(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】樹脂フィルム、積層体および袋
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240829BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20240829BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D30/02 ZAB
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2019193715
(22)【出願日】2019-10-24
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100213997
【氏名又は名称】金澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】石川 峻
【審査官】橋本 憲一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-065267(JP,A)
【文献】特開平09-165047(JP,A)
【文献】特開2000-044742(JP,A)
【文献】特開2019-034519(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109159501(CN,A)
【文献】国際公開第2018/163836(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/131168(WO,A1)
【文献】特開2018-130929(JP,A)
【文献】特開2020-075400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 30/02
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、第1層と第2層との2層を備える樹脂フィルムであって、
前記第1層と前記第2層とは、直接または熱可塑性樹脂層を介して積層され、
前記第1層が、前記樹脂フィルムの最内層を構成しており、
前記樹脂フィルムがポリプロピレンとポリエチレンとを含み、
前記第1層を構成する樹脂組成物は、ポリプロピレンを主成分として含み、
前記第1層のポリエチレンの含有量が20質量%以下であり、
前記第2層を構成する樹脂組成物は、主成分であるポリプロピレンと、バイオマスポリエチレンを含み、
前記第2層の前記ポリプロピレンが、プロピレン-エチレンランダム共重合体であり、
前記第2層のポリエチレンの含有量が5質量%以上35質量%以下であり、
前記樹脂フィルムが未延伸樹脂フィルムであり、
前記樹脂フィルムの厚みが15μm以上250μm以下であり、
前記樹脂フィルムのバイオマス度が5%以上である、樹脂フィルム。
【請求項2】
前記樹脂フィルムが、第3層を更に備え、
前記第3層は、直接または熱可塑性樹脂層を介して第2層に積層され、
前記第3層を構成する樹脂組成物は、ポリプロピレンを主成分として含み、
前記第3層のポリエチレンの含有量が35質量%以下である、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
樹脂フィルムの最外層を構成している層のバイオマス度が、30%以下である、請求項1または2に記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
ポリプロピレンの含有量が66質量%以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【請求項5】
一方向および前記一方向に直交する他の方向における破断伸度が、それぞれ500%以上である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【請求項6】
少なくとも1つの二軸延伸プラスチックフィルムと、請求項1乃至5
のいずれか一項に記載の樹脂フィルム
とを含む、積層体。
【請求項7】
請求項6に記載の積層体を含む、袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルム、積層体および袋に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンからなるフィルムは、適度な柔軟性をもち、透明性、耐油性、防湿性、耐薬品性等に優れるとともに、安価であることから、各種の包装袋等に使用されている。さらに、ポリプロピレンフィルムは、シール性を有することから、包装袋等のシーラントフィルムに使用されている。例えば、特許文献1には、ポリプロピレン樹脂層を含む多層フィルムが提案され、この多層フィルムはシーラントフィルムとして使用されることが開示されている。
【0003】
しかしながら、ポリプロピレンフィルムは、耐熱性についてはポリエチレンフィルムよりも優れているものの、引裂き性についてはポリエチレンフィルムよりも劣っているという欠点がある。そのため、ポリプロピレンフィルムを包装袋に用いた場合には、包装袋を引裂いて開封することが困難になるという問題があった。
【0004】
ところで、近年では、地球温暖化を抑制する観点から、世界規模で二酸化炭素の排出量の削減が求められてきており、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれ、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、各種の樹脂をバイオマス原料から製造する試みも行われている。
【0005】
ポリプロピレンについても、バイオマスを原料とするバイオマスポリプロピレンが上市されている。しかしながら、バイオマスポリプロピレンは、化石燃料ポリプロピレンよりもコストが非常に高く、実用性が著しく低いのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、化石燃料ポリプロピレンの一部を、比較的安価なバイオマスポリエチレンに代替することによって、化石燃料ポリプロピレンの使用量を削減し環境負荷を低減することを考えた。しかしながら、ポリプロピレンを主成分として含む樹脂フィルムは、ポリエチレンの割合を増加させると、シール性および成膜性が低下するという新たな問題が生じた。本発明者らは、鋭意検討した結果、樹脂フィルムを多層構造とし、各層のポリエチレンの含有量を調整することで、これらの問題を解決できるとの知見を得た。また、このような多層構造の樹脂フィルムは、引裂き性が予想外に向上するという知見を得た。
【0008】
本発明は、上記知見に鑑みてなされたものであり、その目的は、環境負荷低減性を有すると共に、シール性および成膜性を備え、特に引裂き性にも優れる樹脂フィルム、積層体および袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも、第1層と第2層との2層を備える樹脂フィルムであって、前記第1層と前記第2層とは、直接または熱可塑性樹脂層を介して積層され、前記第1層が、前記樹脂フィルムの最内層を構成しており、前記樹脂フィルムがポリプロピレンとポリエチレンとを含み、前記第1層を構成する樹脂組成物は、ポリプロピレンを主成分として含み、前記第1層のポリエチレンの含有量が20質量%以下であり、前記第2層を構成する樹脂組成物は、主成分であるポリプロピレンと、バイオマスポリエチレンを含み、前記第2層のポリエチレンの含有量が35質量%以下である、樹脂フィルムである。
【0010】
本発明による樹脂フィルムにおいて、前記樹脂フィルムが、第3層を更に備え、前記第3層は、直接または熱可塑性樹脂層を介して第2層に積層され、前記第3層を構成する樹脂組成物は、ポリプロピレンを主成分として含み、前記第3層のポリエチレンの含有量が35質量%以下であってもよい。
【0011】
本発明による樹脂フィルムにおいて、バイオマス度が5%以上であってもよい。
【0012】
本発明による樹脂フィルムにおいて、樹脂フィルムの最外層を構成している層のバイオマス度が、30%以下であってもよい。
【0013】
本発明による樹脂フィルムにおいて、ポリプロピレンの含有量が66質量%以上であってもよい。
【0014】
本発明による樹脂フィルムにおいて、一方向および前記一方向に直交する他の方向における破断伸度が、それぞれ500%以上であってもよい。
【0015】
本発明は、少なくとも1つの二軸延伸プラスチックフィルムと、本発明による樹脂フィルムを含む、積層体である。
【0016】
本発明は、本発明による積層体を含む、袋である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、環境負荷低減性を有すると共に、シール性および成膜性を備え、特に引裂き性にも優れる樹脂フィルム、積層体および袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の樹脂フィルムの一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の樹脂フィルムの他の例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の樹脂フィルムの他の例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の樹脂フィルムの他の例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の樹脂フィルムの他の例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の樹脂フィルムの他の例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の積層体の一例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の積層体の他の例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の積層体の他の例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の積層体の他の例を示す断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の積層体の他の例を示す断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の袋のシール強度および低温シール性を測定するための試験片を切り出すときの図である。
【
図14】
図14は、試験片を用いて、シール強度および低温シール性を測定する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1乃至
図14を参照して、本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから適宜変更し誇張してある。
【0020】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0021】
樹脂フィルム
本発明の樹脂フィルムは、第1層と第2層との2層を備え、第1層と第2層とは、直接または熱可塑性樹脂層を介して積層され、第1層が樹脂フィルムの最内層を構成している。これにより、シール性を備える樹脂フィルムとすることができる。本発明の樹脂フィルムにおいて最内層は、樹脂フィルムが袋に用いられた際に、収容される内容物側に位置する層である。また、第2層は、樹脂フィルムの最外層を構成していてもよい。本発明の樹脂フィルムにおいて最外層は、最内層の反対側に位置する層である。
本発明の樹脂フィルムは、第3層を更に備え、第3は直接または熱可塑性樹脂層を介して第2層に積層されていてもよい。これにより、樹脂フィルムにおけるカールの発生を防止することができる。また、第3層は、樹脂フィルムの最外層を構成していてもよい。
以下、
図1乃至
図6を参照して、本発明の樹脂フィルムの層構成の一例について説明する。
【0022】
図1は、本発明の樹脂フィルム10の一例を示す断面図である。樹脂フィルム10は、第1層11と、第2層12とを備える。第1層11は、樹脂フィルム10の最内層を構成している。第2層12は、樹脂フィルム10の最外層を構成している。第1層11と、第2層12とは、直接積層されている。
