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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】チェーンスプロケットホイール
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/30 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
F16H55/30 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020194325
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022083077
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】522334564
【氏名又は名称】ゼクサスチェン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 亮一
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-231895(JP,A)
【文献】米国特許第04043214(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーンを外周に掛け渡すチェーンスプロケットホイールであって、
チェーンが係合する多数の歯を有するホイール部と、該ホイール部が接合される一面を有する固定盤と、前記ホイール部を前記固定盤の前記一面に接合して固定する複数の固着具と、を備え、
前記ホイール部が周方向に複数の部分ホイールに分割され、各部分ホイールは前記複数の固着具のうち少なくとも一以上の固着具によって単独で着脱可能に前記固定盤の前記一面に取り付けられ、
前記一以上の固着具は、前記部分ホイールの一つのみを前記固定盤に着脱可能に固定するものであり、
前記固定盤の前記一面及び前記部分ホイールの接合面のうち、いずれか一方に凸部が、他方に凹部が形成されるとともに前記凸部と前記凹部とは係合され、
前記部分ホイールの前記固定盤の前記一面の反対側の面には、前記凸部又は前記凹部のいずれもが形成されておらず、
前記一以上の固着具は、第一固着具と、該第一固着具よりも前記部分ホイールの回転方向後方に配置される第二固着具とを少なくとも有し、
前記第一固着具及び前記第二固着具は、前記ホイール部の回転中心と同心円上に配置されており、
前記固定盤は、取り付けられる前記部分ホイールの内側に位置する筒状部を備え、
前記部分ホイールの内周面は前記筒状部の外周面に当接している
ことを特徴とするチェーンスプロケットホイール。
【請求項2】
隣設された前記部分ホイール間には隙間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のチェーンスプロケットホイール。
【請求項3】
前記ホイール部が前記歯の谷部を通って周方向に分割されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチェーンスプロケットホイール。
【請求項4】
一の前記部分ホイールにおける固着具間の距離と、前記一の部分ホイールにおける固着具のうち隣接する他の部分ホイール側に位置する固着具と前記他の部分ホイールにおける固着具のうち前記一の部分ホイール側に位置する固着具との距離とが同じ距離であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のチェーンスプロケットホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周に掛け渡されたチェーンを長さ方向に可動させるチェーンスプロケットホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なチェーン機構のチェーンスプロケットホイールは、複数配置されてその外周にチェーンが掛け渡され、少なくとも一つのチェーンスプロケットホイールが駆動装置で回転され、その回転力をチェーンに伝達して長さ方向に移動させるようになっている。
チェーンはチェーンスプロケットホイールの歯の一部に係合されるので、この歯に大きな荷重が加わることになり、破損や摩耗が生じやすい。特に、重量物を搬送するチェーンコンベアや、汚泥かき寄せ装置のチェーン機構では、歯の損傷が激しいため、チェーンスプロケットホイールの交換頻度が高くなる。この際、大型のチェーンスプロケットホイール全体を交換すると、多大な労働力及び作業時間を要するだけでなく、コストも非常に高くついた。
