(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ディスク式自動弁
(51)【国際特許分類】
F16T 1/16 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
F16T1/16 H
F16T1/16 J
F16T1/16 K
(21)【出願番号】P 2020027981
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】福田 剛士
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-102321(JP,A)
【文献】特開昭55-002863(JP,A)
【文献】特開2000-240892(JP,A)
【文献】特公昭51-015896(JP,B1)
【文献】実公昭47-030990(JP,Y1)
【文献】特公昭46-005340(JP,B1)
【文献】米国特許第3776254(US,A)
【文献】米国特許第3347258(US,A)
【文献】米国特許第2945505(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室を有する本体、
本体に形成され、互いに連通している流入側流路及び流出側流路であって、流体が流入側から流出側に向けて通過する流入側流路及び流出側流路、
本体に設けられた弁座部であって、流入側流路と流出側流路とを連通させるシート部を有する弁座部、
本体内に浮動自在に保持されたディスク型弁体であって、弁座部のシート部に接触又は離隔することによって流入側流路及び流出側流路の連通を遮断又は開放するディスク型弁体、
を備えたディスク式自動弁において、
弁座部は、流入側流路と弁室とを連通させる複数の流入側分岐流路を有し、
複数の流入側分岐流路は、弁座部の基準軸を中心として、回転対称になる位置にそれぞれ形成され、かつ弁座部の基準軸上で分岐した流入側流路に連続しており、
弁座部は、流出側流路と弁室とを連通させる複数の流出側分岐流路を有し、
複数の流出側分岐流路は、弁座部の基準軸を中心として、回転対称になる位置にそれぞれ形成されており、
本体は、複数の流出側分岐流路に連通する中間流路を有し、
中間流路は、中心軸が前記基準軸に一致する位置に配置されている、
ことを特徴とするディスク式自動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係るディスク式自動弁は、スチームトラップ等の自動弁であって、弁室に浮動可能に位置したディスク型弁体によって弁の開閉を行う自動弁の構成の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
産業プラントには、ボイラーで生成された蒸気等を供給先に向けて高温・高圧で移送する配管系統が設置されていることがある。この配管系統で蒸気を移送しようとする初期の段階においては、スムーズに蒸気を移送するため、配管内の空気を外部に排出しながら蒸気移送を行う必要がある。また、蒸気の移送を継続して行う過程においては、蒸気が液化してドレン(蒸気の凝縮水)が発生する。このドレンが配管内で滞留すると蒸気移送の障害となるため、適宜、ドレンを外部に排出する必要がある。
【0003】
このような空気の排出やドレンの排出を行うために、配管系統にはディスク式スチームトラップが設けられることがある。ディスク式スチームトラップは、円盤状のディスク弁を弁室に内蔵しており、このディスク弁は浮動自在に配置されている。そして、通常時はこのディスク弁が流路上に設けられた弁座に密着して弁口を塞ぐことによって閉弁し、蒸気漏れが生じないようになっている。
【0004】
蒸気移送の初期の段階においては、温度に応じて伸縮するバイメタル環が伸長してディスク弁を押し上げているためディスク弁と弁座の間には僅かな隙間が形成されており、この隙間から配管内の空気が排出され、初期段階における蒸気移送がスムーズに行われる。その後、ディスク式スチームトラップ内に蒸気が流入すると、高温の蒸気にさらされたバイメタル環が縮小し、ディスク弁は自重によって下降し弁座の弁口を塞いで閉弁する。
【0005】
続いて、蒸気移送にともなってドレンが発生し、ディスク式スチームトラップがドレンで満たされると、その水圧によってディスク弁が押し上げられ開弁して流路が開放され、ドレンが排出される。ドレンが排出された後は、同じ流路をたどって蒸気がディスク式スチームトラップに流入する。
