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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240829BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240829BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/23
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020198571
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086514
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】萩原 充紀
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-091463(JP,A)
【文献】特開2012-078736(JP,A)
【文献】特開2004-170879(JP,A)
【文献】特開2020-134633(JP,A)
【文献】特開2013-024921(JP,A)
【文献】特開2020-129069(JP,A)
【文献】特開平05-008661(JP,A)
【文献】特開2011-053386(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102018213820(DE,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0042317(KR,A)
【文献】特開2013-047021(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017211507(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
G02B 5/04
G02F 1/1335
B60K 35/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認者に視認させる画像に係る表示光を出射する表示ユニットと、
前記表示ユニットを収容し、前記表示光を通過させる開口を有するケースと、
前記表示光を透過させて前記開口を覆う保護カバーと、
前記保護カバーと前記表示ユニットとの間に配置され、透過する前記表示光の方向を変更する表示光制御層と、を有し、
前記表示光制御層は、透明な基部と、前記基部中に配置され前記基部とは屈折率が異なり透過する前記表示光の方向を変更する透明な屈折部と、を有するフィルムからなり、
前記ケースは、搭載先のインストルメントパネル内に配置され、
前記表示ユニットは、前記搭載先のウインドシールドに投影及び反射し前記視認者に視認させる前記表示光を出射する、表示装置。
【請求項2】
前記表示光制御層は、前記表示ユニット及び前記保護カバーに接着層を介して固定される、請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示光制御層は、前記保護カバーに透明な樹脂からなるオプティカルボンディング層を介して固定され、前記表示ユニットに粘着材からなる粘着材層を介して固定される、請求項2記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両等に搭載される表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイは、車両に搭載され、運転者に運転に必要な情報等の種々の情報をウインドシールド等の投影部材に投影する。今日、情報量の増加や情報の種類の多様化に伴い、運転者へ提供する画像の表示方法も多様化している。例えば、画像を任意の位置に表示させたり、傾きを持たせて表示させたりすることが求められる。これらの表示制御は、例えば、画像に係る表示光を、プリズムレンズ等の反射手段を透過させることにより反射させ、任意の方向や角度に変更する方法や、表示装置のインストルメントパネル内の配置を工夫する方法等を用いて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-047021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転者に対する画像の視認性のため、表示装置には、表示光の輝度を低下させるとなく投影することが求められる。
【0005】
本開示はこのような事情を考慮してなされたもので、所望の位置に視認性よく画像を投影できる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の表示装置は、上述した課題を解決するために、視認者に視認させる画像に係る表示光を出射する表示ユニットと、前記表示ユニットを収容し、前記表示光を通過させる開口を有するケースと、前記表示光を透過させて前記開口を覆う保護カバーと、前記保護カバーと前記表示ユニットとの間に配置され、透過する前記表示光の方向を変更する表示光制御層と、を有し、前記表示光制御層は、透明な基部と、前記基部中に配置され前記基部とは屈折率が異なり透過する前記表示光の方向を変更する透明な屈折部と、を有するフィルムからなり、前記ケースは、搭載先のインストルメントパネル内に配置され、前記表示ユニットは、前記搭載先のウインドシールドに投影及び反射し前記視認者に視認させる前記表示光を出射する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の表示装置においては、所望の位置に視認性よく画像を投影できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の表示装置の実施形態であって、車両に搭載された表示装置を示す説明図。
