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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】LEDモジュールおよびLED照明器具
(51)【国際特許分類】
   F21V 19/00 20060101AFI20240829BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20240829BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20240829BHJP
   F21L 2/00 20060101ALI20240829BHJP
   F21L 14/00 20060101ALI20240829BHJP
   F21Y 105/10 20160101ALN20240829BHJP
   F21Y 107/70 20160101ALN20240829BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240829BHJP
【FI】
F21V19/00 450
H01L33/48
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21V23/00 140
F21V23/00 120
F21L2/00 100
F21L14/00
F21Y105:10
F21Y107:70
F21Y115:10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020076837
(22)【出願日】2020-04-23
(65)【公開番号】P2021174654
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】守谷 徳久
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大介
【審査官】谷口 東虎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-120818(JP,A)
【文献】特開2016-077393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 19/00
H01L 33/48
F21V 23/00
F21L 2/00
F21L 14/00
F21Y 105/10
F21Y 107/70
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面出光型のLEDモジュールであって、
可撓性の基板フィルムと、
前記基板フィルム上の金属配線部と、
前記金属配線部に実装された複数のLEDチップとを備え、
前記基板フィルムに、前記LEDモジュールを、外部の取り付け対象物に取り付けるための取付部が設けられており、
前記取付部は、
前記基板フィルムの裏面側に位置する粘着層と、
前記粘着層を覆う保護層とを有し、
前記粘着層および前記保護層は、それぞれ交互に複数積層されている、LEDモジュール。
【請求項2】
前記取付部は、複数設けられている、請求項1に記載のLEDモジュール。
【請求項3】
前記LEDチップは、透明保護膜によって覆われている、請求項1または2に記載のLEDモジュール。
【請求項4】
最も厚い部分における厚みが5mm以下である、請求項1乃至のいずれか一項に記載のLEDモジュール。
【請求項5】
LED照明器具であって、
請求項1乃至のいずれか一項に記載のLEDモジュールと、
前記LEDモジュールに電気的に接続された制御部とを備え、
前記制御部は、前記LEDモジュールに対して外付けで接続される、LED照明器具。
【請求項6】
前記制御部は、前記LEDチップの調光を制御可能である、請求項に記載のLED照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、LEDモジュールおよびLED照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、火災や地震などによる災害発生時などの非常時に用いられ得る非常用照明器具が知られている(例えば特許文献1乃至特許文献4参照)。特許文献1には、非常時に外部の予備電源から電力の供給を受けて器具本体に備えた光源部を点灯する電源別置き型の非常用照明器具が開示されている。特許文献2には、複数のLEDを装着した誘導用照明装置が開示されている。特許文献3および特許文献4には、電子回路が織り込まれた織布が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5635883号公報
【文献】特開2013-254655号公報
【文献】特表2005-525481号公報
【文献】特表2005-524783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非常時に用いられ得る非常用照明器具は、避難場所等で用いられることから、外部の取り付け対象物への取り付けが容易であることが求められている。また、非常用照明器具は、非常時以外は倉庫等に保管されるため、保管スペースを低減することが求められている。
【0005】
本開示は、このような点を考慮してなされたものであり、取り付けが容易であるとともに、保管スペースを低減することが可能な、LEDモジュールおよびLED照明器具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態によるLEDモジュールは、片面出光型のLEDモジュールであって、可撓性の基板フィルムと、前記基板フィルム上の金属配線部と、前記金属配線部に実装された複数のLEDチップとを備え、前記基板フィルムに、前記LEDモジュールを、外部の取り付け対象物に取り付けるための取付部が設けられている。
【0007】
本実施の形態によるLEDモジュールにおいて、前記取付部は、複数設けられていてもよい。
【0008】
本実施の形態によるLEDモジュールにおいて、前記取付部は、前記基板フィルムの裏面側に位置する粘着層と、前記粘着層を覆う保護層とを有していてもよい。
【0009】
本実施の形態によるLEDモジュールにおいて、前記粘着層および前記保護層は、それぞれ交互に複数積層されていてもよい。
【0010】
本実施の形態によるLEDモジュールにおいて、前記取付部は、前記基板フィルムを貫通する貫通孔を有していてもよい。
【0011】
本実施の形態によるLEDモジュールにおいて、前記取付部は、前記貫通孔の周囲に設けられたハトメを更に有していてもよい。
【0012】
本実施の形態によるLEDモジュールにおいて、前記取付部は、前記金属配線部と重ならない位置に設けられていてもよい。
【0013】
本実施の形態によるLEDモジュールにおいて、前記取付部は、磁石を含んでいてもよい。
【0014】
本実施の形態によるLEDモジュールにおいて、前記LEDチップは、透明保護膜によって覆われていてもよい。
【0015】
本実施の形態によるLEDモジュールにおいて、最も厚い部分における厚みが5mm以下であってもよい。
【0016】
本実施の形態によるLED照明器具は、LED照明器具であって、本開示によるLEDモジュールと、前記LEDモジュールに電気的に接続された制御部とを備え、前記制御部は、前記LEDモジュールに対して外付けで接続されるものである。
【0017】
本実施の形態によるLED照明器具において、前記制御部から前記LEDモジュールに直流定電圧が印加されてもよい。