【0006】
そして、この蒸気が高速でディスク弁の下部を流れることによって、ディスク弁の下面に低圧域が形成されてディスク弁が弁口に向けて引き寄せられ、これととともに、ディスク弁の上面に回り込んだ蒸気の高圧によってディスク弁が弁口に向けて押し下げられて閉弁する。
【0007】
こうして、ディスク弁が閉弁して流路の弁座を塞ぎ、蒸気漏れが防止される。この後、蒸気移送にともなってドレンが発生し、このドレンが弁室に流入した際、ディスク弁の上面に回り込んだ蒸気が冷却されて圧力が低下し、ディスク弁は再び開弁してドレンを排出する。
【0008】
このようなディスク式スチームトラップとして、後記特許文献1に開示されているような技術がある。この特許文献1に開示されているディスク式スチームトラップは、弁ディスクが傾いた状態で開閉することを回避し、弁ディスクや弁座の排出孔側の片減りを防止することを目的としている。
【0009】
そして、この目的を達成するために、ディスク式スチームトラップの弁座部材4に形成された環状溝11と排出孔19との間に、複数の通孔18及び環状通路17を形成した上、この複数の通孔18及び環状通路17を排出孔19に連通させている。また、排出孔19は口径の小さいオリフィスとして形成されている。
【0010】
このため、排出孔19から働く吸引力は弱く、環状溝11からの排出流は複数形成した通孔18から均等に環状通路17に流入する。これによって、弁ディスク14が排出孔19側に吸い寄せられて傾くことが抑制される。そして、弁ディスク14は弁座面に対して平行に変位して開閉するため、弁ディスク14や弁座部材4の排出孔19側の片減りが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、前述の特許文献1に開示された技術においては、排出孔19が出口3側に偏って形成されている。このため、弁ディスク14はこの偏って設けられた排出孔19側に引き寄せられやすく、弁ディスク14や弁座部材4の排出孔19側の片減りを確実に防止することができないという問題がある。
【0013】
特に、ディスク式スチームトラップにはドレンの混入した蒸気が高圧で流入するため、弁ディスク14は常時、細かな振動を繰り返す傾向にある。このため、弁ディスク14に対して僅かでも偏った吸引力が加わると、弁ディスク14が傾いて振動しダメージが蓄積され、弁ディスク14や弁座部材4に片減りが発生してしまう。
【0014】
そこで本願に係るディスク式自動弁は、これらの問題を解決することを課題とし、確実にディスク型弁体の片減りを防止することができるディスク式自動弁の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願に係るディスク式自動弁は、
弁室を有する本体、
本体に形成され、互いに連通している流入側流路及び流出側流路であって、流体が流入側から流出側に向けて通過する流入側流路及び流出側流路、
本体に設けられた弁座部であって、流入側流路と流出側流路とを連通させるシート部を有する弁座部、
本体内に浮動自在に保持されたディスク型弁体であって、弁座部のシート部に接触又は離隔することによって流入側流路及び流出側流路の連通を遮断又は開放するディスク型弁体、
を備えたディスク式自動弁において、
弁座部は、流出側流路と弁室とを連通させる複数の流出側分岐流路を有し、
複数の流出側分岐流路は、弁座部の基準軸を中心として、回転対称になる位置にそれぞれ形成されている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本願に係るディスク式自動弁においては、弁座部が、流出側流路と弁室とを連通させる複数の流出側分岐流路を有している。そして、この複数の流出側分岐流路は、弁座部の基準軸を中心として、回転対称になる位置にそれぞれ形成されている。このため、流出側流路における流体の通過にともなって生じるディスク型弁体の振動に偏りが生じることはなく、確実にディスク型弁体の片減りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本願に係るディスク式自動弁の第1の実施形態であるディスク式スチームトラップ1を示す側面断面図である。
【
図2】
図1に示すディスク式スチームトラップ1の正面断面図である。
【
図3】
図1に示す弁座15を上方から見た平面図である。
【
図4】
図1に示す弁座15を下方から見た底面図である。
【