【0023】
図2は、本発明の樹脂フィルム10の他の一例を示す断面図である。樹脂フィルム10は、第1層11と、第1の熱可塑性樹脂層13と、第2層12とを順に備える。第1層11は、樹脂フィルム10の最内層を構成している。第2層12は、樹脂フィルム10の最外層を構成している。第1層11と、第2層12とは、第1の熱可塑性樹脂層13を介して積層されている。
【0024】
図3は、本発明の樹脂フィルム10の他の一例を示す断面図である。樹脂フィルム10は、第1層11と、第2層12と、第3層14とを順に備える。第1層11は、樹脂フィルム10の最内層を構成している。第3層14は、樹脂フィルム10の最外層を構成している。第1層11と、第2層12とは、直接積層されている。第2層12と、第3層14とは、直接積層されている。
【0025】
図4は、本発明の樹脂フィルム10の他の一例を示す断面図である。樹脂フィルム10は、第1層11と、第2層12と、第1の熱可塑性樹脂層13と、第3層14とを順に備える。第1層11は、樹脂フィルム10の最内層を構成している。第3層14は、樹脂フィルム10の最外層を構成している。第1層11と、第2層12とは、直接積層されている。第2層12と、第3層14とは、第1の熱可塑性樹脂層13を介して積層されている。
【0026】
図5は、本発明の樹脂フィルム10の他の一例を示す断面図である。樹脂フィルム10は、第1層11と、第1の熱可塑性樹脂層13と、第2層12と、第3層14とを順に備える。第1層11は、樹脂フィルム10の最内層を構成している。第3層14は、樹脂フィルム10の最外層を構成している。第1層11と、第2層12とは、第1の熱可塑性樹脂層13を介して積層されている。第2層12と、第3層14とは、直接積層されている
【0027】
図6は、本発明の樹脂フィルム10の他の一例を示す断面図である。樹脂フィルム10は、第1層11と、第1の熱可塑性樹脂層13と、第2層12と、第2の熱可塑性樹脂層15と、第3層14とを順に備える。第1層11は、樹脂フィルム10の最内層を構成している。第3層14は、樹脂フィルム10の最外層を構成している。第1層11と、第2層12とは、第1の熱可塑性樹脂層13を介して積層されている。第2層12と、第3層14とは、第2の熱可塑性樹脂層15を介して積層されている。
【0028】
なお、上記した
図1乃至
図6に示す樹脂フィルム10の複数の層構成を適宜組み合わせることも可能である。
【0029】
本発明の樹脂フィルムはポリプロピレンを含む。ポリプロピレンとしては、例えば、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、ホモポリプロピレン、およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0030】
ここで、「プロピレン-エチレンブロック共重合体」は、下記の式(I)に示される構造式を有する材料を意味する。式(I)において、m1,m2,m3は1以上の整数を表す。
【0031】
【0032】
また、「プロピレン-エチレンランダム共重合体」は、下記の式(II)に示される構造式を有する材料を意味する。式(II)において、m,nは1以上の整数を表す。
【0033】
【0034】
また、「ホモポリプロピレン」は、下記の式(III)に示される構造式を有する材料を意味する。式(III)において、mは1以上の整数を表す。
【0035】
【0036】
本発明の樹脂フィルムにおいて、ポリプロピレンの含有量は、66質量%以上であることが好ましく、71質量%以上99質量%以下であることがより好ましく、74質量%以上95質量%以下であることが更に好ましい。これにより、樹脂フィルムの耐熱性および耐油性を向上することができる。
【0037】
なお、本明細書においては、特に限定する場合を除き、「プロピレン」は、化石燃料由来の原料より得られたものである。
【0038】
本発明の樹脂フィルムはポリエチレンを含む。これにより、樹脂フィルムの引裂き性を向上することができる。ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。本発明の樹脂フィルムは、シール性の観点から、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、およびこれらの混合物を含むことが好ましく、シール性および引裂き性の観点から、低密度ポリエチレンを含むことがより好ましい。
【0039】
ここで、高密度ポリエチレンは、942kg/m3を超える密度を有するポリエチレンをいい、中密度ポリエチレンは、925kg/m3超942kg/m3以下の密度を有するポリエチレンをいう。
また、低密度ポリエチレンは、高圧法低密度ポリエチレンとも称することができ、高圧法エチレン単独重合体であり、従来公知の高圧ラジカル重合法により得ることができ、925kg/m3以下の密度を有するポリエチレンである。
また、直鎖状低密度ポリエチレンは、チーグラー・ナッタ触媒に代表されるマルチサイト触媒またはメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を使用して重合した、エチレンとα-オレフィンとの共重合体であり、密度が925kg/m3以下の密度を有するポリエチレンである。
【0040】
本発明の樹脂フィルムにおいて、ポリエチレンの含有量は、29質量%以下であることが好ましく、1質量%以上28質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上26質量%以下であることが更に好ましい。
【0041】
樹脂フィルムのポリエチレンは、化石燃料ポリエチレンであっても、バイオマスポリエチレンであっても、これらを組み合わせたものであってもよい。本発明の樹脂フィルムは、環境負荷低減性の観点から、バイオマスポリエチレンを含むことが好ましい。以下、バイオマスポリエチレンについて説明する。
【0042】
<バイオマス由来のエチレン>
バイオマスポリエチレンの原料となるバイオマス由来のエチレンの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により得ることができる。以下、バイオマス由来のエチレンの製造方法の一例を説明する。
【0043】
バイオマス由来のエチレンは、バイオマス由来のエタノールを原料として製造することができる。特に、植物原料から得られるバイオマス由来の発酵エタノールを用いることが好ましい。植物原料は、特に限定されず、従来公知の植物を用いることができる。例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、およびマニオクを挙げることができる。
【0044】
バイオマス由来の発酵エタノールとは、植物原料より得られる炭素源を含む培養液にエタノールを生産する微生物またはその破砕物由来産物を接触させ、生産した後、精製されたエタノールを指す。培養液からのエタノールの精製は、蒸留、膜分離、および抽出等の従来公知の方法が適用可能である。例えば、ベンゼン、シクロヘキサン等を添加し、共沸させるか、または膜分離等により水分を除去する等の方法が挙げられる。
【0045】
上記エチレンを得るために、この段階で、エタノール中の不純物総量が1ppm以下にする等の高度な精製を更に行ってもよい。
【0046】
エタノールの脱水反応によりエチレンを得る際には通常触媒が用いられるが、この触媒は、特に限定されず、従来公知の触媒を用いることができる。プロセス上有利なのは、触媒と生成物の分離が容易な固定床流通反応であり、例えば、γ―アルミナ等が好ましい。
【0047】
この脱水反応は吸熱反応であるため、通常加熱条件で行う。商業的に有用な反応速度で反応が進行すれば、加熱温度は限定されないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは250℃以上、更に好ましくは300℃以上の温度が適当である。上限も特に限定されないが、エネルギー収支および設備の観点から、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下である。
【0048】
エタノールの脱水反応においては、原料として供給するエタノール中に含まれる水分量によって反応の収率が左右される。一般的に、脱水反応を行う場合には、水の除去効率を考えると水が無いほうが好ましい。しかしながら、固体触媒を用いたエタノールの脱水反応の場合、水が存在しないと他のオレフィン、特にブテンの生成量が増加する傾向にあることが判明した。恐らく、少量の水が存在しないと脱水後のエチレン二量化を押さえることができないためと推察している。許容される水の含有量の下限は、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上必要である。上限は特に限定されないが、物質収支上および熱収支の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0049】
このようにしてエタノールの脱水反応を行うことによりエチレン、水および少量の未反応エタノールの混合部が得られるが、常温において約5MPa以下ではエチレンは気体であるため、これら混合部から気液分離により水やエタノールを除きエチレンを得ることができる。これは公知の方法で行えばよい。
【0050】
気液分離により得られたエチレンは更に蒸留され、このときの操作圧力が常圧以上であること以外は、蒸留方法、操作温度、および滞留時間等は特に制約されない。
【0051】
原料がバイオマス由来のエタノールの場合、得られたエチレンには、エタノール発酵工程で混入した不純物であるケトン、アルデヒド、およびエステル等のカルボニル化合物並びにその分解物である炭酸ガスや、酵素の分解物・夾雑物であるアミンおよびアミノ酸等の含窒素化合物並びにその分解物であるアンモニア等が極微量含まれる。エチレンの用途によっては、これら極微量の不純物が問題となるおそれがあるので、精製により除去してもよい。精製方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。好適な精製操作としては、例えば、吸着精製法をあげることができる。用いる吸着剤は特に限定されず、従来公知の吸着剤を用いることができる。例えば、高表面積の材料が好ましく、吸着剤の種類としては、バイオマス由来のエタノールの脱水反応により得られるエチレン中の不純物の種類・量に応じて選択される。
【0052】
なお、エチレン中の不純物の精製方法として苛性水処理を併用してもよい。苛性水処理をする場合は、吸着精製前に行うことが望ましい。その場合、苛性処理後、吸着精製前に水分除去処理を施す必要がある。
【0053】
<バイオマスポリエチレン>
バイオマスポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のエチレンには、上記の製造方法により得られたものを用いることが好ましい。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリエチレンはバイオマス由来となる。バイオマスポリエチレンとしては、例えば、Braskem社製のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(商品名:SLL318、密度:918kg/m3、MFR:2.7g/10分、バイオマス度87%)、Braskem社製のバイオマス低密度ポリエチレン(商品名:SEB853、密度:923kg/m3、MFR:2.7g/10分、バイオマス度95%)等を用いることができる。なお、ポリエチレンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。
【0054】
本発明の目的を損なわない範囲であれば、バイオマスポリエチレンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のエチレンを更に含んでもよい。
【0055】
本発明において、「バイオマス度」は、バイオマス由来成分の重量比率で示される。
【0056】
