(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】電子管、撮像装置、及び電磁波検出装置
(51)【国際特許分類】
H01J 40/12 20060101AFI20240829BHJP
H01J 40/06 20060101ALI20240829BHJP
H01J 43/20 20060101ALI20240829BHJP
H01J 43/24 20060101ALI20240829BHJP
H01J 43/30 20060101ALI20240829BHJP
H01J 40/10 20060101ALI20240829BHJP
H01J 1/78 20060101ALI20240829BHJP
H01J 1/34 20060101ALI20240829BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20240829BHJP
H01J 31/50 20060101ALI20240829BHJP
H01J 29/38 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H01J40/12
H01J40/06
H01J43/20
H01J43/24
H01J43/30
H01J40/10
H01J1/78
H01J1/34
G01J1/02 D
H01J31/50 D
H01J29/38
(21)【出願番号】P 2022547994
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2021052815
(87)【国際公開番号】W WO2021156442
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2023-09-08
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 泰英
(72)【発明者】
【氏名】久家 佑太
(72)【発明者】
【氏名】河合 直弥
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ サイモン レインコーフ
(72)【発明者】
【氏名】イェプセン ピーター ウドゥ
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-050149(JP,A)
【文献】国際公開第03/087739(WO,A1)
【文献】特開2016-100121(JP,A)
【文献】特開2009-105102(JP,A)
【文献】国際公開第2012/078043(WO,A1)
【文献】特開昭57-072254(JP,A)
【文献】特表平09-503091(JP,A)
【文献】特開2008-016293(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0151338(US,A1)
【文献】特開2006-202653(JP,A)
【文献】特開2017-142135(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0216201(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 1/32,1/34,40/06,43/08,49/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止されていると共に電磁波を透過する窓を有しているハウジングと、
前記ハウジング内に配置されており、前記電磁波の入射に応じて電子を放出するメタサーフェスと、互いに離間していると共に前記メタサーフェスに互いに異なる電位を印加する第一及び第二電極とを有する電子放出部材と、
前記ハウジング内に配置されており、前記電子放出部材を保持する保持部材と、を備え、
前記メタサーフェスは、前記第一電極に電気的に接続されている第一伝導線と、前記第一伝導線と離間していると共に前記第二電極に電気的に接続されている第二伝導線とを含み、
前記第一伝導線は、前記第一電極から前記第二伝導線に向かって延在して
おり、第一端部と前記第一端部に電気的に接続されている複数の第二端部とを含んでおり、
前記第二伝導線は、前記第二電極から前記第一伝導線に向かって延在して
おり、第三端部と前記第三端部に電気的に接続されている複数の第四端部とを含んでおり、
前記第二端部と前記第二端部に対応する前記第四端部とは、互いに対向していると共に互いに近接している、電子管。
【請求項2】
前記保持部材は、互いに離間している第一及び第二伝導端子を有し、
前記第一電極は、前記第一伝導端子に電気的に接続されており、
前記第二電極は、前記第二伝導端子に電気的に接続されている、請求項1に記載の電子管。
【請求項3】
前記ハウジングは、当該ハウジングの内側面に設けられた第一及び第二伝導層を有し、
前記第一及び第二伝導層は、互いに離間しており、
前記第一伝導端子は、前記第一伝導層に接しており、
前記第二伝導端子は、前記第二伝導層に接している、請求項2に記載の電子管。
【請求項4】
前記保持部材は、前記ハウジングの内側面に付勢力を加えることで前記ハウジングに対して当該保持部材の位置決めをする複数のバネ部を有し、
前記複数のバネ部は、前記第一伝導端子及び前記第二伝導端子の少なくとも一方を含む、請求項2に記載の電子管。
【請求項5】
前記保持部材は、前記電子放出部材に接していると共に貫通口を有する保持体と、前記保持体から離間していると共に前記第一電極及び前記第二電極の一方と接しているコンタクト電極とを含み、
前記コンタクト電極と接している前記一方と前記メタサーフェスとは、前記貫通口から露出していると共に前記貫通口の縁から離間している、請求項1~4のいずれか一項に記載の電子管。
【請求項6】
前記電子放出部材は、互いに対向する第一及び第二主面を有する基板を有し、
前記メタサーフェスは、前記第一主面に設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の電子管。
【請求項7】
前記第一電極及び前記第二電極の少なくとも一方は、前記第一主面の縁の全体から離間している、請求項6に記載の電子管。
【請求項8】
前記保持部材は、前記第二主面に接しているベース部材と、前記第一主面の縁に接していると共に前記ベース部材に前記電子放出部材を弾性的に付勢する付勢部材とを有し、
前記付勢部材は、前記第二電極に電気的に接続されている、請求項6に記載の電子管。
【請求項9】
前記第一電極及び前記第二電極の一方は、グラウンドに接続されるように構成されている電極である、請求項1~4のいずれか一項に記載の電子管。
【請求項10】
前記第一伝導線及び前記第二伝導線の一方は、前記電磁波の入射に応じて電子を放出するアンテナ部と、前記第一伝導線及び前記第二伝導線の他方との間に電界を発生させるバイアス部とを兼ねている、請求項1~4のいずれか一項に記載の電子管。
【請求項11】
前記第一電極にバイアス電位が印加された場合に、前記電磁波の入射に応じて前記第二伝導線が電子を放出し、
前記第二電極にバイアス電位が印加された場合に、前記電磁波の入射に応じて前記第一伝導線が電子を放出する、請求項1~4のいずれか一項に記載の電子管。
【請求項12】
前記第二伝導線は、前記電磁波の入射に応じて電子を放出するアンテナ部を含み、
前記第一伝導線は、前記第一電極にバイアス電位が印加された場合に、前記アンテナ部との間に電界を発生させるバイアス部を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の電子管。
【請求項13】
前記第一伝導線は、前記第一電極に接している第一端部と前記第一端部に電気的に接続されている第二端部とを含み、
前記第二伝導線は、前記第二電極に接している第三端部と前記第三端部に電気的に接続されている第四端部とを含み、
前記第二端部は、前記第一伝導線の当該第二端部以外の部分よりも、前記第四端部の近くに配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の電子管。
【請求項14】
前記第二伝導線は、前記第四端部から延在する仮想直線上に延在する直線状部を含んでおり、
前記第二端部は、前記仮想直線上に位置している、請求項13に記載の電子管。
【請求項15】
前記第二伝導線は、前記第四端部から延在する仮想直線上に延在する直線状部を含んでおり、
前記第二端部は、前記仮想直線上に位置していない、請求項13に記載の電子管。
【請求項16】
前記ハウジング内に配置されており、前記電子放出
部材から放出された電子を増倍する電子増倍部と、
前記ハウジング内に配置されており、前記電子増倍部で増倍された電子を収集する電子収集部と、をさらに備え、
前記ハウジングの内部は、大気圧よりも低い圧力である1×10-4~1×10-7Paに保持されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の電子管。
【請求項17】
前記電子増倍部及び前記電子収集部は、ダイオードであると共に一体に構成されている請求項16に記載の電子管。
【請求項18】
前記電子増倍部は、互いに離間した複数のダイノードを有し、
前記電子収集部は、前記電子増倍部で増倍された電子を収集するアノード又はダイオードを有している、請求項16に記載の電子管。
【請求項19】
前記電子増倍部は、マイクロチャンネルプレートを有し、
前記電子収集部は、前記電子増倍部で増倍された電子を収集するアノード又はダイオードを有している、請求項16に記載の電子管。
【請求項20】
前記電子増倍部は、マイクロチャンネルプレートを有し、
前記電子収集部は、前記電子増倍部で増倍された電子を受けて光を発する蛍光体を含んでいる、請求項16に記載の電子管。
【請求項21】
請求項20に記載の電子管と、
前記蛍光体からの前記光に基づく像を撮像する撮像部と、を備える、撮像装置。
【請求項22】
請求項1~4のいずれか一項に記載の電子管と、
光を検出する光検出器と、を備え、
前記ハウジングは、前記メタサーフェスから放出された電子によって発光するガスを収容しており、
前記光検出器は、前記ガスの発光による光を検出する、電磁波検出装置。
【請求項23】
前記ガスは、空気、アルゴンガス、又は窒素ガスを含んでいる、請求項22に記載の電磁波検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子管、撮像装置、及び電磁波検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、熱電子放出(加熱電極によって達成される)、光電子放出(光子の印加によって達成される)、二次放出(光速電子を衝突させることによって達成される)、及び、電界放出(静電界の存在下で達成される)などの4つのタイプの電子放出がある。電磁波を検出する検出器が知られている(例えば、米国特許出願公開第2016/0216201号明細書参照)。特許文献1に記載のシステムは、メタマテリアル構造を有する基板を備えている。このシステムは、基板に入射した電磁波のうち、テラヘルツ波(例えば、周波数100GHz~30THz程度の電磁波)を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2016/0216201号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシステムでは、メタマテリアル構造を有する基板に電磁波が入射すると、基板から電子が放出される。基板から放出された電子は、基板の周囲の気体、例えば大気に含まれる分子を励起する。励起された分子は、光を発生する。光センサは、生成された光を検出する。
【0005】
本発明の一つの態様は、電磁波の検出精度が確保されている電子管を提供することを目的とする。本発明の別の一つの態様は、電磁波の検出精度が確保されている撮像装置を提供することを目的とする。本発明のさらに別の態様は、電磁波の検出精度が確保される電磁波検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電子管は、ハウジングと、電子放出部と、保持部とを備える。ハウジングは、封止されていると共に電磁波を透過する窓を有している。電子放出部材は、ハウジング内に配置されており、メタサーフェスと第一及び第二電極とを含んでいる。メタサーフェスは、電磁波の入射に応じて電子を放出するように構成される。第一及び第二電極は、互いに離間していると共に互いに異なる電位をメタサーフェスに印加するようにそれぞれ配置される。保持部材は、ハウジング内に配置されており、電子放出部材を保持する。メタサーフェスは、第一伝導線と、第二伝導線とを含む。第一伝導線は、第一電極に電気的に接続されている。第二伝導線は、第一伝導線と離間していると共に第二電極に電気的に接続されている。第一伝導線は、第一電極から第二伝導線に向かって延在している。第二伝導線は、第二電極から第一伝導線に向かって延在している。
【0007】
上記一つの態様では、メタサーフェスを有する電子放出部材が保持部によって封止されたハウジング内に保持されている。メタサーフェスを構成する第一伝導線が第一電極に電気的に接続されており、メタサーフェスを構成する第二伝導線が第二電極に電気的に接続されている。この電子管では、第一電極及び第二電極に互いに異なる電位を印加することで、窓から入射した電磁波に応じたメタサーフェスにおける電子放出の向上又は抑制が実現され得る。このため、この電子管を用いて電子放出部材から放出された電子を観測することによって、電子管に入射した電磁波の検出精度が確保され得る。
【0008】
上記一つの態様では、保持部材は、互いに離間している第一及び第二伝導端子を有していてもよい。第一電極は、第一伝導端子に電気的に接続されていてもよい。第二電極は、第二伝導端子に電気的に接続されていてもよい。この場合、保持部材を通して電子放出部材に電圧を印加することができる。このため、電子管の部品点数の減少と電子管のコンパクト化とを実現することができる。
【0009】
上記一つの態様では、ハウジングは、当該ハウジングの内側面に設けられた第一及び第二伝導層を有していてもよい。第一及び第二伝導層は、互いに離間していてもよい。第一伝導端子は、第一伝導層に接していてもよい。第二伝導端子は、第二伝導層に接していてもよい。この場合、ハウジングの内側面に設けられた第一及び第二伝導層によって、第一伝導端子及び第二伝導端子に電位を印加することができる。したがって、電子管のコンパクト化を実現することができる。
【0010】
上記一つの態様では、保持部材は、複数のバネ部を有してもよい。複数のバネ部は、ハウジングの内側面に付勢力を加えるように配置されてもよく、ハウジングに対して当該保持部材を位置決めしてもよい。複数のバネ部は、第一伝導端子及び第二伝導端子の少なくとも一方を含んでもよい。この場合、電子管の各部材において多少の製造誤差又は温度変化による変形があったとしても、保持部材がハウジングに対して安定して保持される。バネ部を通して、電子放出部材に電位が印加され得る。
