15,16,22はベベルギヤであり、ベベルギヤ同士のかみあいにより動力の伝達方向を変更する。
【0015】
第1から第4のサイドギヤ13,14,18,21は、第1のサイドギヤ13、第4のサイドギヤ21、第3のサイドギヤ18及び第2のサイドギヤ14の順に、中心軸Oに沿って配置されている。第1のサイドギヤ13の外径は第4のサイドギヤ21の外径より大きく、第2のサイドギヤ14の外径は第3のサイドギヤ18の外径より大きい。第1のサイドギヤ13の歯面は、第4のサイドギヤ21に近いほど縮径しており、第4のサイドギヤ21の歯面は、第3のサイドギヤ18に近いほど縮径している。第2のサイドギヤ14の歯面は、第3のサイドギヤ18に近いほど縮径しており、第3のサイドギヤ18の歯面19,20は、第4のサイドギヤ21に近いほど縮径している。
【0016】
第1のサイドギヤ13に、中心軸Oと同軸に配置された被動ギヤ29が結合している。モーター30が駆動する駆動ギヤ31が、被動ギヤ29にかみあう。これにより駆動ギヤ31及び被動ギヤ29を介してモーター30のトルクが第1のサイドギヤ13に入力される。
【0017】
第1の出力軸11は第2のサイドギヤ14に中心軸O上で結合している。第2の出力軸12は、第1のサイドギヤ13を中心軸Oに沿って貫通し第4のサイドギヤ21に中心軸O上で結合している。第1の出力軸11及び第2の出力軸12は、中心軸O上に連結していれば、軸の全長に亘って同軸である必要はない。第1の出力軸11及び第2の出力軸12は、中心軸Oに対して角度があっても良い。
【0018】
第1の出力軸11及び第2の出力軸12には、それぞれ車輪32が取り付けられている。第1の出力軸11及び第2の出力軸12は自動車の駆動軸であり、差動装置10は、駆動ギヤ31の回転を減速して車輪32に伝えると共に左右の車輪32の回転速度差を許容する。
【0019】
第2のピニオン16は第3のサイドギヤ18にかみあう。第2のピニオン16の外径は第1のピニオン15の外径より小さい。ピニオン15,16の歯面は、中心軸Oに近いほど縮径している。第2のピニオン16は、第1のピニオン15の歯数と異なる歯数を有する。サイドギヤ13,14,18,21及びピニオン15,16の歯数は、減速比などを考慮して適宜設定される。第1のピニオン15や第2のピニオン16の数は、モーター30の最大トルク、自動車の重量や用途などにより1個または複数個がそれぞれ適宜設定される。
【0020】
第1軸17は、第1のピニオン15と第2のピニオン16とを連結している。第1軸17は中心軸Oに直交する。第1軸17によって連結された第1のピニオン15及び第2のピニオン16は、一体となって第1軸17を中心に自転し、一体となって中心軸Oの周りを公転する。
【0021】
第3のピニオン22は、第2のピニオン16よりも中心軸Oの近くに配置されている。第3のピニオン22の外径は第2のピニオン16の外径より小さい。第3のピニオン22の歯面は、中心軸Oに近いほど縮径している。第3のピニオン22の数は、モーター30の最大トルク、自動車の重量や用途などにより1個または複数個が適宜設定される。第3のピニオン22は、中心軸Oに直交する第2軸23を中心に自転する。第2軸23は、第3のピニオン22に対して中心軸Oから離れる方向へ延びている。第2軸23は支持部24に配置されている。
【0022】
支持部24は、第2のピニオン16と第3のピニオン22との間に配置された第1部25と、第1のサイドギヤ13と第4のサイドギヤ21との間に配置された第2部26と、第1のサイドギヤ13を中心軸Oに沿って貫通する第3部27と、を備え、それらがつながっている。第1部25に第3のピニオン22の第2軸23が配置されている。第3部27は差動装置10のケース28に固定されているので、支持部24は中心軸Oの周りの回転が規制されている。よって第3のピニオン22は中心軸Oの周りを公転できない。
【0023】
第1部25に取り付けられた第2軸23は、中心軸Oの周りを第1軸17が公転する軌跡を含む平面33上に位置する。第2軸23は、第2のピニオン16より中心軸Oの近くに位置するので、第2のピニオン16と中心軸Oとの間に、第3のピニオン22を配置するスペースを確保できる。また、平面33に対し中心軸Oの方向に延びる第3部27が設けられているので、第3部27を介して支持部24を容易にケース28に固定できる。
【0024】
