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特許7545615接合体及びその製造方法、集合基板、並びにパワーモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】接合体及びその製造方法、集合基板、並びにパワーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/13 20060101AFI20240828BHJP
【FI】
H01L23/12 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024521298
(86)(22)【出願日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2023041299
【審査請求日】2024-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2022188495
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】酒井 篤士
(72)【発明者】
【氏名】原田 朋幸
(72)【発明者】
【氏名】上島 賢久
(72)【発明者】
【氏名】中山 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 智也
【審査官】金田 孝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-268821(JP,A)
【文献】特開2018-011020(JP,A)
【文献】特開2022-132865(JP,A)
【文献】特開2013-125908(JP,A)
【文献】国際公開第98/54761(WO,A1)
【文献】特開2004-342635(JP,A)
【文献】国際公開第2021/149789(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12-23/15
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック板と、金属板と、前記セラミック板の主面と前記金属板の主面とを接合し、ろう材成分を含む接合部と、を備え、
前記金属板の側面は複数の切断面で構成され、
前記接合部は、前記金属板の前記側面の少なくとも一部と前記セラミック板の前記主面の一部とを覆う被覆部を有し、
前記金属板の厚さ方向に沿う断面でみたときに、
前記金属板の前記切断面から前記セラミック板の前記主面に向かう仮想垂線と前記セラミック板の前記主面との交点から前記セラミック板の前記主面に沿って計測される前記被覆部のはみ出し距離をはみ出し距離Lとしたときに、前記複数の切断面において測定されるはみ出し距離Lの標準偏差が0.1mm未満である、接合体。
【請求項2】
前記複数の切断面において測定される前記被覆部のはみ出し距離Lの平均値が0.1mm以上である、請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
前記複数の切断面において測定される前記被覆部のはみ出し距離Lの平均値が0.6mm以下である、請求項1又は2に記載の接合体。
【請求項4】
前記金属板は、バリ及びダレを有し、前記ダレよりも前記バリの方が前記セラミック板寄りに位置するように前記接合部を介して前記セラミック板に接合されている、請求項1又は2に記載の接合体。
【請求項5】
前記断面でみたときに、前記被覆部は、前記金属板の前記セラミック板側とは反対側の主面から前記セラミック板の前記主面に近づくにつれて、前記金属板の前記側面から離れるように拡がるスカート部を有し、
前記スカート部の輪郭をなす傾斜面は、前記金属板の前記側面から前記セラミック板の前記主面まで延びている、請求項1又は2に記載の接合体。
【請求項6】
多数個取り用のセラミック板と、側面を有する複数の金属板と、前記セラミック板の主面と前記複数の金属板の主面とを接合し、ろう材成分を含む複数の接合部と、を備え、
前記金属板の側面は複数の切断面で構成され、
前記複数の接合部のそれぞれは、前記金属板の前記側面の少なくとも一部と前記セラミック板の前記主面の一部とを覆う被覆部を有し、
前記複数の金属板のうち少なくとも一つの金属板の厚さ方向に沿う断面でみたときに、
前記金属板の前記切断面から前記セラミック板の前記主面に向かう仮想垂線と前記セラミック板の前記主面との交点から前記セラミック板の前記主面に沿って計測される前記被覆部のはみ出し距離をはみ出し距離Lとしたときに、前記複数の切断面において測定されるはみ出し距離Lの標準偏差が0.1mm未満である、集合基板。
【請求項7】
金属基材を打ち抜いて切断面で構成される側面を有する金属板を得る打ち抜き工程と、前記金属板を支持板に第1位置決め治具を用いて仮止めする仮止め工程と、セラミック板の主面にろう材を塗布して塗布層を設ける塗布工程と、前記金属板と前記塗布層とが対向するように、前記セラミック板と前記支持板とを第2位置決め治具を用いながら積層して積層体を作製する積層工程と、前記積層体を加熱して、前記金属板の前記側面の少なくとも一部と前記セラミック板の前記主面の一部とを覆う被覆部を有する接合部によって前記金属板を前記セラミック板に接合する接合工程と、を有し、
前記塗布工程では、前記塗布層の中央部よりも端部の厚みを大きくする、接合体の製造方法。
【請求項8】
前記接合体は、前記打ち抜き工程によって得られる前記金属板の前記切断面から前記セラミック板の前記主面に向かう仮想垂線と前記セラミック板の前記主面との交点から前記セラミック板の前記主面に沿って計測される前記被覆部のはみ出し距離Lの標準偏差が0.1mm未満である、請求項7に記載の接合体の製造方法。
【請求項9】
前記セラミック板は、多数個取り用の第1セラミック板であり、
前記塗布工程では、前記第1セラミック板の前記主面に複数の前記塗布層を設け、
前記積層工程では、複数の前記塗布層のそれぞれを挟むようにして前記第1セラミック板と複数の前記金属板とを前記第2位置決め治具を用いながら積層して前記積層体を作製し、
前記接合工程の後に、前記第1セラミック板を分割して、前記接合体を複数得る、請求項7又は8に記載の接合体の製造方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の接合体と、当該接合体の前記金属板に電気的に接続される半導体素子と、を備えるパワーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接合体及びその製造方法、集合基板、並びにパワーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット及びモータ等の産業機器の高性能化に伴い、大電流及び高電圧を制御するパワーモジュールが使用されている。このようなパワーモジュールに備えられる回路基板は、セラミック基板と銅板とを備えており、これらは活性金属を含有するろう材を介して接合される。このような回路基板等に用いられる接合体の製造方法としては、エッチング法が知られている。
【0003】
一方、特許文献1では、ろう材を介してセラミックス基板の一方の面に配置して積層体を形成する積層体形成工程と、積層体を積層方向に加圧及び加熱することにより、セラミックス基板の一方の面に回路層用金属板を接合して回路層を形成する接合工程と、を備える絶縁回路基板の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-155444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エッチング法を用いて接合体を作製する技術では、金属板を所定のサイズに加工するためにレジスト印刷及びエッチングの工程が必要となる。一方、特許文献1のように金属板を接合する搭載法であれば、このような工程が不要となり、生産効率を向上することができる。ただし、このような搭載法では、金属板とセラミック板との接合不良が生じやすい。
【0006】
そこで、本開示は、接合信頼性に優れる接合体及びその製造方法を提供する。また、本開示は、接合信頼性に優れる接合体を効率よく得ることが可能な集合基板を提供する。また、本開示は、信頼性に優れるパワーモジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面は、以下の接合体を提供する。
【0008】
[1]セラミック板と、切断面で構成される側面を有する金属板と、前記セラミック板の主面と前記金属板の主面とを接合し、ろう材成分を含む接合部と、を備え、