また、従動チェーンスプロケットホイールについても同様である。
【0003】
そこで、従来、ホイール本体とこれを取り付け固定する固定盤とからなり、ホイール本体は、取替え可能に分割型に形成してあるチェーンスプロケットホイールが特許文献1に開示されている。
このような分割型のチェーンスプロケットホイールは、歯が部分的に欠損したり、摩耗するなどして使用に耐えられなくなった場合に、チェーンを掛け渡したまま、ホイール本体の分割片の一部を交換するのみで補修することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-356217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載のようなチェーンスプロケットホイールは、ホイール本体の分割片と固定盤がボルト・ナットのみで取り付け固定されているので、歯の一部に大きい力が加わると、分割片が固定盤に対してがたつき、チェーンとの間で力の伝達が十分に行われないおそれがあった。
本発明が解決しようとする課題は、チェーンを取り外すことなく、部分ホイールの一部のみを交換することができ、部分ホイールが固定盤に対してがたつきにくいチェーンスプロケットホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、チェーンを外周に掛け渡すチェーンスプロケットホイールであって、チェーンが係合する多数の歯を有するホイール部と、該ホイール部が接合される一面を有する固定盤と、前記ホイール部を前記固定盤の前記一面に接合して固定する複数の固着具と、を備え、前記ホイール部が周方向に複数の部分ホイールに分割され、各部分ホイールは前記複数の固着具のうち少なくとも一以上の固着具によって単独で着脱可能に前記固定盤の前記一面に取り付けられ、前記一以上の固着具は、前記部分ホイールの一つのみを前記固定盤に着脱可能に固定するものであり、前記固定盤の前記一面及び前記部分ホイールの接合面のうち、いずれか一方に凸部が、他方に凹部が形成されるとともに前記凸部と前記凹部とは係合され、前記部分ホイールの前記固定盤の前記一面の反対側の面には、前記凸部又は前記凹部のいずれもが形成されておらず、前記一以上の固着具は、第一固着具と、該第一固着具よりも前記部分ホイールの回転方向後方に配置される第二固着具とを少なくとも有し、前記第一固着具及び前記第二固着具は、前記ホイール部の回転中心と同心円上に配置されており、前記固定盤は、取り付けられる前記部分ホイールの内側に位置する筒状部を備え、前記部分ホイールの内周面は前記筒状部の外周面に当接していることを特徴とするチェーンスプロケットホイールである。
請求項2に係る発明は、隣設された前記部分ホイール間には隙間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のチェーンスプロケットホイールである。
請求項3に係る発明は、前記ホイール部が前記歯の谷部を通って周方向に分割されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチェーンスプロケットホイールである。
請求項4に係る発明は、一の前記部分ホイールにおける固着具間の距離と、前記一の部分ホイールにおける固着具のうち隣接する他の部分ホイール側に位置する固着具と前記他の部分ホイールにおける固着具のうち前記一の部分ホイール側に位置する固着具との距離とが同じ距離であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のチェーンスプロケットホイールである。
また、別発明として、以下のものでもよい。
手段1は、本願請求項1に係る発明は、チェーンを外周に掛け渡すチェーンスプロケットホイールであって、チェーンが係合する多数の歯を有するホイール部と、固定盤と、を備え、前記ホイール部が周方向に複数の部分ホイールに分割され、各部分ホイールが固着具によって着脱可能に前記固定盤に取り付けられ、前記固定盤及び前記部分ホイールの接合面のうち、いずれか一方に凸部が、他方に凹部が形成されるとともに前記凸部と前記凹部とは係合され、前記部分ホイールを前記固定盤に着脱可能に取り付ける前記固着具は複数であって、前記複数の固着具は、第一固着具と、該第一固着具よりも前記部分ホイールの回転方向後方に配置される第二固着具とを少なくとも有し、前記第一固着具及び前記第二固着具は、前記ホイール部の回転中心と同心円上に配置されることを特徴とするチェーンスプロケットホイールである。
【0007】
手段2は、隣設された前記部分ホイール間には隙間が形成されていることを特徴とする手段1に記載のチェーンスプロケットホイールである。
【0008】