本実施形態では、第3のサイドギヤ18は、第2のピニオン16にかみあう歯面19と、第3のピニオン22にかみあう歯面20と、が第3のサイドギヤ18の歯幅方向に分かれている。これにより歯形の異なる歯面19,20をもつ第3のサイドギヤ18を簡易に製造できる。
【0025】
これに限らず、歯面19,20をそれぞれもつ2つのサイドギヤを一体とし第3のサイドギヤ18としても良い。これにより歯形の異なる歯面19,20をもつ第3のサイドギヤ18を簡易に製造できる。また、歯面19,20が歯幅方向に連続した第3のサイドギヤ18としても良い。これにより第2のピニオン16にかみあう歯面19と第3のピニオン22にかみあう歯面20とを分けて設けずに済むようにできる。
【0026】
差動装置10は、モーター30のトルクが第1のサイドギヤ13から入力されると、第1のピニオン15及び第2のピニオン16の自転および公転により各ギヤが回転し、第2のサイドギヤ14及び第4のサイドギヤ21にトルクを配分する。第3のサイドギヤ18は第2のサイドギヤ14と逆の向きに回転し、第2軸23を中心に自転する第3のピニオン22によって、第4のサイドギヤ21は第3のサイドギヤ18と逆の向きに回転する。その結果、第4のサイドギヤ21は第2のサイドギヤ14と同じ向きに回転するので、第4のサイドギヤ21に結合する第2の出力軸12は、第2のサイドギヤ14に結合する第1の出力軸11と同じ向きに回転する。これにより車輪32を駆動して自動車は走行する。先行技術が有する、2つの出力軸11,12の回転の向きを同じにするためのアイドラーギヤを含む機構を不要にできるので、差動装置10の寸法を小さくできる。
【0027】
図2を参照して第2実施の形態の差動装置40を説明する。第2実施形態において、第1実施形態で説明した部分と同一の部分は、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図2は第2実施の形態における差動装置40のスケルトン図である。
【0028】
差動装置40は、第1の出力軸11、第2の出力軸12、第1のサイドギヤ13、第2のサイドギヤ14、第1のピニオン15及び第2のピニオン16を備え、さらに中心軸Oを中心に自転する第3のサイドギヤ41、第4のサイドギヤ44及び第5のサイドギヤ45と、第3のサイドギヤ41及び第4のサイドギヤ44にかみあう第3のピニオン46と、を備えている。サイドギヤ13,14,41,44,45及びピニオン15,16,46はベベルギヤであり、ベベルギヤ同士のかみあいにより動力の伝達方向を変更する。
【0029】
第1から第5のサイドギヤ13,14,41,44,45は、第1のサイドギヤ13、第3のサイドギヤ41、第4のサイドギヤ44、第5のサイドギヤ45及び第2のサイドギヤ14の順に、中心軸Oに沿って配置されている。第1のサイドギヤ13の外径は第3のサイドギヤ41の外径より大きい。第5のサイドギヤ45の外径は第4のサイドギヤ44の外径より大きく、第2のサイドギヤ14の外径は第5のサイドギヤ45の外径より大きい。
【0030】
第2の出力軸12は、第1のサイドギヤ13及び第3のサイドギヤ41を中心軸Oに沿って貫通し第4のサイドギヤ44に中心軸O上で結合している。第1のサイドギヤ13の歯面は、第3のサイドギヤ41に近いほど縮径しており、第3のサイドギヤ41の歯面は、第4のサイドギヤ44に近いほど縮径している。第2のサイドギヤ14の歯面は、第5のサイドギヤ45に近いほど縮径しており、第5のサイドギヤ45の歯面は、第4のサイドギヤ44に近いほど縮径している。第4のサイドギヤ44の歯面は、第3のサイドギヤ41に近いほど縮径している。
【0031】
第2のピニオン16は、第3のサイドギヤ41及び第5のサイドギヤ45にかみあう。第3のピニオン46は、第2のピニオン16よりも中心軸Oの近くに配置されている。第3のピニオン46の外径は第2のピニオン16の外径より小さい。第3のピニオン46は、中心軸Oに直交する第2軸47を中心に自転する。第2軸47は、第3のピニオン46に対して中心軸Oに近づく方向へ延びている。第2軸47は支持部48に配置されている。
【0032】
支持部48は、第1のサイドギヤ13及び第3のサイドギヤ41を中心軸Oに沿って貫通しており、差動装置40のケース28に固定されている。支持部48はケース28に固定されているので、中心軸Oの周りの回転が規制されている。よって第3のピニオン46は中心軸Oの周りを公転できない。
【0033】
