(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】吸引式変形マットの固定具
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
A61N5/10 T
(21)【出願番号】P 2020043099
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】門前 一
(72)【発明者】
【氏名】奥村 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 賢治
(72)【発明者】
【氏名】花岡 宏平
(72)【発明者】
【氏名】田村 命
(72)【発明者】
【氏名】霜村 康平
(72)【発明者】
【氏名】早川 典
【審査官】段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-115419(JP,A)
【文献】国際公開第2015/119120(WO,A1)
【文献】特開2017-080155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
A61B 6/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な一対の横板状部と、前記横板状部に直角な縦板状部を有
し、横板状部の最大面と縦板状部の最大面とが同一平面になるように配置された、略コの字状のベース板と、
前記縦板状部の前記横板状部と反対側の端辺側に設けられた第1の立壁を有することを特徴とする吸引式変形マットの固定具。
【請求項2】
前記第1の立壁は、1つ以上の湾曲部を有する波形状であることを特徴とする請求項1に記載された吸引式変形マットの固定具。
【請求項3】
前記第1の立壁に対向し、前記縦板状部に設けられた第2の立壁をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載された吸引式変形マットの固定具。
【請求項4】
前記第2の立壁の高さが前記第1の立壁の高さより低いことを特徴とする請求
項3に記載された吸引式変形マットの固定具。
【請求項5】
前記第2の立壁は前記第1の立壁より短いことを特徴とする請求項
3または4の何れ
かの請求項に記載された吸引式変形マットの固定具。
【請求項6】
前記横板状部に沿って設けられる第3および第4の立壁をさらに有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一の請求項に記載された吸引式変形マットの固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として放射線治療において、患者の体動を抑制するために用いる吸引式変形マットの固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療は患者の患部に体外から放射線を照射することで、患部の細胞にダメージを与える治療である。通常複数回に渡って行われるため、照射位置が動かないようするだけでなく、毎回同じ位置に照射するため患者の姿勢の再現性も非常に重要となる。そこで、治療台上の患者の位置および治療中の患者の体動を拘束するために、体部用固定具が用いられている。
【0003】
例えば、治療台上に固定できるカーボン製もしくは木製の長方形のベースプレートであって、その左右にサイドプレートを取り付けた構成のものが用いられている。
【0004】
また、特許文献1には、強化段ボール製の長方形のベース板を備え、放射線治療台に乗せたベース板の表面の矩形凹部における両側の左側板、右側板を起立させ、これらの間に強化段ボール製の矩形の嵌め込み板を嵌め込む構造を有する体部用固定具が開示されている。
【0005】
ここでは、ベース板の矩形凹部に嵌め込んだ嵌め込み板と矩形凹部の隙間にできた凹部に、吸引式変形マットをなじませ、患者と密着させた状態で吸引式変形マット中の空気を抜くことで、表側は患者の型が、また裏側はベース板の矩形凹部に対応する凸形状が形成される点が記載されている。
【0006】
ベース板と吸引式変形マットは、ベース板側の凹部と吸引式変形マット側の凸部が嵌合することで、常に同じ位置に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
