(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】共振装置、集合基板、及び共振装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20240829BHJP
H03H 9/24 20060101ALI20240829BHJP
H03H 3/02 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H03H9/24 B
H03H3/02 D
(21)【出願番号】P 2022545290
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2021010275
(87)【国際公開番号】W WO2022044397
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2020140876
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】福光 政和
(72)【発明者】
【氏名】植田 崇資
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-211310(JP,A)
【文献】特開2013-051512(JP,A)
【文献】国際公開第2020/070942(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/02
H03H 9/24
H03H 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部と
、該振動部を保持するように構成された保持部と
、前記振動部と前記保持部とを接続する支持腕部とを有する共振子を含む第1基板と、
前記共振子を間に挟んで前記第1基板と対向するように配置され、前記振動部と電気的に接続される第1接続部を含む第2基板と、を備え、
前記共振子は、平面視において前記振動部
及び前記支持腕部を取り囲むように形成され
かつ前記共振子の表面から裏面まで貫通する分離溝をさらに有する、
共振装置。
【請求項2】
前記共振子の振動空間を封止するように、前記第1基板と前記第2基板とを接合する接合部であって、導電性を有し、前記第1接続部と電気的に接続される接合部と、
前記接合部と電気的に接続され、平面視において前記共振子の外縁まで延在する第2接続部と、をさらに備える、
請求項1に記載の共振装置。
【請求項3】
前記第2接続部は、前記第1基板の前記第2基板に対向する面と前記第2基板の前記第1基板に対向する面とにおいて、外縁まで延在している、
請求項2に記載の共振装置。
【請求項4】
前記分離溝は、平面視において前記接合部の外周に配置される、
請求項2又は3に記載の共振装置。
【請求項5】
前記分離溝は、平面視において前記接合部の内周に配置される、
請求項2又は3に記載の共振装置。
【請求項6】
前記分離溝は、平面視において前記共振子の外縁と前記振動部との間に配置される、
請求項1から5のいずれか一項に記載の共振装置。
【請求項7】
前記共振子は、縮退シリコン基板をさらに有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の共振装置。
【請求項8】
共振装置を製造するための集合基板であって、
それぞれが振動部と
、該振動部を保持するように構成された保持部と
、前記振動部と前記保持部とを接続する支持腕部とを有する複数の共振子を含む第1基板と、
前記複数の共振子を間に挟んで前記第1基板と対向するように配置され、前記複数の共振子のそれぞれの前記振動部と電気的に接続される複数の第1接続部を含む第2基板と、を備え、
前記複数の共振子は、それぞれ、平面視において前記振動部
及び前記支持腕部を取り囲むように形成され
かつ前記共振子の表面から裏面まで貫通する分離溝をさらに有する、
集合基板。
【請求項9】
それぞれが前記共振子の振動空間を封止するように、前記第1基板と前記第2基板とを接合する複数の接合部であって、導電性を有し、前記複数の第1接続部のそれぞれと電気的に接続される複数の接合部と、
前記複数の接合部のそれぞれと電気的に接続され、平面視において複数の前記共振装置に分割するための分割ラインを越えて延在する第2接続部と、をさらに備える、
請求項8に記載の集合基板。
【請求項10】
前記第2接続部は、前記第1基板の前記第2基板に対向する面と前記第2基板の前記第1基板に対向する面とにおいて、前記分割ラインを越えて延在している、
請求項9に記載の集合基板。
【請求項11】
前記複数の共振子は、縮退シリコン基板をさらに有する、
請求項8から10のいずれか一項に記載の集合基板。
【請求項12】
共振装置の製造方法であって、
それぞれが振動部と
、該振動部を保持するように構成された保持部と
、前記振動部と前記保持部とを接続する支持腕部とを有する複数の共振子を含む第1基板と、前記複数の共振子を間に挟んで前記第1基板と対向するように配置され、前記複数の共振子のそれぞれの前記振動部と電気的に接続される複数の第1接続部を含む第2基板と、を準備する工程と、
前記第1基板と前記第2基板とを接合する工程と、
複数の前記共振装置に分割するための分割ラインに沿って前記第1基板及び前記第2基板を分割する工程と、を含み、
前記複数の共振子は、それぞれ、平面視において前記振動部
及び前記支持腕部を取り囲むように形成され
かつ前記共振子の表面から裏面まで貫通する分離溝をさらに有する、
共振装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振装置、集合基板、及び共振装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて製造されたデバイスが普及している。このデバイスは、例えば集合基板(ウエハ)に複数のデバイスを形成した後、ウエハを分割して各デバイスに個片化(チップ化)される。
【0003】
例えば特許文献1には、縮退シリコン(Si)基板又は金属膜を介して、保持部、支持腕、振動部が電気的に接続された共振子を含む共振装置が開示されている。この特許文献1では、各共振装置に分割する前の集合基板の状態において、イオントリミング法等を用い、振動部の共振周波数を調整する周波数調整工程が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された集合基板では、複数の共振装置が互いに隣接して配置されており、隣り合う共振子の保持部は導通している。そのため、トリミング加工等において発生するノイズは、保持部を介して隣接する共振装置の振動部に伝播し易くなっていた。その結果、例えば振動部の共振周波数を調整する際に、伝播ノイズによる測定精度の低下によって共振周波数の調整精度が低下するおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、保持部を介するノイズの伝播を抑制することのできる共振装置、集合基板、及び共振装置の製造方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る共振装置は、振動部と該振動部を保持するように構成された保持部とを有する共振子を含む第1基板と、共振子を間に挟んで第1基板と対向するように配置され、振動部と電気的に接続される第1接続部を含む第2基板と、を備え、共振子は、平面視において振動部を取り囲むように形成された分離溝をさらに有する。
【0008】
本発明の他の側面に係る集合基板は、共振装置を製造するための集合基板であって、それぞれが振動部と該振動部を保持するように構成された保持部とを有する複数の共振子を含む第1基板と、複数の共振子を間に挟んで第1基板と対向するように配置され、複数の共振子のそれぞれの振動部と電気的に接続される複数の第1接続部を含む第2基板と、を備え、複数の共振子は、それぞれ、平面視において振動部を取り囲むように形成された分離溝をさらに有する。
【0009】
本発明の他の側面に係る共振装置の製造方法は、共振装置の製造方法であって、それぞれが振動部と該振動部を保持するように構成された保持部とを有する複数の共振子を含む第1基板と、複数の共振子を間に挟んで第1基板と対向するように配置され、複数の共振子のそれぞれの振動部と電気的に接続される複数の第1接続部を含む第2基板と、を準備する工程と、第1基板と第2基板とを接合する工程と、複数の共振装置に分割するための分割ラインに沿って第1基板及び第2基板を分割する工程と、を含み、複数の共振子は、それぞれ、平面視において振動部を取り囲むように形成された分離溝をさらに有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保持部を介するノイズの伝播を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態における共振装置の外観を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した共振装置の構造を概略的に示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した共振子の構造を概略的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した共振装置の積層構造を概略的に示すX軸に沿う断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示した共振装置の積層構造を概念的に示すY軸に沿う断面図である。