前記接合部は、前記金属板の前記側面の少なくとも一部と前記セラミック板の前記主面の一部とを覆う被覆部を有し、
前記金属板の厚さ方向に沿う断面でみたときに、
前記金属板の前記側面における切断面から前記セラミック板の前記主面に向かう仮想垂線と前記セラミック板の前記主面との交点から前記セラミック板の前記主面に沿って計測される前記被覆部のはみ出し距離Lの標準偏差が0.1mm未満である、接合体。
【0009】
金属板とセラミック板とが接合された接合体では、接合部で接合される金属板の中央部よりも端部における接合が脆弱になり易い。この要因として、金属板の端部において接合部が十分に形成されていなかったり、欠陥が生じていたりすることが考えられる。上記[1]の接合体は、金属板の側面の少なくとも一部とセラミック板の主面の一部とを被覆する被覆部を有する接合部を備える。このような接合部を備えることによって、金属板の端部とセラミック板とを十分に接合することができる。そして、はみ出し距離Lの標準偏差が0.1mm未満であることから、接合部のはみ出し距離Lのばらつきを抑制し、金属板の端部全体を均等にセラミック板に接合することができる。このような接合体は、接合信頼性に優れる。
【0010】
本開示におけるはみ出し距離Lの平均値及び標準偏差は、被覆部において任意に選択される20箇所ではみ出し距離Lを測定して得られた20個の測定値から求められる。位置選択によるばらつきをなくすため、被覆部の外縁に沿って計測される隣り合う測定点の間隔が概ね等しくなるように測定位置を選択することが好ましい。
【0011】
上記[2]の接合体は、以下の[2]~[5]のいずれかであってもよい。
【0012】
[2]前記被覆部のはみ出し距離Lの平均値が0.1mm以上である、[1]に記載の接合体。
[3]前記被覆部のはみ出し距離Lの平均値が0.6mm以下である、[1]又は[2]に記載の接合体。
[4]前記金属板は、バリ及びダレを有し、前記ダレよりも前記バリの方が前記セラミック板寄りに位置するように前記接合部を介して前記セラミック板に接合されている、[1]~[3]のいずれか一つに記載の接合体。
[5]前記断面でみたときに、前記被覆部は、前記金属板の前記セラミック板側とは反対側の主面から前記セラミック板の前記主面に近づくにつれて、前記金属板の前記側面から離れるように拡がるスカート部を有し、
前記スカート部の輪郭をなす傾斜面は、前記金属板の前記側面から前記セラミック板の前記主面まで延びている、[1]~[4]のいずれか一つに記載の接合体。
【0013】
上記[2]の接合体は、被覆部のはみ出し距離Lの平均値が十分に大きい。このため、金属板とセラミック板との接合力を十分に大きくすることができる。上記[3]の接合体は、はみ出し距離Lが過大になることを抑制できる。接合部は導電性を有するため、はみ出し距離Lが過大になることを抑制することによって、接合体を回路基板として用いたときに絶縁性を十分良好に維持することができる。
【0014】
上記[4]の接合体は、金属板の端部において、接合部の欠陥を生じにくくすることができる。このような接合体は、一層優れた接合信頼性を有する。上記[5]の接合体は、金属板の外縁部とセラミック板との接合部分に局所的に生じる残留応力を十分に小さくすることができる。このような接合体は、信頼性に優れる。
【0015】
本開示の一側面は、以下の集合基板を提供する。
【0016】
[6]多数個取り用のセラミック板と、切断面で構成される側面を有する複数の金属板と、前記セラミック板の主面と前記複数の金属板の主面とを接合し、ろう材成分を含む複数の接合部と、を備え、
前記複数の接合部のそれぞれは、前記金属板の前記側面の少なくとも一部と前記セラミック板の前記主面の一部とを覆う被覆部を有し、
前記複数の金属板のうち少なくとも一つの金属板の厚さ方向に沿う断面でみたときに、
前記金属板の前記切断面から前記セラミック板の前記主面に向かう仮想垂線と前記セラミック板の前記主面との交点から前記セラミック板の前記主面に沿って計測される前記被覆部のはみ出し距離Lの標準偏差が0.1mm未満である、集合基板。
【0017】
上記[6]の集合基板は、金属板の側面の少なくとも一部とセラミック板の主面の一部とを被覆する被覆部を有する。このような被覆部を有する接合部を備えることによって、金属板の端部とセラミック板とを十分に接合することができる。そして、少なくとも一つの金属板の厚さ方向に沿う断面でみたときに、はみ出し距離Lの標準偏差が0.1mm未満であることから、はみ出し距離Lのばらつきを抑制できる。このため、金属板の端部全体を接合部によって均等にセラミック板に接合することができる。したがって、このような集合基板から、接合信頼性に優れる接合体を得ることができる。
【0018】
本開示の一側面は、以下の接合体の製造方法を提供する。
【0019】
[7]金属基材を打ち抜いて切断面で構成される側面を有する金属板を得る打ち抜き工程と、前記金属板を支持板に第1位置決め治具を用いて仮止めする仮止め工程と、セラミック板の主面にろう材を塗布して塗布層を設ける塗布工程と、前記金属板と前記塗布層とが対向するように、前記セラミック板と前記支持板とを第2位置決め治具を用いながら積層して積層体を作製する積層工程と、前記積層体を加熱して、前記金属板の側面の少なくとも一部と前記セラミック板の前記主面の一部とを覆う被覆部を有する接合部によって前記金属板を前記セラミック板に接合する接合工程と、を有し、
前記塗布工程では、前記塗布層の中央部よりも端部の厚みを大きくする、接合体の製造方法。
【0020】
上記[7]の製造方法では、第1位置決め治具を用いる仮止め工程を有するとともに第2位置決め治具を用いながらセラミック板と金属板が仮止めされた支持板とを積層する積層工程を有する。そして、塗布工程において、塗布層の中央部よりも端部の方の厚みが大きくなるように、セラミック板の主面にろう材を塗布する。これによって、金属板とセラミック板との位置合わせ精度が向上し、金属板の端部とセラミック板の接合状態のばらつきを十分に低減することができる。したがって、このような製造方法で得られる接合体は、接合信頼性に優れる。
【0021】
上記[7]の製造方法は、以下の[8]又は[9]であってもよい。
【0022】
[8]前記接合体は、前記打ち抜き工程によって得られる前記金属板の前記切断面から前記セラミック板の前記主面に向かう仮想垂線と前記セラミック板の前記主面との交点から前記セラミック板の前記主面に沿って計測される前記被覆部のはみ出し距離Lの標準偏差が0.1mm未満である、[7]に記載の接合体の製造方法。
[9]前記セラミック板は、多数個取り用の第1セラミック板であり、
前記塗布工程では、前記第1セラミック板の前記主面に複数の前記塗布層を設け、
前記積層工程では、複数の前記塗布層のそれぞれを挟むようにして前記第1セラミック板と複数の前記金属板とを前記第2位置決め治具を用いながら積層して前記積層体を作製し、
前記接合工程の後に、前記第1セラミック板を分割して、前記接合体を複数得る、[7]又は[8]に記載の接合体の製造方法。
【0023】
上記[8]の製造方法では、被覆部のはみ出し距離Lのばらつきを十分に小さくすることができる。これによって、接合信頼性に一層優れる接合体を製造することができる。上記[9]の製造方法では、接合信頼性に優れる複数の接合体を同時に製造することができる。したがって、生産効率に優れる。
【0024】
本開示の一側面は、以下のパワーモジュールを提供する。
【0025】
[10]上記[1]~[5]のいずれか一つの接合体、或いは、上記[7]~[9]のいずれか一つの製造方法で得られる接合体と、当該接合体の前記金属板に電気的に接続される半導体素子と、を備えるパワーモジュール。
【0026】
上記[10]のパワーモジュールは、上述のいずれかの接合体又はいずれかの製造方法で得られる接合体と、当該接合体の金属板に電気的に接続される半導体素子と、を備える。このようなパワーモジュールは、上述のいずれかの接合体又はいずれかの製造方法で得られる接合体を備えることから信頼性に優れる。
【発明の効果】
【0027】
接合信頼性に優れる接合体及びその製造方法を提供することができる。接合信頼性に優れる接合体を効率よく得ることが可能な集合基板を提供することができる。信頼性に優れるパワーモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】金属板の厚さ方向に沿う接合体の断面図である。
図2】金属板の厚さ方向に沿う接合体の走査型電子顕微鏡(SEM)による断面写真(SEM写真)の一例である。
図3】集合基板の斜視図である。
図4】パワーモジュールの断面図である。
図5】支持板とこれに取り付けられた仮止め材を示す図である。