図2】表示装置の構造を説明するための断面図。
図3】表示光制御層を説明する断面図。
図4】他の表示光制御層を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の表示装置の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本開示の表示装置は、例えば自動車や二輪車等の車両や、船舶、農業機械、建設機械に搭載される表示装置に適用することができる。表示装置は、搭載先のインストルメントパネル内に配置され、ウインドシールドに実像又は虚像を表示し、視認者に視認させる。本実施形態においては、表示装置が搭載先としての自動車のインストルメントパネル内に配置される例を用いて説明する。
【0010】
図1は、本開示の表示装置の実施形態であって、車両に搭載された表示装置1を示す説明図である。
図2は、表示装置1の構造を説明するための断面図である。
【0011】
表示装置1は、いわゆるヘッドアップディスプレイ(HUD(Head Up Display))であり、投影部材である車両のウインドシールド3に表示光2を投影し、自動車の運転者4(視認者)方向に反射させる。表示装置1は、特に、ウインドシールド3の周囲に形成される遮光部3aに表示光2を投影、反射し、運転者4に視認させる。
【0012】
遮光部3aは、黒セラミックス等からなる黒色等の遮光色からなる部分である。遮光部3aは、ウインドシールド3を車両に固定する接着剤の太陽光による劣化の防止や、接着剤の隠蔽、意匠性の向上等を目的に形成される。
【0013】
表示装置1は、ケース10と、保護カバー20と、表示ユニット30と、表示光制御層40と、を有する。
【0014】
ケース10は、表示ユニット30を支持し、収容する。ケース10は、例えば遮光性を有する合成樹脂(例えば黒色のポリプロピレン)からなる。ケース10は、ウインドシールド3に対面する部分に、表示光2を通過させる開口11を有する。ケース10は、インストルメントパネル5内に設けられた空間に配置されるための、取付構造(図示せず)も有する。ケース10は、例えば、インストルメントパネル5の表面5aに対して、開口面(保護カバー20)が平行になるように配置される。
【0015】
保護カバー20は、透光性を有する合成樹脂(例えば無機ガラス、ポリカーボネート樹脂、PMMA樹脂)からなる板状部材である。保護カバー20は、ケース10の開口11を覆うことにより、ケース10の内部の表示ユニット30を水分や塵埃等から保護する。
【0016】
表示ユニット30は、表示パネル31と、バックライトユニット32と、を有する。
【0017】
表示パネル31は、表示ユニット30の前面側に配置される。表示パネル31は、例えばTFT(Thin Film Transistor)方式の液晶表示パネルである。表示パネル31は、液晶層を封入する一対のガラス基板を有する。一対のガラス基板には、ITO(Indium Tin Oxide)等により透明電極が形成される。また、表示パネル31は、一対のガラス基板を挟み込むように配置された一対の偏光板(偏光フィルタ)を有する。
【0018】
表示パネル31は、FPC(Flexible Printed Circuits、図示せず)を介して、表示装置1とは別途設けられる回路基板(図示せず)に接続される。表示パネル31は、回路基板のグラフィックコントローラ等の制御部により制御されることにより、透明電極を介して液晶層に駆動電圧が印加される。液晶層は、液晶分子の配向が制御され個々の画素の透過率を変化させる。
【0019】
バックライトユニット32は、表示パネル31の後方に配置される。バックライトユニット32は、光源基板33と、光学シート34と、を有する。光源基板33は、複数のLED(Light Emitting Diode)35を有する。光源基板33は、FPCを介して上述した回路基板と接続される。LED35は、駆動電流が供給されると、光を出射する。光学シート34は、例えば光を拡散するプリズムシート等である。LED35から出射された光は、光学シート34を経て、表示パネル31を照明する。これにより、表示ユニット30は、視認者に視認させる画像に係る表示光2を出射する。
【0020】
表示光制御層40は、保護カバー20と表示ユニット30との間に配置され、透過する表示光2の方向を変更する。ここで、図3は、表示光制御層40を説明する断面図である。表示光制御層40は、基部41と、屈折部42と、フィルム46と、を有する、フィルム状の部材である。
【0021】