【0011】
上記一つの態様では、保持部材は、保持体とコンタクト電極とを含んでもよい。保持体は、電子放出部材に接していると共に貫通口を有してもよい。コンタクト電極は、保持体から離間していると共に第一電極及び第二電極の一方と接してもよい。コンタクト電極と接している上記一方とメタサーフェスとは、貫通口から露出していると共に貫通口の縁から離間していてもよい。この場合、コンタクト電極と接している上記一方と保持体との接触が防止されている。このため、簡易な構成によって、第一電極及び第二電極と保持部材との間における所望の電気的接続構造が実現され得る。
【0012】
上記一つの態様では、電子放出部材は、互いに対向する第一及び第二主面を有する基板を有してもよい。メタサーフェスは、第一主面に設けられていてもよい。
【0013】
上記一つの態様では、第一電極及び第二電極の少なくとも一方は、第一主面の縁の全体から離間していてもよい。第一主面の縁の全体から離間していれば、第一電極及び第二電極の少なくとも一方と保持部材との接触が容易に防止され得る。このため、簡易な構成によって、第一電極及び第二電極と保持部材との間における所望の電気的接続構造が実現され得る。
【0014】
上記一つの態様では、保持部材は、ベース部材と付勢部材とを有していてもよい。ベース部材は、第二主面に接していてもよい。付勢部材は、第一主面の縁に接していると共にベース部材に電子放出部材を弾性的に付勢していてもよい。付勢部材は、第二電極に電気的に接続されてもよい。この場合、電子管の各部材において多少の製造誤差又は温度変化による変形があったとしても、電子放出部材がベース部材に対して安定して保持される。付勢部材を通して、電子放出部材に電圧を印加することができる。
【0015】
上記一つの態様では、第一電極及び第二電極の一方は、グラウンドに接続されるように構成されている電極であってもよい。
【0016】
上記一つの態様では、第一伝導線及び第二伝導線の一方は、アンテナ部とバイアス部を兼ねていてもよい。アンテナ部は、電磁波の入射に応じて電子を放出してもよい。バイアス部は、第一伝導線及び第二伝導線の他方との間に電界を発生させるように構成されてもよい。
【0017】
上記一つの態様では、第一電極にバイアス電位が印加された場合に、電磁波の入射に応じて第二伝導線が電子を放出するように構成されてもよい。第二電極にバイアス電位が印加された場合に、電磁波の入射に応じて第一伝導線が電子を放出するように構成されてもよい。
【0018】
上記一つの態様では、第二伝導線は、電磁波の入射に応じて電子を放出するアンテナ部を含んでいてもよい。第一伝導線は、第一電極にバイアス電位が印加された場合に、アンテナ部との間に電界を発生させるバイアス部を含んでいてもよい。この場合、アンテナ部を中心においてポテンシャルを傾斜させることができる。これによって、メタサーフェスにおける電子放出の向上又は抑制が実現され得る。
【0019】
上記一つの態様では、第一伝導線は、第一電極に接している第一端部と第一端部に電気的に接続されている第二端部とを含んでもよい。第二伝導線は、第二電極に接している第三端部と第三端部に電気的に接続されている第四端部とを含んでもよい。第二端部は、第一伝導線の当該第二端部以外の部分よりも、第四端部の近くに配置されていてもよい。この場合、第二端部と第四端部との間において発生する電界の強度が向上し、アンテナ部の周囲においてポテンシャルがさらに傾斜する。これによって、メタサーフェスにおける電子放出の向上又は抑制が実現され得る。
【0020】
上記一つの態様では、第二伝導線は、第四端部から延在する仮想直線上に延在する直線状部を含んでいてもよい。第二端部は、上記仮想直線上に位置していてもよい。この場合、第四端部において放出された電子が第二端部に当たって増幅される。したがって、メタサーフェスにおける電子放出が向上する。
【0021】
上記一つの態様では、第二伝導線は、第四端部から延在する仮想直線上に延在する直線状部を含んでいてもよい。第二端部は、上記仮想直線上に位置していなくてもよい。この場合、第四端部において放出された電子の第二端部による増幅が抑制される。この結果、窓から入射した電磁波に依拠した量の電子がメタサーフェスから放出される。このため、窓から入射した電磁波の振幅がより正確に検出され得る。
【0022】
上記一つの態様では、電子管は、電子増倍部と、電子収集部とをさらに備えてもよい。電子増倍部は、ハウジング内に配置されており、電子放出部材から放出された電子を増倍してもよい。電子収集部は、ハウジング内に配置されており、電子増倍部で増倍された電子を収集してもよい。ハウジング内は、真空であってもよい。この場合、電子放出部材から放出された電子が電子増倍部において増幅された後に、電子収集部において収集される。このため、コンパクトな構成でありながら、窓から入射した電磁波に対して検出精度が確保され得る。
【0023】
上記一つの態様では、電子増倍部及び電子収集部は、ダイオードであると共に一体に構成されていてもよい。この場合、電子管のサイズがさらに削減され得る。
【0024】
上記一つの態様では、電子増倍部は、互いに離間した複数のダイノードを有してもよい。電子収集部は、電子増倍部で増倍された電子を収集するアノード又はダイオードを有してもよい。この場合、メタサーフェスから放出された電子が複数のダイノードで増倍される。このため、アノード又はダイノードで収集される電子の増倍率が向上する。
【0025】
上記一つの態様では、電子増倍部は、マイクロチャンネルプレートを有してもよい。電子収集部は、電子増倍部で増倍された電子を収集するアノード又はダイオードを有してもよい。この場合、電子増倍部に複数のダイノードが用いられる場合に比べて、サイズ、重量、及び消費電力が削減されると共に、応答速度及び利得が向上する。
【0026】
上記一つの態様では、電子増倍部は、マイクロチャンネルプレートを有してもよい。電子収集部は、電子増倍部で増倍された電子を受けて光を発する蛍光体を有してもよい。この場合、メタサーフェスから放出された電子の2次元位置が、蛍光体が発した光によって検出され得る。
【0027】
本発明の別の態様に係る撮像装置は、上述した電子管と、蛍光体からの光に基づく像を撮像する撮像部と、を備えている。上記別の態様では、上述した電磁波の検出精度が確保される。
【0028】
本発明のさらに別の態様に係る電磁波検出装置は、上述した電子管と、光検出器を備える。光検出器は、光を検出する。ハウジングは、メタサーフェスから放出された電子によって発光するガスを収容している。光検出器は、ガスの発光による光を検出する。
【0029】
上記さらに別の態様では、ガスは、空気、アルゴンガス、又は窒素ガスを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一つの態様によれば、電磁波の検出精度が確保され得る電子管を提供できる。本発明の別の態様によれば、電磁波の検出精度が確保され得る撮像装置を提供することを目的とする。本発明のさらに別の態様によれば、電磁波の検出精度が確保される電磁波検出装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る電子管の模式図である。
【
図10】
図10は、保持部材が電子放出部材を保持している状態を示す断面図である。
【
図11】
図11は、保持部材がハウジングに位置決めされている状態を示す図である。
【
図12】
図12は、保持部材がハウジングに位置決めされている状態を示す図である。
【
図15】
図15は、本実施形態の変形例における伝導線の構成を示す図である。
【
図16】
図16は、本実施形態の変形例における伝導線の構成を示す図である。
【
図17】
図17は、本実施形態の変形例における保持部材の斜視図である。
【
図21】
図21は、本実施形態における電子管の動作を説明するための図である。
【
図22A】
図22Aは、本実施形態における電子管の動作を説明するための図である。
【
図22B】
図22Bは、本実施形態における電子管の動作を説明するための図である。
【
図23】
図23は、本実施形態における電子管の動作を説明するための図である。
【
図24】
図24は、本実施形態の変形例における電子管の断面図である。
【
図25】
図25は、本実施形態の変形例における電子管の断面図である。
【
図26】
図26は、本実施形態の変形例における電子管の断面図である。
【
図27】
図27は、マイクロチャンネルプレートの斜視切欠図である。
【
図28】
図28は、本実施形態の変形例における電子管の部分断面図である。
【
図29】
図29は、本実施形態の変形例における電子管の断面図である。
【
図30】
図30は、本実施形態の変形例における撮像装置の側面図である。
【
図31】
図31は、本実施形態の変形例における電子管の断面図である。
【
図32】
図32は、本実施形態の変形例における電磁波検出装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有している要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0033】
まず、
図1~
図5を参照して、本実施形態に係る電子管の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る電子管の概略図である。
図2は、電子管の斜視図である。
図2において、電子管の内部の構成も実線で示している。
図3は、電子管の側面図である。
図4は、電子管の側面図である。
図5は、電子管の断面図である。
【0034】
電子管1は、電磁波の入射に応じて電気信号を出力する光電子増倍管である。本明細書において、電子管に入射する「電磁波」は、いわゆるミリ波から赤外光の周波数帯域を有している電磁波である。電子管1は、電磁波が入射した場合に内部で電子を放出し、放出された電子を増倍する。本実施形態において、電子管1は、電磁波を光電面に入射させ、外部光電効果によって光電面から放出された電子を増倍する。電子管1は、ハウジング10と、電子放出部材20と、保持部材30と、電子増倍部40と、電子収集部50とを備えている。
【0035】
ハウジング10は、バルブ11と、ステム12とを有している。ハウジング10の内部は、バルブ11とステム12で気密に封止されている。本実施形態において、ハウジング10の内部は真空に保持されている。真空は、絶対真空だけでなく、大気圧よりも低い圧力の気体で満たされた状態も含む。たとえば、ハウジング10の内部は、1×10-4~1×10-7Paに保持される。バルブ11は、電磁波透過性を有する窓11aを有している。本明細書において、「電磁波透過性」とは、入射した電磁波の少なくとも一部の周波数帯域が透過する性質をいう。本実施形態において、ハウジング10は円筒形状を有している。ステム12は、ハウジング10の底面を構成する。バルブ11は、ハウジング10の側面及びステム12に対向する底面を構成する。
【0036】
窓11aは、ステム12に対向する底面を構成する。窓11aは、たとえば、平面視で円形状である。電磁波の透過率の周波数特性は、材料に応じて異なる。このため、窓11aは、電子管1に入射する電磁波の周波数帯域に応じた最適な材料によって構成される。たとえば、窓11aは、たとえば、石英、シリコン、ゲルマニウム、サファイア、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、及びカルコゲナイドガラスから選択される少なくとも1種を含む。これらから選択された材料によって窓11aを構成することで、ミリ波から赤外光のうち任意の周波数帯域の電磁波をハウジング10の内部に導くことができる。たとえば、石英は0.1~5THz、シリコンは0.04~11THz及び46THz以上、フッ化マグネシウムは40THz以上、ゲルマニウムは13THz以上、セレン化亜鉛は14THz以上の周波数帯域を有する電磁波を透過する部材の材料に適している。
【0037】
電子管1は、ハウジング10の外部と内部との電気的な接続を可能とする複数の配線13をさらに有している。複数の配線13は、たとえば、リード線又はピンである。本実施形態において、複数の配線13は、ステム12を貫通するピンであり、ハウジング10の内部から外部に延在している。複数の配線13の少なくとも1つが、ハウジング10の内部に設けられた種々の部材と接続されている。
【0038】
ハウジング10は、ハウジング10の内側面10aに設けられた伝導層15,16を有する。伝導層15,16は、互いに離間している。伝導層15,16には、互いに異なる電位がハウジング10の外部から印加される。伝導層15は、平面視で楕円形状を呈している。伝導層15は、ハウジング10の管軸TAに沿って延在している。伝導層15は、窓11aからステム12に向かう方向に延在している。
【0039】
伝導層16は、窓11aの周辺に設けられている。ハウジング10の内側面10aに沿って、伝導層16は、管軸TA周りに保持部材30を囲っている。伝導層15の延在方向において、伝導層16は伝導層15よりも窓11aに近い領域に設けられている。伝導層16は、伝導層15と対向する位置において、ハウジング10の管軸TAに沿って延在している。このため、伝導層16も、窓11aからステム12に向かう方向に延在する部分を含んでいる。本実施形態において、伝導層15と伝導層16との最短距離は、約1mmである。伝導層15,16は、ハウジング10の内側面10aに金属を蒸着させることで形成されている。伝導層15,16の材料は、例えば、アルミニウムを含む。伝導層15が第一伝導層である場合、伝導層16が第二伝導層である。
【0040】
電子放出部材20は、ハウジング10の内部に配置されており、ハウジング10の内部で電磁波の入射に応じて電子を放出する。電子放出部材20は、基板21とメタサーフェスSとを有する。基板21は、互いに対向する主面21a及び主面21bを有している。本実施形態において、基板21は、板形状である。たとえば、主面21aが第二主面を構成する場合、主面21bが第一主面を構成する。
【0041】
主面21a及び主面21bは、窓11aに対して平行に配置されている。主面21aは、窓11aに対向している。主面21aは、窓11aを通過した電磁波が入射する入射面22を含んでいる。基板21は、窓11aを透過する電磁波に対して電磁波透過性を有している。このため、基板21は、窓11aを透過した電磁波の少なくとも一部の周波数帯域を透過する。基板21の材料は、たとえば、石英を含む。基板21の材料は、たとえば、シリコンを含んでいてもよい。基板21は、平面視で矩形状である。基板21は、窓11a及び電子増倍部40から離間している。