【
図6】
図6は、
図1から
図5に示した共振子及びその周辺の配線を概略的に示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示した連結部材の積層構造を概略的に示す拡大断面図である。
【
図8】
図8は、一実施形態における集合基板の外観を概略的に示す分解斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8に示した領域Aを拡大した部分拡大図である。
【
図10】
図10は、一実施形態における共振装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、一実施形態の変形例における共振装置の共振子及びその周辺の配線を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0013】
<共振装置>
まず、
図1及び
図2を参照しつつ、一実施形態に従う共振装置の概略構成について説明する。
図1は、一実施形態における共振装置1の外観を概略的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示した共振装置1の構造を概略的に示す分解斜視図である。
【0014】
図1及び
図2に示すように、共振装置1は、共振子10と、共振子10が振動する振動空間を形成する下蓋20及び上蓋30と、を備えている。すなわち、共振装置1は、下蓋20と、共振子10と、後述する接合部60と、上蓋30とが、この順で積層されて構成されている。なお、本実施形態のMEMS基板50(下蓋20及び共振子10)は本発明の「第1基板」の一例に相当し、本実施形態の上蓋30は本発明の「第2基板」の一例に相当する。
【0015】
以下において、共振装置1の各構成について説明する。なお、以下の説明では、共振装置1のうち上蓋30が設けられている側を上(又は表)、下蓋20が設けられている側を下(又は裏)、として説明する。
【0016】
共振子10は、MEMS技術を用いて製造されるMEMS振動子である。共振子10と上蓋30とは、接合部60を介して接合されている。また、共振子10と下蓋20は、それぞれ、シリコン(Si)基板(以下、「Si基板」という)を用いて形成されており、Si基板同士が互いに接合されている。なお、共振子10、下蓋20、及び上蓋30は、それぞれ、シリコン層及びシリコン酸化膜が積層されたSOI(Silicon On Insulator)基板を用いて形成されてもよい。
【0017】
上蓋30はXY平面に沿って平板状に広がっており、その裏面に例えば平たい直方体形状の凹部31が形成されている。凹部31は、側壁33に囲まれており、共振子10が振動する空間である振動空間の一部を形成する。なお、上蓋30は、凹部31を有さずに平板状の形状であってもよい。また、上蓋30の凹部31の共振子10側の面に、アウトガスを吸着するためのゲッター層が形成されていてもよい。
【0018】
下蓋20は、XY平面に沿って設けられる矩形平板状の底板22と、底板22の周縁部からZ軸方向、つまり、下蓋20と共振子10との積層方向、に延びる側壁23と、を有する。下蓋20には、共振子10と対向する面において、底板22の表面と側壁23の内面とによって形成される凹部21が形成されている。凹部21は、共振子10の振動空間の一部を形成する。なお、下蓋20は、凹部21を有さずに平板状の形状であってもよい。また、下蓋20の凹部21の共振子10側の面に、アウトガスを吸着するためのゲッター層が形成されてもよい。
【0019】
また、下蓋20は、底板22の表面に形成される突起部25を備える。突起部25の詳細な構成については、後述する。
【0020】
上蓋30と共振子10及び下蓋20とを接合することによって、共振子10の振動空間は気密に封止され、真空状態が維持される。この振動空間には、例えば不活性ガス等の気体が充填されてもよい。
【0021】
次に、
図3を参照しつつ、一実施形態に従う共振装置における共振子の概略構成について説明する。
図3は、
図2に示した共振子10の構造を概略的に示す平面図である。
【0022】
図3に示すように、共振子10は、MEMS技術を用いて製造されるMEMS振動子であり、
図3の直交座標系におけるXY平面内で面外屈曲振動モードを主振動(以下、「メインモード」ともいう)として振動する。なお、共振子10は、面外屈曲振動モードを用いた共振子に限定されるものではない。共振装置1の共振子は、例えば、広がり振動モード、厚み縦振動モード、ラム波振動モード、面内屈曲振動モード、表面波振動モードを用いるものであってもよい。これらの振動子は、例えば、タイミングデバイス、RFフィルタ、デュプレクサ、超音波トランスデューサー、ジャイロセンサ、加速度センサ等に応用される。また、アクチュエーター機能を持った圧電ミラー、圧電ジャイロ、圧力センサ機能を持った圧電マイクロフォン、超音波振動センサ等に用いられてもよい。さらに、静電MEMS素子、電磁駆動MEMS素子、ピエゾ抵抗MEMS素子に適用してもよい。
【0023】
共振子10は、振動部110と、保持部140と、支持腕部150と、を備える。
【0024】
振動部110は、
図3の直交座標系におけるXY平面に沿って広がる矩形の輪郭を有している。振動部110は、保持部140の内側に配置されており、振動部110と保持部140との間には、所定の間隔で空間が形成されている。
図3の例では、振動部110は、4本の振動腕121A~121D(以下、まとめて「振動腕121」ともいう)から構成される励振部120と、基部130と、を含んでいる。なお、振動腕の数は、4本に限定されず、例えば1本以上の任意の数に設定される。本実施形態において、励振部120と基部130とは、一体に形成されている。
【0025】
振動腕121A,121B,121C,121Dは、それぞれ、Y軸方向に沿って延びており、この順でX軸方向に所定の間隔で並列に設けられている。振動腕121Aの一端は後述する基部130の前端部131Aに接続された固定端であり、振動腕121Aの他端は基部130の前端部131Aから離れて設けられた開放端である。振動腕121Aは、開放端側に形成された質量付加部122Aと、固定端から延びて質量付加部122Aに接続された腕部123Aと、を含んでいる。同様に、振動腕121B,121C,121Dも、それぞれ、質量付加部122B,122C,122Dと、腕部123B,123C,123Dと、を含んでいる。なお、腕部123A~123Dは、それぞれ、例えばX軸方向の幅が30μm程度、Y軸方向の長さが400μm程度である。
【0026】
本実施形態の励振部120では、X軸方向において、外側に2本の振動腕121A,121Dが配置されており、内側に2本の振動腕121B,121Cが配置されている。内側の2本の振動腕121B,121Cのそれぞれの腕部123B,123C同士の間に形成された間隙の幅(以下、「リリース幅」という。)W1は、例えば、X軸方向において隣接する振動腕121A,121Bのそれぞれの腕部123A,123B同士の間のリリース幅W2、及び、X軸方向において隣接する振動腕121D,121Cのそれぞれの腕部123D,123C同士の間のリリース幅W2、よりも大きく設定されている。リリース幅W1は例えば25μm程度、リリース幅W2は例えば10μm程度である。このように、リリース幅W1をリリース幅W2よりも大きく設定することにより、振動部110の振動特性や耐久性が改善される。なお、共振装置1を小型化できるように、リリース幅W1をリリース幅W2よりも小さく設定してもよいし、等間隔に設定してもよい。
【0027】
質量付加部122A~122Dは、それぞれの表面に質量付加膜125A~125Dを備えている。したがって、質量付加部122A~122Dのそれぞれの単位長さ当たりの重さ(以下、単に「重さ」ともいう。)は、腕部123A~123Dのそれぞれの重さよりも重い。これにより、振動部110を小型化しつつ、振動特性を改善することができる。また、質量付加膜125A~125Dは、それぞれ、振動腕121A~振動腕121Dの先端部分の重さを大きくする機能だけではなく、その一部を削ることによって振動腕121A~121Dの共振周波数を調整する、いわゆる周波数調整膜としての機能も有する。