図5】本願に係るディスク式自動弁の第2の実施形態であるディスク式スチームトラップに用いられる弁座215の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施形態における用語説明]
以下の実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係るディスク式自動弁の下記の構成要素に対応している。
【0019】
ディスク式スチームトラップ1・・・ディスク式自動弁
下部入口流路2a、2b、環状空間3a、中間流路31、スクリーン空間32及び流入口51・・・流入側流路
環状空間3b、上部入口流路4a、4b、204a、204b、204c・・・流入側分岐流路
出口流路6a、6b、206a、206b、206c・・・流出側分岐流路
弁座15・・・弁座部
シート面16、216・・・シート部
出口中間流路36、37及び排出口52・・・流出側流路
ディスク弁9・・・ディスク型弁体
ボディー11及び蓋12・・・本体
中心線L1・・・基準軸
空気、ドレン又は蒸気・・・流体
【0020】
[第1の実施形態]
本願に係るディスク式自動弁の第1の実施形態であるディスク式スチームトラップ1を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態におけるディスク式スチームトラップ1を示す側面断面図、
図2はディスク式スチームトラップ1の正面断面図であり、
図1と
図2とは互いに直交する断面である。また、
図3は弁座15を上方から見た平面図であり、
図4は弁座15を下方から見た底面図である。
【0021】
(ディスク式スチームトラップ1の構成の説明)
産業プラントに配置される配管系統の主管(図示せず)には、ボイラーで生成された蒸気が供給先に向けて移送されている。蒸気移送を開始する段階では、配管内に空気が存在しているため、蒸気移送の初期にこの空気を速やかに排出する必要がある。また、蒸気移送を行う過程で、蒸気が液化してドレンが発生する。このドレンも適宜、配管系統から排出する必要がある。
【0022】
このような、蒸気移送の初期における空気や、蒸気移送の進行にともなって発生するドレンを適切に排出するために、配管系統の主管の随所には枝管が連通しており、この枝管にディスク式スチームトラップ1が接続されている。
【0023】
図1及び
図2に示すように、ディスク式スチームトラップ1のボディー11の上部に形成された凹み部には、蓋12が螺入して取り付けられている。ボディー11の凹み部と蓋12の内部空間とによって囲まれた領域が弁室である。ボディー11と蓋12との間にはガスケット71が介在しており、弁室の気密性が保たれる。なお、蓋12には、さらに上部にキャップ13が取り付けられている。このキャップ13は、蓋12の外面との間にキャップ空間13Sを形成する。
【0024】
ボディー11の一方の側部には流入口51が形成されており、ここに枝管81が接続され、流入口51から蒸気やドレンが流入する。また、ボディー11の他方の側部には排出口52が形成されており、ここに排出管82が接続され、ドレンが排出管82を通じて排出される。流入口51と排出口52とは同軸上に位置するよう形成されている。
【0025】
ボディー11の下部に形成されたスクリーン空間32には、錆やスケール等の異物を捕捉するためのスクリーン25が設けられている。スクリーン空間32は中間流路31を介して流入口51と連通しており、流入口51から流入した蒸気やドレンはスクリーン25を透過する。なお、ボディー11の下部に螺入されているスクリーン固定キャップ26を外すことによって、スクリーン25をボディー11から取り出し、スクリーン25に付着した異物を除外して清掃することができる。
【0026】
ボディー11の上部の凹み部と蓋12の内部空間とによって囲まれた弁室には弁座15が設けられている。弁座15の上面であるシート面16側には、蓋12との間に形成される空間によって変圧室7が設けられる。この変圧室7には浮動自在にディスク弁9が配置されている。通常時においては、ディスク弁9は自重によって弁座15のシート面16に着座し当接した状態に位置する。
【0027】
ボディー11の上部と弁座15の下面にはそれぞれ対応する環状空間3a、3bが形成されており、ボディー11に弁座15が取り付けられることによって環状空間3a、3bが入口環状空間3を形成する。ボディー11と弁座15との間には環状のガスケット72、73が介在している。このガスケット72、73は、それぞれ入口環状空間3の内側と外側に配置され、入口環状空間3の気密性を保つ。