手段3は、前記ホイール部が前記歯の谷部を通って周方向に分割されていることを特徴とする手段1又は手段2に記載のチェーンスプロケットホイールである。
【0009】
手段4は、一の前記部分ホイールにおける固着具間の距離と、前記一の部分ホイールにおける固着具のうち隣接する他の部分ホイール側に位置する固着具と前記他の部分ホイールにおける固着具のうち前記一の部分ホイール側に位置する固着具との距離とが同じ距離であることを特徴とする手段1乃至手段3のいずれかに記載のチェーンスプロケットホイールである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、いずれかの部分ホイールに不具合が生じた場合に、その部分ホイールをチェーンと係合しない位置に移動させて、チェーンを取り外すことなく簡単に摩耗や損傷した部分ホイールのみを交換することができ、交換に要する手間やコストを大幅に低減することが可能となる。
また、固着具によって取り付けられた部分ホイールが、固定盤との接合面に形成された凹部と凸部が係合されているので、歯の一部に大きな力が加わっても、部分ホイールが固定盤に対してがたつきを防止することができる。
さらに、部分ホイールを固定盤に着脱可能に取り付ける固着具を、少なくとも第一固着具とそれより前記部分ホイールの回転方向後方に配置される第二固着具との複数とし、第一固着具及び第二固着具が、ホイール部の回転中心と同心円上に配置されるように構成したので、例えば、駆動チェーンスプロケットホイールと従動チェーンスプロケットホイールとで、部分ホイールを共用できるようになり、部分ホイールの製造コストを抑えることが可能となる。
【0011】
加えて、隣設して配置された部分ホイール間に隙間を形成することにより、部分ホール同士が競ることを防止し部分ホイールの着脱が容易となる。
【0012】
加えて、ホイール部が歯の谷部を通って周方向に分割されることにより、山部同士の分割に比較して、接触面が少なくなり着脱が容易になる。
【0013】
加えて、一の部分ホイールにおける固着具間の距離と、一の部分ホイールにおける固着具のうち隣接する他の部分ホイール側に位置する固着具と他の部分ホイールにおける固着具のうち一の部分ホイール側に位置する固着具との距離とが同じ距離離にすることにより、チェーンスプロケットホイールを最初に組み付ける際、部分ホイールを固定盤に容易に取り付けることができ、組付け作業を効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態を示すチェーンスプロケットホイールの正面図。
図2】本発明の第1の実施形態を示すチェーンスプロケットホイールの断面図。
図3】本発明の第1の実施形態に係る固定盤の正面図。
図4】本発明の第1の実施形態に係る部分ホイールの背面図。
図5】本発明の第2の実施形態を示すチェーンスプロケットホイールの正面図。
図6】本発明の第3の実施形態を示すチェーンスプロケットホイールの正面図。
図7】第3の実施形態における効果を説明する図。
図8】本発明の第4の実施形態を示すチェーンスプロケットホイールの正面図。
図9】本発明の第4の実施形態に係る固定盤の正面図。
図10】本発明の第5の実施形態に係る部分ホイールの背面図。
図11】本発明の第6の実施形態を示すチェーンスプロケットホイールの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照する等して説明する。なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0016】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態を図1図4と共に説明する。
図1は第1の実施形態を示すチェーンスプロケットホイールの正面図であり、図2は第1の実施形態を示すチェーンスプロケットホイールの断面図であり、図3は第1の実施形態に係る固定盤の正面図であり、図4は第1の実施形態に係る部分ホイールの背面図である。
【0017】
第1の実施形態において、チェーンスプロケットホイール1は、駆動チェーンスプロケットホイールであって、外周に掛け渡したチェーン(図示せず)を長さ方向に可動させるものである。
図1及び図2に示すように、チェーンスプロケットホイール1は、ホイール部2と、円盤状の固定盤3とを備える。
ホイール部2は、その外周にチェーンが係合する多数の歯4を有し、歯4は、山部41と谷部42とを備える。
【0018】
ホイール部2は、周方向に等間隔で複数(本実施例では8個)の部分ホイール5に分割されている。この分割数は、チェーンをUターン状に掛け渡した際においても、チェーンが係合しない部分ホイール5が少なくとも一つは存在できるだけの分割数として設定すれば良い。