図6】支持板とこれに仮止めされた金属板を示す図である。
図7】格子治具と、これを用いて支持板に仮止めされる金属板を示す図である。
図8図7のVIII-VIII線断面図である。
図9】セラミック板に形成された塗布層と、金属板が仮止めされた支持板とを積層する様子を示す図である。
図10】第1積層体の一部を示す斜視図である。
図11】塗布層が設けられたセラミック板と、塗布層に貼り合わせられる金属板の厚さ方向に沿う断面図である。
図12】複数の第1積層体と、これらを積層することによって形成される第2積層体の断面図である。
図13】囲い治具の斜視図である。
図14】第2積層体が加圧装置で加圧された状態を示す断面図である。
図15】第2積層体が加熱装置に導入されたときの状態を示す断面図である。
図16】集合基板から支持板を取り外したときの状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、場合により図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。本開示において、「~」の記号で示される各数値範囲は、下限値及び上限値を含む。すなわち、「A~B」で示される数値範囲は、A以上且つB以下を意味する。上限値のみを有する数値範囲と下限値のみを有する数値範囲を組み合わせた数値範囲も本開示に含まれる。各数値範囲の上限又は下限をいずれかの実施例の数値で置き換えたものも、本開示に含まれる。複数の材料が例示されている場合、そのうちの一種を単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
一実施形態において、接合体は、セラミック板と、金属板と、セラミック板の主面と金属板の主面とを接合し、ろう材成分を含む接合部と、を備える。接合体は例えば回路基板であってよい。金属板は、電気回路を構成してもよいし、放熱板であってもよい。一枚のセラミック板の一方の主面に接合される金属板は、一つであってもよいし、複数であってもよい。セラミック板の一方の主面にのみ金属板が接合されてもよいし、両方の主面に金属板が接合されてもよい。セラミック板の材質は特に制限されず、例えば、窒化物焼結体、炭化物焼結体、又は酸化物焼結体で構成されていてよい。具体的には、窒化ケイ素焼結体、窒化アルミニウム焼結体、酸化アルミニウム焼結体、及び炭化ケイ素焼結体等が挙げられる。セラミック板の板状であれば特に制限されない。セラミック板の厚みは、例えば0.2~2mmであってよく、0.25~1.5mmであってもよい。
【0031】
金属板は、例えば銅板であってよい。金属板の側面は、切断面で構成される。このような金属板は、例えば打ち抜き加工によって得られる。このため、金属板はダレ(ダレ面)及びバリ(バリ面)を有していてよい。この場合、ダレよりもバリの方がセラミック板寄りに位置するように接合部を介してセラミック板に接合されていてよい。これによって、金属板の端部における接合部にボイド等が生じ難くなり、金属板の端部を強固にセラミック板に固着させることができる。金属板の形状は特に限定されず、角柱形状又は四角柱形状であってよい。金属板の少なくとも一部の角は面取り加工されていてもよい。金属板の厚みは、例えば0.1~2.0mmであってよく、0.2~1.5mmであってもよい。金属板は表面にめっき膜を有していてもよい。
【0032】
接合層は、セラミック板と金属板とを接合する層であり、ろう材成分を含む。このため、ろう材層と称されることもある。接合層は、例えば、ろう材に由来する銀、又は銀及び銅を含んでよい。接合層は、さらに、ろう材に由来する錫及び活性金属からなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属を含有してよい。接合層において、二種以上の金属は合金となっていてもよい。活性金属は、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、及びニオブからなる群より選ばれる一種又は二種以上を含んでいてよい。接合層に含まれる銀及び銅は、例えばAg-Cu共晶合金等の合金として含まれていてもよい。接合層における銀の含有量は、Ag換算で45~95質量%であってよく、50~95質量%であってもよい。接合層における銀及び銅の合計含有量は、それぞれAg及びCuに換算して65~100質量%であってよく、70~99質量%であってよく、90~98質量%であってもよい。これによって、接合層における残留応力を十分に低減しつつ、接合層の緻密性を向上することができる。
【0033】
接合層における活性金属の含有量は、Ag及びCuの合計100質量部に対して、0.5~8質量部であってよい。活性金属の含有量を0.5質量部以上とすることで、セラミック板と接合層との接合性を向上することができる。一方、活性金属の含有量を8質量部以下とすることで、接合界面に脆弱な合金層が形成されることを抑制できる。
【0034】
接合層に含有される上記金属は、窒化物、酸化物、炭化物又は水素化物として含まれていてもよい。一例として、接合層は、窒化チタン及び/又は水素化チタン(TiH)を含んでいてよい。これによって、セラミック板と金属板との接合強度を十分に高くすることができる。AgとCuの合計100質量部に対するTiHの含有量は例えば1~8質量部であってよい。
【0035】
図1は、金属板の厚さ方向(積層方向)に沿う接合体の断面の一部を示している。接合部40は、金属板60の側面62の少なくとも一部とセラミック板20の主面20Aの一部とを覆う被覆部42を有する。被覆部42は、金属板60の主面60Aからセラミック板20の主面20Aに近づくにつれて、金属板60の側面62から離れるように拡がるスカート部44を有する。スカート部44の輪郭をなす傾斜面44Sは、金属板60の側面62からセラミック板20の主面20Aまで延びている。接合体100は、スカート部44を有することによって、金属板の外縁部とセラミック板との接合部分における局所的な応力集中を抑制し、信頼性をさらに向上することができる。
【0036】
変形例では、被覆部42は、金属板60の側面62の全てを覆っていてもよい。被覆部42の全体がスカート部44で構成されていなくてもよい。例えば、図1において、被覆部42は、金属板60の側面62の上部では側面62に沿って金属板60を覆う部分と、側面62の中央部より下方又は下部を覆うスカート部44と、を有していてよい。
【0037】
被覆部42のはみ出し距離Lの平均値は、0.1mm以上、0.15mm以上、又は0.2mm以上であってよい。はみ出し距離Lの平均値を大きくすることによって、金属板60とセラミック板20との接合力を十分に高くすることができる。
【0038】
はみ出し距離Lの平均値は、0.6mm以下、0.5mm以下、0.5mm未満、又は0.4mm以下であってよい。はみ出し距離Lの平均値が過大になるのを抑制することによって、接合体100を回路基板として用いたときの絶縁性を十分良好に維持することができる。また、セラミック板20を小さくして、接合体100を小型化することができる。はみ出し距離Lの平均値の数値範囲の一例は、0.1~0.6mmである。これによって、上述の特性をバランスよく両立することができる。
【0039】
はみ出し距離Lの平均値は、セラミック板20と金属板60とを接合する際のろう材の塗布量及び接合時の圧力等によって調整することができる。
【0040】
はみ出し距離Lの標準偏差は、0.1mm未満であり、0.09mm以下、0.08mm以下、0.07mm以下、又は0.05mm以下であってよい。このように、はみ出し距離Lの標準偏差を小さくすることによって、位置による被覆部42のはみ出し距離Lのばらつきを小さくすることができる。このような接合体100であれば、金属板60の端部65全体を接合部40によって均等にセラミック板に接合することができる。したがって、接合体100は、接合信頼性に優れる。
【0041】
はみ出し距離Lの標準偏差は、例えば、0.01mm以上、又は0.02mm以上であってよい。これによって接合体100を効率よく製造して、製造コストを低減することができる。はみ出し距離Lの標準偏差の範囲の一例は、0.01mm以上且つ0.1mm未満である。このような接合体100は、低コストで製造可能であるうえに、接続信頼性に優れる。はみ出し距離Lの標準偏差は、セラミック板20と金属板60とを接合する際の位置決め精度によって調整することができる。例えば、位置決め精度を高くすることによって、はみ出し距離Lの標準偏差を小さくすることができる。
【0042】
