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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】搬送用エンドレスベルト
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/34 20060101AFI20240829BHJP
   B32B 5/08 20060101ALI20240829BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B65G15/34
B32B5/08
B32B27/30 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019085838
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020179993
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000243331
【氏名又は名称】本多産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】本多 克也
(72)【発明者】
【氏名】島田 一昭
(72)【発明者】
【氏名】安野 広明
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-028059(JP,A)
【文献】実開昭57-021684(JP,U)
【文献】特開平11-105171(JP,A)
【文献】特開平11-207836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/34
B32B 5/08
B32B 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
S字撚りの耐熱性繊維とZ字撚りの耐熱性繊維とがベルトの進行方向に沿った方向に交互に配列してなり、S字撚りの耐熱性繊維とZ字撚りの耐熱性繊維とがベルトの進行方向に交差する方向に配列している織布よりなるベルト基材と、フッ素樹脂を含む表面層と、を含んでなり、前記織布よりなるベルト基材の内部にまでフッ素樹脂が充填されかつフッ素樹脂が前記ベルト基材を覆って前記表面層となっているベルト状材料が、エンドレス接合されてなる、搬送用エンドレスベルト。
【請求項2】
搬送用エンドレスベルトにおける前記織布が一枚である、請求項1に記載の搬送用エンドレスベルト。
【請求項3】
前記耐熱性繊維が、ガラス繊維またはアラミド繊維である、請求項1または2に記載の搬送用エンドレスベルト。
【請求項4】
前記表面層が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)からなる群から選ばれたフッ素樹脂を含むものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の搬送用エンドレスベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドレスベルトに関するものである。さらに詳しくは、本発明は、耐熱性が良好で、例えば食品や工業関連に用いる際に、必要な搬送距離並びに加熱処理に応じた最適長さのベルトを容易に製造でき、かつ蛇行が防止されたエンドレスベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耐熱性および引張強度等に優れた耐熱性繊維織布に、耐熱性や非粘着性に優れた耐熱性樹脂を適用した耐熱性ベルトが知られており、例えば食品や工業製品の製造並びに包装等の際の耐熱非粘着性の搬送ベルト並びに加熱処理エンドレスベルト等として採用されている。
【0003】
前記の耐熱性繊維織布としては、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維等を平織、綾織、朱子織、目明き織等とした織布が用いられている。また、前記耐熱性非粘着性樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)等のフッ素樹脂が用いられている。
【0004】
