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特許7545621複合型血液ポンプと酸素供給器のシステムおよび関連する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】複合型血液ポンプと酸素供給器のシステムおよび関連する方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/18 20060101AFI20240829BHJP
   A61M 60/113 20210101ALI20240829BHJP
   A61M 60/232 20210101ALI20240829BHJP
   A61M 60/38 20210101ALI20240829BHJP
   A61M 60/857 20210101ALI20240829BHJP
【FI】
A61M1/18 525
A61M60/113
A61M60/232
A61M60/38
A61M60/857
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022576235
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2021054671
(87)【国際公開番号】W WO2021170712
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】62/981,079
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】524282593
【氏名又は名称】バイオクシー・メッド・エルエルシー-エフゼット
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニダル・アビ・ラフェ
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-099065(JP,A)
【文献】特開2013-233333(JP,A)
【文献】国際公開第2020/008488(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0038574(US,A1)
【文献】米国特許第06117390(US,A)
【文献】米国特許第05305982(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/18
A61M 60/113
A61M 60/232
A61M 60/38
A61M 60/857
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内の灌流および酸素レベルを高めるための血液ポンプと酸素供給器のシステムであって、少なくとも1つの血液ポンプ(10)と、酸素供給器(20)と、流入カニューレ(80)と、流出カニューレ(90)と、を備え、これらは、前記患者の血液の体外処理に適合された心肺バイパスシステムとして動作可能であるように閉鎖直列回路を形成するために接続され、前記閉鎖直列回路は、前記血液ポンプ(10)と、前記酸素供給器(20)と、前記流入カニューレ(80)と、前記流出カニューレとが直列に接続されて構成される閉鎖ループを構成し、前記血液ポンプ(10)は、前記回路を通って前記患者から前記流入カニューレ(80)内に入り、前記酸素供給器(20)を通り、前記流出カニューレ(90)から出て前記患者に戻るように血液を搬送するように構成され、
前記システムは、前記流入カニューレ(80)と前記流出カニューレ(90)との間に接続されたマニフォルド(100)をさらに備えることで、前記血液は前記マニフォルド(100)を通過し、前記マニフォルド(100)は、前記血液ポンプ(10)および前記酸素供給器(20)を収容し、前記血液が前記酸素供給器(20)を複数回通過するように、前記回路内の前記血液の少なくとも一部を再循環させるように構成された再循環ループを形成するように設計され、
前記システムは、前記流出カニューレ(90)に位置決めされ、前記患者に設定された分量を送達するように構成された追加の血液ポンプ(50)をさらに備え、前記追加のポンプ(50)は、前記酸素供給器(20)を含む前記マニフォルド(100)内で前記血液を循環させる前記血液ポンプ(10)から独立して制御されるように構成される、血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項2】
前記血液ポンプ(10)は、前記患者に送達するように望まれるものを超える流量を送達するように設定されるように構成され、全ての余分な流れは、前記血液が、前記酸素供給器(20)内でO2とCO2の交換を繰り返し受けるように、前記酸素供給器(20)を通って再循環される、請求項1に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項3】
前記マニフォルド(100)は、メイントランク(104)と、サイドトランク(105)と、を備え、前記メイントランク(104)は、前記流入カニューレ(80)に接続された近位端(108)と、前記流出カニューレ(90)に接続された遠位端(109)と、を有し、前記サイドトランク(105)は、再循環ループを形成するために、前記メイントランク(104)に接続された近位端(107)と遠位端(106)とを有する、請求項1または2に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項4】
前記マニフォルド(100)は、前記血液ポンプ(10)および前記酸素供給器(20)の少なくとも一方の交換を可能にするように構成された少なくとも1つのマニフォルド側部ポート(101)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項5】
前記血液ポンプ(10)は、前記メイントランク(104)において第1のマニフォルド側部ポート(101)を通して配置され、前記サイドトランク(105)と前記メイントランク(104)との近位接合部から下流の前記メイントランク(104)へと進められ、前記酸素供給器(20)は、前記サイドトランク(105)において第2のマニフォルド側部ポート(101’)を通して配置され、前記サイドトランク(105)の一部を通って進められ、それぞれの止血弁(102、102´)がポンプのシース(13)および酸素供給器のシース(23)の周りにそれぞれ緊密なシールを形成し、前記第1のマニフォルド側部ポート(101)および前記第2のマニフォルド側部ポート(101)のそれぞれを通って延在する、請求項3に記載の、または請求項3に従属する請求項4に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項6】
前記血液ポンプ(10)は、前記メイントランク(104)において第1のマニフォルド側部ポートを通して配置され、前記サイドトランク(105)と前記メイントランク(104)との遠位接合部から上流の前記メイントランク(104)へと進められ、前記酸素供給器(20)は、第2のマニフォルド側部ポート(101’)を通して、前記血液ポンプ(10)の上流の前記メイントランク(104)へと挿入される、請求項3に記載の、または請求項3に従属する請求項4に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項7】
バルーンカテーテル(110)が、バルーンカテーテルシャフト(111)に装着され、前記酸素供給器(20)の下流の前記サイドトランク(105)内に配置された閉塞性バルーン(112)で前記バルーンカテーテルシャフト(111)の周りを密封する止血弁(102’’)を有する第3のマニフォルド側部ポート(101’’)を通して配置され、前記バルーンカテーテルは、前記閉塞性バルーン(112)を膨らませたりしぼませたりすることによって、前記マニフォルドメイントランク(104)および前記サイドトランク(105)を通って流れる血液の量を制御するように構成される、請求項5または6に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項8】