【0028】
本実施形態において、質量付加部122A~122DのそれぞれのX軸方向に沿う幅は、例えば49μm程度であり、腕部123A~123DのそれぞれのX軸方向に沿う幅よりも大きい。これにより、質量付加部122A~122Dのそれぞれの重さを、さらに大きくできる。共振子10の小型化のために、質量付加部122A~122DのそれぞれのX軸方向に沿う幅は、腕部123A~123DのそれぞれのX軸方向に沿う幅に対して1.5倍以上であることが好ましい。但し、質量付加部122A~122Dのそれぞれの重さは腕部123A~123Dのそれぞれの重さよりも大きければよく、質量付加部122A~122DのそれぞれのX軸方向に沿う幅は、本実施形態の例に限定されるものではない。質量付加部122A~122DのそれぞれのX軸方向に沿う幅は、腕部123A~123DのそれぞれのX軸方向に沿う幅と同等、もしくはそれ以下であってもよい。
【0029】
共振子10を上方から平面視(以下、単に「平面視」という)したときに、質量付加部122A~122Dは、それぞれ、略長方形状であって、四隅に丸みを帯びた曲面形状、例えばいわゆるR形状を有する。同様に、腕部123A~123Dは、それぞれ、略長方形状であって、基部130に接続される固定端付近、及び、質量付加部122A~122Dのそれぞれに接続される接続部分付近にR形状を有する。但し、質量付加部122A~122D及び腕部123A~123Dのそれぞれの形状は、本実施形態の例に限定されるものではない。例えば、質量付加部122A~122Dのそれぞれの形状は、略台形状や略L字形状であってもよい。また、腕部123A~123Dのそれぞれの形状は、略台形状であってもよい。質量付加部122A~122D及び腕部123A~123Dは、それぞれ、表面側及び裏面側のいずれか一方に開口を有する有底の溝部や、表面側及び裏面側の両方に開口を有する穴部が形成されていてもよい。当該溝部及び当該穴部は、表面と裏面とを繋ぐ側面から離れていてもよく、当該側面側に開口を有していてもよい。
【0030】
基部130は、平面視において、前端部131Aと、後端部131Bと、左端部131Cと、右端部131Dと、を有している。前述したように、前端部131Aには、振動腕121A~121Dのそれぞれの固定端が接続されている。後端部131Bには、後述する支持腕部150の支持腕151が接続されている。
【0031】
前端部131A、後端部131B、左端部131C、及び右端部131Dは、それぞれ、基部130の外縁部の一部である。具体的には、前端部131A及び後端部131Bは、それぞれ、X軸方向に延びる端部であり、前端部131Aと後端部131Bとは、互いに対向するように配置されている。左端部131C及び右端部131Dは、それぞれ、Y軸方向に延びる端部であり、左端部131Cと右端部131Dとは、互いに対向するように配置されている。左端部131Cの両端は、それぞれ、前端部131Aの一端と後端部131Bの一端とに繋がっている。右端部131Dの両端は、それぞれ、前端部131Aの他端と後端部131Bの他端とに繋がっている。
【0032】
平面視において、基部130は、前端部131A及び後端部131Bを長辺とし、左端部131C及び右端部131Dを短辺とする、略長方形状を有する。基部130は、前端部131A及び後端部131Bそれぞれの垂直二等分線であるX軸方向の中心線CL1に沿って、規定される仮想平面に対して、略面対称に形成されている。すなわち、基部130は、中心線CL1に関して略線対称に形成されている、ともいえる。なお、基部130の形状は、
図3に示す長方形状である場合に限定されず、中心線CL1に関して略線対称を構成するその他の形状であってもよい。例えば、基部130の形状は、前端部131A及び後端部131Bの一方が他方よりも長い台形状であってもよい。また、前端部131A、後端部131B、左端部131C、及び右端部131Dの少なくとも1つが屈曲又は湾曲してもよい。
【0033】
なお、仮想平面は振動部110全体の対称面に相当し、中心線CL1は振動部110全体のX軸方向の中心線に相当する。したがって、中心線CL1は、振動腕121A~121DのX軸方向における中心を通る線でもあり、振動腕121Bと振動腕121Cとの間に位置する。具体的には、隣接する振動腕121A及び振動腕121Bのそれぞれは、中心線CL1を挟んで、隣接する振動腕121D及び振動腕121Cのそれぞれと対称に形成されている。
【0034】
基部130において、前端部131Aと後端部131Bとの間のY軸方向における最長距離である基部長は、例えば20μm程度である。また、左端部131Cと右端部131Dとの間のX軸方向における最長距離である基部幅は、例えば180μm程度である。なお、
図3に示す例では、基部長は左端部131C又は右端部131Dの長さに相当し、基部幅は前端部131A又は後端部131Bの長さに相当する。
【0035】
保持部140は、振動部110を保持するように構成されている。より詳細には、保持部140は、振動腕121A~121Dが振動可能であるように、構成されている。具体的には、保持部140は、中心線CL1に沿って規定される仮想平面に対して面対称に形成されている。保持部140は、平面視において矩形の枠形状を有し、XY平面に沿って振動部110の外側を囲むように配置されている。このように、保持部140が平面視において枠形状を有することにより、振動部110の周囲を囲む保持部140を容易に実現することができる。
【0036】
なお、保持部140は、振動部110の周囲の少なくとも一部に配置されていればよく、枠形状に限定されるものではない。例えば、保持部140は、振動部110を保持し、また、上蓋30及び下蓋20と接合できる程度に、振動部110の周囲に配置されていればよい。
【0037】
本実施形態においては、保持部140は一体形成される枠体141A~141Dを含んでいる。枠体141Aは、
図3に示すように、振動腕121A~121Dの開放端に対向して、長手方向がX軸に平行に設けられる。枠体141Bは、基部130の後端部131Bに対向して、長手方向がX軸に平行に設けられる。枠体141Cは、基部130の左端部131C及び振動腕121Aに対向して、長手方向がY軸に平行に設けられ、その両端で枠体141A、141
Bの一端にそれぞれ接続される。枠体141Dは、基部130の右端部131D及び振動腕121
Dに対向して、長手方向がY軸に平行に設けられ、その両端で枠体141A、141Bの他端にそれぞれ接続される。枠体141Aと枠体141Bとは、振動部110を挟んでY軸方向において互いに対向している。枠体141Cと枠体141Dとは、振動部110を挟んでX軸方向において互いに対向している。
【0038】
支持腕部150は、保持部140の内側に配置され、基部130と保持部140とを接続している。支持腕部150は、中心線CL1に関して線対称ではない、つまり、非対称に形成されている。具体的には、支持腕部150は、平面視において、1本の支持腕151を含んでいる。支持腕151は支持後腕152を含む。
【0039】
支持後腕152は、基部130の後端部131Bと保持部140との間において、保持部140から延びている。具体的には、支持後腕152は、一端(左端又は枠体141C側の端)が枠体141Cに接続されており、X軸方向に枠体141Dに向かって延びている。すなわち、支持腕151の一端は、保持部140に接続されている。そして、支持後腕152は、基部130におけるX軸方向の中央でY軸方向に屈曲し、そこから中心線CL1に沿って延びて基部130の後端部131Bに接続している。すなわち、支持腕151の他端は、基部130の後端部131Bに接続されている。
【0040】
突起部25は、下蓋20の凹部21から振動空間内に突起している。突起部25は、平面視において、振動腕121Bの腕部123Bと振動腕121Cの腕部123Cとの間に配置される。突起部25は、腕部123B,123Cに並行にY軸方向に延び、角柱形状に形成されている。突起部25のY軸方向の長さは240μm程度、X軸方向の長さは15μm程度である。なお、突起部25の数は、1つである場合に限定されず、2以上の複数であってもよい。このように、突起部25が振動腕121Bと振動腕121Cとの間に配置され、凹部21の底板22から突起することにより、下蓋20の剛性を高めることができ、下蓋20の上で形成される共振子10の撓みや、下蓋20の反りの発生を抑制することが可能になる。
【0041】
分離溝145は、平面視において振動部110を取り囲むように構成されている。より詳細には、分離溝145は、保持部140の内側に配置された振動部110及び支持腕部150を取り囲むように構成されている。具体的には、分離溝145は、共振子10の表面から裏面まで貫通する溝であり、保持部140の所定の領域に形成され、平面視において略矩形の枠形状を有している。
【0042】