被覆部42のはみ出し距離Lは、次のようにして測定することができる。図1に示すような金属板60の厚さ方向に沿う断面の写真を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影する。倍率は、例えば50~200倍であってよい。この写真において、金属板60の切断面63からセラミック板20の主面20Aに向かう仮想垂線VPを描く。仮想垂線VPとセラミック板20の主面20Aとの交点IPを求める。交点IPを起点として、セラミック板20の主面20Aに沿って被覆部42の長さを測定する。この長さを、被覆部42のはみ出し距離Lとする。被覆部42のはみ出し距離Lは、SEM写真と定規を用いて求めてもよいし、画像解析ソフトを用いて求めてもよい。
【0043】
任意に選択される20箇所の断面の写真を撮影し、各断面における被覆部42のはみ出し距離Lを測定する。20個の測定値の算術平均値が、はみ出し距離Lの平均値となる。位置選択によるばらつきをなくすため、被覆部42の外縁45に沿う隣り合う測定点の間隔が概ね等しくなるように測定位置を選択することが好ましい。
【0044】
図2は、金属板の厚さ方向(積層方向)に沿う接合体の断面写真(SEM写真)の一例である。図2に示すように、金属板60の側面62には、セラミック板20寄りの部分において、接合体100を製造する際に生じるろう材と金属板60の含有成分との反応生成物を含む場合がある。金属板60の側面62の上部に出現している切断面63を基準にして仮想垂線VPを描けば、高い再現性ではみ出し距離Lを測定することができる。切断面63が、セラミック板20の主面20Aに対して垂直ではない場合、切断面63のうち、最も外方に位置する突出した部分を基準にして仮想垂線VPを描けばよい。
【0045】
図1及び図2の接合体では、セラミック板20の一方の主面20Aに金属板60(第1の金属板)が接合部40(第1の接合部)によって接合されている。変形例では、セラミック板20の他方の主面20Bに第2の金属板が第2の接合部によって接合されていてよい。第1の金属板と第2の金属板のサイズ及び形状は同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2の接合部も第1の接合部と同様の被覆部を有していてもよい。主面20A(主面20B)に接合される第1の金属板60(第2の金属板)の数は一つに限定されず、複数であってよい。複数ある第1の金属板60(第2の金属板)のサイズ及び形状は同じであってもよいし、異なっていてもよい。複数ある第1の金属板(複数の第2の金属板)の全てが接合部40の被覆部42と互いに同一の形状を有していてもよいし、互いに異なる形状を有していてもよい。セラミック板20に複数の金属板が接合されている場合、少なくとも一つの金属板を接合する接合部のはみ出し距離Lの標準偏差が0.1mm未満であればよい。
【0046】
一実施形態において、集合基板は、多数個取り用のセラミック板(第1セラミック板)と、切断面で構成される側面を有する複数の金属板と、セラミック板の一方の主面と複数の金属板のそれぞれの主面とを接合し、ろう材成分を含む複数の接合部と、を備える。複数の接合部のそれぞれは、金属板の側面の少なくとも一部とセラミック板の主面の一部とを覆う被覆部を有してよい。複数の金属板のうち少なくとも一つの金属板(第1の金属板)の厚さ方向に沿う断面でみたときに、第1の金属板の切断面からセラミック板の主面に向かう仮想垂線とセラミック板の主面との交点からセラミック板の主面に沿って計測される被覆部のはみ出し距離Lの標準偏差が0.1mm未満である。すなわち、第1の金属板とセラミック板とを接合する接合部は、上述の被覆部42を有する接合部40と同様の形状を有してよい。
【0047】
図3は、集合基板の一例を示す斜視図である。集合基板200は、セラミック板21と、セラミック板21の主面21A及び主面21Bのそれぞれに接合される複数の金属板60を備える。セラミック板21は主面21Aに形成された区画線SL1,SL2によって複数に区画されている。主面21Aには、区画線として、第1の方向に沿って延在し且つ等間隔で並ぶ複数の区画線SL1と、第1の方向に直交する第2の方向に沿って延在し且つ等間隔で並ぶ複数の区画線SL2と、が設けられている。区画線SL1と区画線SL2とは互いに直交している。
【0048】
区画線SL1,SL2は、例えば、複数の凹みが直線状に並んで構成されていてもよいし、線状に溝が形成されていてもよい。具体的には、レーザー光で形成されるスクライブラインであってよい。レーザー源としては、例えば、炭酸ガスレーザー及びYAGレーザー等が挙げられる。このようなレーザー源からレーザー光を間欠的に照射することによってスクライブラインを形成することができる。なお、区画線SL1,SL2は、等間隔で並んでいなくてもよく、また、直交するものに限定されない。また、直線状ではなく、曲線状であってもよいし、折れ曲がっていてもよい。
【0049】
セラミック板21は、区画線SL1及び区画線SL2によって画定される複数の区画領域DRを有する。複数の区画領域DRのそれぞれに、金属板60が設けられている。複数の金属板60は、それぞれ互いに独立している。集合基板200を、区画線SL1,SL2に沿って分割すれば、セラミック板20を備える接合体100を得ることができる。
【0050】
セラミック板21の主面21A上の複数の金属板60のそれぞれは、接合部40によってセラミック板21に接合されている。接合部40は、金属板60の側面62の一部とセラミック板21の主面21Aの一部とを被覆する被覆部42を有する。被覆部42は、いずれも、図1に示す被覆部42と同様にスカート部44を有する。すなわち、複数の金属板60とセラミック板21とを接合する接合部40は、いずれもスカート形状の被覆部42を有している。各被覆部42のはみ出し距離Lの平均値及び標準偏差は、接合体100で説明した数値範囲と同じであってよい。これによって、集合基板200を、区画線SL1,SL2に沿って分割すれば、接合信頼性に優れる9個の接合体100を得ることができる。
【0051】
セラミック板21の主面21B上の複数の金属板60のそれぞれも、金属板60を接合する接合部40と同様の形状を有する接合部によってセラミック板21に接合されてよい。この接合部は、金属板60の側面の一部とセラミック板21の主面21Bの一部とを被覆する、被覆部42と同様の被覆部を有していてもよい。この被覆部のはみ出し距離Lの平均値及び標準偏差は、上述の数値範囲と同じであってよい。これによって、セラミック板21の主面21B上の金属板60とセラミック板21との接合信頼性を向上することができる。
【0052】
接合体100は、回路基板としてパワーモジュールに搭載されてもよい。金属板60は、電気信号を伝達する機能を有する回路基板、又は熱を伝達する機能を有する放熱板として機能してよい。また、金属板60は、熱を伝達する機能と、電気信号を伝達する機能を兼ね備えていてもよい。接合体100は、金属板60とセラミック板20との接合信頼性に優れる。このため、半導体素子等の外部回路との接続信頼性に優れる。したがって、高い信頼性が求められるパワーモジュールに搭載される部品として好適である。
【0053】
一実施形態に係るパワーモジュールは、接合体(回路基板)と、接合体の金属板に電気的に接続される半導体素子と、を備える。回路基板は、上述の接合体100又はその変形例であってよい。接合体100及びその変形例に関する説明内容は、本実施形態のパワーモジュールに適用される。このようなパワーモジュールは、信頼性に優れる。接合体及び半導体素子は、樹脂によって封止されていてもよい。
【0054】
図4は、パワーモジュールの一例を示す断面図である。パワーモジュール300は、ベース板90と、ハンダ82を介してベース板90の一方面と接合される接合体101とを備える。接合体101の一方面側における金属板61がハンダ82を介してベース板90と接合している。
【0055】
接合体101の他方面側における金属板60には、ハンダ81を介して半導体素子80が取り付けられている。半導体素子80は、アルミワイヤ(アルミ線)等の金属ワイヤ84で金属板60の所定箇所に接続されている。このようにして、半導体素子80と金属板60とは電気的に接続されている。筐体86の外部と金属板60とを電気的に接続するため、金属板の一つである金属板60aは、ハンダ85を介して筐体86を貫通して設けられる電極83に接続されている。
【0056】
ベース板90の一方の主面上には、当該主面と一体になって接合体101を収容する筐体86が配置されている。ベース板90の一方の主面と筐体86とで形成される収容空間には樹脂95が充填されている。樹脂95は、接合体101及び半導体素子80を封止している。樹脂は、例えば、熱硬化型樹脂であってよく、光硬化型樹脂であってもよい。
