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特許7545645車両用ヘッドライト制御装置、及び配光パターンの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】車両用ヘッドライト制御装置、及び配光パターンの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
B60Q1/14 A
B60Q1/14 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021012607
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116441
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】湯地 恒太
(72)【発明者】
【氏名】大坪 康隆
【審査官】谷口 東虎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-156122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、ハイビーム及びロービームを照射可能なヘッドライトの配光パターンを制御する車両用ヘッドライト制御装置であって、
上記車両の前方に位置する前方車両を検出する前方車両検出部と、
この前方車両検出部によって検出された前方車両が、先行車両であるか、対向車両であるかを判別する車両判別部と、
上記前方車両検出部によって検出され、上記車両判別部によって判別された先行車両又は対向車両が、検出後に移動すると予測される予測位置を算出する位置予測部と、
この位置予測部によって予測された予測位置を含む領域へのハイビームの照射が抑制されるように、上記ヘッドライトの配光パターンを制御する配光制御部と、
を有し、
上記位置予測部は、前方車両が上記車両判別部によって先行車両と判別された場合には、対向車両と判別された場合とは異なるアルゴリズムを使用して予測位置を算出し、
さらに、上記位置予測部は、上記車両判別部によって先行車両であると判別された前方車両の予測位置を補正する補正処理部を備え、この補正処理部は、過去の制御周期において上記補正処理部によって補正された予測位置に対して、新たに算出される予測位置が、オーバーシュートにより位置の予測精度が大きく低下することを抑制するように、予測位置を補正することを特徴とする車両用ヘッドライト制御装置。
【請求項2】
上記位置予測部は、上記車両判別部によって先行車両であると判別された前方車両に対しては、車両位置の移動軌跡に対してローパスフィルタを適用する請求項1記載の車両用ヘッドライト制御装置。
【請求項3】
上記補正処理部は、過去の制御周期において上記位置予測部によって予測された予測位置を目標値としたPID制御により、予測位置を補正する請求項記載の車両用ヘッドライト制御装置。
【請求項4】
車両に搭載されたハイビーム及びロービームを照射可能なヘッドライトの配光パターンの制御方法であって、
上記車両の前方に位置する前方車両を検出する前方車両検出ステップと、
この前方車両検出ステップにおいて検出された前方車両が、先行車両であるか、対向車両であるかを判別する車両判別ステップと、
上記前方車両検出ステップにおいて検出された前方車両が、検出後に移動すると予測される予測位置を算出する位置予測ステップと、
この位置予測ステップにおいて予測された予測位置を含む領域へのハイビームの照射が抑制されるように、上記ヘッドライトの配光パターンを制御する配光制御ステップと、
を有し、
上記位置予測ステップにおいては、前方車両が先行車両と判別された場合には、対向車両と判別された場合とは異なるアルゴリズムを使用して予測位置が算出され
さらに、上記位置予測ステップは、上記車両判別ステップにおいて先行車両であると判別された前方車両の予測位置を補正する補正処理を含み、この補正処理においては、過去の制御周期において上記補正処理によって補正された予測位置に対して、新たに算出される予測位置が、オーバーシュートにより位置の予測精度が大きく低下することを抑制するように、予測位置が補正されることを特徴とする配光パターンの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ヘッドライト制御装置及び制御方法に関し、特に、車両に搭載され、ハイビーム及びロービームを照射可能なヘッドライトの配光パターンを制御する車両用ヘッドライト制御装置、及び配光パターンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のヘッドライトから光を照射させる領域を変化させる車両用の配光制御装置が知られている。このような配光制御装置は、自車両に搭載されたカメラ等により前方車両の位置情報を取得し、前方車両が存在する領域へのハイビームの照射を抑制することにより、前方車両のドライバーを眩惑させるグレア(眩光)の発生を抑制している。
【0003】