【0018】
本実施の形態によるLED照明器具において、前記制御部は、前記LEDチップの調光を制御可能であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本実施の形態によれば、LEDモジュールおよびLED照明器具の取り付けが容易であるとともに、LEDモジュールおよびLED照明器具の保管スペースを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、一実施の形態によるLED照明器具を示す概略図である。
図2図2は、一実施の形態によるLEDモジュールを示す平面図である。
図3図3(a)-(b)は、LEDモジュールの変形例を示す平面図である。
図4図4(a)は、制御部からLEDモジュールに直流定電圧が印加される場合における時間と電圧の関係を示すグラフであり、図4(b)は、比較例としてLEDモジュールにパルスが印加される場合における時間と電圧の関係を示すグラフである。
図5図5は、一実施の形態によるLEDモジュールを示す断面図(図2のV-V線断面図)である。
図6図6(a)-(i)は、一実施の形態によるLEDモジュールの製造方法を示す断面図である。
図7図7は、一実施の形態によるLED照明器具の使用例を示す概略斜視図である。
図8図8は、一実施の形態によるLED照明器具の他の使用例を示す概略斜視図である。
図9図9は、一実施の形態によるLED照明器具の更に他の使用例を示す概略斜視図である。
図10図10は、一実施の形態によるLEDモジュールの一変形例を示す断面図である。
図11図11は、一実施の形態によるLEDモジュールの他の変形例を示す平面図である。
図12図12は、一実施の形態によるLEDモジュールの更に他の変形例を示す平面図である。
図13図13は、一実施の形態によるLEDモジュールの更に他の変形例を備えるLED照明器具の使用例を示す概略斜視図である。
図14図14は、一実施の形態によるLEDモジュールの更に他の変形例を備えるLED照明器具の他の使用例を示す概略斜視図である。
図15図15(a)-(b)は、一実施の形態によるLEDモジュールの更に他の変形例を備えるLED照明器具の更に他の使用例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施の形態によるLEDモジュールは、片面出光型のLEDモジュールであって、可撓性の基板フィルムと、前記基板フィルム上の金属配線部と、前記金属配線部に実装された複数のLEDチップとを備え、前記基板フィルムに、前記LEDモジュールを、外部の取り付け対象物に取り付けるための取付部が設けられている。
【0022】
本実施の形態によるLEDモジュールは、可撓性の基板フィルムに、LEDモジュールを、外部の取り付け対象物に取り付けるための取付部が設けられているので、LEDモジュールおよびLED照明器具を容易に取り付けることができる。
【0023】
また、本実施の形態によるLEDモジュールは、可撓性の基板フィルムを備えたシート状のLED照明装置なので、軽量化を図ることができるとともに、複数のLEDが配列された直管型のLEDバーライトに比べて全体の厚みを薄くできる。そのため、LEDモジュールを保管する際に、LEDモジュールが嵩張ってしまうことを抑制することができる。これにより、LEDモジュールおよびLED照明器具の保管スペースを低減することができる。また、本実施の形態によるLEDモジュールは、可撓性の基板フィルムを備えたシート状のLED照明装置なので、LEDモジュールを外部の取り付け対象物に取り付けた際に、LEDモジュールが嵩張ってしまうことを抑制することができる。これにより、LEDモジュール20が避難者の動線内に入り込んでしまうことを抑制することができる。このため、LEDモジュール20が邪魔になってしまうことを抑制することができる。
【0024】
また、LEDモジュールが可撓性の基板フィルムを備えたシート状のLED照明装置なので、様々な形状の取り付け対象物にLEDモジュールモジュールを容易に取り付けることができる。さらに、LEDチップの厚みがLED直管の厚みよりも小さいので、LEDモジュールは、LEDチップが配置されている箇所とLEDチップが配置されていない箇所との間の高低差をLED直管が配置されている箇所とLED直管が配置されていない箇所との間の高低差よりも小さくできる。そのため、LEDチップの側部側の影が発生しにくくなるので、照明する空間に照射する光のばらつきを抑制できる。
【0025】
本実施の形態によるLED照明器具は、外付けの制御部を有する。これにより、制御部を任意の場所に設置できる。このように、制御部がLEDモジュールに対して外付けで接続されたLED照明器具によれば、限られたスペースであってもLEDモジュールを容易に取り付けることができる。このため、LED照明器具の取り付けを容易にすることができる。
【0026】
以下、図面を参照しながら一実施の形態について具体的に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0027】
(LED照明器具)
図1に示す、本実施の形態によるLED照明器具10は、後述するように、例えば、災害発生時などの非常時に、避難場所の壁W(図7)等に設置され、避難場所等を照明するために用いられ得る。このようなLED照明器具10は、LEDモジュール20と、LEDモジュール20に電気的に接続された制御部40とを備えている。
【0028】
図2に示すように、LEDモジュール20は、いわゆる片面出光型の面状の光源シートであり、そのシート面の発光面20a側(使用時に照明する空間に対面する側)に複数のLEDチップ21が配列されたものである。このような直下型のLEDモジュール20を用いることで、LEDチップ21からの照射光がそのまま発光面20aを通過するので、光量を強くして避難場所を明るく保つことができ、また、シート全体の厚さを薄くしてLEDチップ21の側部側の影を発生しにくくすることができる。図2のLEDモジュール20は、フレキシブル配線基板30と、フレキシブル配線基板30上に規則的に配置された複数のLEDチップ21とを備えている。このようなフレキシブル配線基板30を用いることで、シート面の面積が比較的大きいLEDモジュール20を得ることができる。シート面の面積が比較的大きいLEDモジュール20は、使用するLEDモジュール20の数を減らすことができるので、複数のLEDモジュール20を配置することによって発生し得る光量のばらつきを抑制することができる。なお、図2において、後述する光反射性絶縁保護膜34及び透明保護膜35の表示を省略している。
【0029】
