(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】要素自動配置システム及び要素自動配置方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20240829BHJP
G06F 30/27 20200101ALI20240829BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/27
(21)【出願番号】P 2024077568
(22)【出願日】2024-05-10
【審査請求日】2024-05-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513017803
【氏名又は名称】オムニ技研株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】524177897
【氏名又は名称】株式会社新潟人工知能研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100224742
【氏名又は名称】岩堀 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】村山 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 修一
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-181552(JP,A)
【文献】特開2022-024316(JP,A)
【文献】特許第7395164(JP,B1)
【文献】特開2020-013494(JP,A)
【文献】特開2006-338143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/398
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築用の伏図における適切な位置に要素を配置するための要素自動配置システムであって、
前記要素を配置すべき対象部材が記載された配置用伏図を読み込んで配置対象データとする読込手段と、
他の伏図において既に要素が配置されている対象部材の特徴を機械学習させて得られた学習データセットを用いる演算手段と、
を備え、
前記演算手段は、前記学習データセットに基づく演算により、前記配置対象データにおける対象部材の特徴に応じて前記要素を自動配置する手段であることを特徴とする、要素自動配置システム。
【請求項2】
前記対象部材は直線状の部材が組み合わされたものであり、
前記演算手段は、確率算出手段と、配置決定手段とを備え、
前記確率算出手段は、前記他の伏図における対象部材の直線部に並んで配置された要素の位置の特徴と、直線部同士が交わる部分に配置された要素の位置の特徴とを機械学習させて得られた学習データセットを用いる手段であって、
前記配置対象データの対象部材における所定の位置に対して前記要素が配置されるべき確率を前記学習データセットに基づいて判断する手段であり、
前記配置決定手段は、前記確率算出手段によって前記配置対象データの対象部材における所定の位置ごとに算出された確率に基づいて前記要素を配置する手段であることを特徴とする、請求項1に記載の要素自動配置システム。
【請求項3】
前記確率算出手段は、前記他の伏図における第一の特徴である対象部材の角部に配置された要素の位置の特徴と、第二の特徴である直線部に並んで配置された2点の要素の位置の特徴と、第三の特徴である矩形状に配置された4点の要素の位置の特徴とを機械学習させて得られた学習データセットを用いる手段であって、
前記配置対象データの対象部材における所定の位置に対して前記要素が配置されるべき確率を、前記第一の特徴と前記第二の特徴と前記第三の特徴とからそれぞれ算出される確率の重ね合わせにより総合的な確率を算出するものであり、
前記配置決定手段は、前記確率算出手段によって前記配置対象データの対象部材における所定の位置ごとに算出された総合的な確率に基づいてランクを算出するものであり、予め決められたランク以上の位置に前記要素を配置する手段であることを特徴とする、請求項2に記載の要素自動配置システム。
【請求項4】
前記配置決定手段は、前記要素を配置することを決定した位置に対して、前記確率算出手段によって算出された位置ごとの確率の大小と隣接する要素間距離との関係に基づいて、所定の位置の要素を削除または所定の位置に要素を追加する手段を含むことを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の要素自動配置システム。
【請求項5】
前記配置用伏図は基礎伏図であり、前記要素は杭であり、前記対象部材は基礎であって、
前記学習データセットは他の杭伏図において既に杭が配置されている基礎の特徴を機械学習させて得られたものであることを特徴とする、請求項4に記載の要素自動配置システム。
【請求項6】
建築用の伏図における適切な位置に要素を配置するための要素自動配置方法であって、
前記要素を配置すべき対象部材が記載された配置用伏図を読み込んで配置対象データとする読込ステップと、
他の伏図において既に対象部材に対して要素が配置されている配置対象部材の特徴を機械学習して得た学習データセットを用いる演算ステップと、
を備え、
前記演算ステップは、前記学習データセットに基づく演算により、前記配置対象データにおける対象部材の特徴に応じて前記要素を自動配置するステップであることを特徴とする、要素自動配置方法。