前記閉塞性バルーン(112)は、心臓の鼓動と同期するように構成され、好ましくは前記閉塞性バルーン(112)は、心収縮期には完全にしぼまされ、心拡張期には完全に膨張される、請求項7に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項9】
前記マニフォルド(100)には、前記流入カニューレ(80)および前記流出カニューレ(90)の、前記マニフォルド(100)への接続および前記マニフォルド(100)からの切断をそれぞれ可能にするように構成される、少なくとも1つのクイックコネクト結合部(103)が備わっている、請求項1から8のいずれか一項に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項10】
前記血液ポンプ(10)のポンプ吸引力を制御するために圧力フィードバックシステムをさらに備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項11】
前記システムは、負圧で前記酸素供給器内のガスを循環させるように構成される、請求項1から10のいずれか一項に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項12】
ガスヒータおよび断熱材をさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項13】
前記血液ポンプ(10)は、回転ポンプまたは変位ポンプであり、好ましくは遠心タイプまたは軸流タイプの回転ポンプであり、前記血液ポンプ(10)は、電気モータによって直接駆動される、あるいは前記血液ポンプ(10)を前記電気モータに磁気的につなぐか、または直接つなぐ可撓性駆動ケーブル(14)によって駆動されるように構成される、請求項1から12のいずれか一項に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項14】
前記血液ポンプ(10)は、前記流入カニューレ(80)から前記流出カニューレ(90)まで前記血液を搬送するために、電気モータによる前記駆動ケーブル(14)の回転が、ロータ(11)の回転およびハウジング(12)の遠位端から近位端までの血液のポンピングを生じさせるようなやり方で、前記ロータ(11)に結合されたシース(13)の内部に駆動ケーブル(14)を備える、ポンプハウジング(12)の内部に据えられたロータ(11)を備える軸流タイプである、請求項1から13のいずれか一項に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項15】
前記血液ポンプ(10)は、それを第1のマニフォルド側部ポート(101)の中を通すことによって前記マニフォルド(100)の内部に配置されるように構成され、止血弁(102)が、前記血液ポンプ(10)に接続するシース(13)の周りを閉鎖し、前記止血弁(102)は、前記血液ポンプ(10)がその中を通って配置された後、止血を行う、請求項1から14のいずれか一項に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項16】
前記酸素供給器(20)は、止血弁(102’)が酸素供給器のシース(23)の周りにシールを形成しながら、第2のマニフォルド側部ポート(101’)を通して前記マニフォルド(100)の内部に配置されるように構成される、請求項1から15のいずれか一項に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項17】
前記酸素供給器のシース(23)は、前記酸素供給器(20)への酸素送達のために流入内腔(28)と、前記酸素供給器(20)からの二酸化炭素の除去のための流出内腔(29)と、が含まれる、少なくとも2つの内腔を有し、前記酸素供給器(20)は、酸素を取り入れ二酸化炭素を放出するために血液が酸素供給器繊維(25)の間を通過するのを可能にする複数の中空の酸化繊維(25)を備え、酸素は、前記酸素供給器繊維(25)の一端で前記流入内腔(28)から前記酸素供給器繊維(25)の内側内腔へと通され、前記酸素供給器繊維(25)の他端から前記流出内腔(29)へと戻される、請求項16に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項18】
前記酸素供給器(20)は、前記酸素供給器(20)の周りの血液流を制限し、強制的に前記血液が酸素供給器繊維(25)を通って流れるようにするために、締り嵌めを可能にするために前記マニフォルド(100)の内径にサイズが適合される、請求項1から17のいずれか一項に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項19】
前記マニフォルド(100)は、血液ポンプ(10)が気泡トラップ(30)の入口ポート(32)に配置された状態で、好ましくは前記メイントランク(104)内に気泡トラップ(30)を含み、前記血液ポンプ(10)は、血液が出口ポート(33)において前記気泡トラップ(30)を出る前に、全ての血液を前記気泡トラップ(30)に移動させ空にするように構成され、前記気泡トラップ(30)は、前記気泡トラップ(30)内に閉じ込められたいかなる空気も排出するために円錐形の頂部の最上部に通気ポート(31)を含み、前記入口ポート(32)は、前記気泡トラップ(30)の頂端部の近くに好ましくは配置され、前記出口ポート(33)は、底端部の近くに好ましくは配置される、請求項1から18のいずれか一項に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【請求項20】
前記循環する血液の温度を調整するように構成された熱交換器(40)をさらに備え、前記熱交換器(40)は好ましくは、熱伝導材料で作成される中空の加熱繊維(42)を通して加熱または冷却された流体を伝えるように構成された二重内腔カテーテル(41)を備えるカテーテルシステムであり、前記加熱繊維(42)の一端は、前記二重内腔カテーテル(41)の一方の内腔と連通しており、前記加熱繊維(42)の他端は、前記二重内腔カテーテル(41)の他方の内腔と連通している、請求項1から19のいずれか一項に記載の血液ポンプと酸素供給器のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、患者の体内の灌流および酸素レベルを高めるのに使用される血液ポンプおよび酸素供給器の分野に関する。より詳細には、本発明は、設置し易く使い易い簡素化されたポンプと酸素供給器のシステムを伴う。
【背景技術】
【0002】
多くのタイプの血液ポンプと酸素供給器のシステムが、当分野においてよく知られている。例えば開心手術中、患者は、人工心肺装置として一般に知られる外部のポンプと酸素供給器のシステムに相互に接続され、この装置が、血液を循環させ、酸素を血液系に取り込む。たいていのタイプのポンプは、ローラまたは遠心ポンプを利用して、患者の脈管系内で血液を流す。たいていのタイプの酸素供給器もまた、ガス透過性膜を使用しており、この場合、血液は、膜の一方の側に沿って流れ、酸素は、膜の他方の側に供給される。酸素供給と血液との間に十分な圧力勾配が与えられるとすると、酸素は、膜を通って血液中へと拡散する。加えて、二酸化炭素は、血液中から膜の中へと拡散する傾向がある。
【0003】
典型的な心肺バイパスシステムは、かなり複雑であり、一般に、6時間を超える利用には特に十分に適合しない。さらに、最も標準的なシステムは、血流力学的特徴が乏しいことを示す。すなわち、そのようなシステムは典型的には、長期間にわたって有用であるには、血液に対してあまりにも大きな損傷を与える。
【0004】