【0057】
ベース板90の他方の主面には、グリース94を介して放熱部材をなす冷却フィン92が接合されている。ベース板90の端部には冷却フィン92をベース板90に固定するネジ93が取り付けられている。ベース板90及び冷却フィン92はアルミニウムで構成されていてもよい。ベース板90及び冷却フィン92は、高い熱伝導率を有することによって放熱部として良好に機能する。
【0058】
セラミック板20によって、金属板60と金属板61は電気的に絶縁される。金属板60(60a)は電気回路を形成していてよい。金属板60及び金属板61は、ろう材成分を含む接合部(不図示)によってセラミック板20の主面20A及び主面20Bにそれぞれ接合されている。接合部は、図1及び図2に示すような被覆部42を有する。被覆部42のはみ出し距離Lの平均値及び標準偏差は上述したとおりである。このような被覆部42を有する接合部によって、金属板60(金属板61)は、セラミック板20に接合されている。このため、パワーモジュール300は信頼性に優れる。
【0059】
一実施形態に係る接合体の製造方法は、金属基材を打ち抜いて複数の金属板60を得る打ち抜き工程と、第1位置決め治具を用いて複数の金属板60を一対の支持板のそれぞれに仮止めする仮止め工程と、多数個取り用のセラミック板21の主面21A及び主面21Bにろう材を塗布及び乾燥して、主面21A及び主面21Bのそれぞれに複数の塗布層を設ける塗布工程と、複数の塗布層と複数の金属板60とがそれぞれ対向するように、第2位置決め治具を用いてセラミック板21を一対の支持板で挟んで積層体を作製する積層工程と、積層体を加熱して金属板60とセラミック板21とを接合する接合工程と、金属板60が接合されたセラミック板21を分割して複数の接合体100を得る仕上げ工程と、を有する。
【0060】
打ち抜き工程では、金属基材を例えば金型を用いて打ち抜く。これによって、側面が切断面で構成される金属板60が得られる。金属板60が四角柱形状である場合、4つの側面の全てが切断面であってよい。金属板60は一方の主面60A側にダレを有し、他方の主面60B側にバリを有していてよい。
【0061】
仮止め工程では、図5に示す仮止め材11によって支持板TPの所定位置A1に金属板60を固定する。支持板TPは例えばカーボン板であってよい。仮止め材11は、接合工程での加熱によって消失するものであってよい。支持板TPの所定位置A1とは、セラミック板21上に固定される金属板60の接合予定位置A2(図9参照)に対応した位置である。具体的には、支持板TPをセラミック板21上の適切な位置に重ねた際に、セラミック板21上の接合予定位置A2に金属板60が配置されるような位置である。
【0062】
図5に示されるように、一枚の支持板TPは、複数の接合体を形成するため、便宜上、複数の領域に区画されている。複数の領域には、それぞれ金属板60を仮止めするための仮止め材11が設置される。仮止め材11の一例として、シートタイプの接着剤を使用することができる。シートタイプの接着剤とは、常温で金属板60を支持板TPに接着可能な接着テープである。接着テープは、両面で接着可能であり、且つ有機成分からなる粘着層と、粘着層の両面を覆う剥離フィルムとを備えている。剥離フィルムは粘着層の両面を保護する部材であり、使用時には剥離される。剥離フィルムは、例えば、透明なPETフィルムであってよい。仮止め材11の粘着層の一方の面が支持板TPの所定位置A1に接着されてよい。その後、図6に示すように、仮止め材11の粘着層の他方の面に金属板60が接着される。
【0063】
粘着層を形成する粘着成分は、支持板TPと金属板60とを接着できる材料を使用できる。粘着成分は、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、又はゴム系粘着剤等であってよい。これらの粘着剤は、有機成分で構成されている。したがって、接合工程での加熱中に分解される。その使用量を調整すれば、接合体100中にその残渣が残らないように調整することができる。
【0064】
アクリル系粘着剤とは、アクリルポリマーからなる粘着剤である。ウレタン系粘着剤とは、ポリウレタン(イソシアネート基を有する化合物とヒドロキシ基を有する化合物が縮合重合したもの)からなる粘着剤である。ゴム系粘着剤は天然ゴム又は合成ゴムからなる粘着剤である。合成ゴムとしては、例えば、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム等が挙げられる。
【0065】
仮止め材11は、粘着層を支持する基材層を備えていない粘着テープであってよい。仮止め材11は、スプレータイプの接着剤であってよい。スプレータイプの接着剤とは、常温で金属板60を支持板TPに接着可能な液状で、且つ有機成分からなる接着剤である。この接着剤は、噴霧による使用を想定されている。例えば、支持板TPの所定位置A1に接着剤を噴霧し、その接着剤を介して図6に示すように金属板60を支持板TPに接着させて固定することができる。
【0066】
スプレータイプの接着剤は、溶剤系接着剤、ゴム系接着剤、又は合成樹脂系接着剤等であってよい。溶剤系接着剤の場合、その粘着成分は有機溶剤であり、例えば、ヘキサン、イソヘキサン、トルエン、アセトン、ブタン等を使用することができる。ゴム系接着剤の場合、その粘着成分は天然ゴム又は合成ゴムであってよい。合成ゴムとしては、例えば、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム等を使用することができる。合成樹脂系接着剤の場合、その粘着成分は合成樹脂であり、アクリルポリマー等を使用することができる。
【0067】
スプレータイプの接着剤は、噴射器等によって支持板TPの所定位置A1に設置される。噴射器は、例えば、容器と、容器内の接着剤を噴射するノズル部とを備えている。容器内には、粘着成分を含む液状の接着剤と接着剤を噴射させる噴射剤とが収容されている。噴射剤としては、例えば、ジメチルエーテル、LPGを使用することができる。ノズル部に取り付けられているレバー等の操作により、容器内の接着剤は容器内から噴射または停止される。
【0068】
金属板60を支持板TP上の仮止め材11に仮止めする際、図7に示すような格子治具3を使用してよい。格子治具3は、支持板TP上の所定位置A1に金属板60を位置決めする第1位置決め治具の一例である。図7は、支持板TP上に設置された格子治具3を利用して金属板60を所定位置A1に位置合わせしながら、金属板60を仮止め材11で仮止めすることを示す平面図である。図8は、図7のVIII-VIII線断面図である。
【0069】
格子治具3は、接合工程の加熱炉8(図15参照)に導入する前に支持板TPから取り外してよい。このようにすれば、格子治具3の材質を高い自由度で選択することができる。例えば、格子治具3の材質の例としては、ポリエチレン(例えば高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、AS樹脂、アクリル樹脂、A2017(ジュラルミン)、A5052(アルミニウム合金)等が挙げられる。これらの材料は加工性に優れる。
【0070】
図7及び図8に示すように、格子治具3は、枠部31と、枠部31内に形成された位置合わせ用の複数の孔部32と、枠部31から外方に張り出すように設けられた一対の取っ手部33とを備えている。
【0071】
枠部31は、取っ手部33を除いて実質的に支持板TPの外周に揃うような矩形状を有している。枠部31を支持板TPの外周に揃うように設置することで、支持板TPに対して格子治具3を適切な位置に設置できる。枠部31で囲まれた内側には、互いに直交する複数の縦壁部31aと、複数の横壁部31bとが設けられている。枠部31と縦壁部31aと横壁部31bとによって、あるいは縦壁部31aと横壁部31bとによって、矩形状の孔部32(孔部)が形成されている。
【0072】
格子治具3を支持板TPの適切な位置に設置すると、複数の孔部32は、それぞれ支持板TP上の所定位置A1の外縁Edに揃うように配置される。複数の孔部32のそれぞれは、金属板60よりも大きく、且つ金属板60を収容可能な矩形状である。
【0073】
金属板60の主面は、略矩形状であり、隣接する側面62が屈曲して接続された四か所の角部64を備えている。孔部32は、金属板60が収まるような矩形状の孔部であり、四か所(複数)の角隅部32aを備えている。金属板60は、孔部32の複数の角隅部32aのうち、基準の角隅部32xに角部64が当接することで所定位置A1に位置決めされる。一つの例では、孔部32は四か所の角隅部32aのうち、右下の角隅部32aが基準の角隅部32xとして設定されている(図7参照)。