特開2012-1078号公報(特許文献1)には、車両用灯具システムが記載されている。この車両用灯具システムにおいては、カメラ等により取得した情報を処理して実際に配光制御が実行されるまでの時間遅れを考慮して、所定時間経過後に前方車両が移動している位置を予測し、その位置におけるハイビームの照射を抑制している。また、この車両用灯具システムにおいては、前方車両が先行車両である場合には、自車両と先行車両の相対位置に急激な変化が起こりにくいことから、先行車両の位置の予測を行わず、カメラ等により取得された位置情報をそのまま使用して、ハイビームの照射を抑制している。また、特許文献1には、先行車両及び対向車両を区別することなく、位置の予測を行うことも開示されている。
【0004】
また、特許第6453669号公報(特許文献2)には、車両用前照灯制御装置が記載されている。この車両用前照灯制御装置においては、前方車両の車幅の両側に所定のマージン間隔を設定し、車幅及び左右のマージン間隔の領域へのハイビームの照射を抑制している。このように、前方車両の車幅の左右にマージン間隔を設定することにより、検出された前方車両の位置に誤差がある場合でも、前方車両のドライバーにグレアを与えないようにしている。また、特許文献2記載の車両用前照灯制御装置においては、前方車両が先行車両であるか、対向車両であるかに応じてマージン間隔を変更している。即ち、前方車両が対向車両である場合にはドライバーにグレアを与えやすいため、マージン間隔を大きく設定して、検出誤差等によりドライバーにグレアを与えてしまうリスクを低下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-1078号公報
【文献】特許第6453669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のヘッドライト制御装置では、十分な精度で前方車両の位置を検出することができず、前方車両のドライバーにグレアを与えるリスクを軽減しようとすれば、ハイビームの照射を抑制する領域を広く設定する必要がある。この結果、自車両前方に存在する標識や歩行者の視認性が低下するという問題がある。例えば、特許文献1記載の発明においては、前方車両が先行車両である場合には、先行車両が移動する位置の予測を行っていないが、位置予測を行うことなくグレアを防止しようとすれば、広い範囲でハイビームを抑制する必要があり、視認性の低下は避けられない。また、特許文献2記載の発明においても、対向車両に対してマージン間隔を広くしているため、対向車線側にある物標の視認性が低下するという問題がある。
【0007】
したがって、本発明は、前方車両の位置を精度良く予測することにより、前方車両のドライバーにグレアを与えるリスクを低下させながら、自車両前方に存在する物標の十分な視認性を確保することができる車両用ヘッドライト制御装置、及び配光パターンの制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、車両に搭載され、ハイビーム及びロービームを照射可能なヘッドライトの配光パターンを制御する車両用ヘッドライト制御装置であって、車両の前方に位置する前方車両を検出する前方車両検出部と、この前方車両検出部によって検出された前方車両が、先行車両であるか、対向車両であるかを判別する車両判別部と、前方車両検出部によって検出され、車両判別部によって判別された先行車両又は対向車両が、検出後に移動すると予測される予測位置を算出する位置予測部と、この位置予測部によって予測された予測位置を含む領域へのハイビームの照射が抑制されるように、ヘッドライトの配光パターンを制御する配光制御部と、を有し、位置予測部は、前方車両が車両判別部によって先行車両と判別された場合には、対向車両と判別された場合とは異なるアルゴリズムを使用して予測位置を算出し、さらに、位置予測部は、車両判別部によって先行車両であると判別された前方車両の予測位置を補正する補正処理部を備え、この補正処理部は、過去の制御周期において補正処理部によって補正された予測位置に対して、新たに算出される予測位置が、オーバーシュートにより位置の予測精度が大きく低下することを抑制するように、予測位置を補正することを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明においては、前方車両検出部によって前方車両が検出され、検出された前方車両が先行車両であるか、対向車両であるかが車両判別部によって判別される。位置予測部は、車両判別部によって判別された先行車両及び対向車両が、検出後に夫々移動すると予測される予測位置を算出し、配光制御部は、予測された予測位置を含む領域へのハイビームの照射が抑制されるように、ヘッドライトの配光パターンを制御する。位置予測部は、前方車両が車両判別部によって先行車両と判別された場合には、対向車両と判別された場合とは異なるアルゴリズムを使用して予測位置を算出する。
【0010】