吸引式変形マットは、素早く患者の体形に応じた凹み形状を形成することができ、長期にわたって形状を維持することができるため、放射線治療には不可欠の道具である。この吸引式変形マットを治療台の特定の場所に固定するには、治療台に固定具を用いて固定する。
【0009】
従来の木製の固定具は、強度を確保するために比較的太く厚い木片を組み合わせて利用していた。しかし、木製の固定具は、重く、使用時の利便性に欠けていた。また、基本的に枠形状にして全体の強度を確保する構造であるので、あらゆる角度から患部に放射線を当てようとすると、放射線が固定具を通過しないと患部に到達しない角度が生じていた。
【0010】
また、木材は、放射線吸収量が少ない部材ではあるが、照射される放射線への影響はあるため、好ましい状態ではなかった。
【0011】
特許文献1のように、治療台(ベース板)に凹みを設け、その凹みに嵌合するように吸引式変形マットを凸形状に変形させると、一見吸引式変形マットと治療台は固定されるように見受けられる。しかし、吸引式変形マットを下方に凸型に変形させるのは容易ではない。
【0012】
また、吸引式変形マットは内部の空気を抜くことで体積が収縮し形状が固定される。したがって、吸引式変形マットに設けた凸形状は内部の空気を抜くと痩せてしまい、治療台に設けた凹みとの間に隙間が生じる。結果、吸引式変形マットと治療台の間はガタが生じ、位置の再現性が低くなるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記のような課題に鑑みて想到されたものであり、治療台と吸引式変形マットが隙間なく嵌合し、何れの角度からも放射線の照射が可能な吸引式変形マットの固定具を提供するものである。
【0014】
より具体的に本発明に係る吸引式変形マットの固定具は、
互いに平行な一対の横板状部と、前記横板状部に直角な縦板状部を有し、横板状部の最大面と縦板状部の最大面とが同一平面になるように配置された、略コの字状のベース板と、
前記縦板状部の前記横板状部と反対側の端辺側に設けられた第1の立壁を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る吸引式変形マットの固定具は、横板状部を治療台に沿って配置し固定すると、第1の立壁は、その上に載置される吸引式変形マットを横断する位置に配置される。そして、吸引式変形マットを固定具の上に載置すると、第1の立壁が吸引式変形マットに食い込む。そして吸引式変形マット内の空気を抜くと、吸引式変形マットは第1の立壁を挟み込むように収縮する。その結果、第1の立壁と吸引式変形マットの間に隙間がほとんど発生せず、吸引式変形マットは治療台に対して強い固定状態を維持することができる。
【0016】
すなわち、吸引式変形マットで固定具を挟み込むため高い精度で吸引式変形マットの位置を固定することができ、また高い精度で、再現もすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る固定具の使用態様を示す図である。
【
図4】ベース板と第1の立壁で構成された固定具に吸引式固定マットが固定される様子を示す概念図である。
【
図5】ベース板と第1の立壁および第2の立壁で構成された固定具に吸引式固定マットが固定される様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明に係る吸引式変形マットの固定具について図面を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態および一実施例を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
【0019】
図1に本発明の吸引式変形マットの固定具1の使用態様を示す。
図1(a)は、治療台50、吸引式変形マットの固定具1(以下単に「固定具1」とする。)、患者52、熱変形性固定帯54の載置順を示す。
図1(b)は、これらが実際に使われている態様を示す。患者52は両手を上げた状態で治療台50に固定される場合を示している。放射線Rは、固定具1と熱変形性固定帯54の間の様々な角度から照射される。
【0020】
固定具1は、治療台50上に固定される。
図1では、2つの固定具1を対向させて治療台50に固定しているが、1つだけであってもよい。固定具1の上には吸引式変形マット40が載置される。
【0021】