【請求項7】
前記対象部材は直線状の部材が組み合わされたものであり、
前記演算ステップは、確率算出ステップと、配置決定ステップとを備え、
前記確率算出ステップは、前記他の伏図における第一の特徴である対象部材の角部に配置された要素の位置の特徴と、第二の特徴である直線部に並んで配置された2点の要素の位置の特徴と、第三の特徴である矩形状に配置された4点の要素の位置の特徴とを機械学習して得た学習データセットを用いるステップであって、
前記配置対象データの対象部材における所定の位置に対して前記要素が配置されるべき確率を、前記第一の特徴と前記第二の特徴と前記第三の特徴とからそれぞれ算出される確率の重ね合わせにより判断するステップであり、
前記配置決定ステップは、前記確率算出ステップによって前記配置対象データの対象部材における所定の位置ごとに算出された総合的な確率に基づいてランクを算出するステップであり、予め決められたランク以上の位置に前記要素を配置するステップであって、
前記要素を配置することを決定した位置に対して、前記確率算出ステップによって算出した位置ごとの確率の大小と隣接する要素間距離との関係に基づいて、所定の位置の要素を削除または所定の位置に要素を追加することを含むステップであることを特徴とする、請求項6に記載の要素自動配置方法。
【請求項8】
前記配置用伏図は基礎伏図であり、前記要素は杭であり、前記対象部材は基礎であって、
前記学習データセットは他の杭伏図において既に杭が配置されている基礎の特徴を機械学習して得たものであることを特徴とする、請求項7に記載の要素自動配置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の設計段階において作成される様々な伏図に対して、建築設計に必要な杭や柱等の各要素を適切な位置に配置するための、要素自動配置システム及び要素自動配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の設計段階においては、様々な伏図が作成される。伏図とは、基礎や床、天井等の構造物の各要素を上方向または下方向から透かしてみた平面図のことである。その対象とする要素(建築要素)に応じて、基礎伏図・杭伏図・床伏図・梁伏図・小屋伏図・天井伏図等がある。
【0003】
これらの伏図は相互に関連している。例えば、杭伏図は、基礎伏図に記載されている基礎の形状に応じて、適切な本数の杭を基礎の下の適切な位置に配置していく。また、小屋伏図は、梁伏図に記載されている梁や柱の位置等を検討しながら小屋束や小屋梁等を配置していく。
【0004】
これら杭や束、梁、柱等の要素は、構造計算に基づいて必要かつ十分な数を最適な位置に配置していくのが望ましい。従来においては、建築物の重量や地盤の性質等の情報から必要となる杭の本数を算出し、間取りの情報に基づいて杭を自動的に配置する技術が開発されている。
【0005】
特許文献1では、予め建築物全体を支持するために必要な杭の本数を算出しておき、外壁の出入隅部と壁の交点に自動的に杭を配置する技術が開示されている。特許文献1の技術では、自動的に杭を配置した後に、予め設定した間隔以上の杭がある場合には、配置した杭数を調整して、杭の総数を必要本数に近づけるように処理している。
【0006】
また、特許文献2では、基礎伏図の基礎の出入隅部やT字部、十字部、所定の軸力の柱の直下等に杭を自動で配置する技術が開示されている。特許文献2の技術では、配置した杭の基礎上の杭間が所定間隔以上である場合に、その杭間を等分した位置に杭を配置するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2020-148013号公報
【文献】特開2006-127186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1の技術は、精度の高い見積りを行うことを目的とした技術であり、間取図に基づいて、壁の出入隅部及び壁の交点に杭が自動配置されるようになっている。ここで、配置した杭の数が建築物の重量から算出される杭の数に満たないときには、杭の数を所定の数に近づけるように配置を調整する処理を行っている。具体的には、杭間距離が予め決められた間隔以上であるときに、その杭間に杭を付加する方法を採用している。なお、杭間距離が制限値以下の場合には、杭の位置をシフトするようにもなっている。
【0009】
しかし、このような方法であると、杭の総数が算出した数以下である場合に、杭間距離が予め決められた間隔以上の部分があると、その距離が所定の間隔以下となるように必ず(強制的に)杭が配置されてしまうこととなる。その結果、実際には追加する必要が無い場所にも杭が配置されてしまう可能性がある。逆に、自動配置した杭の総数が算出した数を満たしてしまう場合、必要となる場所に杭が付加されない可能性もある。
したがって、特許文献1の技術では、杭の配置のバランスが悪くなる可能性があるという問題がある。
【0010】
一方、特許文献2の技術では、小屋伏図や床伏図に梁や軸柱を入力し、基礎伏図に対して、柱軸力を考慮しながら、基礎の出入隅部やT字部、十字部に杭を自動配置している。特許文献2においても、杭間距離が所定の値以上のときには杭を付加する点で特許文献1の技術と共通しているが、杭間を等分するように付加する点が特徴である。
【0011】
しかし、特許文献2の方法であっても、実際には追加する必要が無い場所にも杭が配置されてしまう可能性や、必要となる場所に杭が付加されない可能性がある点は同様である。