一般に、エンドレスベルトは、所謂シームレス織機で製織された繊維織布を用いたシームレスベルトと、シート基材の両端部を接合してエンドレス化した接合ベルトとに分類することができる。
【0005】
このうちシームレスベルトは、接合部分が存在しないことにより、接合部分に基づく段差が生じず、厚み、強度等の均一性が高いという特質を有する。しかしながら、シームレスベルトでは、主としてシームレス織機の機械上の制約等から、所望長さのベルトを製造しにくいという点で不利であった。特に、長距離搬送用の長尺のベルトを製造することは困難であった。
【0006】
一方、シート基材の両端部を接合したエンドレス接合ベルトは、例えば、シート基材の長さを調整したり、接合箇所を増やす等によって、所望長さのベルトを製造することが比較的容易である。また、接合前にシート基材を得ているので、複雑な層構造のベルトや、表面樹脂層の形成条件が厳しい場合でも安定して、効率的に製造しやすい点で有利である。しかしながら、耐熱性繊維織布にフッ素樹脂等の耐熱性非粘着性樹脂表面層を形成したベルトは、表面硬度が高く、また伸縮し難く蛇行を防止ないし抑制するのが困難であった。
【0007】
そこで、エンドレス接合ベルトにはつきものの蛇行防止のために、搬送装置へ蛇行調整器の設置や、フランジガイドローラの設置や、ベルトにガイドを設ける等が行われている。例えば、ガイドとしてはベルト裏面端部へ角状や丸状の紐状ガイドを取付け、駆動従動ロールにガイド用の溝を設ける技術(特許文献1)が提案されている。
【0008】
しかし、前記のような蛇行防止手段では、蛇行を強制的に規制しているため、ベルト本体への負荷が大きく、寿命の低減ならびにガイド部からの破損等の問題がある。
【0009】
しかしながら、本発明者が知る限りでは、実用上の問題が生じない程度にまで蛇行防止がなされ、長期間にわたって安定的に使用可能なエンドレス接合された耐熱非粘着性のベルトは提案されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平8-239109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記の事情を考慮し検討したものであって、蛇行し難さを有した耐熱性ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による蛇行し難さを有した耐熱性エンドレスベルトは、S字撚りの耐熱性繊維とZ字撚りの耐熱性繊維とがベルトの進行方向に沿った方向に交互に配列してなる織布よりなるベルト基材と、フッ素樹脂を含む表面層と、を含んでなるベルト状材料が、エンドレス接合されてなること、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ベルト本体が蛇行し難いために、蛇行調整器並びにガイドの必要性が軽減し、搬送装置等の精度やベルトの左右周長精度を考慮して、前記の蛇行調整を行っても、ベルト本体への負荷が少なく、長寿命なエンドレスベルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のベルト状材料の内部構造の概要を示す模式図
図2】本発明によるエンドレスベルトの概要を示す図
図3】本発明によるエンドレスベルトの概要を示す図
図4】本発明によるエンドレスベルトの概要を示す図
図5】本発明によるエンドレスベルトの概要を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によるエンドレスベルトは、S字撚りの耐熱性繊維とZ字撚りの耐熱性繊維とがベルトの進行方向に沿った方向に交互に配列してなる織布よりなるベルト基材と、フッ素樹脂を含む表面層と、を含んでなるベルト状材料が、エンドレス接合されてなること、を特徴とするものである。
【0016】
このような本発明によるエンドレスベルトの好ましい具体例としては、例えば、図1に記載のベルト状材料5がエンドレス接合されてなるものを挙げることができる。
図1は、ベルト状材料5の内部構造を示す模式図である。
【0017】
<ベルト状材料>
図1に示されるベルト状材料5は、S字撚りの耐熱性繊維1とZ字撚りの耐熱性繊維2とが交互に配列してなる耐熱性織布3よりなるベルト基材と、フッ素樹脂を含んでなる表面層4とからなる複層のベルト状材料である。
【0018】
