(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】飲食品用抗菌剤組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 3/3472 20060101AFI20240829BHJP
A23L 3/3508 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A23L3/3472
A23L3/3508
(21)【出願番号】P 2020066296
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591021028
【氏名又は名称】奥野製薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150326
【氏名又は名称】樋口 知久
(72)【発明者】
【氏名】峰 正樹
(72)【発明者】
【氏名】黒瀧 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】松元 一頼
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103478236(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105613709(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109907106(CN,A)
【文献】特開2005-237324(JP,A)
【文献】特表2018-505679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0251700(US,A1)
【文献】国際公開第2016/104238(WO,A1)
【文献】特開平10-136955(JP,A)
【文献】特開2013-153670(JP,A)
【文献】特開2005-154323(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0048302(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/3472
A23L 3/3508
(57)【特許請求の範囲】
【請求項6】
飲食品の日持ちを向上させる方法であって、
該飲食品またはその原材料に対して請求項1から5のいずれかに記載の飲食品用抗菌剤組成物を適用する工程を含む、方法。
【請求項7】
前記飲食品またはその原材料の総重量100重量部に対して、前記飲食品用抗菌剤組成物中のザクロエキスおよび食酢の合計量が0.01~10重量部である、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品用抗菌剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品の製造時や保存中における、腐敗、劣化に関与する微生物の発生やその増殖を抑制するために、種々の抗菌剤が提案されている。抗菌剤の有効成分については、安全性が高く食経験の豊富なものが求められ、例えば、エタノール、グリシン、有機酸およびその塩(例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸、乳酸)などが用いられている。
【0003】
例えば、酢酸および酢酸ナトリウムには食品へのカビ抑制効果があることが知られている。しかし、カビ抑制効果をより高いものとするために配合量を増量すると、製剤自体の酸臭が強まり、最終飲食品に強い酸味や酸臭が付与されてしまう。
【0004】
したがって、抗菌剤の有効成分の使用に当たっては、使用する飲食品本来の風味、香り、粘度等に対する影響を与えにくい成分を選択するか、有効成分使用量を可能な限り減らして使用することが行われている。
【0005】