このように、従来の技術では、建築物の重量と杭間距離の設定値によって画一的に杭等の要素の配置が決められてしまい、例えば、経験的に要素の間隔を広げたり狭めたりしているような暗黙知が反映されないという問題があった。
【0012】
本発明は、上記のような問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、建築用の伏図に対して、必要かつ十分に要素を配置できる要素自動配置システム及び要素自動配置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を以下に説明する。
本発明の要素自動配置システムは建築用の伏図における適切な位置に要素を配置するためのシステムである。その基本構成は、前記要素を配置すべき対象部材が記載された配置用伏図を読み込んで配置対象データとする読込手段と、他の伏図において既に要素が配置されている対象部材の特徴を機械学習させて得られた学習データセットを用いる演算手段と、を備えている。そして、前記演算手段は、前記学習データセットに基づく演算により、前記配置対象データにおける対象部材の特徴に応じて前記要素を自動配置する手段であることに特徴がある。
【0014】
本発明の演算手段に用いる学習データセットは、他の伏図において既に要素が配置されている対象部材の特徴を機械学習させることで、様々な設計事例において最適であると判断された要素の位置等の特徴を機械学習させることができる。そして、その学習データセットに基づいて、読込手段で読み込まれた伏図の対象部材に対して配置することができる。
【0015】
このように、本発明では、演算手段によって算出される要素の配置が、論理的な計算のみからなる画一的な配置ではなく、過去の設計上の暗黙知を含む事例を考慮して配置される。
したがって、冗長な配置や不足した配置となることなく、合理的な要素の配置を自動で算出することができる。
【0016】
なお、読込手段によって読み込まれる配置用伏図は、要素を配置する対象となる対象部材が記載されていれば、その種類は問わない。一例を挙げるならば、杭を配置する対象となる基礎が記載されている基礎伏図や、小屋束を配置する対象となる梁が記載されている梁伏図等、軸柱を配置する対象となる床梁が記載されている床伏図等が挙げられる。
【0017】
課題解決のために採用し得る手段においては下記の手段を用いることも可能である。
上記構成において、前記対象部材を直線状の部材が組み合わされたものとし、前記演算手段を、確率算出手段と、配置決定手段とを備えたものとする。
【0018】
前記確率算出手段は、前記他の伏図における対象部材の直線部に並んで配置された要素の位置の特徴と、直線部同士が交わる部分に配置された要素の位置の特徴とを機械学習させて得られた学習データセットを用いる手段である。そして、前記配置対象データの対象部材における所定の位置に対して前記要素が配置されるべき確率を前記学習データセットに基づいて判断する。
一方、前記配置決定手段は、前記確率算出手段によって前記配置対象データの対象部材における所定の位置ごとに算出された確率に基づいて前記要素を配置する手段である。
【0019】
演算手段における確率算出手段で用いる学習データセットは、対象部材の直線部に並んで配置された要素の位置の特徴と、直線部同士が交わる部分に配置された要素の位置の特徴とを機械学習させて得られたものである。直線部とは、対象部材が梁状に配置された部分のみならず、一端がどこにも結合していない半島状に配置された部分も含まれる。また、直線部同士が交わる部分とは、対象部材が直角で交わる角部やT字部のみならず、斜めに交わる部分等も含まれる。
【0020】
上記の構成では、各要素が配置されうる直線部と、直線部同士が交わる部分とについて、要素が配置されている対象部材の長さや位置、分布、周辺部の形状等の特徴を機械学週させているため、過去の設計における要素の配置の特徴をさらに細かく学習させることができる。
また、配置決定手段では、前記確率算出手段によって算出された「要素を配置すべきかどうかの確率」に基づいて前記要素を配置するため、閾値の選択によって、配置の密度やバランスを任意に調整することができる。
したがって、より合理的な要素の配置を自動で算出することができる。
【0021】
課題解決のために採用し得るさらに他の手段としては、上記構成に対して、前記確率算出手段を、前記他の伏図における第一の特徴である対象部材の角部に配置された要素の位置の特徴と、第二の特徴である直線部に並んで配置された2点の要素の位置の特徴と、第三の特徴である矩形状に配置された4点の要素の位置の特徴とを機械学習させて得られた学習データセットを用いるものとすることも可能である
このとき、前記配置対象データの対象部材における所定の位置に対して前記要素が配置されるべき確率を、前記第一の特徴と前記第二の特徴と前記第三の特徴とからそれぞれ算出される確率の重ね合わせた総合的な確率により判断するようにする。
【0022】
そして、前記配置決定手段を、前記確率算出手段によって前記配置対象データの対象部材における所定の位置ごとに算出された総合的な確率に基づいてランクを算出するものとし、予め決められたランク以上の位置に前記要素を配置する手段としていることが特徴である。
【0023】
この構成では、対象部材を線としてみたときの直線部上の2点と、対象部材を面としてみたときの矩形状の4点とに加え、要素が配置されている可能性が高いことが予め分かっている点としての角部について、要素が配置されている対象部材の長さや位置、周辺部の形状等の特徴を機械学習させて学習データセットとしている。