ホイール部2は、歯4の山部41を通って径方向に伸びる分割線に沿って分割され、すべての部分ホイール5を周方向に組み合わせることにより、全体として円盤状に形成される。また、すべての部分ホイール5を組み合わせると、隣接する部分ホイール5の間には、わずかな隙間7が形成される。
【0019】
部分ホイール5は、固定盤3のボルト孔9(図3参照)及び部分ホイール5のボルト孔10(図4参照)に挿通したボルト8によって、単独で着脱可能に固定盤3の一面に固定される。
ボルト8は、一つの部分ホイール5に対して二つ設けられており、これらのボルトは、第一ボルト8aと、第一ボルト8aよりも部分ホイール5の回転方向後方に配置される第二ボルト8bとで構成されている。ボルト8、第一ボルト8a、第二ボルト8bは、それぞれ本願発明の固着具、第一固着具、第二固着具に相当する。
【0020】
そして、第一ボルト8aが配置されるホイール部2の回転中心からの距離と、第二ボルト8bが配置されるホイール部2の回転中心からの距離とが異なるものとなっている。
このように配置することで、歯4にチェーンの可動方向に大きな力が加わっても、部分ホイール5が固定盤3に対してがたつきをより防止することができる。
【0021】
具体的には、第一ボルト8aが配置されるホイール部2の回転中心からの距離は、第二ボルト8bが配置されるホイール部2の回転中心からの距離より長くなるように設定されている。
これにより、駆動チェーンスプロケットホイールであるので、チェーンスプロケットホイール1の回転によって生じるチェーンからの部分ホイール5の回転方向反対側に作用する回転モーメントに対する耐力を増すことができ、がたつきを防止することができる。
【0022】
図2及び図3に示すように、固定盤3は、図示しないシャフトを通すための筒状部30と、ホイール部2を取り付けるための円形鍔状のホイール固定部31とを備える。
ホイール固定部31の一面(ホイール部2が接合される面)には、内周縁沿って固定用フランジ32が形成され、固定用フランジ32の内周面が筒状部30の外周面に溶接等により固定されている。
【0023】
図2及び図3に示すように、ホイール固定部31の一面には、外周縁全てに沿って円形状の凸部11が形成され、図4に示すように、部分ホイール5の固定盤3に接合される面には、固定盤3の凸部11と係合する凹部12が周方向に沿って形成される。
部分ホイール5の内周面を固定用フランジ32の外周面に当接させると、部分ホイール5と固定盤3とが径方向に位置決めされ、凸部11と凹部12を簡単に係合できるとともに、ボルト孔9,10も位置合わせしやすい。
【0024】
ホイール固定部31の外周縁全てに沿って円形状の凸部11が形成するので、凸部11の加工が行いやすい。
チェーンスプロケットホイール1を回転させてチェーンを駆動する際に、部分ホイール5の歯4に不均等な力が加わり、部分ホイール5は固定盤3に対してがたつこうとするが、周方向に延びる固定盤3の凸部11と部分ホイール5の凹部12が係合して、がたつきを抑える。
【0025】
いずれかの部分ホイール5が摩耗・損傷した場合は、チェーンスプロケットホイール1からチェーンを取り外すことなく、その部分ホイール5がチェーンと係合しない位置まで移動させ、第一ボルト8a及び第二ボルト8bを抜き取り、摩耗・損傷を受けた部分ホイール5を取り外して、新たな部分ホイール5を取り付ける。
この時、隣設して配置された部分ホイール5間には隙間7が形成されている。このように隙間7が形成されているので、隣の部分ホイール5と取り外す部分ホイール5とが競ることなく、隣の部分ホイール5に邪魔されずに、容易に部分ホイール5を取り外しができる。また、取り付けにおいても隣の部分ホイール5に邪魔されずに作業が行うことができる。
【0026】
〔第2の実施形態〕
以下、本発明に係る第2の実施形態について図5と共に説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0027】
第2の実施形態におけるチェーンスプロケットホイール1は、従動チェーンスプロケットホイールであって、外周に掛け渡したチェーン(図示せず)の可動に伴って回転する。
チェーンスプロケットホイール1は、チェーンの可動に伴って図5に示す矢印方向に回転する。このため、部分ホイール5には、チェーンの可動によって生じるチェーンからの部分ホイールの回転方向の回転モーメントが作用することになる。
【0028】
これに対応して、第一ボルト8aが配置されるホイール部2の回転中心からの距離を、第一ボルト8aよりホイール部2の回転方向後方に配置される第二ボルト8bのホイール部2の回転中心からの距離より短くして、ボルト8を配置している。このようにすることで、チェーンの可動によって生じるチェーンからの部分ホイール5の回転方向に作用する回転モーメントに対する耐力を増すことができる。