支持部48に取り付けられた第2軸47は、中心軸Oの周りを第1軸17が公転する軌跡を含む平面33上に位置する。第2軸47は、第2のピニオン16より中心軸Oの近くに位置するので、第2のピニオン16と中心軸Oとの間に、第3のピニオン46を配置するスペースを確保できる。また、平面33に対し中心軸Oの方向に延びる支持部48が設けられているので、支持部48を容易にケース28に固定できる。
【0034】
本実施形態では、第3のサイドギヤ41は、第2のピニオン16にかみあう歯面42と、第3のピニオン46にかみあう歯面43と、が第3のサイドギヤ41の歯幅方向に連続している。すなわち歯面42に設けられた歯が、歯面43に設けられた歯につながっている。よって第2のピニオン16にかみあうサイドギヤと第3のピニオン46にかみあうサイドギヤをそれぞれ設けずに済むようにできる。これに限らず、第2のピニオン16にかみあう歯面42をもつサイドギヤと、第3のピニオン46にかみあう歯面43をもつサイドギヤと、に分け、2つに分けたサイドギヤを連結して第3のサイドギヤ41とすることは当然可能である。
【0035】
差動装置40は、モーター30のトルクが第1のサイドギヤ13から入力されると、第1のピニオン15及び第2のピニオン16の自転および公転により各ギヤが回転し、第2のサイドギヤ14及び第4のサイドギヤ44にトルクを配分する。第3のサイドギヤ41は第2のサイドギヤ14と逆の向きに回転し、第2軸47を中心に自転する第3のピニオン46によって、第4のサイドギヤ44は第3のサイドギヤ41と逆の向きに回転する。その結果、第4のサイドギヤ44は第2のサイドギヤ14と同じ向きに回転するので、第4のサイドギヤ44に結合する第2の出力軸12は、第2のサイドギヤ14に結合する第1の出力軸11と同じ向きに回転する。よって差動装置40は、第1実施形態における差動装置10と同様の作用効果を実現できる。
【0036】
図3を参照して第3実施の形態の差動装置50を説明する。第3実施形態において、第1実施形態で説明した部分と同一の部分は、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図3は第3実施の形態における差動装置50のスケルトン図である。
【0037】
差動装置50は、中心軸O上に連結した第1の出力軸11及び第2の出力軸12と、中心軸Oを中心に自転する第1のサイドギヤ51及び第2のサイドギヤ52と、第1のサイドギヤ51及び第2のサイドギヤ52にかみあう第1のピニオン53と、第1のピニオン53よりも中心軸Oから遠くに配置された第2のピニオン54と、中心軸Oを中心に自転する第3のサイドギヤ56、第4のサイドギヤ59及び第5のサイドギヤ60と、第3のサイドギヤ56及び第4のサイドギヤ59にかみあう第3のピニオン61と、を備えている。サイドギヤ51,52,56,59,60及びピニオン53,54,61はベベルギヤであり、ベベルギヤ同士のかみあいにより動力の伝達方向を変更する。
【0038】
第1から第5のサイドギヤ51,52,56,59,60は、第3のサイドギヤ56、第1のサイドギヤ51、第2のサイドギヤ52、第5のサイドギヤ60及び第4のサイドギヤ59の順に、中心軸Oに沿って配置されている。第1のサイドギヤ51に被動ギヤ29が結合している。第1の出力軸11は、第1のサイドギヤ51及び第3のサイドギヤ56を中心軸Oに沿って貫通し第2のサイドギヤ52に中心軸O上で結合している。第2の出力軸12は第4のサイドギヤ59に中心軸O上で結合している。
【0039】
第3のサイドギヤ56の外径は第1のサイドギヤ51の外径より大きい。第5のサイドギヤ60の外径は第2のサイドギヤ52の外径より大きく、第4のサイドギヤ59の外径は第5のサイドギヤ60の外径より大きい。第3のサイドギヤ56の歯面は、第1のサイドギヤ51に近いほど縮径しており、第1のサイドギヤ51の歯面は、第2のサイドギヤ52に近いほど縮径している。第4のサイドギヤ59の歯面は、第5のサイドギヤ60に近いほど縮径しており、第5のサイドギヤ60の歯面は、第2のサイドギヤ52に近いほど縮径している。第2のサイドギヤ52の歯面は、第1のサイドギヤ51に近いほど縮径している。
【0040】