吸引式変形マット40は、スチレンなどの微小ビーズを気密性の袋に充填し、気密保持可能な吸引口40Lを設けたマットである。吸引式変形マット40の内部に空気がある場合は、通常のビーズクッションのように、形状が変化する。そして、形状を変化させておいてから、中の空気を抜くと変形した形状に沿って袋が微小ビーズを締め付け、その形状で固化する。
【0022】
初回の治療では、患者52は、吸引式変形マット40上で姿勢を整え、照射位置と角度を確認される。そしてその後吸引式変形マット40は、中の空気が抜かれ、患者52の姿勢を保持した形状で固化される。さらに、熱変形性固定帯54で固定される(
図1(b))。
【0023】
熱変形性固定帯54は、熱可塑性のフィルムや網状の帯であり、加熱して柔らかくしてから吸引式変形マット40の上で静止している患者52と共に、固定具1に固定する。温度が下がると、そのままの形状を維持する。
【0024】
吸引式変形マット40および熱変形性固定帯54はそのまま保存され、治療の度に使用される。つまり、固化した吸引式変形マット40および熱変形性固定帯54は患者52毎に作製される。
【0025】
2回目以降の治療では、患者52は、自らの姿勢を保持した吸引式変形マット40に保持され、初回と同様の姿勢を再現する。
【0026】
図2(a)に本発明に係る固定具1の斜視図を示す。また、
図2(b)に固定具1の平面図を示す。本発明に係る固定具1は、略コの字状のベース板10と、第1の立壁12で構成されている。さらに、第2の立壁14、第3の立壁16、第4の立壁18を有していてもよい。
【0027】
ベース板10は、互いに平行な一対の横板状部10a、10bと、横板状部10a、10bに直角な縦板状部10cの3つの部材で構成され、平面視すれば、略コの字形状をしている。ここで、説明のため、縦板状部10cがない側を固定具1の開口側Aといい、縦板状部10cが設けられている側を閉口側Bと呼ぶ。
【0028】
それぞれの部材は一定の幅を有している。横板状部10a、10bの幅を横板状部幅11a、縦板状部10cの幅を縦板状部幅11cとする。横板状部10a、10bには、治療台50に固定具1を固定するための貫通孔10hが設けられていてもよい。
【0029】
ベース板10の横板状部10a、10bは、治療台50に固定されるため、吸引式変形マット40からの前後方向(開口側Aから閉口側Bに向かう方向、もしくはその逆方向)にかかる応力は、縦板状部10cが受けることとなる。ここで、縦板状部10cが前後方向に沿った方向に撓むと、患部の位置の再現性が低下する。そこで、縦板状部10cが横板状部10a、10bと平行な方向に撓みにくくするために、ベース板10の横板状部10a、10bと縦板状部10cとの間には、補強部10dを設けてもよい。
【0030】
補強部10dは横板状部10a、10bと縦板状部10cとの接合部分の角にそれぞれ設けられている。補強部10dは、横板状部10a、10bと縦板状部10cの接合部から縦板状部10c方向および横板状部10a、10b方向にベース板10を拡張させて形成したと言ってもよい。
【0031】
ベース板10の縦板状部10cには、第1の立壁12が形成される。第1の立壁12が形成される場所は、縦板状部10cであればどこでもよいが、横板状部10a、10bが接合されている側とは反対側であって、縦板状部10cの端辺10caに沿って形成されてよい。第1の立壁12は、縦板状部10cの全長に沿って形成されてよい。しかし、全長でなくてもよい。具体的には、第3の立壁16および第4の立壁18の間に患者52は保持される。したがって、第1の立壁12は、第3の立壁16および第4の立壁18の間には設けることが望ましい。この間に患者52は配置されるからである。
【0032】
図3を参照する。
図3(a)は第1の立壁12を閉口側Bから見た正面図である。図面下側がベース板10側である。第1の立壁12の上端12aは湾曲形状20が施されていてもよい。
図3(a)では、2つの凸型湾曲形状20aと凸型湾曲形状20aの間に1つの凹型湾曲形状20bが施されている。湾曲形状20を施すことで、第1の立壁12は吸引式変形マット40に食い込みやすくなる。
【0033】
また、第1の立壁12の上端12aの両端12aa、12abは、丸面状の面取りが施されている。吸引式変形マット40に第1の立壁12が食い込む際に吸引式変形マット40に傷をつけにくくするためである。
【0034】
なお、上端12aに施す湾曲形状20は、凸型湾曲形状20aと凹型湾曲形状20bの何れか1つ以上があれば好ましい。具体例としては
図3(b)および