【0028】
そして、
図2に示すように、ボディー11にはスクリーン空間32と入口環状空間3とを連通させる二本の下部入口流路2a、2bが形成されている。この二本の下部入口流路2a、2bは、中心線L1を中心として回転対称に配置されている。中心線L1は、弁座15のシート面16に直交し、シート面16の中心を通る中心軸である。なお、本実施形態における中心線L1は、ボディー11、蓋12、弁座15、出口中間流路36及びスクリーン空間32の中心軸でもある。
【0029】
また、弁座15のシート面16の中心部分には、上側に向けて開口する中心噴出空間17が形成されている。中心噴出空間17の中心軸は、ディスク弁9の中心線L1に一致している。そして、
図2に示すように、弁座15にはこの中心噴出空間17と入口環状空間3とを連通させる二本の上部入口流路4a、4bが形成されている。この二本の上部入口流路4a、4bも、中心線L1を中心として回転対称に配置されている。
【0030】
また、弁座15のシート面16には、前述の中心噴出空間17の周辺を囲むように、環状の凹部である出口環状空間5が形成されている。そして、
図1に示すように、弁座15にはこの出口環状空間5に連通する二本の出口流路6a、6bが形成されている。この二本の出口流路6a、6bは、中心線L1を中心として回転対称に配置されている。
【0031】
さらに、出口流路6a、6bは、ボディー11の中心部分に形成された出口中間流路36に連通している。そして、出口中間流路36はさらに出口中間流路37を介して排出口52に連通している。
【0032】
なお、ディスク弁9が自重によって弁座15のシート面16に着座し当接することによって、中心噴出空間17と出口環状空間5は塞がれ、上部入口流路4a、4b等の入口側の流路と、出口流路6a、6b等の出口側の流路との連通は遮断される。そして、ディスク弁9が浮上して弁座15のシート面16から離隔したとき、中心噴出空間17と出口環状空間5は開かれ、上部入口流路4a、4b等の入口側の流路と、出口流路6a、6b等の出口側の流路との連通が開放される。
【0033】
弁座15の外周には斜面15aが形成されており、斜面15a を覆うようにしてバイメタル環22が載置されている。このバイメタル環22は環状部材の一部を切り欠いたC形の形状を有しており、周辺温度に応じて環の径長さが伸縮するようになっている。すなわち、周辺温度が所定の温度を上回った場合、バイメタル環22の環の径長さは伸長して拡開し、周辺温度が所定の温度を下回った場合、バイメタル環22の環の径長さは収縮して縮閉する。なお、バイメタル環22の上部には、ディスク弁9の下面に当接可能にリング21が配置されており、バイメタル環22はこのリング21を下方から支持している。
【0034】
(ディスク式スチームトラップ1の動作の説明)
続いて、ディスク式スチームトラップ1の動作を説明する。蒸気が流入していない初期の段階では、ディスク式スチームトラップ1は低温であるため、バイメタル環22は縮閉しており、弁座15の斜面15aに沿って上方にスライドして、リング21を介してディスク弁9を押し上げている。
図1及び
図2はこの状態を示しており、弁座15のシート面16とディスク弁9との間には僅かな隙間が生じている。
【0035】
蒸気移送の初期段階においては、配管内に空気が存在しているが、蒸気移送に従ってこの空気は押し出され、弁座15のシート面16とディスク弁9との隙間を通って排出口52から排出管82に排出される。
【0036】
初期段階における空気の排出が行われた後、低温のドレンが流入口51から矢印91方向に沿ってディスク式スチームトラップ1に流入する。流入したドレンはスクリーン空間32から下部入口流路2a、2bを通って入口環状空間3に一旦、流入し、この入口環状空間3から上部入口流路4a、4bを通って
図2に示す矢印92、93方向に進み、中心噴出空間17から噴出する。
【0037】
このドレンの噴出によってディスク弁9は弁座15のシート面16から大きく押し上げられて完全に開弁し(図示せず)、ドレンは弁室に流入する。そして、流入したドレンは、出口環状空間5から出口流路6a、6bに流れ込んで
図1に示す矢印94、95方向に進み、出口中間流路36、37、排出口52を通じて排出管82に矢印96方向に沿って排出される。
【0038】