【0029】
〔第3の実施形態〕
以下、本発明に係る第3の実施形態について図6及び図7と共に説明する。なお、第1及び第2の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0030】
第3の実施形態において、ホイール部2は、歯4の谷部42を通って径方向に伸びる分割線に沿って、複数の部分ホイール5に分割されている。
このようにホイール部2を歯4の谷部42で分割すると、山部41で分割したものと比べて、強度がやや低くなって部分ホイール5間が開きやすくなるが、着脱に際して、隣設して配置された部分ホイール5と接触し得る部分が少なくなるので、隣設して配置された部分ホイール5が邪魔にならず、着脱が容易になる。また、山部41で分割したものと比べて、着脱に際して、隣設して配置された部分ホイール5と接触し得る部分が少なくなるので、指を挟む可能性も低くなり安全な着脱作業をすることができる。
【0031】
取り付けられた8個の部分ホイール5は、ホイール固定部31の接合面に面一となるように通って設けられるものであるが、着脱する際に隣り合う部分ホイール5同士との間で、段差が生じる場合がある。このような場合であっても、歯4の谷部42を通って径方向に伸びる分割線に沿って、複数の部分ホイール5が分割されていれば、チェーンの可動に対する段差の存在による影響が小さくすることができ、チェーンのスムーズな可動に貢献する。この効果を図7により具体的に説明する。
図7は、この効果を説明するための図で、図7(イ)は、ホイール部2を歯4の山部41で分割した部分を拡大した平面図(図5におけるA方向から見た図)で、図7(ロ)は、第3の実施形態を示すもので、ホイール部2を歯4の谷部42で分割した部分を拡大した平面図(図6におけるB方向から見た図)である。
【0032】
隙間7を介して配置された隣合う部分ホイール5、5が段差Zが生じた場合の段差Zに対する分割された山部41の距離については、図7(イ)のように歯4の山部41で分割されているケースでは、分割された山部41の距離は隙間7のL1である。一方、図7(ロ)のように歯4の谷部42で分割されているケースでは、分割された山部41の距離は隙間7より谷部42、42分だけ大きいL2であり、谷部42で分割されるケースでは、山部41の同じ段差Zが生じる距離が長くなる。
このことから、チェーンに対する山部41の段差の影響は、図7(ロ)の谷部42で分割されるケースの方が相対的に小さくなる。しかも、図7(イ)の山部41で分割されるケースでは、チェーンの一つの穴に係合する山部41間で段差Zが生じるが、図7(ロ)の谷部42で分割されるケースでは、チェーンの二つの穴に係合する山部41間で段差Zが生じることになり、チェーンに対する段差の影響は少なくなる。
【0033】
〔第4の実施形態〕
本発明に係る第4の実施形態について図8図9と共に説明する。なお、第1~第3の実施形態のいずれかと同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0034】
図8及び図9に示すように、固定盤3の外形を、部分ホイール5の数と同数の辺を有する正多角形(本実施形態では正八角形)とし、固定盤3の外周縁に沿って正多角形の凸部11を形成する。
部分ホイール5の接合される面に設けられる凹部12は、図8に示すように固定盤3の正八角形の各頂点の凸部11の形状に合わせて折れ曲がった形状で設けられており、部分ホイール5が、固定盤3の正八角形の各頂点の位置に取り付けられている。
このように構成し、凸部11及び凹部12を、固定盤3と同心の円の接線と平行な直線を含むように設けることで、部分ホイール5が固定盤3に対して径方向及び周方向に位置決めされるので、部分ホイール5のがたつきをより確実に抑えることができ、ボルト孔9,10の位置合わせもさらに容易となる。
【0035】
〔第5の実施形態〕
本発明に係る第5の実施形態について図10と共に説明する。なお、第1~第4の実施形態のいずれかと同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0036】
第5の実施形態は、第4の実施形態の固定盤3に正八角形の各辺の位置に、部分ホイール5を取り付けるものである。
図10に示すように、部分ホイール5の固定盤3に接合される面には、固定盤3の凸部11と係合する凹部12が形成される。この凹部12は、固定盤3の正八角形の各辺の凸部11の形状に合わせて直線状に設けられており、部分ホイール6が、固定盤3の正八角形の各辺の位置に取り付けることができる。