大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばとうもろこし中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本発明において、「バイオマス度」とは、バイオマス由来成分の重量比率を示すものである。例えば、ポリエチレンテレフタレートを例にとると、ポリエチレンテレフタレートは、2炭素原子を含むエチレングリコールと8炭素原子を含むテレフタル酸とがモル比1:1で重合したものであるため、エチレングリコールとしてバイオマス由来のもののみを使用した場合、ポリエステル中のバイオマス由来成分の重量比率は31.25%であるため、バイオマス度の理論値は31.25%となる。具体的には、ポリエチレンテレフタレートの質量は192であり、そのうちバイオマス由来のエチレングリコールに由来する質量は60であるため、60÷192×100=31.25となる。また、化石燃料由来のエチレングリコールと、化石燃料由来のジカルボン酸とを用いて製造した化石燃料由来のポリエステル中のバイオマス由来成分の重量比率は0%であり、化石燃料由来のポリエステルのバイオマス度は0%となる。以下、特に断りのない限り、「バイオマス度」とはバイオマス由来成分の重量比率を示したものとする。
【0057】
本発明においては、理論上、ポリエチレンの原料として、全てバイオマス由来のエチレンを用いれば、バイオマス由来のエチレン濃度は100%であり、バイオマスポリエチレンのバイオマス度は100%となる。また、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料ポリエチレン中のバイオマス由来のエチレン濃度は0%であり、化石燃料ポリエチレンのバイオマス度は0%となる。
【0058】
本発明において、バイオマスポリエチレンやバイオマス由来の樹脂層は、バイオマス度が100%である必要はない。樹脂フィルムの一部にでもバイオマス由来の原料が用いられていれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減するという趣旨に沿うからである。
【0059】
本樹脂フィルムは、バイオマス度が、5%以上であることが好ましい。これにより、環境負荷低減性をより向上することができる。樹脂フィルムのバイオマス度は、5%以上90%以下であることがより好ましく、5%以上50%以下であることが更に好ましく、10以上25%以下であることが更により好ましい。
【0060】
本発明の樹脂フィルムの厚みは、15μm以上250μm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましく、20μm以上150μm以下であることが更に好ましい。これにより、樹脂フィルムのシール性をより向上することができる。
【0061】
本発明の樹脂フィルムにおいて、第2層の厚みは、第1層の厚み以上とすることが好ましい。これにより、樹脂フィルムのシール性および引裂き性を向上することができる。第1層:第2層の厚みの比率は、1:8~1:1であることが好ましく、1:5~1:1であることがより好ましい。
また、樹脂フィルムが第3層を備える場合、第2層の厚みは、第3層の厚み以上とすることが好ましい。これにより、多層との層間ラミネート強度および引裂き性を向上することができる。第2層:第3層の厚みの比率は、8:1~1:1であることが好ましく、5:1~1:1であることがより好ましい。
【0062】
本発明の樹脂フィルムは、一方向および一方向に直交する他方向における破断伸度が、それぞれ500%以上であることが好ましい。本発明における樹脂フィルムの破断伸度は、JIS K7127に準拠して行うものとする。テンシロン万能材料試験機RTC-1310A(株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて、温度25℃、相対湿度50%の環境下に試験片を1分間保持した後に、温度25℃、相対湿度50%の環境下で測定を行う。一辺が15mm、一辺と直交する方向が150mmの長方形状の試験片を用いて測定を行い、初期把持具間距離は100mm、引張速度は300mm/分である。なお、初期把持具間距離を100mmとして測定することができる限りにおいて、一辺と直交する方向の長さは調整可能である。
【0063】
流れ方向(MD)における樹脂フィルムの破断伸度(%)は、500%上であることが好ましい。流れ方向(MD)における樹脂フィルムの破断伸度は、好ましくは700%以上であり、より好ましくは800%以上である。また、流れ方向に直交する垂直方向(TD)における樹脂フィルムの破断伸度は、500%以上であることが好ましい。垂直方向(TD)における樹脂フィルムの破断伸度は、好ましくは700%以上であり、より好ましくは800%以下であり、更に好ましくは900%以上である。
【0064】
なお、上述した一方向は、流れ方向(MD)または垂直方向(TD)とは異なる方向であってもよい。
【0065】
以下、第1層、第2層、第3層および熱可塑性樹脂層についてそれぞれ詳細に説明する。
【0066】
(第1層)
第1層は、ポリプロピレンを主成分として含む樹脂組成物により構成されている。これにより、樹脂フィルムの耐熱性および耐油性を向上することができる。本明細書において、「主成分として含む」、「主成分である」とは、含有量が50質量%を超えることを意味する。ポリプロピレンとしては、例えば、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、ホモポリプロピレン、およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。第1層を構成する樹脂組成物は、シール強度の観点からは、プロピレン-エチレンブロック共重合体を含むことが好ましく、低温シール性の観点からは、プロピレン-エチレンランダム共重合体を含むことが好ましい。
【0067】
第1層を構成する樹脂組成物において、ポリプロピレンの含有量は、51質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。これにより、樹脂フィルムの耐熱性および耐油性をより向上することができる。
【0068】
第1層を構成する樹脂組成物は、ポリエチレンを含んでもよい。これにより、樹脂フィルムの引裂き性を向上することができる。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。第1層を構成する樹脂組成物は、シール性の観点から、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、およびこれらの混合物を含むことが好ましい。
【0069】
第1層を構成する樹脂組成物として、ポリプロピレンとポリエチレンとを混合したものを用いる場合には、第1層を構成する樹脂組成物は、海島構造を有していてもよい。ここで、「海島構造」とは、ポリプロピレンが連続する領域の内に、ポリエチレンが不連続に分散している構造をいう。海島構造を有することで、樹脂フィルムの引裂き性をより向上することができる。
【0070】
第1層を構成する樹脂組成物において、ポリエチレンの含有量は20質量%以下である。これにより、シール性を備える樹脂フィルムとすることができる。第1層を構成する樹脂組成物中のポリエチレンの含有量は、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0071】
第1層を構成する樹脂組成物のポリエチレンは、化石燃料ポリエチレンであっても、バイオマスポリエチレンであっても、これらを組み合わせたものであってもよい。第1層を構成する樹脂組成物は、環境負荷低減性の観点から、バイオマスポリエチレンを含むことが好ましい。
【0072】
第1層を構成する樹脂組成物において、バイオマス度は、50%以下であることが好ましい。バイオマス由来の原料から得られた樹脂は、化石燃料由来の原料から得られた樹脂と比較して低分子量成分の割合が多く、この低分子量成分は樹脂フィルムのシール性に影響を及ぼす可能性がある。そのため、第1層を構成する樹脂組成物のバイオマス度を50%以下とすることで、シール性に及ぼす影響を低減することができる。第1層を構成する樹脂組成物のバイオマス度は、環境負荷低減性およびシール性の観点から、0.1%以上25%以下であることが好ましく、1%以上15%以下であることがより好ましい。
【0073】
第1層を構成する樹脂組成物は、好ましくは1g/10分以上30g/10分以下、より好ましくは3g/10分以上25g/10分以下、更に好ましくは5g/10分以上20g/10分以下のメルトフローレート(MFR)を有するものである。メルトフローレートは、JIS K7210-2014に規定された方法において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、A法により測定される値である。第1層を構成する樹脂組成物のMFRが1g/10分以上であれば、成形加工時の押出負荷を低減することができる。また、第1層を構成する樹脂組成物のMFRが30g/10分以下であれば、樹脂フィルムの機械的強度を高めることができる。
【0074】
第1層の厚みは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上80μm以下であることがより好ましく、10μm以上50μm以下であることが更に好ましい。これにより、樹脂フィルムのシール性をより向上することができる。また、第1層は、2層以上から構成されるものであってもよい。
【0075】
本発明の特性を損なわない範囲において、第1層を構成する樹脂組成物は、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、無機粒子、有機粒子、離型剤および分散剤等の添加剤を1種または2種以上含んでいてもよい。
【0076】
(第2層)
第2層は、主成分であるポリプロピレンと、バイオマスポリエチレンとを含む樹脂組成物により構成されている。第2層を構成する樹脂組成物が、主成分としてポリプロピレンを含むことにより、樹脂フィルムの耐熱性および耐油性を向上することができる。また、第2層を構成する樹脂組成物が、バイオマスポリエチレンを含むことにより、樹脂フィルムの環境負荷低減性および引裂き性を向上することができる。
【0077】
第2層を構成する樹脂組成物は、海島構造を有していてもよい。海島構造を有することで、樹脂フィルムの引裂き性をより向上することができる。
【0078】
第2層を構成する樹脂組成物において、ポリプロピレンは、例えば、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、ホモポリプロピレン、およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。第2層を構成する樹脂組成物は、シール強度の観点からは、プロピレン-エチレンブロック共重合体を含むことが好ましく、低温シール性の観点からは、プロピレン-エチレンランダム共重合体を含むことが好ましい。
【0079】
第2層を構成する樹脂組成物において、ポリプロピレンの含有量は、51質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。これにより、樹脂フィルムの耐熱性および耐油性をより向上することができる。
【0080】
第2層を構成する樹脂組成物において、バイオマスポリエチレンは、例えば、バイオマス高密度ポリエチレン、バイオマス中密度ポリエチレン、バイオマス低密度ポリエチレン、バイオマス直鎖状低密度ポリエチレン、およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。第2層を構成する樹脂組成物は、引裂き性の観点から、バイオマス低密度ポリエチレンを含むことが好ましい。
【0081】
第2層を構成する樹脂組成物において、バイオマス度は、5%以上であることが好ましい。これにより、樹脂フィルムの環境負荷低減性をより向上することができる。第2層を構成する樹脂組成物のバイオマス度は、5%以上95%以下であることがより好ましく、10%以上50%以下であることが更に好ましい。
【0082】
第2層が樹脂フィルムの最外層を構成している場合、第2層を構成する樹脂組成物のバイオマス度は、30%以下であることが好ましい。バイオマス由来の原料から得られた樹脂は、化石燃料由来の原料から得られた樹脂と比較して低分子量成分の割合が多く、この低分子量成分は他の層との密着性に影響を及ぼす可能性がある。第2層を構成する樹脂組成物のバイオマス度を30%以下とすることで、他の層と密着性に及ぼす影響を低減することができる。第2層を構成する樹脂組成物のバイオマス度は、環境負荷低減性および密着性の観点から、1%以上27%以下であることが好ましく、5%以上20%以下であることがより好ましい。