この後、ディスク式スチームトラップ1には高温のドレンが矢印91方向に沿って流入する。この高温のドレンによってディスク式スチームトラップ1の温度が上昇し、バイメタル環22は拡開して、弁座15の斜面15aに沿って下方にスライドして沈み込む。これによって、バイメタル環22に支持されたリング21も下方に移動してディスク弁9に対する干渉が解除される。なお、この時点ではディスク弁9はドレンの通過によって押し上げられ、開弁したままの開放状態を維持する。
【0039】
高温のドレンが排出された後、引き続き高温の蒸気が矢印91方向に沿ってディスク式スチームトラップ1に流入し、この蒸気はディスク弁9の下面を高速で通過して排出される。この際、ディスク弁9の下面を高速で流れる蒸気のジェット流がベルヌーイの定理により低圧域を生じさせ、これによってディスク弁9が弁座15のシート面16に引き寄せられる。また、これと同時に蒸気はディスク弁9の側面からディスク弁9の上面に形成される変圧室7に回り込み、蒸気の再圧縮によって変圧室7を高圧にする。
【0040】
このディスク弁9の下方の低圧化と上方の高圧化によって、ディスク弁9は下降し弁座15のシート面16に密着して閉弁する。そして、変圧室7の高圧の持続によって、ディスク弁9による閉塞状態が維持され、蒸気の漏洩が防止される。
【0041】
この後、ディスク式スチームトラップ1には再び高温のドレンが流入するが、この際、変圧室7の蒸気が放熱して圧力が低下し、ディスク弁9はドレンに押し上げられて開弁してドレンを排出口52から排出する。なお、変圧室7の圧力変化については、キャップ空間13S内の空気が保温材として機能することによって外気温の影響を回避し、変圧室7の放熱速度は一定に保たれる。このため、ディスク弁9の安定した動作を確保することができる。
【0042】
高温のドレンを排出した後、ディスク式スチームトラップ1には再度、高温の蒸気が流入してディスク弁9は閉弁する。以上のようなディスク弁9の上昇又は下降の反復動作によって、閉弁又は開弁が繰り返される。
【0043】
ここで、ディスク式スチームトラップ1に流入する高圧の蒸気にはドレンが混入した状態であり、弁ディスク9は常時、細かな振動を繰り返す傾向にある。しかし、前述のように、出口流路6aと出口流路6bとは、中心線L1を対称軸として回転対称に配置されており、ドレンや蒸気の変圧室7からの流出にともなって生じるディスク弁9の振動に、ディスク面に沿った平面上における偏りが生じることはない。このため、確実にディスク弁9の片減りを防止することができる。
【0044】
また、本実施形態においては、さらに下部入口流路2a及び上部入口流路4aと、下部入口流路2b及び上部入口流路4bとは、中心線L1を対称軸として回転対称に配置されている。このため、中心噴出空間17から噴出するドレンや蒸気の噴出方向が対称的になり、噴出によって押し上げられるディスク弁9に、ディスク面に沿った平面上における偏りが生じることはない。このため、確実にディスク弁9の片減りを防止することができる。
【0045】
なお、本実施形態においてはディスク弁9の振動に偏りが生じないため、ディスク式スチームトラップ1のスクリーン空間32の中心軸は、ディスク弁9のディスク面に直交する中心線L1に一致する方向に配置されている。すなわち、従来のディスク式スチームトラップにおいては、排出孔がボディーの排出口側に形成され、ディスク弁に偏った振動が生じることから、この偏った振動を可能な限り抑えるために、スクリーン空間32の中心軸はボディーの排出口側に向けて斜めに配置され、重量的なバランスが図られている。
【0046】
本実施形態におけるディスク式スチームトラップ1では、ディスク弁9に偏った振動が生じないことからスクリーン空間32の中心軸を中心線L1に一致する方向に配置し、スクリーン固定キャップ26を垂下方向に向けて設けることができる。これによって、スクリーン固定キャップ26を取り外して、異物除去手段であるスクリーン25に付着した異物を除外して清掃する際、垂下方向にスクリーン25を外すことができ、メンテナンス作業の作業効率を高めることができる。
【0047】
[第2の実施形態]
本願に係るディスク式自動弁の第2の実施形態であるディスク式スチームトラップを図面に基づいて説明する。
図5は、本実施形態のディスク式スチームトラップに用いられる弁座215の平面図であり、
図6は弁座215の底面図である。本実施形態においては、第1の実施形態で示した弁座15に代えて弁座215を用いる。弁座215以外の構成は、第1の実施形態で示したディスク式スチームトラップ1と同様である。
【0048】
第1の実施形態においては、弁座15に二本の上部入口流路4a、4bが形成されていたが(
