(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】緩衝材供給装置
(51)【国際特許分類】
B31D 5/00 20170101AFI20240829BHJP
【FI】
B31D5/00
(21)【出願番号】P 2020087842
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】514192756
【氏名又は名称】株式会社ネオックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】島 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】安野 民雄
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-169449(JP,A)
【文献】特表平10-502586(JP,A)
【文献】特開2013-199325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びる多数のスリットが配設されたシート状の緩衝材を供給する緩衝材供給装置であって、
前記緩衝材
又は前記緩衝材となる基材を用意する供給準備部と、
前記緩衝材が有する前記スリットの長手方向を揃えた状態で前記緩衝材同士を重ねる緩衝材重ね部と、
前記緩衝材重ね部で重なり合った状態の前記緩衝材を前記スリットの長手方向と交差する方向に引っ張って前記スリットを開く引っ張り手段を備え、
前記引っ張り手段が、前記緩衝材重ね部で重ね合わされた緩衝材における前記スリットの長手方向と交差する方向の端部を掴むチャックを有する
緩衝材供給装置。
【請求項2】
前記スリットの長手方向と、前記供給準備部から前記緩衝材重ね部に向けて前記緩衝材を送る方向が同一である
請求項1に記載の緩衝材供給装置。
【請求項3】
前記スリットが前記緩衝材の縦方向に延びる縦スリットであるとともに、
前記緩衝材が縦方向に搬送されるものである
請求項1に記載の緩衝材供給装置。
【請求項4】
前記緩衝材重ね部が、前記供給準備部から送られる前記緩衝材を搬送方向に巻いて丸める丸め機構で構成された
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の緩衝材供給装置。
【請求項5】
前記供給準備部がロール状に巻かれた状態の前記緩衝材又は前記緩衝材となる基材を引き出し可能に保持するものであるとともに、
前記緩衝材重ね部の前段に前記緩衝材を切断する切断機構を備えた
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の緩衝材供給装置。
【請求項6】
前記チャックが上下に配設されるとともに、
上方に位置する上方チャックが下方に位置する下方チャックから水平方向に離れた位置まで相対移動可能に支持された
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の緩衝材供給装置。
【請求項7】
移動可能なワゴン上に搭載された
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の緩衝材供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、梱包や包装等に際して使用される緩衝材に関し、より詳しくは、シート状であり、引き伸ばしてから用いられる緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
前述のような緩衝材として、下記特許文献1のようなものがある。この緩衝材は、紙製のシートに一方向に伸びる多数のスリットを配設して形成されている。具体的には、スリット部と非スリット部を交互に一直線上に並べたスリット列が多数並設され、並設に際して一のスリット列におけるスリット部の中間位置と、その隣のスリット列における非スリット部の中間位置を並べている。
【0003】
このような緩衝材には現在、スリットの長手方向と紙の流れ目が同一である縦スリット紙と、スリットの長手方向と流れ目が直交する横スリット紙の2種類がある。
【0004】
