(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】車両下部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20240829BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240829BHJP
【FI】
B62D25/20 D
B60K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2020210973
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】長崎 雄太
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-038467(JP,A)
【文献】特開2018-140728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
B60K 1/00- 6/12
B60K 7/00- 8/00
B60K 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロア部の前部から車両前方に延びているフロントサイドメンバと、前記フロア部の下面側にバッテリブラケットを介して固定されているバッテリパックと、を有している車両下部構造において、
前記フロントサイドメンバの後部には、該後部から車幅方向内側に延びるロアメンバが接合され、
前記バッテリブラケットは、車両下方視で、前記フロントサイドメンバの後部に重なるように配置された状態で、前記ロアメンバの車幅方向外側部に接合されていることを特徴とする、車両下部構造。
【請求項2】
前記バッテリブラケットは、前記フロントサイドメンバの後部に接合されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両下部構造。
【請求項3】
前記フロントサイドメンバの後部には、サイドブレースが接合され、
前記サイドブレースは、前記フロントサイドメンバの後部から車幅方向外側に向かうに従い車両後方に傾斜して延び、前記サイドブレースの上部は、前記フロア部に接合されており、
前記ロアメンバの車幅方向外側部と前記サイドブレースの車幅方向内側部によって車両前方に膨出する膨出部が形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車両下部構造。
【請求項4】
前記フロントサイドメンバは、車両下方を臨む底面部を有し、
前記膨出部は、前記底面部よりも車両下方に膨出していることを特徴とする請求項3に記載の車両下部構造。
【請求項5】
前記フロント
サイドメンバは、車両後方に向かうに従い車両下方に傾斜するように延びており、
前記バッテリブラケットは、前記フロントサイドメンバよりも車両下方側に配置されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の車両下部構造。
【請求項6】
前記フロントサイドメンバは、車両前後方向の中間部から車両後方に向かうに従い車幅方向内側に湾曲する湾曲部を有し、
前記バッテリブラケットは、前記フロントサイドメンバの車幅方向の中心を通る基準線
よりも車幅方向内側に接合されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の車両下部構造。
【請求項7】
前記膨出部の下部には、車幅方向に延びるサスペンションフレームの車幅方向外側部が接合され、
前記サスペンションフレームは、前記バッテリパックの前部に接合されていることを特
徴とする、請求項3に従属する請求項4ないし請求項6のいずれか一項に記載の車両下部
構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両では、例えば、特許文献1に開示されているように、バッテリパックは、車体のフロア部の下面側に固定されている。特許文献1に開示されている構造では、フロア部の前部には、車両前方に延びるフロントサイドフレームが設けられており、該フロントサイドフレームの後部には、フロントサイドフレーム支持部が設けられている。フロントサイドフレーム支持部は、バッテリパックを支持するバッテリパック支持フレームに取り付けられている。
【0003】
