(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ノイズマスキング装置及びノイズをマスキングする方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/175 20060101AFI20240829BHJP
G10K 15/04 20060101ALI20240829BHJP
A61M 21/02 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G10K11/175
G10K15/04 302M
A61M21/02 G
(21)【出願番号】P 2021530848
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2019084782
(87)【国際公開番号】W WO2020126777
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-10-19
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン エンデ ダーン アントン
(72)【発明者】
【氏名】パストール サンデル テオドール
【審査官】川▲崎▼ 博章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/053138(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0223462(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/175
G10K 15/04
A61M 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスキングされるノイズを検出するためのトランスデューサユニット、
マスキング音を生成するための音生成ユニット、
ユーザの脳活動を監視するためのセンサユニット、
制御器、及び
前記トランスデューサユニットにより検出される前記ノイズに基づくノイズデータを記憶するように適応する、前記制御器と通信する記憶保存ユニット
を有するノイズをマスキングする装置において、
前記制御器は、
較正中、前記音生成ユニットにより生成される較正音に反応する、前記センサユニットにより測定される前記ユーザの脳活動を決定する、並びに
前記装置の使用中、前記マスキング音の信号特性を、前記トランスデューサユニットにより検出されるノイズ、前記トランスデューサユニットにより検出されるノイズに反応する前記ユーザの脳活動、及び前記較正中に前記音生成ユニットにより生成される前記較正音に反応するユーザの脳活動に基づいて調整する
ように適応し、
前記制御器は、
アルゴリズムを用いて前記ノイズデータを分析し、好ましくは、前記アルゴリズムは、機械学習アルゴリズムであり、
予想されるノイズの傾向を決定する、及び
前記予想されるノイズの傾向に基づいて、前記マスキング音の信号特性を調整する
ようにさらに適応する、装置。
【請求項2】
前記マスキング音の前記信号特性は、信号の音量及び信号の周波数の少なくとも1つを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記音生成ユニットは、前記較正中、較正音を生成するように適応し、並びに
前記制御器は、前記較正音に反応する前記ユーザの脳活動を決定し、及び
前記較正音に反応する前記ユーザの脳活動に基づいて、前記マスキング音の音量の上限及び下限を設定するように適応する、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記センサユニットは、脳波記録(EEG)システムを有し、前記センサユニットにより測定される前記ユーザの脳活動は、脳波記録反応を有する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記ユーザが、前記マスキング音の音量を手動で調整することを可能にするように適応する、前記制御器と通信するユーザインターフェースユニットをさらに有する、請求項1乃至4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記音生成ユニットは、前記較正中、較正音を生成するように適応し、
前記ユーザインターフェースユニットは、前記較正音に関するユーザフィードバックを受信するように適応し、並びに
前記制御器は、前記ユーザフィードバックに基づいて、前記マスキング音の音量の上限及び下限を設定するように適応する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記センサユニットはさらに、ユーザの睡眠状態を検出するように適応し、及び
前記制御器はさらに、前記ユーザの睡眠状態に基づいて、前記マスキング音の信号特性を調整するように適応する、請求項1乃至6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記制御器はさらに、前記ユーザの睡眠状態に基づいて、前記マスキング音の前記信号特性の推奨される調整を決定するように適応し、及び
前記ユーザインターフェースユニットはさらに、前記推奨される調整を前記ユーザに通知するように適応する、
請求項5又は6を引用する請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記センサユニットは、前記制御器とワイヤレス通信する、請求項1乃至8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