さらに、飲食品の腐敗、劣化に関与する微生物としては、細菌やカビに加え、酵母も挙げられる。よって、このような広範な範囲の微生物に対して抗菌効果を発揮する抗菌剤が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低濃度であっても、広範な範囲の微生物に対して有効な飲食品用抗菌剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ザクロエキスおよび食酢を有効成分として含有する飲食品用抗菌剤組成物を提供する。
【0008】
1つの実施形態では、上記ザクロエキスのポリフェノール量は、0.5(w/w)%~85(w/w)%である。
【0009】
1つの実施形態では、上記食酢1重量部に対して、前記ザクロエキスは0.01重量部~100重量部である。
【0010】
1つの実施形態では、上記食酢の酸度は酢酸換算で2%~40%である。
【0011】
1つの実施形態では、上記食酢は醸造酢であり、前記酸度が酢酸換算で4~40%である。
【0012】
本発明は、飲食品の日持ちを向上させる方法を提供し、この方法は、該飲食品またはその原材料の総重量100重量部に対して、上記記載の飲食品用抗菌剤組成物を適用する工程を含む。
【0013】
1つの実施形態では、上記飲食品またはその原材料の総重量100重量部に対して、前記飲食品用抗菌剤組成物中のザクロエキスおよび食酢の合計量は0.01~10重量部である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低濃度であっても、広範な範囲の微生物に対して抗菌効果を発揮することができる。よって、本発明の飲食品用抗菌剤組成物は、飲食品本来の風味、香り、粘度等に有害な影響を及ぼすことなく、飲食品に対して用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書中において「抗菌」とは、微生物の増殖または生育を制御する作用効果をいう。本発明の飲食品用抗菌剤組成物(本明細書中において「抗菌剤組成物」ともいう)の抗菌効果が発揮され得る微生物は特に限定されず、本発明の抗菌剤組成物は、細菌類(耐熱菌、大腸菌群など)および真菌類(酵母、カビなど)に対して抗菌性を示し得る。抗菌効果が発揮され得る微生物として、例えば、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)などの細菌、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・カカオイ(Candida cacaoi)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)などの不完全酵母、ウィッカーハモマイセス・アノマルス(Wickerhamomyces anomalus)などの酵母が挙げられる。
【0016】
ザクロ(セキリュウ、石榴とも呼ばれ、学名Punica granatu mL.、英名Pomegranate)は、ザクロ科の植物であり、原産地の中近東だけでなく亜熱帯地方で広く栽培されている。本明細書における用語「ザクロエキス」は、ザクロ生果(未乾燥果実)または果実乾燥物をそのまま、あるいは破砕または粉砕して、溶媒で抽出して得られる抽出物およびザクロ生果(未乾燥果実)または果実乾燥物を圧搾して得られる果汁を包含して言う。ザクロエキスの調製に使用されるザクロの部位としては、果実全体またはその一部(例えば、果皮、果肉、種皮及び種子)のいずれであってもよい。抽出に用いる溶媒としては、例えば、水またはエタノール、あるいはこれらの混合物である。
【0017】
ザクロエキスは次のようにして製造することができる。ザクロ果実1重量部に対して上記溶媒を例えば1重量部~50重量部、好ましくは5重量部~25重量部にて常温で撹拌しながら、必要に応じて加温して成分を溶出させ、濾過して不溶物を除去して濾液を回収し、液状のザクロエキスを得ることができる。必要に応じて濾液を常圧または減圧濃縮して溶媒を留去してもよい。あるいは、濾液を例えば凍結乾燥することにより、固形状のザクロエキス(例えば粉末)を得ることもできる。本発明においては、液状のザクロエキスまたは固形状のザクロエキス(例えば粉末)、あるいはこれらの混合物であってもよい。必要に応じて本抽出物をシリカゲルおよび逆相カラムクロマトグラフにより精製してもよい。
【0018】
