(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ピロリノン系化合物及びその合成方法
(51)【国際特許分類】
C07D 207/38 20060101AFI20240829BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
C07D207/38 CSP
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2023528159
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(86)【国際出願番号】 CN2021073780
(87)【国際公開番号】W WO2022134259
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】202011526131.5
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521145657
【氏名又は名称】百▲順▼▲葯▼▲業▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】POSEIDON PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】521145668
【氏名又は名称】武▲漢▼大▲鵬▼▲葯▼▲業▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUHAN DAPENG PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 發普
(72)【発明者】
【氏名】石 聿新
(72)【発明者】
【氏名】陳 發凱
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106674075(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0151535(US,A1)
【文献】国際公開第2003/057131(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110092739(CN,A)
【文献】LOMBARDI, C. et al.,“Recent advances in the synthesis of analogues of phytohormones strigolactones with ring-closing metathesis as a key step”,Organic & Biomolecular Chemistry,2017年,Vol. 15, No. 38,pp. 8218-8231,DOI: 10.1039/C7OB01917C
【文献】PLIENINGER, H. et al.,“Eine neue Synthese fur Pyrrolone, insbesondere fur Isooxyopsopyrrol und Isooxyopsopyrrol-carbonsaure”, Justus Liebigs Annalen der Chemie,1956年,Vol. 598, No. 3,pp. 198-207,DOI: 10.1002/jlac.19565980306
【文献】PLIENINGER, H. et al.,“Synthese der Oxyopsopyrrolcarbonsaure und Weitere Untersuchungen in der Pyrrolon-Reihe”,Justus Liebigs Annalen der Chemie,1964年,Vol. 680, No. 1,pp. 60-69,DOI: 10.1002/jlac.19646800108
【文献】JACOBI, P. A. et al.,“New Syntheses of the C, D-Ring Pyrromethenones of Phytochrome and Phycocyanin”,The Journal of Organic Chemistry,2000年,Vol. 65, No. 25,pp. 8478-8489,DOI: 10.1021/jo005531k
【文献】GRUNEWALD, J. et al.,“Optimization of an Enzymatic Antibody-Drug Conjugation Approach Based on Coenzyme A Analogs”,Bioconjugate Chemistry,2017年,Vol. 28, No. 7,pp. 1906-1915,DOI: 10.1021/acs.bioconjchem.7b00236
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 207/00
C07C 233/00
C07C 231/00
C07C 321/00
C07C 319/00
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式が下記構造式であることを特徴とする、ピロリノン系化合物。
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載のピロリノン系化合物の製造方法であって、前記ピロリノン系化合物は構造式が式1に示され、式6に示す化合物を反応させることで製造され、反応式は以下のとおりであることを特徴とする、前記製造方法。