ノイズをマスキングするための方法において、
較正中、較正音に反応するユーザの脳活動を決定するステップ、
マスキングされるノイズを検出するステップ、
ユーザの脳活動を監視するステップ、
マスキング音を生成し、前記マスキング音の信号特性を、検出される前記ノイズ、前記ノイズに反応するユーザの脳活動及び前記較正音に反応するユーザの脳活動に基づいて、調整するステップ、
前記検出されたマスキングされるノイズに基づくノイズデータを記憶するステップ、
アルゴリズムを用いて前記ノイズデータを分析するステップであり、好ましくは、前記アルゴリズムは機械学習アルゴリズムである、ステップ、
予想されるノイズの傾向を決定するステップ、並びに
前記予想されるノイズの傾向に基づいて、前記マスキング音の信号特性を調整するステップ
を有する方法。
【請求項11】
較正する方法は、
較正音を生成するステップ、及び
前記較正音に反応する前記ユーザの脳活動を監視するステップ
を有し、前記マスキング音の信号特性を調整するステップは、
前記較正音に反応する前記ユーザの脳活動に基づいて、前記マスキング音の音量の上限及び下限を設定するステップ
を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記較正音に反応するユーザの脳活動を決定するステップは、
較正音を生成するステップ、
前記較正音に関するユーザフィードバックを受信するステップ、並びに
前記ユーザフィードバックに基づいて、前記マスキング音の音量の上限及び下限を設定するステップ
を有する、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるとき、請求項10乃至12の何れか一項に記載の方法を実施するためのコード手段を有するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不要な音響ノイズを軽減するためのシステムの分野に関し、特にノイズマスキングシステムの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
不要な音響ノイズは、人間又は被験者を妨害する可能性がある。人に対する妨害は、マスキング音又はアンチノイズ(すなわち、ノイズキャンセル)音を再生することにより軽減される。そのような音は、外部装置(例えば、スピーカ又はスマートフォン)を介して生成及びび再生されるか、又はノイズマスキングシステムの一部を形成するハードウェアにより生成及び再生される。
【0003】
マスキング音は通例、記録された繰り返し音(例えば雨又は波)又は可聴周波数帯域にわたり均等に分布した音の強さで生成される(「ホワイトノイズ」と呼ばれる)ランダム波形である。これらの音は全て、突然の及び/又は不快な外部ノイズをかき消すことを目的とし、「マスキング音」という言葉に集約される。
【0004】
特に、マスキング音は、例えば睡眠中に、そうしなければユーザを妨害する音響ノイズをマスキングすることができる。
【0005】
アンチノイズ(音キャンセレーション)は、音をマスキングする特殊な形態であり、正しい位相シフトされたアンチノイズを再生するために、耳に近いマイクが音の振動を拾うことを必要とする。
【0006】
マスキング音の音量は、不要なノイズをかき消すのに十分な大きさにすべきである。しかしながら、ノイズレベルは変化するので、マスキング音は、対応する異なる音量を必要とする。典型的なマスキング音生成器は、フィードバックを受けずに動作している。従って、ユーザは、マスキング音自身の過度に大きな再生による妨害も防ぎながら、不要なノイズをかき消すために、手動で音量の設定のバランスを取らなければならない。
【0007】
幾つかのマスキング音生成器は、バックグラウンド(部屋)ノイズの音量の関数としてマスキング音の音量を調整する適応機能を実施している。これは、部屋のノイズレベルに直接基づいた、マスキング音の自動音量調整を可能にする。
【0008】
EP1886707は、睡眠環境においてノイズを監視し、このノイズをマスキングする及び睡眠を促すために、落ち着いた音又は穏やかな音を生成するための装置を開示している。この装置は、睡眠環境における周囲ノイズを検出し、ユーザの睡眠状態を得るためにユーザの生命兆候も監視する。決定される睡眠状態に基づいて、前記装置は、例えばテンポ及び音量のような音声出力の特性を制御するように適応する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、マスキング音の音量を制御することに関する問題は、このとき、マスキング音自身が妨害の供給源となり得ることである。これは、マスキング音に対するユーザの感度に依存している。マスキング音生成器の動作を最適化すること、特にユーザへの妨害を最小化又は低減する適切なマスキング音を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、請求項により規定される。
【0011】
本発明の一態様に従う例によれば、ノイズをマスキングするための装置が提供され、前記装置は、
マスキングされるノイズを検出するためのトランスデューサユニット、
マスキング音を生成するための音生成ユニット、
ユーザの脳活動を監視するためのセンサユニット、及び
制御器
を有し、前記制御器は、
較正中、前記音生成ユニットにより生成される較正音に反応する、前記センサユニットにより測定される前記ユーザの脳活動を決定する、
前記装置の使用中、前記マスキング音の信号特性を、
前記トランスデューサユニットにより検出される前記ノイズ、
前記トランスデューサユニットにより検出される前記ノイズに反応する前記ユーザの脳活動、及び