これにより、構造を支える微視的な点(角部)や線(直線部)としての配置の特徴だけに捉われることなく、周辺の対象部材の構造と協働して構造を支えるような面(矩形状)としての配置の特徴も同時に学習することができる。
【0024】
また、前記確率算出手段では、算出された点・線・面の3つの確率分布を重ね合わせている。換言すると、所定の位置において、算出された各確率の掛け合わせにより、総合的な確率を求めることができる。その確率に基づいて、対象部材における所定の位置ごとにランク付けを行い、ランクの閾値以上となっている位置に要素を配置する。
上記のような処理を行うことで、建築物全体としてみたときに、よりバランスのとれた合理的な配置とすることができる。
【0025】
課題解決のために採用し得るさらに他の手段としては、前記配置決定手段を、前記要素を配置することを決定した位置に対して、前記確率算出手段によって算出された位置ごとの確率の大小と隣接する要素間距離との関係に基づいて、所定の位置の要素を削除または所定の位置に要素を追加する手段を含むことも可能である。
【0026】
確率算出手段によって算出された要素の位置ごとの確率において、設定値よりも近接した配置となっている場合に、隣接する要素の配置確率が低い場合には、その要素を削除する。また、隣接する要素間距離が設定値よりも大きいに場合には、その要素間に、新たな要素を追加する。
【0027】
上記の構成であれば、単に要素間距離が近い場合に削除するのではなく、隣接する要素の配置確率を加味して削除するか否かを判断するため、必要な要素を削除してしまう恐れがない。また、隣接する要素間距離が設定値よりも大きいに場合に要素を追加することで、統計的な処理特有の問題として稀に配置漏れが生じた場合であっても、要素が追加されることで、構造的に安全となる方向に設計することができる。
【0028】
上記のような要素自動配置システムにおいては、前記配置用伏図を基礎伏図とし、前記要素を杭とし、前記対象部材を基礎としたうえで、前記学習データセットは他の杭伏図において既に杭が配置されている基礎の特徴を機械学習させて得られたものとすることが可能である。
【0029】
上記構成においては、要素を杭として、基礎伏図の基礎上に杭を自動配置するシステムとすることができる。杭の配置は、建築物の形状のみならず、地盤の性質や杭の種類等、配置を決定するべきパラメータが多岐にわたる。そのため、論理的な計算によって画一的に必要かつ十分な配置を求めることが困難であるという実情がある。上記構成であれば、杭伏図において既に杭が配置されている基礎の形状等の特徴を機械学習させた学習データセットを用いることで、配置用伏図である基礎伏図に対して、合理的な配置を自動で行うことができる。
【0030】
課題解決のために採用し得るさらに他の手段としては、建築用の伏図における適切な位置に要素を配置するための要素自動配置方法としての手段を採用することも可能である。
この方法の構成としては、前記要素を配置すべき対象部材が記載された配置用伏図を読み込んで配置対象データとする読込ステップと、前記読込ステップにより得られた配置対象データから対象部材の特徴を把握する画像分析ステップと、既に対象部材に対して要素が配置されている他の伏図のデータを機械学習して得た学習データセットを用いる演算ステップと、を備えた構成とする。
そして、前記演算ステップは、前記学習データセットに基づく演算により、前記配置対象データにおける対象部材の特徴に応じて前記要素を自動配置するステップとする。
【0031】
この構成であっても、演算ステップによって算出される要素の配置が、論理的な計算のみからなる画一的な配置ではなく、過去の設計上の暗黙知を考慮して算出される配置となる。
したがって、冗長な配置や不足した配置となることなく、合理的な要素の配置を自動で算出することができる。
【0032】
また、上記構成においては、前記演算ステップを、確率算出ステップと、配置決定ステップとを備えるものとすることも可能である。
前記確率算出ステップは、前記他の伏図における第一の特徴である対象部材の角部に配置された要素の位置の特徴と、第二の特徴である直線部に並んで配置された2点の要素の位置の特徴と、第三の特徴である矩形状に配置された4点の要素の位置の特徴とを機械学習して得た学習データセットを用いるステップである。
また、確率算出ステップでは、前記配置対象データの対象部材における所定の位置に対して前記要素が配置されるべき確率を、前記第一の特徴と前記第二の特徴と前記第三の特徴とからそれぞれ算出される確率の重ね合わせにより判断する。
【0033】
一方、前記配置決定ステップは、前記確率算出ステップによって前記配置対象データの対象部材における所定の位置ごとに算出された総合的な確率に基づいてランクを算出するステップであり、予め決められたランク以上の位置に前記要素を配置するステップである。
また、前記要素を配置することを決定した位置に対して、前記確率算出ステップによって算出した位置ごとの確率の大小と隣接する要素間距離との関係に基づいて、所定の位置の要素を削除または所定の位置に要素を追加することを含むステップである。
【0034】
上記構成であれば、確率算出ステップにおいて、構造を支える微視的な点(角部)や線(直線部)としての配置の特徴だけに捉われることなく、周辺の対象部材の構造と協働して構造を支えるような面(矩形状)としての配置の特徴も同時に学習することができる。
また、配置決定ステップでは、前記確率算出手段によって算出された点、線、面の3つの確率分布を重ね合わせている。換言すると、任意の位置において、算出された各確率の掛け合わせにより、総合的な確率を求めることができる。
