(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ホタルイカの保存方法
(51)【国際特許分類】
A23L 17/50 20160101AFI20240829BHJP
【FI】
A23L17/50 Z
(21)【出願番号】P 2020082936
(22)【出願日】2020-05-11
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】520161137
【氏名又は名称】長谷川 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100181881
【氏名又は名称】藤井 俊一
(72)【発明者】
【氏名】染野 敬
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-191660(JP,A)
【文献】特開2005-151842(JP,A)
【文献】特開2010-035477(JP,A)
【文献】特開平03-019648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水揚げ後未冷凍のホタルイカを複数個体ずつ耐熱性吸水シート上に一重に並べる整列工程と、
それらを透明なパウチで真空包装する包装工程と、
当該包装工程を経たホタルイカをマイナス30℃以下で所定時間の冷凍処理を行う
冷凍工程を経て冷凍保存するホタルイカの保存方法において、
前記吸水シートは、不織布又は織布であり、
前記パウチは、耐水性及び耐熱性を備えることを特徴とするホタルイカの保存方法。
【請求項2】
前記整列工程前にホタルイカの個体から目を除去する目取り工程を経ることを特徴とする請求項1に記載のホタルイカの保存方法。
【請求項3】
前記吸水シートは、並べられた全てのホタルイカの占有領域以上の広さと、並べられたホタルイカ表面の水分、及び前記冷凍工程前に当該ホタルイカから漏れ出る液体をちょうど吸収し得る厚さを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の
ホタルイカの保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、品質保持及び調理に便宜なホタルイカの保存方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、ホタルイカは、刺身で食べる他、茹でた料理又は佃煮など加工様々な食品として提供されている。
ホタルイカは、一般的には、水揚げ後、マイナス30℃以下で急速に冷凍され、多くの個体を一塊として業務用の冷凍庫で数日冷凍した後に適宜解凍し、様々な容器に移し替えられ小売商品として出荷されることが多い(例えば下記特許文献1参照)。
ホタルイカには旋尾線虫が寄生しており生のまま食すると感染症にかかるため、所定温度による所定時間の冷凍処理は感染症予防のためには不可欠とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の冷凍工程は、大量のホタルイカが一塊として冷凍されるため、小売用として小分けする際や、その一部を調理に饗する際の便宜が悪く、小分けの際に解凍された塊の外側から劣化・腐敗が進行し、いったん解凍・小分け作業を開始した塊では、それに含まれるホタルイカの品質を均一に保ちながら保存することができないという問題があった。
加えて、解凍の際に生じた水分の劣化も進み、ホタルイカから出たエキスをふき取るなどの措置を取らねばならない場合も生じることで、ホタルイカが本来持っている風味を調理に活かし難いという問題もある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、大量のホタルイカの品質を均一に保ちながら適宜使用することができ、且つ調理にも便宜なホタルイカの保存方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明によるホタルイカの保存方法は、水揚げ後未冷凍のホタルイカを複数個体ずつ耐熱性吸水シート上に一重に並べる整列工程と、それらを透明なパウチで真空包装する包装工程と、当該包装工程を経たホタルイカをマイナス30℃以下で所定時間の冷凍処理を行う冷凍工程を経ることを特徴とする。
ホタルイカの目玉が残ると食感を損なう料理とすることを目的とする場合には、前記整列工程前にホタルイカの個体から目を除去する目取り工程を経る構成としてもよい。
【0007】