前方車両のドライバーにグレアを与えるリスクを低下させるには、前方車両の位置を精度良く予測することが必要になる。高精度の位置予測を行うためには、精度の高いセンサや、高速な演算装置が必要となるが、制御装置がコスト高になるという問題がある。そこで、本件発明者は、自車両からの視界に入る先行車両と対向車両の挙動の相違に着目して、これらの車両の位置の予測精度を向上させることを試みた。即ち、左側通行の道路においては、対向車両は、自車両の視界の左側又は中央付近から右側に大きく移動する。これに対し、先行車両は、自車両の視界の中央付近に留まり、大きく移動することは少ないが、左右に不規則に移動する場合がある。本件発明者は、このような対向車両と先行車両の挙動の相違に着目して、これらの車両の位置を予測することにより、安価な装置で前方車両の位置を精度良く予測することに成功した。本発明の車両用ヘッドライト制御装置によれば、車両判別部によって前方車両が先行車両と判別された場合には、対向車両と判別された場合とは異なるアルゴリズムを使用して、位置予測部が予測位置を算出する。この結果、前方車両の位置を精度良く予測することができ、前方車両のドライバーにグレアを与えるリスクを低下させながら、自車両前方に存在する物標の十分な視認性を確保することができる。
また、S字カーブ等を走行する場合、先行車両の位置は、自車両からの視界内において比較的緩やかに左右に移動する。ここで、視界内における先行車両の移動方向が変化したとき、予測の遅れにより、予測位置の移動方向が変化するまでに遅れが生じ、位置の予測精度が低下する場合がある。上記のように構成された本発明によれば、過去の制御周期において算出された予測位置に対して、新たに算出される予測位置が変化するのを抑制するように、予測位置が補正される。これにより、視界内における先行車両の移動方向が変化した場合において、位置の予測精度が大きく低下するのを防止することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、位置予測部は、車両判別部によって先行車両であると判別された前方車両に対しては、車両位置の移動軌跡に対してローパスフィルタを適用する。
【0012】
一般に、先行車両は、自車両の視界内の一定の位置に留まることが多い。上記のように構成された本発明によれば、位置予測部は、先行車両であると判別された前方車両に対しては、車両位置の移動軌跡に対してローパスフィルタを適用する。このため、自車両の振動等に基づいて先行車両の予測位置が細かく振れるのを抑制することができ、先行車両の位置を精度良く予測することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、補正処理部は、過去の制御周期において位置予測部によって予測された予測位置を目標値としたPID制御により、予測位置を補正する。
【0016】
このように構成された本発明によれば、過去の制御周期において位置予測部によって予測された予測位置を目標値としたPID制御により、予測位置が補正されるので、簡易な制御アルゴリズムにより、位置の予測精度を向上させることができる。
【0017】
また、本発明は、車両に搭載されたハイビーム及びロービームを照射可能なヘッドライトの配光パターンの制御方法であって、車両の前方に位置する前方車両を検出する前方車両検出ステップと、この前方車両検出ステップにおいて検出された前方車両が、先行車両であるか、対向車両であるかを判別する車両判別ステップと、前方車両検出ステップにおいて検出された前方車両が、検出後に移動すると予測される予測位置を算出する位置予測ステップと、この位置予測ステップにおいて予測された予測位置を含む領域へのハイビームの照射が抑制されるように、ヘッドライトの配光パターンを制御する配光制御ステップと、を有し、位置予測ステップにおいては、前方車両が先行車両と判別された場合には、対向車両と判別された場合とは異なるアルゴリズムを使用して予測位置が算出され、さらに、位置予測ステップは、車両判別ステップにおいて先行車両であると判別された前方車両の予測位置を補正する補正処理を含み、この補正処理においては、過去の制御周期において補正処理によって補正された予測位置に対して、新たに算出される予測位置が、オーバーシュートにより位置の予測精度が大きく低下することを抑制するように、予測位置が補正されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両用ヘッドライト制御装置、及び配光パターンの制御方法によれば、前方車両の位置を精度良く予測することにより、前方車両のドライバーにグレアを与えるリスクを低下させながら、自車両前方に存在する物標の十分な視認性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態による車両用ヘッドライト制御装置を搭載した車両を上方から見た図である。
図2】本発明の実施形態による車両用ヘッドライト制御装置を搭載した車両に備えられているヘッドライトの正面図である。
図3】ヘッドライトに備えられているハイビームユニットを構成するLEDアレイを模式的に示す図である。
図4】左ヘッドライトのLEDアレイの各LED素子が点灯された場合に射出される光の角度領域を示す図である。
図5】右ヘッドライトのLEDアレイの各LED素子が点灯された場合に射出される光の角度領域を示す図である。
図6】本発明の実施形態による車両用ヘッドライト制御装置を含むブロック図である。
図7】本発明の実施形態による車両用ヘッドライト制御装置における処理、及びヘッドライトの配光パターンの制御方法を示すフローチャートである。
図8】予測位置の計算を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両用ヘッドライト制御装置、及びヘッドライトの配光パターンの制御方法を説明する。