【0074】
孔部32は、隙間形成部32bを備えている。隙間形成部32bは、基準の角隅部32xに金属板60の角部64が当接した状態において、金属板60との間に隙間Spを形成する部分である。例えば、図7及び図8に示されるように、基準の角隅部32aに金属板60の角部64を当接させると、金属板60の左側には、位置合わせ用の孔部32との間に隙間Spが形成される。孔部32において、この隙間Spを形成する部分が隙間形成部32bである。
【0075】
例えば、支持板TP上の所定位置A1に仮止め材11を設置した後、支持板TP上の適切な位置に格子治具3を設置する。または、支持板TP上の適切な位置に格子治具3を設置した後で、格子治具3の孔部32内に仮止め材11を設置する。支持板TP上の適切な位置に格子治具3を設置した後、孔部32内に金属板60を挿入する。このとき、格子治具3を利用して金属板60を所定位置A1に位置合わせし、仮止め材11によって金属板60を支持板TPに固定する。
【0076】
金属板60の仮止めとは別に、セラミック板21の主面21Aにろう材を含む塗布層12を設ける塗布工程を行う。セラミック板21の主面21Aには区画線SL1,SL2が形成されている。区画線SL1,SL2は、例えば、レーザー光を照射することによって形成されるスクライブラインであってよい。レーザー光としては、例えば、炭酸ガスレーザー及びYAGレーザー等が挙げられる。このような区画線SL1,SL2は、後工程において、集合基板を分割する際の切断線として利用することができる。
【0077】
ろう材は、金属単体又は金属化合物(合金)の形態で、Agを含んでよく、Agに加えて、Cu、Sn、及び活性金属からなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属を含有してよい。二種以上の金属は合金となっていてもよい。活性金属は、Ti、Hf、Zr、及びNbからなる群より選ばれる一種又は二種以上を含んでいてよい。ろう材は、Ag及びCuの合計100質量部に対してAgを80質量部以上含んでよく、90質量部以上含んでいてよく、95質量部以上含んでいてよい。このようにCuに対するAgの割合を十分に高くすることによって、接合工程で積層体を昇温する際、ろう材の溶融のタイミングを遅くすることができる。したがって、ろう材の這い上がりを抑制することができる。また、AgとCuは72:28の質量割合付近に共晶点を有する。このため、溶融したろう材は、金属板に含まれるCuと円滑に反応して共晶合金を形成する。したがって、接合層とセラミック板及び金属板との接触面積を十分に且つ円滑に大きくすることができる。ろう材はCuを含有していなくてもよい。
【0078】
ろう材における活性金属の含有量は、Ag及びCuの合計100質量部に対して、0.5~8質量部であってよい。活性金属の含有量を0.5質量部以上とすることで、セラミック板とろう材との接合性を向上することができる。一方、活性金属の含有量を8質量部以下とすることで、接合界面に脆弱な合金層が形成されることを抑制できる。
【0079】
ろう材に含有される上記活性金属は、窒化物、酸化物、炭化物又は水素化物として含まれていてもよい。一例として、ろう材は、窒化チタン及び/又は水素化チタン(TiH)を含んでいてよい。これによって、セラミック板と金属板との接合強度を十分に高くすることができる。AgとCuの合計100質量部に対するTiHの含有量は例えば1~8質量部であってよい。
【0080】
ろう材は、上述の金属又は金属化合物の他に、有機溶媒、及びバインダ等を含有してよい。ろう材の粘度は、例えば5~20Pa・sであってよい。ろう材における有機溶媒の含有量は、例えば、5~25質量%、バインダ量の含有量は、例えば、2~15質量%であってよい。
【0081】
図9に示すように、セラミック板21の一方の主面21Aには、金属板60の接合予定位置A2にろう材が塗布されて塗布層12が形成される。塗布方法は、ロールコーター法、スクリーン印刷法、又は転写法等であってよい。接合予定位置A2は、支持板TPの所定位置A1に対応している。支持板TPは、金属板60がセラミック板21の主面21Aに対向するようにセラミック板21に積層される。このとき、金属板60と、セラミック板21の接合予定位置A2とが向かい合う。
【0082】
セラミック板21の他方の主面21Bには、金属板60の接合予定位置A2にろう材が塗布されて塗布層12が形成されている。塗布方法は上述したとおりである。この接合予定位置A2は、別の支持板TPの所定位置A1に対応している。この別の支持板TPは、金属板60がセラミック板21の主面21Bに対向するようにセラミック板21に積層される。このとき、金属板60は、セラミック板21と接合予定位置A2とが向かい合う。このようにして、図10に示すような第1積層体Xaが形成される。
【0083】
図11は、塗布層12が設けられたセラミック板21を厚さ方向に沿って切断したときの断面の一部を示している。塗布層12は、中央部の厚みよりも当該中央部を取り囲む端部の厚みの方が大きくなっている。すなわち、塗布層12は、中央部に薄塗り部12Bを有し、端部(外周部)に厚塗り部12Aを有する。このような塗布層12を用いることによって、金属板60の端部65とセラミック板21との間にろう材が十分に充填される。したがって、金属板60とセラミック板21との接合が不十分になることを十分に抑制することができる。図11には一つの塗布層12のみを示しているが、他の塗布層12も同様の形状を有していてよい。
【0084】
図11における塗布層12の横幅は、金属板60の横幅と同じになっているが、これに限定されない。例えば、塗布層12は、セラミック板21の主面21Aに沿って金属板60の側面62よりも外方に延在するはみ出し部を有していてよい。このように、塗布層12が端部にはみ出し部を有していれば、被覆部42(スカート部44)を十分に大きくして接合信頼性を一層向上することができる。塗布層12の端部における厚塗り部12Aの幅及び厚さを大きくすれば、図1に示すはみ出し距離Lを長くすることができる。塗布層12の端部における厚塗り部12Aの幅及び厚さを小さくすれば、図1に示すはみ出し距離Lを短くすることができる。
【0085】
図12に示すように、積層工程では、塗布層12が形成されたセラミック板21と金属板60が仮止めされた一対の支持板TPとを、囲い治具5を用いて位置合わせをしながら積層して図10の第1積層体Xaを得る。同様の手順を繰り返して得た複数の第1積層体Xaを積み重ねる。これによって、第1積層体Xaが複数積み重ねられた第2積層体XAを得る。積層の際の位置合わせには、図12及び図13に示すような囲い治具5を用いることができる。
【0086】
囲い治具5は、第2積層体XAの矩形状の周囲を囲む枠状の器具であり、金属板60とセラミック板21とを積層する際に位置合わせする第2位置合わせ治具の一例である。囲い治具5は、複数の第1積層体Xaの周縁に沿うように配置される当接壁部50を備えている(図13)。当接壁部50は、分割可能な複数の分割壁部51,52を備えている。例えば、当接壁部50は、平面視でL字状の第1の分割壁部51と、平面視でL字状の第2の分割壁部52とを備えている。第1の分割壁部51と第2の分割壁部52とを組み合わせることで、内部に複数の第1積層体Xaが収まる立方体又は直方体の収容空間が形成される。
【0087】
第2積層体XAを形成する第1積層体Xaは平面視で矩形状であるため、第2積層体XAは四か所の角部Xbを備えている。第1の分割壁部51は、第2積層体XAの角部Xbに沿うように屈曲した角隅部51mを備えている。第2の分割壁部52は、第2積層体XAの角部Xbに沿うように屈曲した角隅部52mを備えている。
【0088】
第1の分割壁部51は、第1の位置合わせ壁面51aと第2の位置合わせ壁面51bとを備えている。第2の分割壁部52は、第3の位置合わせ壁面52aと第4の位置合わせ壁面52bとを備えている。第1の位置合わせ壁面51aと第3の位置合わせ壁面52aとは、収容空間に収容される第2積層体XA(第1積層体Xa)を挟むように対向配置されている。第2の位置合わせ壁面51bと第4の位置合わせ壁面52bとは、収容空間に収容される第2積層体XA(第1積層体Xa)を挟むように対向配置されている。
【0089】
囲い治具5は、第1の分割壁部51と第2の分割壁部52とを接続する調整部53を備えている。調整部53は、第1の分割壁部51と第2の分割壁部52とによって囲まれる収容空間の容積を調整可能に構成される。
【0090】