パウチ内におけるホタルイカの乾燥を防止し、且つ電子レンジを用いての調理を行う際に余分な水分の発生を防止するために、前記吸水シートは、並べられた全てのホタルイカの占有領域以上の広さと、並べられたホタルイカ表面の水分、及び前記冷凍工程前に当該ホタルイカから漏れ出る液体をちょうど吸収し得る厚さを備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるホタルイカの保存方法によれば、冷凍パウチ毎に解凍し調理を行うことができるので、小売用として小分けする際や、その一部を調理に供する際に便宜であり、調理に供されない冷凍パウチの品質に影響を与えることはなく、小売や調理に供されない冷凍パウチに対し長期にわたって均一に冷凍保存を行うことができる。
【0009】
また、保存中に冷凍パウチの吸水シートにしみている水分やエキスが冷凍保存により劣化することなく維持されるため、様々な調理法においてホタルイカが本来持っている風味や味覚を活かすことができ、空気孔をあけて電子レンジを利用した時短料理にあってもホタルイカ特有の味覚を楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明によるホタルイカの保存方法を施した一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明によるホタルイカの保存方法で行われる整列工程を施した一例を示す斜視図である。
【
図3】本発明によるホタルイカの保存方法で行われる工程及び手順の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明によるホタルイカの保存方法の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
図に示す例は、透明なパウチ3にホタルイカ1を収容後、バキュームシール(内部の空気を引いた状態で密封すること)により真空包装したものである。
尚、ここで真空とは、通常の大気圧より低い食品の保存に適した圧力の気体で満たされた空間の状態を指す。
【0012】
この例は、水揚げ直後で劣化前の未冷凍のホタルイカ1を軽く水洗いして所定個体(この例では12個体)ずつ吸水シート2上に一重(一段)に並べる整列工程と、それらを透明なパウチ3で30cmHg~60cmHgの真空包装する包装工程と、当該包装工程を経たホタルイカ1をマイナス30℃以下で急激に冷凍し、所定時間(例えば24時間~72時間)の寄生虫除去を兼ねた冷凍処理を経るホタルイカの保存方法である。
尚、調理方法に応じて目の存在が食感及び風味に支障となる場合には、水洗い工程又は整列工程前にホタルイカ1の個体から目を除去する目取り工程を経ることが望ましい。
【0013】
この例におけるパウチ3は、耐水性を備え、且つ電子レンジによる加熱に耐え得る透明な素材であることが求められる。
具体的には、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等が好ましい。
【0014】
この例における吸水シート2は、冷凍する前にホタルイカ1に付着している余分な水分や個体から流れ出たエキスを吸収し、しかも、乾燥させることなく、ホタルイカ1の個体の含水量を冷凍工程、及び保存後の調理工程に向けて適切な量に維持する。
かかる機能に鑑み、吸水シート2は、並べられた全てのホタルイカの占有領域以上の広さを備えた前記パウチ3と同様の素材からなる不織布や織布などであって、並べられたホタルイカ表面の水分、及び前記冷凍工程前に当該ホタルイカから漏れ出る液体をその場でちょうど吸収し、且つ電子レンジによる調理時に余分とならない程度の吸収量となる厚み及び面積に設定されている。
【0015】
上記の如く真空包装し、マイナス30℃以下で所定時間冷凍されたホタルイカを内包したパウチ(以下「冷凍パウチ」という)は、一般的な冷凍温度の業務用又は家庭用の冷蔵庫の冷凍室で保存する。
調理に際しては、冷凍パウチ単位で適宜解凍し所望の調理法を施せばよいが、当該冷凍パウチは、パウチに空気孔を開け電子レンジで500W下数分間加熱するだけで、他の調味料が添加されていない蒸しホタルイカを得ることができる。その際、吸水シート2に含浸された水分及びエキスのみで蒸されたホタルイカは、そのまま食してもよく、又は、更に調理を施してもよいが、いずれを選択したとしてもホタルイカの風味等を充分に感得できるものとなる。
【0016】
この様に、上記ホタルイカの保存方法によれば、冷凍パウチ毎に解凍し調理を行うことができるので、調理に供されない冷凍パウチ内のホタルイカ1の品質に影響を与えることはなく、長期にわたって均一に冷凍保存を行うことができる。
【符号の説明】
【0017】
1 ホタルイカ,2 吸水シート,3 パウチ,