これらいずれの緩衝材も、スリットを広げる方向に引っ張って伸ばして、スリットをおおよそハニカム状に形成してから使用する。引っ張る作業は手で行い、丸めるなどして緩衝材として梱包等に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、使用に供するために緩衝材を伸ばす作業は人の手で行うため、梱包等の自動化は行えなかった。
【0007】
そこで、この発明は、スリットが配設されてなる緩衝材について梱包の自動化に資するようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのための手段は、一方向に延びる多数のスリットが配設されたシート状の緩衝材を供給する緩衝材供給装置であって、前記緩衝材を用意する供給準備部と、前記緩衝材が有する前記スリットの長手方向を揃えた状態で前記緩衝材同士を重ねる緩衝材重ね部と、前記緩衝材重ね部で重なり合った状態の前記緩衝材を前記スリットの長手方向と交差する方向に引っ張って前記スリットを開く引っ張り手段を備えた緩衝材供給装置である。
【0009】
この構成では、供給準備部から送られた緩衝材を緩衝材重ね部において二重以上の多重構造にする。つまり、緩衝材が一枚の場合には巻回されたり折り曲げられたりして、また緩衝材が複数枚の場合には単に重ねられたり、重ねられた上に巻回されたり折り曲げられたりして、重なり合う部分のスリットの長手方向を同一方向に揃えた状態にする。この状態において引っ張り手段が重なり合った緩衝材をスリットの長手方向と直交する方向またはそれに対して斜めの方向に引っ張って、スリットを開いて緩衝材の重なり合う部分を立体形状に変形する。引き伸ばし時にスリットの法線方向の強度が補強され、また重なり合った緩衝材のスリットが開いて形成された部分同士は互いに係合する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、前述の緩衝材重ね部と引っ張り手段を備えたので、緩衝材をまとめて引き延ばしてスリットが開いた立体形状に形成できる。このため、スリットが配設されてなる緩衝材を使用に供する立体形状に全自動または半自動で変形することが可能であり、梱包等の自動化に資することができる。
【0011】
しかも、重なり合う部分における開いたスリット部分同士は互いに係合するので、立体形状を維持できる。
【0012】
また、緩衝材重ね部では緩衝材を多重にして纏まった状態にするので、纏まった形態のまま排出する場合には、梱包等に際して丸めるなどする作業を省くことができ、この点からも梱包等の自動化に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図20】他の例に係る緩衝材重ね部と引っ張り手段の概略構造を示す正面図。
【
図21】
図20に示した構造を採用した緩衝材供給装置の概略を示す側面図。
【
図25】他の例に係る緩衝材重ね部と引っ張り手段の概略構造を示す正面図。
【
図26】供給準備部から供給される緩衝材についての他の例に係る形態を示す斜視図。
【
図27】他の例に係る緩衝材の重ね態様を示す斜視図。
【
図28】他の例に係る緩衝材の重ね態様を示す斜視図。
【
図29】他の例に係る緩衝材重ね部と引っ張り手段の平面図。
【
図30】
図29に示した緩衝材重ね部と引っ張り手段の構成を示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0015】
図1に緩衝材供給装置11の斜視図を示す。この緩衝材供給装置11は、
図2に示したようにシート状の緩衝材12を、そのまま使用できるように立体形状に変形して供給する装置である。
【0016】
まず、緩衝材12について簡単に説明する。
【0017】
緩衝材12には適宜の素材のものを使用し得るが、ここでは、紙製のものを例にあげる。緩衝材12は、
図2の(a)に示したように、一方向に延びる多数のスリット21が千鳥状に配設されている。スリット21は厚さ方向に貫通する切り目である。
【0018】
緩衝材12のスリット21は一直線上に等間隔に並べられている。スリット21を有する仮想の直線をスリット列とすると、
図2の(a)に一部を拡大して示したようにスリット列は、所定長さのスリット21と、スリット21間の非スリット22で構成されていることになる。このようなスリット列は多数並設され、隣り合うスリット列のスリット21と非スリット22の中間位置が互いに並ぶように配置されている。
【0019】