前記較正中、前記音生成ユニットにより生成される前記較正音に反応する前記ユーザの脳活動
に基づいて調整する
ように適応する。
【0012】
前記装置は、例えば睡眠中に使用するために、外部ノイズをマスキングするためのマスキング音を生成する。例において、マスキングされる外部ノイズは、そうしなければユーザの睡眠を妨害するノイズである。前記装置は、(較正中に事前に決定されるような)環境におけるノイズレベル、この環境のノイズレベルに対するユーザ反応、及びマスキング音に対するユーザの感度に基づいて、マスキング音の信号特性を自動的に調整する。従って、マスキング音は、マスキング音に対するユーザの感度を考慮しながら、外部ノイズをマスキングすることが可能である。これは、例えば、マスキング音自身の過度に大きな再生による、ユーザ(又はユーザの睡眠)への意図的ではない妨害、又は音響ノイズの特定の周波数に対するユーザの感度により引き起こされる妨害を緩和する。この感度は、以下に詳述されるように、較正段階中に決定されてもよい。トランスデューサユニットにより検出されるノイズに基づいてマスキング音の信号特性を調整する方法は、例えば、頻繁に生じるノイズ(例えば交通又はいびき)をマスキングするのに特に適している。
【0013】
マスキング音の信号特性は、信号の音量及び信号の周波数の少なくとも1つを有する。従って、前記装置は、外部ノイズを最適にマスキングするために、マスキング音の大きさ、ピッチ、品質、種類及び/又はトーンを調整することが可能である。この機能は、既知の周波数及び数秒より長い時間時間で、頻繁に、反復的に(しかし予測不能で)発生するノイズによく適している。
【0014】
音生成ユニットは、較正中、較正音を生成するように適応し、制御器は、この較正音に反応するユーザの脳活動を決定し、この較正音に反応するユーザの脳活動に基づいて、マスキング音の音量の上限及び下限を設定するように適応する。
【0015】
これらの特徴は、装置が、ユーザの聴覚感度に基づいてマスキング音の音量の限度を設定することを可能にする自動的な装置較正方法を提供する。
【0016】
本出願の文脈において、「装置の使用中」という言葉は、装置が可聴マスキング音を出力又は生成している間、すなわちマスキング音が生成された後を意味するために使用される。
【0017】
較正は、例えば初期設定プロセスにおいて、前記可聴マスキング音を生成するために装置を使用する前に行われてもよい。特定の例において、前記装置は、装置の使用中(すなわち、装置がトランスデューサユニットにおいて検出されるノイズをマスキングするように動作している間)、較正が行われないように適応する。
【0018】
センサユニットにより測定されるユーザの脳活動は、脳波記録(EEG)反応を含む。従って、センサユニットは、例えば1つ以上の電極から形成される脳波記録システムを有する。EEG反応の測定は、聴性定常反応(ASSR)、聴性脳幹反応(ABR)又は事象関連電位(ERP)の測定を有する。これらの測定値は、人間の耳の感度と相関する。故に、この情報は、マスキング音の信号特性(例えば音量)の正確な較正に使用されることができる。
【0019】
前記装置はさらに、トランスデューサユニットにより検出されるノイズに基づくノイズデータを記憶するように適応する、制御器と通信する記憶保存ユニットをさらに有する。制御器はさらに、アルゴリズムを用いて前記ノイズデータを分析し、予想されるノイズの傾向を決定し及びこの予想されるノイズの傾向に基づいてマスキング音の信号特性を調整するように適応する。従って、装置は、一般的な夜間にわたる繰り返すノイズの傾向を記憶及び分析することができ、この装置が、環境において生じると予想されるノイズレベルを予測することを可能にする。この予測は、例えば曜日、時期及び以前の睡眠サイクルのようなメタデータに基づくことができる。
【0020】
他の実施形態において、ノイズデータを分析するために使用されるアルゴリズムは、機械学習アルゴリズムでよい。機械学習アルゴリズムは、装置が、以前に記録したデータに基づいて、予想されるノイズの傾向の予測を向上させることを可能にする。
【0021】
前記装置は、ユーザが、マスキング音の音量を手動で調整することを可能にするように適応する、制御器と通信するユーザインターフェースユニットをさらに有する。これは、ユーザが、装置の特徴と対話し、この装置の特徴を制御する、例えばマスキング音の音量を調整する及び手動の装置較正を行うことを可能にする。
【0022】
音生成ユニットは、較正中、較正音を生成するように適応し、ユーザインターフェースユニットは、較正音に関するユーザフィードバックを受信するように適応し、制御器は、このユーザフィードバックに基づいて、マスキング音の音量の上限及び下限を設定するように適応する。
【0023】
これは、ユーザが、ユーザインターフェースユニットを用いてフィードバックを供給することを可能にする手動の装置較正を提供し、システムが、音生成ユニットからの音の強さをASSRのレベルに適応させることを可能にするので、夜毎における、音の配信及び受信における差が補償されることができる。この較正は、ノイズをマスキングするための装置の能力の精度をさらに向上させるために、補足の較正として自動的な装置較正と併せて実施されることができる。
【0024】
他の実施形態において、センサユニットはさらに、ユーザの測定される脳活動に基づいてユーザの睡眠状態を検出するように適応してもよい。制御器はさらに、ユーザの睡眠状態に基づいてマスキング音の信号特性を調整するように適応してもよい。従って、装置は、ユーザの睡眠状態及び任意で、異なる睡眠状態間を遷移するタイミングに基づいて、マスキング音の信号特性を自動的に調整する。