この耐熱性織布3は、具体的には、ベルトの進行方向に沿った方向に、S字撚りの耐熱性繊維1とZ字撚りの耐熱性繊維2とが交互に配列してなる耐熱性織布である。
【0019】
ここで、S字撚りの耐熱性繊維1としては、ガラス繊維の場合、単繊維の糸径が3.5μm~10μm、特に4μm~9μmである耐熱性繊維を、好ましくは50本~2000本を収束してなる繊維束(ストランド)を、S字撚りにした単糸の耐熱性繊維と前記単糸を撚り合わせた合撚糸の耐熱性繊維を挙げることができる。撚り数は、好ましくは0.5回~13回(25mm間の撚り数)、特に好ましくは0.5回~10回、である(ここで、撚り数は、JIS R3413:2012によるものである)。前記合撚糸の合糸数は、JIS R3413:2012によりストランドの本数/単糸の本数で表記され、好ましくはストランドの本数1本~4本/単糸の本数0本~8本である。ここで、単糸の本数0の表記は単糸を意味する(ここで、合糸数は、JIS R3413:2012によるものである)。
【0020】
一方、Z字撚りの耐熱性繊維2としては、ガラス繊維の場合、単繊維の糸径が3.5μm~10μm、特に4μm~9μmである耐熱性繊維を、好ましくは50本~2000本を収束してなる繊維束(ストランド)を、Z字撚りにした単糸の耐熱性繊維と前記単糸を撚り合わせた合撚糸の耐熱性繊維を挙げることができる。撚り数は、好ましくは0.5回~13回、特に好ましくは0.5回~10回、である(ここで、撚り数は、JIS R3413:2012によるものである)。前記合撚糸の合糸数は、JIS R3413:2012によりストランドの本数/単糸の本数で表記され、好ましくはストランドの本数1本~4本/単糸の本数0本~8本である。ここで、単糸の本数0の表記は単糸を意味する(ここで、合糸数は、JIS R3413:2012によるものである)。
【0021】
ここで、S字撚りの耐熱性繊維1とZ字撚りの耐熱性繊維2とは、耐熱性繊維の糸径、本数ならびに撚り数に関して、同一ないし近似していることが好ましい。
【0022】
耐熱性繊維としては、特に限定されるものではないが、ガラス繊維、アラミド繊維を挙げることができる。
【0023】
前記のS字撚りの耐熱性繊維1およびZ字撚りの耐熱性繊維2の両者とも、原糸から撚糸機を用いて単糸および合撚糸を製作することも出来る。また、それぞれ、集束剤を使用することができる。集束剤の使用によって、製織時の毛羽立ちを効果的に抑制することができる。
【0024】
本発明においては、耐熱性織布3としては、限定されるものではないが、ベルトの進行方向に沿った方向に、前記S字撚りの耐熱性繊維1とZ字撚りの耐熱性繊維2を交互に配列した平織、綾織、朱子織、目明き織を挙げることができる。このように、前記のS字撚りの耐熱性繊維1とZ字撚りの耐熱性繊維2とを、交互に配列することで、ベルト進行方向に直交する方向に対してS字撚り糸は左へZ字撚り糸は右へ撚り方向から動く習性を利用して、両者を均等化することで蛇行を抑制する。そのため、ベルトの進行方向に沿った方向にS字撚りとZ字撚りの耐熱性繊維を同比率で配列することが好ましい。また、撚り数とベルト進行方向に直交する方向へ動く速さは比例傾向のため、撚り数と比率とを調整することでも、蛇行を抑制することが出来る。
【0025】
前記のS字撚りの耐熱性繊維1とZ字撚りの耐熱性繊維2とは、ベルトの進行方向に沿った方向に交互に配列してなる必要がある。なお、S字撚りの耐熱性繊維1とZ字撚りの耐熱性繊維2とを交互に配列とは、1本のS字撚りの耐熱性繊維1の隣に、1本のZ字撚りの耐熱性繊維2が配置され、またその隣に1本のS字撚りの耐熱性繊維1が配列しているような場合のみに限定されない。例えば製造幅に合わせて複数本(好ましくは2本以上)のS字撚りの耐熱性繊維1の隣に、1本または複数本(好ましくは2本以上)のZ字撚りの耐熱性繊維2が配置され、またその隣に1本または複数本(好ましくは2本以上)のS字撚りの耐熱性繊維1が配置される場合をも包含する。また、撚り数と左右移動速度は比例傾向で、撚り数が多いほど、移動速度は速い。そのため、撚り数が異なるS字撚りの耐熱性繊維1と、Z字撚りの耐熱性繊維2が配置される場合をも包含する。S字撚りの耐熱性繊維1と、Z字撚りの耐熱性繊維2との存在比率は、両者の投影面積比で、撚り数の関係より、好ましくは1:99~99:1、特に好ましくは50:50、ある。
【0026】