【化2】
【請求項3】
前記ピロリノン系化合物は式6の化合物を溶媒中で塩基触媒反応させることで製造されることを特徴とする、請求項
2に記載のピロリノン系化合物の製造方法。
【請求項4】
式6の化合物から式1の化合物を製造するステップにおいて、使用される溶媒は、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、水、アセトン、DMF及びDMSOのうちの1つ又は複数から選ばれ、前記塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、DBU及びジメチルアミノピリジンのうちの1つ又は複数から選ばれることを特徴とする、請求項
3に記載のピロリノン系化合物の製造方法。
【請求項5】
式6に示す化合物は式5の化合物を反応させることで製造され、反応式は以下のとおりであ
ることを特徴とする、請求項2に記載のピロリノン系化合物の製造方法。
【化3】
【請求項6】
式5に示す化合物を溶媒中で塩基触媒反応によって酸無水物又は塩化アシルと反応させて式6に示す化合物を生成することを特徴とする、請求項
5に記載のピロリノン系化合物の製造方法。
【請求項7】
式5に示す化合物を溶媒中で塩基触媒反応によって酸無水物又は塩化アシルと反応させて式6に示す化合物を生成するステップにおいて、前記塩基はトリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、エチルジイソプロピルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸水素ナトリウムのうちの1つ又は複数から選ばれ、前記溶媒はジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン及び酢酸エチルのうちの1つ又は複数から選ばれることを特徴とする、請求項
6に記載のピロリノン系化合物の製造方法。
【請求項8】
式5に示す化合物を溶媒中で塩基触媒反応によって酸無水物又は塩化アシルと反応させて式6に示す化合物を生成するステップにおいて、式5に示す化合物と、塩化アシル又は酸無水物と、塩基とのモル比は1:(0.8~2):(0.8~2)であることを特徴とする、請求項
6に記載のピロリノン系化合物の製造方法。
【請求項9】
式5に示す化合物から式6に示す化合物を製造するステップにおいて、反応温度を0~40℃に制御することを特徴とする、請求項
5に記載のピロリノン系化合物の製造方法。
【請求項10】
式5に示す化合物は式4の化合物を反応させることで製造され、反応式は以下のとおりであることを特徴とする、請求項
5に記載のピロリノン系化合物の製造方法。
【化4】
【請求項11】
式4の化合物を溶媒中で、酸性条件下にて、脱保護によって式5の化合物を生成することを特徴とする、請求項
10に記載のピロリノン系化合物の製造方法。
【請求項12】
式4の化合物から式5の化合物を製造するステップにおいて、使用される酸調整剤は塩酸、硫酸、ギ酸及び酢酸のうちの1つ又は複数から選ばれ、使用される溶媒はジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン及び酢酸エチルのうちの1つ又は複数から選ばれることを特徴とする、請求項
11に記載のピロリノン系化合物の製造方法。
【請求項13】
式4の化合物から式5の化合物を製造する過程で、式4の化合物と酸のモル比は1:(0.1~1)であることを特徴とする、請求項
12に記載のピロリノン系化合物の製造方法。
【請求項14】
式4の化合物から式5の化合物を製造する過程で、反応温度を20~30℃に制御することを特徴とする、請求項
10に記載のピロリノン系化合物の製造方法。
【請求項15】
式4に示す化合物は式2の化合物と式3の化合物を反応させることで製造され、反応式は以下のとおりであることを特徴とする、請求項
10に記載のピロリノン系化合物の製造方法。
【化5】
【請求項16】
式2の化合物と式3の化合物を溶媒中で、塩基触媒下で反応させて式4の化合物を生成することを特徴とする、請求項
15に記載のピロリノン系化合物の製造方法。
【請求項17】
式2の化合物と式3の化合物から式4に示す化合物を製造するステップにおいて、使用される溶媒はジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン及び酢酸エチルのうちの1つ又は複数から選ばれ、使用される塩基はトリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、エチルジイソプロピルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸水素ナトリウムのうちの1つ又は複数から選ばれることを特徴とする、請求項
16に記載のピロリノン系化合物の製造方法。
【請求項18】
式2の化合物と式3の化合物から式4に示す化合物を製造するステップにおいて、式2の化合物と、式3の化合物と、使用される塩基とのモル比は1:(0.8~2):(0.8~2)であることを特徴とする、請求項
16に記載のピロリノン系化合物の製造方法。
【請求項19】
式2の化合物と式3の化合物から式4に示す化合物を製造するステップにおいて、反応温度を15~30℃に制御することを特徴とする、請求項