この場合、LEDチップ21は、フレキシブル配線基板30内で、平面視で格子点状に配置されている。すなわちLEDチップ21は、マトリックス状に多段多列に配置されており、直列にM個接続されたLEDチップ21の列RがN列配置されている。例えば図2において、LEDチップ21は、LEDチップ21の第1の配列方向(X方向)に沿って、14個(M=14)直列に接続されている。さらに、この14個のLEDチップ21をもつ列Rが、LEDチップ21の第2の配列方向(Y方向)に沿って、10列(N=10)並列に配置されている。なお、LEDチップ21の配置数はこれに限られるものではない。具体的には、LEDチップ21を、第1の配列方向(X方向)に10個以上14個以下(14≧M≧10)直列に配置し、この列RをLEDチップ21の第2の配列方向(Y方向)に4列以上10列以下(10≧N≧4)並列に配置することが好ましい。LEDチップ21を10個以上直列に配置することにより、LEDチップ21を第1の配列方向(X方向)に沿って短い間隔で配置することができ、LEDモジュール20の照度の面内ばらつきを抑えることができ、空間に照射する光のばらつきを抑制することができる。LEDチップ21を14個以下直列に配置することにより、消費電力を削減することができる。また、LEDチップ21の列をLEDチップ21の第2の配列方向(Y方向)に4列以上並列に配置することにより、特定のLEDチップ21が破損した場合でも、他の列のLEDチップ21に波及しないようにし、LEDモジュール20全体の照度が極端に低下することを抑止することができる。また、LEDモジュール20が直下型の場合には、設置や取り外しのときにLEDチップ21に誤って強く接触して破損するおそれが高まるため、破損時の対策を行っておくことは、リスク管理の観点で重要である。さらに、LEDチップ21の列を10列以下並列に配置することにより、消費電力を削減することができる。
【0030】
LEDモジュール20は、複数の金属配線部22を有し、複数の金属配線部22は、第1の配列方向(X方向)に沿って配列されている。第1の配列方向(X方向)に沿って配列された複数の金属配線部22は、それぞれLEDチップ21の各列Rに対応している。LEDチップ21は、それぞれX方向に互いに隣接する一対の金属配線部22同士を跨ぐように配置されている。またLEDチップ21の図示しない各端子は、一対の金属配線部22にそれぞれ電気的に接続されている。複数の金属配線部22は、LEDチップ21への給電部を構成しており、複数の金属配線部22に電力が供給されることにより、当該列Rに配置されたLEDチップ21が全て点灯する。なお、複数の金属配線部22は、後述する金属配線部32の一部を構成する。
【0031】
第1の配列方向(X方向)におけるLEDチップ21同士の間隔Pxは、37mm以上50mm以下とすることが好ましい。また、第2の配列方向(Y方向)におけるLEDチップ21同士の間隔Pyは、37mm以上100mm以下とすることが好ましい。LEDチップ21同士の間隔を上記範囲とすることにより、LEDモジュール20の輝度を面内で均一にして、空間に照射する光のばらつきを抑制するとともに、LEDモジュール20の消費電力を抑えることができる。
【0032】
LEDモジュール20のうち最も厚い部分における厚みは、5mm以下とすることが好ましい。このようにLEDモジュール20の厚みを薄くすることにより、LEDモジュールを保管する際の保管スペースを低減することができる。また、LEDモジュール20の厚みを薄くすることにより、LEDモジュール20を外部の取り付け対象物に取り付けた際に、LEDモジュール20が嵩張ってしまうことを抑制することができる。これにより、限られたスペースであってもLEDモジュール20を容易に取り付けることができる。
【0033】
LEDチップ21の配列は、平面視格子点状に限られるものではなく、図3(a)に示すように、平面視で千鳥状に配置されていても良い。また、LEDチップ21は、LEDモジュール20の面内で均一に配置されていなくても良い。例えば、LEDモジュール20の周縁部において、LEDチップ21の密度をより高めても良い。具体的には、図3(b)に示すように、LEDモジュール20の中央部(図3(b)の下部)でLEDチップ21を格子点状に配置し、LEDモジュール20の周縁部(図3(b)の上部)でLEDチップ21を千鳥状に配置しても良い。これにより、LEDモジュール20の周縁部におけるLEDモジュール20の輝度の低下を抑制し、LEDモジュール20の輝度を面内で均一にして、空間に照射する光のばらつきを抑制することができる。
【0034】
LEDモジュール20の全体形状は、平面視長方形形状となっているが、LEDモジュール20のサイズや平面形状については特に限定されるものではない。LEDモジュール20は、サイズや形状の加工の自由度が高いため、この点に関する様々な需要に対しても柔軟に対応することが可能である。また、その可撓性を活かして、フラットな設置面に限らず様々な形状の設置面への取付けが可能である。また、LEDモジュール20自体が剛性をもっているため、例えばLEDモジュール20をLEDチップ21が外側になる様に円筒状に曲げることによって、設置面がなくとも、LEDモジュール20単体で照明とすることも可能である。
【0035】
図2において、LEDモジュール20の第1の配列方向(X方向)の長さLxは、500mm以上700mm以下とすることが好ましく、550mm以上650mm以下とすることが更に好ましい。LEDモジュール20の第2の配列方向(Y方向)の長さLyは、300mm以上500mm以下とすることが好ましく、350mm以上450mm以下とすることが更に好ましい。個々のLEDモジュール20の大きさが過度に小さすぎないことにより、LEDモジュール20からの光量を増やすことができる。また、個々のLEDモジュール20の大きさが過度に大きすぎないことにより、特定のLEDチップ21が破損した場合に、他のLEDチップ21に影響が及ぶことを最低限に抑え、LEDモジュール20全体の照度が極端に低下することを防止しかつ照度が低下する範囲を限定することができる。
【0036】
次に、制御部40について説明する。図1に示すように、制御部40は、LEDモジュール20に電力を供給するとともに、LEDモジュール20の発光等を制御するものである。この制御部40は、LEDモジュール20上に設けられた第1コネクタ44Aを介してLEDモジュール20に対して着脱自在に接続される。すなわち制御部40は、LEDモジュール20と別体に構成され、LEDモジュール20に対して外付けで接続されるようになっている。すなわち制御部40は、LEDモジュール20と一体化されていない。これにより、制御部40をLEDモジュール20から分離することができ、制御部40を任意の場所に設置できる。このため、限られたスペースであってもLEDモジュール20を容易に取り付けることができる。
【0037】
また制御部40は、電力入力部41と、AC/DCコンバーター(ドライバー)42と、PWM制御部43とを有している。このうち電力入力部41には、例えば100V乃至240Vの任意の電圧をもつ交流の電圧が供給される。AC/DCコンバーター42は、100V乃至240Vの交流電圧を定圧(例えば44V)の直流電圧に変換する。PWM制御部43は、AC/DCコンバーター42からの定電圧波形のパルス幅を任意に変化させることにより、LEDモジュール20のLEDチップ21の調光を行うものである。すなわちPWM制御部43は、LEDモジュール20の調光を制御する調光制御部としての役割も果たす。PWM制御部43から出力される定電圧は、第1コネクタ44Aを介してLEDモジュール20に印加される。
【0038】
制御部40のPWM制御部43からLEDモジュール20に直流定電圧が印加されることにより、LEDモジュール20に直接整流化されたパルス電圧が印加される場合と異なり、LEDチップ21の調光を行うことが可能となる。すなわち、PWM制御部43は、AC/DCコンバーター42からの直流電圧のデューティー比を適宜変化させることにより、LEDチップ21の照度を任意に制御することができる。例えば、図4(a)に示すように、PWM制御部43は、AC/DCコンバーター42からの定電圧のデューティー比を100%(実線)から50%(点線)に抑えることにより、LEDチップ21の照度を低下させることができる。
【0039】