基部41、屈折部42及びフィルム46は、互いに屈折率の異なる透明な合成樹脂からなる。基部41及び屈折部42は、偏光サングラスを着用した場合の虹ムラの発生を防止するため、リタデーション(位相差)の低いPMMA、ポリカーボネート、TAC(Triacetylcellulose)等からなることが好ましい。
【0022】
屈折部42は、例えば、表示光制御層40の表示光2の入射面44から出射面45にかけて細くなるような断面三角形状の凸状を有する。基部41は、略同一形状の複数の屈折部42を、表示光制御層40の面内の一方向(図3における左右方向)に亘って一定の間隔で離間させて均一に配置する。これにより、表示光制御層40は、所定範囲内の入射角で入射面44から入射した表示光2aについては、方向を変更することなく基部41を通過させ、出射面45から出射する。一方、表示光制御層40は、所定範囲外の入射角で入射面44から入射した表示光2bについては、屈折部42において反射して方向を変更し、表示光2aの出射角度と略平行となるような所定の角度で出射面45から出射する。表示光制御層40は、表示装置1から出射される表示光2の出射方向に応じて設計される。具体的には、表示光2が遮光部3aに向って出射されるよう、屈折部42の形状や光学特性等が決定される。
【0023】
表示光制御層40は、出射面45側において、オプティカルボンディング層51(接着層)を介して、保護カバー20に固定される。オプティカルボンディング層51は、透明な合成樹脂(例えばシリコーン系、ウレタン系、又はアクリル系樹脂)からなる。表示光制御層40は、入射面44側において、粘着材からなる粘着材層52(接着層)を介して、表示パネル31に固定される。
【0024】
尚、オプティカルボンディング層51と粘着材層52とは、逆に配置されてもよい。しかしながら、表示パネル31と表示光制御層40との距離が近い方が画像が二重に表示(視認)されることを低減できるため、図3のような態様が好ましい。
【0025】
このような表示装置1は、表示装置1から出射される表示光2の方向を、表示光制御層40で任意に設定できる。これにより、表示装置1は、ウインドシールド3の所望の位置に向けて表示光2を出射でき、多様な情報を多様な方法で表示できる。
【0026】
例えば、屈折部42が黒色などの合成樹脂で形成される場合、これが視認者に黒い線状に視認されて表示品位の低下を招いてしまう。これに対し、本表示装置1は、屈折部42は透明な合成樹脂で形成されるため、視認者に黒い線状部分を視認させることが無い。
【0027】
また、屈折部42が黒色などの合成樹脂で形成される場合、屈折部42で反射する表示光2bの一部は反射する際に吸収され、反射率の低下を招いてしまう。これに対し、本表示装置1は、屈折部42は透明な合成樹脂で形成されるため、一部の光が吸収されることが無い。
【0028】
例えば、バックライトユニット32から出射される光の方向をプリズムレンズ等により制御し、表示パネル31に入射させることも考えられるが、表示パネル31に斜めに光が入射されると画像の輝度が大幅に低下する。また、表示パネル31の裏面とプリズムレンズとの間に空気層が形成されるので、表示パネル31の裏面及びプリズムレンズの前面において光の屈折による透過損失が生じて画像の輝度が低下する。これに対し、表示装置1は、表示パネル31より出射された表示光2の方向を表示光制御層40により制御するため、屈折に伴う表示光2の輝度の低下を低減でき、画像の視認性において優れる。
【0029】
さらに、表示装置1は、出射方向を任意に設定できるため、表示装置1のインストルメントパネル5内の配置が制限されず、設計の自由度をも向上できる。すなわち、表示光2の投影箇所によって、表示装置1の配置箇所や姿勢が制限されない。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0031】
表示装置1においては、屈折部42は、前面側の先端が三角形状であったが、曲面形状であってもよい。また、屈折部42は、一定の間隔に離間して配置されていたが、図4に示す表示光制御層40aのように、屈折部42aが繋がって形成され、その隙間を基部41aが埋めるような態様であってもよい。
【0032】
例えば、本開示の表示装置1が、表示光2をウインドシールド3の遮光部3aに投影する例を説明したが、ウインドシールド3の透明箇所に投影し、視認者に実像、虚像を視認させる表示装置1であってもよい。
【0033】
表示ユニット30の構成、すなわち表示光2を生成する表示パネル31や、表示パネル31のバックライトを出射するバックライトユニット32の構成は一例であり、公知のヘッドアップディスプレイが有する表示ユニットの種々の構成を適用してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 表示装置
2、2a、2b 表示光
3 ウインドシールド
3a 遮光部
4 運転者(視認者)
5 インストルメントパネル
5a 表面
10 ケース
11 開口
20 保護カバー
30 表示ユニット
31 表示パネル
32 バックライトユニット
33 光源基板
34 光学シート
35 LED
40、40a 表示光制御層
41、41a 基部
42、42a 屈折部
44 入射面
45 出射面
46 フィルム
51 オプティカルボンディング層(接着層)
52 粘着材層(接着層)
図1
図2
図3
図4