上記のような処理を行うことで、建築物全体としてみたときに、よりバランスのとれた合理的な配置とすることができる。
【0035】
さらに、上記構成においては、前記配置用伏図を基礎伏図とし、前記要素を杭とし、前記対象部材を基礎として、前記学習データセットを他の杭伏図において既に杭が配置されている基礎の特徴を機械学習して得たものとすることも可能である。
この構成では、杭伏図における既に杭が配置されている基礎の形状等を機械学習させた学習データセットを用いることで、基礎伏図に対して、合理的な配置を自動で行うことができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の要素自動配置システムでは、配置用伏図を読み込む読込手段と、他の伏図において既に対象部材に対して要素が配置されている対象部材の特徴を機械学習させて得られた学習データセットを用いる演算手段とを備えている。演算手段は、配置対象データにおける対象部材に対して、その学習データセットに基づいて要素を自動配置する手段であることにより、論理的な計算のみからなる画一的な配置ではなく、過去の設計上の暗黙知を含む事例を考慮して算出することができる。
これにより、建築用の伏図に対して、必要十分に要素を配置できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の要素自動配置システムの構成を表す説明図である。
【
図2】本発明の要素自動配置システムにおける事前の機械学習内容を表す説明図である。
【
図3】本発明の要素自動配置システムの処理の流れを表すフローチャートである。
【
図4】本発明の要素自動配置システムにおいて図面を読み込んだ状態を表す説明図である。
【
図5】本発明の要素自動配置システムにおいて寸法を自動検出した状態を表す説明図である。
【
図6】本発明の要素自動配置システムにおいて杭の配置確率を表示した状態を表す説明図である。
【
図7】本発明の要素自動配置システムにおいて杭を自動配置した状態を表す説明図である。
【
図8】本発明の要素自動配置システムにおいて杭の過不足を調整した状態を表す説明図である。
【
図9】本発明の変形例1における要素自動配置システムを表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明を実施するための形態について、
図1から
図8に基づいて以下に説明する。なお、以下の説明において、各図は説明を簡略化するために模式的に記載している。
本発明の要素自動配置システム(以下、単にシステムともいう)100は、
図1に示すように、ウェブ上で動作するシステムであり、顧客端末Cからインターネットを介してシステム100に接続する。
図1の形態ではウェブシステムとしているが、顧客端末Cにインストールしてスタンドアロンで動作するシステムであってもよく、その形態は限定されない。
【0039】
『システムの構成』
まず、
図1に基づいて、本システム100の全体の構成を説明する。ユーザーUはこのシステム100の利用者であり、システム100の読込手段1は、ユーザーUの操作に基づいて、顧客端末Cから建築用の伏図である配置用伏
図Dを読み込み、配置対象データTとするブロックである。
読み込む伏図は、種々の伏図を用いることができるが、要素Eを配置すべき対象部材Pが記載された配置用伏
図Dとして適切なものである必要がある。例えば、要素Eが柱であるならば、対象部材Pは床梁であり、配置用伏
図Dとしては床伏図となる。また、要素Eが杭であるならば、対象部材Pは基礎であり、配置用伏
図Dとしては基礎伏図となる。
以降の説明では、一例として、要素Eを杭とし、配置用伏
図Dを基礎伏図とし、対象部材Pを基礎として説明する。
【0040】
配置用伏
図Dは、顧客端末Cに入力または予め保存された画像データであり、例えばCADシステムから出力されるPDFなどのベクターデータや、紙図面をスキャナSで読み取って得られるJPEG、PNG(Portable Network Graphics)等のラスターデータである。
紙図面を読み取って得られたラスターデータの場合には全体が傾いている場合もあり得るため、傾き補正機能を搭載してもよい。
【0041】
本システム100では、画像分析手段2を設けることができる。画像分析手段2では、配置用伏
図Dを読み込んで得られた配置対象データTに対して、OCR(Optical Character Recognition/Reader)機能によって、画像分析を行う。OCR機能では、必要に応じて、対象部材Pである基礎の全体の幅と奥行きの寸法読み取って記憶しておくことができる。また、外形の寸法から要素Eの基準ピッチを計算することもできる。寸法の具体的な読み取り手順については後述する。
【0042】
演算手段3は、学習用データセットLを用いて、要素Eである杭の配置を自動的に算出するブロックである。
演算手段3では、杭伏図において既に杭が配置された基礎の特徴を大量に機械学習して得られた学習用データセットLを用いている。機械学習は種々の手法を用いることができるが、杭が配置されている基礎の部分をあらかじめ特定する教師有り学習が好ましく、ニューラルネットワークによる深層学習がより好ましい。機械学習の詳細についても後述する。
【0043】
演算手段3は、確率算出手段31と、配置決定手段32とを備えている。
確率算出手段31では、事前の機械学習により得られた学習データセットLによって、配置対象データTにおける基礎の特徴に応じて重み付けがなされる。そして、配置対象データTの基礎の所定の位置に対して杭を配置すべき確率を、重み付けに基づいて算出する。