【0083】
本発明の特性を損なわない範囲において、第2層を構成する樹脂組成物は、化石燃料ポリエチレンを含んでもよい。化石燃料ポリエチレンとしては、化石燃料高密度ポリエチレン、化石燃料中密度ポリエチレン、化石燃料低密度ポリエチレン、化石燃料直鎖状低密度ポリエチレン、およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0084】
第2層を構成する樹脂組成物において、ポリエチレンの含有量は35質量%以下である。これにより、製膜性を備える樹脂フィルムとすることができる。第2層を構成する樹脂組成物中のポリエチレンの含有量は、5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、15質量%以上30質量%以下であることが好ましい。これにより、樹脂フィルムの引裂き性を向上することができる。
【0085】
第2層を構成する樹脂組成物は、好ましくは1g/10分以上30g/10分以下、より好ましくは3g/10分以上25g/10分以下、更に好ましくは5g/10分以上20g/10分以下のメルトフローレート(MFR)を有するものである。第2層を構成する樹脂組成物のMFRが1g/10分以上であれば、成形加工時の押出負荷を低減することができる。また、第2層を構成する樹脂組成物のMFRが30g/10分以下であれば、樹脂フィルムの機械的強度を高めることができる。
【0086】
第2層の厚みは、10μm以上150μm以下であることが好ましく、15μm以上120μm以下であることがより好ましく、20μm以上100μm以下であることが更に好ましい。これにより、樹脂フィルムのシール性をより向上することができる。また、第2層は、2層以上から構成されるものであってもよい。
【0087】
本発明の特性を損なわない範囲において、第2層を構成する樹脂組成物は、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、無機粒子、有機粒子、離型剤および分散剤等の添加剤を1種または2種以上含んでいてもよい。
【0088】
(第3層)
第3層は、ポリプロピレンを主成分として含む樹脂組成物により構成されている。これにより、樹脂フィルムの耐熱性および耐油性を向上することができる。ポリプロピレンとしては、例えば、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、ホモポリプロピレン、およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。第3層を構成する樹脂組成物は、シール強度の観点からは、プロピレン-エチレンブロック共重合体を含むことが好ましく、低温シール性の観点からは、プロピレン-エチレンランダム共重合体を含むことが好ましい。
【0089】
第3層を構成する樹脂組成物において、ポリプロピレンの含有量は、51質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。これにより、樹脂フィルムの耐熱性および耐油性をより向上することができる。
【0090】
本発明の樹脂フィルムにおいて、第3層を構成する樹脂フィルム中のポリプロピレンの含有量と、第1層を構成する樹脂フィルム中のポリプロピレンの含有量の差は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。これにより、樹脂フィルムのカールをより低減することができる。
【0091】
第3層を構成する樹脂組成物は、ポリエチレンを含んでもよい。これにより、樹脂フィルムの引裂き性を向上することができる。第1層を構成する樹脂組成物がポリエチレンを含む場合、ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0092】
第3層を構成する樹脂組成物として、ポリプロピレンとポリエチレンとを混合したものを用いる場合には、第3層を構成する樹脂組成物は、海島構造を有していてもよい。海島構造を有することで、樹脂フィルムの引裂き性をより向上することができる。
【0093】
第3層を構成する樹脂組成物において、ポリエチレンの含有量は35質量%以下である。これにより、製膜性を備える樹脂フィルムとすることができる。第3層を構成する樹脂組成物中のポリエチレンの含有量は、ポリエチレンの含有量は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることが好ましい。これにより、樹脂フィルムの引裂き性を向上することができる。
【0094】
第3層を構成する樹脂組成物のポリエチレンは、化石燃料ポリエチレンであっても、バイオマスポリエチレンであっても、これらを組み合わせたものであってもよい。第3層を構成する樹脂組成物は、環境負荷低減性の観点から、バイオマスポリエチレンを含むことが好ましい。
【0095】
第3層が樹脂フィルムの最外層を構成している場合、第3層を構成する樹脂組成物のバイオマス度は、30%以下であることが好ましい。バイオマス由来の原料から得られた樹脂は、化石燃料由来の原料から得られた樹脂と比較して低分子量成分の割合が多く、この低分子量成分は他の層との密着性に影響を及ぼす可能性がある。第3層を構成する樹脂組成物のバイオマス度を30%以下とすることで、他の層と密着性に及ぼす影響を低減することができる。第3層を構成する樹脂組成物のバイオマス度は、環境負荷低減性および密着性の観点から、1%以上25%以下であることが好ましく、5%以上20%以下であることがより好ましい。
【0096】
第3層を構成する樹脂組成物は、好ましくは1g/10分以上30g/10分以下、より好ましくは3g/10分以上25g/10分以下、更に好ましくは5g/10分以上20g/10分以下のメルトフローレート(MFR)を有するものである。第3層を構成する樹脂組成物のMFRが1g/10分以上であれば、成形加工時の押出負荷を低減することができる。また、第3層を構成する樹脂組成物のMFRが30g/10分以下であれば、樹脂フィルムの機械的強度を高めることができる。
【0097】
第3層の厚みは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上80μm以下であることがより好ましく、10μm以上50μm以下であることが更に好ましい。これにより、他の層との密着性をより向上することができる。また、第3層は、2層以上から構成されるものであってもよい。
【0098】
本発明の特性を損なわない範囲において、第3層を構成する樹脂組成物は、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、無機粒子、有機粒子、離型剤および分散剤等の添加剤を1種または2種以上含んでいてもよい。
【0099】
(熱可塑性樹脂層)
熱可塑性樹脂層は、いずれか2層をラミネートにより貼合するために形成される層である。熱可塑性樹脂層は、従来公知の方法、例えば溶融押出しラミネート法やサンドラミネート法により形成することができる。熱可塑性樹脂層の材料としては、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、または環状ポリオレフィン系樹脂、またはこれら樹脂を主成分とする共重合樹脂、変性樹脂、または、混合体(アロイを含む)を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-ポリプロピレンのランダムもしくはブロック共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-マレイン酸共重合体、アイオノマー樹脂、また、層間の密着性を向上させるために、上記したポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂等を用いることができる。また、ポリオレフィン樹脂に、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、または、共重合した樹脂等を用いることができる。これらの材料は、1種単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリノルボネン等の環状ポリオレフィン等を用いることができる。これらの樹脂は、単独または複数を組み合せて使用できる。
【0100】
熱可塑性樹脂層は、バイオマス由来の原料から得られた樹脂を含んでもよいし、化石燃料由来の原料から得られた樹脂を含んでもよい。
【0101】
(樹脂フィルムの製造方法)
本発明の樹脂フィルムの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。樹脂フィルムは、共押出成形されてなることが好ましく、共押出成形が、Tダイ法またはインフレーション法により行われることがより好ましい。以下、Tダイ法およびインフレーション法により樹脂フィルムを製造する方法の一例を説明する。
【0102】
Tダイ法においては、上記第1層を構成する樹脂組成物の原料および第2層を構成する樹脂組成物の原料をそれぞれ乾燥させた後、これらのそれぞれ融点以上の温度(Tm)~Tm+70℃の温度に加熱された溶融押出機に供給して、これらを溶融し、Tダイのダイよりシート状に共押出し、共押出されたシート状物を回転している冷却ドラム等で急冷固化することにより樹脂フィルムを成形することができる。
溶融押出機としては、一軸押出機、二軸押出機、ベント押出機、タンデム押出機等を目的に応じて使用することができる。
【0103】
インフレーション法においては、まず、上記第1層を構成する樹脂組成物の原料および第2層を構成する樹脂組成物の原料をそれぞれ乾燥させた後、これらのそれぞれ融点以上の温度(Tm)~Tm+70℃の温度に加熱された溶融押出機に供給して、これらを溶融し、環状ダイのダイにより円筒状に共押出しする。このときに、円筒状の溶融樹脂内に下方から空気を送り、円筒の径を所定の大きさに膨張させると共に、円筒外に下方から冷却用空気を送る。この膨張した円筒状体をバブルと呼ぶ。続いて、バブルを、案内板およびピンチロールによってフィルム状に折り畳み、巻き上げ部において巻き取る。折り畳まれたフィルムは、筒状のまま巻き取っても、筒の両端をスリッター等で除去し、2枚のフィルムに切り離してから、それぞれを巻き取ってもよい。これにより樹脂フィルムを成形することができる。
溶融押出機としては、一軸押出機、二軸押出機、ベント押出機、タンデム押出機等を目的に応じて使用することができる。
【0104】
積層体
次に、本発明の積層体20について説明する。積層体20は、少なくとも1つの二軸延伸プラスチックフィルムと、上述した樹脂フィルム10とを含む。積層体が、上記樹脂フィルム10を含むことにより、環境負荷低減性を有すると共に、シール性を備え、引裂き性にも優れる積層体とすることができる。
【0105】
図7は、本発明の積層体20の一例を示す断面図である。積層体20は、
図7に示すように、第1の二軸延伸プラスチックフィルム21と、印刷層22と、第1の接着剤層23と、上記樹脂フィルム10とをこの順に含む。第1の二軸延伸プラスチックフィルム21が積層体20の外面20yを構成し、樹脂フィルム10が内面20xを構成している。
【0106】
図8は、本発明の積層体20の一例を示す断面図である。積層体20は、
図8に示すように、第1の二軸延伸プラスチックフィルム21と、印刷層22と、第1の接着剤層23と、第2の二軸延伸プラスチックフィルム24と、第2の接着剤層25と、上記樹脂フィルム10とをこの順に含む。第1の二軸延伸プラスチックフィルム21が積層体20の外面20yを構成し、樹脂フィルム10が内面20xを構成している。
【0107】
図9は、本発明の積層体20のその他の一例を示す断面図である。積層体20は、
図9に示すように、第1の二軸延伸プラスチックフィルム21と、印刷層22と、第1の接着剤層23と、金属箔26と、第2の接着剤層25と、上記樹脂フィルム10とをこの順に含む。第1の二軸延伸プラスチックフィルム21が積層体20の外面20yを構成し、樹脂フィルム10が内面20xを構成している。
【0108】