この例におけるバッテリパック支持フレームの前部には、車幅方向に延びるフレーム部が設けられ、該フレームの車幅方向の両側には、バッテリ側直角部が設けられている。フロントサイドフレーム支持部が、フレーム部に設けられた複数の前締結部で締結されており、バッテリパック支持フレームの側部には、サイドシルに締結される複数の横締結部が設けられている。すなわち、この例では、フロントサイドフレーム支持部は、バッテリ側直角部の周辺に設けられた複数の締結部を介して、サイドシルに締結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記例の構造では、例えば前突等によりフロントサイドフレームに衝撃荷重を受けると、当該衝撃荷重は、フロントサイドフレーム支持部に入力され、その後、バッテリパック支持フレームのフレーム部に入力される。上記例のバッテリパック支持フレームには、多くの締結部が設けられているため、フロントサイドフレーム支持部に伝達された衝撃荷重は、複数の締結部に伝達され、バッテリパックへ伝達される。
【0006】
ところが、バッテリパック支持フレームに複数の締結部を設けることで、フレーム部には、締結部毎に衝撃荷重が入力されることになる。このような構造では、意図した方向に荷重が入力されない可能性がある。このように意図しない方向の衝撃荷重がバッテリパック支持フレームに入力されると、バッテリパックに対して意図しない荷重伝達が起こり、その結果、バッテリパックが破損する可能性がある。そのため、複数の締結部を有する上記例のような構造では、フロントサイドフレームに入力される衝撃荷重をバッテリパックに効果的に伝達させようとする上で、改善の余地があった。
【0007】
一方で、電動車両のバッテリパックは、大きな重量を有しているため、車体重量の中で大きな割合を占めることになる。重量物であるバッテリパックの慣性力は大きいため、車両走行時に前突等が起こると、当該慣性力により、バッテリパックの外側部を構成するバッテリケースの前部及びその周辺には、車両前方向に大きな負荷が作用することになる。そのため、バッテリパックの前部等の剛性を高める必要がある。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、バッテリパックの前部の剛性を確保し、さらに、車体前部からバッテリパックへの荷重伝達を促進することが可能な車両下部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る車両下部構造は、車両のフロア部の前部から車両前方に延びているフロントサイドメンバと、前記フロア部の下面側にバッテリブラケットを介して固定されているバッテリパックと、を有している。当該車両下部構造において、前記フロントサイドメンバの後部には、該後部から車幅方向内側に延びるロアメンバが接合され、前記バッテリブラケットは、車両下方視で、前記フロントサイドメンバの後部に重なるように配置された状態で、前記ロアメンバの車幅方向外側部に接合されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バッテリパックの前部の剛性を確保し、さらに、車体前部からバッテリパックへの荷重伝達を促進することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る車両下部構造を車両下方から見た下面図である。
【
図2】
図1のフロントサイドメンバ、ロアメンバ及びサイドブレースが接合されている部分を拡大して示す拡大下面図である。
【
図3】
図2のサイドブレースを取り外した状態を示す下面図である。
【
図4】
図2のフロントサイドメンバ等を車幅方向外側から見た側面図である。
【
図6】
図1の膨出部にサスペンションフレームが取り付けられた状態を示す下面図である。
【
図8】
図3のロアメンバ及び外側ロアメンバが一体的に形成されたロアメンバを示すの変形例を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る車両下部構造の一実施形態について、図面(
図1~
図8)を参照しながら説明する。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示す。実施形態の説明における「前部(前端)及び後部(後端)」は、車両前後方向における前部及び後部に対応する。また、矢印L、R方向は、車幅方向における左側、右側を示している。また、本実施形態の説明における「左右」は、車両室内の乗員が車両前方を向いたときの左右に対応している。また、矢印U方向は、車両上方を示している。
【0013】
本実施形態の車両下部構造は、車輪を駆動するためのモータ(図示せず)に電力を供給するバッテリを有する電動車両の下部構造である。当該車両下部構造は、フロントサイドメンバ10と、サイドシル18と、ロアメンバ21と、サイドブレース16と、バッテリパック40と、バッテリブラケット50と、フロントクロスメンバ60と、を有している。
【0014】
フロントサイドメンバ10は、
図1及び