第2のピニオン54は第3のサイドギヤ56及び第5のサイドギヤ60にかみあう。第2のピニオン54の外径は第1のピニオン53の外径より大きい。第2のピニオン54は、第1のピニオン53の歯数と異なる歯数を有する。中心軸Oに直交する第1軸55は、第1のピニオン53と第2のピニオン54とを連結している。第1軸55によって連結された第1のピニオン53及び第2のピニオン54は、一体となって第1軸55を中心に自転し、一体となって中心軸Oの周りを公転する。
【0041】
第3のピニオン61は、第2のピニオン54よりも中心軸Oから遠くに配置されている。第3のピニオン61の外径は第2のピニオン54の外径より大きい。第3のピニオン61は、中心軸Oに直交する第2軸62を中心に自転する。第2軸62は、第3のピニオン61に対して中心軸Oから離れる方向へ延びている。第2軸62は差動装置50のケース28に取り付けられている。第2軸62は中心軸Oの周りの回転が規制されるので、第3のピニオン61は中心軸Oの周りを公転できない。
【0042】
ケース28に取り付けられた第2軸62は、中心軸Oの周りを第1軸55が公転する軌跡を含む平面33上に位置する。第3のピニオン61と中心軸Oとの間の距離は、第2のピニオン54と中心軸Oとの間の距離より長いので、第3のピニオン61とケース28との間に第2軸62を配置するスペースを確保できる。
【0043】
本実施形態では、第3のサイドギヤ56は、第2のピニオン54にかみあう歯面57と、第3のピニオン61にかみあう歯面58と、が第3のサイドギヤ56の歯幅方向に連続している。すなわち歯面57に設けられた歯が、歯面58に設けられた歯につながっている。よって第2のピニオン54にかみあうサイドギヤと第3のピニオン61にかみあうサイドギヤをそれぞれ設けずに済むようにできる。これに限らず、第2のピニオン54にかみあう歯面57をもつサイドギヤと、第3のピニオン61にかみあう歯面58をもつサイドギヤと、に分け、2つに分けたサイドギヤを連結して第3のサイドギヤ56とすることは当然可能である。
【0044】
差動装置50は、モーター30のトルクが第1のサイドギヤ51から入力されると、第1のピニオン53及び第2のピニオン54の自転および公転により各ギヤが回転し、第2のサイドギヤ52及び第4のサイドギヤ59にトルクを配分する。第3のサイドギヤ56は第2のサイドギヤ52と逆の向きに回転し、第2軸62を中心に自転する第3のピニオン61によって、第4のサイドギヤ59は第3のサイドギヤ56と逆の向きに回転する。その結果、第4のサイドギヤ59は第2のサイドギヤ52と同じ向きに回転するので、第4のサイドギヤ59に結合する第2の出力軸12は、第2のサイドギヤ52に結合する第1の出力軸11と同じ向きに回転する。よって差動装置50は、第1実施形態における差動装置10と同様の作用効果を実現できる。
【0045】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明はこの実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0046】
実施形態では、第1の出力軸11及び第2の出力軸12にそれぞれ車輪32が取り付けられる場合、すなわち自動車の左右に延びる駆動軸に差動装置10,40,50が設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1の出力軸11及び第2の出力軸12を自動車の前後に延びるように配置し、前後に延びる駆動軸(プロペラシャフト)に差動装置10,40,50を設けることは当然可能である。この場合、差動装置10,40,50は前後軸間の回転速度差を許容する。
【0047】
実施形態では、第1のサイドギヤ13,51にモーター30の駆動力が加えられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1のサイドギヤ13,51にエンジンの駆動力が加えられるようにすることは当然可能である。この場合、エンジンと第1のサイドギヤ13,51との間に変速機を介在させることは当然可能である。
【符号の説明】
【0048】
10,40,50 差動装置
11 第1の出力軸
12 第2の出力軸
13,51 第1のサイドギヤ
14,52 第2のサイドギヤ
15,53 第1のピニオン
16,54 第2のピニオン
17,55 第1軸
18,41,56 第3のサイドギヤ
19,20,42,43,57,58 歯面
21,44,59 第4のサイドギヤ
22,46,61 第3のピニオン
23,47,62 第2軸
24,48 支持部
33 平面