図10は、本発明の積層体20のその他の一例を示す断面図である。積層体20は、
図4に示すように、第1の二軸延伸プラスチックフィルム21と、印刷層22と、第1の接着剤層23と、蒸着層27と、第2の二軸延伸プラスチックフィルム24と、第2の接着剤層25と、上記樹脂フィルム10とをこの順に含む。第1の二軸延伸プラスチックフィルム21が積層体20の外面20yを構成し、樹脂フィルム10が内面20xを構成している。
【0109】
図11は、本発明の積層体20のその他の一例を示す断面図である。積層体20は、
図5に示すように、第1の二軸延伸プラスチックフィルム21と、印刷層22と、第1のアンカーコート層28と、第1の接着樹脂層29と、蒸着層27と、第2の二軸延伸プラスチックフィルム24と、第2のアンカーコート層30と、第2の接着樹脂層31と、上記樹脂フィルム10とをこの順に含む。第1の二軸延伸プラスチックフィルム21が積層体20の外面20yを構成し、樹脂フィルム10が内面20xを構成している。
【0110】
以下、第1の二軸延伸プラスチックフィルム21、第2の二軸延伸プラスチックフィルム24、印刷層22、金属箔26、蒸着層27、第1の接着剤層23、第2の接着剤層25、第1のアンカーコート層28、第2のアンカーコート層30、第1の接着樹脂層29、第2の接着樹脂層31についてそれぞれ詳細に説明する。
【0111】
(第1の二軸延伸プラスチックフィルムおよび第2の二軸延伸プラスチックフィルム)
第1の二軸延伸プラスチックフィルムおよび第2の二軸延伸プラスチックフィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、1,4-ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体等のポリエステル、ナイロン6およびナイロン6,6等のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラールおよびポリビニルピロリドン(PVP)等のビニル樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレートおよびポリメチルメタアクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、セロファン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)およびセルロースアセテートブチレート(CAB)等のセルロース樹脂、ポリスチレン(PS)等のスチレン樹脂およびこれらの塩素化樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、ポリオレフィン、ポリエステルおよびポリアミドが好ましく、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、並びにナイロン6およびナイロン6,6がより好ましい
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」と「メタアクリル」の両方を包含することを意味する。また、「(メタ)アクリレート」とは「アクレート」と「メタアクレート」の両方を包含することを意味する。
【0112】
本発明の特性を損なわない範囲において、第1の二軸延伸プラスチックフィルムおよび第2の二軸延伸プラスチックフィルムは、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、無機粒子、有機粒子、離型剤および分散剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0113】
(印刷層)
印刷層は、袋に製品情報を示したり美感を付与したりするために第1の二軸延伸プラスチックフィルムに印刷された層である。印刷層は、文字、数字、記号、図形、絵柄等を表現する。印刷層を構成する材料としては、グラビア印刷用のインキやフレキソ印刷用のインキを用いることができる。
【0114】
印刷層を構成するインキは、バインダーおよび顔料を含む。バインダーは、例えば、第1の接着剤層および第2の接着剤層と同様に、ポリウレタン等を含む。ポリウレタンは、主剤としてのポリオールと、硬化剤としてのイソシアネート化合物とが反応することにより生成される硬化物である。ポリオールおよびイソシアネート化合物の詳細については、第1の接着剤層および第2の接着剤層の段落で説明する。
【0115】
印刷層の顔料は、有色の粉末であり、所定の分布密度でバインダー内に存在する。顔料が呈する色が特に限られることはなく、赤色、青色、緑色、白色、黒色等の様々な顔料を用いることができる。例えば顔料の平均粒径は、0.1μm以上1μm以下であってもよく、0.5μm以上1μm以下であってもよい。なお、白色の顔料は一般に、その他の色の顔料に比べて大きな寸法を有する。例えば、白色の顔料の平均粒径は、0.5μm以上1μm以下である。顔料の平均粒径は、動的光散乱法によって測定することができる。
【0116】
印刷層は、単一の層からなっていてもよく、複数の層を含んでいてもよい。例えば、印刷層は、第1の色を呈する顔料を含む第1の層と、第1の色とは異なる第2の色を呈する顔料を含む第2の層と、を含んでいてもよい。印刷層の1つの層の厚みは、例えば0.5μm以上3μm以下である。
【0117】
(金属箔)
金属箔としては、従来公知の金属箔を用いることができる。酸素ガスおよび水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性や、可視光および紫外線等の透過を阻止する遮光性の点からは、アルミニウム箔が好ましい。金属箔の厚みは、例えば5μm以上15μm以下である。
【0118】
(蒸着層)
蒸着層は、袋のガスバリア性を高めるために設けられる層である。蒸着層は、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の1種または2種以上の無機物または無機酸化物の蒸着膜を備える。蒸着層は、1層または2層以上の蒸着膜を備えてもよい。
【0119】
蒸着膜は、上記した二軸延伸プラスチックフィルム等のフィルムの片面に上記無機物または無機酸化物を蒸着することにより形成することができる。蒸着膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法等の公知の方法が挙げられる。
【0120】
無機物または無機酸化物の蒸着膜の膜厚としては、100Å~2000Å、好ましくは200Å~1000Åである。
【0121】
蒸着層は、ガスバリア性を高めるために、上記したような無機物および無機酸化物の蒸着膜上にガスバリア性塗布膜を設けてもよい。ガスバリア性塗布膜は、一般式R1
nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1~8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも一種以上のアルコキシドと、上記のようなポリビニルアルコ-ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体とを含有し、さらに、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合する透明ガスバリア性組成物により得られる。
【0122】
(第1の接着剤層および第2の接着剤層)
第1の接着剤層および第2の接着剤層といった接着剤層は、第1の二軸延伸プラスチックフィルム、第2の二軸延伸プラスチックフィルム等を互いに接着するための接着剤を含む。接着剤層を構成する接着剤は、主剤および溶剤を含む第1組成物と、硬化剤および溶剤を含む第2組成物とを混合して作製した接着剤組成物から生成される。具体的には、接着剤は、接着剤組成物中の主剤と溶剤とが反応して生成された硬化物を含む。
【0123】
接着剤の例としては、エーテル系の二液反応型接着剤またはエステル系の二液反応型接着剤を挙げることができる。エーテル系の二液反応型接着剤としては、ポリエーテルポリウレタン等を挙げることができる。ポリエーテルポリウレタンは、主剤としてのポリエーテルポリオールと、硬化剤としてのイソシアネート化合物とが反応することにより生成される硬化物である。エステル系の二液反応型接着剤としては、例えば、ポリエステルポリウレタンやポリエステル等を挙げることができる。ポリエステルポリウレタンは、主剤としてのポリエステルポリオールと、硬化剤としてのイソシアネート化合物とが反応することにより生成される硬化物である。
【0124】
ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール等のポリオールと反応して硬化物を生成するイソシアネート化合物としては、芳香族系イソシアネート化合物および脂肪族系イソシアネート化合物が存在する。このうち芳香族系イソシアネート化合物は、加熱殺菌(レトルト処理)時等の高温環境下において、食品用途で使用できない成分を溶出させる。ところで、接着剤層は、
図7乃至
図11に示すように、積層体20の内面20xを構成する樹脂フィルム10に接している。このため、接着剤層が芳香族系イソシアネート化合物を含む場合、芳香族系イソシアネート化合物から溶出した成分が、積層体20によって構成された袋40の内容物に付着することがある。
【0125】
このような課題を考慮し、接着剤層を構成する接着剤として、主剤としてのポリオールと、硬化剤としての脂肪族系イソシアネート化合物とが反応することにより生成される硬化物を用いる。これにより、接着剤層に起因する、食品用途で使用できない成分が内容物に付着することを防ぐことができる。脂肪族イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。
【0126】
また、ポリオールのヒドロキシ基に対する脂肪族系イソシアネート化合物のイソシアネート基のモル比を高くすることにより、耐落下衝撃性を高めることができる。例えば、主剤(ポリオール)のヒドロキシ基に対する硬化剤(脂肪族イソシアネート化合物)のモル比は、従来は3程度である。本実施の形態において、ポリオールのヒドロキシ基に対する脂肪族系イソシアネート化合物のイソシアネート基のモル比は、3.5以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、4.5以上であることが更に好ましい。更に好ましくは、ポリオールのヒドロキシ基に対する脂肪族系イソシアネート化合物のイソシアネート基のモル比は5よりも大きい。
【0127】
一方、脂肪族系イソシアネート化合物は高価であり、脂肪族系イソシアネート化合物の量を増加させることは、製造コストの点で好ましくない。また、ポリオールのヒドロキシ基に対する脂肪族系イソシアネート化合物のイソシアネート基のモル比が大きくなるほど、接着剤組成物を硬化させるために必要な温度が高くなり、または、時間が長くなる。これらの点を考慮し、ヒドロキシ基に対する脂肪族系イソシアネート基のモル比は、7以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましい。
【0128】
接着剤層は、接着剤組成物を第1の二軸延伸プラスチックフィルム、第2の二軸延伸プラスチックフィルム、金属箔または樹脂フィルムに塗布し、その後、接着剤組成物が乾燥し、また、接着剤組成物中の主剤と溶剤とが反応して接着剤組成物が硬化することによって形成される。本実施の形態において、乾燥後の接着剤組成物の、単位面積当たりの重量は、例えば2g/m2以上5g/m2以下とすることが好ましく、3g/m2以上4g/m2以下とすることがより好ましい。また、接着剤層60の厚みは、2μm以上5μm以下とすることが好ましく、3μm以上4μm以下とすることがより好ましい。
【0129】
(第1の接着樹脂層および第2の接着樹脂層)
第1の接着樹脂層および第2の接着樹脂層といった接着樹脂層は、第1の二軸延伸プラスチックフィルム、第2の二軸延伸プラスチックフィルム等を互いに接着するための熱可塑性樹脂を含む。接着樹脂層は、熱可塑性樹脂を用いて溶融押出しラミネート法により形成される。接着樹脂層に使用できる熱可塑性樹脂としては、上記した熱可塑性樹脂層の材料と同様のものを用いることができる。
【0130】
(第1のアンカーコート層および第2のアンカーコート層)