このような緩衝材12は、スリット21を有するだけでは単なるシート状であるので緩衝作用はあまりない。しかし、スリット21の長手方向と直交する方向で引き伸ばしてスリット21を広げると、
図2の(b)に一部を拡大して示すように、おおよそハニカム形状の目23(開口)が形成される。この目23を形成する部分、つまりスリット21以外の部分は、緩衝材12の面方向に対して斜めに傾いて、緩衝作用を発揮する構造となる。
【0020】
緩衝材12がこのような構造であるため、緩衝材12は梱包等に際して引き伸ばして立体形状に変形させる必要がある。以下、立体形状に変形した緩衝材12を立体化済み緩衝材12aという。
【0021】
図2に例示した緩衝材12は、いわゆる縦スリットを有するものである。縦スリットとは、縦目であるか横目であるかにかかわりなく、スリット21の長手方向と流れ目(紙の流れ目)が同一であるものをいう。一方、流れ目と直交する方向にスリット21が延びる緩衝材12は横スリットである。
【0022】
この例では、縦スリットタイプの緩衝材12を例に説明する。
【0023】
緩衝材供給装置11は、
図1に示したように、ロール状に巻回された緩衝材12から筒状に丸めた状態の立体化済み緩衝材12aを得るように構成したものである。
【0024】
ロール状に巻回された緩衝材12は、引き出した方向に搬送して加工がなされるので、前述したように縦スリットタイプの緩衝材12は、
図3に示したように、巻回方向D1とスリット21の長手方向D2が同一である。
【0025】
緩衝材供給装置11は、移動可能なワゴン13上に搭載されており、緩衝材12を用意する供給準備部14と、緩衝材12同士を重ねる緩衝材重ね部15と、立体化済み緩衝材12aを排出する排出部16を有している。
【0026】
ワゴン13は、下端の四隅にストッパ付きのキャスタ31を備えており、上端面に搭載面32を設けている。搭載面32は、供給準備部14を有する部分よりも排出部16を有する部分のほうを低く設定して、高位置搭載面32aと低位置搭載面32bを有している。
【0027】
図4に緩衝材供給装置11の要部の平面図を、
図5にその側面図を示す。これらの図に示すように供給準備部14は、ロール状に巻回された緩衝材12を引き出し可能、換言すれば回転可能に保持する支持体41を有している。支持体41はロール状の緩衝材12の軸心方向を鉛直方向に立てて支持するものであり、水平方向に広がる支持板41aと、支持板41aの中心においてロール状の緩衝材12の芯を通す軸部41bを有している。支持板41aは高位置搭載面32aから上方に適宜高さ浮かせた位置に設けられ、軸部41bは鉛直上方を向いている。
【0028】
供給準備部14の後段には鉛直方向に延びるガイドロール42が設けられ、ガイドロール42の後段には、送り手段43が設けられている。送り手段43は鉛直方向に延びる送りロール43aと、送りロール43aに対して接離するニップロール43bで構成されている。
図5中、44は送りロール43aを回転させるモータからなる送り駆動部である。
【0029】
図1に示したように搭載面32の一部は箱状のカバー体45で覆われており、このカバー体45が設けられるのはガイドロール42より後段位置から後段側全体である。カバー体45はガイドロール42より後段に配設される機構を覆うものであり、側面における送り手段43に対応する部位に開閉扉45aを有している。なお、カバー体45におけるガイドロール42の搬送方向下流と排出部16に対応する部位は窓を有している。
【0030】
送り手段43の後段には、緩衝材12の先端を後段の緩衝材重ね部15に対して送る送りと緩衝材12の切断を行う処理部46が設けられている。処理部46は、鉛直方向に延びる略直方体形状の基台部47と、上記の送りを行うシフター48と、上記の切断を行う切断機構49を有している。
【0031】
基台部47の一つの側面は、緩衝材12の搬送路となる搬送面47aである。シフター48と切断機構49は、基台部47の搬送面47aに対向する位置に設けられている。
【0032】
基台部47とシフター48の構成は、
図6に示したとおりである。すなわち、基台部47の高さは、搬送される緩衝材12の上辺位置よりも高く設定され、搬送面47aにおける搬送方向下流側の端であって緩衝材12の上辺と下辺に対応する位置には、適宜深さの凹所47bが形成されている。
【0033】