【0042】
メタサーフェスSは、電磁波の入射に応じて電子を放出する。メタサーフェスSは、基板21上でパターン化された酸化物層又はパターン化された金属層に含まれている。酸化物層の材料は、たとえば二酸化シリコン及び酸化チタンである。金属層の材料は、たとえば金である。本実施形態において、石英から成る基板21の主面21b上に、酸化物層が形成され、酸化物層の上に金属層が形成されている。メタサーフェスSは、平面視で矩形状である。本実施形態において、メタサーフェスSは、主面21bに設けられている。メタサーフェスSは、主面21aに設けられていてもよい。
【0043】
保持部材30は、ハウジング10の内部において電子放出部材20を保持する。保持部材30は、ハウジング10の内側面10aに対して位置決めされる。保持部材30は、ハウジング10に対して電子放出部材20を位置決めする。保持部材30は、ハウジング10の内側面10aに沿う枠状であり、保持部材30には貫通口31が形成されている。電子放出部材20の主面21a,21bに直交する方向から見た場合に、貫通口31を画成する縁の内側に、電子放出部材20の入射面22及びメタサーフェスSが配置される。保持部材30がハウジング10に対して位置決めされた状態において、ハウジング10の管軸TAは貫通口31を通る。保持部材30は、貫通口31を通過する電磁波の光軸(以下、「保持部材30の軸」という)がハウジング10の管軸TAと平行となるようにハウジング10に対して位置決めされる。保持部材30の軸HAは、電子放出部材20の主面21a,21bに直交する。保持部材30は、複数の配線13の少なくとも1つに接続されている。本実施形態において、保持部材30は、電子放出部材20に電圧を印加する。
【0044】
保持部材30は、互いに離間している伝導端子33,34を有している。伝導端子33と伝導端子34とは、互いに離間している。伝導端子33と伝導端子34とには、伝導層15,16を通して、互いに異なる電位が印加される。伝導端子33は、伝導層15に向かって延在し、伝導層15に弾性的に接している。このため、伝導端子33は、伝導層15に電気的に接続されている。伝導端子34は、伝導層16に向かって延在し、伝導層16に弾性的に接している。このため、伝導端子34は、伝導層16に電気的に接続されている。伝導端子33が第一伝導端子である場合、伝導端子34が第二伝導端子である。
【0045】
電子増倍部40は、ハウジング10の内部に配置されており、電子放出部材20から放出された電子が入射する入射面40aを有している。電子増倍部40は、入射面40aに入射した電子を増倍する。本実施形態において、電子放出部材20の主面21bは、電子増倍部40の入射面40aに面している。メタサーフェスSは、電子増倍部40の入射面40aに面しており、メタサーフェスSから放出された電子が入射面40aに入射する。電子放出部材20の主面21aは、ハウジング10の窓11aに面している。
【0046】
本明細書において、「AがBに面する」とは、BがAに接する平面よりもAの法線方向に位置することを意味する。換言すれば、「AがBに面する」とは、空間をAに接する面で二分した場合に、BがAの裏側でなく、A側に位置することを意味する。たとえば、電子管1において、上述したように、メタサーフェスSは電子増倍部40の入射面40aに面している。これは、電子増倍部40の入射面40aがメタサーフェスSに接する平面よりもメタサーフェスSの法線方向に位置していることを意味する。
【0047】
本実施形態において、電子増倍部40は、
図1に示されているように、いわゆるラインフォーカス型の複数段のダイノードを有している。本実施形態において電子増倍部40は、電子を集束させる集束電極41と、互いに離間した複数段のダイノード42a,42bとを有している。ダイノード42aは、上述した入射面40aを含んでいる。本実施形態において、電子増倍部40は、10段のダイノード42a,42bを有している。ダイノード42aの後段に、9段のダイノード42bが配置されている。集束電極41の中央部には、円形状の入射開口41aが設けられている。ダイノード42a,42bは、入射開口41aの後段に配置されている。ダイノード42a,42bのそれぞれには、複数の配線13のうち1つが接続されている。ダイノード42a,42bのそれぞれには、所定の電位が配線13を通して印加される。ダイノード42a,42bは、印加された電位に応じて入射開口41aを通過した電子を増倍する。
【0048】
集束電極41は、互いに離間している伝導端子43,44を有している。伝導端子43と伝導端子44とには、伝導層15,16を通して、互いに異なる電位が印加される。伝導層15及び伝導層16の一方は、グラウンドであってもよい。伝導端子43は、伝導層15に向かって延在し、伝導層15に弾性的に接している。このため、伝導端子43は、伝導層15と電気的に接続されている。伝導端子44は、伝導層16に向かって延在し、伝導層16に弾性的に接している。このため、伝導端子44は、伝導層16と電気的に接続されている。
【0049】
電子収集部50は、ハウジング10の内部に配置されており、電子増倍部40で増倍された電子を収集する。本実施形態において、電子収集部50はメッシュ状のアノード51を有している。アノード51は、電子放出部材20の主面21bよりもステム12寄りに位置している。アノード51には、複数の配線13のうち1つが接続されている。アノード51には、所定の電位が配線13を通して印加される。アノード51は、ダイノード42a,42bで増倍された電子を捕捉する。電子収集部50は、アノード51の代わりにダイオードを有していてもよい。
【0050】
本実施形態において、電子管1は、ダイノード42a,42b及びアノード51をハウジング10の内部に固定する一対の絶縁基板52を有している。一対の絶縁基板52は、アルミナからなる。一対の絶縁基板52は、互いに対向している。ダイノード42a,42bは、一対の絶縁基板52の対向方向において延在する一対の端部を有している。アノード51は、一対の絶縁基板52の対向方向において延在する一対の端部を有している。ダイノード42a,42b及びアノード51のそれぞれの端部は、一対の絶縁基板52に予め設けられたスリット状の貫通孔に挿入されている。
【0051】
電子管1は、ダイノード42a,42bとアノード51との一部を囲う遮蔽板55を有している。遮蔽板55は、ダイノード42a,42bで増倍された電子の衝突によって生じた光及びイオンがハウジング10の内部で飛散することを防止する。遮蔽板55は、複数の配線13のうち1つに接続されている。遮蔽板55には、所定の電位が配線13を通して印加される。
【0052】
次に、
図5~
図10を参照して、保持部材30の構成について詳細に説明する。
図6は、保持部材30の斜視図である。
図7は、保持部材30の部分断面図である。
図8は、保持部材30の分解図である。
図9は、保持部材30の一部をさらに分解した分解図である。
図10は、保持部材30が電子放出部材を保持している状態を示す拡大端面図である。
【0053】
保持部材30は、コンタクト部材60と、保持体70とを有している。コンタクト部材60は、保持体70に係合している。保持体70は、上述した貫通口31を有する。電子放出部材20の主面21a及び主面21bは、貫通口31から露出している。メタサーフェスSは、貫通口31から露出している。
【0054】
図8に示されているように、コンタクト部材60は、上述した伝導端子33と、ワッシャー61と、絶縁体62と、絶縁体63と、取付台64と、コンタクト電極65と、支柱電極66とを含んでいる。伝導端子33は、長尺状の板形状を呈している。伝導端子33の一端は取付台64に接続されており、伝導端子33の他端は上述した伝導層15に弾性的に接している。
【0055】
保持部材30がハウジング10に位置決めされた状態において、窓11a側からワッシャー61、絶縁体62、保持体70、絶縁体63、及び取付台64の順に位置している。保持体70は、絶縁体62及び絶縁体63に挟まれている。ワッシャー61、絶縁体62、絶縁体63、取付台64、及び保持体70は、それぞれ貫通孔60aを有する。支柱電極66は、伝導端子33、ワッシャー61、絶縁体62、絶縁体63、取付台64、及び保持体70のそれぞれの貫通孔60aに挿入される。コンタクト部材60は、支柱電極66によって、保持体70に対して固定されている。
【0056】
絶縁体62,63は、それぞれ絶縁性を有している。伝導端子33、ワッシャー61、取付台64、コンタクト電極65、及び支柱電極66は、それぞれ伝導性を有している。絶縁体62,63の材料は、たとえばセラミックを含む。ワッシャー61及び取付台64の材料は、たとえばステンレス鋼を含む。伝導端子33及びコンタクト電極65の材料は、たとえばステンレス鋼を含む。支柱電極66の材料は、たとえばニッケルを含む。
【0057】
伝導端子33は、少なくとも電子管1の非動作時において、保持体70に対して絶縁されている。伝導端子33は、コンタクト電極65に電気的に接続されている。コンタクト電極65は、電子放出部材20に電気的に接続されている。伝導端子33は、コンタクト電極65を通して電子放出部材20に電気的に接続されている。コンタクト電極65は、保持体70から離間している。
【0058】
保持体70は、ベース部材71と、枠部材72と、中間部材73と、第一位置決め部材74と、第二位置決め部材75と、ピン電極76とを含む。保持部材30がハウジング10に位置決めされた状態において、窓11a側から、ベース部材71、枠部材72、中間部材73、第一位置決め部材74、第二位置決め部材75の順に位置している。保持体70は、電子放出部材20に接している。コンタクト部材60は、第一位置決め部材74及びベース部材71に係合している。ベース部材71、枠部材72、中間部材73、第一位置決め部材74、及び第二位置決め部材75は、電子放出部材20を保持した状態で互いに溶接されている。
【0059】
ベース部材71は、開口71a及び貫通孔71bとが形成された平板部71cを有している。ベース部材71は、平板部71cにおいて電子放出部材20の主面21aに接している。開口71aは、保持体70の貫通口31を形成している。ベース部材71は、開口71aを画成する縁部分において電子放出部材20の主面21aに接している。電子放出部材20の入射面22が開口71aから露出している。開口71aは、矩形状又は円形状である。本実施形態において、開口71aは、矩形状である。貫通孔71bには、ピン電極76が挿入されている。
【0060】
本実施形態において、
図5に示されているように、ベース部材71は、保持部材30の軸HAを通る断面においてU字形状を有している。ベース部材71は、保持部材30の軸HA方向において平板部71cの周縁から枠部材72とは反対側に延在する枠部71dを更に有している。
【0061】
枠部材72は、ベース部材71と中間部材73とに挟まれている。枠部材72は、開口72a及び貫通孔72bが形成された平板部72cを有している。開口72aは、保持部材30の貫通口31を形成している。枠部材72の開口72aは、電子放出部材20の縁に沿った形状を有している。枠部材72は、電子放出部材20の縁を囲っている。開口72aの縁は、電子放出部材20の縁に接している。枠部材72は、開口72aの縁によって主面21a,21bに直交する方向における電子放出部材20の移動を規制する。開口72aは、矩形状又は円形状である。本実施形態において、開口72aは、矩形状である。
【0062】
枠部材72は、保持部材30の軸HAと直交する方向において、保持部材30に対して電子放出部材20を位置決めする。枠部材72の厚さT1は、電子放出部材20の厚さT2以下である。本実施形態において、枠部材72の厚さT1は、電子放出部材20の厚さT2よりも小さい。
【0063】
枠部材72は、第一伝導部72dと、絶縁部72eと、第二伝導部72fとを含んでいる。絶縁部72eは、第一伝導部72dと第二伝導部72fとに挟まれている。枠部材72の開口72aは、絶縁部72eと第二伝導部72fとによって画定されている。第二伝導部72f及び絶縁部72eは電子放出部材20に接しているが、第一伝導部72dは電子放出部材20に接していない。絶縁部72eには、貫通孔72bが形成されている。貫通孔72bには、ピン電極76が挿入されている。絶縁部72eは、ピン電極76によって、ベース部材71に固定されている。
【0064】
中間部材73は、スペーサ73aと固定部73bとを含んでいる。スペーサ73aと固定部73bとは、互いに離間している。スペーサ73aは、平板形状を呈しており、固定部73bと同一の厚さを有する。スペーサ73aは、第一伝導部72dに接している。スペーサ73aは、ベース部材71との間に第一伝導部72dを挟んでいる。固定部73bは、平板部73cと複数の付勢部73dとを有している。本実施形態において、平板部73cと複数の付勢部73dとは、一体に形成されている。平板部73cは第二伝導部72fに接しており、各付勢部73dは電子放出部材20に接している。平板部73cは、ベース部材71との間に第二伝導部72fを挟んでいる。スペーサ73aの縁と固定部73bの縁とは、保持部材30の貫通口31を形成している。
【0065】
各付勢部73dは、板状であり、電子放出部材20をベース部材71に付勢する板バネとして機能する。このため、中間部材73は、電子放出部材20をベース部材71に付勢する付勢部材として機能する。各付勢部73dは、電子放出部材20に接する前の状態において、平板部73cと一体に面一で形成されている。各付勢部73dは、平板部73cから保持部材30の軸HAに向かって当該軸に直交する方向に突出している。換言すれば、各付勢部73dは、平板部73cから貫通口31の中心寄りに延在している。
【0066】
各付勢部73dは、主面21bの縁に接していると共に当該縁に付勢力F1を加えることで、ベース部材71の平板部71cに対して電子放出部材20を弾性的に付勢している。各付勢部73dは、主面21bと電気的に接続されている。すなわち、保持部材30は、複数の付勢部73dを通して主面21bと電気的に接続されている。電子放出部材20は、複数の付勢部73dを通して、保持部材30に接続された配線13と電気的に接続されている。
【0067】
各付勢部73dは、
図10に示されているように、電子放出部材20の主面21bの縁と接することで、弾性変形し、電子放出部材20の主面21bに付勢力F1を加える。各付勢部73dの厚さT1は、電子放出部材20の厚さT2よりも小さい。各付勢部73dの厚さT3は、枠部材72の厚さT1よりも小さい。平板部73cと各付勢部73dとの厚さT3は、同一である。なお、「同一」には、製造公差の範囲を含んでいる。
【0068】