次に、
図4及び
図5を参照しつつ、一実施形態に従う共振装置の積層構造及び動作について説明する。
図4は、
図1に示した共振装置1の積層構造を概略的に示すX軸に沿う断面図である。
図5は、
図1に示した共振装置1の積層構造を概念的に示すY軸に沿う断面図である。
【0043】
図4及び
図5に示すように、共振装置1は、下蓋20の側壁23上に共振子10の保持部140が接合され、さらに共振子10の保持部140と上蓋30の側壁33とが接合される。このように下蓋20と上蓋30との間に共振子10が保持され、下蓋20と上蓋30と共振子10の保持部140とによって、振動部110が振動する振動空間が形成されている。
【0044】
共振子10における、振動部110、保持部140、及び支持腕部150は、同一プロセスによって一体的に形成される。共振子10は、基板の一例であるSi基板F2の上に、金属膜E1が積層されている。そして、金属膜E1の上には、金属膜E1を覆うように圧電膜F3が積層されており、さらに、圧電膜F3の上には金属膜E2が積層されている。金属膜E2の上には、金属膜E2を覆うように保護膜F5が積層されている。質量付加部122A~122Dにおいては、さらに、保護膜F5の上にそれぞれ、前述の質量付加膜125A~125Dが積層されている。振動部110、保持部140、及び支持腕部150のそれぞれの外形は、前述したSi基板F2、金属膜E1、圧電膜F3、金属膜E2、保護膜F5等から構成される積層体を、例えばドライエッチングによって除去加工し、パターニングすることによって形成される。
【0045】
Si基板F2は、例えば、厚み6μm程度の縮退したn型シリコン(Si)半導体から形成されており、n型ドーパントとしてリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)等を含むことができる。また、Si基板F2に用いられる縮退シリコン(Si)の抵抗値は、例えば1.6mΩ・cm未満であり、より好ましくは1.2mΩ・cm以下である。さらに、Si基板F2の下面には、温度特性補正層の一例として、例えばSiO2等の酸化ケイ素層F21が形成されている。これにより、温度特性を向上させることが可能になる。
【0046】
本実施形態において、酸化ケイ素層F21は、当該酸化ケイ素層F21をSi基板F2に形成しない場合と比べて、Si基板F2に温度補正層を形成したときの振動部110における周波数の温度係数、つまり、温度当たりの変化率を、少なくとも常温近傍において低減する機能を有する層をいう。振動部110が酸化ケイ素層F21を有することにより、例えば、Si基板F2と金属膜E1、E2と圧電膜F3及び酸化ケイ素層F21とによる積層構造体の共振周波数において、温度に伴う変化を低減することができる。酸化ケイ素層は、Si基板F2の上面に形成されてもよいし、Si基板F2の上面及び下面の両方に形成されてもよい。
【0047】
質量付加部122A~122Dの酸化ケイ素層F21は、均一の厚みで形成されることが望ましい。なお、均一の厚みとは、酸化ケイ素層F21の厚みのばらつきが厚みの平均値から±20%以内であることをいう。
【0048】
金属膜E1,E2は、それぞれ、振動腕121A~121Dを励振する励振電極と、励振電極と外部電源とを電気的に接続させる引出電極と、を含んでいる。金属膜E1,E2の励振電極としての役割を果たす部分は、振動腕121A~121Dの腕部123A~123Dにおいて、圧電膜F3を挟んで互いに対向している。金属膜E1,E2の引出電極としての役割を果たす部分は、例えば、支持腕部150を経由し、基部130から保持部140に導出されている。金属膜E1は、共振子10全体に亘って電気的に連続している。金属膜E2は、振動腕121A,121Dに形成された部分と、振動腕121B,121Cに形成された部分と、において、電気的に離れている。金属膜E1のうちの励振電極としての役割を果たす部分は、下部電極ともいう。金属膜E2のうちの励振電極としての役割を果たす部分は、上部電極ともいう。
【0049】
金属膜E1,E2の厚みは、それぞれ、例えば0.1μm以上0.2μm以下程度である。金属膜E1,E2は、成膜後に、エッチング等の除去加工によって励振電極、引出電極等にパターニングされる。金属膜E1,E2は、例えば、結晶構造が体心立方構造である金属材料によって形成される。具体的には、金属膜E1,E2は、Mo(モリブデン)、タングステン(W)等を用いて形成される。このように、金属膜E1、E2は、結晶構造が体心立方構造である金属を主成分とすることにより、共振子10の下部電極及び上部電極に適した金属膜E1、E2を容易に実現することができる。
【0050】
本実施形態では、共振子10が金属膜E1を含む例を示したが、これに限定されるものではない。共振子10が有するSi基板F2は、単なるシリコン(Si)ではなく、例えば低抵抗となる縮退シリコンの基板(以下「縮退シリコン基板」という)であることが好ましい。これにより、共振子10は金属膜E1を省略し、縮退シリコン基板自体が金属膜E1の役割、例えば下部電極の役割を兼ねることが可能となる。従って、後述する集合基板100において、隣り合う共振装置において縮退シリコン基板を共用することで、複数の共振子10の縮退シリコン基板、つまり、下部電極を介して、複数の共振装置を容易に一括して通電することができる。
【0051】
圧電膜F3は、電気的エネルギーと機械的エネルギーとを相互に変換する圧電体の一種によって形成された薄膜である。圧電膜F3は、金属膜E1,E2によって圧電膜F3に形成される電界に応じて、XY平面の面内方向のうちのY軸方向に伸縮する。この圧電膜F3の伸縮によって、振動腕121A~121Dは、それぞれ、下蓋20の底板22及び上蓋30の底板32に向かってその開放端を変位させる。これにより、共振子10は、面外屈曲の振動モードで振動する。
【0052】
圧電膜F3の厚みは、例えば1μm程度であるが、0.2μm~2μm程度であってもよい。圧電膜F3は、ウルツ鉱型六方晶構造の結晶構造を持つ材質によって形成されており、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化スカンジウムアルミニウム(ScAlN)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、などの窒化物又は酸化物を主成分とすることができる。なお、窒化スカンジウムアルミニウムは、窒化アルミニウムにおけるアルミニウムの一部がスカンジウムに置換されたものであり、スカンジウムの代わりに、マグネシウム(Mg)及びニオブ(Nb)、又はマグネシウム(Mg)及びジルコニウム(Zr)、などの2元素で置換されていてもよい。このように、圧電膜F3は、結晶構造がウルツ鉱型六方晶構造を有する圧電体を主成分とすることにより、共振子10に適した圧電膜F3を容易に実現することができる。
【0053】
保護膜F5は、金属膜E2を酸化から保護する。なお、保護膜F5は上蓋30側に設けられていれば、上蓋30の底板32に対して露出していなくてもよい。例えば、保護膜F5を覆うように、共振子10に形成された配線の容量を低減する寄生容量低減膜等が形成されてもよい。保護膜F5は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化スカンジウムアルミニウム(ScAlN)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)等の圧電膜の他、窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン(SiO2)、酸化アルミナ(Al2O3)、五酸化タンタル(Ta2O5)等の絶縁膜で形成される。保護膜F5の厚さは、圧電膜F3の厚さの半分以下の長さで形成され、本実施形態では、例えば0.2μm程度である。なお、保護膜F5のより好ましい厚さは、圧電膜F3の厚さの4分の1程度である。さらに、保護膜F5が窒化アルミニウム(AlN)等の圧電体によって形成される場合には、圧電膜F3と同じ配向を持った圧電体が用いられることが好ましい。
【0054】
質量付加部122A~122Dの保護膜F5は、均一の厚みで形成されることが望ましい。なお、均一の厚みとは、保護膜F5の厚みのばらつきが厚みの平均値から±20%以内であることをいう。
【0055】
質量付加膜125A~125Dは、質量付加部122A~122Dのそれぞれの上蓋30側の表面を構成し、振動腕121A~121Dのそれぞれの周波数調整膜に相当する。質量付加膜125A~Dのそれぞれの一部を除去するトリミング処理によって、共振子10の周波数が調整される。周波数調整の効率の点から、質量付加膜125A~125Dは、エッチングによる質量低減速度が保護膜F5よりも早い材料によって形成されることが好ましい。質量低減速度は、エッチング速度と密度との積により表される。エッチング速度とは、単位時間あたりに除去される厚みである。保護膜F5と質量付加膜125A~125Dとは、質量低減速度の関係が前述の通りであれば、エッチング速度の大小関係は任意である。また、質量付加部122A~122Dの重さを効率的に増大させる観点から、質量付加膜125A~125Dは、比重の大きい材料によって形成されるのが好ましい。これらの理由により、質量付加膜125A~125Dは、例えば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)等の金属材料によって形成されている。