第1のアンカーコート層および第2のアンカーコート層といったアンカーコート層は、接着樹脂層の密着性を向上させるために形成される。アンカーコート層は、積層しようとする層の表面に、アンカーコート剤を塗布して乾燥させることにより形成することができる。アンカーコート剤としては、耐熱温度が135℃以上である任意の樹脂、例えばビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等からなるアンカーコート剤が挙げられるが、特に、構造中に2以上のヒドロキシル基を有するポリアクリル系またはポリメタクリル系樹脂と、硬化剤としてのイソシアネート化合物とからなるアンカーコート剤を、好ましく使用することができる。また、これに添加剤としてシランカップリング剤を併用してもよく、また、硝化綿を、耐熱性を高めるために併用してもよい。
【0131】
(積層体の層構成の具体例)
図7乃至
図11に示す積層体20の具体例を以下に示す。なお、「/」は層と層との境界を表している。左端の層が積層体20の外面20yを構成する層であり、右端の層が、積層体20の内面20xを構成する層である。また、「二軸延伸PETフィルム」は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを意味し、「二軸延伸PPフィルム」は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを意味し、「AC」は、アンカーコート層を意味する。
(1)二軸延伸PETフィルム/印刷層/接着剤層/樹脂フィルム
(2)二軸延伸PETフィルム/印刷層/接着剤層/二軸延伸ナイロンフィルム/接着剤層/樹脂フィルム
(3)二軸延伸PETフィルム/印刷層/接着剤層/二軸延伸PETフィルム/接着剤層/樹脂フィルム
(4)二軸延伸PETフィルム/印刷層/接着剤層/金属箔/接着剤層/樹脂フィルム
(5)二軸延伸PETフィルム/印刷層/接着剤層/蒸着層/二軸延伸PETフィルム/接着剤層/樹脂フィルム
(6)二軸延伸ポリプロピレンフィルム/印刷層/AC/接着樹脂層/蒸着層/二軸延伸PETフィルム/AC/接着樹脂層/樹脂フィルム
【0132】
(積層体の製造方法)
積層体の製造方法は特に限定されず、ドライラミネート法、溶融押出ラミネート法、サンドラミネート法等の従来公知の方法を用いて製造することができる。
【0133】
袋
次に、本発明の袋40について説明する。
図12は、本実施の形態による袋40を示す正面図である。袋40は、内容物を収容する収容部40aを備える。以下、袋40の構成について説明する。
【0134】
袋40は、上部41、下部42および側部43を含み、正面図において略矩形状の輪郭を有する。なお、「上部」、「下部」および「側部」等の名称、並びに、「上方」、「下方」等の用語は、袋40やその構成要素の位置や方向を相対的に表したものに過ぎない。袋40の輸送時や使用時の姿勢等は、本明細書における名称や用語によっては限定されない。
【0135】
図12に示すように、袋40は、表面を構成する表面フィルム44および裏面を構成する裏面フィルム45を備える。これらの表面フィルム44、裏面フィルム45は、それぞれ上述した積層体20から構成されている。
【0136】
なお、上述の「表面フィルム」および「裏面フィルム」という用語は、位置関係に応じて各フィルムを区画したものに過ぎず、袋40を製造する際のフィルムの提供方法が、上述の用語によって限定されることはない。例えば、袋40は、表面フィルム44と裏面フィルム45が連設された1枚のフィルムを用いて製造されてもよい。
【0137】
表面フィルム44および裏面フィルム45は、内面同士がシール部によって接合されている。
図12に示す袋40の正面図においては、シール部にハッチングが施されている。
【0138】
図12に示すように、シール部は、袋40の外縁に沿って延びる外縁シール部を有する。外縁シール部は、上部41に沿って延びる上部シール部41a、下部42に広がる下部シール部42a、および、一対の側部43に沿って延びる一対の側部シール部43aを含む。なお、内容物が充填される前の状態(内容物が充填されていない状態)の袋40においては、袋40の上部41には開口部(図示せず)が形成されている。そして、袋40に内容物を収容した後、表面フィルム44の内面と裏面フィルム45の内面とを上部41において接合することにより、上部シール部41aが形成されて袋40が封止される。
【0139】
上部シール部41a、下部シール部42aおよび側部シール部43aは、表面フィルム44の内面と裏面フィルム45の内面とを接合することによって構成されるシール部である。
【0140】
対向するフィルム同士を接合して袋40を封止することができる限りにおいて、シール部を形成するための方法が特に限られることはない。例えば、加熱等によってフィルムの内面を溶融させ、内面同士を溶着させることによって、すなわちヒートシールによって、シール部を形成してもよい。
【0141】
(易開封性手段)
表面フィルム44および裏面フィルム45には、表面フィルム44および裏面フィルム45を引き裂いて袋40を開封するための易開封性手段47が設けられていてもよい。例えば
図12に示すように、易開封性手段46は、袋40の側部シール部43aに形成された、引き裂きの起点となるノッチ47を含んでいてもよい。また、袋40を引き裂く際の経路となる部分には、易開封性手段46として、レーザー加工やカッター等で形成されたハーフカット線が設けられていてもよい。
【0142】
また、図示はしないが、易開封性手段46は、表面フィルム44および裏面フィルム45のうちシール部が形成されている領域に形成された切り込みや傷痕群を含んでいてもよい。傷痕群は例えば、表面フィルム44および/または裏面フィルム45を貫通するように形成された複数の貫通孔を含んでいてもよい。若しくは、傷痕群は、表面フィルム44および/または裏面フィルム45を貫通しないように表面フィルム44および/または裏面フィルム45の外面に形成された複数の孔を含んでいてもよい。
【0143】
(袋の製造方法)
まず、上述の積層体20からなる表面フィルム44および裏面フィルム45を準備する。続いて、各フィルムの内面同士をヒートシールして、下部シール部42a、側部シール部43a等のシール部を形成する。また、ヒートシールによって互いに接合されたフィルムを適切な形状に切断して、
図12に示す袋40を得る。続いて、上部41の開口部(図示せず)を介して内容物を袋40に充填する。内容物は、例えば、チョコレート等である。その後、上部41をヒートシールして上部シール部41aを形成する。このようにして、内容物が収容され封止された袋40を得ることができる。
【実施例】
【0144】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0145】
[実施例1-1]
第1層を構成する樹脂組成物の原料として、プロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)を溶融した。
次いで、第2層を構成する樹脂組成物の原料として、85質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、15質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを別途溶融した。
これらの溶融物をTダイにて共押出し、層厚比が1:4(第1層:第2層)および厚みが50μmの未延伸樹脂フィルムを作製した。樹脂フィルム中のポリプロピレン含有量は88質量%であり、樹脂フィルムのバイオマス度は10%であった。
【0146】
次に、第1の二軸延伸プラスチックフィルム21として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)製、製品名:E5100)を準備した。続いて、この第1の二軸延伸プラスチックフィルム21上に印刷層22を形成した。印刷層22の厚みは1.0μmであった。また、第2の二軸延伸プラスチックフィルム24として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)製、製品名:E5100)を準備した。
【0147】
続いて、ドライラミネート法により、第1の二軸延伸プラスチックフィルム21、印刷層22、第1の接着剤層23、第2の二軸延伸プラスチックフィルム24、第2の接着剤層25および樹脂フィルム10を順に積層し、
図8に示す積層体20を作製した。第1の接着剤層23および第2の接着剤層25としては、ロックペイント(株)製の2液型ポリウレタン系接着剤(主剤:RU-40、硬化剤:H-4)を用いた。なお、主剤のRU-40は、ポリエステルポリオールである。第1の接着剤層23および第2の接着剤層25の厚みは、それぞれ3.0μmであった。積層体20において、樹脂フィルム10の第1層は最内層を構成している。
【0148】
次に、
図12に示す袋40を作製した。具体的には、まず、得られた積層体20から、表面フィルム44および裏面フィルム45を作製した。次に、表面フィルム44の樹脂フィルム10と裏面フィルム45の樹脂フィルム10とが接触するように、表面フィルム44と裏面フィルム45とを重ね合わせた。
【0149】
そして、各袋40の形状に合わせて、ヒートシールにより上部シール部41a、下部シール部42aおよび側部シール部43aを形成した。ヒートシールは、以下の条件で行った。
(ヒートシール条件)
・ヒートシール装置:ヒートシーラー(テスター産業(株)製、製品名:TP-701-A)
・ヒートシール温度:200℃、190℃、180℃、170℃、160℃、150℃
・ヒートシール圧力:0.1MPa
・ヒートシール時間:1秒間
【0150】
次に、各袋40の形状に合わせてヒートシールされた領域を裁断することによって、
図14に示す袋40を作製した。また、作製した袋40において、易開封性手段46として、ノッチ47を形成した。
【0151】
作製された袋40においては、高さS1(
図12参照)が140mm、幅S2が120mm、上部シール部41aの幅S3、下部シール部42aの幅S4および側部シール部43aの幅S5が5.0mmであった。
【0152】
[実施例1-2]
第2層を構成する樹脂組成物の原料として、80質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、20質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして樹脂フィルムを作製した。層厚比は1:4(第1層:第2層)であり、樹脂フィルムの厚みは50μmであった。樹脂フィルム中のポリプロピレン含有量は84質量%であり、樹脂フィルムのバイオマス度は14%であった。
また、得られた樹脂フィルムを用いて、実施例1-1と同様にして積層体および袋を作製した。
【0153】
[実施例1-3]
第2層を構成する樹脂組成物の原料として、70質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、30質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして樹脂フィルムを作製した。層厚比は1:4(第1層:第2層)であり、樹脂フィルムの厚みは50μmであった。樹脂フィルム中のポリプロピレン含有量は76質量%であり、樹脂フィルムのバイオマス度は21%であった。
また、得られた樹脂フィルムを用いて、実施例1-1と同様にして積層体および袋を作製した。
【0154】
[実施例1-4]
第1層を構成する樹脂組成物の原料として、90質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、10質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを用いたこと、および第2層を構成する樹脂組成物の原料として、70質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、30質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして樹脂フィルムを作製した。層厚比は1:4(第1層:第2層)であり、樹脂フィルムの厚みは50μmであった。樹脂フィルム中のポリプロピレン含有量は74質量%であり、樹脂フィルムのバイオマス度は23%であった。