図1は、本発明の実施形態による車両用ヘッドライト制御装置を搭載した車両を上方から見た図である。図2は、本発明の実施形態による車両用ヘッドライト制御装置を搭載した車両に備えられているヘッドライトの正面図である。図3は、ヘッドライトに備えられているハイビームユニットを構成するLEDアレイを模式的に示す図である。図4は、左ヘッドライトのLEDアレイの各LED素子が点灯された場合に射出される光の角度領域を示す図である。図5は、右ヘッドライトのLEDアレイの各LED素子が点灯された場合に射出される光の角度領域を示す図である。図6は、本発明の実施形態による車両用ヘッドライト制御装置を含むブロック図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の実施形態による車両用ヘッドライト制御装置を搭載した車両1は、前端部に左ヘッドライト2L、右ヘッドライト2R、及び前方車両センサであるカメラ4を備えている。カメラ4は、車両1のフロントガラスの内側、上部中央に取り付けられ、車両1の前方を撮像し、撮像した画像を画像解析するように構成されている。なお、図1において、カメラ4から延びる破線4Aは、カメラ4によって撮像される像の角度範囲を模式的に示している。
【0022】
次に、図2に示すように、左ヘッドライト2Lは、ロービームユニット6と、ハイビームユニット8を備えている。左ヘッドライト2L、及び右ヘッドライト2Rは、車両1の前方に向けて光を照射するように構成されている。また、各ヘッドライトのロービームユニット6は、車両1前方の斜め下方に向けてロービームの光を照射するように構成されている。ここで、ロービームユニット6は、ヘッドライトが点灯されている間、常に点灯されているが、斜め下方に向けて光を照射するため、前方車両のドライバーにグレアを与えることはない。
【0023】
一方、ハイビームユニット8は、車両1前方の水平ないし斜め上方に向けてハイビームの光を照射するように構成されている。ハイビームユニット8については、前方車両のドライバーにグレアを与えることのないよう、本実施形態の車両用ヘッドライト制御装置により、配光が制御される。なお、ここでは左ヘッドライト2Lの構成を説明したが、右ヘッドライト2Rも左右が反転した形状に構成されている点を除き同様の構成を有するので、右ヘッドライト2Rについては説明を省略する。
【0024】
さらに、図1に示すように、右ヘッドライト2Rのハイビームユニット8は、車両1前方の領域ARで示す領域に光を照射するように構成されている。また、左ヘッドライト2Lのハイビームユニット8は、車両1前方の領域ALで示す領域に光を照射するように構成されている。各ハイビームユニット8は、車両用ヘッドライト制御装置による配光制御により、領域AR、AL内の所定の角度領域に光を照射するように構成されている。ここで、本明細書においては、車両1の前後方向に延びる軸線Zに平行な方向を角度0degとし、この方向に対して左方向の回転角をプラスの角度、右方向の回転角をマイナスの角度としている。
【0025】
次に、図2に示すように、ハイビームユニット8は、LEDアレイ8aを有する。さらに、図3に示すように、このLEDアレイ8aは、直線状に配列された複数のLED(light emitting diode)素子8bから構成されており、これらのLED素子8bを選択的に点灯させることにより、所定の角度領域に光を照射することができるように構成されている。本実施形態においては、一直線上に配列された1番から11番までの1列11個のLED素子8bにより、LEDアレイ8aが構成されている。しかしながら、配列するLED素子の数は任意に設定することができると共に、LED素子を複数列に配置することもできる。
【0026】
次に、図4及び図5を参照して、LEDアレイ8aの各LED素子8bが点灯された場合に照射される光の角度領域を説明する。図4は、左ヘッドライト2LのLEDアレイ8aの各LED素子8bが点灯された場合に射出される光の角度領域を示し、図5は、右ヘッドライト2RのLEDアレイ8aの各LED素子8bが点灯された場合に射出される光の角度領域を示す。
【0027】
図4に示すように、左ヘッドライト2LのLEDアレイ8aの1番のLED素子を点灯させた場合には、-10~0degの角度領域にハイビームの光が照射される。即ち、1番のLED素子を点灯させることにより、右外縁が-10degの方向、左外縁が0degの方向の扇形の領域にハイビームの光が照射される。この1番のLED素子は、車両1の車幅方向の最も中央寄りに配置されており、以下、番号順に車幅方向左側に向けて配列され、11番のLED素子が最も左側(外側)に配置されている。同様に、2番のLED素子は0~10deg、3番は10~20deg、4番は20~30deg、5番は30~40deg、6番は40~50deg、7番は50~60deg、8番は60~70deg、9番は70~80deg、10番は80~90deg、11番は90~100degの角度領域にハイビームの光を照射するように構成されている。
【0028】