【0056】
質量付加膜125A~125Dのそれぞれの上面の一部が、周波数を調整する工程においてトリミング処理によって除去されている。質量付加膜125A~125Dのトリミング処理は、例えばアルゴン(Ar)イオンビームを照射するドライエッチングによって行うことができる。イオンビームは広範囲に照射できるため加工効率に優れるが、電荷を有するため質量付加膜125A~125Dを帯電させるおそれがある。質量付加膜125A~Dの帯電によるクーロン相互作用によって、振動腕121A~121Dの振動軌道が変化して共振子10の振動特性が劣化するのを防止するため、質量付加膜125A~125Dは接地されることが好ましい。
【0057】
保持部140の保護膜F5の上には、内部端子T1’と接続配線CW2,CW3とが形成されている。内部端子T1’は、圧電膜F3及び保護膜F5に形成された貫通孔を通して、金属膜E1と電気的に接続している。なお、共振子10が金属膜E1を含まない場合、内部端子T1’は、貫通孔を通して、金属膜E1を兼ねるSi基板F2と電気的に接続する。
【0058】
接続配線CW2は、後述するように引き回され、金属膜E2のうちの振動腕121A,121Dに形成された部分と電気的に接続している。接続配線CW3は、後述するように引き回され、金属膜E2のうちの振動腕121B,121Cに形成された部分と電気的に接続している。内部端子T1’及び接続配線CW2,CW3は、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、金(Au)、錫(Sn)、などの金属材料によって形成されている。
【0059】
下蓋20の底板22及び側壁23は、Si基板P10により、一体的に形成されている。Si基板P10は、縮退されていないシリコンから形成されており、その抵抗率は例えば10Ω・cm以上である。下蓋20の凹部21の内側では、Si基板P10が露出している。突起部25の上面には、酸化ケイ素層F21が形成されている。但し、突起部25の帯電を抑制する観点から、突起部25の上面には、酸化ケイ素層F21よりも電気抵抗率の低いSi基板P10が露出してもよく、導電層が形成されてもよい。
【0060】
Z軸方向に規定される下蓋20の厚みは150μm程度、同様に規定される凹部21の深さは50μm程度である。
【0061】
上蓋30の底板32及び側壁33は、Si基板Q10により、一体的に形成されている。上蓋30の表面、裏面、及び貫通孔の内側面は、シリコン酸化膜等の絶縁酸化膜Q11に覆われていることが好ましい。絶縁酸化膜Q11は、例えばSi基板Q10の酸化や、化学気相蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)によって、Si基板Q10の表面に形成される。上蓋30の凹部31の内側では、Si基板Q10が露出している。なお、上蓋30の凹部31における、共振子10と対向する側の面にはゲッター層が形成されてもよい。ゲッター層は、例えば、チタン(Ti)などによって形成され、後述する接合部60等から放出されるアウトガスを吸着し、振動空間の真空度の低下を抑制する。なお、ゲッター層は、下蓋20の凹部21における、共振子10と対向する側の面に形成されてもよく、下蓋20の凹部21及び上蓋30の凹部31の両方における、共振子10と対向する側の面に形成されてもよい。
【0062】
Z軸方向に規定される上蓋30の厚みは150μm程度、同様に規定される凹部31の深さは50μm程度である。
【0063】
上蓋30の上面(共振子10と対向する面とは反対側の面)には外部端子T1,T2,T3が形成されている。外部端子T1は、共振子10の金属膜E1を接地させるための実装端子である。外部端子T2は、共振子10の振動腕121A,121Dの金属膜E2を外部電源に電気的に接続させるための実装端子である。外部端子T3は、共振子10の振動腕121B,121Cの金属膜E2を外部電源に電気的に接続させるための実装端子である。外部端子T1,T2,T3は、例えば、クロム(Cr)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)などのメタライズ層(下地層)に、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)、Cu(銅)などのメッキを施して形成されている。なお、上蓋30の上面には、寄生容量や機械的強度バランスを調整する目的で、共振子10とは電気的に絶縁されたダミー端子が形成されてもよい。
【0064】
上蓋30の側壁33の内部には、貫通電極V1,V2,V3が形成されている。貫通電極V1は、後述する接続配線CW1を介して、外部端子T1と内部端子T1’とを電気的に接続している。また、貫通電極V2は外部端子T2と接続配線CW2とを電気的に接続し、貫通電極V3は外部端子T3と接続配線CW3とを電気的に接続している。貫通電極V1,V2,V3は、上蓋30の側壁33をZ軸方向に貫通する貫通孔に導電性材料を充填して形成されている。充填される導電性材料は、例えば、多結晶シリコン(Poly-Si)、銅(Cu)、金(Au)等である。
【0065】
接続配線CW1は、上蓋30の側壁33における、共振子10と対向する側の面に形成される。接続配線CW1は、貫通電極V1と内部端子T1’とを接続している。これにより、前述したように、内部端子T1’は共振子10の金属膜E1と電気的に接続しているので、共振子10の振動部110(励振部120及び基部130)は、接続配線CW1を介して通電可能になる。従って、例えば検査工程において、上蓋30の外部から、外部端子T1、貫通電極V1、及び接続配線CW1を介して、共振子10の振動特性等を測定することができる。なお、本実施形態の接続配線CW1は、本発明の「第1接続部」の一例に相当する。
【0066】
上蓋30の側壁33と保持部140との間には、接合部60が形成されており、この接合部60によって、上蓋30とMEMS基板50(下蓋20及び共振子10)とが接合される。接合部60は、共振子10の振動空間を真空状態で気密に封止するように、XY平面において振動部110を囲む閉環状に形成されている。
【0067】
接合部60は、導電性を有しており、例えばアルミニウム(Al)膜、ゲルマニウム(Ge)膜、及びアルミニウム(Al)膜がこの順に積層されて共晶接合された金属膜によって形成されている。なお、接合部60は、金(Au)、錫(Sn)、銅(Cu)、チタン(Ti)、シリコン(Si)、などから適宜選択された膜の組み合わせによって形成されてもよい。また、密着性を向上させるために、接合部60は、窒化チタン(TiN)や窒化タンタル(TaN)等の金属化合物を膜間に含んでいてもよい。
【0068】
また、接続配線CW1は、上蓋30の下面において外周部まで延在しており、接合部60と接続配線CW1とは、電気的に接続している。
【0069】
接合部60は、MEMS基板50(下蓋20及び共振子10)の上面において、外縁から所定の距離、例えば20μm程度を空けて配置されている。これにより、接合部60が所定の距離を空けない場合に発生し得る分割不良に伴う突起(バリ)やダレ等の共振装置1の製品不良を抑制することができる。
【0070】
分離溝145は、保持部140において、表面に形成された保護膜F5からSi基板F2の下面に酸化ケイ素層F21まで貫通して形成される。これにより、前述したように、分離溝145は、平面視において振動部110を取り囲むように形成されるので、分離溝145によって、共振子10の外部と振動部110とが分離され、共振子10の外部から保持部140を経由して振動部110に至る導通経路は、接合前には遮断されている。従って、保持部140を介する振動部110へのノイズ伝播を抑制することができ、例えば周波数調整時に共振周波数を高い精度で調整することができる。
【0071】
本実施形態では、外部端子T1が接地され、外部端子T2と外部端子T3には、互いに逆位相の交番電圧が印加される。したがって、振動腕121A,121Dの圧電膜F3に形成される電界の位相と、振動腕121B,121Cの圧電膜F3に形成される電界の位相とは、互いに逆位相になる。これにより、外側の振動腕121A,121Dと、内側の振動腕121B,121Cとが互いに逆方向に変位する。
【0072】
例えば、