【0025】
他の実施形態において、制御器はさらに、ユーザの睡眠状態に基づいてマスキング音の信号特性の推奨される調整を決定するように適応してもよい。ユーザインターフェースユニットはさらに、この推奨される信号特性の調整をユーザに通知するように適応してもよい。従って、装置は、信号特性がユーザの睡眠状態に基づいて調整されるべきかをユーザに助言し、ユーザがこの設定を手動で調整することを可能にする。特に、信号特性は、システムが(決定された睡眠状態に基づいて検出される)覚醒又は目覚めを検出したときに調整されてもよい。
【0026】
この手順は、例えば、以前の夜に集められたユーザの睡眠パターンに関する、及び特に検出される目覚め、覚醒又は浅い及び深い睡眠の規則性に関するユーザデータに基づいて、音量の調整をユーザに推奨することを含む。
【0027】
好ましい実施形態において、センサユニットは、制御器とワイヤレス通信してもよい。これは、センサユニットが、この装置の他の部分から物理的に切り離されることを可能にし、センサユニットがウェアラブルな構成要素であれば、ユーザの快適性を向上させる。
【0028】
音生成ユニットにより生成されるマスキング音は、ユーザをリラックスさせるように適応する連続的な落ち着いた音でもよい。この連続的な落ち着いた音は、ユーザをリラックスさせ、ストレスを減らすことにより、ユーザの睡眠の質を改善する。
【0029】
本発明は、ノイズをマスキングするための方法も提供し、この方法は、
較正中、較正音に反応するユーザの脳活動を決定するステップ、
マスキングされるノイズを検出するステップ、
ユーザの脳活動を監視するステップ、及び
マスキング音を生成し、前記検出されるノイズ、前記ノイズに反応するユーザの脳活動及び前記較正音に反応するユーザの脳活動に基づいて前記マスキング音の信号特性を調整するステップ
を有する。
【0030】
この方法は、例えば睡眠中に使用するために、外部ノイズをマスキングするように適応するマスキング音を供給する。例えば、マスキングされる外部ノイズは、そうしなければ、ユーザの睡眠を妨害する。
【0031】
装置を較正する方法は、
較正音を生成するステップ、及び
前記較正音に反応するユーザの脳活動を監視するステップ
を有し、前記マスキング音の信号特性を調整するステップは、前記較正音に反応するユーザの脳活動に基づいて、マスキング音の音量の上限及び下限を設定するステップを有する。
【0032】
この方法は、ユーザの聴覚感度に基づいて、マスキング音の音量の限度を設定することを可能にする自動的な装置較正を提供する。
【0033】
他の又は代替の実施形態において、装置を較正する方法は、
較正音を生成するステップ、
前記較正音に関するユーザフィードバックを受信するステップ、並びに
ユーザにより供給されるフィードバックに基づいて、マスキング音の音量の上限及び下限を設定するステップ
を有する。
【0034】
この方法は、手動の装置較正を提供する。ユーザは、較正音に関するフィードバックを提供し、これはフィードバックに基づく較正音の音の強さの制御を可能にする。この較正方法は、ノイズをマスキングする精度をさらに向上させるために、補足の較正方法として前記自動的な較正方法に加えて使用されてもよい。
【0035】
前記方法はさらに、マスキングされる前記検出されたノイズに基づくノイズデータを記憶するステップ、アルゴリズムを用いてノイズデータを分析するステップであり、好ましくは、前記アルゴリズムは機械学習アルゴリズムである、ステップ、予想されるノイズの傾向を決定するステップ、及び前記予想されるノイズの傾向に基づいて、マスキング音の信号特性を調整するステップを有する。
【0036】
コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるとき、上述した方法の何れかを実施するためのコード手段を有するコンピュータプログラムも提案される。
【0037】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明される実施形態から明らかになり、これらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明をより良く理解するため、及び本発明がどのように実施されるかをより明確に示すために、単なる例として、添付の図面を参照する。
【
図1】
図1は、ある実施形態によるノイズマスキング装置を示す。
【
図2】
図2は、不要な音響ノイズが存在する場合のノイズマスキング装置の使用事例のシナリオを示す。
【
図3】
図3は、ある実施形態によるノイズマスキング装置を較正するための第1の方法を示す。
【
図4】
図4は、ある実施形態によるノイズマスキング装置を較正するための第2の方法を示す。
【
図5】
図5は、ノイズマスキング装置を用いて生成されるマスキング音の信号特性を調整する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、図面を参照して説明される。
【0040】
詳細な説明及び特定の例は、装置、システム及び方法の例示的な実施形態を示しているが、これらは単に例示を目的とし、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことを理解されたい。本発明の装置、システム及び方法のこれら並びに他の特徴、態様及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲及び添付の図面からより良く理解される。図面は単に概略的であり、一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。同じ又は類似の部分を示すために、図面全体を通して、同じ参照番号が使用されることも理解されたい。