図2に示すように、車体骨格を構成する剛性の高い部材である。フロントサイドメンバ10は、フロア部を構成するフロアパネル71の前部における車幅方向の両外側部から、車両前方向に延びている。2つのフロントサイドメンバ10は、車幅方向に互いに間隔を空けており、車体側部に設けられたホイルハウスパネル73の車幅方向内側に配置されている。2つのフロントサイドメンバ10の間には、駆動用のモータ等が配置されている。
【0015】
各フロントサイドメンバ10は、後側傾斜部12と、前側直線部11とを有している。後側傾斜部12は、フロアパネル71の前部から車両前方に向かうに従い車幅方向外側に傾斜して延びている。後側傾斜部12の後部は、バッテリブラケット50に接合されている。後側傾斜部12の後部の周辺の構成については後で説明する。前側直線部11は、後側傾斜部12の前端から車両前方に延びている。
【0016】
また、フロントサイドメンバ10は、車両上方に開口を有するU字状の断面形状を有している。例えば、後側傾斜部12に位置するフロントサイドメンバ10の内側壁12aには、車幅方向内側に張り出し、車両前後方向に延びる内側フランジ12cが設けられ、外側壁12bには、車幅方向外側に張り出し、車両前後方向に延びる外側フランジ12dが設けられている。内側フランジ12c及び外側フランジ12dは、
図2に示すように、車体のフロア部の一部を構成するダッシュロアパネル72等に接合されている(
図7)。内側フランジ12c及び外側フランジ12dの後部には、バッテリブラケット50が接合されている。また、本実施形態では、U字形状の断面を構成する底面部14(
図4,
図5)は、車両後方に向かうに従い車両下方に傾斜している。
【0017】
サイドシル18は、
図1及び
図2に示すように、フロアパネル71の車幅方向の両外側に接合されている剛性の高い部材で、フロントサイドメンバ10よりも車幅方向外側でホイルハウスパネル73の車両後方側に配置され、車両前後方向に延びている。また、サイドシル18の前部と、フロントサイドメンバ10の後側傾斜部12の後部とは、サイドブレース16によって連結されている。サイドシル18及び後側傾斜部12と、サイドブレース16との関係は後で説明する。
【0018】
図1及び
図2に示すように、フロアパネル71の車幅方向中間部には、フロアトンネル71Aが設けられている。当該フロアトンネル71Aは、フロアパネル71のほぼ中央が車両上方に隆起するように形成され、車両前後方向に延びている。すなわち、フロアトンネル71Aを設けることによって、フロアパネル71の下面には、車両前後方向に延びる開口が形成される。
【0019】
ロアメンバ21は、
図3に示すように、フロントサイドメンバ10の後側傾斜部12の後部から車幅方向内側に向かって延びている。本実施形態では、ロアメンバ21は、車幅方向に並んで配置される内側ロアメンバ22及び外側ロアメンバ27により構成されている。内側ロアメンバ22及び外側ロアメンバ27は、車幅方向に延びる部材であり、内側ロアメンバ22の外端に外側ロアメンバ27が接合されている。
【0020】
内側ロアメンバ22は、
図3に示すように、車両前後方向に所定の幅を有し、車幅方向に延びている中空の部材であり、車幅方向視で車両上方側に開口を有する断面形状を有している。この例では、内側ロアメンバ22の車幅方向外側部は、フロントサイドメンバ10の後側傾斜部12の後部における車幅方向内側部に配置されている。詳細な図示は省略しているが、内側ロアメンバ22の下面部は、後側傾斜部12の底面部14に接合され、内側ロアメンバ22の下面部の後端に設けられた後壁22aは、後側傾斜部12の後端に接合されてる。また、内側ロアメンバ22の下面部の前端に設けられた前壁22bには、例えば車両前方に突出し、車両上下方向に延びるフランジ22cが設けられ、該フランジ22cは、後側傾斜部12の内側壁12aにスポット溶接等により接合されている。
【0021】
内側メンバの車幅方向内側部は、
図3に示すように、フロアトンネル71Aの開口縁に位置するフロアパネル71に接合されている。また、内側ロアメンバ22の車幅方向内側部は、フロアトンネル71Aの跨ぐように車幅方向に延びる中間部材(図示せず)にスポット溶接等により接合されている。
【0022】
外側ロアメンバ27は、
図3に示すように、車幅方向に延びる板状であり、外側ロアメンバ27の車幅方向内側部は、内側ロアメンバ22の下面部における車幅方向外側部にスポット溶接等により接合されている。また、外側ロアメンバ27は、フロントサイドメンバ10の後側傾斜部12における底面部14の一部を、車両下方側から覆った状態で、底面部14に接合されている。
【0023】
なお、図示による説明は省略しているが、中間部材、左右の内側ロアメンバ22及び左右の外側ロアメンバ27により、1つのロアクロスメンバを構成している。
【0024】
サイドブレース16は、