調整部53は、例えば、第1の分割壁部51に形成された複数のスリット53a(貫通孔)と、複数のスリット53aに挿通される複数のネジ部54と、第2の分割壁部52に形成された複数のネジ孔55とを備えている。第2の分割壁部52は、第1の分割壁部51に当接可能な端部52cを備えており、端部52cには、第1の分割壁部51のスリット53aに重なるようにネジ孔55が設けられている。ネジ部54は、軸部54aと頭部54b(係止部)とを備えている。軸部54aは、スリット53aに挿通され、ネジ孔55に螺合される。頭部54bは、軸部54aの一端に形成されており、第1の分割壁部51のスリット53aの周囲に干渉する。スリット53aの周囲は、頭部54bの干渉を受ける係止受け部53bである。ネジ部54を締め付けることで収容空間は縮小し、緩めることで拡張する。
【0091】
図12に示すように、囲い治具5は加圧装置7の土台71上に載置される。複数の第1積層体Xaを積層するようにして、囲い治具5の収容空間に積層する。複数の第1積層体Xaは、囲い治具5によって位置合わせされながら土台71上に積層される。これによって、囲い治具5の収容空間に複数の第1積層体Xaが積層された第2積層体XAが得られる。変形例では、全ての第1積層体Xaを積層した後で、囲い治具5を第2積層体XAの周囲に配置して位置合わせを行ってもよい。これによって、積層された複数の第1積層体Xaの位置が互いに揃った第2積層体XAを得ることができる。
【0092】
図14に示すように、複数の第1積層体Xaを積層後、土台71とカバープレート73との間で第2積層体XAを挟持するようにして加圧する。加圧装置7は、第2積層体XAを支える土台71と、土台71から立設された複数の柱部72と、第2積層体XAの上面に当接するカバープレート73と、カバープレート73上に配置された複数の弾性体74と、弾性体74上に設置され、弾性体74を押圧する加圧プレート75と、加圧プレート75を所定位置に保持するナット76(保持部)とを備えている。
【0093】
柱部72には、ネジ溝が形成されている。柱部72は、カバープレート73及び加圧プレート75を貫通している。ナット76は、柱部72の上端に螺合し、加圧プレート75の上面に当接している。カバープレート73と加圧プレート75との間には、弾性体74が配置されている。ナット76を締め付けると加圧プレート75が押し下げられ、弾性体74を圧縮する。その結果、カバープレート73を介して第2積層体XAが加圧される。これによって、高い精度で位置合わせされた金属板60とセラミック板21とを、塗布層12を介して十分に接着することができる。なお、ここでの加圧圧力を変えることで、はみ出し距離Lの平均値を調整することができる。
【0094】
十分に接着したら、第2積層体XAが加圧装置7によって加圧されている状態を保持したまま、囲い治具5を分割して第2積層体XAから離す。加圧された状態の第2積層体XAは安定しており、囲い治具5を離しても複数の第1積層体Xa同士及び第1積層体Xaを構成するセラミック板21と金属板60の位置ズレは生じない。このように、接合工程の前に治具を離脱すれば、囲い治具5を構成する材料の耐熱性を考慮する必要性がなくなる。これによって、材料選択の自由度を高くすることができる。囲い治具5を構成する材料としては、例えばポリエチレン(例えば高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、AS樹脂、アクリル樹脂、A2017(ジュラルミン)、A5052(アルミニウム合金)等を用いることができる。これらの材料は、加工性に優れるという利点がある。
【0095】
変形例では、囲い治具5を離脱することなく、囲い治具5で第2積層体XAを保持したまま、囲い治具5を第2積層体XAと一緒に加熱炉8内に導入してもよい。囲い治具5を加熱炉8内に導入する場合、囲い治具5は、耐熱性を有する材料で構成される。このような材料としては、炭素系の材料、窒化ホウ素、鉄系のS45C及びSS400、ステンレス系のSUS304及びSUS303、並びに、超硬が挙げられる。炭素系の材料としては、カーボングラファイト、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン等が挙げられる。超硬としては主成分としてタングステンカーバイドを含むものが挙げられる。
【0096】
接合工程では、図15に示すように、第2積層体XAを、加圧装置7で加圧保持したまま、加熱炉8に導入する。加熱炉8は、ヒータ8aを備えている。ヒータ8aは、金属板60とセラミック板21とが接合部によって接合される温度となるように、加熱炉8内を加熱する。例えば、金属板60が銅材の場合には、加熱炉8内を600℃~900℃に加熱する。金属板60がアルミニウム板である場合には、加熱炉8内を550℃~650℃に加熱する。ろう材を含む塗布層12は、この雰囲気温度下で溶融等し、加熱後の冷却固化により、金属板60とセラミック板21とを接合する接合部40となる。加熱炉8内での加熱に伴い、金属板60を支持板TPに仮止めしていた仮止め材11は、揮発等して消失する。
【0097】
第2積層体XAを構成していた複数の第1積層体Xaは、それぞれ、接合工程によって図3に示す集合基板200となる。加熱炉8から取り出された集合基板200は、セラミック板21と、セラミック板21に接合された複数の金属板60と、を備える。複数の金属板60のそれぞれは、接合部40によってセラミック板21に接合されている。ここで、金属板60を支持板TPに固定していた仮止め材11は、加熱炉8内で消失している。したがって、図16に示すように、集合基板200から、支持板TPを容易に取り外すことができる。支持板TPを取り外した後、集合基板200は、区画線SL1,SL2に沿って分割される。その後、必要に応じて仕上げ処理が施されて複数の独立した接合体100が得られる。
【0098】
上記製造方法では、打ち抜き加工によって得られた金属板を多数個取りのセラミック板に搭載する搭載法で集合基板200及び接合体100を製造することができる。このような搭載法によれば、集合基板200及び接合体100を効率よく得ることができる。この製造方法では、金属板を、第1位置合わせ治具(格子治具3)を用いて位置合わせしながら支持板に仮止めし、この支持板(金属板)とセラミック板とを、第2位置合わせ治具(囲い治具5)を用いて位置合わせしながら積層して第1積層体Xa(第2積層体XA)を得る。このため、金属板とセラミック板とを接合する際の位置合わせ精度を高くすることができる。そして、この第1積層体Xa(第2積層体XA)を加圧装置7で加圧しながら加熱する。したがって、塗布層と金属板の互いの位置がずれにくくなり、はみ出し距離Lのばらつきが十分に小さい接合体、及びこのような接合体を得ることが可能な集合基板を得ることができる。
【0099】
上述の製造方法の例では、集合基板200を製造したが、これに限定されない。例えば、集合基板200とは異なる集合基板を製造してもよい。また、多数個取りのセラミック板21の代わりにセラミック板20を用い、格子治具3及び囲い治具5を用いて集合基板200を製造するときと同様の位置合わせを行うことによって、集合基板200を製造せずに接合体100を製造してもよい。第1位置決め治具は、格子治具に限定されず、金属板の仮止め時の位置合わせ精度を向上できるものであればよい。第2位置決め治具も、囲い治具に限定されず、金属板とセラミック板とを積層する際の位置合わせ精度を向上できるものであればよい。
【0100】
接合体100及び集合基板200の製造方法は上述のものに限定されない。第1位置合わせ治具、第2位置合わせ治具及び加圧装置を用いずに、高い精度で位置合わせを行い且つ十分な圧力で加圧する他の手段によって、接合体100及び集合基板200を製造してもよい。
【0101】
上述の製造方法で得られた接合体を用いて、図4に示すようなパワーモジュールを製造してもよい。パワーモジュールは、接合体に、ハンダとワイヤボンディング等を用いて半導体素子を搭載し、接合体及び半導体素子を筐体の収容空間内に収容したうえで樹脂封止を行って製造してもよい。
【0102】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、セラミック板の一対の主面のそれぞれに接合される金属板及び接合部の構造及び形状は、互いに異なっていてもよい。また、セラミック板は、集合基板を分割して得られるものに限定されない。
【実施例
【0103】
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0104】
(実施例1)
[集合基板及び接合体の作製]
銅の母材を金型で打ち抜いて、24枚の銅板(材質:無酸素銅、サイズ:縦×横×厚さ=17mm×38mm×0.5mm)を得た。これらの銅板の側面は切断面で構成されていた。窒化ケイ素製のセラミック板(窒化ケイ素板、厚さ:0.25mm)、及びろう材を準備した。