これら凹所47bはシフター48の先端48aが入り込む部分であり、送る緩衝材12の先端部を掴めるようにするための構成である。シフター48は、基台部47の搬送面47aに対向する位置に設けられて鉛直方向に延びる支柱部51に対して、緩衝材12の搬送方向に往復動可能にロッド52を介して支持されている。シフター48を往復動させるシフター駆動部53はエアシリンダやボールねじ等の適宜手段で構成される。
【0034】
シフター48は枠状に形成され、搬送面47aに対向する先端部の上下両端に、前述した先端48aを突設している。これら先端48aには、前述した凹所47bに入り込む受け爪部54が内方に向け形成されている。受け爪部54の上面54a、つまり搬送面47aから離れる方向に向く面は、基台部47の搬送面47aと面一である。
【0035】
受け爪部54の上面54aに対向する部位には、受け爪部54に対して接離する可動爪55が設けられている。可動爪55はエアシリンダ等の適宜の掴み駆動部56で構成される。
【0036】
基台部47における搬送面47aの搬送方向の中間部には、切断機構49の切断刃57を受ける受け部47cが形成されている。受け部47cは、図示例のような溝で構成するほか、平坦に形成してもよい。
【0037】
受け部47cに対向する位置には切断のための切断刃57が適宜の切断駆動部58で切断動作可能に設けられている。切断刃57はトムソン刃や回転刃など適宜の刃で構成される。
【0038】
また、切断刃57を搬送方向で挟む両側位置には、切断時に緩衝材12を搬送面47aに押さえつける角柱状の押さえ部材59が配設されている。押さえ部材59は、鉛直方向に延びる支柱部61に対してロッド62を介して往復同可能に支持されている。押さえ部材59を往復動させる押さえ駆動部63は、エアシリンダ等の適宜手段で構成される。
【0039】
基台部47における搬送面47aの延長線上に緩衝材重ね部15は形成される。
【0040】
緩衝材重ね部15は、緩衝材12が有するスリット21の長手方向を揃えた状態で緩衝材12同士を重ねる部分である。重ね合わされる緩衝材12は一枚の場合もあれば複数枚の場合もある。前述のように緩衝材12にはロール状に巻かれたものを使用するので、重ね合わされる緩衝材12を複数枚とすることもできるが、この例では一枚としている。
【0041】
緩衝材重ね部15は、供給準備部14から送られる緩衝材12を搬送方向に巻いて丸める丸め機構15aで構成されており、その構成は次のとおりである。すなわち、基台部47の搬送面47aの延長線上に立設された支持フレーム71と、支持フレーム71に支持された巻取りロール72と、巻取りロール72に対して接離する押さえロール73と、巻取りロール72に巻き取られた緩衝材12を引き伸ばす引っ張り手段74が設けられている。
【0042】
支持フレーム71は、方形枠状に形成され、搭載面32のうち低位置搭載面32bの排出部16を有する側の端に設けられている。支持フレーム71は搬送方向と直交する方向に広がる形状であり、その立設範囲は、基台部47の搬送面47aの延長線上と排出部16にまたがる範囲である。支持フレーム71の高さは、
図5に示したように処理部46などよりも高い。
【0043】
支持フレーム71における搬送方向上流側の面には、縦に長い形状の下部支持板75と、横に長い形状の上部支持板76が設けられている。下部支持板75は、搬送面47aの延長線上のうち支持フレーム71における下部に設けられ、上部支持板76は、搬送面47aの延長線上から排出部16にかけて部分のうち支持フレーム71の上部に設けられている。
【0044】
下部支持板75と上部支持板76には、
図7に示したようにそれぞれ、移動台77,78を介して前述した巻取りロール72が支持される。下部支持板75の移動台77は、上下方向に延びる縦レール75a上に、縦レール75aの長手方向に沿って移動可能に支持される。上部支持板76の移動台78は、左右方向に延びる横レール76a上に、横レール76aの長手方向に沿って移動可能に支持される。
【0045】
上下の移動台77,78は、共に、縦レール75a又は横レール76a上を走行する基部77a,78aと、基部77a,78aの端から立設された支持部77b,78bで側面視L字状に形成されている。下方の移動台77は、基部77aの下端に支持部77bが形成され、上方の移動台78は、基部78aの上端に支持部78bが形成されており、上下の移動台77,78は相対向している。
【0046】