例えば、典型的な心肺バイパスシステムは、Fischelに対する特許文献1、Hinoに対する特許文献2およびMortensenに対する特許文献3に開示される。そのような従来式システムは一般に、複数のポンプ、静脈リザーバ、動脈リザーバおよび別個の気泡捕捉デバイスを利用する。これらの従来式システムは、いくつかの欠点を提示する。最も明らかな欠点は、そのようなシステムの全体的な複雑さである。例えばポンプは、互いに同期させる必要があり得る、またはリザーバもしくは気泡トラップの各々は、特殊な支持フレームを必要とする場合がある。また、多くの構成要素が、広範囲にわたる配管および相互接続部を必要とする。
【0005】
従来式システムの複雑さは、製造コストおよび動作コストを高めることにつながる。また、より複雑なシステムは、設置するのにより時間がかかる場合があり、システムの設置は、専門のスタッフおよび管理を必要とする場合がある。そのような専門のスタッフがいる場合ですら、システムの複雑さは、システムを設置する際の過失のリスクを高める。同様に、手術になると、従来式システムは、専門のスタッフによる継続的なモニタリングおよび調整を必要とする。
【0006】
従来式の心肺バイパスシステムはまた、それらが、かなり短時間の使用(例えば6~8時間)の後に血液をかなり損傷させることから、長期間の利用には使用することができない。例えば、従来式の閉塞性ローラポンプは、赤血球を機械的に破壊する。この「血液の外傷」は、いかなる心肺バイパスシステムでも起こる可能性がある。それは、システムの圧力もしくは乱れを増大させやすい、閉塞性ポンプ、相互接続部および他のシステム構成要素によって引き起こされる、ならびに/または悪化する。同様に、数時間から1日を超える従来式の酸素供給器は、中空繊維への血漿の漏出のために性能が劣る結果となる。
【0007】
上記の要因は、相対的に少ない構成要素を有する簡素な心肺バイパスシステムの必要性、およびそのディザイラビリティを例証する。Litzie等に対する特許文献4に開示されるものと同様のデバイスは、そのような簡素さを達成するための試みを表している。Litzie等は、非閉塞性ポンプ、酸素供給器および別個の気泡トラップを有する緊急バイパスシステムを開示する。Litzie等は、酸素供給器に近接して(すなわちその静脈側で)接続された遠心ロータタイプのポンプを記載する。Litzie等は、他の既知のシステムと比べて簡素化された心肺バイパスシステムを表しているが、それは、ポンプおよび酸素供給器に加えて気泡捕捉デバイスをなおも必要とする。
【0008】
他の状況では、より小さい植え込み可能な酸素供給器は、患者の血液の酸素含有量を少しばかり増やすことによって患者の心肺機能を適切に補うのに十分な場合がある。例えば、肺気腫、肺炎、鬱血性心不全または他の慢性肺疾患を煩う患者は、おおよそ40トールの血液酸素分圧を有することが多い。患者を適切に維持するのに10%から20%の相対的に小さい増加で概ね十分である。これは、そのような症例において患者を挿管する必要性を回避する点において、とりわけ望ましい選択肢である。加えて、このタイプの酸素供給器の一時的使用は、多くの症例において急性の呼吸器発作を患者が乗り切るのに十分である。そのような患者を従来式の人工呼吸装置に設置することは、患者の呼吸樹を損傷することによって進行性の下り坂スパイラルが始まることが多く、それにより、より大きな人工呼吸装置への依存を生じさせる。
【0009】
いくつかのデバイスおよびプロセスが、この基本的技術に取り入れて過去に考案されており、これには以下のものが含まれる。
【0010】
【表1】
【0011】
Bodellの特許は、ガス透過性繊維を使用して、血液の酸素レベルを押し上げる一般的な概念を実証している。Bodellのデバイスの植え込み可能な実施形態では、管状のケーシングが、肺動脈から心臓の左心房に、またはより一般的には動脈と静脈との間のいずれかのシャントとして機能する。多数の平行に接続された毛管を使用して、ケーシング内を循環する血液に酸素供給する、および/または浄化する。
【0012】
Mortensenの特許は、複数の小さい直径のガス透過性管で作成された経静脈法の酸素供給器を示している。しかしながら、Mortensenによって開示される特有のデバイスは、2つの切開部が必要とされる点においてかなりの欠点を有する。挿入プロセスもまた、かなり複雑である。
【0013】
Taheriの特許は、酸素が拡散する単一の膜を有する経静脈法の酸素供給器を開示している。膜は、シース内に配置され、可撓性のワイヤがその両方を支持する。
【0014】
任意の時間の長さにわたって患者の循環機能不全をサポートすることが可能な循環サポートシステムに対する要望がある。そのような循環サポートシステムは、例えば、(1)患者が心原性ショックの状態にある場合、(2)患者が敗血症性ショックの状態にある場合、(3)バイパスからの心術後の離脱のため、(4)切迫した心筋梗塞を避けるために循環系を補助するため、および(5)移植までのブリッジ患者などの非常に多くの状況においてかなり有用である。システムを可能な限り簡素化することが非常に望ましい。
【0015】
本発明は、このような要望に対処し、上記に記載した従来技術のシステムの不十分な点をなくす、または少なくともその作用を低減することを対象としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許第3,890,969号
【文献】米国特許第4,466,804号
【文献】米国特許第4,610,656号
【文献】米国特許第4,540,399号
【文献】米国特許第4,944,722号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、大きく簡素化された心肺バイパスシステムを提供する。本発明のシステムは、システムを設置および維持するための専門家、不可欠なチューブ、コネクタおよび挿管を必要とせずに2つの基本的な構成要素(ポンプと酸素供給器)のみを使用して実施することができる。構成要素は、患者の血液の体外処理に適合した閉鎖直列回路として接続される。
【課題を解決するための手段】
【0018】
一態様によると、血液ポンプと酸素供給器のシステムは、少なくとも1つの血液ポンプと、酸素供給器と、流入カニューレと、流出カニューレと、を備え、これらは、患者の血液の体外処理に適合した心肺バイパスシステムとして動作可能であるように閉鎖直列回路を形成するために接続される。血液ポンプは、血液を、回路を通って患者から流入カニューレに入り、酸素供給器を通って、流出カニューレから出て患者の体内に戻るように搬送するように構成される。マニフォルドが流入カニューレと流出カニューレとの間に接続されることで、血液はマニフォルドの中を通過し、この場合、マニフォルドは、血液ポンプおよび酸素供給器を収容し、血液が酸素供給器を複数回通過するように回路内で血液の少なくとも一部を再循環させるように構成された再循環ループを形成するように設計される。システムは、流出カニューレに位置決めされ、患者に設定された分量を送達するように構成された追加の血液ポンプをさらに備え、この場合、追加のポンプは、酸素供給器を含むマニフォルド内で血液を循環させる血液ポンプから独立して制御されるように構成される。
【0019】
別個のリザーバの必要性をなくすために、本発明のポンプと酸素供給器のシステムは、ポンプの吸引力を制御するために、圧力フィードバックシステムが備わっていてよい。この点において、本発明のシステムは、1つ以上の別個のリザーバなどを通常含む従来のシステムと比べて、相対的に固定分量のシステムである。ポンプおよび酸素供給器のシステムは、流体温度を維持するために熱交換器の必要性をなくすために、ガスヒータおよび断熱材を備えていてよい。システムの縮小したサイズおよび患者の身体の外側の血液の滞留時間を短縮することもまた、熱交換器の必要性をなくす。
【0020】