本実施形態において、複数の付勢部73dは、固定部73bの縁に保持部材30の軸HAに直交する方向に複数の切欠き状の隙間73eを設けた形状を有している。各付勢部73dは、上記隙間73eによって複数の片部73fに分かれている。複数の片部73fの各々が、ベース部材71に電子放出部材20を弾性的に付勢する金属片である。本実施形態において、各付勢部73dは、平面視で矩形状の3つの片部73fに分かれている。各付勢部73dは、2つの部分に分かれていてよいし、4つ以上の部分に分かれていてもよい。
【0069】
第一位置決め部材74及び第二位置決め部材75は、ハウジング10の内部でハウジング10に対する保持部材30の位置決めを行う。第一位置決め部材74は、互いに離間した第一位置決め部材74aと第一位置決め部材74bとを含んでいる。第一位置決め部材74a,74bのそれぞれは、平板部74cと複数のバネ部74dとを有している。平板部74cと複数のバネ部74dとは、一体に形成されている。複数のバネ部74dは、伝導端子33,34の少なくとも一方を含む。本実施形態において、複数のバネ部74dは、伝導端子34を構成する。
【0070】
各第一位置決め部材74a,74bの平板部74cは、保持部材30の貫通口31を形成している。第一位置決め部材74aの平板部74cは、スペーサ73aに接している。第一位置決め部材74bの平板部74cは、固定部73bの平板部73cに接している。
【0071】
複数のバネ部74dは、互いに異なる方向に延在している。本実施形態において、複数のバネ部74dは、保持部材30の軸HA方向から見て回転対称となるように、保持部材30の周方向に配置されている。本実施形態において、複数のバネ部74dは、それぞれ、ハウジング10の内側面10aに沿って管軸TAの周方向に等間隔で配置されている。本実施形態において、第一位置決め部材74a,74bは、それぞれ、2つのバネ部74dを有している。
【0072】
第二位置決め部材75は、互いに離間した第二位置決め部材75aと第二位置決め部材75bとを含んでいる。第二位置決め部材75a,75bのそれぞれは、平板部75cと複数のバネ部75dとを有している。平板部75cと複数のバネ部75dとは、一体に形成されている。複数のバネ部75dは、伝導端子33及び伝導端子34の少なくとも一方を含む。本実施形態において、複数のバネ部75dは、伝導端子34を構成する。
【0073】
各第二位置決め部材75a,75bの平板部75cの縁は、保持部材30の貫通口31を形成している。第二位置決め部材75aの平板部75cは、第一位置決め部材74aの平板部74cに接している。第二位置決め部材75bの平板部75cは、第一位置決め部材74bの平板部74cに接している。
【0074】
複数のバネ部75dは、互いに異なる方向に延在している。本実施形態において、複数のバネ部75dは、保持部材30の軸HA方向から見て回転対称となるように、保持部材30の周方向に配置されている。複数のバネ部75dは、それぞれ、ハウジング10の内側面10aに沿って管軸TAの周方向に等間隔で配置されている。各バネ部75dは、窓11aから遠ざかる方向に延在している。本実施形態において、第二位置決め部材75a,75bは、それぞれ、2つのバネ部75dを有している。
【0075】
ベース部材71、枠部材72の第一伝導部72d及び第二伝導部72f、中間部材73、第一位置決め部材74、並びに、第二位置決め部材75は、伝導性を有している。枠部材72の絶縁部72eは、絶縁性を有している。ベース部材71、第一位置決め部材74、及び第二位置決め部材75の材料は、たとえばステンレス鋼を含む。枠部材72の第一伝導部72d及び第二伝導部72f、及び中間部材73の材料は、たとえばステンレス鋼を含む。ピン電極76の材料は、たとえばニッケルを含む。
【0076】
次に、
図11及び
図12を参照して、第一位置決め部材74及び第二位置決め部材75の構成についてさらに詳細に説明する。
図11及び
図12は、保持部材30がハウジング10に位置決めされている状態を示す図である。
【0077】
第一位置決め部材74及び第二位置決め部材75は、複数のバネ部74d及び複数のバネ部75dによって、ハウジング10に対して保持部材30を位置決めする。各バネ部74dは、保持部材30の軸HAに直交する方向から見て、複数のバネ部75dよりも窓11a寄りに配置されている。第一位置決め部材74の各バネ部74dは、保持部材30の軸HA方向及び当該軸HAに直交する方向に延在している。複数のバネ部74dの先端は、伝導層16に弾性的に接している。各バネ部74dは、伝導端子34として、伝導層16と保持部材30とを電気的に接続している。
【0078】
各バネ部74dは、T字形状を有しており、先端が2つに分かれている。各バネ部74dの先端は、保持部材30の軸HA方向から見て、保持部材30の周方向において互いに対向する方向に分かれている。各バネ部74dは、2つの先端でハウジング10の内側面10aに対して付勢力F2を加える。各バネ部74dは、ハウジング10の管軸TAに直交する方向において、ハウジング10の内部における保持部材30の位置を弾性的に保持している。換言すれば、複数のバネ部74dは、ハウジング10の内側面10aに付勢力を加えることでハウジング10に対して保持部材30を位置決めする。
【0079】
第二位置決め部材75の各バネ部75dは、保持部材30の軸HA方向及び当該軸HAに直交する方向に延在している。各バネ部75dは、当該バネ部75dの先端でハウジング10の内側面10aに対して付勢力F3を加える。第二位置決め部材75は、複数のバネ部75dとハウジング10の内側面10aとの摩擦力によって、保持部材30がハウジング10の管軸TA方向に移動することを防止する。換言すれば、複数のバネ部75dは、ハウジング10の内側面10aに付勢力を加えることでハウジング10に対して保持部材30を位置決めする。各バネ部75dの先端は、伝導層16に弾性的に接している。各バネ部75dは、伝導端子34として、伝導層16と保持部材30とを電気的に接続している。
【0080】
次に、
図12~
図14を参照して、電子放出部材20の構成について詳細に説明する。
図13Aは、電子放出部材の平面図である。
図13B及び
図13Cは、本実施形態の変形例における電子放出部材の平面図である。
図14は、伝導線の構成を示す図である。
【0081】
基板21の主面21a及び主面21bは、矩形状を呈している。主面21bは、4つの縁21c,21d,21e,21fによって画定されている。縁21cと縁21eとは互いに対向し、縁21dと縁21fとは互いに対向する。
【0082】
電子放出部材20は、メタサーフェスSに加えて、メタサーフェスSに電気的に接続されている第一電極81と第二電極82とを有している。第一電極81と第二電極82とは、互いに離間している。電子管1の動作時において、第一電極81と第二電極82とには互いに異なる電位が印加される。第一電極81及び第二電極82の一方は、グラウンドに接続されるように構成されていてもよい。少なくとも電子管1の非動作時において、第一電極81と第二電極82とは絶縁されている。
【0083】
図6に示されているように、本実施形態において、第一電極81及び第二電極82の少なくとも一部とメタサーフェスSとは、保持体70の貫通口31から露出している。第一電極81は、伝導端子33に電気的に接続されている。第二電極82は、伝導端子34に電気的に接続されている。第一電極81及び第二電極82の一方は、コンタクト電極65と接している。本実施形態において、コンタクト電極65は、第一電極81に弾性的に接している。このため、コンタクト電極65は、第一電極81に電気的に接続されている。付勢部73dは、第二電極82に弾性的に接している。このため、付勢部73dは、第二電極82に電気的に接続されている。
【0084】
図13Aに示されているように、本実施形態において、基板21の主面21bにおいて、互いに対向するように第一電極81及び第二電極82が設けられている。本実施形態において、第一電極81及び第二電極82は、主面21bに直交する方向から見て、それぞれ矩形状を呈している。主面21bに直交する方向から見て、第一電極81の縁は、縁21cの全体、縁21dの一部、及び縁21fの一部と重なっている。主面21bに直交する方向から見て、第二電極82の縁は、縁21eの全体、縁21dの一部、及び縁21fの一部と重なっている。
【0085】
メタサーフェスSは、アクティブタイプであり、第一電極81及び第二電極82に互いに異なる電位を印加することで、電磁波がメタサーフェスSに入射された際の電子放出が制御される。メタサーフェスSは、主面21bの中央に設けられている。本実施形態において、メタサーフェスSは、主面21bにおいて、第一電極81と第二電極82との間に設けられている。本実施形態において、第一電極81とメタサーフェスSと第二電極82とは、第一方向αにおいて順に並んで配置されている。
【0086】
メタサーフェスSは、複数の第一伝導線83と複数の第二伝導線84とを含んでいる。第一伝導線83と第二伝導線84とは、互いに離間している。各第一伝導線83は、第一電極81に電気的に接続されており、第一電極81から第二電極82に向かって延在している。本実施形態において、各第一伝導線83は、縁21cと縁21eとが対向する第一方向αに延在している。各第二伝導線84は、第二電極82に電気的に接続されており、第二電極82から第一電極81に向かって延在している。本実施形態において、各第二伝導線84は、縁21eと縁21cとの対向する第一方向αに延在している。
【0087】
第一電極81及び第二電極82は、互いに離間していれば、
図13Aに示した矩形状の構成に限定されない。たとえば、第一電極81及び第二電極82は、
図13B及び
図13Cに示されているように構成されてもよい。
図13Bに示されている構成において、第二電極82は、縁21dに沿って縁21cに向かって延在しており、縁21fに沿って縁21cに向かって延在している。第二電極82は、縁21cから離間している。
図13Bに示されている構成において、主面21bに直交する方向から見て、第二電極82の縁は、縁21dの一部、縁21eの全体、及び縁21fの一部と重なっている。
【0088】
図13Cに示されている構成において、主面21bに直交する方向から見て、第一電極81の縁は、縁21cの一部、及び縁21dの一部のみと重なっている。
図13Cに示されている構成において、主面21bに直交する方向から見て、第二電極82の縁は、縁21eの一部、及び縁21fの一部のみと重なっている。
図13Cに示されている構成において、第一電極81及び第二電極82は、主面21bに直交する方向から見て、それぞれ正方形状を呈している。
図13Cに示されている構成において、複数の第一伝導線83と第一伝導線83に対応する第二伝導線84とは、第一方向α、第二方向β、並びに、第一方向α及び第二方向βに対して交差する方向に延在している。
図13Cに示されている電子放出部材20が用いられる場合には、
図6に示されている保持部材30の構成からコンタクト電極65が第一電極81に接するように変形される。
【0089】
図14は、本実施形態における、メタサーフェスSにおける第一伝導線83及び第二伝導線84の部分拡大図である。各第一伝導線83は、第一電極81から対応する第二伝導線84に向かって延在している。各第二伝導線84は、第二電極82から対応する第一伝導線83に向かって延在している。各第一伝導線83は、第一端部83aと、複数の第二端部83bとを含んでいる。
図13Aに示されているように、第一端部83aは、第一電極81に接している。換言すれば、第一端部83aは、第一電極81に直接的に連結されている。各第二端部83bは、第一端部83aに電気的に接続されている。各第二伝導線84は、第三端部84aと、複数の第四端部84bとを含んでいる。第三端部84aは、第二電極82に接している。換言すれば、第三端部84aは、第二電極82に直接的に連結されている。第四端部84bは、第三端部84aに電気的に接続されている。第一伝導線83は、第一端部83aから第一方向αに延在し、メタサーフェスSにおいて枝分かれして複数の第二端部83bを形成している。第二伝導線84は、第三端部84aから第一方向αに延在し、メタサーフェスSにおいて枝分かれして複数の第四端部84bを形成している。第一端部83aは、第一電極81と間接的に接続されていてもよい。第三端部84aは、第二電極82と間接的に接続されていてもよい。
【0090】
図14に示されているように、第二端部83bと当該第二端部83bに対応する第四端部84bとは、互いに対向していると共に互いに近接している。1つの第二端部83bに対して、1つの第四端部84bが近接して配置されている。第二端部83bは、第一伝導線83の当該第二端部83b部以外の部分よりも、対応する第四端部84bの近くに配置されている。互いに対応する第二端部83bと第四端部84bとの最短距離は、たとえば1.8μmである。最短距離は1.8μm未満であってもよい。例えば、最短距離は10nmであってもよい。最短距離が減少するにつれて、メタサーフェスの感度は増加する。
【0091】
本実施形態において、
図14に示されているように、メタサーフェスSにおいて、第一伝導線83は、第一方向αに直線状に延在した直線状部83cと、直線状部83cから枝分かれして対向する第二伝導線84に向かって直線状に延在した直線状部83dとを含む。直線状部83dは、第二端部83bを含む。第二伝導線84は、第一方向αに直線状に延在した直線状部84cと、直線状部84cから枝分かれして対向する第一伝導線83に向かって直線状に延在した直線状部84dとを含む。直線状部84dは、第四端部84bを含む。直線状部83cと直線状部84cとは、互いに平行に延在している。本実施形態において、直線状部83d及び直線状部84dは、第一方向αと直交する第二方向βに延在している。
【0092】
互いに対応する直線状部83dと直線状部84dとは、同一の仮想直線R1上において延在している。互いに対応する直線状部83dと直線状部84dとは、互いに対向していると共に近接する第二端部83bと第四端部84bとを含む直線状部83d及び直線状部84dを意味する。第一伝導線83の直線状部83dは、第二端部83bから第二方向βに延在する仮想直線R1上に位置し、当該直線状部83dに対応する直線状部84dの第四端部84bは、当該仮想直線R1に位置している。換言すれば、第二伝導線84の直線状部84dは、第四端部84bから第二方向βに延在する仮想直線R1上に位置し、当該直線状部84dに対応する直線状部83dの第二端部83bは、当該仮想直線R1に位置している。1つの直線状部84dの第四端部84bに向かって、1つの直線状部83dのみが延在している。互いに対応する直線状部83dと直線状部84dとは、同一の長さを有している。「同一」とは、製造誤差の範囲を含む。
図14に示される構成において、第一伝導線83と第二伝導線84とは、互いに鏡面対称に形成されている。
【0093】