さらに、図5に示すように、右ヘッドライト2RのLEDアレイ8aの1番のLED素子を点灯させた場合には、10~0degの角度領域にハイビームの光が照射される。右ヘッドライト2Rの1番のLED素子は、車両1の車幅方向の最も中央寄りに配置されており、以下、番号順に車幅方向右側に向けて配列され、11番のLED素子が最も右側(外側)に配置されている。同様に、2番のLED素子は0~-10deg、3番は-10~-20deg、4番は-20~-30deg、5番は-30~-40deg、6番は-40~-50deg、7番は-50~-60deg、8番は-60~-70deg、9番は-70~-80deg、10番は-80~-90deg、11番は-90~-100degの角度領域にハイビームの光を照射するように構成されている。
【0029】
このように各LEDアレイ8aを構成することによりハイビームの光の配光が可能となる。例えば、車両1の前方28~35degの角度範囲に前方車両が存在する場合には、左ヘッドライト2Lの4番及び5番のLED素子8bを消灯させる。これにより、20~40degの角度範囲にはハイビームの光が照射されず、ロービームの光のみが照射されるので、前方車両のドライバーにグレアを与えるのを防止することができる。
【0030】
次に、図6を参照して、本発明の実施形態による車両用ヘッドライト制御装置の構成を説明する。
本実施形態において、車両用ヘッドライト制御装置は、車両1に搭載されたカメラ4及び電気制御ユニットECU10の機能の一部として実現されている。ECU10には、カメラ4からの検出信号が入力され、これに基づいて、左ヘッドライト2L及び右ヘッドライト2Rに、各LED素子8bの点灯、消灯の指示信号が出力され、ハイビームの光の配光パターンが制御される。具体的には、カメラ4及びECU10は、夫々、マイクロプロセッサ、メモリ、インターフェイス回路、及びこれらを作動させるためのソフトウェア等(以上、図示せず)を備えている。
【0031】
図6に示すように、カメラ4は、車両用ヘッドライト制御装置の機能部として、前方車両検出部12と、車両判別部14と、を内蔵している。カメラ4は、車両1の前方を撮像すると共に、撮像した画像を前方車両検出部12、及び車両判別部14によって画像解析するように構成されている。なお、本実施形態において、前方車両検出部12及び車両判別部14は、カメラ4に内蔵されているが、これらはECU10の側に内蔵されていても良い。
【0032】
前方車両検出部12は、撮像された画像に基づいて、自車両である車両1の前方に位置する前方車両を検出するように構成されている。
車両判別部14は、前方車両検出部12によって検出された前方車両が、車両1と同一の方向に走行している先行車両であるか、車両1とは反対方向に走行している対向車両であるかを判別するように構成されている。
【0033】
また、図6に示すように、ECU10には、車両用ヘッドライト制御装置の機能部として、位置予測部16と、補正処理部18と、領域設定部20と、配光制御部22と、が備えられている。
【0034】
位置予測部16は、カメラ4に内蔵された前方車両検出部12によって検出され、車両判別部14によって判別された先行車両及び対向車両が、検出後に夫々移動すると予測される予測位置を算出するように構成されている。即ち、カメラ4によって前方車両を含む画像が撮像された後、取得された画像に基づいて前方車両が存在する角度範囲を特定し、その角度範囲に対応するLED素子8bを実際に消灯させるまでには、ある程度の時間遅れが発生する。そのため、前方車両検出部12によって検出された前方車両が、所定時間後にどの位置まで移動しているかが位置予測部16によって予測される。位置予測部16による処理の詳細については後述する。
【0035】
補正処理部18は、検出された前方車両が先行車両である場合に、位置予測部16によって算出された予測位置を補正するように構成されている。また、補正処理部18による処理の詳細については後述する。
領域設定部20は、前方車両検出部12によって検出され、位置予測部16によって所定時間後の位置が予測された前方車両が、自車両から見て、どの角度範囲に存在するかを特定する。さらに、領域設定部20は、特定された角度範囲に基づいて、ハイビームを消灯させるべき領域を設定するように構成されている。
【0036】
配光制御部22は、位置予測部16によって予測された予測位置を含む領域へのハイビームの照射が抑制されるように、右ヘッドライト2R、及び左ヘッドライト2Lの配光パターンを制御するように構成されている。即ち、配光制御部22は、領域設定部20によって設定された角度領域に対応するLED素子8bが消灯されるように、右ヘッドライト2R及び左ヘッドライト2LのLEDアレイ8aに点灯、消灯の指示信号を出力する。これにより、位置予測部16によって予測された前方車両の予測位置へのハイビームの照射が回避される。なお、ロービームユニット6に対しては、ヘッドライトが点灯されている場合には、常に点灯を指示する信号が出力される。
【0037】
次に、図7及び図8を参照して、本発明の実施形態による車両用ヘッドライト制御装置の作用、及びヘッドライトの配光パターンの制御方法を説明する。
図7は、本発明の実施形態による車両用ヘッドライト制御装置における処理、及びヘッドライトの配光パターンの制御方法を示すフローチャートである。図8は、予測位置の計算を説明するための図である。なお、図7に示すフローチャートは、本実施形態の車両用ヘッドライト制御装置の作動中において、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0038】