別個の気泡トラップの必要性をなくすために、負圧を使用して酸素供給器内のガスを循環させる。ポンプと酸素供給器は、流体が、重力によって、または患者の静脈圧と組み合わせた重力によって、酸素供給器を通ってポンプの入口まで流れることができるように位置決めされてよい。この配向は、システムを通る滑らかで低圧の流体流れをさらに可能にし、血液の外傷をさらに低減する。
【0021】
本発明のポンプ/酸素供給器は、システム全体を交換する必要なしに、ポンプおよび酸素供給器の交換を可能にする。換言すると、ポンプおよび酸素供給器は、システム動作を中断する必要なしに、または回路に再度呼び水する必要なしに交換され得るモジュラー式構成要素である。ポンプおよび/または酸素供給器は、カテーテル上に設置されてよく、一方のカテーテルは、ポンプおよび/または酸素供給器を取り除くのに使用され、他方は、システム動作を中断する必要なしにポンプおよび/または酸素供給器を交換するためにその場所に挿入される。この機構は、その構成要素は短期間の使用のみに適切であり得るけれども、システムを長期間の使用に適用可能にするために、長期間動作が意図されていない構成要素の交換を可能にする。
【0022】
本発明のシステムは、その極めて低い全体の血液の外傷および改善された使い易さの特徴が理由で、比較的長期間(すなわち1日から10日)にわたる部分的な静動脈心肺サポートを提供し得る。システムは、心肺サポートを提供するのみではく、潜在的に長期間にわたる血流力学サポートも提供することができる。本発明のシステムは、部分的血流力学サポートにとりわけ適合される。これにも関わらず、システムはまた、循環機能不全を伴う多様な状況においていくつかの追加の目的を達成するのにも適していることを容易に理解されたい。本発明のシステムは、比較的軽い循環機能不全における循環を補助することができ、また心筋梗塞、心筋症または心臓手術後によって引き起こされた重篤な治りにくい心不全における急性の補助を提供することもできる。本発明のシステムはまた、冠状動脈バイパス手術の患者など、ハイリスクの患者の術中のサポートおよび安定化を提供するのに有用であり得る。
【0023】
本発明の低い外傷は、望ましい血流力学全体の特徴に寄与している。システムの全体の血流力学を向上させる本発明の機構の多くはまた、システムを簡素化し、かつそれをより信頼可能にし、コンパクトにすることも助けている。
【0024】
システム構成要素のうちの少数はまた、設置のし易さおよび動作のし易さを可能にし、システム異常のリスクを低減する。システム異常のリスクをさらに低減するために、システムには、種々のフェールセーフ機構が備わっていてよい。そのような装備を使用して、種々の圧力および流量をモニタおよび制御して、適切な動作を保証することができる。本発明のシステムは、動作中に専門のスタッフによる周期的モニタリングおよび調整を必要とし得るが、それは相対的に自動式である。すなわち、より複雑になる傾向のある従来のシステムと比べて、本発明のシステムは、動作中のモニタリングおよび調整をあまり必要としない。
【0025】
本発明のシステムはまた、血液が相互作用する表面積を縮小することによって従来のシステムより、血液に対する損傷を少なくし、本発明のシステムを長期間の利用により適したものにする。患者の血液に対する外傷は、とりわけ血液回路、特に少ない数の回路要素、非閉塞性ポンプおよび酸素供給器の設計の簡素化によって低減される。加えて、患者に対する全体の外傷も低減される。これは、従来のバイパスシステムおよび処置と比べて、血液の体外処理を減少させることによって達成される。別個の流体リザーバがないことで、本発明のシステムの流体の量を減少させる。一度に身体から抜き取られる患者の血液が少ないことから、患者に対する外傷全体も低減される。
【0026】
システムを停止させる必要なしに酸素供給器を取り替えることの可能性は、長期間の利用にわたるシステムの有用性を高める。酸素供給器は、一般に経時的に極めて急速に機能が低下するため、患者のサポートを中断せずに、酸素供給器を変えることの可能性は、システムの寿命全体を増大させる。
【0027】
本発明と従来技術との間の他の主な違いは、本発明は、血液に複数回酸素供給器を通過させる点であり、これにより、同レベルの酸素を提供し、酸素供給器のサイズを「単一通過」の従来技術の酸素供給器に対してサイズを大きく縮小することを可能にする。本発明の「複数回の通過」機構はまた、それが、熱交換器機能ならびに空気の閉じ込めを提供するように機能する点においても有利である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】心肺サポートが意図される本発明のポンプと酸素供給器のシステムの斜視図である。
図2】酸素供給器によって所与の血流流れに移すことができる、酸素の量の限界値を示す酸素分離カーブの図である。
図3】本発明のポンプと酸素供給器のシステムの切欠きで断面の斜視図である。
図3a図3の線A-Aに沿った断面図である。
図4】本発明の別の実施形態による、ポンプと酸素供給器のシステムの切欠きで断面の斜視図である。
図5】本発明のさらに別の実施形態によるポンプと酸素供給器のシステムの切欠きで断面の斜視図である。
図6】本発明のさらに別の実施形態によるポンプと酸素供給器のシステムの切欠きで断面の斜視図である。
図6a】本発明の別の実施形態によるポンプと酸素供給器のシステムの切欠きで断面の斜視図である。
図6b】本発明のさらに別の実施形態によるポンプと酸素供給器のシステムの切欠きで断面の斜視図である。
図7a】本発明によるポンプと酸素供給器のシステムを提供する際の構成要素および位置に関する異なる選択肢の概略図である。
図7b】本発明によるポンプと酸素供給器のシステムを提供する際の構成要素および位置に関する異なる選択肢の概略図である。
図7c】本発明によるポンプと酸素供給器のシステムを提供する際の構成要素および位置に関する異なる選択肢の概略図である。
図8】キットで提供される本発明の一部を形成する構成要素の斜視図である。
図9】システム動作を中断する必要なしに、回路構成要素を交換するために使用される構成要素の詳細な図である。
図10】本発明によるポンプと酸素供給器のシステムの別の実施形態の斜視図である。
図11a図10に例示されるポンプと酸素供給器のシステムの上面図である。
図11b図10に例示されるポンプと酸素供給器のシステムの底面図である。
図12a図10に例示されるポンプと酸素供給器のシステムの一部として利用される酸素供給器カートリッジの斜視図である。
図12b図12aに例示される部分の断面図である。
図13】ポンプおよび酸素供給器を患者の循環系に接続するカニューレを使用する、本発明のポンプと酸素供給器のシステムの図である。
図14a】本発明のポンプと酸素供給器のシステムへのカニューレ接続の断面図である。
図14b】本発明のポンプと酸素供給器のシステムへのカニューレ接続の分解組立断面図である。
図15図10に描かれるポンプと酸素供給器のシステムの分解組立断面図である。
図16】人体に位置決めされた、図10に描かれるポンプ/酸素供給器システムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の例示の実施形態が以下に記載される。明確さの重要性において、実際の実装形態の全ての機構が本明細書に記載されるわけではない。当然のことながら、任意のそのような実際の実施形態の開発においては、ある実装形態と別の実装形態では変動するシステム関連およびビジネス関連の制約に準拠するなど、開発者の特有の目的を達成するために、多数の実装形態特有の決定が行われる必要があることを理解されたい。さらに、そのような開発の労力は複雑で時間がかかる可能性があるが、それでもなお、本開示の利益を有する当業者にとっては慣例的な業務であることを理解されたい。本明細書に開示されるシステムは、個別に、および組み合わせて、特許保護を保証する多様な進歩的機構および構成要素を所有する。
【0030】