【0041】
本発明は、較正音に対するユーザの感度を決定するために較正が実行される、ノイズをマスキングするための装置(及び方法)を提供する。この装置の使用中、マスキング音の信号特性は、検出されるノイズ、検出されるノイズに対するユーザの反応及び較正音に対するユーザの反応に基づいて調整される。結果として、特にマスキング音自身が特定のユーザに対する妨害となるのを防ぐような方法で、不要なノイズをマスキングするように最適に適応するマスキング音が生成される。
【0042】
実施形態は、マスキング音が、そうしなければユーザを妨害する外部ノイズをマスキングするように適応したとしても、このマスキング音自身がユーザの妨害の一因となるリスクが存在するという実現に少なくとも部分的に基づいている。マスキング音に対するユーザの感度に基づいて、このマスキング音を調節することが可能であることが確認された。
【0043】
例示的な実施形態は、例えばユーザの睡眠中、外部ノイズにより引き起こされる妨害を減らすことにより、ユーザの睡眠の質を向上させるために使用されてもよい。
【0044】
図1は、音を検出するためのトランスデューサユニット20、音発生ユニット30、ユーザ12の脳活動を検出するためのセンサユニット40及び制御器50を有するノイズマスキング装置10を示す。制御器50は、生成されるマスキング音を用いて、検出されるノイズをマスキングするように適応する。
【0045】
トランスデューサユニット20は、音、例えばユーザ12の環境における不要な音響ノイズを検出するように適応する。トランスデューサユニット20は、マイクを有する。
【0046】
音生成ユニット30は、音、例えば連続音又は反復音を生成するように適応する。生成される音は、トランスデューサユニット20により検出されるノイズをマスキングするように適応し、それにより「マスキング音」と称される。
【0047】
センサユニット40は、ユーザの脳活動を監視するように適応する。脳活動の監視は、特定の音に対するユーザの反応を検出する方法を提供する。好ましい例において、脳活動を監視する方法は、脳波記録(EEG)に基づいている。EEG反応を測定することは、ユーザ12の聴性定常反応(ASSR)又は事象関連電位(ERP)を決定することを含む。EEG反応を測定する典型的な方法は、ユーザの頭皮に沿って置かれる非侵襲性電極を使用する。ユーザ12が音を聞くとき、測定可能なEEG反応が検出される。好ましい実施形態において、センサユニット40は、ユーザのEEG反応を測定するように適応する非侵襲性電極を有するウェアラブルなヘッドセットを含む。
【0048】
制御器50は、トランスデューサユニット20、音生成ユニット30及びセンサユニット40と通信する。好ましい実施形態において、制御器50は、少なくともセンサユニット40と(及び任意で、例えば音生成ユニットのような他のユニットとも)ワイヤレス通信する。制御部50の動作が以下に説明される。
【0049】
図2は、装置10の例示的な使用を示す。使用するとき、装置10は、例えば寝室のような閉鎖環境60内に置かれる。前記装置により検出されるノイズは、前記閉鎖環境の内側に存在する発生源によるノイズ61、又は前記閉鎖環境の外側に存在する発生源によるノイズ62を含んでもよい。検出されるノイズは、これらの発生源からのノイズの組み合わせをさらに有する。閉鎖環境内からのノイズ61の供給源の例は、電気器具、いびきしているパートナー及び昆虫を含む。閉鎖環境外からのノイズ62の供給源の例は、交通、航空機、隣人、建設作業及び昆虫を含む。
【0050】
前記装置を操作するために、最初に較正が実行される。較正の目的は、音生成ユニット30により生成される較正音に反応するユーザの脳活動を決定することである。この校正音は、その後の前記システムの使用中にマスキング音となるように生成されるのと同じ種類である。従って、それは、ユーザがマスキング音に対しどのように反応するかの決定を可能にし、それによりマスキング音自身がユーザの睡眠に対する妨害の供給源とならないことを確実するために、マスキング音の制御を可能にする。
【0051】
従って、前記較正は、可聴マスキング音を生成するために前記装置を使用する前、例えば初期設定プロセスにおいて行われる。特定の例において、前記装置は、装置の使用中(すなわち、トランスデューサユニットにおいて検出されたノイズをマスクキングするように、前記装置が動作している間)、較正が行われないように適合する。
【0052】
図3は、第1の可能な較正方法を示し、この方法は、装置10の自動較正を提供する。最初のステップ70において、音生成ユニット30が較正音を出す。ステップ71において、制御器50は、前記較正音に基づいてユーザの脳活動を監視し、マスキング音の音量に対する限界又は境界が設定されることを可能にする。(ユーザ固有の)しきい値より上の音は、測定可能なASSR又はABRを生成し、これは、ユーザの聴覚の感度、すなわち、マスキング音の音量によりユーザ12が妨害され始める点を示す。
【0053】
その結果、ステップ72において、マスキング音の上限は、較正音に反応するユーザの脳活動に基づいて設定され、一方、ステップ73において、下限は、測定可能なASSR又はABRが検出される前記点に基づいて決定される。
【0054】
この目的のために、較正音の生成は、異なる種類の音に対するユーザの反応を決定するために、較正音の特性、特に音量だけでなく、任意で周波数、周波数スペクトル又は他の特性を掃引することも含む。従って、例えばユーザの聴覚能力の音量及び/又は周波数範囲のようなユーザの聴覚の特性が決定される。