図4に示すように、振動腕121A,121Dのそれぞれの質量付加部122A,122D及び腕部123A,123Dが上蓋30の内面に向かって変位するとき、振動腕121B,121Cのそれぞれの質量付加部122B,122C及び腕部123B,123Cが下蓋20の内面に向かって変位する。図示を省略するが、逆に、振動腕121A,121Dのそれぞれの質量付加部122A,122D及び腕部123A,123Dが下蓋20の内面に向かって変位するとき、振動腕121B,121Cのそれぞれの質量付加部122B,122C及び腕部123B,123Cが上蓋30の内面に向かって変位する。これにより、4本の振動腕121A~121Dは、少なくとも2本が異なる位相で面外屈曲する。
【0073】
このように、隣り合う振動腕121Aと振動腕121Bとの間で、Y軸方向に延びる中心軸r1回りに振動腕121Aと振動腕121Bとが上下逆方向に振動する。また、隣り合う振動腕121Cと振動腕121Dとの間で、Y軸方向に延びる中心軸r2回りに振動腕121Cと振動腕121Dとが上下逆方向に振動する。これにより、中心軸r1と中心軸r2とで互いに逆方向の捩れモーメントが生じ、振動部110での屈曲振動が発生する。振動腕121A~121Dの最大振幅は50μm程度、通常駆動時の振幅は10μm程度である。
【0074】
次に、
図6を参照しつつ、一実施形態に従う共振装置における共振子とその周辺の配線について説明する。
図6は、
図1から
図5に示した共振子10及びその周辺の配線を概略的に示す平面図である。
【0075】
図6に示すように、内部端子T1’,T2’,T3’は、分離溝145の内側の領域において、共振子10の保護膜F5上に形成されている。前述したように、内部端子T1’は、上蓋30に形成された接続配線CW1と電気的に接続するとともに、貫通孔を介して、共振子10に埋設された金属膜E1と電気的に接続している。
【0076】
内部端子T2’は、上蓋30に形成される貫通電極V2と共振子10に形成される接続配線CW2とを電気的に接続するためのものである。接続配線CW2は、内部端子T2’から延在し、引き回されて、振動腕121Bの腕部123Bに形成された金属膜E2及び振動腕121Cの腕部123Cに形成された金属膜E2と電気的に接続している。内部端子T3’は、上蓋30に形成される貫通電極V3と共振子10に形成される接続配線CW3とを電気的に接続するためのものである。接続配線CW3は、内部端子T3’から延在し、引き回されて、振動腕121Aの腕部123Aに形成された金属膜E2及び振動腕121Dの腕部123Dに形成された金属膜E2と電気的に接続している。
【0077】
内部端子T2’,T3’及び接続配線CW2,CW3は、内部端子T1’及び接続配線CW1と同様に、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、金(Au)、錫(Sn)、などの金属材料によって形成されている。
【0078】
共振子10の上に環状に形成される接合部60は、連結部材65を含んでいる。言い換えれば、連結部材65は、接合部60と一体に形成され、接合部60と電気的に接続している。連結部材65は、例えば接合部60の4つの角部のそれぞれに形成され、平面視において共振子10の外縁まで延在している。これにより、後述する集合基板100において、複数の共振装置1のそれぞれの振動部110は、接合部60及び連結部材65を介して通電可能になる。従って、例えば検査工程において、接続配線CW1、接合部60、及び連結部材65を介して、複数の共振子10の振動特性等を一括して測定することができ、共振装置1の生産性を向上させることができる。
【0079】
本実施形態では、連結部材65は、接合部60の角部に電気的に接続される例を示したが、これに限定されるものではない。連結部材65は、例えば、平面視における略矩形の接合部60の長辺又は短辺に接続するとともに、共振子10の外縁まで延在していてもよい。また、連結部材65は、4つである場合に限定されず、少なくとも1つであればよい。
【0080】
平面視において振動部110を取り囲むように形成される分離溝145は、平面視において共振子10の外縁と振動部110との間の領域に配置されている。これにより、共振子10の外縁から振動部110へのノイズ伝播を容易に抑制することができる。
【0081】
より詳細には、分離溝145は、平面視において接合部60の内周に沿って配置されている。これにより、共振子10の外部と振動部110とを分離し、共振子10の外部から保持部140を経由して振動部110に至る導通経路を遮断する分離溝145を、容易に形成することができる。
【0082】
次に、
図7を参照しつつ、一実施形態に従う共振装置における連結部材の積層構造について説明する。
図7は、
図6に示した連結部材65の積層構造を概略的に示す拡大断面図である。
【0083】
図7に示すように、接合部60は、共振子10(MEMS基板50)側から上蓋30側にかけて、例えば、第1金属層61、第2金属層62、及び第3金属層63を含んで構成されている。
【0084】
第1金属層61は、例えばアルミニウム(Al)を主成分とする金属層であり、第1金属層61の材料は、アルミニウム(Al)、アルミニウム-銅合金(AlCu合金)、又は、アルミニウム-シリコン-銅合金(AlSiCu合金)等である。第2金属層62は、例えばゲルマニウム(Ge)の金属層である。
図7に示す例では、第1金属層61と第2金属層62とは、それぞれ独立した層として記載しているが、実際にはこれらの界面は、共晶接合している。すなわち、第1金属層61及び第2金属層62は、アルミニウム(Al)とゲルマニウム(Ge)とを主成分とする金属の共晶合金で構成されている。第3金属層63は、例えばアルミニウム(Al)を主成分とする金属層であり、第3金属層63の材料は、アルミニウム(Al)、アルミニウム-銅合金(AlCu合金)、又は、アルミニウム-シリコン-銅合金(AlSiCu合金)等である。
【0085】
連結部材65は、接合部60と一体に形成される。すなわち、連結部材65は、接合部60と同様に、第1金属層61、第2金属層62、及び第3金属層63を含んで構成されている。
【0086】
連結部材65は、MEMS基板50(下蓋20及び共振子10)の上蓋30に対向する面(
図7において上面)において、外縁まで延在している。さらに、連結部材65は、上蓋30のMEMS基板50(下蓋20及び共振子10)に対向する面(
図7において下面)において、外縁まで延在している。これにより、後述する集合基板100において、隣り合う連結部材65同士を連結することで、複数の共振装置1の間の空間を封止することが可能になる。従って、集合基板100における共振装置1間の隙間に薬液等が侵入するのを抑制することができる。
【0087】
<集合基板>
次に、
図8及び
図9を参照しつつ、一実施形態に従う集合基板の概略構成について説明する。
図8は、一実施形態における集合基板100の外観を概略的に示す分解斜視図である。
図9は、
図8に示した領域Aを拡大した部分拡大図である。
【0088】
本実施形態の集合基板100は、前述した共振装置1を製造するためのものである。
図8に示すように、この集合基板100は、上側基板13と、下側基板14とを備えている。上側基板13及び下側基板14は、それぞれ、平面視において円形の形状を有している。下側基板14は、複数の共振子10を含んでいる。複数の共振子10が有するSi基板F2は、前述したように、縮退シリコン基板であってもよい。上側基板13は、下面が複数の共振子10を間に挟んで下側基板14と対向するように配置されている。なお、本実施形態の下側基板14は、本発明の「第1基板」の一例に相当し、本実施形態の上側基板13は、本発明の「第2基板」の一例に相当する。
【0089】
図9に示すように、下側基板14の上面には、複数のデバイスDEと、複数の接合部60とが形成されている。各デバイスDEは、前述した共振子10のうちの主要部、例えば分離溝145の内側に配置される振動部110及び支持腕部150に対応する。各接合部60は、共振子10の保持部140の領域に設けられる。また、各接合部60は、矩形状の角部のそれぞれに、連結部材65を含んでいる。デバイスDE及び接合部60の組は、下側基板14の上面の全体にアレイ状に配置されている。具体的には、この組が行方向(
図9におけるY軸に沿う方向)及び列方向(
図9におけるX軸に沿う方向)に、それぞれ所定の間隔で、複数配置されている。
【0090】
図9に示す分割ラインLN1,LN2は、集合基板100、つまり、上側基板13及び下側基板14を、切削等することで複数の共振装置1に分割するためのものであり、スクライブラインとも呼ばれる。分割ラインLN1,LN2の幅は、例えば5μm以上20μm以下である。
【0091】
各連結部材65は、分割ラインLN1,LN2を超えて延在している。すなわち、ある接合部60の連結部材65は、隣り合う複数の接合部60のうち、互いに角部が対向する接合部60の連結部材65と連結する。その結果、複数の接合部60は、連結部材65によって、互いに電気的に接続される。