複数の第一伝導線83及び複数の第二伝導線84は、たとえば、蒸着処理及びエッチング処理によって形成されている。複数の第一伝導線83及び複数の第二伝導線84の材料は、たとえば金を含む。本実施形態において、第一伝導線83及び第二伝導線84は、上述した金属層に含まれ、上述した酸化物層上に形成されている。電子放出部材20において、第一電極81及び第一伝導線83と、第二電極82及び第二伝導線84とは、酸化物層を介して接続されており、少なくとも電子管1の非動作時において互いに絶縁されている。
【0094】
第一伝導線83及び第二伝導線84の少なくとも一方は、アンテナ部85及びバイアス部87を構成する。
図14に示されている構成において、第一伝導線83の直線状部83dと第二伝導線84の直線状部84dとの双方が、アンテナ部85及びバイアス部87として構成されている。
【0095】
アンテナ部85は、電磁波の入射に応じて電子を放出する。本実施形態において、アンテナ部85に電磁波が入射すると、アンテナ部85の周囲に電界が誘起される。この結果、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が薄くなり、アンテナ部85に存在した電子がトンネル効果によってポテンシャル障壁を抜ける。ポテンシャル障壁を抜けた電子は、アンテナ部85の周囲の電界によって加速される。この結果、アンテナ部85に対する電磁波の入射によって、電界電子放出が生じる。バイアス部87は、バイアス電位が印加された場合に、対応する伝導線のアンテナ部85との間に電界を発生させる。
【0096】
図14に示されている構成において、第一伝導線83の直線状部83dは、電磁波の入射に応じて電子を放出するアンテナ部85と、第一電極81にバイアス電位が印加された場合に第二伝導線84の直線状部84dとの間に電界を発生させるバイアス部87とを兼ねている。第二伝導線84は、電磁波の入射に応じて電子を放出するアンテナ部85と、第二電極82にバイアス電位が印加された場合に第一伝導線83の直線状部83dとの間に電界を発生させるバイアス部87とを兼ねている。すなわち、第一伝導線83及び第二伝導線84の一方は、電磁波の入射に応じて電子を放出するアンテナ部85と、第一伝導線83及び第二伝導線84の他方との間に電界を発生させるバイアス部87とを兼ねている。
図14に示されている構成において、第一電極81にバイアス電位が印加された場合に、電磁波の入射に応じて第二伝導線84が電子を放出する。第二電極82にバイアス電位が印加された場合に、電磁波の入射に応じて第一伝導線83が電子を放出する。
【0097】
アンテナ部85のサイズが小さいほど、波長が短い電磁波、すなわち、周波数が大きい電磁波に対して電界電子放出が生じやすい。メタサーフェスSは、アンテナ部85の構造の変更に応じて、0.01~150THz程度の周波数帯域、いわゆるミリ波から赤外光の周波数帯域に対応できる。メタサーフェスSは、たとえば、いわゆるミリ波からテラヘルツ波の周波数帯域に相当する0.01~10THzの周波数帯域に対応できるように構成されてもよい。メタサーフェスSは、たとえば、テラヘルツ波から赤外光の周波数帯域に相当する10~150THzの周波数帯域に対応できるよう構成されてもよい。本実施形態において、電子放出部材20の主面21bのサイズは10×10mmである。メタサーフェスSの平面視のサイズは、3.2×3.2mmである。各アンテナ部85のピッチは、約70μm~100μmである。当該メタサーフェスSは、周波数が0.5THzの電磁波に対応している。
【0098】
本実施形態において、メタサーフェスSは、透過型のメタサーフェスである。透過型のメタサーフェスにおいて、電磁波が入射すると、電磁波が入射した面と反対側から電子が放出される。電子管1において、窓11aを透過した電磁波は、基板21の主面21aに入射する。基板21を透過した電磁波は、主面21bに設けられたメタサーフェスSに入射する。メタサーフェスSは、窓11a及び基板21を透過して入射した電磁波に応じて電子を放出する。
【0099】
次に、
図15及び
図16を参照して、本実施形態の変形例における第一伝導線83と第二伝導線84の構造について説明する。これらの本変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じである。これらの変形例は、第一伝導線83と第二伝導線84との構成において上述した実施形態と相違する。これらの変形例において、第一伝導線83と第二伝導線84とは、互いに鏡面非対称に形成されている。以下、上述した実施形態と本変形例との相違点を主として説明する。
図15は、本実施形態の変形例のメタサーフェスSにおける第一伝導線83及び第二伝導線84の部分拡大図である。
図16は、本実施形態のさらに別の変形例のメタサーフェスSにおける第一伝導線83及び第二伝導線84の部分拡大図である。
【0100】
図15に示されている構成において、第一伝導線83の直線状部83dは、第二方向βにおいて、当該直線状部83dに接続されている直線状部83cを挟む一対の第二伝導線84の各々に向かって延在している。第二伝導線84の直線状部84dは、第二方向βにおいて、当該直線状部84dに接続されている直線状部84cを挟む一対の第一伝導線83の各々に向かって延在している。
図15に示されている構成において、直線状部83cと、当該直線状部83cから枝分かれした直線状部83dとは、十字に交差している。直線状部84cと、当該直線状部84cから枝分かれした直線状部84dとは、十字に交差している。
【0101】
互いに対応する直線状部83dと直線状部84dとは、同一の仮想直線R2上において延在している。第一伝導線83の直線状部83dは、第二端部83bから第二方向βに延在する仮想直線R2上に位置し、当該直線状部83dに対応する直線状部84dの第四端部84bは、当該仮想直線R2に位置している。換言すれば、第二伝導線84の直線状部84dは、第四端部84bから第二方向βに延在する仮想直線R2上に位置し、当該直線状部84dに対応する直線状部83dの第二端部83bは、当該仮想直線R2に位置している。1つの直線状部84dの第四端部84bに向かって、1つの直線状部83dのみが延在している。1つの直線状部83dの第二端部83bに向かって、1つの直線状部84dのみが延在している。
【0102】
図15に示されている構成において、第二伝導線84の直線状部84dがアンテナ部85として構成されている。第一伝導線83の直線状部83dは、第一電極81にバイアス電位が印加された場合に、第二伝導線84のアンテナ部85との間に電界を発生させるバイアス部87として構成されている。
図15に示されている構成において、第二方向βにおける直線状部84dの長さは、第二方向βにおける直線状部83dの長さよりも大きい。「直線状部83dの長さ」とは、直線状部83cに連結されている部分から第二端部83bまでの距離である。「直線状部84dの長さ」とは、直線状部84cに連結されている部分から第四端部84bまでの距離である。たとえば、第二方向βにおける直線状部83dの長さは5.6μmであり、第二方向βにおける直線状部84dの長さは116μmである。直線状部83cの太さは、直線状部83d、直線状部84c、及び直線状部84dの太さよりも大きい。「直線状部の太さ」とは、直線状部の延在方向と直交する方向における各直線状部の幅である。たとえば、直線状部83cの太さは7.8μmであり、直線状部83d、直線状部84c、及び直線状部84dの太さは、4.9μmである。
【0103】
図16に示されている構成は、直線状部84cが延在している仮想直線R3上に、対応する直線状部83cが位置していない点に関して、
図15に示されている構成と相違する。以下、上述した実施形態と本変形例との相違点を主として説明する。
図16に示されている構成においても、第二伝導線84の直線状部84dがアンテナ部85として構成されている。
図16に示されている構成においても、第一伝導線83の直線状部83dが第一電極81にバイアス電位が印加された場合に第二伝導線84のアンテナ部85の近傍に電界を発生させるバイアス部87として構成されている。
【0104】
図16に示されている構成において、1つの直線状部84dの第四端部84bに向かって、複数の直線状部83dが延在している。1つの第四端部84bに対して、複数の第二端部83bが近接して配置されている。1つの第四端部84bに向かって延在する複数の直線状部83dは、2つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
図16に示されている構成において、1つの直線状部84dの第四端部84bに向かって、2つの直線状部83dが延在している。2つの第二端部83bの各々が、1つの第四端部84bに対向している。2つの第二端部83bの各々と1つの第四端部84bとの距離は、等距離である。「等距離」とは、製造公差の範囲を含む。
【0105】
図16に示されている構成において、直線状部83dは、直線状部83cの延在方向及び直線状部84dの延在方向と交差する方向に、直線状部83cから第四端部84bに向かって延在している。第二伝導線84の直線状部84dは、第四端部84bから第二方向βに延在する仮想直線R3上に延在している。当該直線状部84dに対応する直線状部83dの第二端部83bは、当該仮想直線R3に位置していない。
【0106】
次に、
図17~
図18Dを参照して、本実施形態の変形例における保持部材30及び電子放出部材20の構成について詳細に説明する。
図17は、本実施形態の変形例における保持部材30の斜視図である。
図18A~
図18Dは、電子放出部材20の平面図である。本変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じである。本変形例は、第一電極81及び第二電極82の構成及び枠部材72の構成に関して、上述した実施形態及び変形例と相違する。以下、上述した実施形態と本変形例との相違点を主として説明する。
【0107】
図17に示されているように、本変形例において、枠部材72は、伝導部72gのみを含んでおり、単一の電位のみが枠部材72に付与される。本変形例における枠部材72は、絶縁部72eに相当する部分を含んでいない。本変形例において、第一電極81の全体と第二電極82の一部とメタサーフェスSとは、保持体70の貫通口31から露出している。第一電極81及び第二電極82の少なくとも一方は、保持部材30の保持体70から離間している。本変形例において、コンタクト電極65と接している第一電極81は、保持体70の貫通口31の縁から離間している。第一電極81には、コンタクト電極65が弾性的に接している。
【0108】
第一電極81及び第二電極82の少なくとも一方は、基板21の全ての縁21c,21d,21e,21fから離間している。本変形例において、上述した実施形態と同様に、第一電極81及び第二電極82は、矩形状を呈している。
図18Aに示されている構成において、第一電極81及び第二電極82の長辺は、第二方向βに延在している。主面21bに直交する方向から見て、第二電極82の縁は、縁21eの全体、縁21dの一部、及び縁21fの一部と重なっている。第一電極81の縁は、基板21の全ての縁21c,21d,21e,21fと重なっていない。
図18Aに示されているように、第一電極81は、基板21の全ての縁21c,21d,21e,21fから離間して主面21bに設けられている。
【0109】
図18B~
図18Dは、
図18Aに示されている構成の変形例を示している。たとえば、第一電極81及び第二電極82は、
図18A~
図18Dに示されているように構成されてもよい。
図18Bに示されている構成において、第二電極82は、縁21dに沿って縁21cに向かって延在しており、縁21fに沿って縁21cに向かって延在している。
図18Bに示されている構成において、第二電極82は、縁21cから離間している。
図18Bに示されている構成において、主面21bに直交する方向から見て、第二電極82の縁は、縁21dの一部、縁21eの全体、及び縁21fの一部と重なっている。
【0110】
図18Cに示されている構成において、第二電極82は、基板21の縁21d,21fから離間している。
図18Cに示された構成において、第一電極81と第二電極82とが同一の形状を呈している。
図18Cに示された構成において、主面21bに直交する方向から見て、第二電極82の縁は、基板21の縁21eと重なっている。
【0111】
図18Dに示されている構成において、第二電極82は、縁21dに沿って縁21cまで延在しており、縁21fに沿って縁21cまで延在している。
図18Dに示されている構成において、主面21bに直交する方向から見て、第二電極82の縁は、縁21cの一部、縁21dの全体、縁21eの全体、及び縁21fの全体と重なっている。
【0112】
【0113】
図19Aに示されている構成において、主面21bに直交する方向から見て、第一電極81の縁は、縁21cの一部及び縁21dの一部のみと重なっている。
図19Aに示されている構成において、主面21bに直交する方向から見て、第二電極82の縁は、縁21dの一部、縁21eの全体、縁21fの全体、及び縁21cの一部と重なっている。
図19Aに示されている構成において、主面21bに直交する方向から見て、第一電極81は矩形状を呈しており、第二電極82はL字形状を呈している。
図19Aに示されている構成において、第一電極81とメタサーフェスSと第二電極82とは、第一方向α及び第二方向βに対して交差する方向において順に並んで配置されている。
図19Aに示されている構成において、複数の第一伝導線83と第一伝導線83に対応する第二伝導線84とは、第一方向α、第二方向β、並びに、第一方向α及び第二方向βに対して交差する方向に延在している。
図19Aに示されている電子放出部材20が用いられる場合には、
図17に示されている保持部材30の構成からコンタクト電極65が第一電極81に接するように変形されてもよい。
【0114】
図19Bに示されている構成において、主面21bに直交する方向から見て、第二電極82の縁は、縁21cの全体、縁21dの全体、縁21eの全体、及び縁21fの全体と重なっている。
図19Bに示されている構成において、主面21bに直交する方向から見て、第一電極81は矩形状を呈していると共に主面21aの中央に配置され、第二電極82はO字形状を呈しており第一電極81を囲んでいる。
図19Bに示されている構成において、メタサーフェスSは、第二電極82に囲われており、第一電極81を囲んでいる。
図19Bに示されている構成において、複数の第一伝導線83と第一伝導線83に対応する第二伝導線84とは、主面21bの中央から放射状に延在している。
図19Bに示されている電子放出部材20が用いられる場合には、
図17に示されている保持部材30の構成からコンタクト電極65が第一電極81に接するように変形されてもよい。
【0115】