このようにLEDチップ21の照度を調節する場合、例えば、時刻に応じてLEDモジュール20の照度を調節してもよい。例えば、就寝時間の前には、LEDモジュール20の照度を高くし、就寝時間の後には、LEDモジュール20の照度を低くしてもよい。これにより、避難者の睡眠が妨げられることを抑制することができる。また、LEDモジュール20の照度調整の他の例としては、例えば、屋外の仮設トイレ近傍等、高い照度が必要な場所において、照度を他の場所よりも高くしても良い。
【0040】
また、PWM制御部43からLEDモジュール20に直流定電圧が印加されることにより、LEDモジュール20からの光の単位時間あたりの積算光量を増加することができる。すなわち、例えば、LEDモジュール20に直流定電圧が印加された場合における積算光量(図4(a)の網掛け部分の面積)を、比較例としてパルスで電圧が印加される場合における積算光量(図4(b)の網掛け部分の面積)よりも大きくすることができる。これにより、LEDモジュール20からの光の発光効率を高め、避難場所を明るく保つことができる。
【0041】
再度図1を参照すると、LEDモジュール20には、レギュレータ45が設けられている。この場合、レギュレータ45は、LEDチップ21の各列に対応してそれぞれ設けられており、具体的には、10列のLEDチップ21の列に対応して10個のレギュレータ45が設けられている。このレギュレータ45は、各列の複数のLEDチップ21に流れる電流を一定に保持する役割を果たす。これにより、1つのLEDチップ21が破損した場合でも、他の列のLEDチップ21に過大な電流が流れることを抑え、他の列のLEDチップ21が破損しないようにすることができる。この結果、LEDモジュール20全体の照度が極端に低下することを防止することができ、空間に照射する光のばらつきを抑制することができる。また、レギュレータ45は接続する抵抗値により制御する電流量を列ごとに制御可能であり、たとえば、最初の列と最後の列の制御用抵抗値を変化させることで、周辺部の列のみ出力をあげることができる。これにより、通常、LEDモジュール20同士を隙間なく敷き詰めることで均一性を確保する狙いがあるが、コストの観点や通気性確保の観点で、LEDモジュール20間を5cm~10cm程度あけたとしても、その継ぎ目が消せる効果が期待できる。
【0042】
さらに、LEDモジュール20には、第1コネクタ44Aから分岐して電力供給ライン46が設けられている。また、LEDモジュール20上には第2コネクタ44Bが設けられている。電力供給ライン46は、当該LEDモジュール20のLEDチップ21には電気的に接続されることなく、LEDモジュール20と同一の構成をもつ他のLEDモジュール200の配線に対して電気的に接続される。すなわち電力供給ライン46は、第2コネクタ44B及び他のLEDモジュール200上に設けられた他の第1コネクタ44Aを介して、LEDモジュール200の配線に着脱自在に接続される。電力供給ライン46からの電流は、第2コネクタ44B及び他の第1コネクタ44Aを介して、他のLEDモジュール200に供給される。これにより、2つのLEDモジュール20、200を連結し、これら2つのLEDモジュール20、200を1つの制御部40によって同時に制御することができる。1つの制御部40によって複数のLEDモジュール20、200を同時に制御することができることによって、制御部40の数を減らすことができるので、LED照明器具10が嵩張ってしまうことを抑制することができる。このため、限られたスペースであってもLED照明器具10を容易に取り付けることができる。
【0043】
(LEDモジュールの各部材)
次に、LEDモジュール20を構成する各部材について説明する。図5に示すように、LEDモジュール20は、フレキシブル配線基板30と、フレキシブル配線基板30上に配置された複数のLEDチップ21とを備えている。このうちフレキシブル配線基板30は、可撓性の基板フィルム31と、基板フィルム31上の金属配線部32とを有している。金属配線部32は、接着剤層33を介して基板フィルム31に積層されている。また、基板フィルム31に、LEDモジュール20を、外部の取り付け対象物に取り付けるための取付部50が設けられている。
【0044】
各LEDチップ21は、金属配線部32に導通可能な態様で実装されている。このLEDモジュール20においては、LEDチップ21がフレキシブル配線基板30に実装されていることにより、複数のLEDチップ21を、所望の高い密度で配置することが可能である。
【0045】
LEDモジュール20のうち、LEDチップ21、レギュレータ45、第1コネクタ44Aおよび第2コネクタ44Bが設けられている領域及びその周辺領域を除く領域を覆って、光反射性絶縁保護膜34が形成されている。この光反射性絶縁保護膜34は、金属配線部32を覆うように配置されている。光反射性絶縁保護膜34は、LEDモジュール20の耐マイグレーション特性の向上に寄与する絶縁機能と、LEDモジュール20により作られる光環境の向上に寄与する光反射機能とを兼ね備える層である。この層は、白色顔料を含む絶縁性の樹脂組成物により形成される。前述の金属配線部32と後述の透明保護膜35のみで、耐マイグレーション特性および光反射機能が得られる場合には、光反射性絶縁保護膜34がない構造も可能である。
【0046】
また、光反射性絶縁保護膜34及びLEDチップ21を覆うように、透明保護膜35が形成されている。透明保護膜35は、主としてLEDモジュール20の防水性を確保するためにその最表面(最も発光面20a側に位置する面)に形成される樹脂性の膜である。
【0047】
金属配線部32上には、ハンダ部36が設けられている。各LEDチップ21は、それぞれハンダ部36を介して、金属配線部32に電気的に接続されている。
【0048】
(基板フィルム)
基板フィルム31は、可撓性を有する樹脂フィルムを用いることができる。なお、本明細書中、「可撓性を有する」とは、「曲率半径を少なくとも1m以下、好ましくは50cm、より好ましくは30cm、更に好ましくは10cm、特に好ましくは5cmに曲げることが可能であること」をいう。
【0049】
基板フィルム31の材料としては、耐熱性及び絶縁性が高い熱可塑性樹脂が用いられても良い。このような樹脂として、耐熱性と加熱時の寸法安定性、機械的強度、及び耐久性に優れるポリイミド樹脂(PI)や、ポリエチレンナフタレート(PEN)を用いることができる。中でも、アニール処理等の耐熱性向上処理を施すことによって耐熱性と寸法安定性を向上させたポリエチレンナフタレート(PEN)を好ましく用いることもできる。また、難燃性の無機フィラー等を添加することによって難燃性を向上させたポリエチレンテレフタレート(PET)を用いても良い。
【0050】
基板フィルム31の厚さは、特に限定されないが、放熱経路としてボトルネックとはならないこと、耐熱性及び絶縁性を有するものであること、及び、製造コストのバランスとの観点から、概ね10μm以上500μm以下、好ましくは、50μm以上250μm以下であることが好ましい。また、ロール・トゥ・ロール方式による製造を行う場合の生産性を良好に維持する観点からも上記厚さ範囲内であることが好ましい。
【0051】
(接着剤層)
接着剤層33を形成する接着剤は、公知の樹脂系接着剤を適宜用いることができる。それらの樹脂接着剤のうち、ウレタン系、ポリカーボネート系、シリコーン系、エステル系またはエポキシ系の接着剤等を特に好ましく用いることができる。
【0052】
(金属配線部)