このよう構成し、凸部11及び凹部12を、固定盤3と同心の円の接線と平行な直線を含むように設けると、部分ホイール5が固定盤3に対して径方向及び周方向に位置決めされるので、部分ホイール5のがたつきをより確実に抑えることができ、ボルト孔9,10の位置合わせもさらに容易となる。
【0037】
〔第6の実施形態〕
以下、本発明に係る第6の実施形態について図11と共に説明する。なお、第1~第5の実施形態のいずれかと同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0038】
前述した実施形態では、図1図5図6等に示されるように、部分ホイール5を固定する第一ボルト8a(第一固着具)及び第二ボルト8b(第二固着具)を、それぞれホイール部2の回転中心からの距離が異なるように構成したが、図11に示されるように、第一ボルト8a及び第二ボルト8bを、ホイール部2の回転中心と同心円上にそれぞれ配置している。
【0039】
このように構成することにより、駆動チェーンスプロケットホイールと従動チェーンスプロケットホイールとで、部分ホイール5を共用することが可能となる。すなわち、前述の実施形態のように、チェーンスプロケットホイールの回転方向に応じて、第一ボルト8a及び第二ボルト8bの位置を、ホイール部2の回転中心からそれぞれ異なる距離になるように構成していない。したがって、駆動チェーンスプロケットホイールと従動チェーンスプロケットホイールとで、部分ホイール5を共用できるようになり、部分ホイール5の製造コストを抑えることが可能となる。なお、図11に示された部分ホイール5は、山部41で分割した例が示されているが、前述の実施形態と同様、谷部42で分割することも可能である。
【0040】
また、図11に示された実施例では、部分ホイール5の第一ボルト8a(第一固着具)と第二ボルト8b(第二固着具)との距離(図示a)と、隣接する部分ホイール5を固定するボルトとの距離(図示b)とが異なるように構成されている。しかし、このような構成に限らず、一の部分ホイール5内のボルト間の距離(図示a)と、該一の部分ホイール5を固定するボルトのうち隣接する他の部分ホイール5側に位置するボルトと該他の部分ホイール5を固定するボルトのうち一の部分ホイール側に位置するボルトとの間の距離(図示b)とを同じ距離となるように、すなわちボルト8をすべて円周方向に等間隔で配するように構成することも可能である。このように構成することで、固定盤3のホイール固定部31に形成されるボルト孔9が等間隔となり、例えば、チェーンスプロケットホイール1のホイール部2を最初に組み付ける際、部分ホイール5をホイール固定部31上のどのような位置でも容易に取り付けることができ、組付け作業を効率的に行うことが可能となる。
【0041】
〔その他の変形例〕
本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0042】
本実施形態では、ホイール部を8個の部分ホイールに分割してあるが、チェーンスプロケットホイールの大きさ、チェーンが係合する角度等によって、分割する数は適宜変更できる。
【0043】
本実施形態では、固定盤に凸部を形成し、部分ホイールに凹部を形成してあるが、もちろん、固定盤に凹部を形成し、部分ホイールに凸部を形成してもよい。
【0044】
本実施形態では、ホイール固定部31の外周縁全てに沿って円形状の凸部11が形成したが、これに限られない。外周縁全てに沿ってではなく断続的に設けるようにしても良い。また、外周縁でなく内側の接合面に凸部を形成しても良い。凸部の形状も実施形態に限定されるものではない。本実施形態では、周方向に湾曲するように設けるか、多角形状に設けたが、径方向に長く設けるようなものでも良い。また、その場合、係合する凹部も対応する位置形状にすることはいうまでもない。
【0045】
本実施形態では、各部分ホイールを第一ボルト及び第二ボルトの2本のボルトで固定盤に取り付けてあるが、これに限られず、1本のボルトで固定盤に取り付けても良い。
【0046】
本実施形態では、各部分ホイールを第一ボルト及び第二ボルトの2本のボルトで固定盤に取り付けてあるが、部分ホイールの大きさに応じて、3本以上のボルトで取り付けても良い。
【0047】
いずれの実施形態における各技術的事項を他の実施形態に適用して実施例としても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 チェーンスプロケットホイール
2 ホイール部
3 固定盤
4 歯
5 部分ホイール
7 隙間
8 ボルト
8a 第一ボルト(第一固着具)
8b 第二ボルト(第二固着具)
9,10 ボルト孔
30 筒状部
31 ホイール固定部
32 固定用フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11