【0055】
以下にさらに説明されるように、前記較正の結果は、較正定数を得ることでもよい。これは、平均的なユーザに対する又はユーザの年齢層及び/又は性別の平均に対するデフォルト値に設定される。次いで、この較正定数は、平均の聴覚しきい値と比較されるユーザの聴覚しきい値の決定される比に基づいて調整される。例えば、20歳の正常な男性の平均の聴覚しきい値は、2kHzで3dBである。ユーザのしきい値が10dBで決定される場合、較正定数は、この特定のユーザに対し同様の知覚されるノイズレベルを達成するために、デフォルト値の5倍の高さに設定されてもよい。
【0056】
ASSR又はABRの検出は単なる例であることに留意されたい。Roessler, R., Collins, F.及びBurch, N. R.著(1969), HEART RATE RESPONSE TO SOUND AND LIGHT. Psychophysiology 5:359-369に記載されるように、音に対する心拍数の反応を測定することも可能である。
【0057】
図4は、第2の可能な較正方法を示す。ステップ80において、音生成ユニット30が校正音を出す。上述したように、これは音特性の掃引を含む。
【0058】
ステップ84において、装置10は、マスキング音の知覚される音レベル(例えば、低、中、高強度の音)及び快適性レベルに基づくユーザのフィードバックを要求する。これは、装置10の個人的な較正のために、ASSR又はABR反応と相関される。ステップ85において、較正音に反応するユーザ12により供給される手動入力のフィードバックに基づいて、マスキング音の音量の上限及び下限が設定される。例えば、ユーザ12が「低」のオプションを選択する場合、これは下限に対応し、ユーザ12が「高」のオプションを選択する場合、これは上限に対応する。前記装置は、ユーザ12が反応情報を手動で入力することを可能にするユーザインターフェースユニットを有する。
【0059】
次いで、較正された装置10が使用され、音生成ユニット30により出されたマスキング音の音量を、ユーザの測定されるASSR又は他の聴覚特性の指標のレベルに適応させるので、ユーザの聴覚特性による音の配信及び受信における差だけでなく、音生成ユニット30の位置の変化に対する差も補償される。
【0060】
図5は、
図1の装置10を用いてノイズをマスキングする方法を示す。この方法は、上述した較正方法の一方(又は両方)に従う。
【0061】
初期ステップ90において、トランスデューサユニット20がマスキングされるノイズを検出する。ステップ92において、センサユニット40が、検出されるノイズに対する反応であるユーザの脳活動を測定する。
【0062】
これら2つのステップは、ノイズがトランスデューサユニットにより検出されることを可能にし、トランスデューサユニットにより検出されるノイズに反応するユーザの脳活動の監視も可能にする。従って、ユーザの脳活動が、ユーザは妨害されたことを示しているかどうかに基づいて、ノイズのマスキングが必要であるかどうかが決定される。
【0063】
ノイズのマスキングが必要とされる場合、音生成ユニット30は、ステップ94においてマスキング音を生成する。このマスキング音は、以前の装置の較正を考慮している。従って、マスキング音の信号特性は、検出されるノイズ、ノイズに反応するユーザの脳活動及び較正音に反応するユーザの脳活動に基づいて調整される。
【0064】
調整されるマスキング音の信号特性は、例えば、
音量
(1つの音に対する)周波数
(ノイズベース信号に対する)周波数スペクトル、例えばノイズの種類
例えば音量関数のような経時的な時間的特性
を含む。
【0065】
周波数スペクトルは、例えばユーザの聴覚能力に一致するように適応してもよい。例えば、ユーザは(較正中に決定されるような)異なる周波数に対し特定の聴覚反応を持つので、ホワイトノイズ信号は、周波数の関数として平坦な振幅を持つ代わりに、振幅がユーザの聴覚感度の逆数に従うように適応するので、ユーザはホワイトノイズ音を知覚する。
【0066】
ユーザが特に敏感(ユーザの聴覚又は脳反応の何れか)である周波数が存在し、これら周波数は、マスキング音において抑制される。
【0067】
睡眠期間中に検出されるノイズの典型的な例は、交通ノイズ又はいびき音を含む。他のオプションが上述されたとしても、調整される信号特性は通例、信号の音量及び/又は信号の周波数を含む。
【0068】
トランスデューサユニット20は、検出されるノイズの周波数を測定し、センサユニット40は、ASSR又はABRを決定するために、ユーザのEEGスペクトルを分析する。検出されるノイズの結果として、ASSRのピークの検出を可能にする周波数が、制御器50で分かる。
【0069】
一例として、ASSRは、例えば10ミリ秒毎のような、一定の繰り返し速度で搬送波刺激を加えることにより得られる、高速聴覚刺激に対する電気生理学的反応である。使用されるテスト周波数は、一般に500、1000、2000及び4000Hzである。これらの周波数は、例えば振幅変調される。EEGスペクトルに記録される脳信号は、聴覚搬送波刺激に対する反応であり、この聴覚搬送波刺激が耳により検知される場合にのみ存在する(すなわち、聴覚しきい値より下では、反応信号はEEGスペクトルに存在しない、しきい値をより上では、反応がスペクトルに見られる)。
【0070】