15に記載のピロリノン系化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明特許は医薬品合成の分野に属し、より具体的には、本発明はピロリノン系化合物及びその合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピロリノンはグリメピリド、ビリルビン、ビリベルジン、フィコシアニン等の医薬品及び食品添加剤の重要な構造断片である。
【0003】
【0004】
【0005】
【0006】
【0007】
このような化合物の合成には通常、以下のいくつかの方法がある。
【0008】
1)p-トルエンスルホニルピロール法
【0009】
【0010】
該方法(Monatsh.Chem.,2014,145,5,775-789)は、p-トルエンスルホニルピロールを原料とし、臭素化、加水分解、還元等のステップを経てピロリノン化合物を得るものであり、加水分解中にトリフルオロ酢酸を大量使用する必要があり、汚染が大きく、還元に水素化ホウ素ナトリウムが使用され、コストが高い。
【0011】
2)ピロールアミド法
【0012】
【0013】
該方法(J.Org.Chem.2006,71,6678-6681)は、ピロールアミドを原料とし、水素化リチウムアルミニウム還元を経てピロールアルデヒドを生成させ、さらに過酸化水素による酸化を経てピロリノンを生成させるものであり、該方法に使用される水素化リチウムアルミニウムは高価だけでなく、使用において非常に危険性が高く、工業的生産に適していない。
【0014】
3)エチルアセト酢酸エチル法
【0015】
【0016】
該方法(Tetrahedron Lett.,2003,44,4853-4855)は、エチルアセト酢酸エチルを出発原料とし、シアン化ナトリウム付加、接触水素化及び加水分解を経てピロリノン化合物を得るものである。該方法に使用される原料であるシアン化ナトリウムは毒性の強い原料であり、接触水素化は高圧下で行う必要があり、収率は15%に過ぎず、同様に工業的生成という要求を制約している。
【0017】
4)アリルアミンを出発原料とした方法
【0018】
【0019】
上記方法に比べて、該方法(Synthesis,2015,47,955-960)は、水素化リチウムアルミニウム、シアン化ナトリウム、トリフルオロ酢酸等の試薬、及び接触水素化等のステップが省略され、工業化の要求により適している。しかし、水素化ホウ素ナトリウム及び高価な塩化パラジウム等の試薬はまだ使用から外すことができない。
【0020】
したがって、工業化により適し、より低コストで、合成条件がより穏和なピロリノン系化合物の合成方法を研究開発する必要性は高い。
【発明の概要】
【0021】
本発明の目的は少なくとも一定程度で従来技術に存在する技術的課題の1つを解決することであり、そのために、本発明はピロリノン系化合物を提供し、その構造式は式1に示すとおりである。
【0022】
【0023】
式中、R1はC1~C5アルコキシ基、ベンジルオキシ基、C1~C5アルキル基及びフェニル基のうちの1つから選ばれ、R2、R3はそれぞれ独立して水素、C1~C5アルキル基、C1~C5アルコキシ基、C1~C5アルキルチオ基、C1~C5アルキルスルフィニル基、C1~C5アルキルスルホニル基、異なる置換のフェニル基、異なる置換のフェノキシ基、異なる置換のフェニルチオ基、異なる置換のフェニルスルフィニル基及び異なる置換のフェニルスルホニル基のうちの1つから選ばれ、n1、n2は1~5の整数である。異なる置換は異なる位置の置換、例えばメタ置換、オルト置換、パラ置換を含み、さらに、異なる置換基による置換、例えばC1~C5アルキル基置換、ハロゲン置換をも含む。
【0024】
本発明の技術的解決手段では、R3は水素であり、n1は1である。
【0025】
本発明の技術的解決手段では、n
2は2である。
本発明の技術的解決手段では、上記ピロリノン系化合物は、構造式が下記構造式のうちの1つから選ばれる。
【化10】
【0026】
本発明の技術的解決手段では、ピロリノン系化合物の製造方法をさらに提供し、前記ピロリノン系化合物は式6に示す化合物を反応させることで製造され、反応式は以下のとおりである。
【化11】
【0027】
本発明の技術的解決手段では、前記ピロリノン系化合物は式6の化合物を溶媒中で塩基触媒反応させることで製造される。
【0028】
本発明の技術的解決手段では、式6の化合物から式1の化合物を製造するステップにおいて、使用される溶媒は、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、水、アセトン、DMF及びDMSOのうちの1つ又は複数から選ばれ、前記塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、DBU及びジメチルアミノピリジンのうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0029】
本発明の技術的解決手段では、式6に示す化合物は式5の化合物を反応させることで製造され、反応式は以下のとおりであり、
【化12】
式中、R
1はC
1~C
5アルコキシ基、ベンジルオキシ基、C
1~C
5アルキル基及びフェニル基のうちの1つから選ばれ、R
2、R
3はそれぞれ独立して水素、C
1~C
5アルキル基、C
1~C
5アルコキシ基、C
1~C
5アルキルチオ基、C
1~C
5アルキルスルフィニル基、C