金属配線部32は、基板フィルム31の表面(発光面20a側の面)に金属箔等の導電性基材によって形成される配線パターンである。この金属配線部32は、基板フィルム31の表面へ接着剤層33を介してドライラミネート法によって形成されることが好ましい。金属配線部32は、上述した複数の金属配線部22を含む。複数の金属配線部22は、第1の金属配線部22Aと、第1の金属配線部22Aから離間して配置された第2の金属配線部22Bとを含む。第1の金属配線部22A及び第2の金属配線部22Bには、LEDチップ21が搭載され、LEDチップ21は、第1の金属配線部22A及び第2の金属配線部22Bに電気的に接続されている。第1の金属配線部22A及び第2の金属配線部22Bに供給される電力によりLEDチップ21が点灯するようになっている。
【0053】
金属配線部32は、放熱性と電気伝導性を高い水準で両立させるものであることが好ましく、例えば銅箔を用いることができる。この場合、LEDチップ21からの放熱性が安定し、電気抵抗の増加を防げるので、LEDチップ21間の発光バラツキが小さくなって安定した発光が可能となる。また、LEDチップ21の寿命も延長される。更に、熱による基板フィルム31等の周辺部材の劣化も防止できるので、LEDモジュール20の製品寿命も延長することができる。金属配線部32を形成する金属の例としては、上記の銅の他、アルミニウム、金、銀等の金属を挙げることができる。
【0054】
金属配線部32の厚さは、フレキシブル配線基板30に要求される耐電流の大きさ等に応じて適宜設定すればよい。但し、リフロー方式等によるハンダ加工処理時の基板フィルム31の熱収縮による反りを抑制するためには、金属配線部32の厚さが10μm以上であることが好ましい。一方、金属配線部32の厚さは、50μm以下であることが好ましく、これにより、フレキシブル配線基板30の十分な可撓性を維持することができ、重量増大によるハンドリング性の低下等も抑止することができる。
【0055】
(ハンダ部)
ハンダ部36は、金属配線部32とLEDチップ21との接合を行うものである。このハンダによる接合は、リフロー方式、あるいは、レーザー方式の2方式のいずれかによることができる。
【0056】
(LEDチップ)
LEDチップ21は、P型半導体とN型半導体が接合されたPN接合部での発光を利用した発光素子である。LEDチップ21としては、P型電極及びN型電極をそれぞれ素子の上面及び下面に設けた構造であっても良く、素子の片面にP型電極及びN型電極の双方が設けられた構造であっても良い。
【0057】
また、LEDチップ21としては、発光効率が高いものを選択することが好ましい。具体的には、LEDチップ21として、150lm/W以上の発光効率を有しているものを用いることが好ましく、180lm/W以上の発光効率を有しているものを用いることが更に好ましい。LEDチップ21の発光効率を150lm/W以上に高めることにより、LEDチップ21の実装数(密度)を下げ、LEDチップ21からのジュール熱による発熱を少なくすることができ、LEDチップ21からの熱による基板フィルム31等の周辺部材の劣化を防止できる。
【0058】
LEDモジュール20は、上述の通り、高い放熱性を発揮することができる金属配線部32に、LEDチップ21を直接実装するものである。これにより、LEDチップ21を高密度で配置した場合においても、LEDチップ21の点灯時に発生する過剰な熱を金属配線部32を通して速やかに拡散することができる。このため、基板フィルム31を介してLEDモジュール20の外部へ十分放熱することができ、LEDチップ21からの熱による基板フィルム31等の周辺部材の劣化を防止できる。
【0059】
(光反射性絶縁保護膜)
図5に示すように、光反射性絶縁保護膜34は、LEDチップ21が設けられている領域及びその周辺領域を除く領域に形成される層である。この光反射性絶縁保護膜34は、十分な絶縁性を有することにより、フレキシブル配線基板30の耐マイグレーション特性を向上させる所謂レジスト層であり、かつLEDモジュール20により作られる光環境の発光輝度の向上に寄与する光反射性を備えた光反射層である。
【0060】
光反射性絶縁保護膜34は、ウレタン系樹脂等をベース樹脂とし、酸化チタン等の無機フィラーからなる白色顔料を更に含有する各種の樹脂組成物により形成することができる。光反射性絶縁保護膜34を形成するために用いる樹脂組成物のベース樹脂としては、ウレタン系樹脂の他、アクリル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂等を適宜用いることができる。光反射性絶縁保護膜34を形成する樹脂組成物のベース樹脂としては、透明保護膜35を形成する樹脂組成物と同一または同系の樹脂をベース樹脂とすることがより好ましい。透明保護膜35については、後述するように、アクリル系ポリウレタン樹脂を主たる材料樹脂として用いることが好ましい。これより、透明保護膜35を形成する樹脂組成物のベース樹脂がアクリル系ポリウレタン樹脂である場合には、光反射性絶縁保護膜34を形成するための樹脂組成物のベース樹脂はウレタン系樹脂またはアクリル系ポリウレタン樹脂とすることがより好ましい。
【0061】
光反射性絶縁保護膜34を形成する樹脂組成物に白色顔料として含有させる無機フィラーとしては、酸化チタンの他、アルミナ、硫酸バリウム、マグネシア、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素、チタン酸バリウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、シリカ、マイカ粉、粉末ガラス、粉末ニッケル及び粉末アルミニウムから選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0062】
光反射性絶縁保護膜34の厚さは、5μm以上50μm以下であって、より好ましくは、7μm以上20μm以下である。光反射性絶縁保護膜34の厚さが、5μm未満であると、特に金属配線部32のエッジ部分において、光反射性絶縁保護膜が薄くなり、この金属配線を被覆できずに露出する場合は絶縁性が維持できなくなるリスクが大きくなる。一方、取扱い及び搬送等の際の基板湾曲から光反射性絶縁保護膜34を保持する観点から、光反射性絶縁保護膜34の厚さは、50μm以下であることが好ましい。
【0063】
また、光反射性絶縁保護膜34は、波長400nm以上780nm以下における光線反射率が、いずれも65%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。LEDモジュール20は、例えば、酸化チタンを、ウレタン系またはアクリル系ポリウレタンのベース樹脂100質量部に対して20質量部以上含有させることで、光反射性絶縁保護膜34の厚さを8μmとする場合における同層の上記光線反射率を75%以上とすることが可能である。
【0064】
(透明保護膜)
透明保護膜35は、LEDチップ21を覆うように、LEDモジュール20の最表面に形成されている。透明保護膜35は、防水性と透明性とを有する。透明保護膜35の防水性により、LEDモジュール20を非常時に光源として使用する場合の装置内部への水の侵入を防ぐことができる。LEDチップ21として、例えば150lm/W以上の発光効率を有するような、発光効率が高いものを選択した場合、LEDモジュール20において、特定のLEDチップ21が破損した場合の影響が大きくなる。そのためLEDチップ21が可能な限り破損しにくいようにすることは、リスク管理の観点で重要である。
【0065】