本発明の好ましい実施形態に従って(とりわけ図1に注目して)、体外システムが、ポンプ10、酸素供給器20、流入カニューレ80、および流出カニューレ90を備えて設けられる。本明細書に詳細に記載されるべき発明の態様の中で、本発明の体外システムは、小型化されたポンプ10、酸素供給器20、および簡素化された回路を所有することで、血液が異質な表面と相互作用する範囲を縮小することによって、使い易さおよび患者に対する外傷を低減することができる。カニューレ80、90は、血液を搬送するのに使用するための既知の構造の任意の好適なカニューレであってよい。カニューレ80、90は、任意の好適な生体適合材料から作成されてよく、これに限定するものではないがウレタンまたはシリコーンまたは同様の生体適合材料が含まれる。カニューレ80、90は、はっきりとした半径で曲げられたときにカニューレがねじれに抵抗するのを助けるために金属ワイヤまたは同様の材料で強化されてよい。全てのこのような詳細は、カニューレ製造業界ではよく知られており、明確にするためにここで含まれる。
【0031】
図3を参照すると、ポンプ10は、回転ポンプまたは変位ポンプとして提供されてよく(単なる一例として)、より具体的には遠心タイプの回転ポンプとして提供されてよい。遠心ポンプは、血液ポンピング領域において既知の分野であり、製造の低コストおよび血液に対する低い外傷のために好ましい。血液ポンプ10は、電気モータによって直接駆動されてよい、または(例えば特許文献5に記載されるように)ポンプを電気モータにつなぐ可撓性ケーブルによって駆動されてもよい。ポンプと駆動機構との間の結合は、磁気により結合されてもよい、または直接結合されてもよい。ポンプ10は、ポンプハウジング12の内部に据えられたロータ11を備え、ロータ11に結合されたシース13の内部に駆動ケーブル14を備えた軸流タイプで示される。電気モータ(図示略)によるケーブル14の回転は、ロータ11の回転を引き起こし、ハウジング12の遠位端から近位端までの流体のポンピングを引き起こす。この様式において、流体は、流入カニューレ80から流出カニューレ90まで搬送される。
【0032】
本発明の一態様によると、マニフォルド100には、マニフォルド100の内部に配置するためにデバイスまたは器具が中を通過することが可能な少なくとも1つのマニフォルドポート101が備わってよい。好適な止血弁102が、そのような配置の間、および配置の後、止血を保証するために必要とされる場合もある。マニフォルド100にはまた、回路内のその見込み位置において、流入カニューレ80または流出カニューレ90ならびに他の構成要素の接続および切断を促進するためにクイックコネクト結合部103が備わっていてもよい。クイックコネクト結合部103は、一例として、2つの管またはモジュールを迅速に結合または解放し、迅速に流体の厳密な接続を保証するように意図された2つの構成要素システムとして設けられてもよい。
【0033】
図3に示されるように、ポンプ10は、それをマニフォルド側部ポート101を通過させることによってマニフォルド100の内部に配置されてよい。この例では、止血弁102は、シース13の周りを閉鎖し、ポンプ10がその中に配置された後、止血を行う。同様の様式では、酸素供給器20は、止血弁102´が酸素供給器シース23の周りにシールを形成する状態で、マニフォルドポート101´を通してマニフォルド100の内部に配置されてもよい。シース23は好ましくは、少なくとも2つの内腔(図3aに示される)、酸素供給器繊維25への酸素送達のための流入内腔28、ならびに酸素供給器繊維25からの酸素(Oガス)および二酸化炭素(COガス)の除去のための流出内腔29で構成される。酸素供給器20は、酸素を取り入れCOガスを放出するために、血液が酸素供給器繊維25の間を通過することを可能にする酸化繊維25で構成される。戻るとき、酸素は、酸素供給器繊維25の一端で流入内腔28から酸素供給器繊維25の内側内腔に通され、大気中に放出するために酸素供給器繊維25の他端からシース23の内腔29へと戻される。酸素供給器20は、酸素供給器20の周りの血液流を制限し、強制的に血液が酸素供給器繊維25を通って流れるようにし、血液酸素とCOの交換を最大にするために、締り嵌めを可能にするためにマニフォルド100の内径にサイズが適合される。
【0034】
この発明の1つの主な利点は、ポンプ10または酸素供給器20が経時的に不完全になる、または効率が悪くなった場合に、ポンプ10または酸素供給器20を別のポンプまたは酸素供給器と交換することが可能であることである。たいていの酸素供給器の主な欠点は、繊維の劣化により、それを長く使用するほど、ガス交換の能力が継続的に低下することである。本発明は、酸素供給器20の性能が低下したときに、その交換を可能にし、重要なことには、ポンプを停止する必要なしに、または回路に再度呼び水する必要なしに、そのような交換を可能にする。
【0035】
図4を参照すると、本発明の別の実施形態によるポンプと酸素供給器のシステムが示されている。マニフォルド100は、メイントランク104と、メイントランク104の遠位端をメイントランク104の近位端と接続するサイドトランク105と、で構成される。ポンプ10は、マニフォルド側部ポート101を通して配置され、メイントランク104とサイドトランク105との接合部から下流のメイントランク104へと進められる。酸素供給器20は、マニフォルド側部ポート101´を通して配置され、マニフォルドサイドトランク105の一部を通って進められる。止血弁102および102´は、シース13および23の周りにそれぞれ緊密なシールを形成する。バルーンカテーテル110がマニフォルド側部ポート101´´を通して配置され、これは、止血弁102´´がバルーン方式に膨らんだカテーテルシャフト111の周りを密封するように、サイドトランクの遠位端106に配置される。閉塞性バルーン112が、バルーン方式に膨らんだカテーテルシャフト111の遠位端に装着され、サイドトランクの遠位端106に配置されるが、メイントランクの近位端108には到達しない。閉塞性バルーン112を、注入流体(好ましくは生理的食塩水)によって膨張させることは、マニフォルドサイドトランク105を部分的に、または完全に閉塞し、マニフォルドサイドトランク105を通って循環する血液の量を制限することになる。基本的に、閉塞性バルーン112は、マニフォルドサイドトランク105を通って流れる血液の一部、およびマニフォルドメイントランクの遠位端109を通り流出カニューレ90へと流れる血液の一部を固定する。したがって、酸素供給器20または流出カニューレ90を通る血液流は、閉塞性バルーン112を膨らませる度合いに依存している。完全に膨張した閉塞性バルーン112は、ポンプ10からの血液流が(酸素供給器20を通って流れずに)全部が流出カニューレ90を通って進むようにする。逆に、完全にしぼませた閉塞性バルーン112は、ポンプ10からの血液流が(流出カニューレ90を通って流れずに)全部が酸素供給器20を通って進むようにする。
【0036】
ポンプ10は、患者に送達するように望まれるものを超える流量を送達するように設定されてよく、この場合、全ての余分な流れは、血液が、酸素供給器20内でOとCOの交換を繰り返し受けるように、酸素供給器20を通って再循環される。酸素供給器20は、この「複数回の通過」機構に基づいて実質的に縮小されたサイズであってよく、この場合、血液は、患者へと循環される前に、酸素供給器に複数回通される。本発明のこの「複数回の通過」の性質は、システムを簡素化し、そのサイズを縮小し、回路に呼び水するのに必要とされる血液の量を削減する。本発明の別の利点は、患者の上に回路を配置することが可能であり、それ故、全体の回路の複雑さおよびサイズを最小限にすることである。
【0037】