まず、図7のステップS1においては、前方車両検出ステップとして、カメラ4によって撮影された画像に基づいて、カメラ4に内蔵されている前方車両検出部12が、自車両である車両1の前方に存在する前方車両を検出する。具体的には、取得された画像内に撮影されている前方車両のヘッドライト、及びテールライトを認識することにより、前方車両を認識することができる。さらに、画像内のヘッドライトやテールライトの位置に基づいて、前方車両が自車両に対して何度の角度位置に存在するかを検出することができる。また、画像内のヘッドライトやテールライトの間隔に基づいて、自車両から前方車両までの距離を算出することができる。
【0039】
さらに、車両判別部14は、車両判別ステップとして、検出された前方車両が、先行車両であるか、対向車両であるかを判別する。即ち、車両判別部14は、画像内にテールライトが撮影されている場合には、その前方車両は先行車両であると判別し、画像内にヘッドライトが撮影されている場合には、その前方車両は対向車両であると判別する。即ち、車両判別部14は、撮影されている光が赤色である場合には、テールライトであると判別し、白色又は電球色である場合には、ヘッドライトであると判別する。
【0040】
次に、ステップS2においては、ステップS1において検出された前方車両が先行車両であるか否かが判断される。即ち、カメラ4に内蔵された車両判別部14によって、前方車両が先行車両であると判断されている場合には、ECU10において、図7のフローチャートにおけるステップS3以下の処理が実行され、先行車両でない(対向車両である)と判断されている場合には、ステップS8以下の処理が実行される。
【0041】
ステップS8においては、位置予測ステップとして、検出された対向車両の所定時間経過後の位置が、位置予測部16により予測される。即ち、位置予測部16は、カメラ4から入力された対向車両の過去の複数の角度位置の情報に基づいて、対向車両が移動する角速度(自車両から見た対向車両の角度位置の単位時間当たりの変化量)を算出する。さらに、この角速度で対向車両の角度位置が移動した場合における所定時間後の角度位置を計算することにより、所定時間経過後の予測位置(予測角度位置)が算出される。
【0042】
図8は、この予測位置の計算を説明するための図である。
ECU10には、前方車両(対向車両)の角度位置の時系列データが、カメラ4から入力される。ECU10に内蔵された位置予測部16は、この時系列データを所定のサンプリング周期Δt[msec]間隔で離散化する。この離散化により、図8の時刻0における最新の角度位置のデータ、1サンプリング周期前の時刻-Δtにおける角度位置のデータ、2サンプリング周期前の時刻-2Δtにおける角度位置のデータが生成される。同様に、時刻-3Δt、-4Δtにおける角度位置のデータも生成される。そして、nサンプリング周期前の対向車両の角度位置をθ(-nΔt)とすれば、nから(n-1)サンプリング周期前までの平均の角速度(単位時間当たりの角度位置の変化量)Ω(-nΔt)は次のように計算することができる。
【0043】
なお、本実施形態においては、対向車両の角度位置θは、画像内の対向車両のヘッドライトの位置に基づいて計算されている。従って、1台の対向車両について2つの角度位置θが求められ、夫々について計算が行われるが、同様の計算であるため、以下では一方のみについて説明する。
【0044】
本実施形態においては、数式(1)を使用して、過去の4サンプリング周期分の平均の角速度Ω(-4Δt)、Ω(-3Δt)、Ω(-2Δt)、Ω(-Δt)を計算し、これらの角速度に重みを付けて平均することにより、現在(時刻0)の角速度Ωを推定している。即ち、重み計数をwnとすれば、
により、現在の角速度Ωの推定値を計算することができる。なお、本実施形態においては、重み計数w1~w4は、2、2、2、1に夫々設定されている。
【0045】
さらに、本実施形態においては、推定された角速度Ωを使用して、所定時間ΔT経過後の角度位置の推定値θPを次式により計算している。
本実施形態においては、位置予測部16により50[msec]ごとの角度位置が算出され(Δt=50[msec])、これらから推定された角速度Ωに基づいて、所定時間ΔT経過後の角度位置θPが推定される。本実施形態においては、カメラ4、ECU10、及びヘッドライト(右ヘッドライト2R及び左ヘッドライト2L)の夫々が個別の制御周期で作動している。このため、各部における演算時間や制御周期のずれに基づいて、カメラ4によって最新の画像が撮影された後、実際にヘッドライトの配光が変更されるまでの間に300[msec]程度の制御遅れが見込まれる(ΔT=300[msec])。このように、300[msec]後の対向車両の角度位置θPを推定することにより、制御遅延の影響を軽減している。
【0046】
次いで、図7に示すフローチャートのステップS6において、領域設定部20により、車両1前方の、対向車両が存在する角度領域が設定される。即ち、1台の対向車両について2つのヘッドライトの角度位置θPが推定されており、これらの角度位置の間の領域に対向車両が存在するものとして、対向車両の存在領域が設定される。
【0047】