図19Cに示されている構成において、第一電極81の縁は、基板21の全ての縁21c,21d,21e,21fと重なっていない。
図19Cに示されている構成において、第一電極81の縁は、主面21bに直交する方向から見て、第一電極81の縁は、基板21の全ての縁21c,21d,21e,21fから離間している。
図19Cに示されている構成において、主面21bに直交する方向から見て、第二電極82の縁は、縁21dの一部、縁21eの全体、縁21fの全体、及び縁21cの一部と重なっている。
図19Cに示されている構成において、主面21bに直交する方向から見て、第一電極81は矩形状を呈しており、第二電極82はL字形状を呈している。
図19Cに示されている構成において、第一電極81の長辺は第一方向αに延在している。
【0116】
図19Cに示されている構成において、第一電極81とメタサーフェスSと第二電極82とは、第二方向βにおいて順に並んで配置されている。
図19Cに示されている構成において、複数の第一伝導線83と第一伝導線83に対応する第二伝導線84とは、第二方向βに延在している。
図19Cに示されている電子放出部材20が用いられる場合には、
図17に示されている保持部材30の構成から、第一電極81に接続されるコンタクト部材60と同様の構成を有するコンタクト部材を第二電極82に接続させるように変形されてもよい。
【0117】
【0118】
図20Aに示されている構成において、主面21bに直交する方向から見て、第一電極81及び第二電極82は、矩形状を呈している。
図20Aに示されている構成において、第一電極81及び第二電極82の長辺は、第二方向βに延在している。
図20Aに示されている構成において、第一電極81の縁は、基板21の全ての縁21c,21d,21e,21fと重なっていない。
図20Aに示されている構成において、第一電極81の縁は、主面21bに直交する方向から見て、第一電極81の縁は、基板21の全ての縁21c,21d,21e,21fから離間している。
図20Aに示されている構成において、第一電極81と第二電極82とは、同一の形状を呈しており、主面21bにおいて回転対称及び線対称に配置されている。
【0119】
図20Aに示されている構成において、第一電極81とメタサーフェスSと第二電極82とは、第一方向αにおいて順に並んで配置されている。
図20Aに示されている構成において、複数の第一伝導線83と第一伝導線83に対応する第二伝導線84とは、第一方向αに延在している。
図20Aに示されている電子放出部材20が用いられる場合には、第一電極81と第二電極82とメタサーフェスSとが、開口72aから露出していると共に開口72aの縁から離間する。
図20Aに示されている電子放出部材20が用いられる場合には、第一電極81に接続されるコンタクト部材60と同様の構成を有するコンタクト部材が2つ用いられてもよい。この場合、互いに離間した2つのコンタクト電極65がそれぞれ第一電極81と第二電極82とに接している。
【0120】
図20Bに示されている構成において、主面21bに直交する方向から見て、第一電極81の縁は、縁21cの一部、縁21dの全体、及び縁21eの一部と重なっている。
図20Bに示されている構成において、主面21bに直交する方向から見て、第二電極82の縁は、縁21eの一部、縁21fの全体、及び縁21cの一部と重なっている。
図20Bに示されている構成において、第一電極81と第二電極82とは、互いに対向する方向において、凹凸形状の縁を有している。
図20Bに示されている構成において、第一電極81とメタサーフェスSと第二電極82とは、第二方向βにおいて順に並んで配置されている。
図20Bに示されている構成において、第一伝導線83と第一伝導線83に対応する第二伝導線84とは、第二方向βに延在している。
【0121】
次に、本実施形態における電子管1の動作について説明する。保持部材30、ダイノード42a,42b、及びアノード51には、それぞれ、配線13を通して電位が印加される。保持部材30、ダイノード42a,42b、及びアノード51の各々に印加される電位は、保持部材30からアノード51に近づくにつれて順次高くなるように設定されている。
【0122】
電子放出部材20の第一電極81には、伝導層15と伝導端子33とを通して電位が印加される。電子放出部材20の第二電極82には、伝導層16と伝導端子34とを通して電位が印加される。第一電極81と第二電極82とには、互いに異なる電位が印加される。第一電極81及び第二電極82の一方は、グラウンドであってもよい。
【0123】
電磁波は、ハウジング10の窓11aを透過すると、保持部材30のベース部材71の開口71aに入射する。開口71aを通過した電磁波は、電子放出部材20の入射面22に入射する。電磁波は、基板21を透過し、メタサーフェスSに入射する。メタサーフェスSに電磁波が入射すると、アンテナ部85の周囲に電界が誘起される。この結果、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が薄くなり、アンテナ部85に存在した電子がトンネル効果によってポテンシャル障壁を抜ける。ポテンシャル障壁を抜けた電子は、アンテナ部85の周囲の電界によって加速される。この結果、電子放出部材20は、電磁波の入射に応じて、電子をメタサーフェスSから放出する。電子放出部材20から放出された電子は、電子増倍部40の入射面40aに導かれる。
【0124】
電子放出部材20から放出された電子は、集束電極41で収束されて第1段目のダイノード42aに送られる。第1段目のダイノード42aに電子が入射すると、ダイノード42aから二次電子が第2段目のダイノード42bに向けて放出される。第2段目のダイノード42bに電子が入射すると、二次電子が第3段目のダイノード42bに向けて放出される。このように、第1段目のダイノード42aから第10段目のダイノード42bへと電子が増倍されながら順次送られる。電子放出部材20から放出された電子に対して、電子増倍部40でカスケード増倍が行われる。電子増倍部40で増倍された電子は、電子収集部50であるアノード51で収集されて、アノード51から配線13を通して出力信号として出力される。
【0125】
図21~
図23を参照して、電子放出部材20の動作について更に詳細に説明する。
図21~
図23において、縦軸はポテンシャルエネルギーUを示し、横軸はアンテナ部85の縁からの距離Xを示す。
図21と、
図22A及び
図22Bと、
図23は、それぞれ異なる動作モードを説明するための図である。
【0126】
まず、
図21を参照して、閾値モードについて説明する。電子管1の動作時において、電子放出部材20には、第一電極81と第二電極82との間にバイアス電圧が印加される。換言すれば、第一伝導線83と第二伝導線84とを通して、アンテナ部85にバイアス電圧が印加される。この結果、メタサーフェスSに電磁波が入射する前の状態から、
図21において実直線91によって示されているように、アンテナ部85の周囲のポテンシャルが傾斜する。このため、アンテナ部85にバイアス電圧が印加されている状態においてメタサーフェスSに電磁波が入射すれば、破線92によって示されているように、アンテナ部85の周囲のポテンシャルがさらに傾斜する。したがって、電磁波の振幅が低い場合において、バイアス電圧が印加されていない状態に比べて、トンネル効果によってポテンシャル障壁を抜ける電子ELが増加する。このような動作モードによれば、たとえば、低出力の電磁波に関しても出力の有無を検出できる。
【0127】
次に、
図22A及び
図22Bを参照して、モデュレーションモードについて説明する。この動作モードにおいて、閾値モードよりも高いバイアス電圧がアンテナ部85に印加される。この結果、
図22Aにおいて実直線94によって示されているように、メタサーフェスSに電磁波が入射される前の状態において、アンテナ部85の周囲のポテンシャルがさらに傾斜する。すなわち、
図22Aにおける実直線94は、
図21における実直線91よりも傾斜している。具体的には、メタサーフェスSに電磁波が入射する前の状態から、アンテナ部85における電子がポテンシャル障壁を抜けるようにバイアス電圧が設定される。この状態においてメタサーフェスSに電磁波が入射すれば、破線95によって示されているように、アンテナ部85の周囲のポテンシャルはさらに傾斜する。このような動作モードによれば、メタサーフェスSに入射した電磁波の微小な変化も検出できる。したがって、たとえば、メタサーフェスSに入射している電磁波の安定性が測定され得る。
【0128】
次に、
図23を参照して、リバースバイアスモードについて説明する。この動作モードにおいて、アンテナ部85に逆バイアス電圧が印加される。この結果、
図23において実直線96によって示されているように、アンテナ部85の周囲のポテンシャルは、メタサーフェスSに電磁波が入射される前の状態において、上述した閾値モード及びモデュレーションモードとは逆方向に傾斜する。この状態において、高出力の電磁波がメタサーフェスSに入射すれば、破線97によって示されているように、アンテナ部85の周囲のポテンシャルは傾斜する。この結果、トンネル効果によってメタサーフェスSから電子が放出される。この動作モードによれば、メタサーフェスSに高出力の電磁波が入射しても、安定した測定が実現され得ると共に機器の破損が抑制される。
【0129】
次に、
図24を参照して、本実施形態の変形例に係る電子管について説明する。
図24は、電子管の一例の断面図である。
図24に示されている変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じであるが、当該変形例は、窓11aがハウジング10の側面に設けられている点、メタサーフェスSに対する電磁波の入射方向が異なる点、電子増倍部40がいわゆるサーキュラゲージ型の複数段のダイノードを有している点に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と本変形例との相違点を主として説明する。
【0130】
図24に示されている電子管1Aにおいて、窓11aは、円筒形状のハウジング10の側面に設けられている。電子管1Aにおいても、電子放出部材20は、保持部材30によって保持されている。電子管1Aにおいて、基板21の主面21bは、窓11a及び電子増倍部40の入射面40aに面している。すなわち、主面21bに設けられたメタサーフェスSは、窓11a及び電子増倍部40の入射面40aに面している。
【0131】
電子管1Aにおいて、電子放出部材20のメタサーフェスSは、反射型のメタサーフェスである。反射型のメタサーフェスにおいて、電磁波が入射すると、電磁波が入射した面が面する方向に電子が放出される。電子管1Aにおいて、窓11aを透過した電磁波は、基板21を介さずに、基板21の主面21bに設けられたメタサーフェスSに入射する。メタサーフェスSは、窓11aを透過して入射した電磁波に応じて電子を放出する。
【0132】
電子管1Aは、メタサーフェスSと窓11aとの間にグリッド37を備えている。窓11aを透過した電磁波は、グリッド37を透過してメタサーフェスSに入射する。グリッド37には、配線13を通して電圧が印加されている。グリッド37による電界の影響よって、メタサーフェスSから放出された電子は電子増倍部40の入射面40aに導かれる。
【0133】
電子管1Aの電子増倍部40は、いわゆるサーキュラーケージ型の複数段のダイノード42a,42bを有している。ダイノード42aは、入射面40aを含んでいる。本変形例において、電子増倍部40は、9段のダイノード42a,42bを有している。ダイノード42aの後段に、8段のダイノード42bが配置されている。ダイノード42a,42bは、ハウジング10の側面に沿って、電子放出部材20を回り込むように設けられている。ダイノード42a,42bのそれぞれには、所定の電位が配線13を通して印加される。ダイノード42a,42bは、印加された電位に応じて入射した電子を増倍する。
【0134】
電子管1Aの電子収集部50は、湾曲したダイノード42bに囲まれている。本変形例において、電子収集部50は、アノード51である。アノード51には、複数の配線13のうち1つが接続されている。アノード51には、所定の電位が配線13を通して印加される。アノード51は、ダイノード42a,42bで増倍された電子を補足する。
【0135】
図24に示されている電子管1Aにおいて、電磁波は、ハウジング10の窓11aを透過するとグリッド37を透過し、基板21の主面21bに設けられたメタサーフェスSに入射する。メタサーフェスSは、電磁波の入射に応じて電子を放出する。メタサーフェスSから放出された電子は、グリッド37による電界の影響によって、電子増倍部40の入射面40aに向けて放出される。
【0136】
メタサーフェスSから放出された電子は、第1段目のダイノード42aに送られる。第1段目のダイノード42a(入射面40a)に電子が入射すると、ダイノード42aから二次電子が第2段目のダイノード42bに向けて放出される。第2段目のダイノード42bに電子が入射すると、ダイノード42bから二次電子が第3段目のダイノード42bに向けて放出される。このように、第1段目のダイノード42aから第9段目のダイノード42bへと電子が増倍されながら、基板21を回り込むように順次送られる。電子増倍部40で増倍された電子は、電子収集部50であるアノード51で収集されて、アノード51から配線13を通して出力信号として出力される。
【0137】
次に、
図25を参照して、本実施形態の変形例に係る電子管について説明する。
図25は、電子管の一例の断面図である。
図25に示されている変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じである。ただし、本変形例は、電子増倍部40及び電子収集部50がダイオード100によって一体に構成されている点に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と本変形例との相違点を主として説明する。
【0138】
図25に示されている電子管1Bにおいて、電子増倍部40及び電子収集部50は、ダイオード100である。電子管1Bにおいて、電子増倍部40及び電子収集部50が一体に構成されている。電子管1Bにおいて、メタサーフェスSは、窓11aに面している。
【0139】
本変形例において、ダイオード100は、アバランシェダイオードである。ダイオード100は、平面視で矩形状であり、互いに対向する一対の主面101,102を有している。主面101には、電子入射面101aが設けられている。主面101は、ハウジング10の窓11aに面している。主面102は、ハウジング10のステム12に面している。主面101,102は、窓11a、基板21、及びメタサーフェスSに対して平行に配置されている。
【0140】