図5は、本発明によるさらに別のポンプと酸素供給器のシステムを例示する。マニフォルド100は、血液ポンプ10が気泡トラップ30の入口ポート32に配置された状態で、メイントランク104内に気泡トラップ30を含む。血液ポンプ10は、血液がマニフォルド100サイドトランク105または流出カニューレ90に出る前に、全ての血液を気泡トラップ30に移動させ空にし、汲み上げられた血液からいかなる気泡も取り除くように機能する。気泡トラップ30は、気泡トラップ30内に閉じ込められたいかなる空気も排出するために円錐形の頂部の最上部に通気ポート31を含む。入口ポート32は、気泡トラップ30の頂端部の近くに好ましくは配置され、出口ポート33は、底端部の近くに好ましくは配置される。加えて、気泡トラップ30の入口ポート32は、汲み上げられた血液中の渦の形成を高めるために、気泡トラップ30のメイン空洞34の中心ではなく側部に配置されてよい。これは、気泡トラップ30内の汲み上げられた血液の滞留時間を増大させるのを助け、遠心力を利用して、汲み上げられた血液からより小さな気泡を分離する。気泡トラップ30はまた、汲み上げられた血液からいかなる堆積物も捕らえるためにスクリーン(図示略)を含んでもよい。ポンプ10は、図4および図5に軸流設計であるように示されているが、本発明の機能に悪影響を及ぼすことなく、遠心力の設計であってもよい。
【0038】
図6は、熱交換器40が加わること以外は、図5のものと同様の本発明のポンプと酸素供給器のシステムを例示する。熱交換器40は好ましくは、二重内腔カテーテル41によって形成されたカテーテルシステムであってよく、この場合、流体(加熱された、または冷却された)が、一方の内腔を通して注入されて加熱繊維42を加熱または冷却する。加熱繊維42は、図6に示されるようにマニフォルド100のサイドトランク105内に進むことを可能にするために、曲げやすく、ねじれに抵抗する熱伝導材料で作成される中空の繊維である。任意の数の好適な材料が、熱交換器40に利用されてよく、これに限定するものではないがポリマー材料またはニチノールなどの金属材料を含む。加熱繊維42の一端は、二重内腔カテーテル41の一方の内腔と連通しており、加熱繊維42の他端は、二重内腔カテーテル41の他方の内腔と連通している。したがって、二重内腔カテーテル41の第1の内腔内で流体を汲み上げることは、流体が第2の内腔を通って出て行く前に、循環する血液に熱が送達される、または循環する血液から熱が取り除かれるように、流体をまず加熱繊維42へと誘導することになる。
【0039】
図6aは、本発明のポンプと酸素供給器のシステムを例示しており、ここでは、酸素供給器20は、マニフォルド側部ポート101を通ってマニフォルド100のメイントランク104に挿入され、気泡トラップ30の酸素区画35へと進められる。流入カニューレ80から流れる血液が酸素区画35を通って進入し、それが気泡捕捉区画37に到達する前にそらせ板36によって上向きに偏向される。気泡捕捉区画37は、いかなる気泡も、気泡トラップ30の頂部まで浮かび、通気ポート31を通って取り除かれることを可能にする。そらせ板36および気泡トラップ30の設計は一般に、気泡トラップ30の頂部における渦流れの形成を高めて、気泡トラップ30の頂部部分において気泡を隔離する能力を高めるように適合されてよい。
【0040】
閉塞性バルーン112は、心臓の鼓動と同期されてよい。詳細には、閉塞性バルーン112は、心収縮期には完全にしぼませてよく(最小限の労力で心臓が吐き出すことを可能にするために全身の圧力を最小限に維持しながら)、心拡張期には完全に膨張させてよい(気泡トラップ30内の全ての酸化した血液を、流出カニューレ90を通して患者に移動させて空にする)。加えて、気泡トラップ30は、平均的な患者の一回拍出量またはそれ未満に一致する体積を有してよく、そのため、各心臓のサイクルについて、システムは、閉塞性バルーンが完全にしぼみ、静脈系から流入カニューレ80を通って徐々に排出される酸化されない血液を再循環させる前に、気泡トラップ30内に含まれる酸化した血液を空にする。基本的に、本実施形態は、静脈血液を徐々に排出し、心拡張期には酸化した血液を注入し、心収縮期には血液を酸素供給器を通り越して再循環させるように設計されている。これは有利には、心筋層に対する低下した作業負荷へと転換する、低下した全身の圧力に対する心臓のポンプ機能をもたらす。
【0041】
図6bは、本発明のポンプと酸素供給器のシステムを例示しており、これは図6aに例示されるものと実質的に同一である。追加のポンプ50が、設定された分量を患者に送達するために流出カニューレ90に位置決めされる。この追加のポンプ50は、デバイスの酸素供給器部分において血液を循環させるメイン血液ポンプ10とは独立して制御されてよい。したがって患者に送達される血液量は、患者の要件に従って即座に変更することができる。
【0042】
図7a~図7cは、一例として、図1図6に示されるシステム構成要素についての代替の配置を表す。図7aは、図6により詳細に描かれる基本的に同一のシステムであり、2つの流量計、すなわち回路のそれぞれの部分において流量を測定する再循環流量計70および流出流量計70´が追加されている。図7bは、酸素供給器20および熱交換器40が回路内で反対の位置にある回路7aと同じものである。この配置は、他の用途に対する一部用途において有益であり得る。例えば、血液が酸素供給器20を通って通過した後、血液を冷却することは好ましい場合がある。図7cは、システムへのリザーバ60の追加を示す。リザーバ60は、患者からの血液収集が中断された場合に循環に加えられてよい一部の血液量を貯蔵するのに使用されてよい。あるいは、リザーバ60は、患者からの血液量の余剰分を貯蔵するのに使用されてよく、または患者への輸血が意図される血液を貯蔵するのに使用されてもよく、それ故、ポンプは、この余剰の血液を取り込むのに使用される。リザーバ60は、平行である(図7cに示されるように)代わりに流入カニューレ80(図示略)と直列であってよい。この配置では、ポンプ10は、血液を患者から直接吸い上げる代わりに、(リザーバは柔軟な曲げやすい壁から作成されると仮定する)リザーバから血液を吸い上げることになる。この配置の利点は、患者に作用するポンプの吸い上げを緩和させることである。
【0043】
本発明によると、心不全を治療するために本明細書に記載されるポンプと酸素供給器のシステムを使用する1つの方法は、以下の通りである。
【0044】
1.患者の静脈に流入カニューレ80で経皮的にカニューレを挿入する。流入カニューレ80は、多くの異なる直径および長さで提供されることで、異なる患者および異なる用途に適合することができる。Seldinger技術を使用して、カニューレを大腿静脈に挿入して静脈血液を回路内に排出させてよい。
【0045】
2.流入カニューレ80は、その後、選択の回路に接続されてよい。回路全体の容積が小さいために、血液を使用して回路に呼び水することができる。通常、その大きな容積が理由で、生理用食塩水を使用して標準的な心肺回路に呼び水をする。標準的な回路容積は、100ccから1500ccまでの範囲であり得る。本発明に記載される回路容積は、100ccをはるかに下回り、場合によっては10ccまで下がる場合もある。呼び水容積の違いは、従来技術のシステムのような生理用食塩水の代わりに、本発明の回路に呼び水をするのに血液の使用を可能にする鍵となる要因である。システムに呼び水をするのに患者の血液を使用することは、生理用食塩水が使用される場合に患者の血液が被る希釈をなくすことになる。生理用食塩水による患者の血液の希釈は、血液の酸素保持能力を低下させ、そのため、同じ組織の酸化レベルを達成するのにより高い循環レベルが必要とされる。
【0046】
3.ポンプ10がその後、マニフォルド側部ポート101を通して挿入され、止血弁102によって所定の場所に固定されてよい。止血弁102はまた、空気がマニフォルド100に進入したり、マニフォルド100から出て行ったりしないように維持する目的も果たす。
【0047】
4.酸素供給器20が第2の側部ポート101´を通して挿入され、止血弁102´によって(マニフォルド100内にポンプ10を配置する前または配置の後)所定の場所に固定されてよい。ポンプ10の後に配置された場合、酸素の流れがこの時点で開始され、酸素供給器20は、適切な機能のためにチェックされてよい。
【0048】
5.バルーン方式に膨らんだカテーテル110が、適切な側部ポートを通して挿入され、図5に示されるようにメイントランク104とサイドトランク105との間の分岐に進められてよい。