配置決定手段32では、確率算出手段31が算出した所定の位置における確率に基づいて、杭を配置すべきかどうか決定する。決定においては、確率に基づく指標について、事前に閾値を定めておき、その指標が閾値を超えた位置については杭を配置するようにする。
【0044】
確率算出手段31については、算出された所定の位置ごとの確率において、設定値よりも近接した配置となっており隣接する杭の配置確率が低い場合には、その杭を削除するようにしてもよい。また、隣接する杭間距離が設定値よりも大きい場合等には、その杭間に、新たな杭を追加するようにしてもよい。
【0045】
『事前の機械学習』
学習データセットLは、杭伏図に配置されている杭の位置における基礎の形状や位置等の特徴を大量に機械学習させることで得ることができる。具体的には、人間が杭伏図を見ながら、その元となっている基礎伏図における杭が配置されている位置と同じ位置またはその位置を含む所定の範囲の画像データを学習させる。学習させる画像データの元となる基礎伏図は、対象部材Pである基礎上に要素Eである杭を配置した杭伏図に用いられた基礎伏図であり、過去、適切に設計され、問題なく施工されたものから選択するのが望ましい。機械学習においては、
図2に示す内容に基づく特徴量を学習させる。
【0046】
具体的には、例えば下記の3つの特徴量を学習させることができる。なお、
図2では、杭の位置をマーカーとして丸い図形で示しているが、実際に学習させている画像データは、杭マーカーが表示されていない基礎の形状のみの基礎伏図の一部の画像データである。ただし、杭マーカーが記載された杭伏図であっても、画像処理により杭マーカーを除去した画像データを用いるようにしてもよい。
【0047】
まず、第一の特徴量としては、
図2(a)の四角枠に示すように、基礎が交わる「点」となる部分についての特徴を学習する。例えば、交わっている2本の基礎の長さや、外壁側の角なのか内部の角なのか、T字形に交わるT字部なのかL字形に交わる角部なのかといった特徴を学習する。
【0048】
第二の特徴量としては、
図2(b)の四角枠に示すように、任意の1本の基礎を「線」として捉え、直線上に並列している杭に着目し、隣接する2本の杭についての特徴を学習する。例えば、2本の杭の間隔や、隣接する杭が角部であるのかどうかなどの特徴を学習する。
【0049】
第三の特徴量としては、
図2(c)の四角枠に示すように、4本の基礎で囲まれた範囲を「面」として捉え、矩形状に並んでいる杭に着目し、矩形状に配置されている4本の杭についての特徴を学習する。例えば、4本の杭同士の間隔や、4点とも角なのか、T字部なのかどうかなどの特徴を学習する。
【0050】
これらの学習は、学習させたい範囲を人間が選択して学習させることができる。このとき、少なくとも建築物全体の四隅の基礎には杭が配置される可能性が極めて高いため、これら四隅の角を含むように学習させることが望ましい。なお、人間が学習範囲を指定する教師有り学習を行うのが望ましいが、教師なし学習により分類分けして学習させてもよいし、報酬を設定して強化学習を行うようにすることもできる。
【0051】
このように、杭が配置されている部分の基礎の特徴ごとに学習し、例えば、ニューラルネットワークによる深層学習によって基礎の形状・位置と、杭が配置されるべき確率との関係を重み付けした学習データセットLを得ることができる。
【0052】
『本システムの処理手順』
次に、システム100の具体的な要素自動配置方法を、
図3から
図8に基づいて説明する。なお、以下の説明では、要素Eを杭、配置用伏
図Dを基礎伏図、配置対象部材Pを基礎として説明する。
まず、
図3のフローチャートにおいて、S1:読込ステップでは、ユーザーUが、顧客端末Cを操作して、配置用伏
図Dとしての基礎伏図をシステム100に送信する。システム100は配置用伏
図Dを読み込み、配置対象データTとする。
図4には読み込んだ配置対象データTを顧客端末Cに表示した状態を表している。
図4では、対象部材Pとしての基礎の形状や配置と、各寸法が表示されている。
【0053】
読み込む配置用伏
図Dは紙図面をスキャナSで読み取ったラスターデータであるが、スキャン時の影響で僅かに傾いていることもあり得る。この場合には、図枠部分の直線部分を用いて傾きを補正する処理をしてもよい。
【0054】
次に、S2:画像分析ステップでは、OCR機能によって、対象部材Pの外形等の寸法情報を検出するようにしてもよい。具体的には、
図5の四角枠に示すように、OCR機能によって寸法エリアA1~A4を検出し、その寸法エリアA1~A4の横方向及び縦方向のそれぞれについて、同一線上に並んでいる数値を読み取って加算する。加算した数値の内、最も大きな数値や、上下左右の寸法エリアの加算値で重複した値を、最外形の寸法である可能性が高いと判断して、外形寸法として記録する。
【0055】
外形寸法の検出においては、基礎伏図にバルコニー等(図示せず)が記載されていることにより、それを含めた寸法と、含めない基礎部分のみの寸法が記載されている場合がある。この場合、バルコニー等を含めたときの最外形寸法と、含めない部分の最外形寸法との両方を記録し、ユーザーUに適切な方の寸法を選択させるようにすることもできる。
【0056】
また、読み取った外形寸法の数値から、最小ピッチ幅を検出する。建築物の基礎等の構造物は、慣習上、1間=1820mm(1.82m)を基準として、0.5間=910mm(0.91m)等の寸法ごとに配置することが行われている。読み込んだ外形寸法を整数で割ったときに、これら慣習上の基準寸法となるものを基準ピッチとして記録する。この基準ピッチは、最終的に杭の配置数を調整する際に、杭同士の間隔が遠いか近いかを判断する際の指標とすることができる。