図2参照)、本実施形態の弁座215には三本の上部入口流路204a、204b、204cが形成されている。そしてこれら上部入口流路204a、204b、204cは、中心軸L1を中心として回転対称になる位置にそれぞれ形成されている。
【0049】
すなわち、ディスク式スチームトラップに流入した蒸気やドレンは、ボディー11に形成された下部入口流路2a、2bから環状空間3aに入り(
図2参照)、
図6に示す環状空間203bに連通して形成されている三本の上部入口流路204a、204b、204cに流入する。そして、この蒸気やドレンは、弁座215の上面であるシート面216の中心に形成されている中心噴出空間217(
図5)から噴出する。
【0050】
このとき、三本の上部入口流路204a、204b、204cは、中心軸L1を対称軸として回転対称になる位置にそれぞれ形成されているため、中心噴出空間217から噴出するドレンや蒸気の噴出方向が対称的になり、噴出によって押し上げられるディスク弁9(
図1、
図2)に、ディスク面に沿った平面上における偏りが生じることはない。このため、確実にディスク弁9の片減りを防止することができる。なお、
図6に示すように座2013には、入口環状空間3(
図2)の気密性を保つためのガスケット272、273が設けられている。
【0051】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、ボディー11に二本の下部入口流路2a、2bが形成されている例を示したが、弁座215に設けられている上部入口流路204a、204bに対応するように三本の下部入口流路を形成することもできる。
【0052】
また、第1の実施形態においては、弁座15に二本の出口流路6a、6bが形成されていたが(
図1参照)、本実施形態の弁座215には三本の出口流路206a、206b、206cが形成されている。そしてこれら出口流路206a、206b、206cは、中心軸L1を中心として回転対称になる位置にそれぞれ形成されている。
【0053】
すなわち、中心噴出空間217から噴出したドレンや蒸気は、弁座215のシート面216に形成されている出口環状空間205に連通した出口流路206a、206b、206cに流れ込み、出口中間流路36、37、排出口52を通じて排出管82に排出される(
図1参照)。
【0054】
このとき、三本の出口流路206a、206b、206cは、中心軸L1を対称軸として回転対称になる位置にそれぞれ形成されているため、ドレンや蒸気の流出にともなって生じるディスク弁9(
図1、
図2)の振動に、ディスク面に沿った平面上における偏りが生じることはない。このため、確実にディスク弁9の片減りを防止することができる。
【0055】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、ディスク式自動弁としてディスク式スチームトラップ1を例示したが、本体内に浮動自在に保持されたディスク型弁体によって流入側流路及び流出側流路の連通を開放又は遮断するものであれば他の自動弁に本願に係るディスク式自動弁を適用することもできる。ディスク型弁体は、前述の実施形態において例示したディスク9に限るものではなく、他の形状、構造を用いてもよい。
【0056】
また、前述の実施形態においては、流出側分岐流路として、二本の出口流路6a、6bや三本の出口流路206a、206b、206cを例示したが、中心線L1(基準軸)を中心として、回転対称に位置するものである限り、四本以上の出口流路を設けることができ、さらに他の形状、構造を採用することもできる。
【0057】
さらに、前述の実施形態においては、流入側分岐流路として、二本の上部入口流路4a、4bや三本の上部入口流路204a、204b、204cを例示したが、中心線L1(基準軸)を中心として、回転対称に位置するものである限り、四本以上の上部入口流路を設けることができ、さらに他の形状、構造を採用することもできる。
【0058】
なお、本願に係るディスク式自動弁においては、中心軸を通る単一の流路も、中心軸に対し回転対称に位置するものとする。
【符号の説明】
【0059】
1:ディスク式スチームトラップ 2a、2b:下部入口流路 3a、3b:環状空間
4a、4b、204a、204b、204c:上部入口流路
6a、6b、206a、206b、206c:出口流路 9:ディスク弁 11:ボディー
12:蓋 15:弁座 16、216:シート面 31:中間流路 32:スクリーン空間
36、37:出口中間流路 51:流入口 52:排出口 L1:中心線