【0092】
<MEMSデバイスの製造方法>
次に、一実施形態に従う共振装置の製造方法について説明する。
図10は、一実施形態における共振装置1の製造方法を示すフローチャートである。
【0093】
図10に示すように、まず、共振装置1の上蓋30に対応する上側基板13を準備する(S301)。
【0094】
上側基板13は、Si基板を用いて形成されている。具体的には、上側基板13は、
図4に示した所定の厚みのSi基板Q10によって形成されている。Si基板Q10の表面、裏面(共振子10に対向する面)及び貫通電極V1,V2,V3の側面は、絶縁酸化膜Q11に覆われている。絶縁酸化膜Q11は、例えばSi基板Q10の表面の酸化や、化学気相蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)によって、Si基板Q10の表面に形成される。
【0095】
上側基板13の上面には、複数の外部端子T1,T2,T3が形成されている。外部端子T1,T2,T3は、例えば、クロム(Cr)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)などのメタライズ層(下地層)に、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)、Cu(銅)などのメッキを施して形成されている。
【0096】
また、
図4に示した貫通電極V2,V3及び
図5に示した貫通電極V1は、上側基板13に形成された貫通孔に導電性材料が充填されて形成される。充填される導電性材料は、例えば、不純物ドープされた多結晶シリコン(Poly-Si)、銅(Cu)、金(Au)、不純物ドープされた単結晶シリコン等である。
【0097】
一方、上側基板13の下面には、接合部60と電気的に接続する接続配線CW1が形成されている。接続配線CW1は、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、金(Au)、錫(Sn)、などの金属材料を用いてパターニングすることによって、上側基板13の下面に形成される。
【0098】
次に、共振装置1のMEMS基板50(共振子10及び下蓋20)に対応する下側基板14を準備する(S302)。
【0099】
下側基板14は、Si基板同士が互いに接合されている。なお、下側基板14は、SOI基板を用いて形成されてもよい。下側基板14は、
図4に示したように、Si基板P10と、Si基板F2と、を含む。
【0100】
Si基板F2の上面には、金属膜E1、圧電膜F3、金属膜E2、及び保護膜F5が積層される。保護膜F5の上には、質量付加膜125A~125Dが積層されるとともに、図9に示した分割ラインLN1、LN2に沿って、かつ、所定の距離を空けて、接合部60が形成される。接合部60は、隣接する接合部60連結する連結部材65を含んで形成される。共振子10の振動部110、保持部140、支持腕部150、及び分離溝145のそれぞれの外形は、この積層体に対し、例えばドライエッチングによって除去加工し、パターニングすることによって、形成される。
【0101】
また、保護膜F5の上には、接合部60に加えて、
図6に示した内部端子T1’,T2’,T3’と接続配線CW2,CW3とが形成される。内部端子T1’,T2’,T3’及び接続配線CW2,CW3の材料として接合部60と同じ種類の金属を用いることで、製造プロセスを簡略化することができる。
【0102】
本実施形態では、接合部60、内部端子T1’,T2’,T3’、及び接続配線CW2,CW3を下側基板14の上面側に形成する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、接合部60、内部端子T1’,T2’,T3’、及び接続配線CW2,CW3の少なくとも1つを、上側基板13の下面側に形成してもよい。また、接合部60が複数の材料で構成される場合、接合部60のうちの一部の材料、例えばゲルマニウム(Ge)を上側基板13の下面側に形成し、接合部60のうちの残りの材料、例えばアルミニウム(Al)を下側基板14の上面側に形成してもよい。同様に、内部端子T1’,T2’,T3’及び接続配線CW2,CW3が複数の材料で構成される場合、内部端子T1’,T2’,T3’及び接続配線CW2,CW3のうちの一部の材料を上側基板13の下面側に形成し、内部端子T1’,T2’,T3’及び接続配線CW2,CW3のうちの残りの材料を下側基板14の上面側に形成してもよい。
【0103】
また、本実施形態では、工程S301において上側基板13を準備した後、工程S302において下側基板14を準備する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、順序を入れ替え、下側基板14を準備した後に上側基板13を準備してもよいし、上側基板13の準備と下側基板14の準備とを平行して行ってもよい。
【0104】
次に、工程S301において準備した上側基板13と、工程S302において準備した下側基板14と、を接合する(S303)。
【0105】
具体的には、上側基板13の下面と下側基板14の上面とは、接合部60によって共晶接合される。例えば、
図5に示したように、上側基板13に形成された接続配線CW1と、下側基板14に形成された内部端子T1’とが接触するように、上側基板13及び下側基板14の位置を合わせる。位置合わせをした後、ヒータ等によって上側基板13及び下側基板14が挟み込まれ、共晶接合のための加熱処理が行われる。共晶接合のための加熱処理における温度は、共
晶点の温度以上、例えば424℃以上であり、加熱時間は、例えば10分以上20分以下程度である。加熱時に、上側基板13及び下側基板14は、例えば5MPa以上25MPa以下程度の圧力で押圧される。このようにして、接合部60は、上側基板13の下面と下側基板14の上面とを共晶接合する。
【0106】
次に、分割ラインLN1,LN2に沿って上側基板13及び下側基板14を分割する(S304)。
【0107】
上側基板13及び下側基板14の分割は、ダイシングソーを用いて上側基板13及び下側基板14を切削してダイシングを行ってもよいし、レーザを集光して基板内部に改質層を形成するステルスダイシング技術を用いてダイシングを行ってもよい。
【0108】
工程S304において上側基板13及び下側基板14を分割ラインLN1,LN2に沿って分割することで、上側基板13及び下側基板14が、上蓋30及びMEMS基板50(下蓋20及び共振子10)を備える共振装置1のそれぞれに個片化(チップ化)される。
【0109】
また、前述したように、分割ラインLN1,LN2を超えて延在する各連結部材65は、上側基板13及び下側基板14の分割に伴い、切断される。その結果、各連結部材65は、各共振装置1の共振子10において、外縁まで延在することになる。
【0110】
次に、前述した実施形態の変形例について説明する。なお、
図1から
図10に示した構成と同一又は類似の構成について同一又は類似の符号を付し、その説明を適宜省略する。また、同様の構成による同様の作用効果については、逐次言及しない。
【0111】
(変形例)
図11は、一実施形態の変形例における共振装置1Aの共振子10A及びその周辺の配線を概略的に示す平面図である。
図12は、
図11に示した連結部材65Aの積層構造を概略的に示す拡大断面図である。
【0112】
図11に示すように、共振装置1Aの共振子10Aは、分離溝145Aを有している。分離溝145Aは、
図6に示した分離溝145と同様に、平面視において略矩形の枠形状を有し、共振子10Aの振動部110を取り囲むように形成されている。その一方、分離溝145Aは、保持部140において、
図6に示した分離溝145とは異なる領域に形成されいてる。すなわち、分離溝145Aは、平面視において接合部60の外周に沿って配置されている。これにより、共振子10Aの外部と振動部110とを分離し、共振子10Aの外部から保持部140を経由して振動部110に至る導通経路を遮断する分離溝145Aを、容易に形成することができる。
【0113】
共振装置1Aの接合部60は、共振子10Aの上に環状に形成され、連結部材65Aを含んでいる。連結部材65Aは、
図6に示した連結部材65と同様に、接合部60の4つの角部のそれぞれに形成されている。
【0114】
その一方、
図12に示すように、連結部材65Aは、接合部60の第2金属層62及び第3金属層63と一体に形成される。すなわち、連結部材65Aは、
図7に示した連結部材65と異なり、第1金属層61を含んでいない。
【0115】
共振子10Aは、接合部60と外縁との間の領域に分離溝145
Aが形成されている。そのため、連結部材65Aは、上蓋30のMEMS基板50(下蓋20及び共振子10)に対向する面(