なお、本来の1間は1818mmであるが、丸めて1820mmを1間とすることが多いため、本発明では前記寸法としている。これらの寸法以外にも、1mを基準とするメーターモジュール等、任意の最小ピッチ幅を選択することができる。このように、読み取った寸法が1820mmや3620mmであれば、910mmを最小ピッチ幅とし、読み取った寸法が1818mmや3636mmであれば、909mmを最小ピッチ幅とし、読み取った寸法が2000mmや3500mmであれば、1000mmを最小ピッチ幅とする。
【0057】
次に、S3:演算ステップでは、読み込んだ配置対象データTに対して、適切な位置に杭を配置していく。
図3のフローチャートでは、S31:確率算出ステップと、S32:配置決定ステップとによって配置するようにしている。
【0058】
S31:確率算出ステップでは、機械学習により得られた学習データセットLに基づいて、配置対象データT上の所定の任意の位置ごとに、杭を配置すべき確率を算出する。
例えば、所定の位置として、配置対象データT全体の画像データにおけるピクセルごとに確率を求め、10ピクセル四方の範囲における確率値の積分値を用いることができる。この場合、配置対象データTの左上のピクセルを基準として、10ピクセル四方の範囲を1ピクセルずつずらし、その都度積分値を求める。
各ピクセルの確率値を算出するに当たっては、例えば、ニューラルネットワークを用いて、前述した第一の特徴量に対応する「点」としての位置、第二の特徴量に対応する「線」としての位置、及び第三の特徴量に対応する「面」としての位置のそれぞれについて、杭を配置すべき確率を算出することができる。
【0059】
図6(a)では、角部やT字部等の「点」として杭を配置すべき確率をピクセルごとに求め、ヒートマップとして表示している。また、
図6(b)では、基礎の直線上の部分等の「線」として杭を配置すべき確率をピクセルごとに求め、ヒートマップとして表示している。また、
図6(c)では、基礎に囲まれた「面」として杭を配置すべき確率をピクセルごとに求め、ヒートマップとして表示している。
【0060】
そして、
図6(d)では、それら3種類の方法で算出した確率を、基礎上の位置ごと(
図6(d)の例ではピクセルごと)に掛け合わせてヒートマップとして表示している。
このように、様々な観点から算出された確率を掛け合わせて、総合的に杭が配置されるべきか否かを判断するため、特定の設計方針に偏った杭の配置となってしまうことを防止することができる。
【0061】
“特定の設計方針”について詳述すると、具体的には、基礎が布基礎かベタ基礎かによって、基礎の立ち上がり部分に作用する荷重が異なる。布基礎の場合には基礎の立ち上がり部分に作用する荷重が大きくなる傾向があるため、基礎の立ち上がり部分の直線上に配置すべき杭の数が多くなり、杭の間隔も狭くなる傾向がある。
一方で、ベタ基礎は、基礎の立ち上がり部分で囲まれた面部分でも荷重を支えることができ、立ち上がり部分に作用する荷重を分散させることができるため、立ち上がり部分のに配置すべき杭の数は少なくてもよくなり、杭の間隔も広くできる場合がある。また、半島部分の先端に杭を配置しなくてもよい場合もある。
【0062】
このように、基礎の種類や地盤の状態等によっても、杭を配置すべきかどうかが変わってくるところ、それらの詳細な情報を入力するシステムであると、ユーザーUが行うべき入力の作業が煩雑になってしまう。
一方で、ベタ基礎の設計方針を前提に杭の配置を算出してしまうと、実際に布基礎を用いる場合には、杭の本数が不足してしまい、設計的な強度を確保することができなくなってしまう。逆に布基礎の設計方針を前提に杭の配置を算出してしまうと、実際にベタ基礎を用いる場合には、杭の本数が冗長になってしまい、コストが膨らんでしまう。
このように、本システム100では、ベタ基礎用に設計された伏図や布基礎用に設計された伏図等、様々な伏図を学習して得られた学習データセットを用いているため、諸条件の入力作業を要することなく、必要かつ十分な適切な配置となるように、統計的に杭を配置すべきかどうかを自動で算出することができる。したがって、ユーザーUの作業負荷を軽減することができる。
【0063】
最後に、S32:配置決定ステップでは、S31:確率算出ステップにおいて算出した確率に基づいて、予め設定された閾値よりも高い位置に杭を配置すべきかどうかを決定する。
ここで、杭を配置する位置については、所定の位置における確率に基づいて、確率が比較的高くなっている部分を中心として配置することができる。例えば、10ピクセルの範囲ごとに積分された確率値を用いて、周囲よりも高い値を示す範囲を配置候補位置として抽出し、各配置候補位置において閾値よりも高い確率値(積分値)の範囲の中心に杭を配置するように決定することができる。このとき、抽出された位置はそれぞれ僅かにずれた寸法となる場合があるが、所定の範囲のずれであれば、それらずれた値の平均値に揃えることで、配置候補位置をグリッド状に整列することもできる。
【0064】
次に、各配置候補位置についてランク付けを行う。ランク付けに当たっては、隣接する配置候補位置の確率と、それに隣接する配置候補位置の基礎の形状や確率等の情報とを考慮し、ランクを調整する。具体的には、長さが長い基礎において、その直線上の中間部における確率が高かったとしても、その基礎を含む矩形状の4点の杭の配置確率が著しく高い場合には、面として支えることができる可能性が高いため、基礎の中間部における杭のランクを敢えて低下させるような処理を行うことができる。また、確率が低い場合であっても、その位置が角部やT字部である場合には、杭が配置される方が良い可能性が高いとして、杭のランクを敢えて上昇させるような処理を行うことができる。