図2に示すように、外側ロアメンバ27と、サイドシル18の前部とを繋ぐように、車幅方向外側に向かうに従い車両後方に傾斜して延びている剛性の高い部材である。サイドブレース16は、詳細な図示は省略しているが、車両上方に開口するU字形の断面形状を有している。U字形の断面形状を構成する前壁16a及び後壁16bのそれぞれの上部には、フランジ16c,16dが設けられており、該フランジ16c,16dは、フロアパネル71にスポット溶接等により接合されている。なお、前壁16aのフランジ16cは、ホイルハウスパネル73の後部付近に位置するフロアパネル71に接合されている。
【0025】
また、サイドブレース16のU字形の断面形状を構成する下面部における車幅方向内側部は、外側ロアメンバ27を介して、フロントサイドメンバ10の後側傾斜部12の後部における底面部14を覆うように配置されている。フロントサイドメンバ10を覆っている下面部は、フロントサイドメンバ10の後側傾斜部12の底面部14における車幅方向外側部に、スポット溶接等により接合されている。また、サイドブレース16の下面部は、外側ロアメンバ27にも接合されている。
【0026】
バッテリパック40は、内部のバッテリを収容しており、フロアパネル71の下面側に固定されている重量物である。バッテリパック40の内部に収容されているバッテリは、例えば、駆動用のモータにケーブル(図示せず)等を介して電力を供給する。ケーブルは、例えば、フロアトンネル71A内に配索され、モータに接続される。なお、バッテリパック40は、バッテリと、該バッテリを収容するバッテリケースを含んでおり、本実施形態では、バッテリケースをバッテリパック40と称して説明する。
【0027】
バッテリパック40は、
図1に示すように、車両前後方向に延びており、さらに、両側のサイドシル18の間の全域に渡って車幅方向に延びている。バッテリパック40の前部は、ケース直線部41と、ケース傾斜部42とを有している。ケース直線部41は、バッテリパック40の前部における車幅方向の中央部に設けられ、車幅方向に延びている。ケース傾斜部42は、ケース直線部41の車幅方向の両外側に設けられ、ケース直線部41の車幅方向外側部から車幅方向外側に向かうに従い車両後方に傾斜して延びている。また、バッテリパック40の前部には、ケース直線部41とケース傾斜部42とにより、ケース角部43が形成されている。
【0028】
フロントクロスメンバ60は、
図1に示すように、バッテリパック40の車両前方側に配置され、車体骨格を構成する部材の一つであり、全体として車幅方向に延びる部材である。フロントクロスメンバ60は、メンバ直線部61と、メンバ傾斜部62とを有している。メンバ直線部61は、車幅方向両側のフロントサイドメンバ10の後側傾斜部12の間に配置され、車幅方向に延びている部分である。メンバ傾斜部62は、メンバ直線部61の車幅方向外側部から車幅方向外側に向かうに従い車両後方に傾斜して延びている部分である。また、フロントクロスメンバ60には、メンバ直線部61とメンバ傾斜部62とによりメンバ角部63が形成されている。すなわち、フロントクロスメンバ60は、全体で車両前方に凸となるように形成されている。
【0029】
フロントクロスメンバ60は、
図5に示すように、天面部65a及び後壁65bを構成するL字状の断面を有する上側部材65と、前壁66b及び底部66aを構成するL字状の断面を有する下側部材66とを有し、これらが接合されることにより構成されている。上側部材65の後壁65bの下端には、車両後方に突出するフランジ65cが設けられ、該フランジ65cは、下側部材66の底部66aに接合され、同様に、下側部材66の前壁66bの上端には、車両前方に突出するフランジ66cが設けられ、該フランジ66cは、上側部材65の天面部65aに接合され、これにより中空構造が構成されている。
【0030】
バッテリブラケット50は、
図2及び
図3に示すように、バッテリパック40を車体のフロア部の下部に取り付けるための部材である。バッテリブラケット50は、フロントクロスメンバ60を介してバッテリパック40に接合されている。
【0031】
バッテリブラケット50は、フロントクロスメンバ60のメンバ角部63に位置する前壁66bに接合されている。バッテリブラケット50の後部における車幅方向内側には、車幅方向内側に張り出し、車両上下方向に延びるフランジ(図示せず)が設けられ、車幅方向の外側には、車幅方向外側に張り出し、車両上下方向に延びるフランジ(図示せず)が設けられている。これらのフランジは、フロントクロスメンバ60のメンバ角部63に位置する前壁66bにスポット溶接等により接合されている。
【0032】
バッテリブラケット50は、車両下方視で、
図2及び