【0105】
Ag、Sn、及びTiHを含むろう材を準備した。ろう材は、Ag100質量に対し、Snを3質量部、及びTiHを3.5質量部含んでいた。このろう材はCuを含んでいなかった。
【0106】
セラミック板の主面をスクライブラインによって24個の区画領域に区画した。各区画に、スクリーン印刷でろう材を塗布して塗布層を形成した。塗布層の塗布面積は、セラミック板と接合される銅板の主面の面積と同じとした。また、塗布層には、図11に示すように中央部に薄塗り部を、端部(薄塗り部の周囲)に厚塗り部を形成した。厚塗り部の厚さは、薄塗り部の厚さの1.2倍とした。また、厚塗り部を取り囲む厚塗り部の幅は1.5mmで一定とした。厚塗り部及び薄塗り部を形成する際のろう材の塗布量は、表1に示すとおりとした。
【0107】
支持板として、カーボン板を準備した。このカーボン板の24箇所に接着テープを貼り付けて、仮止め材とした。これらの接着テープは、セラミック板の主面に設けられた塗布層の位置に対応する位置に貼り付けた。図7に示すような格子治具3を用いて位置決めしながら仮止め材でカーボン板上に24枚の銅板を仮止めした。図12に示すように、囲い治具5を用いて位置合わせをしながら、銅板と塗布層とが向かい合うようにして、セラミック板とカーボン板とを積層した。このとき、銅板は、バリが塗布層側に、ダレがカーボン板側になるように積層した。
【0108】
図14に示すような加圧装置を用いて積層体を0.015MPaで加圧しながら、真空中(1.0×10-3Pa)、790℃で1時間加熱した。このようにしてセラミック板の主面にろう材成分を含む接合層を介して24枚の銅板が接合された集合基板を得た。その後、Ni-Pめっき液(リン濃度:8~12質量%)を用いて無電解メッキ処理を行い、銅板上にめっき膜を有する集合基板(多数個取り回路基板)を形成した。スクライブラインに沿って集合基板を分割し、24個の接合体を得た。一つの接合体のセラミック板のサイズは、縦×横×厚さ=20mm×41mm×0.25mmであった。
【0109】
(実施例2)
厚さ1.2mmの打ち抜き銅板を用いたこと以外は、実施例1と同じ手順で接合体を得た。
【0110】
(実施例3)
塗布層の端部に厚塗り部を形成する際の塗布量を表1に示すとおりにしたこと以外は、実施例1と同じ手順で接合体を得た。
【0111】
(実施例4)
塗布層の端部に厚塗り部を形成する際の塗布量を表1に示すとおりにしたこと以外は、実施例2と同じ手順で接合体を得た。
【0112】
(実施例5)
厚さ1.0mmの窒化ケイ素板を用いたこと以外は、実施例1と同じ手順で接合体を得た。
【0113】
(実施例6)
厚さ1.2mmの打ち抜き銅板を用いたこと以外は、実施例5と同じ手順で接合体を得た。
【0114】
(実施例7)
塗布層の端部に厚塗り部を形成する際の塗布量を表1に示すとおりにしたこと以外は、実施例5と同じ手順で接合体を得た。
【0115】
(実施例8)
塗布層の端部に厚塗り部を形成する際の塗布量を表1に示すとおりにしたこと以外は、実施例6と同じ手順で接合体を得た。
【0116】
(実施例9)
塗布層に厚塗り部及び薄塗り部を設けず、厚みを一定としたこと以外は、実施例6と同じ手順で接合体を得た。
【0117】
(比較例1)
仮止め材でカーボン板上に24枚の銅板を仮止めする際に格子治具を用いなかったこと以外は、実施例3と同じ手順で接合体を得た。
【0118】
(比較例2)
銅板と塗布層とが向かい合うようにして、セラミック板とカーボン板とを積層する際に、位置合わせ用の囲い治具を用いなかったこと以外は、実施例2と同じ手順で接合体を得た。
【0119】
[接合体の評価]
<はみ出し距離Lの測定>
各実施例及び各比較例の接合体を金属板の厚さ方向(積層方向)に沿って切断して切断面を得た。この切断面のSEM観察を行い、図2に示すようなSEM写真(倍率:80倍)を撮影した。このようなSEM写真を用いて、当該切断面におけるはみ出し距離Lを測定した。測定には、一つの接合体について20枚のSEM写真を用いた。金属板は矩形であったことから、4つの辺のそれぞれにおいて、5箇所の切断面を得て、それぞれ切断面のSEM写真を用いてはみ出し距離Lを測定した。20個のはみ出し距離Lから求めた算術平均値及び標準偏差は表1、表2、表3に示すとおりであった。なお、各実施例の被覆部は、いずれも図2に示すようなスカート部及び傾斜面を有していた。
【0120】
<超音波探傷検査(SAT)>
超音波探傷検査によって、各実施例及び各比較例のセラミック板と銅板の接合信頼性を評価した。具体的には、株式会社日立パワーソリューションズ製の超音波探傷検査装置(装置名:Fine SAT Vを用いて、セラミック板と銅板との間におけるボイドの面積割合を算出した。24個の回路基板の検査を、画像解析ソフト(GIMP)を使用して行って、平面視における銅板の面積に対するボイドの面積の割合の平均値を計算した。計算結果に基づいて、以下の基準で評価した。評価結果は、表1、表2、表3に示すとおりであった。
A:ボイドの面積の割合の平均値が2%以下
B:ボイドの面積の割合の平均値が2%超、且つ4%以下
C:ボイドの面積の割合の平均値が4%超、且つ6%以下
D:ボイドの面積の割合の平均値が6%超
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
表1~表3に示すとおり、仮止め材、格子治具及び囲い治具を用いるとともに、ろう材の塗布層の端部を中央部よりも厚くして作製した実施例1~8の接合体は、ボイドの面積割合が十分に小さかった。また、仮止め材、格子治具及び囲い治具を用いて作製した実施例9の接合体も、ボイドの面積割合は小さかった。これに対し、位置決め治具及び格子治具のどちらかを用いなかった比較例1,2では、はみ出し距離Lのばらつきが大きくなり、標準偏差が0.10mm以上であった。これは、銅板と塗布層との位置合わせ精度が低く、両者の位置がずれたことによるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
接合信頼性に優れる接合体及びその製造方法を提供することができる。接合信頼性に優れる接合体を効率よく得ることが可能な集合基板を提供することができる。信頼性に優れるパワーモジュールを提供することができる。
【符号の説明】
【0126】
3…格子治具、5…囲い治具、7…加圧装置、8…加熱炉、8a…ヒータ、11…仮止め材、12…塗布層、12A…厚塗り部、12B…薄塗り部、20…セラミック板、20A,20B,21A,21B,60A,60B…主面、21…セラミック板、31…枠部、31a…縦壁部、31b…横壁部、32…孔部、32a…角隅部、32b…隙間形成部、32x…角隅部、33…取っ手部、40…接合部、42…被覆部、44…スカート部、44S…傾斜面、45…外縁、50…当接壁部、51…分割壁部、51,52…分割壁部、51m…角隅部、52…分割壁部、52c…端部、52m…角隅部、53…調整部、53a…スリット、53b…係止受け部、54…ネジ部、54a…軸部、54b…頭部、55…ネジ孔、60,60a,61…金属板、62…側面、63…切断面、64…角部、65…端部、71…土台、72…柱部、73…カバープレート、74…弾性体、75…加圧プレート、76…ナット、80…半導体素子、81,82…ハンダ、83…電極、84…金属ワイヤ、86…筐体、90…ベース板、92…冷却フィン、93…ネジ、94…グリース、95…樹脂、100,101…接合体、200…集合基板、300…パワーモジュール、DR…区画領域、IP…交点、L…はみ出し距離、SL1,SL2…区画線、Sp…隙間、TP…支持板、VP…仮想垂線、Xa…第1積層体、XA…第2積層体、Xb…角部。

【要約】
セラミック板20と、切断面63で構成される側面62を有する金属板60と、セラミック板20の主面20Aと金属板60の主面60Bとを接合し、ろう材成分を含む接合部40と、を備え、接合部40は、金属板60の側面62の少なくとも一部とセラミック板20の主面20Aの一部とを覆う被覆部42を有し、金属板60の厚さ方向に沿う断面でみたときに、金属板60の切断面63からセラミック板20の主面20Aに向かう仮想垂線VPとセラミック板20の主面20Aとの交点IPからセラミック板20の主面20Aに沿って計測される被覆部42のはみ出し距離Lの標準偏差が0.1mm未満である、接合体100を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
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図16