本発明に用いられるザクロエキスは、そのポリフェノール量が例えば、0.5(w/w)%~85(w/w)%、好ましくは5(w/w)%~70(w/w)%である。本明細書におけるザクロエキスの「ポリフェノール量」はフォーリンチオカルト法にて算出された没食子酸換算としてのポリフェノール量をいう。フォーリンチオカルト法では、フェノール性水酸基の還元作用により、試薬の色調を変化させ吸光度で測定する。例えば、液状のザクロエキスの濃縮または凍結乾燥によって、より高いポリフェノール量のザクロエキスを得ることができる。ポリフェノール量が上記範囲内にあることにより、ザクロエキスの抗菌性がより良好に発揮され得る。
【0019】
「食酢」とは酢酸を主成分とする酸味調味料をいい、醸造酢および合成酢を包含する。「醸造酢」とは、穀物、果実等の農産品を糖化およびアルコール発酵、または、アルコールを起源として、さらに酢酸菌を加えて酢酸発酵させて得られる酢をいう。醸造酢は発酵させる原材料の種類によって穀物酢、果実酢などに分類されるが、本発明においては、当該原材料の種類は特に限定されない。「合成酢」とは、氷酢酸または酢酸の希釈液に、砂糖類、酸味料、調味料(アミノ酸等)、食塩等を加えた液体調味料、もしくはそれに醸造酢を加えたものをいう。1つの実施形態では、食酢は醸造酢である。醸造酢は、風味の点で好ましい。食酢の「酸度」は、日本農林規格第4条に規定された測定方法に基づいて、酢酸換算値として決定される。本発明で用いられる食酢の酸度は、例えば、2%~40%、好ましくは4%~30%である。醸造酢は、日本農林規格上では酸度が4%以上であることから、食酢が醸造酢の場合、酸度は、例えば、4%~40%、好ましくは4%~30%である。酸度の下限が2%を下回ると、十分な抗菌効果が得られないおそれがあり、酸度が40%を超えると、飲食品に対して酸味を生じさせるおそれがある。
【0020】
ザクロエキスと食酢との配合比は、食酢の酸度および種類ならびにザクロエキスのポリフェノール量を考慮して決定することができる。ザクロエキスと食酢との配合比は、食酢の酸度およびザクロエキスのポリフェノール量に依存するが、食酢1重量部に対して、ザクロエキスが、例えば、0.01重量部~100重量部、好ましくは0.05重量部~50重量部である。ザクロエキスの量は、液状のザクロエキスの場合、液体および固形分の合計量であり、あるいは固形状のザクロエキス(例えば粉末)である場合、固形分全体の量である。例えば、酸度9.3の醸造酢とザクロエキス粉末(例えばポリフェノール量68.5%)である場合、醸造酢1重量部に対して、ザクロエキスが、例えば、0.01重量部~100重量部、好ましくは0.05重量部~50重量部である。酸度がより高いほど用いる食酢の量は少なくすることができる。ポリフェノール量がより高いほど用いるザクロエキスの量を少なくすることができる。
【0021】
本発明の抗菌剤組成物は、ザクロエキスと食酢とを混合することにより製造することができる。抗菌剤組成物は、固形状(例えば、粉末または顆粒)、液状、ペースト状のいずれの形態の製剤であってもよい。ザクロエキスと食酢との混合は、液状で混合もしくは当該混合後に例えばスプレードライによって粉末状とする、一方が液状であり他方が固形状である場合に固形状物を液状のまたは各々粉末状にして混合するなど、混合の様式は問わない。抗菌剤組成物は、ザクロエキスおよび食酢である有効成分に加えて、例えば、pH調整剤、乳化剤または分散剤、賦形剤、糖類、保存料、日持向上剤、酸味料、調味料、アルコール、甘味料、増粘剤、酸化防止剤、着色料、香料、香辛料、食塩、アミノ酸などの飲食品または食品添加物に許容され得る他の成分を含んでもよい。抗菌剤組成物中の他の成分の含有量は、抗菌剤組成物の抗菌効果に有害な影響を与えない範囲において、当業者によって適宜設定され得る。本発明の抗菌剤組成物は、公知の抗菌性成分をさらに含むものであってもよく、このような抗菌性成分としては、エタノール、グリシン、グリセリン脂肪酸エステル、チアミンラウリル硫酸塩、リゾチーム、ポリリジン、安息香酸、プロピオン酸、ソルビン酸、有機酸およびその塩(例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸、乳酸、フマル酸一ナトリウム)などが挙げられる。
【0022】