図3に示すように、フロントサイドメンバ10の後側傾斜部12の後部に重なるように配置された状態で、外側ロアメンバ27の後部に接合されている。この例では、バッテリブラケット50は、メンバ角部63から車両前方に延びる平坦な平面部51を有している。該平面部51は、ロアメンバ21の下面部のうち、車幅方向外側部に接合されている。ここで、外側ロアメンバ27の下面部とバッテリブラケット50の平面部51とは、互いに当接した状態で、スポット溶接等により接合されてもよい。また、下面部及び平面部51が、ボルト等により締結されてもよい。
【0033】
上記のようにフロントサイドメンバ10の後部には、車幅方向内側に延びるロアメンバ21(内側ロアメンバ22)が接合されているため、これらの部材が接合される接合部分は、車幅方向及び車両前後方向の剛性が向上する。この剛性向上によってフロントサイドメンバ10からロアメンバ21への荷重伝達が促進される。さらに、フロントサイドメンバ10の車両後方側にバッテリブラケット50が配置されているため、フロントサイドメンバ10からバッテリブラケット50への荷重伝達を効率よく行うことが可能となる。また、メンバ角部63にバッテリブラケット50が接合される構造により、バッテリパック40の前部の剛性も向上する。
【0034】
また、本実施形態のバッテリブラケット50は、
図3に示すように、フロントサイドメンバ10の下部にも接合されている。この例では、バッテリブラケット50の平面部51は、フロントサイドメンバ10の後側傾斜部12の底面部14にサイドブレース16を介して、ボルト等により接合されている。図示は省略しているが、例えば、バッテリブラケット50の平面部51に2箇所のボルト孔52が車幅方向に互いに間隔を空けて設けられ、これらのボルト孔52に対応するように、サイドブレース16及びフロントサイドメンバ10の底面部14にボルト孔が設けられている。当該ボルト孔52にボルトを貫通させた状態で、フロントサイドメンバ10とバッテリブラケット50は接合されている。
【0035】
また、バッテリブラケット50の平面部51、サイドブレース16及びフロントサイドメンバ10が3枚重なった状態で、ボルト等により締結されている。このような接合構造は、フロントサイドメンバ10の車両前後方向の剛性を用いて、バッテリブラケット50への荷重伝達をより効果的に行うことが可能となる。
【0036】
また、本実施形態では、フロントサイドメンバ10の後側傾斜部12の後端が、サイドブレース16の後壁及び内側ロアメンバ22の後壁に接合されている。さらに、
図2及び
図3に示すように、外側ロアメンバ27の前部と、サイドブレース16の前部における車幅方向内側部とによって、車両前方に膨出する膨出部17が形成されている。
【0037】
外側ロアメンバ27の前部は、内側ロアメンバ22の前部よりも車両前方に膨出する部分を有している。同様に、サイドブレース16の前部における車幅方向内側部は、内側ロアメンバ22の前部よりも車両前方に膨出する部分を有している。膨出部17は、外側ロアメンバ27及びサイドブレース16のそれぞれの膨出している部分によって構成されている。
【0038】
膨出部17を設けることで、車両前後方向の剛性が向上する。その結果、フロントサイドメンバ10から入力される荷重は、膨出部17を介して、車両後方側に伝達される。そのため、車両後方への荷重伝達が促進される。
【0039】
図4及び
図5に示すように、フロントサイドメンバ10の上記したU字形の断面を構成する底面部14は、膨出部17に接合されており、膨出部17は、底面部14よりも車両下方にも膨出している。すなわち、膨出部17の下端は、底面部14よりも車両下方に位置している。これにより、膨出部17によってフロントサイドメンバ10の底面部14を車両下方側から支持することができる。
【0040】
例えば前突等の衝突時に、フロントサイドメンバ10が衝撃荷重を受け止め、荷重吸収を行う。その際に、フロントサイドメンバ10の後端部が膨出部17に接合されていることにより、膨出部17よりも車両前方側で、フロントサイドメンバ10が折り畳まれる変形を促進させることができる。すなわち、膨出部17より車両後方側では、フロントサイドメンバ10の後端部の変形が抑制される。その結果、膨出部17からの荷重入力方向を、バッテリブラケット50に向かうように集中させることが可能となる。
【0041】
また、フロントサイドメンバ10の上記のような変形により、荷重が乗員室のある車体側へ伝達されることを抑制でき、バッテリブラケット50に伝達される荷重は、十分に吸収され、さらに、衝撃荷重は、入力方向が意図する方向(例えば、車両後方)に整った状態となる。すなわち、意図しない方向への荷重伝達が抑制される。
【0042】
また、本実施形態のフロントクロスメンバ60の底面部14は、
図4及び