一方、耐熱性繊維1およびZ字撚りの耐熱性繊維2と交差する方向(ベルトの進行方向に直交する方向)に配列している繊維については、前記のようにS字撚りの耐熱性繊維とZ字撚りの耐熱性繊維とを交互に配列させる必要はない。例えば、S字撚りの耐熱性繊維のみ、あるいはZ字撚りの耐熱性繊維のみが配列してなるものでもよく、また、両者が混在するものでもよい。
【0027】
本発明における耐熱性織布3は、前記のS字撚りの耐熱性繊維1とZ字撚りの耐熱性繊維2とを用い、前記のように、ベルトの進行方向に沿った方向に交互に配列するように、整経機で整経して、織機で製織出来る。織機としては限定するものではないが、好ましくは、シャトル織機、レピア織機、グリッパー織機、エアージェット織機、ウォータージェット織機、ニードル織機を挙げることができる。
【0028】
耐熱性織布3の厚さは、好ましくは30μm~1000μm、特に好ましくは30μm~700μm、である。耐熱性織布3の幅は、好ましくは25mm~3500mm、特に好ましくは1000mm~3500mm、である。厚さが30μm未満の場合、製織が難しく、さらに強度が弱くなり、一方、1000μm超過の場合、オーバースペックとなる傾向があることから好ましくない。幅が25mm未満の場合、需要が少ないようであり、一方、3500mm超過の場合、需要が少ないようであることから好ましくない。
【0029】
表面層4としては、限定するものではないが、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン‐パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)からなる群から選ばれた耐熱性樹脂を挙げられる。この中では、特にポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
【0030】
前記フッ素樹脂には、必要に応じて導電性粉および非導電性粉を配合することができる。これによって、導電性並びに帯電防止性や熱伝導性の付与ないし向上ならびに耐摩耗性の向上等を図ることができる。導電性粉および非導電性粉の好ましい具体例としては、導電性チタン酸カリウム繊維KO・6TiO/SnO(Sb)、ルチル型導電性針状酸化チタンTiO/SnO(Sb)、チタン酸カリウム繊維KO・8TiO、カーボンブラックおよび導電性酸化チタンを挙げることができる。その配合量は、フッ素樹脂に対して1~40質量部が好ましい。
【0031】
ベルト状材料5は、好ましくは、例えば、前記のフッ素樹脂の粒子の水性懸濁液を前記の繊維織布3に含浸させ、乾燥した後、焼成することによって形成することができる。水性懸濁液を調製する際の溶媒としては、例えば水、特に純水、が好ましい。水性懸濁液中のフッ素樹脂の粒子の量は、溶媒100質量部に対して20~60質量部、特に30~60質量部が好ましい。
【0032】
ベルト状材料5はフッ素樹脂が耐熱性織布3の内部にまで充分浸透し、かつ耐熱性織布3の表面がフッ素樹脂に覆われていることが好ましい。従って、フッ素樹脂の施用量は、耐熱性織布3とフッ素樹脂との総量を100質量部として、10~80質量部、特に40~70質量部、が好ましい。
【0033】
表面層4の厚さは、好ましくは1μm~300μm、特に好ましくは5μm~200μm、である。厚さが、1μm未満の場合、性能を満足できず、一方、300μm超過の場合、オーバースペックであることから好ましくない。
【0034】
前記フッ素樹脂の表面層には、表面活性化処理を形成することができる。これによって、他の材料との接合を可能にできる。好ましい具体例としては、シリカ粒子付着焼成処理、金属ナトリウムエッチング表面処理、プラズマ放電処理、コロナ放電処理を挙げることができる。ここで、表面活性化処理の詳細を後記に示す。
シリカ粒子付着焼成処理:フッ素樹脂の表面に、シリカ粒子とフッ素樹脂粒子との混合水性懸濁液を塗布した後、焼成処理を行うことによりフッ素樹脂層表面の親水性を向上させる処理。
金属ナトリウムエッチング表面処理:フッ素樹脂の表面に、金属ナトリウム溶液を塗布することにより、フッ素樹脂層表面の親水性を向上させる処理。
プラズマ放電処理:フッ素樹脂の表面に、グロー放電処理を施して、フッ素樹脂層表面の親水性を向上させる処理。
コロナ放電処理:フッ素樹脂の表面に、コロナ放電処理を施して、フッ素樹脂層表面の親水性を向上させる処理。