上記のように得られた抗菌剤組成物は、飲食品の製造に際して添加され得る。本明細書中で「飲食品」とは、食品および飲料を包含していう。本発明の抗菌剤組成物は、例えば、飲食品の製造に際して、その食品の原材料または食品に添加して用いることができる。このような飲食品としては、特に限定されないが、例えば、惣菜類、カット野菜、野菜サラダ、ボイル後野菜、ボイル後魚介類(例えば、エビ、貝類)、ボイル後肉類、米飯類、麺類・餃子皮・パン等の穀粉(例えば小麦粉)加工品、穀粉、菓子・ケーキ類(例えば、洋菓子、和菓子、中華菓子など)、飴類(例えばキャラメル)、冷菓(例えば、アイスクリーム、アイスミルク、氷菓、ゼリーなど)、グミ、米飯、惣菜、汁物、スープ、めんつゆ(例えばうどんつゆ、そばつゆなど)、ソース、たれ、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、ハム・ソーセージ類、畜産加工品、水産練り製品、水産加工品、農産・林産加工食品、乳・乳製品、油脂・油脂加工品、冷蔵食品、冷凍食品、調味料、酒類、清涼飲料(例えば、ジュース、コーヒー、茶、麦芽飲料、発泡飲料)などが挙げられる。食品の「原材料」として、食品の製造に通常用いられる食物(例えば、穀類(米、パン、麺等)、魚、肉、卵、乳製品、豆類、野菜、果物、きのこ等)、調味料(砂糖、塩、酢、醤油、味噌等)などが挙げられる。
【0023】
本発明の抗菌剤組成物は、飲食品の日持ち向上剤として使用することができる。「日持ち向上剤」とは、日持ち向上剤を添加していないと比較して、無添加の場合と比較して、微生物の増殖および生育を制御することにより、食品の品質の維持を一定期間(例えば、食品の種類および保存温度に依存し得るが、例えば、25℃にて数日間、10~15℃保存にて数週間)延長することができる。
【0024】
本発明の抗菌剤組成物の飲食品への適用量は、飲食品の原材料の種類、食酢の酸度およびザクロエキスのポリフェノール量などによって変動するため、必ずしも限定されない。本発明の抗菌剤組成物は、飲食品全量またはその原材料合計100重量部に対し、ザクロエキスと食酢との合計量が例えば0.01重量部~10重量部、好ましくは0.05重量部~5重量部であるように添加され得る。食酢の酸度が高い場合、および/またはザクロエキスのポリフェノール量が多い場合は、ザクロエキスおよび/または醸造酢の飲食品への適用量を減らすことができる。
【0025】
飲食品への抗菌剤組成物の適用のために、種々の方法が採用され得る。例えば、抗菌剤組成物が適用時に液状形態(例えば、溶液(例えば、水溶液)または懸濁液)である場合、抗菌剤組成物を含む浴中に飲食品または飲食品の原材料を浸漬する、および/または抗菌剤組成物で飲食品または飲食品の原材料食物を塗布もしくは噴霧する方法が採用され得る。例えば、抗菌剤組成物が適用時に液状、ペースト状もしくは粉末状、これらの混合形態である場合、例えば、飲食品または飲食品の原材料食物に抗菌剤組成物を添加し、必要に応じて混合または練り込みを行う方法が採用され得る。
【0026】
本発明によれば、上記のような抗菌剤組成物を含む飲食品が提供される。本発明によれば、飲食品の日持ちを向上させる方法をさらに提供する。
【0027】
本発明の飲食品の日持ちを向上させる方法は、該飲食品またはその原材料に対して上記の飲食品用抗菌剤組成物を適用する工程を含む。この適用する工程は上述の通りである。
【0028】
本発明によれば、飲食品に酸味や酸臭などの有害な影響を与えることなく、抗菌性を示す飲食品用抗菌剤組成物を製造することができる。本発明の飲食品用抗菌剤組成物は、広範囲の微生物に対して抗菌性を示し、よって飲食品の日持ち向上効果を一層高めることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0030】
(調製例1:ザクロ抽出物の調製方法)
ザクロの生果実(カリフォルニア産)をフードプロセッサーで粉砕し、ザクロ粉砕物の全量を1重量部とした場合に対して水10重量部を加えて80℃に加温し、抽出した。この抽出物を室温程度に冷却した後、吸引ろ過にて原材料および不溶性成分を除去してザクロ抽出液(ザクロエキス)を得た。得られたザクロ抽出液をハロゲン水分計に供して固形分含量を測定したところ抽出液中の固形分は5.0%であった。
【0031】