また、得られた樹脂フィルムを用いて、実施例1-1と同様にして積層体および袋を作製した。
【0155】
[実施例1-5]
第2層を構成する樹脂組成物の原料として、85質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、15質量部のバイオマス低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SEB-853、MFR:2.7g/10分、密度:923kg/m3、バイオマス度:95%)とを用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして樹脂フィルムを作製した。層厚比は1:4(第1層:第2層)であり、樹脂フィルムの厚みは50μmであった。樹脂フィルム中のポリプロピレン含有量は88質量%であり、樹脂フィルムのバイオマス度は11%であった。
また、得られた樹脂フィルムを用いて、実施例1-1と同様にして積層体および袋を作製した。
【0156】
[実施例1-6]
第2層を構成する樹脂組成物の原料として、70質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、30質量部のバイオマス低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SEB-853、MFR:2.7g/10分、密度:923kg/m3、バイオマス度:95%)とを用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして樹脂フィルムを作製した。層厚比は1:4(第1層:第2層)であり、樹脂フィルムの厚みは50μmであった。樹脂フィルム中のポリプロピレン含有量は76質量%であり、樹脂フィルムのバイオマス度は23%であった。
また、得られた樹脂フィルムを用いて、実施例1-1と同様にして積層体および袋を作製した。
【0157】
[実施例1-7]
第2層を構成する樹脂組成物の原料として、70質量部のプロピレン-エチレンブロック共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:J715M、MFR:9.0g/10分、バイオマス度:0%)と、30質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして樹脂フィルムを作製した。層厚比は1:4(第1層:第2層)であり、樹脂フィルムの厚みは50μmであった。樹脂フィルム中のポリプロピレン含有量は76質量%であり、樹脂フィルムのバイオマス度は21%であった。本実施例の樹脂フィルムの構成を表1に示す。
また、得られた樹脂フィルムを用いて、実施例1-1と同様にして積層体および袋を作製した。
【0158】
[比較例1-1]
プロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)のみを溶融し、溶融物をTダイにて押し出して、厚みが50μmの未延伸樹脂フィルムを作製した。
また、得られた樹脂フィルムを用いて、実施例1-1と同様にして積層体および袋を作製した。
【0159】
[比較例1-2]
プロピレン-エチレンブロック共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:J715M、MFR:9.0g/10分、バイオマス度:0%)のみを溶融し、溶融物をTダイにて押し出して、厚みが50μmの未延伸樹脂フィルムを作製した。
また、得られた樹脂フィルムを用いて、実施例1-1と同様にして積層体および袋を作製した。
【0160】
[比較例1-3]
第1層を構成する樹脂組成物の原料として、70質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、30質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを用いたこと、および第2層を構成する樹脂組成物の原料として、70質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、30質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして樹脂フィルムを作製した。層厚比は1:4(第1層:第2層)であり、樹脂フィルムの厚みは50μmであった。樹脂フィルム中のポリプロピレン含有量は70質量%であり、樹脂フィルムのバイオマス度は26%であった。
また、得られた樹脂フィルムを用いて、実施例1-1と同様にして積層体および袋を作製した。
【0161】
[比較例1-4]
第1層を構成する樹脂組成物の原料として、プロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)を溶融した。
次いで、第2層を構成する樹脂組成物の原料として、60質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、40質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを別途溶融した。
これらの溶融物をTダイにて共押出成型を行ったが、樹脂組成物をフィルム状に製膜することができなかった。
【0162】
実施例1-1乃至1-7および比較例1-1乃至1-4に係る各層の詳細および樹脂フィルムの詳細を表1および表2に示す。表1において、「石化ランダムPP」はプロピレン-エチレンランダム共重合体を意味し、「石化ブロックPP」はプロピレン-エチレンブロック共重合体を意味し、「バイオLLDPE」はバイオマス直鎖状低密度ポリエチレンを意味し、「バイオLDPE」はバイオマス低密度ポリエチレンを意味する。なお、表1および表2中の含有量は、全て質量基準である。
【0163】
【0164】
【0165】
[実施例2-1]
第1層を構成する樹脂組成物の原料として、プロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)を溶融した。
次いで、第2層を構成する樹脂組成物の原料として、80質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、20質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを別途溶融した。
次いで、第3層を構成する樹脂組成物の原料として、プロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)を別途溶融した。
これらの溶融物をTダイにて共押出し、層厚比が1:3:1(第1層:第2層:第3層)および厚みが50μmの未延伸樹脂フィルムを作製した。樹脂フィルム中のポリプロピレン含有量は88質量%であり、樹脂フィルムのバイオマス度は10%であった。
【0166】
次に、第1の二軸延伸プラスチックフィルム21として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)製、製品名:E5100)を準備した。続いて、この第1の二軸延伸プラスチックフィルム21上に印刷層22を形成した。印刷層22の厚みは1.0μmであった。また、第2の二軸延伸プラスチックフィルム24として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)製、製品名:E5100)を準備した。
【0167】
続いて、ドライラミネート法により、第1の二軸延伸プラスチックフィルム21、印刷層22、第1の接着剤層23、第2の二軸延伸プラスチックフィルム24、第2の接着剤層25および樹脂フィルム10を順に積層し、
図8に示す積層体20を作製した。第1の接着剤層23および第2の接着剤層25としては、ロックペイント(株)製の2液型ポリウレタン系接着剤(主剤:RU-40、硬化剤:H-4)を用いた。なお、主剤のRU-40は、ポリエステルポリオールである。第1の接着剤層23および第2の接着剤層25の厚みは、それぞれ3.0μmであった。積層体20において、樹脂フィルム10の第1層は最内層を構成している。
【0168】
次に、
図12に示す袋40を作製した。具体的には、まず、得られた積層体20から、表面フィルム44および裏面フィルム45を作製した。次に、表面フィルム44の樹脂フィルム10と裏面フィルム45の樹脂フィルム10とが接触するように、表面フィルム44と裏面フィルム45とを重ね合わせた。
【0169】
そして、各袋40の形状に合わせて、ヒートシールにより上部シール部41a、下部シール部42aおよび側部シール部43aを形成した。ヒートシールは、以下の条件で行った。
(ヒートシール条件)
・ヒートシール装置:ヒートシーラー(テスター産業(株)製、製品名:TP-701-A)
・ヒートシール温度:200℃、190℃、180℃、170℃、160℃、150℃
・ヒートシール圧力:0.1MPa
・ヒートシール時間:1秒間
【0170】
次に、各袋40の形状に合わせてヒートシールされた領域を裁断することによって、
図14に示す袋40を作製した。また、作製した袋40において、易開封性手段46として、ノッチ47を形成した。
【0171】
作製された袋40においては、高さS1(
図12参照)が140mm、幅S2が120mm、上部シール部41aの幅S3、下部シール部42aの幅S4および側部シール部43aの幅S5が5.0mmであった。
【0172】
[実施例2-2]
第2層を構成する樹脂組成物の原料として、70質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、30質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを用いたこと以外は、実施例2-1と同様にして樹脂フィルムを作製した。層厚比は1:3:1(第1層:第2層:第3層)であり、樹脂フィルムの厚みは50μmであった。樹脂フィルム中のポリプロピレン含有量は82質量%であり、樹脂フィルムのバイオマス度は16%であった。
また、得られた樹脂フィルムを用いて、実施例2-1と同様にして積層体および袋を作製した。
【0173】
[実施例2-3]
第1層を構成する樹脂組成物の原料として、90質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、10質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを用いたこと、および第2層を構成する樹脂組成物の原料として、70質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、30質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを用いたこと以外は、実施例2-1と同様にして樹脂フィルムを作製した。層厚比は1:3:1(第1層:第2層:第3層)であり、樹脂フィルムの厚みは50μmであった。樹脂フィルム中のポリプロピレン含有量は80質量%であり、樹脂フィルムのバイオマス度は17%であった。
また、得られた樹脂フィルムを用いて、実施例2-1と同様にして積層体および袋を作製した。
【0174】
[実施例2-4]
第1層を構成する樹脂組成物の原料として、90質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、10質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを用いたこと、第2層を構成する樹脂組成物の原料として、70質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、30質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを用いたこと、および第3層を構成する樹脂組成物の原料として、80質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、20質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを用いたこと以外は、実施例2-1と同様にして樹脂フィルムを作製した。層厚比は1:3:1(第1層:第2層:第3層)であり、樹脂フィルムの厚みは50μmであった。樹脂フィルム中のポリプロピレン含有量は76質量%であり、樹脂フィルムのバイオマス度は21%であった。