透明保護膜35は、アクリル系ポリウレタン樹脂等をベース樹脂とする各種の樹脂組成物により形成することができる。透明保護膜35を形成するために用いる樹脂組成物のベース樹脂としては、アクリル系ポリウレタン樹脂の他、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール系樹等を適宜用いることができる。透明保護膜35を形成する樹脂組成物のベース樹脂としては、光反射性絶縁保護膜34を形成する樹脂組成物と同一または同系の樹脂をベース樹脂とすることがより好ましい。好ましい具体的な組合せとして、光反射性絶縁保護膜34を形成する樹脂組成物のベース樹脂をウレタン系樹脂とし、透明保護膜35を形成する同樹脂をアクリル系ポリウレタン樹脂とする組合せを挙げることができる。
【0066】
透明保護膜35の厚さは、10μm以上40μm以下であり、好ましくは15μm以上30μm以下であり、より好ましくは20μm以上25μm以下である。透明保護膜35の厚さを上記範囲とすることにより、LEDモジュール20の良好な可撓性や薄さ、軽量性、及び非常時に求められる良好な光学特性を維持することができる。また、LEDモジュール20に対して非常時に求められる十分な防水性をもたらすことができる。
【0067】
透明保護膜35によるLEDモジュール20の耐水性としては、LEDモジュール20に対して水を散布した際に、LEDチップ21の劣化を抑制することが可能となる程度であれば特に限定されない。このような耐水性としては、IEC(国際電気標準会議)によって定められている防水・防塵の保護規格でIPX4以上を示すことが好ましい。IPX4以上の防水性は、あらゆる方向からの水の飛沫によってLEDチップ21に対して有害な影響が及ぼされない程度である。具体的には、LEDモジュール20の法線方向に対して±180°の全範囲に5分間、10L/分の水量で散水ノズルから散水した際、LEDチップ21に対して有害な影響が及ぼされない程度とされる。
【0068】
(取付部)
本実施の形態では、取付部50は、基板フィルム31の裏面(発光面20a側の面とは反対側の面)の全体を覆うように形成されている。この取付部50は、基板フィルム31の裏面側に位置する粘着層51と、粘着層51を覆う保護層52とを有している。
【0069】
粘着層51は、粘着剤を含むものであっても良い。この粘着剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、天然ゴム系、ブチルゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、スチレン系ポリマー、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリロニトリル、炭化水素樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン、ロジントリグリセリド、水素化ロジンなどのロジン系樹脂が適用できる。
【0070】
保護層52は、粘着層51上に剥離可能に貼着されている。この保護層52を粘着層51から剥離し、粘着層51を取り付け対象物に貼り付けることにより、LEDモジュール20が取り付け対象物に取り付けられる。
【0071】
保護層52は、例えば上質紙、コート紙、含浸紙、又はプラスチックフィルムなどの基材(図示せず)と、基材の片面に設けられた離型層(図示せず)とを有している。離型層としては、離型性を有する材料であれば、特に限定されないが、例えば、シリコーン樹脂、有機樹脂変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、ポリエステル樹脂などがある。これらの樹脂は、エマルジョン型、溶剤型又は無溶剤型のいずれもが使用できる。
【0072】
このような取付部50は、市販の両面粘着フィルムを基板フィルム31に貼り付けることにより構成されても良い。または、取付部50は、自己粘着性のあるスチレン系ポリマーシートを粘着層51として基板フィルム31に貼り付けた後に、粘着層51上に保護層52を形成することにより形成されても良い。
【0073】
(LEDモジュールの製造方法)
次に、本実施の形態によるLEDモジュール20の製造方法について、図6(a)-(h)を参照して説明する。
【0074】
まず、基板フィルム31を準備する(図6(a))。次に、基板フィルム31の表面に、金属配線部32の材料となる銅箔等の金属箔32Aを積層する(図6(b))。金属箔32Aは、金属箔32Aを例えばウレタン系接着剤等の接着剤層33によって、基板フィルム31の表面に接着される。あるいは、金属箔32Aは、基板フィルム31の表面に電解メッキ方法や気相製膜法(スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等)により、直接形成しても良い。もしくは、金属箔32Aに基板フィルム31を直接溶着して形成しても良い。
【0075】
次に、金属箔32Aの表面に、金属配線部32に要求される形状にパターニングされたエッチングマスク37を形成する(図6(c))。このエッチングマスク37は、金属配線部32となる金属箔32Aの配線パターンに対応する部分がエッチング液によって腐食しないように設けられる。エッチングマスク37を形成する方法は特に限定されず、例えば、フォトレジストまたはドライフィルムを、フォトマスクを通して感光させた後に現像することによって形成しても良く、インクジェットプリンター等の印刷技術により金属箔32Aの表面にエッチングマスクを形成してもよい。
【0076】
次に、エッチングマスク37に覆われていない箇所に位置する金属箔32Aを浸漬液により除去する(図6(d))。これにより、金属箔32Aのうち、金属配線部32となる箇所以外の部分が除去される。
【0077】
その後、アルカリ性の剥離液を使用して、エッチングマスク37を除去する。これにより、エッチングマスク37が金属配線部32の表面から除去される(図6(e))。
【0078】
続いて、金属配線部32上に光反射性絶縁保護膜34を積層形成する(図6(f))。光反射性絶縁保護膜34の形成は、光反射性絶縁保護膜34を構成する材料樹脂組成物を均一に塗工できる塗工手段であれば特に限定されず、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、ディップコータ、刷毛塗り等の方法を使用することができる。または、光感光性を有する絶縁保護膜材料を全面に塗工し、必要な箇所のみフォトマスクを通して感光させた後に現像することによって光反射性絶縁保護膜34を形成しても良い。
【0079】
次に、金属配線部32上にLEDチップ21、レギュレータ45及びコネクタ44A、44Bを実装する(図6(g))。なお、図6(g)および後述する図6(h)においては、図面を明瞭にするために、レギュレータ45等の図示を省略している。この場合、LEDチップ21は、金属配線部32にハンダ部36を介するハンダ加工によって接合される。このハンダ加工による接合は、リフロー方式、あるいは、レーザー方式によることができ、または導電性樹脂による接合でも良い。
【0080】
次いで、光反射性絶縁保護膜34、LEDチップ21、レギュレータ45及びコネクタ44A、44Bを覆うように透明保護膜35を形成する(図6(h))。この透明保護膜35は、透明樹脂組成物をスプレー処理により吹付けて形成する方法(以下、「スプレーコート法」という)、またはカーテンコート法により形成する方法により行うことが好ましい。スプレーコート法による透明保護膜35の形成は、例えば、アクリル系ポリウレタン樹脂を含むスプレーコート処理用の塗工液を、スプレー塗装機によってフレキシブル配線基板30上の所望の領域に噴霧して塗工膜を形成することにより行うことができる。カーテンコート法による透明保護膜35の形成は、例えば、アクリル系ポリウレタン樹脂を含むカーテンコート処理用の塗工液を、カーテン塗装機によってフレキシブル配線基板30上の所望の領域に滴下して塗工膜を形成することにより行うことができる。