図3(c)に示す。
図3(b)は、1つの凸型湾曲形状20aが上端12aに施されている場合であり、
図3(c)は、1つの凹型湾曲形状20bが上端12aに施されている場合を示している。共に両端12aa、12abには丸面状の面取りが施されている。
【0035】
なお、本発明の固定具1においては、湾曲形状20および丸面状の面取りが施されていない場合を排除するものではない。
【0036】
図2を再度参照する。縦板状部10cには、第1の立壁12に対向して第2の立壁14が設けられてもよい。第2の立壁14は、第3の立壁16と第4の立壁18の間に設けられていればよい。また、第2の立壁14と第1の立壁12との距離Mは特に限定されないが、20mm以上離して設けるのが望ましい。第1の立壁12と第2の立壁14との間に吸引式変形マット40が入り込みやすくなるからである。
【0037】
図2では、第2の立壁14はベース板10の縦板状部10cにおいて、第1の立壁12が形成されている端辺10caの反対側(開口側A)の端辺10cbに設けられている場合を示す。このように、縦板状部10cの両端片10ca、10cbに第1の立壁12と第2の立壁14を設けることで、縦板状部10cの剛性向上にも寄与することとなる。
【0038】
図4には、第1の立壁12だけがある場合の吸引式変形マット40の変化の様子を示す概念図を示す。固定具1のベース板10と第1の立壁12および吸引式変形マット40を描いてある。
【0039】
図4(a)は、固定具1の第1の立壁12の部分の断面図を示す。断面は
図2(b)のC-C断面であり、治療台50上に固定具1が固定され、その上に吸引式変形マット40が載置された状態を示す。また、この図は第2の立壁14がない場合を描いている。
【0040】
吸引式変形マット40を固定具1に載せると、固定具1の形状(第1の立壁12の形状)に応じて吸引式変形マット40は変形する。しかし、吸引式変形マット40の表面は第1の立壁12に完全に追従しているのではなく、第1の立壁12との間に隙間26が生じる。吸引式変形マット40の内部の空気を抜くと、吸引式変形マット40は矢印40dの方向に収縮し、隙間26は隙間27へと小さくなる(
図3(b)参照)。
【0041】
そして、この状態で、吸引式変形マット40を固定具1から外すと、第1の立壁12に応じた凹み40aが形成される。この凹み40aは、第1の立壁12を噛みこむようにして形成された凹み40aであるので、狭く形成されている。したがって、再度吸引式変形マット40を固定具1に載置する際には、凹み40aと第1の立壁12の間の隙間は非常に狭く、所謂少ないガタで嵌合させることができる。結果、吸引式変形マット40の位置の再現性の精度を高くすることができる。
【0042】
図5には、第1の立壁12と第2の立壁14がある場合の吸引式変形マット40の変化の様子を示す。断面は
図4の場合と同じである。
図5(a)を参照して、固定具1に吸引式変形マット40を載置すると、
図4の場合同様に、吸引式変形マット40と、固定具1との間に隙間26が生じる。特に第1の立壁12と第2の立壁14の間には比較的大きな隙間26aが生じる。
【0043】
次に吸引式変形マット40から空気を抜くと吸引式変形マット40の表面は見かけ状収縮するので、第1の立壁12の外側12bと第2の立壁14の外側14bは矢印40dの方向に移動し、吸引式変形マット40との間の隙間26は小さくなる。なお、ここで第1の立壁12の外側12bと第2の立壁14の外側14bとは、第1の立壁12と第2の立壁14が対向している側を内側と見た時に、それぞれの立壁の反対側をいう。
【0044】
一方、隙間26aでは、吸引式変形マット40の表面は矢印40f方向に引っ張られ、隙間26aはむしろ大きくなるように変形する(
図4(b)参照)。
【0045】
この状態で固化した吸引式変形マット40を固定具1から外すと、吸引式変形マット40には凹み40bが形成される(
図4(c)参照。)。この凹み40bは、第1の立壁12と第2の立壁14との間で、吸引式変形マット40の表面を引っ張り合った結果、第1の立壁12と第2の立壁14が当たっていた部分符号41a、41bの部分が非常に精度よく固化している。
【0046】
したがって、このような凹み40bを有する吸引式変形マット40を固定具1に載置すれば、ほとんどガタを生じることなく、同じ位置に固定することができる。結果、吸引式変形マット40の位置の再現性の精度を高めることができる。
【0047】
再度