また、得られた樹脂フィルムを用いて、実施例2-1と同様にして積層体および袋を作製した。
【0175】
[実施例2-5]
第2層を構成する樹脂組成物の原料として、80質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、20質量部のバイオマス低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SEB-853、MFR:2.7g/10分、密度:923kg/m3、バイオマス度:95%)とを用いたこと以外は、実施例2-1と同様にして樹脂フィルムを作製した。層厚比は1:3:1(第1層:第2層:第3層)であり、樹脂フィルムの厚みは50μmであった。樹脂フィルム中のポリプロピレン含有量は88質量%であり、樹脂フィルムのバイオマス度は11%であった。
また、得られた樹脂フィルムを用いて、実施例2-1と同様にして積層体および袋を作製した。
【0176】
[実施例2-6]
第2層を構成する樹脂組成物の原料として、70質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、30質量部のバイオマス低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SEB-853、MFR:2.7g/10分、密度:923kg/m3、バイオマス度:95%)とを用いたこと以外は、実施例2-1と同様にして樹脂フィルムを作製した。層厚比は1:3:1(第1層:第2層:第3層)であり、樹脂フィルムの厚みは50μmであった。樹脂フィルム中のポリプロピレン含有量は82質量%であり、樹脂フィルムのバイオマス度は17%であった。
また、得られた樹脂フィルムを用いて、実施例2-1と同様にして積層体および袋を作製した。
【0177】
[実施例2-7]
第1層を構成する樹脂組成物の原料として、プロピレン-エチレンブロック共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:J715M、MFR:9.0g/10分、バイオマス度:0%)を用いたこと、第2層を構成する樹脂組成物の原料として、70質量部のプロピレン-エチレンブロック共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:J715M、MFR:9.0g/10分、バイオマス度:0%)と、30質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを用いたこと、および第3層を構成する樹脂組成物の原料として、プロピレン-エチレンブロック共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:J715M、MFR:9.0g/10分、バイオマス度:0%)を用いたこと以外は、実施例2-1と同様にして樹脂フィルムを作製した。層厚比は1:3:1(第1層:第2層:第3層)であり、樹脂フィルムの厚みは50μmであった。樹脂フィルムのポリプロピレン含有量は82質量%であり、樹脂フィルム中のバイオマス度は16%であった。
また、得られた樹脂フィルムを用いて、実施例2-1と同様にして積層体および袋を作製した。
【0178】
[比較例2-1]
プロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)のみを溶融し、溶融物をTダイにて押し出して、厚みが50μmの未延伸樹脂フィルムを作製した。
また、得られた樹脂フィルムを用いて、実施例2-1と同様にして積層体および袋を作製した。
【0179】
[比較例2-2]
プロピレン-エチレンブロック共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:J715M、MFR:9.0g/10分、バイオマス度:0%)のみを溶融し、溶融物をTダイにて押し出して、厚みが50μmの未延伸樹脂フィルムを作製した。
また、得られた樹脂フィルムを用いて、実施例2-1と同様にして積層体および袋を作製した。
【0180】
[比較例2-3]
第1層を構成する樹脂組成物の原料として、70質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、30質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを用いたこと、および第2層を構成する樹脂組成物の原料として、70質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、30質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを用いたこと以外は、実施例2-1と同様にして樹脂フィルムを作製した。層厚比は1:3:1(第1層:第2層:第3層)であり、樹脂フィルムの厚みは50μmであった。樹脂フィルム中のポリプロピレン含有量は76質量%であり、樹脂フィルムのバイオマス度は21%であった。
また、得られた樹脂フィルムを用いて、実施例2-1と同様にして積層体および袋を作製した。
【0181】
[比較例2-4]
第1層を構成する樹脂組成物の原料として、プロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)を溶融した。
次いで、第2層を構成する樹脂組成物の原料として、60質量部のプロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)と、40質量部のバイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社製、製品名:SLL-318、MFR:2.7g/10分、密度:918kg/m3、バイオマス度:87%)とを別途溶融した。
次いで、第3層を構成する樹脂組成物の原料として、プロピレン-エチレンランダム共重合体((株)プライムポリマー社製、製品名:F219DA、MFR:8.0g/10分、密度:910kg/m3、バイオマス度:0%)を別途溶融した。
これらの溶融物をTダイにて共押出成型を行ったが、樹脂組成物をフィルム状に製膜することができなかった。
【0182】
実施例2-1乃至2-7および比較例2-1乃至2-4に係る各層の詳細および樹脂フィルムの詳細を表3および表4に示す。表3において、「石化ランダムPP」はプロピレン-エチレンランダム共重合体を意味し、「石化ブロックPP」はプロピレン-エチレンブロック共重合体を意味し、「バイオLLDPE」はバイオマス直鎖状低密度ポリエチレンを意味し、「バイオLDPE」はバイオマス低密度ポリエチレンを意味する。なお、表3および表4中の含有量は、全て質量基準である。
【0183】
【0184】
【0185】
<<シール強度試験>>
ヒートシール温度が200℃の実施例1-1乃至1-7および比較例1-1乃至1-3、並びに実施例2-1乃至2-7および比較例2-1乃至2-3に係る袋40を用いて、シール強度試験を行った。シール強度は、JIS Z 0238:1998に準拠して、温度25℃、相対湿度50%の環境下で測定し、測定器としては、オリエンテック社製の引張試験機:SA-1150を用いた。具体的には、
図13に示すように、側部シール部43aを含むように、一辺S6が15mm、一辺と直交する方向に延びる他辺S7が50mmの長方形状の試験片50を切り出した。続いて、
図14に示すように、試験片50における表面フィルム44の非シール部と裏面フィルム45の非シール部をシール部の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きになるように、すなわちT字状になるようにした後、表面フィルム44の非シール部の端部と裏面フィルム45の非シール部の端部をそれぞれ把持具51,52に固定した。チャック距離(S8)を50mmにして、それぞれの把持具51,52をそれぞれ、試験片50のシール部の面方向に対して直交する方向において逆向きに、300mm/minの速度で引張り、引張応力の最大値を測定する。この操作を異なる袋40から切り出した試験片50を用いて計5回行い、5回の引張応力の最大値の平均値をシール強度とする。評価結果を表5および表6に示す。
(評価基準)
・良:シール強度が40N/15mm以上であった。
・可:シール強度が20N/15mm以上40N/15mm未満であった。
・不可:シール強度が20N/15mm未満であった。
【0186】
<<低温シール性試験>>
ヒートシール温度が150℃、160℃、170℃、180℃および190℃の実施例1-1乃至1-7および比較例1-1乃至1-3、並びに実施例2-1乃至2-7および比較例2-1乃至2-3に係る袋40をそれぞれ用いて、低温シール性試験を行った。低温シール性試験では、シール強度試験と同様に、JIS Z 0238:1998に準拠して、温度25℃、相対湿度50%の環境下でシール強度を測定し、測定器としては、オリエンテック社製の引張試験機:SA-1150を用いた。具体的には、
図13に示すように、側部シール部43aを含むように、一辺S6が15mm、一辺と直交する方向に延びる他辺S7が50mmの長方形状の試験片50を切り出した。続いて、
図14に示すように、試験片50における表面フィルム44の非シール部と裏面フィルム45の非シール部をシール部の面方向に対して直交する方向において互いに逆向きになるように、すなわちT字状になるようにした後、表面フィルム44の非シール部の端部と裏面フィルム45の非シール部の端部をそれぞれ把持具51,52に固定した。チャック距離(S8)を50mmにして、それぞれの把持具51,52をそれぞれ、試験片50のシール部の面方向に対して直交する方向において逆向きに、300mm/minの速度で引張り、引張応力の最大値を測定する。この操作を異なる袋40から切り出した試験片50を用いて計5回行い、5回の引張応力の最大値の平均値をシール強度とする。評価結果を表5および表6に示す。
(評価基準)
・良:ヒートシール温度が150℃以上の袋において、シール強度が20N/15mm以上であった。
・可:ヒートシール温度が170℃以上の袋において、シール強度が20N/15mm以上であった。
・不可:ヒートシール温度の190℃の袋において、シール強度が20N/15mm未満であった。
【0187】
<<引裂き性試験>>
ヒートシール温度が200℃の実施例1-1乃至1-7および比較例1-1乃至1-3、並びに実施例2-1乃至2-7および比較例2-1乃至2-3に係る袋40を用いて、引裂き性試験を行った。引裂き性試験は、各実施例および比較例の袋40のノッチ47が左側、横向きになるようにサンプルを左手で持ち、左手を固定したまま右手で手前に引くようにして袋40を引裂くことにより行った。評価結果を表5および表6に示す。
(評価基準)
・良:直線的に袋40を引裂くことができた。
・可:直線的ではないが、袋40を引裂くことができた。
・不可:袋40を引裂くことができなかった。
【0188】
<<製膜性評価>>
製膜性評価は、実施例1-1乃至1-7および比較例1-1乃至1-4、並びに実施例2-1乃至2-7および比較例2-1乃至2-4において、樹脂フィルムの製膜可否によって判断した。評価結果を表5および表6に示す。
(評価基準)
・良:樹脂組成物をフィルム状にできた。
・不可:樹脂組成物をフィルム状にできなかった。
【0189】
【0190】
【0191】
上記の表からも明らかなように、本願発明の樹脂フィルム、積層体および袋は、環境負荷低減性を有すると共に、シール性および成膜性を備え、引裂き性にも優れる。
【符号の説明】
【0192】
10 樹脂フィルム
11 第1層
12 第2層
13 第1の熱可塑性樹脂層
14 第3層
15 第2の熱可塑性樹脂層
20 積層体
20x 内面
20y 外面
21 第1の二軸延伸プラスチックフィルム
22 印刷層
23 第1の接着剤層
24 第2の二軸延伸プラスチックフィルム
25 第2の接着剤層
26 金属箔
27 蒸着層
28 第1のアンカーコート層
29 第1の接着樹脂層
30 第2のアンカーコート層
31 第2の接着樹脂層
40 袋
40a 収容部
41 上部
41a 上部シール部
42 下部
42a 下部シール部
43 側部
43a 側部シール部
44 表面フィルム
45 裏面フィルム
46 易開封性手段
47 ノッチ
50 試験片
51,52 把持具