【0081】
次に、基板フィルム31を覆うように、取付部50を形成する(図6(i))。この取付部50は、例えば、市販の両面粘着フィルムを基板フィルム31に貼り付けることにより形成されても良い。
【0082】
なお、本実施の形態によるLEDモジュール20は、上述した方法に限らず、従来公知のLEDチップ用のフレキシブル配線基板や、これにLEDチップを実装してなる各種のLEDモジュールを製造する公知の方法により製造することもできる。
【0083】
(LED照明器具の使用例)
図7は、本実施の形態によるLEDモジュール20の使用方法を模式的に示す図である。図7に示すように、本実施の形態によるLEDモジュール20は、例えば、避難場所の壁Wに取り付けて使用することができる。この場合、取付部50の保護層52(図5参照)を粘着層51から剥離し、粘着層51を取り付け対象物である壁Wに貼り付けることにより、LEDモジュール20が取り付け対象物に取り付けられる。
【0084】
本実施の形態によるLEDモジュール20が可撓性と軽量性とを有することにより、取り付け対象物へのLEDモジュール20の取付けは、従来の直管型の照明装置等による取付けよりも容易に行うことができる。さらに、LEDモジュール20が可撓性を有することにより、LEDモジュール20を、様々なサイズや形状からなる対象物に取り付けることもできる。この結果、本実施の形態によるLEDモジュール20は、様々な状況に応じて使用することができる。
【0085】
また、LEDモジュール20は、従来の直管型の照明装置と比較して薄型化されている。これにより、LEDモジュール20を保管する際に、LEDモジュール20が嵩張ってしまうことを抑制することができる。これにより、LEDモジュール20およびLED照明器具10の保管スペースを低減することができる。また、LEDモジュール20を外部の取り付け対象物に取り付けた際に、LEDモジュール20が嵩張ってしまうことを抑制することができる。これにより、LEDモジュール20が避難者の動線内に入り込んでしまうことを抑制することができる。このため、LEDモジュール20が邪魔になってしまうことを抑制することができる。
【0086】
このように本実施の形態によれば、LEDモジュール20が、可撓性の基板フィルム31と、基板フィルム31上の金属配線部32と、金属配線部32に実装された複数のLEDチップ21とを備えている。また、基板フィルム31に、LEDモジュール20を、外部の取り付け対象物に取り付けるための取付部50が設けられている。これにより、LEDモジュール20を取り付け対象物に容易に取り付けることができる。また、本実施の形態によるLEDモジュール20は、可撓性の基板フィルムを備えたシート状のLED照明装置なので、LEDモジュール20を保管する際に、LEDモジュール20が嵩張ってしまうことを抑制することができる。これにより、LEDモジュールおよびLED照明器具の保管スペースを低減することができる。
【0087】
また本実施の形態によれば、取付部50が、基板フィルム31の裏面側に位置する粘着層51と、粘着層51を覆う保護層52とを有している。これにより、取付部50の保護層52を粘着層51から剥離し、粘着層51を取り付け対象物に貼り付けることにより、LEDモジュール20を取り付け対象物に容易に取り付けることができる。
【0088】
また本実施の形態によれば、LEDチップ21は、透明保護膜35によって覆われているので、水分が飛散した場合であっっても、飛散する水分からLEDチップ21を保護することができる。
【0089】
また本実施の形態によれば、LEDモジュール20の最も厚い部分における厚みが5mm以下であるので、LEDモジュールを保管する際の保管スペースを低減することができる。また、LEDモジュール20の最も厚い部分における厚みが5mm以下であるので、LEDモジュール20を外部の取り付け対象物に取り付けた際に、LEDモジュール20が嵩張ってしまうことを抑制することができる。これにより、限られたスペースであってもLEDモジュール20を容易に取り付けることができる。
【0090】
また本実施の形態によれば、制御部40は、LEDモジュール20に対して外付けで接続されるので、制御部40をLEDモジュール20から離し、制御部40を任意の場所に設置できる。このため、限られたスペースであってもLEDモジュール20を容易に取り付けることができる。
【0091】
また本実施の形態によれば、制御部40からLEDモジュール20に直流定電圧が印加されるので、LEDチップ21からの光の単位時間あたりの積算光量を増加することができる。これにより、LEDモジュール20からの光の発光効率を高め、避難場所を明るく保つことができる。
【0092】
また本実施の形態によれば、制御部40は、LEDチップ21の調光を制御可能となっているので、状況に応じて、LEDチップ21からの光の強度を調整することができる。例えば、時刻に応じてLEDモジュール20の照度を調節してもよく、これにより、避難者の睡眠が妨げられることを抑制することができる。
【0093】
次に、図8および図9により、本実施の形態によるLED照明器具10の使用例の変形例について説明する。図8および図9において、図1乃至図7と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0094】
図8に示すLED照明器具10において、LEDモジュール20の発光面20aが、発光面20aからの光を遮断する遮光層20bによって覆われている。図示された例において、遮光層20bは、光を遮光する遮光領域と、光を透過させる透過領域とを有しており、透過領域からの光によって、「ABC」という文字および矢印が記されるように構成されている。これにより、例えば屋外に設置された仮設トイレ等の位置を示すサイネージ(標識)として、LED照明器具10を使用することができる。
【0095】
図9に示すLED照明器具10において、LEDモジュール20は、車両Cの車体に取り付けられている。このように、LEDモジュール20を車両Cに取り付けることにより、LED照明器具10を屋外で使用することもできる。これにより、屋外を移動する避難者の足元を明るくすることができる。このため、避難者が、例えば段差等に躓くことによって転倒してしまうことを抑制することができる。なお、この場合においても、サイネージ(標識)としてLED照明器具10を使用することができる。
【0096】
なお、図示はしないが、LEDモジュール20の発光面20aが、高いヘイズ値を有するフィルムに覆われていてもよい。この場合、グレアを抑制することができ、防眩性を向上させることができる。
【0097】
次に、図10乃至図12により、本実施の形態によるLEDモジュール20の変形例について説明する。図10乃至図12において、図1乃至図9と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0098】