【0035】
表面活性化処理は、前記フッ素樹脂の表面層の形成される部位の全面に対して行うことが好ましいが、前記フッ素樹脂の表面層が形成される部位の一部分に対して行うこともできる。
【0036】
前記フッ素樹脂の表面層に表面活性化処理を形成した面に、必要に応じてポリイミド系樹脂を表面層として複合することができる。これによって耐摩耗性の向上並びに摩擦係数の向上(グリップ性の付与)を図ることができる。ポリイミド樹脂の好ましい具体例としては、液状ポリイミド系樹脂が好ましい。
【0037】
表面層を塗工により形成させる際は、その塗工を容易にするために液状のポリイミドワニスを用いることができ、必要に応じて溶剤を配合することができる。これによって、粘度を低減して塗工性の向上を図ることができる。
【0038】
液状ポリイミドワニスは、粘度が1~8000Cpであるものが好ましく、特に10~1000Cpであるものが好ましい。
【0039】
また、ポリイミド系樹脂には、必要に応じて導電性粉を配合することができる。これによって、例えば導電性並びに帯電防止性や熱伝導性の付与ないし向上ならびに耐摩耗性の向上等を図ることができる。
【0040】
前記フッ素樹脂の表面層に表面活性化処理を形成した面に、必要に応じてシリコーンゴムを表面層として複合することができる。これによってクッション性の向上並びに摩擦係数の向上(グリップ性の付与)を図ることができる。シリコーンゴムの好ましい具体例としては、液状シリコーンゴムが好ましい。
【0041】
表面層を塗工により形成させる際は、その塗工を容易にするために、シリコーンゴムに、必要に応じて溶剤を配合することができる。これによって、粘度を低減して塗工性の向上を図ることができる。
【0042】
液状シリコーンゴムは、粘度が1~100000Cpであるものが好ましく、特に10~50000Cpであるものが好ましい。
【0043】
また、シリコーンゴムには、必要に応じて導電性粉を配合することができる。これによって、例えば導電性並びに帯電防止性や熱伝導性の付与ないし向上ならびに耐摩耗性の向上等を図ることができる。さらに、シリコーンゴムには、必要に応じて硬化促進剤、硬化遅延剤を添加することができる。
【0044】
前記フッ素樹脂の表面層に表面活性化処理を形成した面に、必要に応じてフッ素ゴムを表面層として複合することができる。これによってクッション性の向上並びに摩擦係数の向上(グリップ性の付与)を図ることができる。フッ素ゴムの好ましい具体例としては、液状フッ素ゴムが好ましい。
【0045】
表面層を塗工により形成させる際は、その塗工を容易にするために、フッ素ゴムに、必要に応じて溶剤を配合することができる。これによって、粘度を低減して塗工性の向上を図ることができる。フッ素ゴムは、粘度が1~300000Cpであるものが好ましく、特に10~1000Cpであるものが好ましい。
【0046】
また、フッ素ゴムには、必要に応じて導電性粉を配合することができる。これによって、例えば導電性並びに帯電防止性や熱伝導性の付与ないし向上ならびに耐摩耗性の向上等を図ることができる。
【0047】
さらに、フッ素ゴムには、必要に応じて硬化促進剤、硬化遅延剤を添加することができる。
【0048】
前記の表面層の形成は、前記のポリイミド系樹脂またはシリコーンゴムまたはフッ素ゴムを、フッ素樹脂の表面層の表面活性化処理面に塗工し、乾燥した後、焼成することによって行うことができる。ポリイミド系樹脂の焼成温度は、300~400℃が好ましく、特に330~370℃が好ましい。シリコーンゴムの焼成温度は、50~200℃が好ましく、特に50~150℃が好ましい。フッ素ゴムの焼成温度は、20~200℃が好ましく、特に20~150℃が好ましい。焼成時間は、焼成温度等に応じて適宜決定することができる。
【0049】
表面層の厚さは、本発明による複層シームレスベルトの具体的用途や目的等によって適宜定めることができる。ポリイミド系樹脂表面層の厚さは、1~300μmが好ましく、特に5~200μmが特に好ましく、シリコーンゴム表面層の厚さは、1~700μmが好ましく、特に10~500μmが好ましく、フッ素ゴム表面層の厚さは、1~700μmが好ましく、特に10~500μmが好ましい。
【0050】
<エンドレスベルト>