さらに、ステップS7において、配光制御部22は、配光制御ステップとして、ステップS8において予測された予測位置を含む領域へのハイビームの照射が抑制されるように、ヘッドライト(左ヘッドライト2L及び右ヘッドライト2R)の配光パターンを制御する。即ち、配光制御部22は、左ヘッドライト2L及び右ヘッドライト2Rに、LEDアレイ8aの各LED素子8bを点灯又は消灯させる指示信号を出力し、図7のフローチャートの1回の処理を終了する。
【0048】
例えば、対向車両の存在領域が-3~-17degである場合、即ち、対向車両の右側のヘッドライトが-3degの角度位置にあり、左側のヘッドライトが-17degの角度位置にあると推定されている場合には、右ヘッドライト2Rの2番と3番のLED素子8bを消灯させる制御信号が出力される。これにより、0~-20degの角度領域のヘッドライトがロービームにされる(図5参照)。また、この対向車両以外に前方車両が検出されていなければ、左ヘッドライト2L及び右ヘッドライト2Rの他のLED素子8bは全て点灯される。これにより、対向車両が存在する領域に照射されるヘッドライトがロービームにされ、他の領域にはハイビームが照射されるので、対向車のドライバーにグレアを与えるのを防止しながら、周辺物標の視認性を良好にすることができる。
【0049】
一方、ステップS2において、検出された前方車両が先行車両であると判別された場合には、ステップS3以下の処理により、前方車両の位置が予測される。このように、本実施形態の車両用ヘッドライト制御装置においては、前方車両が車両判別部14によって先行車両と判別された場合には、対向車両と判別された場合とは異なるアルゴリズムを使用して、位置予測部16によって予測位置が算出される。このため、前方車両の位置を精度良く予測することができ、前方車両のドライバーにグレアを与えるリスクを低下させながら、自車両前方に存在する物標の十分な視認性を確保することができる。
【0050】
ステップS3においては、カメラ4によって取得された画像に基づいて求められた角度位置θ(t)に対して、ローパスフィルタが適用される。本実施形態においては、角度位置θ(t)に対して、ローパスフィルタ処理された角度位置θ’(t)が、数式(4)により計算される。
数式(4)において、Δtはサンプリング周期(50[msec])であり、τはローパスフィルタの時定数である。また、数式(4)において、θ-1(t)は1制御周期前(図7のフローチャートの前回実行時)において検出された角度位置であり、θ’-1(t)は1制御周期前におけるローパスフィルタ処理後の角度位置である。
【0051】
このように、角度位置θ(t)の時間的変化に対してローパスフィルタを施すことにより、周期の短い角度位置の変動が抑制され、滑らかな波形となる。即ち、車両1(自車両)からの視界の中で先行車両が移動していく移動軌跡に対してローパスフィルタが適用され、軌跡の微少変動が抑制される。このため、自車両の振動等に基づいて先行車両の予測位置が細かく振れるのを抑制することができ、先行車両の位置を精度良く予測することができる。また、先行車両の予測位置が細かく振れると、配光制御により特定のLED素子8bが小刻みに点滅することがあり、ドライバーが煩わしく感じる場合があるが、ローパスフィルタ処理により、これを抑制することができる。なお、本実施形態においては、ローパスフィルタの時定数として200[msec]が設定されているので、カットオフ周波数は約0.8[Hz]となる。従って、ローパスフィルタにより、約0.8[Hz]以上の周波数の高い角度位置の変動が抑制される。
【0052】
次に、ステップS4においては、位置予測ステップとして、位置予測部16により、所定時間経過後の先行車両の角度位置が予測される。上述したステップS8における角度位置の予測は、カメラ4から入力された対向車両の角度位置θ(t)に基づいて行われていた。これに対し、ステップS4においては、カメラ4から入力された先行車両の角度位置θ(t)に対してステップS3においてローパスフィルタ処理が施された角度位置θ’(t)に基づいて、所定時間(本実施形態においては300[msec])経過後の先行車両の角度位置θPが予測される。ステップS4における処理は、処理対象が先行車両である点、及び処理される角度位置がローパスフィルタ処理後のものである点を除き、ステップS8における処理と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
さらに、ステップS5においては、ステップS4において計算された予測角度位置θPに対してPID(Proportional-Integral-Differential)制御による処理が施される。即ち、ステップS5においては、所定制御周期前に出力された予測角度位置を目標値として、補正処理部18によりPID制御演算が行われ、予測角度位置が補正される。なお、以下の説明では、最新の予測角度位置をθP_0と表記し、k制御周期前(図7のフローチャートがk回前に実行された時)の予測角度位置をθP_-kと表記する。
【0054】
まず、ステップS5においては、最新の予測角度位置とk制御周期前の予測角度位置の偏差e0を数式(5)により計算する。
次に、この偏差e0を入力として、数式(6)により、補正後の予測角度位置である制御出力θC_0を算出する。
なお、数式(6)において、e-1は1制御周期前の偏差を表し、
により計算される。また、数式(6)において、KPは比例制御に関するゲイン、TIは積分制御に関するゲイン、TDは微分制御に関するゲインであり、何れも定数である。