1~C
5アルキルスルホニル基、異なる置換のフェニル基、異なる置換のフェノキシ基、異なる置換のフェニルチオ基、異なる置換のフェニルスルフィニル基及び異なる置換のフェニルスルホニル基のうちの1つから選ばれ、n
1、n
2は1~5の整数である。異なる置換は異なる位置の置換、例えばメタ置換、オルト置換、パラ置換を含み、さらに、異なる置換基による置換、例えばC
1~C
5アルキル基置換、ハロゲン置換をも含む。
【0030】
本発明の技術的解決手段では、式5の化合物を溶媒中で塩基触媒反応によって酸無水物又は塩化アシルと反応させて式6の化合物を生成する。
【0031】
本発明の技術的解決手段では、式5の化合物を溶媒中で塩基触媒反応によって酸無水物又は塩化アシルと反応させて式6の化合物を生成するステップにおいて、前記塩基はトリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、エチルジイソプロピルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸水素ナトリウムのうちの1つ又は複数から選ばれ、前記溶媒はジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン及び酢酸エチルのうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0032】
本発明の技術的解決手段では、式5に示す化合物を溶媒中で塩基触媒反応によって酸無水物又は塩化アシルと反応させて式6に示す化合物を生成するステップにおいて、式5に示す化合物と、塩化アシル又は酸無水物と、塩基とのモル比は1:(0.8~2):(0.8~2)である。
【0033】
本発明の技術的解決手段では、式5の化合物を溶媒中で塩基触媒反応によって酸無水物又は塩化アシルと反応させて式6の化合物を生成するステップにおいて、反応温度を0~30℃に制御する。
【0034】
本発明の技術的解決手段では、式5に示す化合物は式4の化合物を反応させることで製造され、反応式は以下のとおりである。
【化13】
【0035】
本発明の技術的解決手段では、式4の化合物を溶媒中で、酸性条件下にて、脱保護によって式5の化合物を生成する。
【0036】
本発明の技術的解決手段では、式4の化合物から式5の化合物を製造するステップにおいて、使用される酸調整剤は塩酸、硫酸、ギ酸及び酢酸のうちの1つ又は複数から選ばれ、使用される溶媒はジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン及び酢酸エチルのうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0037】
本発明の技術的解決手段では、式4の化合物から式5の化合物を製造する過程で、式4の化合物と酸のモル比は1:(0.1~1)である。
【0038】
本発明の技術的解決手段では、式4の化合物から式5の化合物を製造する過程で、反応温度を20~30℃に制御する。
【0039】
本発明の技術的解決手段では、式4に示す化合物は式2の化合物と式3の化合物を反応させることで製造され、反応式は以下のとおりである。
【化14】
【0040】
本発明の技術的解決手段では、式2の化合物と式3の化合物を溶媒中で、塩基触媒下で反応させて式4の化合物を生成する。
【0041】
本発明の技術的解決手段では、式2の化合物と式3の化合物から式4に示す化合物を製造するステップにおいて、使用される溶媒はジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン及び酢酸エチルのうちの1つ又は複数から選ばれ、使用される塩基はトリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、エチルジイソプロピルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸水素ナトリウムのうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0042】
本発明の技術的解決手段では、式2の化合物と式3の化合物から式4に示す化合物を製造するステップにおいて、式2の化合物と、式3の化合物と、使用される塩基とのモル比は1:(0.8~2):(0.8~2)である。
【0043】
本発明の技術的解決手段では、式2の化合物と式3の化合物から式4に示す化合物を製造するステップにおいて、反応温度を15~30℃に制御する。
【0044】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0045】
1、本発明の新規ピロリノン系化合物は、医薬品中間体として使用可能であり、フィコシアニン、グリメピリドを製造する収率が高く、条件が穏和である。
【0046】
2、本発明は新規ピロリノン系化合物の合成方法を提供し、工業化により適し、より低コストで、合成条件がより穏和である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下において実施例と関連付けて本発明の解決手段を解釈する。当業者であれば、以下の実施例は本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものと見なすべきではないことが理解される。実施例において具体的な技術又は条件が明記されていない場合、本分野における文献に記載の技術もしくは条件又は製品の説明書に従って行う。NMRはBruker-AMX400核磁気共鳴分光計で測定し、ESI-MSはFinnigan-MAT-95質量分析計で測定し、いずれの試薬も分析用試薬である(国薬試剤社)。以下の実施例では、2,2-ジメトキシプロピルアミンは文献Eur.J.Med.Chem.,1995,30,931~942の方法で製造し、4-p-トリルチオブチリルクロリドは文献MedChemComm,2017,8,1268~1274の方法で製造する。