下方の移動台77は、エアシリンダやボールねじなど適宜のアクチュエータからなる上下駆動部81で、上方の移動台78は、同じく適宜のアクチュエータからなる左右駆動部82で移動可能である。上下駆動部81は、
図7に実線示した最上段位置P1と、それより下の2か所の下方位置、つまり引き伸ばし位置P2と退避位置P3(仮想線参照)に移動台77を移動させる。左右駆動部82は、搬送面47aの延長線上に対応する位置と排出部16に対応する位置に移動台78を移動させる。
【0047】
上下の移動台77,78の相対向面にはチャック83と、前述した巻取りロール72が順に配設されている。チャック83は複数本の爪部83aを有し、これらの爪部83aは内外に開閉可能である。爪部83aは、閉じたときに巻取りロール72の外周に位置して、巻取りロール72に巻かれた状態の緩衝材12を巻取りロール72との間で挟持するように構成されている。
【0048】
緩衝材12は幅方向を上下方向に向けて搬送されて、その姿勢のまま巻取りロール72に巻き取られるので、チャック83は、緩衝材12におけるスリット21の長手方向と直交する方向の端部を掴むことになる。
【0049】
上下に配設されたチャック83のうち、上方に位置するチャック83が上方チャック83bであり、下方に位置するチャック83が下方チャック83cである。これらのチャック83と、前述した上下駆動部81によって駆動する構成が前述した引っ張り手段74である。また上方チャック83bは、左右駆動部82によって下方チャック83cから水平方向に離れた位置まで相対移動可能に支持されることになる。
【0050】
巻取りロール72の中心軸は、チャック83のそれと同一であり、巻取りロール72は軸部72aと、軸部72aよりも大径のロール部72bを有している。軸部72aは、適宜のモータからなる巻取り駆動部84で回転可能であり、チャック83とは独立して回転する。
【0051】
巻取りロール72のロール部72bの外周面には、軸方向に延びる差し込み溝72cが形成されている。差し込み溝72cは、緩衝材12の先端縁が差し込まれる部分である。
【0052】
巻取りロール72には、前述した押さえロール73が付属されている。すなわち、左右方向に不動である下方の移動台77の巻取りロール72における搬送方向上流側の部位に、ロール部72bに対して接離する押さえロール73が設けられている。
【0053】
押さえロール73は、緩衝材12の幅よりも若干長く形成されており、ホルダ85の長手方向の先端に回転可能に保持されている。ホルダ85の長手方向の中間部は上下に延びる支軸85aに回転可能に支持されており、ホルダ85の長手方向の基部にはエアシリンダ等からなる接離駆動部86が接続されている。接離駆動部86の動作により、ホルダ85先端の押さえロール73が下方の巻取りロール72におけるロール部72bの外周面に接触する。押さえロール73が接触する位置は、差し込み溝72cを搬送方向上流に向けたロール部73bにおける差し込み溝72cよりも排出部16方向に寄った位置である。
【0054】
上方の移動台78が下方の移動台77から離れて位置する排出部16には、傾斜した排出板87が設けられている。排出板87は落下する立体化済み緩衝材12aを受ける部分である。
【0055】
また、支持フレーム71の上端における排出部16に対応する部位には、
図5に示したように分離手段88が設けられている。分離手段88は、上方の移動台78に備えられた巻取りロール72に付いている立体化済み緩衝材12aを落下させるためのものであり、伸縮可能なアーム88aと、アーム88aの先端に設けられて回転可能なブラシロール88bで構成されている。アーム88aを伸縮させ、ブラシロール88bを回転させる分離駆動部89は、エアシリンダとモータなどの適宜のアクチュエータで構成される。
【0056】
以上のような構成の緩衝材供給装置11における各駆動部、つまり送り駆動部44、シフター駆動部53、掴み駆動部56、切断駆動部58、押さえ駆動部63、上下駆動部81、左右駆動部82、チャック83、巻取り駆動部84、接離駆動部86及び分離駆動部89は、例えば緩衝材12の先端位置などを検出するために必要個所に備えられたセンサ(図示せず)とともに制御部(図示せず)に接続されて、カバー体45の外面に備えられた操作パネル17(
図1参照)からの入力信号に基づいて、あらかじめ記憶されたプログラムに従って次のように駆動制御される。
【0057】
まず、電源投入後、供給準備部14の緩衝材12の先端を搬送方向下流側に引き出してガイドロール42を通してから、