【0055】
このように、所定制御周期前に算出された予測角度位置θP_-kを目標値としたPID制御演算によって予測角度位置を補正することにより、新たに算出される予測角度位置が、過去の制御周期において算出された予測角度位置から大きく変化するのを抑制することができる。これにより、視界内における先行車両の移動方向が変化した場合において、オーバーシュートにより位置の予測精度が大きく低下するのを防止することができる。例えば、S字カーブ等を走行する場合、先行車両の位置は、自車両からの視界内において比較的緩やかに左右に大きく移動する。ここで、視界内における先行車両の移動方向が変化したとき、予測の遅れによりオーバーシュートが発生して、予測位置の移動方向が変化するまでに遅れが生じ、位置の予測精度が大きく低下する場合がある。本実施形態においては、補正処理部18により、PID制御演算によって予測位置が補正されるので、簡易な制御アルゴリズムにより、位置の予測精度を向上させることができる。
【0056】
なお、本実施形態において、ECU10の制御周期(図7のフローチャートが実行される時間間隔)は約50[msec]であり、6制御周期前(k=6)の予測角度位置(θP_-6)を目標値としてPID制御演算が実行される。このため、本実施形態においては、約300[msec]前の予測角度位置を目標として、PID制御演算が実行される。このように、PID制御演算は、制御遅れ時間ΔTと同程度過去の予測角度位置を目標値として設定することが好ましい。
【0057】
次に、図7のステップS6においては、ステップS5において補正された先行車両の角度位置θC_0に基づいて、先行車両の存在領域が設定される。即ち、上述したように、実際には、1台の先行車両について2つの角度位置の補正値θC_0(先行車両の左右のテールライトに対応する位置)が算出され、それらの間の角度領域が先行車両の存在領域として設定される。
【0058】
さらに、ステップS7においては、ステップS6において設定された先行車両の存在領域にハイビームが照射されないように、配光制御部22が、左ヘッドライト2L及び右ヘッドライト2Rの各LED素子8bに指示信号を出力し、図7に示すフローチャートの1回の処理を終了する。例えば、先行車両の存在領域が23~35degである場合、即ち、先行車両の右側のヘッドライトが23degの角度位置にあり、左側のヘッドライトが35degの角度位置にあると推定されている場合には、左ヘッドライト2Lの4番と5番のLED素子8bを消灯させる制御信号が出力される。これにより、20~40degの角度領域のヘッドライトがロービームにされ(図4参照)、先行車両のドライバーにグレアを与えるのを抑制することができる。
【0059】
本発明の実施形態の車両用ヘッドライト制御装置によれば、車両判別部14によって前方車両が先行車両と判別された場合(図7のステップS2→S3)には、対向車両と判別された場合とは異なるアルゴリズム(図7のステップS3、S4、S5)を使用して、位置予測部16が予測位置を算出する。この結果、前方車両の位置を精度良く予測することができ、前方車両のドライバーにグレアを与えるリスクを低下させながら、自車両前方に存在する物標の十分な視認性を確保することができる。
【0060】
また、本実施形態の車両用ヘッドライト制御装置によれば、位置予測部16は、先行車両であると判別された前方車両に対しては、車両位置の移動軌跡に対してローパスフィルタを適用する。このため、自車両の振動等に基づいて先行車両の予測位置が細かく振れるのを抑制することができ、先行車両の位置を精度良く予測することができる。
【0061】
さらに、本実施形態の車両用ヘッドライト制御装置によれば、過去の制御周期において算出された予測位置に対して、新たに算出される予測位置が変化するのを抑制するように、予測位置が補正される(図7のステップS5)。これにより、視界内における先行車両の移動方向が変化した場合において、位置の予測精度が大きく低下するのを防止することができる。
【0062】
また、本実施形態の車両用ヘッドライト制御装置によれば、過去の制御周期において位置予測部によって予測された予測位置を目標値としたPID制御により、予測位置が補正されるので、簡易な制御アルゴリズムにより、位置の予測精度を向上させることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、カメラにより前方車両を検出していたが、レーダー等、種々のセンサを前方車両センサとして使用することができる。また、上述した実施形態においては、配光制御として、ハイビームユニットの一部のLED素子を消灯させていたが、グレアを生じない程度にLED素子の輝度を低下させても良い。また、ハイビームとして射出された光の一部を遮光又は減光することにより、配光制御を行うこともできる。
【符号の説明】
【0064】
1 車両
2L 左ヘッドライト
2R 右ヘッドライト
4 カメラ
6 ロービームユニット
8 ハイビームユニット
8a LEDアレイ
8b LED素子
10 ECU
12 前方車両検出部
14 車両判別部
16 位置予測部
18 補正処理部
20 領域設定部
22 配光制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8