【0048】
<実施例1>化合物4aであるN-(2,2-ジメトキシプロピル)-4-p-トリルチオブタンアミドの合成
【0049】
【0050】
化合物4aの製造方法は次のとおりである。6.80グラム(57.1mmol)の化合物2,2-ジメトキシプロピルアミンを秤量し、20ミリリットルのジクロロメタンで溶解させ、さらに6.10グラム(60.4mmol)のトリエチルアミンを加え、0℃まで降温させ、20ミリリットルのジクロロメタンに溶解した13.03グラム(57.1 mmol)の4-p-トリルチオブチリルクロリドを緩徐に滴下し、温度を5℃以下に制御し、滴下が完了した後に20~30℃下で10時間撹拌し、濾過し、N-(2,2-ジメトキシプロピル)-4-p-トリルチオブタンアミドを得、ケーキはジクロロメタンで洗浄し、濾液はそのまま次の反応に使用する。
【0051】
<実施例2>化合物4bであるN-(2,2-ジメトキシプロピル)ブタンアミドの合成
【0052】
【0053】
化合物4bの製造方法は次のとおりである。2,2-ジメトキシプロピルアミン(55.8mmol)を秤量し、20ミリリットルのテトラヒドロフランで溶解させ、さらに炭酸カリウム(63.7mmol)を加え、0℃まで降温させ、20ミリリットルのテトラヒドロフランに溶解した5.97g(55.8mmol)の塩化ブチリルを緩徐に滴下し、温度を5℃以下に制御し、滴下が完了した後に15~25℃下で10時間撹拌し、濾過し、N-(2,2-ジメトキシプロピル)-4-p-トリルチオブタンアミドを得、ケーキはジクロロメタンで洗浄し、濾液はそのまま次の反応に使用する。
【0054】
<実施例3>化合物5aであるN-アセトニル-4-p-トリルチオブタンアミドの合成
【0055】
【0056】
化合物5aの製造方法は次のとおりである。実施例1で得られた化合物4a含有のジクロロメタン溶液に8.0グラム(10.8mmol)の5%希塩酸を加え、15~35℃下で4時間撹拌し、静置し、ジクロロメタン層を分離し、順に飽和食塩水、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮させ、10.20グラムの白色固体であるN-アセトニル-4-p-トリルチオブタンアミドを得、二段階収率(実施例1と実施例3の二段階反応の合計収率)は96%である。N-アセトニル-4-p-トリルチオブタンアミド:1H NMR(400MHz,CDCl3):δ1.92~1.97(m,2H)、2.20(s,3H)、2.31(s,3H)、2.39(t,6.8Hz、2H)、2.93(t,J=6.8Hz,2H)、4.14(d,J=4.0Hz,2H)、6.22(s,1H)、7.09(d,J=4.0Hz,2H)、7.26(d,J=8.0Hz,2H)、ESI-Mass:266.0[M+H]+。
【0057】
<実施例4>化合物5bであるN-アセトニル-4-ブタンアミドの合成
【0058】
【0059】
化合物5bの製造方法は次のとおりである。実施例2で得られた化合物4b含有のジクロロメタン溶液に8.0グラムの5%希塩酸を加え、15~35℃下で4時間撹拌し、静置し、ジクロロメタン層を分離し、順に飽和食塩水、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮させ、白色固体であるN-アセトニル-4-ブタンアミドを得、二段階収率(実施例2と実施例4の二段階反応の合計収率)は92%である。N-アセトニル-4-ブタンアミド:1H NMR(400MHz,CDCl3):δ0.99(t,J=7.0Hz,3H)、1.64~1.70(m,2H)、2.21(s,3H)、2.34(t,J=6.8Hz,2H)、4.16(s,2H)、ESI-Mass:144.18[M+H]+。
【0060】
<実施例5>化合物6aであるN-アセトニル-N-tert-ブトキシカルボニル-4-p-トリルチオブタンアミドの合成
【0061】
【0062】
化合物6aの製造方法は次のとおりである。8グラムの化合物5aを秤量し、50ミリリットルのジクロロメタンで溶解させ、さらに8.0グラムのDMAPを加え、0℃まで降温させ、90ミリリットルのジクロロメタンに溶解した13.2グラムのBoc2Oを緩徐に滴下し、温度を5℃を超えないように制御し、滴下が完了した後に15~30℃下で10時間撹拌し、反応物を100ミリリットルの氷水に入れ、水相を希塩酸でpH3に酸性化させ、有機層を分離し、順に飽和炭酸水素ナトリウム、食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮させ、10.81グラムの薄黄色液体であるN-アセトニル-N-tert-ブトキシカルボニル-4-p-トリルチオブタンアミドを得、収率は99%である。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ1.47(s,9H)、1.93~1.97(m,2H)、2.14(s,3H)、2.30(s,3H)、2.93(t,J=6.0Hz,2H)、3.08(t,J=7.2Hz,2H)、4.49(s,2H)、7.08(d,J=8.2Hz,2H)、7.25(d,J=8.2Hz,2H)、ESI-Mass:387.97[M+Na]+。