本発明によるエンドレスベルトは、前記のベルト状材料が、エンドレス接合されてなるものである。図2に示されるように、好ましくは、このエンドレスベルト7は、例えば、(イ)ベルト状材料5の一方の端部の周辺域に他方の端部を重ね合わせて接合することにより(図2A)、(ロ)ベルト状材料5の二つの端部をその端部断面で接合することにより(図2B)、(ハ)ベルト状材料5の二つの端部の双方を同一の連結合シート6に接合することによって(図2C)、得ることができる。なお、二つの端部の接合は、熱融着あるいは接着剤を用いることによって行うことができる。
【0051】
また、ベルト状材料5の端部は、側面から観察したときに、その断面が傾斜していてもよい(図3A図3C)。また、本発明によるエンドレスベルト7の外周面を上方から観察したときに、接合されたベルト状材料5の端部が斜めに存在することができる(図4A図4C)。同様に、本発明によるエンドレスベルト7の内周面を下方から観察したときに、接合されたベルト状材料5の端部が斜めに存在することができる。
【0052】
図2図3および図4に示される本発明によるエンドレスベルト7は、S字撚りの耐熱性繊維とZ字撚りの耐熱性繊維とがベルトの進行方向に沿った方向に交互に配列してなる織布よりなるベルト状材料5を用いていることにより、ベルト7が蛇行しにくいものである。そして、本発明によれば、前記のベルト状材料5をエンドレス接合することによって、シームレスベルトとは異なって、用途に応じた所望の長さ、幅、層構成のベルトを容易に提供することができる。
【0053】
図5は、本発明によるエンドレスベルトの他の好ましい具体例を示すものである。図5に示される本発明によるエンドレスベルト11は、図1に示されるベルト状材料5を外周側に、他のベルト状材料8を内周側に用いたものであって、ベルト状材料5についての対向する二つの端部およびこの他のベルト状材料8についての対向する二つの端部を、9、10の位置にて、それぞれ接合し、それらを近接配置させて環状体を得て、エンドレスベルトとしている。
【0054】
この他のベルト状材料8としては、樹脂、好ましくは耐熱性樹脂、特に好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン‐パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)からなる群から選ばれた耐熱性樹脂よりなるベルト状材料を用いることができる。
【0055】
また、この他のベルト状材料8の他の好ましい具体例としては、耐熱性織布と樹脂(好ましくは、前記したような耐熱性樹脂)よりなるベルト状材料を挙げることができる。耐熱性織布は、ガラス繊維またはアラミド繊維などの耐熱性繊維を製織したものが好ましい。そして、この織布は、ベルトの進行方向に沿った方向に、S字撚りの耐熱性繊維とZ字撚りの耐熱性繊維とが交互に配列してなる織布が特に好ましい。従って、この他のベルト状材料8の特に好ましい具体例としては、ベルト状材料5として前記ならびに図1に示されたベルト状材料を挙げることができる。
【0056】
図5に示される本発明によるエンドレスベルト11は、S字撚りの耐熱性繊維とZ字撚りの耐熱性繊維とが、ベルトの進行方向に沿った方向に交互に配列してなる織布よりなるベルト状材料5を用いていることにより、ベルト11が蛇行しにくいものである。そして、本発明によれば、前記のベルト状材料5をエンドレス接合することによって、シームレスベルトとは異なって、用途に応じた所望の長さ、幅、層構成のベルトを容易に提供することができる。
【0057】
なお、エンドレス接合は、前記に限らず、フッ素樹脂含浸透耐熱性繊維の一般的な接合法も採用できる(参考資料:本多産業株式会社のカタログ)。
【実施例
【0058】
<実施例1>
S字撚り(3.8回撚り)ガラス繊維の合撚糸の経糸とZ字撚り(3.8回撚り)ガラス繊維の合撚糸の経糸を1本毎交互に配置したガラス繊維織布(厚み200μm)へフッ素樹脂(PTFE)の水性懸濁液を含浸し付着させて、80℃で乾燥した後、380℃の温度で焼成して、フッ素樹脂と前記S字撚りとZ字撚りの経糸を1本毎交互に配置したガラス繊維の複合材(厚み250μm)を得た。
【0059】
次に、エンドレスベルトに加工するために、前記複合材を必要寸法に裁断した後、前記複合材をエンドレスになるように重ね、加熱プレス機で380℃の温度でこれらを熱融着して、フッ素樹脂と前記S字撚りとZ字撚りの経糸を交互に配置したガラス繊維の複合材のエンドレスベルト(厚み250μm)を得た。