検出されるノイズがEEGスペクトルにおいて検知される場合、マスキング音の音量は、そのノイズのレベルに調整される。この機能は、既知の周波数(例えば鉄道、航空機、交通及びいびき音)を持ち、各々のノイズ発生事象に対し数秒よりも長い時間期間で、頻繁に及び反復的に(しかし、予測不能で)起こる音に適する。これは、マスキング音が、検出されるノイズに最適に合わせられることを可能にするので、ノイズのマスキングが改善され、マスキング音により引き起こされる妨害によるユーザ12の不快感のリスクを下げる。
【0071】
次いで、マスキング音の音量は、(マスキング音がノイズをマスキングできるように)トランスデューサユニット20により検出されるノイズ、及び(マスキング音がユーザを妨害しないように)ユーザの反応の両方に基づいて調整される。
【0072】
例えばユーザが眠りに着くとき、マスキング音の音量が、不要なノイズをマスキングするのに十分であるように、ユーザ12は、眠りに着く前に、マスキング音の音量を設定することができる。ノイズレベルが経時的に変化する場合、マスキング音の音量は、それに応じて調整され、不要なノイズがマスキング音によりマスキングされたままになることを確実にする。
【0073】
マスキング音のパワー設定点(すなわち、所与の時間におけるマスキング音のパワーであり、ここでパワーは、音レベルに対応する)は、
【数1】
と定義されることができる。ここで、P
setは、マスキング音のパワー設定点であり、P
initは、セッション開始時にユーザ12により設定される音量での最初のマスキング音のパワー、P
extは、所与の時間における不要なノイズ音のパワー、P
ext_initは、不要なノイズの最初の音のパワー、及びCは、(例えば、デフォルト値C=1を持つ)較正定数である。
【0074】
このように、マスキング音のパワーは、最初に不要なノイズに一致するように設定され、これは、ユーザが眠る前にユーザにより実行されてもよい。ノイズが変化するにつれて、前記設定点は、較正定数Cに取り入れられるユーザの個人的な特性を考慮して、ノイズのパワーの変化に反応して適応する。
【0075】
上述されるように、較正ステップは、例えば値Psetの最大値を設定することだけでなく、較正定数Cの値を設定することを含む。
【0076】
較正定数は、較正中に決定されるユーザの聴覚感度に基づいて、自動的に又は手動で設定されてもよい。較正定数Cがデフォルトレベルに設定される場合、システムは、平均的な人に聞こえる音を出力する。例えばASSRが検出される音レベルのしきい値に基づく、較正定数と聴覚特性との間のマッピングがシステムに記憶される。聴覚感度が低いユーザの場合、較正シーケンスは、ASSR反応が存在するより大きな音レベルのしきい値を検出し、次いで、それに応じて、例えばデシベル尺度を用いて較正定数Cを設定する。
【0077】
好ましい実施形態において、(例えば、普通の夜にわたる)繰り返すノイズの傾向が記憶及び分析される。(例えば曜日及び時期のような)メタデータ及び/又は(例えばユーザ12の以前の睡眠/起床時間のような)個人データに基づいて、設定点(P
set)はさらに、そのような夜間の(典型的な)基準音レベル(時間tにおけるP
ext_refに対するするセッションの開始時(時間t
0)における不要なノイズの基準音レベル)に基づいて、起こると予想される前記検出されるノイズの音レベルを上手く予測するように調整されてもよい。
【数2】
ここで、P
ext_ref
(t)は、所与の時間tにおける不要なノイズの基準音のパワーであり、P
ext_ref
(t0)は、セッション開始時における最初の基準音のパワーである。
【0078】
示されるように、最初のパワーに対する調整は、特定の時間におけるノイズレベルと基準時間t0におけるノイズレベルとの比に基づいてスケーリングされる。
【0079】
値P_extは、連続ではなく、特定の設定点において測定され、これは、それが外部ノイズのレベルに対して劣ることを意味する。これは、ノイズが時間と共に減少するときは問題ではないが、夜間にノイズが増加するときには問題である。従って、前もって音の増大を予想し、マスキング音がそれに対し調整されることを確実にすることができる予測要素が組み込まれる。
【0080】
これは、夜間に、例えば列車の通過又は他人の目覚まし時計のような、外部ノイズのレベルにおける大きいが予測可能な増大が起こるとき、興味がある。
【0081】
ノイズマスキング装置は、記憶保存ユニットをさらに含み、これはトランスデューサユニット20により検出されるノイズに基づくノイズデータを記憶する。記憶保存ユニットは、制御器50と通信し、この制御器50は、アルゴリズムを用いてノイズデータを分析するように適応する。このアルゴリズムは、不要なノイズ音のレベルの傾向を予測するために、以前のデータを考慮している機械学習アルゴリズムでもよい。制御器50は、ノイズデータの分析に基づいて、予想されるノイズの傾向を決定するようにさらに適応する。この制御器50は、その後、前記予想されるノイズの傾向に基づいて、マスキング音の信号特性を調整する。
【0082】
装置10は、ユーザ12が、マスキング音の音量を手動で調整することを可能にするように適応するユーザインターフェースユニットを含む。このユーザインターフェースユニットは、制御器50と通信する。
【0083】
ある実施形態において、マスキング音の信号特性は、センサユニット40により検出されるユーザの睡眠状態に基づいて調整されてもよい。センサユニット40は、ユーザの脳活動を測定し、睡眠関連特徴、例えば目覚め、覚醒並びに浅い及び深い睡眠の規則性(例えば、深い睡眠からの脱出回数)を得る。
【0084】
以前の睡眠セッションから得られた前記睡眠関連特徴に基づいて、制御器50は、ユーザ12に、マスキング音の音量或いは周波数を変更すること、又はマスキング音を自動的に適応させることを勧める。
【0085】