図10に示すLEDモジュール20において、粘着層51および保護層52が、それぞれ交互に複数積層されている。これにより、取り付け対象物に取り付けられたLEDモジュール20を繰り返し使用することができる。この場合、例えば、取り付け対象物に貼り付けられた粘着層51の粘着力が低下した場合に、粘着力が低下した粘着層51とともに、当該粘着層51に隣接する保護層52をLEDモジュール20から剥離する。これにより、新たな粘着層51を露出させる。そして、新たな粘着層51を取り付け対象物に貼り付ける。このようにして、LEDモジュール20を繰り返し使用することができる。
【0099】
図11に示すLEDモジュール20において、取付部50が、複数設けられている。本変形例では、取付部50は、LEDチップ21の第2の配列方向(Y方向)に沿って、11個設けられている。この場合、各々の取付部50は、Z方向においてLEDチップ21と重ならないように、互いに離間して配置されている。これにより、複数のLEDモジュール20同士を重ねて保管した場合に、各LEDチップ21に負荷が掛かることを抑制することができる。また、この場合、取付部50が基板フィルム31の裏面の全体を覆うように形成されている場合と比較して、LEDモジュール20を取り付け対象物から取り外す際に、取り外しを容易にすることもできる。なお、取付部50の配置数はこれに限られるものではない。
【0100】
図12に示すLEDモジュール20において、取付部50は、基板フィルム31を貫通する貫通孔53を有している。このように取付部50が貫通孔53を有していることにより、後述するように、例えば貫通孔53にフックH(図13参照)を引っ掛けることにより、LEDモジュール20を取り付け対象物に容易に取り付けることができる。
【0101】
また、取付部50は、貫通孔53の周囲に設けられたハトメ54を更に有している。この場合、貫通孔53の周囲をハトメ54によって保護することができる。このため、貫通孔53をきっかけとして、LEDモジュール20の基板フィルム31が破断してしまうことを抑制することができる。また、本変形例では、取付部50は、金属配線部22と重ならない位置に設けられている。これにより、取付部50と金属配線部22とが短絡してしまうことを抑制することができる。なお、図示された例においては、取付部50は、LEDチップ21の第1の配列方向(X方向)に沿って、3個設けられ、この3個の取付部50をもつ列が、LEDチップ21の第2の配列方向(Y方向)に沿って、2列設けられている。しかしながら、取付部50の配置数はこれに限られるものではない。
【0102】
次に、図13乃至図15により、本変形例によるLED照明器具10の使用例について説明する。図13乃至図15において、図1乃至図12と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0103】
図13に示すLED照明器具10において、LEDモジュール20は、例えば避難場所の壁Wに取り付けられたフックHを取付部50に引っ掛けることにより、壁Wに取り付けられている。この場合、LEDモジュール20を取り付け対象物に容易に取り付けることができるとともに、取り付け対象物から容易に取り外すことができる。また、LEDモジュール20を繰り返し使用することができる。
【0104】
図14に示すLED照明器具10において、LEDモジュール20は、棒状の部材Bに、紐状の部材55を介して吊されている。この場合、LEDモジュール20は筒状に丸められており、3つの紐状の部材55を介して棒状の部材Bに吊されている。また、各々の紐状の部材55は、それぞれ一対の取付部50(貫通孔53およびハトメ54)に通されている。なお、LEDモジュール20を吊すための紐状の部材55は、2つ以下であっても良い。
【0105】
上述したように、LEDモジュール20は可撓性と軽量性とを有するため、LEDモジュール20を筒状に丸めた状態で棒状の部材Bに吊すことができる。この際、LEDモジュール20が可撓性と軽量性とを有するため、棒状の部材BからLEDモジュール20が落下した場合であっても、避難者が怪我をしてしまうことを抑制することができる。また、LEDモジュール20が可撓性と軽量性とを有するため、LEDモジュール20を避難者の頭上に配置した場合に、避難者の頭部がLEDモジュール20に接触した場合であっても、避難者が怪我をしてしまうことを抑制することができる。このように、LEDモジュール20が可撓性と軽量性とを有することにより、LEDモジュール20を様々な状況に応じて使用することができるとともに、避難者の安全性を向上させることができる。なお、図示はしないが、この場合においても、サイネージ(標識)としてLED照明器具10が使用されても良い。
【0106】
図15(a)-(b)に示すLED照明器具10において、LEDモジュール20は、柱状の部材Pに、紐状の部材55を介して巻き付けられている。この場合、LEDモジュール20は筒状に丸められており、2つの紐状の部材55を介して柱状の部材Pに巻き付けられている。また、各々の紐状の部材55は、それぞれ一対の取付部50(貫通孔53およびハトメ54)に通されている。なお、LEDモジュール20を巻き付けるための紐状の部材55は、1つであっても良く、3つであっても良い。なお、本変形例では、紐状の部材55は、所定の弾性を有することが好ましい。これにより、柱状の部材Pに巻き付けられたLEDモジュール20が、柱状の部材Pから滑り落ちてしまうことを抑制することができる。
【0107】
なお、上述した実施の形態および変形例では、取付部50が粘着層51等を有する例または取付部50が貫通孔53等を有する例について説明したが、これに限られない。例えば、図示はしないが、取付部50は、磁石を含んでいても良い。この場合、LEDモジュール20の取り付けおよび取り外しを更に容易にすることができる。なお、この場合においても、取付部50は、Z方向においてLEDチップ21と重ならないように配置されることが好ましい。これにより、複数のLEDモジュール20同士を重ねて保管した場合に、各LEDチップ21に負荷が掛かることを抑制することができる。
【0108】
また、図示はしないが、LEDモジュール20は、画鋲等によって、取り付け対象物に取り付けられても良い。この場合、画鋲等は樹脂製であることが好ましい。これにより、画鋲等と金属配線部22とが短絡してしまうことを抑制することができる。なお、画鋲等が金属製である場合、画鋲等は、金属配線部22と重ならない位置に設けられることが好ましい。これにより、画鋲等と金属配線部22とが短絡してしまうことを抑制することができる。
【0109】
上記実施の形態および各変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態および各変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0110】
10 LED照明器具
20 LEDモジュール
21 LEDチップ
22 金属配線部
30 フレキシブル配線基板
31 基板フィルム
32 金属配線部
33 接着剤層
34 光反射性絶縁保護膜
35 透明保護膜
36 ハンダ部
40 制御部
41 電力入力部
42 AC/DCコンバーター
43 PWM制御部
44A 第1コネクタ
44B 第2コネクタ
45 レギュレータ
46 電力供給ライン
50 取付部
51 粘着層
52 保護層
53 貫通孔
54 ハトメ
55 紐状の部材
C 車両
W 壁
B 棒状の部材
P 柱状の部材
図1
図2
図3
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図5
図6
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図15