図12において下面)において、外縁まで延在している。
【0116】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。一実施形態に従う共振装置において、共振子を間に挟んでMEMS基板(下蓋及び共振子)と対向するように配置され、振動部と電気的に接続される接続配線を含む上蓋を備える。これにより、共振子の振動部(励振部及び基部)は、接続配線を介して通電可能になる。従って、例えば検査工程において、上蓋の外部から、外部端子、貫通電極、及び接続配線を介して共振子の振動特性等を測定することができる。また、共振子は、平面視において振動部を取り囲むように形成された分離溝をさらに有する。これにより、分離溝によって、共振子の外部と振動部とが分離され、共振子の外部から保持部を経由して振動部に至る導通経路は、接合前には遮断されている。従って、保持部を介する振動部へのノイズ伝播を抑制することができ、例えば周波数調整時に共振周波数を高い精度で調整することができる。
【0117】
また、前述した共振装置において、共振子の振動空間を封止するように、上蓋とMEMS基板(下蓋及び共振子)とを接合する接合部であって、導電性を有し、接続配線と電気的に接続される接合部と、接合部と電気的に接続され、平面視において共振子の外縁まで延在する連結部材と、をさらに備える。これにより、集合基板において、複数の共振装置のそれぞれの振動部は、接合部及び連結部材を介して通電可能になる。従って、例えば検査工程において、接続配線、接合部、及び連結部材を介して、複数の共振子の振動特性等を一括して測定することができ、共振装置の生産性を向上させることができる。
【0118】
また、前述した共振装置において、連結部材は、MEMS基板(下蓋及び共振子)の上蓋に対向する面と上蓋のMEMS基板(下蓋及び共振子)に対向する面とにおいて、外縁まで延在している。これにより、集合基板において、隣り合う連結部材同士を連結することで、複数の共振装置の間の空間を封止することが可能になる。従って、集合基板における共振装置間の隙間に薬液等が侵入するのを抑制することができる。
【0119】
また、前述した共振装置において、分離溝は、平面視において接合部の外周に配置される。これにより、共振子の外部と振動部とを分離し、共振子の外部から保持部を経由して振動部に至る導通経路を遮断する分離溝を、容易に形成することができる。
【0120】
また、前述した共振装置において、分離溝は、平面視において接合部の内周に配置される。これにより、共振子の外部と振動部とを分離し、共振子の外部から保持部を経由して振動部に至る導通経路を遮断する分離溝を、容易に形成することができる。
【0121】
また、前述した共振装置において、分離溝は、平面視において共振子の外縁と振動部との間に配置される。これにより、共振子の外縁から振動部へのノイズ伝播を容易に抑制することができる。
【0122】
また、前述した共振装置において、共振子10は、縮退シリコン基板をさらに有する。これにより、共振子は金属膜を省略し、縮退シリコン基板自体が金属膜の役割、例えば下部電極の役割を兼ねることが可能となる。従って、集合基板において、隣り合う共振装置において縮退シリコン基板を共用することで、複数の共振子の縮退シリコン基板、つまり、下部電極を介して、複数の共振装置を容易に一括して通電することができる。
【0123】
また、一実施形態に従う集合基板において、複数の共振子を間に挟んで下側基板と対向するように配置され、複数の共振子のそれぞれの振動部と電気的に接続される複数の接続配線を含む上側基板を備える。これにより、共振子の振動部(励振部及び基部)は、接続配線を介して通電可能になる。従って、例えば検査工程において、上側基板の外部から、外部端子、貫通電極、及び接続配線を介して共振子の振動特性等を測定することができる。また、複数の共振子は、それぞれ、平面視において振動部を取り囲むように形成された分離溝をさらに有する。これにより、分離溝によって、共振子の外部と振動部とが分離され、共振子の外部から保持部を経由して振動部に至る導通経路は、接合前には遮断されている。従って、保持部を介する振動部へのノイズ伝播を抑制することができ、例えば周波数調整時に共振周波数を高い精度で調整することができる。
【0124】
また、前述した集合基板において、それぞれが共振子の振動空間を封止するように、下側基板と上側基板とを接合する複数の接合部であって、導電性を有し、複数の接続配線のそれぞれと電気的に接続される複数の接合部と、複数の接合部のそれぞれと電気的に接続され、平面視において複数の共振装置に分割するための分割ラインを越えて延在する連結部材と、をさらに備える。これにより、集合基板において、複数の共振装置のそれぞれの振動部は、接合部及び連結部材を介して通電可能になる。従って、例えば検査工程において、接続配線、接合部、及び連結部材を介して、複数の共振子の振動特性等を一括して測定することができ、共振装置の生産性を向上させることができる。
【0125】
また、前述した集合基板において、連結部材は、下側基板の上側基板に対向する面と前上側基板の下側基板に対向する面とにおいて、分割ラインを越えて延在している。これにより、集合基板100において、隣り合う連結部材同士が連結され、複数の共振装置の間の空間を封止することができる。従って、集合基板における共振装置間の隙間に薬液等が侵入するのを抑制することができる。
【0126】
また、前述した集合基板において、複数の共振子は、縮退シリコン基板をさらに有する。これにより、共振子は金属膜を省略し、縮退シリコン基板自体が金属膜の役割、例えば下部電極の役割を兼ねることが可能となる。従って、集合基板において、隣り合う共振装置において縮退シリコン基板を共用することで、複数の共振子の縮退シリコン基板、つまり、下部電極を介して、複数の共振装置を容易に一括して通電することができる。
【0127】
また、一実施形態に従う共振装置の製造方法において、それぞれが振動部と該振動部を保持するように構成された保持部とを有する複数の共振子を含む下側基板と、複数の共振子を間に挟んで下側基板と対向するように配置され、複数の共振子のそれぞれの振動部と電気的に接続される複数の接続配線を含む上側基板と、を準備する工程を含む。これにより、共振子の振動部(励振部及び基部)は、接続配線を介して通電可能になる。従って、例えば検査工程において、上側基板の外部から、外部端子、貫通電極、及び接続配線を介して共振子の振動特性等を測定することができる。また、複数の共振子は、それぞれ、平面視において振動部を取り囲むように形成された分離溝をさらに有する。これにより、分離溝によって、共振子の外部と振動部とが分離され、共振子の外部から保持部を経由して振動部に至る導通経路は、接合前には遮断されている。従って、保持部を介する振動部へのノイズ伝播を抑制することができ、例えば周波数調整時に共振周波数を高い精度で調整することができる。
【0128】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。すなわち、実施形態及び/又は変形例に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、実施形態及び/又は変形例が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、実施形態及び変形例は例示であり、異なる実施形態及び/又は変形例で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0129】
1,1A…共振装置、10,10A…共振子、13…上側基板、14…下側基板、20…下蓋、21…凹部、22…底板、23…側壁、25…突起部、30…上蓋、31…凹部、32…底板、33…側壁、50…MEMS基板、60…接合部、61…第1金属層、62…第2金属層、63…第3金属層、65,65A…連結部材、100…集合基板、110…振動部、120…励振部、121,121A,121B,121C,121D…振動腕、122A,122B,122C,122D…質量付加部、123A,123B,123C,123D…腕部、125A,125B,125C,125D…質量付加膜、130…基部、131A…前端部、131B…後端部、131C…左端部、131D…右端部、140…保持部、141A,141B,141C,141D…枠体、145,145A…分離溝、150…支持腕部、151…支持腕、152…支持後腕、CL1…中心線、CW1,CW2,CW3…接続配線、DE…デバイス、E1,E2…金属膜、F2…Si基板、F3…圧電膜、F5…保護膜、F21…酸化ケイ素層、LN1,LN2…分割ライン、P10…Si基板、Q10…Si基板、Q11…絶縁酸化膜、r1,r2…中心軸、S301,S302,S303,S304…工程、T1,T2,T3…外部端子、T1’,T2’,T3’…内部端子、V1,V2,V3…貫通電極、W1,W2…リリース幅。