【0049】
6.流出カニューレ90が、流入カニューレ80を挿入するのに利用されたものと同様のやり方で(すなわちSeldinger技術を使用することによって)患者に挿入されてよい。流出カニューレ90は好ましくは患者の血液で呼び水されてよい。流出カニューレ90が動脈内に配置されるケースでは、一対の止血鉗子を使用して、カニューレ90を通る血液流を制御してもよい。
【0050】
7.呼び水された回路はその後、流出カニューレ90への、または流出カニューレ90からの流れを制御するために流出カニューレ90を圧締めされた状態で維持したまま、呼び水された流出カニューレ90に装着されてよい。全てのカニューレ(流入カニューレ80および/または流出カニューレ90)には、カニューレを回路に迅速にかつ容易に装着するためにクイックコネクト103または103´が装備されてもよい。
【0051】
8.大量の空気が、この時点で、気泡トラップ30のポート31などの任意のポートを通して取り除かれてよい。
【0052】
9.閉塞性バルーン112をしぼませたまま維持しつつポンプ10を稼働させることによって、酸素供給器または回路の任意の他の部分に閉じ込められたいかなる空気も押し流すように、血液が閉鎖ループ内を循環する。空気は、気泡トラップ30の通気ポート31を介して今一度、回路から取り除かれてよい。この時点で、流出カニューレ90上のクランプを除去し、ポンプ10を作動させ、酸素供給器20へのガス流を所望の値に調整し、熱交換器40への流体(高温または低温)の流れを調整し、閉塞性バルーン112を膨らませる度合いを調節することによってカニューレ90を通る所望の流出が達成されてよい。
【0053】
上記で指摘したように、閉塞性バルーン112の選択式の膨張は、ポンプ入口に戻る血液の一部、および患者へと流れる血液の一部を制御する。ポンプ入口は血液流に対する抵抗性の最も低い経路であるため、血液は、ポンプ入口へと再循環することを優先する。したがって、閉塞性バルーン112が膨張されるほど、より多くの流れが患者へと送達されることになる。別の方法で述べると、閉塞性バルーン112は、流出カニューレ90からポンプ10に戻る血液と、流入カニューレ80から入ってくる新しい血液と、の比率を決定する。ポンプ10の回転率が、ポンプ10を通って流れる血液の総量を決定する。流出カニューレ90に対するポンプ10の流量が高いほど、より多くの酸化が行われるため、高い流量が典型的には望まれる。同様に、同じ血液が酸素供給器20を複数回通過し、より高レベルの酸化を受けるため、再循環する血液の部分がより大きいほど、酸素供給器20はより小さくなる可能性がある。システム内で、陽圧ではなく、酸素の流れを推進するために真空源を使用することが時には望ましい場合がある。真空推進は、空気が血液内に出て行くのではなく、酸化繊維25の微小孔への血液の進入を支持する。
【0054】
本発明のポンプと酸素供給器のシステムの重大な性質は、ポンプ10、酸素供給器20、熱交換器40、およびバルーンカテーテル110のシステム動作を停止することなく、構成要素を容易に交換することができることである。これは、1つの要素を交換するためでもシステム全体を停止させる必要がある従来技術の主要な欠点の1つをなくす。これは、交換処置が行われた後、システムのその後の再度の呼び水動作を必要とした。本発明のこの「切り替え」機能は、酸素供給器要素の劣化が早いため、構成要素の交換が頻繁に必要とされる従来技術に対する大きな改善である。
【0055】
図9は、本発明の「切り替え」機能を達成する1つのやり方を示している。酸素供給器20は、例えば、柔軟な管75の内部に配置され、これは、シリコーンまたは同様の柔軟な医療用配管から作成されてよい。柔軟な管75の近位端には好ましくは、止血弁102に結合された通気ポート結合部76が備わっていてよい。柔軟な管75の遠位端は、クイックコネクト継手103a(雄)と嵌合され、クイックコネクト継手103b(雌)は、マニフォルド100のマニフォルド側ポート101に装着される。酸素供給器20をマニフォルド100に挿入するために、圧締め区画99(これは、柔軟な管75と同様の材料で作成される)が標準的な配管クランプを使用して圧締めされる。クイックコネクト継手103aがその後、クイックコネクト継手103bに結合されてよい(これにより、一体式のクイックコネクト結合部103を形成する)。クランプはその後、圧締め区画99から取り除かれてよく、このことは、血液を柔軟な管75および酸素供給器20内に押しやるように機能する。空気は、通気結合部76を通して柔軟な管75から取り除かれてよく、柔軟な管75を軽く叩く、もむ、こつこつ叩くことで、酸素供給器20内に閉じ込められたいかなる空気も放出することによって増やすことができる。全ての閉じ込められた空気を取り除いた後、酸素供給器20は、システム動作を中断することなく、クイックコネクト103および圧締め区画99を通してマニフォルド100内に進められてよい。
【0056】
酸素供給器20を点検または交換するために取り除くために、酸素供給器20は、酸素供給器20がクイックコネクト103を通り越すまで、酸素供給器のシース23を引っ張ることによって柔軟な管75の中に引き戻されてよい。圧締め区画99はその後、標準的な管クランプを使用して圧締めされてよい。この時点で、既存の酸素供給器20、柔軟な管75、通気結合部76および止血弁102が新たなセットによって置き換えられるように、クイックコネクト103は、そのクイックコネクト雄継手103aおよびクイックコネクト雌継手103bに分離されてよい。同じ取り外しの交換方法が、ポンプ10、熱交換器40またはバルーン方式に膨らんだカテーテル110など他の構成要素に対して使用されてよい。
【0057】
図10は、基部51、下部酸素供給器カートリッジ52、上部酸素供給器カートリッジ53、一体型のポンプ区画17および滅菌障壁54を含む体外システム8を備える、本発明による別のポンプと酸素供給器のシステムを例示している。図11a~図11bに示されるように、基部51は、2つの空洞を備え、すなわち上部酸素供給器区画57と、下部酸素供給器区画56であり、これらは、基部51の片側(本明細書では「頂部側」と呼ばれる)に配置され、上部酸素供給器カートリッジ53および下部酸素供給器カートリッジ52をそれぞれ収容するように成形される。基部51はまた、一体型ポンプ(図示略)も含み、これは、基部51の壁の内側に完全に封入され、基部51のポンプ区画17の内側に封入された一体型電気モータを備えた好ましくは遠心タイプの標準的な小型化された回転ポンプである。一体型ポンプ(図示略)の流入ポートは、下部酸素供給器区画56の反対側(本明細書では「底部側」と呼ばれる)に配置され、システム流出開口19に隣接するシステム流入開口18と直接連通している。滅菌障壁54は好ましくは、底部側で基部51の周辺に配設されて、患者の皮膚と境界面で接し、滅菌障壁54によって形成された内側領域と外側領域との間にシールを形成する接着材および/または発泡基材である。滅菌障壁54は好ましくは、いかなる生物も滅菌障壁の外側から内側に横切るのを阻止する濃縮された抗菌溶液および抗ウイルス性溶液を染みこませてもよい。滅菌障壁54は、可撓性材料で作成され、滅菌障壁54と患者の皮膚との間の接着を保証するためにその長さ全体に沿った吸引の使用(図示略)を可能にするように成形されてよい。
【0058】
図12aおよび図12bに示されるように、各酸素供給器カートリッジ(下部酸素供給器カートリッジ52および上部酸素供給器カートリッジ53)は、カートリッジ空洞43と連通しているカートリッジ流入部37およびカートリッジ流出部38を備える。(人工酸素供給器で典型的に使用されるタイプの)中空繊維の母材44が、血液濾過材、すなわち(バイパス手術中に血液を濾過するのに典型的に使用されるタイプの)フィルタメッシュ39の頂部に層状に重ねられる。母材44は、酸素混合物を、中空繊維の内部の内腔の中に、酸素流入ポート26を通して受け取り、いかなる気泡も母材44の中空繊維の外側表面を流れる血液に取り込むことなく、酸素および二酸化炭素を酸素流出ポート27に戻すように構成される。血液は、カートリッジを出て行く前にフィルタメッシュ39を通過して、患者の血液流の流れに入るまでにいかなる粒子も捕捉される。フィルタメッシュ39は、たいていは100マイクロメータを超え、好ましくは25マイクロメータを超えるサイズの粒子を捕捉するように設計されてよい。