図8に示したように緩衝材12の先端を送り手段43に挟む。つまりニップロール43bを開いて緩衝材12の先端を通したのちニップロール43bを閉じる。
【0058】
このあと制御部は送り駆動部44を駆動して緩衝材12の先端を所定位置まで送る。すなわち、処理部46におけるシフター48の搬送方向下流側近傍に緩衝材12の先端を検知するセンサ(図示せず)が設けられており、このセンサで検知するまで送り駆動部44を駆動して、その後停止する。
【0059】
図8中、シフター48の搬送方向下流側に描いた仮想線は、緩衝材12の先端であり、このように、緩衝材12は、シフター48から搬送方向下流側に適宜長さ突出する位置まで搬送させる。
【0060】
つづいて、制御部はシフター48の掴み駆動部56を駆動して緩衝材12の先端部を掴み、この状態のままシフター駆動部53を駆動して、シフター48を緩衝材重ね部15に向けて押し出す。
【0061】
このとき、上下の巻取りロール72は、回転方向の初期位置として、差し込み溝72cを搬送方向上流に向けている。また、上下の移動台77,78は共に、初期位置として、処理部46の搬送面47aの延長上に位置しているともに、下方の移動台77にあっては、最上段位置P1に位置させている。
【0062】
シフター48の搬送方向下流への移動により、
図9に示したように緩衝材12の先端は巻取りロール72の差し込溝に入る。所定の差し込み状態が検知されると、制御部は接離駆動部86を駆動して押さえロール73を巻取りロール72に接触させる。
【0063】
この状態で制御部は巻取り駆動部84をあらかじめ設定された所定の回転数回転する駆動を行い、緩衝材12を所定長さ巻取りロール72に巻き取る。接離駆動部86は、巻取り駆動部84が一回転した程度の時に後退させて初期位置に戻す。押さえロール73が巻取りロール72のロール部72bに接触していることで、差し込み溝72cに差し込まれた緩衝材12の先端が不測に抜けることを防止する。
【0064】
巻取りロール72が所定回転することで、
図10に示したように、巻取りロール72には緩衝材12が巻かれて、多重となった緩衝材12が得られる。
【0065】
制御部は、いったん巻取り駆動部84を停止したのち、処理部46の切断機構49を駆動する。つまり、
図11に示したように、押さえ駆動部63を駆動して押さえ部材59で緩衝材12を押さえたうえで切断駆動部58を駆動して切断刃57による切断を行う。切断後、制御部は再び巻取り駆動部84を駆動して、緩衝材12における巻取りロール72に未だ巻き取られていない部分を巻取りロール72に巻き取る追加巻取りを行う。追加巻取りは、回転数や駆動時間で管理できる。
【0066】
このあと、制御部は
図12に示したように、チャック83を駆動して爪部83aを閉じて、筒状に巻かれた緩衝材12の上下両端を掴ませる。緩衝材12の上下両端は、爪部83aとロール部72bの間に挟まれることになる。
【0067】
つづいて制御部は、上下駆動部81を駆動して下方の移動台77を、
図13に示したように降下させる。降下位置は、引き伸ばし位置P2である。引き伸ばし量となる移動量は、緩衝材12の幅に応じてあらかじめ設定され、おおよそ緩衝材12の幅を1.5倍にする移動量である。
【0068】
このようにして緩衝材12が引き伸ばされると、
図14に示したように、平坦だった緩衝材12のスリット21は拡大して目23が形成される。これに伴ってスリット21以外の部位は、緩衝材12の面方向に対して斜めに起き上がり、重なり合った緩衝材12の相対向する部分同士が係合しあう。これによって、立体化済み緩衝材12aが元の平坦なシート状に戻ることが防止される。
【0069】
緩衝材12のスリット21を拡大するに際して、スリット21の長手方向と同一の方向においては縮もうとするが、緩衝材2は丸め機構15aによって筒状の丸められているうえに、掴まれる部分は両端部のみである。このため、緩衝材12は確実に引き伸ばされて、立体化済み緩衝材12aとなる。
【0070】
このあと、制御部は
図15に示したように、下方チャック83cの爪部83aを開いて緩衝材12の拘束を解き、続いて再び上下駆動部81を駆動して、下方の移動台77を退避位置P3まで更に降下させる。
【0071】
この状態を異なる向き、つまり搬送方向上流から下流にかけて見た状態を示したのが
図16である。
【0072】