ダイオード100の主面102には、絶縁層105が設けられている。ダイオード100は、絶縁層105を挟んでステム12に接続されている。主面101及び主面102のそれぞれに、複数の配線13のうち1つが接続されている。
【0141】
ダイオード100には、配線13を通して逆バイアスの電圧が印加される。本変形例において、ダイオード100の主面101側(電子入射面101a)と主面102側と間にブレークダウン電圧よりも大きな逆バイアス電圧が印加される。電子管1Bにおいて、基板21のメタサーフェスSから放出された電子がダイオード100の電子入射面101aに入射すると、入射した電子はダイオード100の内部でアバランシェ増倍によって増倍される。増倍された電子は、配線13を通して出力信号として出力される。
【0142】
次に、
図26及び
図27を参照して、本実施形態の変形例に係る電子管について説明する。
図26は、電子管の一例を示す断面図である。
図27に示されている変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じである。ただし、本変形例は、電子増倍部40が集束電極41及び複数のダイノード42a,42bの代わりにマイクロチャンネルプレート110を有している点に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と本変形例との相違点を主として説明する。
【0143】
図26に示されている電子管1Cにおいて、マイクロチャンネルプレート110は、バルブ11の内壁に固定された取付部材111,112の内縁で支持されている。マイクロチャンネルプレート110は、電子放出部材20と電子収集部50との間に配置されている。具体的には、マイクロチャンネルプレート110は、メタサーフェスSが設けられた基板21とアノード51との間に配置されている。マイクロチャンネルプレート110は、基板21及びアノード51から離間している。電子管1Cにおいても、電子収集部50は、アノード51の代わりにダイオードを有していてもよい。
【0144】
図27は、マイクロチャンネルプレートの一例の斜視切欠図である。本変形例において、マイクロチャンネルプレート110は、
図27に示されているように、基体113と、複数のチャンネル114と、隔壁部115と、フレーム部材116を有している。基体113は、入力面113a及び入力面113aに対向する出力面113bを有している。基体113は、円板状に形成されている。入力面113aは、基板21に面している。出力面113bは電子収集部50であるアノード51に面している。入力面113a及び出力面113bは、窓11a、基板21、及びメタサーフェスSに対して平行に配置されている。アノード51は、平板形状であり、マイクロチャンネルプレート110の出力面113bと平行に配置されている。
【0145】
複数のチャンネル114は、基体113において、入力面113aから出力面113bにかけて形成されている。具体的には、各チャンネル114は、入力面113a及び出力面113bに直交する方向に、入力面113aから出力面113bに延在している。複数のチャンネル114は、平面視でマトリクス状に配置されている。各チャンネル114は、断面円形状である。複数のチャンネル114の間には、隔壁部115が設けられている。なお、マイクロチャンネルプレート110は、電子増倍器として機能するために、チャンネル114内の隔壁部115の表面に図示しない抵抗層及び電子放出層を有している。フレーム部材116は、基体113の入力面113a及び出力面113bの周縁部に設けられている。
【0146】
電子管1Cにおいて、取付部材111,112のそれぞれに、複数の配線13のうち1つが接続されている。マイクロチャンネルプレート110には、配線13及び取付部材111,112を通して、入力面113aと出力面113bとに電圧が印加される。具体的には、入力面113a及び出力面113bに、入力面113aよりも出力面113bの方が高電位となるように電位が付与される。メタサーフェスSから放出された電子は、入力面113aに入射すると、チャンネル114で増倍されて出力面113bから放出される。マイクロチャンネルプレート110で増倍された電子は、電子収集部50であるアノード51で収集されて、アノード51から配線13を通して出力信号として出力される。
【0147】
次に、
図28及び
図29を参照して、本実施形態の変形例に係る電子管について説明する。
図28は、電子管の一例を示す部分断面図である。
図29は、
図28に示されている電子管の一部を示す断面図である。
図28及び
図29に示されている変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じである。ただし、本変形例は、電子管がいわゆるイメージインテンシファイアである点に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と本変形例との相違点を主として説明する。
【0148】
図28に示されている電子管1Dにおいて、ハウジング120の内に、電子放出部材20、電子増倍部40、及び電子収集部50が配置されている。電子管1Dにおいて、
図26に示されている電子管1Cと同様に、電子増倍部40が、集束電極41及びダイノード42a,42bの代わりにマイクロチャンネルプレート110を有している。電子管1Dにおいて、電子収集部50が、アノード51の代わりに蛍光体121を有している。電子管1Dにおいて、ハウジング120の内部において、メタサーフェスSと、マイクロチャンネルプレート110と、蛍光体121とが近接している。
【0149】
ハウジング120は、側壁122と、入射窓123(窓11a)と、出射窓124とを有している。側壁122は、中空筒形状を有している。入射窓123及び出射窓124は、それぞれ円板形状を有している。ハウジング120の内部は、側壁122の両端部を入射窓123及び出射窓124で気密に封止することにより真空に保持されている。たとえば、ハウジング120の内部は、1×10-5~1×10-7Paに保持される。
【0150】
側壁122は、たとえば、側管125と、側管125の側部を被覆するモールド部材126と、モールド部材126の側部及び底部を被覆するケース部材127とによって構成されている。側管125、モールド部材126、及びケース部材127は、中空円筒形状である。側管125は、たとえば、セラミックで構成される。モールド部材126は、たとえば、シリコーンゴムで構成される。ケース部材127は、たとえば、セラミックで構成される。
【0151】
モールド部材126の両端部のそれぞれには貫通孔が形成されている。ケース部材127の一端は開放されている。ケース部材127の他端には、モールド部材126の一方の貫通孔とその周縁を一致させた貫通孔が形成されている。モールド部材126の一端側において、モールド部材126の貫通孔周辺の表面には、入射窓123が接合されている。入射窓123は、電子管1の窓11aと同様に、電磁波を透過する。入射窓123は、電子管1の窓11aと同様に、石英、シリコン、ゲルマニウム、サファイア、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、及びカルコゲナイドガラスから選択される少なくとも1種を含む。
【0152】
電子管1Dにおいても、メタサーフェスSを有する電子放出部材20は、保持部材30に保持され、ハウジング120内に設けられている。ハウジング120においても、互いに離間した伝導層がハウジング120の内側面に設けられており、保持部材30と接している。このため、電子管1Dにおいても、電子放出部材20の第一電極81及び第二電極82に互いに異なる電位を印加することができる。
【0153】
電子管1Dにおいて、メタサーフェスSは、電子増倍部40であるマイクロチャンネルプレート110に面している。マイクロチャンネルプレート110は、メタサーフェスSと蛍光体121との間に配置されている。マイクロチャンネルプレート110は、メタサーフェスS及び蛍光体121から離間している。
【0154】
モールド部材126の他端側において、モールド部材126の他方の貫通孔には、出射窓124が嵌合している。出射窓124は、たとえば多数の光ファイバをプレート状に集束して構成されたファイバプレートである。ファイバプレートの各光ファイバは、ハウジング120の内部側の端面124aが面一に構成されている。当該端面124aは、メタサーフェスSと平行に配置されている。
【0155】
蛍光体121は、端面124aに配置されている。蛍光体121は、たとえば、蛍光材料を端面124aに付与することによって形成される。蛍光材料は、たとえば、(ZnCd)S:Ag(銀をドープした硫化亜鉛カドミウム)である。蛍光体121の表面には、メタルバック層と低電子反射率層とが順次積層されている。メタルバック層は、たとえばAlの蒸着によって形成され、マイクロチャンネルプレート110を通過した光に対して比較的高い反射率を有し、かつマイクロチャンネルプレート110からの電子に対して比較的高い透過率を有している。また、低電子反射率層は、たとえばC(炭素),Be(ベリリウム)などの蒸着によって形成され、マイクロチャンネルプレート110からの電子に対して比較的低い反射率を有している。
【0156】
電子管1Dにおいて、電子管1Cと同様に、マイクロチャンネルプレート110を保持する取付部材111,112のそれぞれに、ハウジング120の外部に延在する複数の配線13のうち1つが接続されている。マイクロチャンネルプレート110には、取付部材111,112を通して、入力面113a側と出力面113b側とに電圧が印加される。
【0157】
メタサーフェスSから放出された電子は、入力面113aに入射すると、チャンネル114で増倍されて出力面113bから放出される。電子管1Dにおいて、マイクロチャンネルプレート110で増倍された電子は、蛍光体121で収集される。蛍光体121は、マイクロチャンネルプレート110で増倍された電子を受けて光を発する。蛍光体121が発した光は、ファイバプレートを通過して、出射窓124からハウジング120の外部に出射される。
【0158】
次に、
図30を参照して、本実施形態に係る変形例の電子管を含む撮像装置について説明する。
図30は、撮像装置の側面図である。
図30に示されている撮像装置130は、観察対象が発する電磁波又は観察対象で反射若しくは散乱した電磁波に基づく画像を取得する。撮像装置130は、構成要素として、イメージインテンシファイアである電子管1Dと、対物レンズ131と、リレーレンズ132と、撮像部133とを備える。撮像装置130において、上記構成要素が対物レンズ131、電子管1D、リレーレンズ132、撮像部133の順で接合されている。
【0159】
対物レンズ131は、電子管1Dに入射する電磁波に対して屈折率を有しているレンズで構成されている。対物レンズ131は、観察対象からの電磁波Tを電子管1Dの入射窓123に導く。リレーレンズ132は、電子管1Dの出射窓124から出射した光を撮像部133に導く。撮像部133は、リレーレンズ132から導かれた光、すなわち、蛍光体121からの光に基づく像を撮像する。撮像部133は、たとえば、CCDカメラである。
【0160】
次に、
図31を参照して、本実施形態の変形例に係る電子管について説明する。
図31は、電子管の一例を示す部分断面図である。
図31に示されている変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じである。ただし、本変形例は、電子増倍部40が集束電極41及びダイノード42a,42bの代わりに電子増倍体145を有している点に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と本変形例との相違点を主として説明する。電子増倍体145は、いわゆる、チャンネル型エレクトロンマルチプライヤー(CEM)である。
【0161】
図31に示されている電子管1Eにおいて、電子増倍体145は、バルブ11の内壁に固定された支持部材146によって支持されている。電子増倍体145は、電子放出部材20と電子収集部50との間に配置されている。具体的には、マイクロチャンネルプレート110は、メタサーフェスSが設けられた窓11aとアノード51との間に配置されている。電子増倍体145は、窓11a及びアノード51から離間している。電子管1Eにおいても、電子収集部50は、アノード51の代わりにダイオードを有していてもよい。
【0162】
本変形例において、電子増倍体145は、入力面145a及び入力面145aに対向する出力面145bを有している。入力面145aは、窓11aに面している。出力面145bは、電子収集部50であるアノード51に面している。入力面145a及び出力面145bは、窓11a及びメタサーフェスSに対して平行に配置されている。アノード51は、平板形状であり、電子増倍体145の出力面145bと平行に配置されている。本実施形態において、入力面145aに直交する方向において、入力面145aとメタサーフェスSとの間の距離Dは、例えば、0.615mmである。
【0163】
電子増倍体145は、本体部147と、複数のチャンネル148とを有している。本体部147は、直方体形状である。複数のチャンネル148は、本体部147によって画定されている。各チャンネル148は、入力面145aから出力面145bにかけて形成されている。具体的には、各チャンネル148は、入力面145a及び出力面145bに直交する方向に、入力面145aから出力面145bに延在している。
図31に示されている構成において、3つのチャンネル148が、入力面145aに平行な一方向に配列されている。
【0164】
各チャンネル148は、電子入射部148aと、増倍部148bとを含んでいる。各チャンネル148の電子入射部148aは、入力面145aに設けられた開口を有している。電子入射部148aの開口は、入力面145aに直交する方向から見て、矩形状を呈している。電子入射部148aは、入力面145aから出力面145bに向かって、複数のチャンネル148の配列方向に徐々に狭まっている。すなわち、電子入射部148aは、入力面145aに直交する方向に沿って縮小するテーパ状を呈している。
【0165】
各チャンネル148の増倍部148bは、入力面145aに平行、かつ、複数のチャンネル148の配列方向に直交する方向から見て、ジグザグ状又は波状に形成されている。換言すれば、増倍部148bは、複数のチャンネル148の配列方向において、屈曲を繰り返す形状を呈している。
【0166】
電子管1Eにおいて、支持部材146に、複数の配線13のうち2つが接続されている。電子増倍体145には、配線13及び支持部材146を通して電圧が印加される。具体的には、入力面145a及び出力面145bに、入力面145aよりも出力面145bの方が高電位となるように電位が付与される。アノード51には、支持部材146に接続された配線13とは異なる配線13が接続されている。支持部材146とアノード51とは、絶縁部材149によって、互いに電気的に絶縁されている。