【0059】
酸素供給器カートリッジ52、53はまた、熱交換器要素64を含んでよく、これは電気により加熱され得る熱抵抗器である。熱交換器要素64は、システム8を通って進むいかなる血液も加熱することが望まれるケースでは、下部酸素供給器カートリッジ52の頂部プレート65を加熱するのに主に使用される。上部酸素供給器カートリッジ53は、上記で言及したのと同じ目的のために熱交換器要素(図示略)が同様に備わっていてもよい。あるいは、マニフォルド設計(図示略)が下部酸素供給器カートリッジ52の頂部プレート65に組み込まれて、ユーザによって望まれる場合、システム8を通って循環する血液を冷却または加熱するために、冷却されたまたは加熱された流体の循環を可能にしてもよい。流体の冷却または加熱は、同じ目的のためにバイパス手術において使用される標準的なポンプと同様にミニチュアポンプによって循環されてもよい(図示略)。
【0060】
図13図15を参照すると、流入カニューレ80および流出カニューレ90は、プレート49に装着されてよい。プレート49は、好ましくは流入カニューレ80および流出カニューレ90の近位端をそれぞれ受け入れるように設計された2つの返し付き継手(流入返し付き継手48および流出返し付き継手47)を備える(図14は、1つのカニューレ接続しか示していないが、他方の接続も全く同じであるため、示されていない)。流入返し付き継手48および流出返し付き継手47は、PVC配管を配管コネクタに接続する際に使用される標準的な医療用コネクタにおいて使用される標準的な返し(図示略)を有してよい。加えて、プレート49は、プレート49を基部51に装着する前にカニューレ内部の血液およびカニューレの外側の空気を密閉する流入止血弁46および流出止血弁45を含んでもよい。流入止血弁46および流出止血弁45は共に、流入止血弁46および流出止血弁45内にそれぞれ剛性の管(例えばシステム流入部22およびシステム流出部21)の挿入を可能にするために、中央穿孔またはスリット(図示略)を有してもよい。基部51をプレート49に接続すると、システム流入部22およびシステム流出部21は、流入止血弁46および流出止血弁45とそれぞれ係合し、血液がそれぞれのカニューレ80、90から、および/またはそれぞれのカニューレ80、90へと自由に流れることを可能にする。
【0061】
図15をとりわけ参照すると、下部酸素供給器カートリッジ52は、カートリッジ流出部38を、流出止血弁45と同様に機能する下部区画止血弁62を通して押すことによって、下部酸素供給器区画56と適合し、システム流出開口19と係合するように設計されている。基本的に、下部酸素供給器カートリッジ52の取り外しは、下部区画止血弁62の完全な閉鎖、およびシステム8のマニフォルドの内側の血液および外側の空気の封じ込めを生じさせる。この設計によって、いかなる空気もシステム内に取り込むことなく、またはシステム動作を停止する必要なしに、いずれの酸素供給器カートリッジ(下部酸素供給器カートリッジ52および上部酸素供給器カートリッジ53)の交換も可能にする。機能を果たすようにシステム8を維持するために、一度に1つの酸素供給器カートリッジ52、53のみが変えられてよい。
【0062】
新しい酸素供給器カートリッジ52、53を挿入する前に、それぞれの止血弁62、63の近傍でのいかなる空気も取り除くために、それぞれの酸素供給器区画56、57は、滅菌流体(例えば滅菌生理用食塩水)で満たされてよい。これは、カートリッジ交換中にシステムに空気を取り込む可能性をなくすために行われる。加えて、酸素供給器カートリッジ52、53は、ユーザに滅菌性を与え、システム8に接続する前にいかなる空気も取り除くために滅菌流体によって呼び水されてよい。接続前の酸素供給器カートリッジ52、53からのいかなる空気の除去もさらに保証するために、流体ですでに満たされている適切な酸素供給器区画56、57へと部分的に挿入された状態で、流体が酸素供給器カートリッジ52、53内で循環されてよい。このステップは、酸素供給器カートリッジ52、53を接続する前に、システム8からいかなる空気も外部の大気へと押し流すことになる。小さな循環ポンプ(図示略)が、このステップに使用されて、使用前に酸素供給器カートリッジ52、53に完全に呼び水してもよい。
【0063】
図16は、患者の自由な動きを可能にするために患者の胸に装着されたシステム8を例示している。制御、電力、酸素および他の機能(例えば加熱流体または冷却流体を循環させるための小さいポンプなど)をシステム8に提供し得るバックパック(図示略)が、患者によって着用されてよい。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態によると、発明の機能(例えばポンプ速度、酸素ガス量送達、血液の加熱など)の多くを制御し、システムの適切な性能を指示する多くの診断センサを制御する電子コントローラが必要とされる。そのようなコントローラの特性は、当業者に共有される。
【0065】
当業者は、単なる慣例の実験を使用して、本明細書に記載される発明の特有の実施形態に対する多くの均等物を認識する、または確認することが可能である。加えて、当然のことながら、種々の修正が、上記に例示した好ましい実施形態において行われる場合もあること、ならびにこのような修正は、本発明の精神および範囲から実際に逸脱することなく行われてよいことを理解されたい。
【符号の説明】
【0066】
8 体外システム
10 ポンプ
11 ロータ
12 ハウジング
13 シース
14 駆動ケーブル
17 ポンプ区画
18 流入開口
19 流出開口
20 酸素供給器
21 システム流出部
22 システム流入部
23 シース
25 酸素供給器繊維、酸化繊維
26 酸素流入ポート
27 酸素流出ポート
28 流入内腔
29 流出内腔
30 気泡トラップ
31 通気ポート
32 入口ポート
33 出口ポート
34 メイン空洞
35 酸素区画
36 そらせ板
37 気泡捕捉区画
37 カートリッジ流入部
38 カートリッジ流出部
39 フィルタメッシュ
40 熱交換器
41 二重内腔カテーテル
42 加熱繊維
43 カートリッジ空洞
44 母材
45 流出止血弁
46 流入止血弁
47 流出返し付き継手
48 流入返し付き継手
49 プレート
50 追加のポンプ
51 基部
52 下部酸素供給器カートリッジ
53 上部酸素供給器カートリッジ
54 滅菌障壁
56 下部酸素供給器区画
57 上部酸素供給器区画
60 リザーバ
62、63 止血弁
64 熱交換器要素
65 頂部プレート
70 再循環流量計
70´ 流出流量計
75 柔軟な管
76 通気ポート結合部
80 流入カニューレ
90 流出カニューレ
99 圧締め区画
100 マニフォルド
101、101´、101´´ マニフォルドポート、マニフォルド側部ポート
102、102´、102´´ 止血弁
103、103´ クイックコネクト結合部
103a クイックコネクト雄継手
103b クイックコネクト雌継手
104 メイントランク
105 サイドトランク
106 サイドトランクの遠位端
107 サイドトランクの近位端
108 メイントランクの近位端
109 メイントランクの遠位端
110 バルーンカテーテル、バルーン方式に膨らんだカテーテル
111 カテーテルシャフト
112 閉塞性バルーン
図1
図2
図3
図3a
図4
図5
図6
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12(a)】
図12(b)】
図13
図14(a)】
図14(b)】
図15
図16