図2を参照する。横板状部10a、10bには、それぞれ第3の立壁16と第4の立壁18が設けられていてもよい。これらの立壁は、治療台50に固定された吸引式変形マット40に患者52が収まった後に、さらに患者を固定するために使用される熱変形式固体帯54を固定するために用いられる。つまり、この第3の立壁16と第4の立壁18は、吸引式固定マット40にはほとんど喰い込まない。しかし、これらの立壁が形成されると横板状部10a、10bの剛性は高くなる。
【0048】
ベース板10および第1の立壁12、第2の立壁14、第3の立壁16、第4の立壁18は、低放射線吸収材で形成されるのが望ましい。固定具1は放射線治療の際に患者を固定するものであるが、放射線治療においては、あらゆる方向から患部に放射線を照射したい。その際、固定具1は照射される放射線の照射線上にはないのが最も望ましい。しかし、仮に、放射線の照射線上に固定具1が入ったとしても、低放射線吸収材であれば、照射される放射線への影響は少ないからである。
【0049】
低放射線吸収材としては、発砲樹脂やFRP(Fiber-Reinforced Plastics)等が好適に利用できる。
【0050】
また、固定具1を構成する部材のうち、少なくともベース板10と第1の立壁12および第2の立壁14は、一体的に作製されるのが望ましい。固定具1を構成する部材は、患者52を固定する際に、大きな応力がかかるため、別部材を接合して作製するよりも、一体的に形成されていれば好ましい。ここで一体的とは、各部材が連続的に成形されており、複数の部材を接着剤やビス・ボルトといった接着材料で接合したものではない状態をいう。
【0051】
第3の立壁16および第4の立壁18は、横板状部10a、10bの内側に沿って設けられる。ベース板10に直接設けられていてもよい。また、断面L字部材を横板状部10a、10bに接合してもよい。なお、第3の立壁16および第4の立壁18には、熱変形式固体帯54を固定するための貫通孔が設けられているのが望ましい。
【0052】
次に本発明に係る固定具1の使用態様を説明する。
図1を参照して、一対の固定具1を治療台に第1の立壁12同士を対向させて一定の距離を離して固定する。この一対の固定具1の第2の立壁14に被るように吸引式変形マット40を載置する。そして、患者52を吸引式変形マット40の上に載せる。吸引式変形マット40を患者52および一対の固定具1になじませてから、吸引式変形マット40の空気を抜く。
【0053】
吸引式変形マット40の表側は、患者52の胴体部の形状に応じて固化し、裏側は固定具1を噛みこむ。吸引式変形マット40の裏側は
図4若しくは
図5の要領で固定具1を噛みこみ固定される。そして、熱変形式固定帯54で患者52をさらに固定する。
【0054】
固定具1の第1の立壁12は対向するうえ、距離L離れている。したがって、この距離Lの間には、固定具1の部分はない。この距離Lの間に患者の幹部を配置するようにすれば、この距離Lの間はいかなる方向からの放射線を照射しても、固定具1が照射を邪魔することはない。
【0055】
また、照射による治療が終了した後は、吸引式変形マット40を保存しておけば、後日再び患者52を治療台50の同じ位置、同じ姿勢に固定することができる。この際、吸引式変形マット40の裏面は、固定具1にぴったり嵌合するので、ほとんど誤差なく患者を固定することができる。
【0056】
以上のように本発明の固定具1を用いることで、吸引式変形マット40を繰り返し治療台50の同じ位置に固定させることができ、またその際ガタも生じない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は放射線治療の際に用いることができるだけでなく、特定の幹部のX線撮影やMRIやRI等の診断検査の際にも用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 固定具
10 ベース板
10a、10b 横板状部
10c 縦板状部
10d 補強部
10ca 端辺
10cb 端辺
11a 横板状部幅
11c 縦板状部幅
12 第1の立壁
12aa、12ab 両端
12a 上端
12b 外側
14 第2の立壁
14b 外側
16 第3の立壁
18 第4の立壁
20 湾曲形状
20a 凸型湾曲形状
20b 凹型湾曲形状
26、27 隙間
40 吸引式変形マット
40d 矢印
40a 凹み
40L 吸引口
40L 治療台
52 患者
54 熱変形性固定帯