このザクロ抽出液の一部を、噴霧乾燥機に供して粉末化し、ザクロエキス粉末を得た。ザクロエキス粉末のポリフェノール量を測定例1に基づいて測定したところ、ポリフェノール量は68.5(w/w)%であった。
【0032】
残りの液体は適宜濃縮して使用した。ザクロ抽出液(ザクロエキス)のポリフェノール量を測定例1に基づいて測定したところ、ポリフェノール量は3.4%であった。このザクロ抽出液(ザクロエキス)を段階的に減圧濃縮し、ポリフェノール量が12.5(w/w)%、30.3(w/w)%、43.6(w/w)%のエキスを調製した。
【0033】
(測定例1:ザクロエキスのポリフェノール測定)
ザクロエキスを段階希釈し、固形分として100ppmとなるように調整した。調整した液を試験管に2mLずつ分注し、フォーリンチオカルト試薬5mLを加え、撹拌後5分間静置した。次いで7.5重量%炭酸ナトリウム水溶液を4mL加え、撹拌後60分間静置した後、765nmの吸光度を測定した。得られた吸光度を、没食子酸で作製した検量線を用いて、ポリフェノール量として算出した。
【0034】
(試験例1:炊飯米における抗菌性試験方法)
生米100gに水140g、醤油10gおよび製剤4gを加え、30分間浸漬し、炊飯器で炊飯した後、室温で放冷した。以下の菌種を炊飯米に接種し、25℃にて保存し、菌数を計測した:バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)(細菌)(100CFU/mL)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(不完全酵母)(10CFU/mL)、ウィッカーハモマイセス・アノマルス(Wickerhamomyces anomalus)(酵母)(10CFU/mL)。
【0035】
(試験例2:かまぼこにおける抗菌性試験方法)
スケソウダラ陸上2級64.5g、馬鈴薯澱粉1.4g、砂糖3.2g、食塩1.9g、氷水29.0gおよび製剤4.0gを混合し、90℃にて60分間加熱し、かまぼこを作製した。バチルス・スブチリス(細菌)(100CFU/mL)をかまぼこに接種し、25℃にて保存し、菌数を計測した。カンジダ・アルビカンス(不完全酵母)(10CFU/mL)およびウィッカーハモマイセス・アノマルス(酵母)(10CFU/mL)のいずれかをかまぼこに接種し、15℃にて保存し、菌数を計測した。
【0036】
(実施例1-1~1-6および比較例1-1~1-2)
酸度が9.3である醸造酢(食酢)を使用して、以下の表1に示す組成にて製剤を調製した。製剤E1-1~E1-6については、醸造酢、ザクロエキス粉末および水を撹拌混合した(実施例1-1~1-6)。製剤C1-1については、醸造酢および水を撹拌混合した(比較例1-1)。製剤C1-2については、ザクロエキス粉末および水を撹拌混合した(比較例1-2)。
【0037】
【0038】
各製剤を試験例1の抗菌性試験方法に供した。結果を以下の表2~4に示す。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
ザクロエキスと醸造酢とを含む製剤E1-1~E1-6(実施例1-1~1-6)は、醸造酢単独の製剤C1-1およびザクロエキス単独の製剤C1-2(比較例1-1および1-2)に比べて、バチルス・スブチリス(細菌)(表2)、カンジダ・アルビカンス(不完全酵母)(表3)およびウィッカーハモマイセス・アノマルス(酵母)(表4)のいずれの場合とも炊飯米における菌数の増殖が抑制され、優れた抗菌性を示した。製剤E1-6、製剤C1-1および製剤C1-2は製剤の抗菌成分が同量(25重量部)であるが、ザクロエキスと醸造酢とを含む製剤E1-6が、醸造酢およびザクロエキスのいずれかを単独で含む製剤C1-1および製剤C1-2と比較して優れた抗菌性を示した。
【0043】
(実施例2-1~2-10および比較例2-1~2-4)
酸度が4.2、9.3、18.0または30.0である醸造酢あるいは酸度が4.2または30.0である合成酢を使用して、以下の表5に示す組成にて製剤を調製した。製剤E2-1~E2-7については、醸造酢、ザクロエキス粉末および水を撹拌混合し(実施例2-1~2-7)、製剤E2-8~E2-10については、合成酢、ザクロエキス粉末および水を撹拌混合した(実施例2-8~2-10)。製剤C2-1~C2-4については、醸造酢および水を撹拌混合し(比較例2-1~2-4)、製剤C2-5~C2-6については、合成酢および水を撹拌混合した(比較例2-5~2-6)。製剤C2-7については、ザクロエキス粉末および水を撹拌混合した(比較例2-4)。