【0065】
ランク付けの一例として、1を最も高いランクの昇順とする方法がある。この場合、数字が大きくなるほどランクが低くなる。この方法で、
図6の確率分布に基づいてランク付けを行うと、
図7のようになる。丸い図形は、杭を示す杭マーカーであり、近接して表示される数値はランクである。必要に応じて、杭マーカーの中に杭番号を表示させることもできる。
【0066】
そして、予め設定されたランクの閾値以上の位置には、杭を配置するように決定する。例えば、ランクの数字が200未満の位置に杭を配置するようにすると、
図7の黒く塗りつぶした杭マーカーの位置に配置することになる。
本システム100では、自動で配置した杭以外に、手動で任意の位置に強制的に杭を配置することもできる。例えば、500番台のランクの位置は、隣接する位置同士の距離が基準ピッチと比較して遠いため、必要に応じて追加ができるように、低めのランクの配置候補位置として強制的に追加されている。また、600番台のランクの位置は、隣接する配置候補位置同士の距離が遠いわけではないが、安全方向に考えたとき(たとえば布基礎として設計する必要がある場合)に、必要に応じて追加ができるように、低めのランクの配置候補位置として強制的に追加されている。
【0067】
本システム100では、配置した杭の座標位置について、予め読み取った最外形の寸法情報や基準ピッチの情報に基づいて、配置した各杭の位置の追出し図を自動作成させることもできる。このとき、座標基準となる杭マーカーを選択し、縦方向の追出し寸法と、横方向の追出し寸法、および最外形の対角の寸法を表示させることができる。
追出し図を作成する場合には、各杭マーカーの座標値が、基準ピッチに近い値の場合には、基準ピッチに整列させる機能を有するようにしてもよい。これにより、本システム100の要素自動配置方法によって配置された杭の座標値が中途半端な値になったとしても、追出し図としては基準ピッチに整合した図面として出力することができる。なお、基準ピッチから明らかに離間した値であった場合には、その値が正しい値であるとして、整列することはせず、数値を丸める程度の処理とすることもできる。
【0068】
本システム100のS32:配置決定ステップでは、必要に応じて、杭の数を増減させるように調整することもできる。この調整は、前述の杭の配置を決定するためのランクの閾値を変動させることで行う。例えば、杭を増やしたいときには、閾値を下げていく(ランクの数字を上げていく)ことで、次にランクの高い配置基準点に杭が配置されることとなる。
図8であれば、四角形で示す位置に杭が追加されることになる。また、杭を減らしたいときには、閾値を上げていく(ランクの数字を下げていく)ことで、既に配置されている杭のうち、最もランクの低いものから順に削除されていくこととなる。
図8であれば、三角形で示す位置の杭が削除されることとなる。
【0069】
以上のように、本システム100では、予め杭伏図を機械学習させた学習データセットを用いて、基礎伏図に対して必要かつ十分な位置に杭を配置することができる。
【0070】
『変形例1』
次に、本発明の変形例に係る要素自動配置システム101について、
図9に基づいて説明する。なお、以降の説明においては同一の部分については同一の符号を用い、重複する説明は割愛する。
【0071】
本変形例では、
図1から
図8の形態に対して、要素Eが小屋束であり、小屋束を配置すべき対象部材Pが梁であり、配置対象伏
図Dが梁伏図である点が異なる。
本変形例では、小屋束が配置された小屋伏図を大量に機械学習させた学習データセットを用いている。
【0072】
そして、
図3同様のステップによって、読込手段1が梁伏図を読み込み、画像分析手段2によって梁の形状や位置、寸法等を読み取る。そして、演算手段3により、梁上の適切な位置に小屋束を自動配置することができる。
【0073】
本変形例では、要素Eを小屋束としたが、梁伏図に対して、要素Eとして上階の柱を配置するようにすることもできる。このとき、小屋束を配置するか柱を配置するかを選択させるようにすることもできるし、両方を配置することもできる。
以上のように構成することで、要素Eとして、杭以外にも、建築における伏図に表示される様々な要素を自動配置するシステムとすることができる。
【符号の説明】
【0074】
100,101 要素自動配置システム
1 読込手段
2 画像分析手段
3 演算手段
31 確率算出手段
32 配置決定手段
C 顧客端末
D 配置用伏図
E 要素
L 学習データセット
P 対象部材
U ユーザー
S スキャナ
T 配置対象データ
【要約】
【課題】建築用の伏図に対して、必要かつ十分に要素を配置できる要素自動配置システム及び要素自動配置方法を提供すること。
【解決手段】建築用の伏図における適切な位置に要素を配置するための要素自動配置システム100であって、前記要素Eを配置すべき対象部材Pが記載された配置用伏
図Dを読み込んで配置対象データTとする読込手段1と、他の伏図において既に対象部材に対して要素が配置されている対象部材の特徴を機械学習させて得られた学習データセットLを用いる演算手段3と、を備え、前記演算手段3は、前記学習データセットLに基づく演算により、前記配置対象データTの対象部材Pの特徴に応じて、対象部材Pに対して前記要素Eを自動配置する手段を備える構成とした。
【選択図】
図3