得られた立体化済み緩衝材12aは、排出動作に移行される。
【0073】
すなわち制御部は、左右駆動部82を駆動して、
図17に示したように、上方の移動台78を排出部16に対応する位置に移動する。これにより、立体化済み緩衝材12aは排出板87の上方に吊り下がった状態で位置することになる。
【0074】
制御部は、分離駆動部89を駆動して、
図18に示したようにブラシロール88bを立体化済み緩衝材12aに接触させて回転し、立体化済み緩衝材12aを掻き落とす。立体化済み緩衝材12aは、上端部の一部が巻取りロール72の差し込み溝72cに差し込まれた状態であるが、スリット21が開いて目23を有する状態であるので、ブラシロール88bによる接触抵抗で容易に落下させることができる。
【0075】
排出された筒状の立体化済み緩衝材12aは、筒状のまま、またはその長手方向に折り曲げたり丸めたりするなどして、梱包や包装に用いられる。
【0076】
手作業で引き伸ばして立体化させる必要はないので、梱包等の作業が容易であり、簡易迅速に行え、半自動又は全自動の梱包の実現に資することができる。
【0077】
また、緩衝材12の重なり合う部分における開いたスリット部分同士は互いに係合して立体形状を維持するので、一度引き伸ばすだけで確実に立体化済み緩衝材12aを得ることができる。そのうえ、立体化済み緩衝材12aを排出部16から払い落とすような動作をしても、立体化済み緩衝材12aに緩衝材としての機能を維持させることができる。
【0078】
しかも、緩衝材12が重なり合っているので、引き伸ばし時にスリットの法線方向の強度が補強される。このため、一枚の緩衝材では容易に破れてしまう場合でも破断しないようにすることができ、引っ張り手段74の張力制御が容易である。
【0079】
さらに、緩衝材12は緩衝材重ね部15において重ね合わされて多重に纏まった状態で引き伸ばされて立体化され、纏まった形態のまま排出されるので、梱包等に際して丸め直すなどする作業を省くことができ、この点からも梱包等の自動化に有利である。
【0080】
特に、緩衝材重ね部15が緩衝材12を搬送方向に巻いて丸める丸め機構15aで構成しており、立体化済み緩衝材12aは円筒状に形成されるので、梱包に際してはそのまま、又は二つに折り曲げるなどの簡単な作業でよい。このため、立体化済み緩衝材12aの扱いは容易であり、これまでのエアクッションに代えて好適に使用できる。
【0081】
また、立体化に際して緩衝材12を引き出しながら自動で搬送するが、緩衝材12が縦スリットタイプであり、緩衝材12が縦方向に搬送されるものである。つまり緩衝材12のスリット21の長手方向と、供給準備部14から緩衝材重ね部15に向けて緩衝材12を送る方向が同一であるので、緩衝材12は搬送方向に強く引っ張ることが可能である。このため、迅速な作業ができ、高い生産性を得られる。
【0082】
しかも、供給準備部14はロール状に巻かれた状態の緩衝材12を引き出し可能に保持するものであって、緩衝材重ね部15の前段で緩衝材12を切断する構成であるので、引き出しながら順次切断して供給作業を行えるので、この点からも高い生産性を得られる。
【0083】
重ねられた緩衝材12の引き伸ばしを行う引っ張り手段74は、緩衝材12の端部を掴むチャック83を有する構成であるので、引っ張りは確実に行え、しかも巻取りロール72との共同で掴むので、引き伸ばしが十分に行える。
【0084】
そのチャック83は上下に配設され、上方チャック83bを下方チャック83cから水平方向に離れた位置まで相対移動可能に支持して、立体化済み緩衝材12aの排出に利用したので、装置の構成をコンパクトにまとめるとともに、高度な自動化を実現できる。
【0085】
加えて、緩衝材供給装置11は、移動可能なワゴン13上に搭載されているので、作業に応じて自由に移動させることができ、便利に使用できる。
【0086】
以下、その他の例について説明する。この説明において、前述の構成と同一の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0087】
図19は、他の例に係る供給準備部14の平面図である。この供給準備部14は、ロール状に巻かれた状態の、緩衝材12となる基材12bを引き出し可能に保持するものである。
【0088】
つまり、供給準備部14には、スリット21が形成される前のロール状に巻かれた基材12bが回転可能に保持されている。