【0044】
【0045】
各製剤を試験例1の抗菌性試験方法に供した。結果を以下の表6~8に示す。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
ザクロエキスと醸造酢とを含む製剤E2-1~E2-7(実施例2-1~2-7)ザクロエキスと合成酢とを含む製剤E2-8~E2-10(実施例2-8~2-10)は、醸造酢または合成酢単独の製剤C2-1~C2-6およびザクロエキス単独の製剤C2-7(比較例2-1~2-7)に比べて、バチルス・スブチリス(細菌)(表6)、カンジダ・アルビカンス(不完全酵母)(表7)およびウィッカーハモマイセス・アノマルス(酵母)(表8)のいずれの場合とも炊飯米における菌数の増殖が抑制され、優れた抗菌性を示した。製剤E2-2、製剤E2-5、製剤E2-7、製剤E2-10、製剤C2-1~C2-7は製剤の抗菌成分が同量(25重量部)であるが、ザクロエキスと食酢(醸造酢または合成酢)とを含む製剤E2-2、製剤E2-5、製剤E2-7および製剤E2-10が、食酢およびザクロエキスのいずれかを単独で含む製剤C2-1~C2-7と比較して優れた抗菌性を示した。
【0050】
(実施例3-1~3-5および比較例3-1~3-3)
酸度が9.3である醸造酢を使用して、以下の表9に示す組成にて製剤を調製した。ザクロエキスとしては、ポリフェノール量が3.4(w/w)%、12.5(w/w)%、30.3(w/w)%および43.6(w/w)%のいずれかのザクロエキス(抽出液)、あるいはザクロエキス粉末(ポリフェノール量68.5(w/w)%)を用いた。製剤E3-1~E3-5については、醸造酢、ザクロエキス粉末またはザクロエキス、および水を撹拌混合した(実施例3-1~3-5)。製剤C3-1については、醸造酢および水を撹拌混合した(比較例3-1)。製剤C3-2~C3-3については、ザクロエキスまたはザクロエキス粉末および水を撹拌混合した(比較例3-2~3-3)。
【0051】
【0052】
各製剤を試験例2の抗菌性試験方法に供した。結果を以下の表10~12に示す。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
ザクロエキスと醸造酢とを含む製剤E3-1~E3-5(実施例3-1~3-5)は、醸造酢単独の製剤C3-1およびザクロエキス単独の製剤C3-2~C3-3(比較例3-1~3-3)に比べて、バチルス・スブチリス(細菌)(表10)、カンジダ・アルビカンス(不完全酵母)(表11)およびウィッカーハモマイセス・アノマルス(酵母)(表12)のいずれの場合ともかまぼこにおける菌数の増殖が抑制され、優れた抗菌性を示した。
【0057】
(実施例4-1~4-4)
酸度が9.3である醸造酢とザクロエキス粉末とを使用して、以下の表13に示す組成にて製剤を調製した。製剤E4-1~E4-4について、醸造酢、ザクロエキス粉末またはザクロエキス、および水を撹拌混合した(実施例4-1~4-4)。
【0058】
【0059】
製剤をかまぼこ全重量に対して1重量%で添加してかまぼこを作製し、試験例2の方法で抗菌性を評価した。結果を以下の表14~16に示す。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
ザクロエキスと醸造酢との配合割合がいずれの場合でも、バチルス・スブチリス(細菌)(表14)、カンジダ・アルビカンス(不完全酵母)(表15)およびウィッカーハモマイセス・アノマルス(酵母)(表16)のいずれの場合ともかまぼこにおける菌数の増殖が抑制され、優れた抗菌性を示した。特に、試験した中では、ザクロエキスと醸造酢とが1:1(重量比)の製剤E4-2の場合に、最も良好な抗菌性が観察された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、例えば、食品添加剤および食品の製造分野、ならびに食品加工分野において有用である。