勧められる信号特性の調整は、ユーザインターフェースユニットを用いて表示される通知を介してユーザ12に伝達されてもよい。好ましい実施形態において、トランスデューサユニット20は、アルゴリズムを用いて、予想されるノイズレベルに関するデータを生成するために、ユーザの睡眠期間中のノイズレベルに関するデータを測定及び記録する。制御器50は、生成されたデータに基づいて信号特性の勧められる調整を生じさせるように適応してもよく、ユーザインターフェースユニットが、作られたデータ及びデータに基づいて信号特性を調整する能力をユーザ12に提供するように適応する。
【0086】
前記システムは加えて、ユーザ12が眠りつつあるとき、ユーザ12をリラックスさせるように適応する連続的な落ち着いた音(calming sound)を生成するために使用される。これは、ノイズのマスキングに対する追加の特徴であり、知られている。
【0087】
落ち着いた音は、眠りに落ちるプロセスを容易にするために、ユーザ12を落ち着かせるように設計される。従って、睡眠中にマスキング音を送達することに加えて、前記システムは、落ち着いた音を再生し、睡眠を開始するためにも使用される。これらの落ち着いた音は、ノイズベースの信号でもよいし、又はこの音が例えば会話、ホエールノイズのような他の信号でもよい。
【0088】
音生成ユニット30は、覚醒を引き起こすことなく睡眠徐波を増強するために、ユーザ12の睡眠中に聴覚刺激を送達してもよい。これは、ノイズのマスキングに対する追加の特徴であり、知られている。このような音は、例えば50msの持続時間が1秒の休止時間で隔てられている音のパルスを有する。これは、認知的利益及び睡眠回復の強化を可能にする。(例えば、最初の入眠前又は夜間に目覚めた後にもう一度眠るような)眠りに着くのを妨げる様々な原因がある。これらは一般に2つの組、すなわち内因及び外因に分類される。外因は、上述したように、不要な音響ノイズを含む。内的妨害は、心理的原因(例えばストレス、反芻)、生理学的原因(例えば低い睡眠圧、耳鳴、高血圧)及び行動的原因(例えば睡眠環境不良)を含む。ユーザの睡眠中に連続的な落ち着いた音を再生することにより、装置10は、ユーザの睡眠の質を改善させる。
【0089】
従って、睡眠中にマスキング音を送達することに加えて、前記システムは、深い睡眠を促すために音を再生するのにも使用される。
【0090】
本発明の用途は、これらに限定されないが、睡眠トラッキングシステム、音送達システム及び音レベル測定システムの1つ以上を含む如何なる用途を含む。例えば、スマートフォン又はウェイクアップライトと組み合わせた心肺ベースの睡眠トラッカも含む。
【0091】
当業者は、上述した方法を実行するための制御器を容易に開発することができる。故に、前記フローチャートの各ステップは、制御器により行われる別のアクションを表してもよいし、制御器の夫々のモジュールにより行われてもよい。
【0092】
上述したように、実施形態は、制御器を利用する。この制御器は、必要とされる様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、様々な方法で実施されることができる。処理器は、前記必要とされる機能を実行するために、ソフトウェア(例えば、マイクロコード)を用いてプログラムされる、1つ以上のマイクロプロセッサを用いる制御器の一例である。しかしながら、制御器は、処理器を用いて又は用いずに実施されてよいし、幾つか機能を実行するための専用のハードウェアと、他の機能を実行するための処理器(例えば、1つ以上のプログラムされるマイクロプロセッサ及び関連する回路)との組み合わせとして実施されてもよい。
【0093】
本開示の様々な実施形態に用いられる制御器の構成要素の例は、これらに限定されないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含む。
【0094】
様々な実施において、処理器又は制御器は、例えばRAM、PROM、EPROM及びEEPROMである揮発性及び不揮発性コンピュータメモリのような1つ以上の記憶媒体に関連付けられてもよい。この記憶媒体は、1つ以上の処理器及び/又は制御器上で実行されるとき、前記必要とされる機能を行う1つ以上のプログラムで符号化されてもよい。様々な記憶媒体は、処理器又は制御器内に取り付けられてもよいし、又は記憶媒体に保存される1つ以上のプログラムが処理器又は制御器に読み込まれるように、搬送可能でもよい。
【0095】
開示される実施形態に対する変形例は、図面、本開示及び添付の特許請求の範囲を学ぶことにより、請求される発明を実施する際、当業者により理解及び実施されることができる。請求項において、「有する」という用語は、それ以外の要素又はステップを排除するものではなく、複数あることを述べていなくても、それが複数あることを排除するものではない。単一の処理器又は他のユニットが請求項に挙げられる幾つかの項目の機能を果たしてもよい。ある方法が互いに異なる従属請求項に挙げられているという単なる事実は、これらの方法の組み合わせが有利に使用されることができないことを示してはいない。コンピュータプログラムが上述されている場合、このコンピュータプログラムは、例えば他のハードウェアと共に又はその一部として供給される光学記憶媒体又はソリッドステート媒体のような適切な媒体に記憶/配布されてもよいが、他の形態、例えばインターネット、又は有線或いはワイヤレスの電話通信システムを介して配布されてもよい。「に適応する」という用語が請求項又は明細書に用いられる場合、「に適応する」という用語は、「ように構成される」と言う用語と同様であることを意味する。請求項における如何なる参照符号もその範囲を限定すると解釈されるべきではない。