図5に示すように、車両後方に向かうに従い車両下方に傾斜するように延びており、バッテリブラケット50の後部における下端は、フロントサイドメンバ10の底面部14よりも車両下方側に配置されている。なお、バッテリブラケット50の後部、すなわちバッテリパック40に近い方の端部の上端が、底面部14よりも車両下方にあってもよい。
【0043】
フロントサイドメンバ10の底面部14が傾斜していることにより、フロントサイドメンバ10に入力された衝撃荷重は、車両下方側へ傾斜に沿って伝達される。一方で、バッテリブラケット50がフロントサイドメンバ10より車両下方側に配置されているため、バッテリブラケット50が衝撃荷重で破損することを抑制することが可能である。
【0044】
仮にバッテリブラケット50の後部における下端がフロントクロスメンバ60の底面部14より車両上方側に配置される場合には、フロントクロスメンバ60から車両下方に向かって伝達された衝撃荷重は、バッテリブラケット50を起点に車両上方に向かって伝達されることとなる。この場合、バッテリブラケット50が車両上方に凸となるように折れ曲って破損し、荷重伝達が不十分となる可能性がある。そのため、上記したようにバッテリブラケット50を配置することは、バッテリブラケット50の破損を防ぐために有効である。
【0045】
また、本実施形態のフロントサイドメンバ10は、
図1及び
図2に示すように、車両前後方向の中間部から車両後方に向かうに従い車幅方向内側に湾曲する湾曲部13を有している。この例の湾曲部13は、前側直線部11と後側傾斜部12とを繋ぐ部分である。また、バッテリブラケット50は、フロントサイドメンバ10の車幅方向の中心を通る基準線L(
図2)よりも車幅方向内側に接合されている。この例では、バッテリブラケット50の平面部51のボルト孔52の一つが、基準線Lの右側(車幅方向内側で
図2では左)に配置されている。
【0046】
フロントサイドメンバ10の後部が車両幅方向内側に湾曲するため、車両後方および車両幅方向内側に向けて荷重が伝達される。バッテリブラケット50とフロントサイドメンバ10との接合部分が、基準線Lよりも内側にあることにより、車体側に入力される荷重がバッテリパック40に入力されやすくなる。このため、衝撃荷重を効果的にバッテリパック40に伝達することができる。
【0047】
また、本実施形態では、
図6及び
図7に示すように、膨出部17の下部には、サスペンションフレーム75が接合されている。サスペンションフレーム75は、車幅方向に延びている部材である。この例では、サスペンションフレーム75の上面のうちの車幅方向外側部と、膨出部17の下部とが、ボルト等により締結されている。
【0048】
また、サスペンションフレーム75は、バッテリパック40の前部に接合されている。サスペンションフレーム75の車幅方向外側部における後部は、サスペンションフレーム75の車幅方向中間部よりも車両後方に突出している。この突出している部分が、フロントクロスメンバ60の下面のうち、メンバ傾斜部62に、ボルト79等により締結されている(
図7)。
【0049】
上記のようにサスペンションフレーム75を取り付けることにより、フロントサイドメンバ10に衝撃荷重が入力された際に、膨出部17からサスペンションフレーム75を介して、バッテリパック40に荷重を伝達することができる。これにより、衝撃荷重をより効果的にバッテリパック40に伝達することが可能となる。
【0050】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0051】
本実施形態では、ロアメンバ21は、内側ロアメンバ22及び外側ロアメンバ27で構成されているが、これに限らない。例えば、
図8に示すように、内側ロアメンバ22及び外側ロアメンバ27を1つの部材として構成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 フロントサイドメンバ
11 前側直線部
12 後側傾斜部
12a 内側壁
12b 外側壁
12c 内側フランジ
12d 外側フランジ
13 湾曲部
14 底面部
16 サイドブレース
16a 前壁
16b 後壁
16c フランジ
17 膨出部
18 サイドシル
21 ロアメンバ
22 内側ロアメンバ
22a 後壁
22b 前壁
22c フランジ
27 外側ロアメンバ
40 バッテリパック
41 ケース直線部
42 ケース傾斜部
43 ケース角部
50 バッテリブラケット
51 平面部
52 ボルト孔
60 フロントクロスメンバ
61 メンバ直線部
62 メンバ傾斜部
63 メンバ角部
65 上側部材
65a 天面部
65b 後壁
65c フランジ
66 下側部材
66a 底部
66b 前壁
66c フランジ
71 フロアパネル
71A フロアトンネル
72 ダッシュロアパネル
73 ホイルハウスパネル
75 サスペンションフレーム