【0063】
<実施例6>化合物6bであるN-アセトニル-N-tert-ブトキシカルボニルブタンアミドの合成
【0064】
【0065】
化合物6bの製造方法は次のとおりである。8グラムの化合物5bを秤量し、50ミリリットルのジクロロメタンで溶解させ、さらに8.0グラムのDMAPを加え、0℃まで降温させ、90ミリリットルのジクロロメタンに溶解した13.2グラムのBoc2Oを緩徐に滴下し、温度を5℃を超えないように制御し、滴下が完了した後に15~35℃下で10時間撹拌し、反応物を100ミリリットルの氷水に入れ、水相を希塩酸でpH3に酸性化させ、有機層を分離し、順に飽和炭酸水素ナトリウム、食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮させ、薄黄色の油状物であるN-アセトニル-N-tert-ブトキシカルボニルブタンアミドを得、収率は97%である。N-アセトニル-N-tert-ブトキシカルボニルブタンアミド:1H NMR(400MHz,CDCl3):δ1.00(t,J=7.2Hz,3H)、1.48(s,9H)、1.76~1.78(m,2H)、2.23(s,3H)、2.95(m,2H)、4.45(s,2H)、ESI-Mass:244.22[M+H]+。
【0066】
<実施例7>化合物1aであるN-tert-ブトキシカルボニル-3-(2-トリルチオエチル)-4-メチル-1H-2(5H)ピロロンの合成
【0067】
【0068】
化合物1aの製造方法は次のとおりである。6.80グラムの化合物6aを秤量し、3.0グラムの水酸化ナトリウムが溶解した50ミリリットルのDMSOに入れ、15~35℃下で30分間撹拌し、反応物を100ミリリットルの氷水に入れ、酢酸エチルで抽出し、希塩酸で中性になるまで洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮させ、エタノールで再結晶し、6.0グラムの黄土色固体を得、収率は84%である。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ1.55(s,9H)、1.95(s,3H)、2.30(s,3H)、2.57(t,J=7.2Hz,2H)、3.11(t,J=7.2Hz,2H)、4.03(s,2H)、7.08(d,J=8.0Hz,2H)、7.25(d,J=8.0Hz,2H)、ESI-Mass:717.14[2M+Na]+。
【0069】
<実施例8>化合物1bであるN-tert-ブトキシカルボニル-3-エチル-4-メチル-1H-2(5H)ピロロンの合成
【0070】
【0071】
化合物1bの製造方法は次のとおりである。6.80グラムの化合物6bを秤量し、3.0グラムの水酸化ナトリウムが溶解した50ミリリットルのDMSOに入れ、15~35℃下で30分間撹拌し、反応物を100ミリリットルの氷水に入れ、酢酸エチルで抽出し、希塩酸で中性になるまで洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮させ、エタノールで再結晶し、化合物1bであるN-tert-ブトキシカルボニル-3-エチル-4-メチル-1H-2(5H)ピロロンを得、それは無色の油状物で、収率が77%である。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ1.10(t,J=7.0Hz,3H)、1.49(s,9H)、2.01(s,3H)、2.32(q,J=7.4Hz,2H)、4.20(s,2H)、ESI-Mass:226.22[M+1]+。
【0072】
<実施例9>フィコシアニン中間体の合成における化合物1aの使用
【0073】
【0074】
3.47グラムの式1aに示す化合物、3.21グラムの5-ホルミル-4-メチル-3-アリルオキシカルボニルエチル-2-ピロール酸tert-ブチルを秤量し、混合した後に30mlのトルエンで溶解させ、さらに5.0gのDBUを加え、2時間加熱還流し、減圧蒸留し、溶媒を除去し、残留物を20mlのメタノールで再結晶し、4.12グラムの黄色固体を得、収率は75%であり、スペクトルデータはSynlett 1999,S1,901~904と同様である。
【0075】
<実施例10>グリメピリド中間体の合成における化合物1bの使用
【0076】
【0077】
1.12グラムの式1bに示す化合物を秤量し、10ミリリットルの酢酸エチルで溶解させ、0℃まで冷却し、15ミリリットルのジオキサンに溶解した10ミリリットルの4N塩酸を緩徐に加え、15~35℃に緩徐に昇温させた後に引き続き2時間撹拌し、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、カラムクロマトグラフィーによって0.46グラムの白色固体を得、収率は75%である。スペクトルデータはSynthesis,2015;47,955-960と同様である。
【0078】
以上は本発明の実施例を示して説明したが、上記実施例は例示的なものであり、本発明を限定するものと理解してはいけないことが理解可能であり、当業者であれば本発明の範囲内で上記実施例に対する変更、修正、置換及び変形は可能である。