【0167】
メタサーフェスSから放出された電子は、いずれかのチャンネル148の入力面145aの開口に入射した後、電子入射部148aを通って増倍部148bに入射する。この結果、メタサーフェスSから放出された電子は、各チャンネル148で増倍されて出力面145bから放出される。電子増倍体145で増倍された電子は、電子収集部50であるアノード51で収集されて、アノード51から配線13を通して出力信号として出力される。
【0168】
次に、
図32を参照して、本実施形態の変形例に係る電磁波検出装置について説明する。
図32は、電磁波検出装置の一例を示す模式図である。
図32に示されている変形例の電子管は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じである。ただし、本変形例の電子管は、ガスを収容しており、電子放出部材からの電子の放出に応じて発生する光を検出する構成を有する点に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と本変形例との相違点を主として説明する。
【0169】
図32に示されている電磁波検出装置150は、電子管1Fと、光検出器151を備える。電子管1Fは、ハウジング10の内部にガスを収容している。ハウジング10は、ガスを収容した状態で封止されている。ハウジング10に収容されるガスは、電子放出部材20から放出された電子によって励起され発光する。ハウジング10に収容されているガスは、たとえば、空気、アルゴンガス、又は窒素ガスである。本変形例において、ハウジング10に収容されているガスは、窒素ガスであり、電子放出部材20から放出された電子によって紫外光を発する。
【0170】
電子管1Fにおいてハウジング10は、窓11aに加えて窓11bを有している。窓11bは、ガスの発光によって生じた光L1を透過する。本実施形態において、窓11bは、電子放出部材20の主面21bと対向するように配置されている。本変形例において、光L1は紫外光であり、窓11bは紫外光を透過する。窓11bの材料は、たとえば、石英を含む。
【0171】
光検出器151は、窓11bを透過した光L1を検出する。換言すれば、光検出器151は、ガスの発光によって生じた光L1を検出する。光検出器151における検出結果を参照することで、メタサーフェスSに入射した電磁波が検出される。
【0172】
以上説明したように、電子管1,1A,1B,1C,1D,1E,1Fにおいて、メタサーフェスSを有する電子放出部材20が保持部材30によって封止されたハウジング10内に保持されている。メタサーフェスSを構成する第一伝導線83が第一電極81に電気的に接続されており、メタサーフェスSを構成する第二伝導線84が第二電極82に電気的に接続されている。この電子管1,1A,1B,1C,1D,1E,1Fにおいて、第一電極81及び第二電極82に互いに異なる電位を印加することで、窓11aから入射した電磁波に応じたメタサーフェスSにおける電子放出の向上又は抑制が実現され得る。このため、この電子管1,1A,1B,1C,1D,1E,1Fを用いて電子放出部材20から放出された電子を観測することによって、電子管1,1A,1B,1C,1D,1E,1Fに入射した電磁波の検出精度が確保され得る。
【0173】
保持部材30は、互いに離間している伝導端子33,34を有している。第一電極81は、伝導端子33に電気的に接続されている。第二電極82は、伝導端子34に電気的に接続されている。この場合、保持部材30を通して電子放出部材20に電圧を印加することができる。このため、電子管1,1A,1B,1C,1D,1E,1Fの部点数の減少と電子管1,1A,1B,1C,1D,1E,1Fのコンパクト化とを実現することができる。
【0174】
ハウジング10は、当該ハウジング10の内側面10aに設けられた伝導層15,16を有している。伝導層15,16は、互いに離間している。伝導端子33は、伝導層15に接している。伝導端子34は、伝導層16に接している。この場合、ハウジング10の内側面10aに設けられた伝導層15,16によって、伝導端子33及び伝導端子34に電位を印加することができる。したがって、電子管1,1A,1B,1C,1D,1E,1Fのコンパクト化を実現することができる。
【0175】
保持部材30は、複数のバネ部74d,75dを有してもよい。複数のバネ部74d,75dは、ハウジング10の内側面10aに付勢力を加えることでハウジング10に対して当該保持部材30の位置決めをする。複数のバネ部74d,75dは、伝導端子33及び伝導端子34の少なくとも一方を含む。この場合、電子管1,1A,1B,1C,1D,1E,1Fの各部材において多少の製造誤差又は温度変化による変形があったとしても、保持部材30がハウジング10に対して安定して保持される。バネ部74d,75dを通して、電子放出部材に電位が印加され得る。
【0176】
保持部材30は、保持体70とコンタクト電極65とを含んでいる。保持体70は、電子放出部材20に接していると共に貫通口31を有している。コンタクト電極65は、枠部材72から離間していると共に第一電極81及び第二電極82の一方と接している。コンタクト電極65と接している一方とメタサーフェスSとは、貫通口31から露出していると共に貫通口31の縁から離間している。この場合、コンタクト電極65と接している上記一方と保持体70との接触が防止されている。このため、簡易な構成によって、第一電極81及び第二電極82と保持部材30との間における所望の電気的接続構造が実現され得る。たとえば、コンタクト電極65と接している一方が保持体70に対して絶縁される構成が、容易に実現され得る。上述した実施形態において、コンタクト電極65は、第一電極81に接している。コンタクト電極65と接している第一電極81とメタサーフェスSとが、貫通口31から露出していると共に貫通口31の縁から離間している。
【0177】
図20Aに示されている構成において、2つのコンタクト電極65は、
図6に示されているように互いに離間しており、それぞれ第一電極81と第二電極82とに接している。第一電極81と第二電極82とメタサーフェスSとが、貫通口31から露出していると共に貫通口31の縁から離間している。このため、各コンタクト電極65と接している第一電極81及び第二電極82が保持体70に対して絶縁される構成が、容易に実現され得る。
【0178】
第一電極81及び第二電極82の少なくとも一方は、主面21bの縁21c,21d,21e,21fの全体から離間している。主面21bの縁の全体から離間していれば、第一電極81及び第二電極82の少なくとも一方と保持部材30との接触が容易に防止され得る。このため、簡易な構成によって、第一電極81及び第二電極82と保持部材30との間における所望の電気的接続構造が実現され得る。たとえば、第一電極81及び第二電極82の少なくとも一方について、保持部材30に対する絶縁性が確保され得る。
【0179】
保持部材30は、ベース部材71と付勢部材として機能する中間部材73とを有する。ベース部材71は、主面21aに接している。中間部材73は、主面21bの縁に接していると共にベース部材71に電子放出部材20を弾性的に付勢する。中間部材73は、第二電極82に電気的に接続されている。この場合、電子管1,1A,1B,1C,1D,1E,1Fの各部材において多少の製造誤差又は温度変化による変形があったとしても、電子放出部材20がベース部材71に対して安定して保持される。中間部材73を通して、電子放出部材20に電圧を印加することができる。
【0180】
第二伝導線84は、電磁波の入射に応じて電子を放出するアンテナ部85を含んでいる。第一伝導線83は、第一電極81にバイアス電位が印加された場合に、アンテナ部85との間に電界を発生させるバイアス部87を含む。この場合、アンテナ部85の周囲においてポテンシャルを傾斜させることができる。これによって、メタサーフェスSにおける電子放出の向上又は抑制が実現され得る。
【0181】
第一伝導線83は、第一電極81に接している第一端部83aと第一端部83aに電気的に接続されている第二端部83bとを含んでいる。第二伝導線84は、第二電極82に接している第三端部84aと第三端部84aに電気的に接続されている第四端部84bとを含んでいる。第二端部83bは、第一伝導線83の当該第二端部83b以外の部分よりも、第四端部84bの近くに配置されている。この場合、第二端部83bと第四端部84bとの間において発生する電界の強度が向上し、アンテナ部85の周囲においてポテンシャルがさらに傾斜する。これによって、メタサーフェスSにおける電子放出の向上又は抑制が実現され得る。
【0182】
第二伝導線84は、第四端部84bから延在する仮想直線上に延在する直線状部84dを含んでいる。第二端部83bは、上記仮想直線上に位置している。この場合、第四端部84bにおいて放出された電子が第二端部83bに当たって増幅される。したがって、メタサーフェスSにおける電子放出が向上する。
【0183】
第二端部83bは、
図16に示されているように、上記仮想直線上に位置していなくてもよい。この場合、第四端部84bにおいて放出された電子の第二端部83bによる増幅が抑制される。この結果、窓11aから入射した電磁波に依拠した量の電子がメタサーフェスSから放出される。このため、窓11aから入射した電磁波の振幅がより正確に検出され得る。
【0184】
電子管1,1A,1B,1C,1D,1Eは、電子増倍部40と、電子収集部50とを備えている。電子増倍部40は、ハウジング10内に配置されており、電子放出部材20から放出された電子を増倍する。電子収集部50は、ハウジング10内に配置されており、電子増倍部40で増倍された電子を収集する。ハウジング10内は、真空である。この場合、電子放出部材20から放出された電子が電子増倍部40において増幅された後に、電子収集部50において収集される。このため、コンパクトな構成でありながら、窓11aから入射した電磁波に対して検出精度が確保され得る。
【0185】
電子管1Bにおいて、電子増倍部40及び電子収集部50は、ダイオード100であると共に一体に構成されている。この場合、電子管のサイズがさらに削減され得る。
【0186】
電子管1,1Aにおいて、電子増倍部40は、互いに離間した複数のダイノード42a,42bを有している。電子収集部50は、電子増倍部40で増倍された電子を収集するアノード51又はダイオードを有している。この場合、メタサーフェスSから放出された電子が複数のダイノード42a,42bで増倍される。このため、アノード51又はダイオードで収集される電子の増倍率が向上する。
【0187】
電子管1Cにおいて、電子増倍部40は、マイクロチャンネルプレート110を有している。電子収集部50は、電子増倍部40で増倍された電子を収集するアノード51又はダイオード100を有している。この場合、電子増倍部40に複数のダイノードが用いられる場合に比べて、サイズ、重量、及び消費電力が削減されると共に、応答速度及び利得が向上する。
【0188】
電子管1Dおいて、電子収集部50は、電子増倍部40で増倍された電子を受けて光を発する蛍光体121を有している。この場合、メタサーフェスSから放出された電子の2次元位置が、蛍光体121が発した光によって検出され得る。
【0189】
撮像装置130は、上述した電子管1Dと、蛍光体121からの光に基づく像を撮像する撮像部133とを備えている。この結果、上述した電磁波の検出精度が確保される。
【0190】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0191】
たとえば、本実施形態において、保持部材30が中間部材73を有している構成について説明した。しかし、保持部材30は、ベース部材71の平板部71cの縁から複数の付勢部73dが延在する構成であってもよい。この場合、複数の付勢部73dは、ベース部材71の平板部71cの縁から電子放出部材20の主面21b寄りに延在した後に、主面21bと平行な方向に折れ曲がって形成されてもよい。この場合も、複数の付勢部73dは、主面21bの縁に弾性的に接しており、ベース部材71の平板部71cに電子放出部材20を付勢する。
【0192】
電子管1において、電子収集部50は、アノード51の代わりにダイオードを有していてもよい。この場合、電子増倍部40で増倍された電子は、ダイオードで収集される。
【0193】
ハウジング10,120は、円筒形状に限定されない。たとえば、ハウジング10,120は、断面が多角形である筒形状を呈していてもよい。
【0194】
電子管1Cには、メタサーフェスSとマイクロチャンネルプレート110との間に掃引電極が設けられてもよい。これによって、いわゆるストリーク管が構成されてもよい。この場合、ストリーク管としての電子管1Cの窓11aの外側に、被測定光を入射させるスリットとスリット像を結像するレンズ系とが設けられてもよい。これによって、いわゆるストリークカメラが構成されてもよい。
【0195】
撮像装置130において、電子管1Dにおいてマイクロチャンネルプレート110で増倍された電子を蛍光体121で収集し、蛍光体121が発する光を電子管1Eの外部に設けられた撮像部133で撮像する。この点、電子収集部50として蛍光体121の代わりに電子打ち込み式固体イメージセンサを電子管の内部に設けることで、電子管が撮像装置として機能するように構成されてもよい。この場合、電子管の外部に撮像部133を設けることなく、マイクロチャンネルプレート110で増倍された電子を電子打ち込み式固体イメージセンサで撮像することができる。電子打ち込み式固体イメージセンサは、たとえば、EBCCD(Electron-Bombarded Charge-Coupled Device)である。
【符号の説明】
【0196】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F…電子管、10,120…ハウジング、10a…内側面、11a,11b…窓、20…電子放出部材、21…基板、21c,21d,21e,21f…縁、30…保持部材、31…貫通口、40…電子増倍部、42a,42b…ダイノード、50…電子収集部、51…アノード、70…保持体、71…ベース部材、74d,75d…バネ部、81…第一電極、82…第二電極、83…第一伝導線、83a…第一端部、83b…第二端部、83c,83d,84c,84d…直線状部、84…第二伝導線、84a…第三端部、84b…第四端部、85…アンテナ部、87…バイアス部、100…ダイオード、110…マイクロチャンネルプレート、121…蛍光体、130…撮像装置、133…撮像部、150…電磁波検出装置、151…光検出器、F2,F3…付勢力、S…メタサーフェス、R1,R2,R3…仮想直線。