【0060】
<実施例2>
S字撚り(3.8回撚り)ガラス繊維の合撚糸の経糸とZ字撚り(3.8回撚り)ガラス繊維の合撚糸の経糸を均等割合で交互に配置したガラス繊維織布(厚み200μm)へフッ素樹脂(PTFE)の水性懸濁液を含浸し付着させて、80℃で乾燥した後、380℃の温度で焼成して、フッ素樹脂と前記S字撚りとZ字撚りの経糸を均等割合で交互に配置したガラス繊維の複合材(厚み250μm)を得た。
【0061】
次に、実施例1と同様にして、フッ素樹脂と前記S字撚りとZ字撚りの経糸を均等割合で交互に配置したガラス繊維の複合材のエンドレスベルト(厚み250μm)を得た。
【0062】
<実施例3>
S字撚り(3.8回撚り)ガラス繊維の合撚糸の経糸とZ字撚り(3.8回撚り)ガラス繊維の合撚糸の経糸を幅方向の中心から半々の割合で配置したガラス繊維織布(厚み200μm)を使用した以外は、実施例1と同様にして、フッ素樹脂と前記S字撚りとZ字撚りの経糸を中心から半々の割合で配置したガラス繊維の複合材(厚み250μm)を得た。
【0063】
次に、実施例1と同様にして、フッ素樹脂と前記S字撚りとZ字撚りの経糸を中心から半々の割合で配置したガラス繊維の複合材のエンドレスベルト(厚み250μm)を得た。
【0064】
<実施例4>
S字撚り(3.8回撚り)ガラス繊維の合撚糸の経糸とZ字撚り(0.7回撚り)ガラス繊維の単糸の経糸をS字撚り(3.8回撚り)を15.6%の割合で、Z字撚り(0.7回撚り)が84.4%の割合で、配置したガラス繊維織布(厚み200μm)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ガラス繊維の複合材(厚み250μm)を得た。
【0065】
次に、実施例1と同様にして、フッ素樹脂と前記S字撚り(3.8回撚り)ガラス繊維糸の経糸とZ字撚り(0.7回撚り)ガラス繊維糸の経糸をS字撚り(3.8回撚り)が15.6%の割合で、Z字撚り(0.7回撚り)が84.4%の割合で、配置したガラス繊維の複合材のエンドレスベルト(厚み250μm)を得た。
【0066】
<実施例5~8>
実施例1~4のガラス繊維をアラミド繊維に変更した以外は同様にしてアラミド繊維の複合材のエンドレスベルト(厚み350μm)を得た。
【0067】
<比較例1>
S字撚りガラス繊維糸の経糸のみを配置したガラス繊維織布へ実施例1と同様にして、フッ素樹脂と前記S字撚りの経糸のみを配置したガラス繊維の複合材のエンドレスベルト(厚み250μm)を得た。
【0068】
<比較例2>
S字撚りアラミド繊維糸の経糸のみを配置したアラミド繊維織布へ実施例1と同様にして、フッ素樹脂と前記S字撚りの経糸のみを配置したアラミド繊維の複合材のエンドレスベルト(厚み350μm)を得た。
【0069】
<比較例3>
Z字撚りガラス繊維糸の経糸のみを配置したガラス繊維織布へ実施例1と同様にして、フッ素樹脂と前記Z字撚りの経糸のみを配置したガラス繊維の複合材のエンドレスベルト(厚み250μm)を得た。
【0070】
<比較例4>
Z字撚りアラミド繊維糸の経糸のみを配置したアラミド繊維織布へ実施例1と同様にして、フッ素樹脂と前記Z字撚りの経糸のみを配置したアラミド繊維の複合材のエンドレスベルト(厚み350μm)を得た。
【0071】
評 価
前記の実施例1~8、比較例1~4によるエンドレスベルトについて、ロール2軸の走行試験機で走行試験した結果を表1に示す。
【表1】
【0072】
以上の評価結果より、本発明のベルトは、従来のベルトよりも、蛇行調整器並びにガイドの必要性が軽減し、搬送装置等の精度やベルトの左右周長精度を考慮して、前記の蛇行調整を行っても、ベルト本体への負荷が少なく、長寿命なベルトを提供できる。
【0073】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であって、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1 S字撚りの耐熱性繊維
2 Z字撚りの耐熱性繊維
3 耐熱性織布
4 表面層
5 ベルト状材料
6 結合シート
7、11 エンドレスベルト
8 他のベルト状材料
図1
図2
図3
図4
図5