【0089】
このため、送り手段43の後段に、スリット形成刃からなるスリット形成手段18が設けられている。
【0090】
図20は、緩衝材重ね部15(丸め機構15a)の引っ張り手段74の他の例の概略構造を示している。
【0091】
前述例の引っ張り手段74が緩衝材12の片方を引っ張って伸ばす片伸ばしであるのに対して、
図20の引っ張り手段74は緩衝材12の両端を引っ張って伸ばす両伸ばし構造である。両伸ばし構造であるので、丸め機構15aの巻取りロール72は、左右方向に軸を有する形態にするのが好ましい。
【0092】
巻取りロール72は左右一対有し、それぞれ左右に一対立設された立設板91に同期して回転可能に支持されている。巻取りロール72の軸部72aにはロール部72bが軸部72aとは相対回転不可のまま軸部72aの長手方向に進退可能に設けられ、ロール部72bは軸部72aの先端方向に向けてばね72dによって付勢されている。
【0093】
立設板91の内側には、巻取りロール72に対応して一対の移動台92が設けられている。移動台92は巻取りロール72の軸部72aの長手方向に沿って移動可能である。
【0094】
移動台92にはチャック83が設けられており、移動台92は、軸部72aの先端側に位置したロール部72bの外周に爪部83aを位置させる前進位置と、後退して緩衝材12を必要長さ引き伸ばす後退位置との間を移動する移動機構94が接続されている。移動機構94は、ラック94aとピニオン94bで構成でき、ピニオン94bは適宜のモータからなる拡縮駆動部94cで回転される。
【0095】
図21に、
図20に示した緩衝材重ね部15(丸め機構15a)を含めた緩衝材供給装置11の要部の側面図を示す。この図に示すように、供給準備部14の後段に、送り手段43と、処理部46を配設し、その後段に緩衝材重ね部15(丸め機構15a)を備えることは前述と同様である。供給準備部14におけるロール状に巻回された緩衝材12の軸方向は、丸め機構15aの軸方向と同じ左右方向に設定されている。
【0096】
このような構成の緩衝材重ね部15では、供給準備部14から送り手段43等を通って緩衝材重ね部15に搬送された緩衝材12は、
図22に示したように巻取りロール72に所定長さ巻き取られ、拡縮駆動部94cとチャック83の駆動により両端部が掴まれる。つづいて、制御部は拡縮駆動部94cを駆動して移動台92を後退位置に後退させる。これによって、
図23に示したように、緩衝材12の両端部はチャック83及びロール部72bと一緒に後退し、緩衝材12が引き伸ばされる。
【0097】
このあと、制御部がチャック83を駆動して爪部83aを開放させると、ロール部72bは付勢力によって前進位置に戻り、
図24に示したように緩衝材12の両端部の拘束は解除される。
【0098】
拘束が解除された緩衝材12、つまり立体化済み緩衝材12aは、機械的に又は人手によって、緩衝材重ね部15から排出される。
【0099】
図25は、
図20と同じく両伸ばしを行う緩衝材重ね部15の他の例を示している。
【0100】
この緩衝材重ね部15の引っ張り手段74は、一軸で位置決めと直線運動と回転運動が行えるボールねじスプライン95を用いて構成されている。
【0101】
この構成では、基本的に
図20の例と同じ動作がなされるが、スプライン軸95a上のロール部72bは、チャック83と共に後退位置まで後退する際に直線運動によって後退する。なお、スプライン軸95aが存在するため、丸められた立体化済み緩衝材12aは一旦展開して排出される。
【0102】
図26は、供給準備部14から供給される緩衝材12の他の形態を示している。すなわち、前述の例では、一枚の緩衝材12をそのまま、つまり一重の状態で送り出して緩衝材重ね部15で重ね合わせて多重にしていた。これに対して
図26の例のように、緩衝材重ね部15に送られる前段においても重ね合わせを行ってもよい。
【0103】
図26の例では、長手方向に沿って折るセーラー折りをする構成を示している。つまり三角板19を緩衝材12に当てて、緩衝材12をその幅方向中間位置で折り、幅方向に二つ折りにする。三角板19の後段に一対の挟みローラ19aが備えられており、挟みローラ19aを通過すると折り曲げが完了する。このようなセーラー折りは、
図26のような一回ではなく、2回以上してもよい。
【0104】
セーラー折りした後の緩衝材12は、前述と同様に緩衝材重ね部15に送られて、立体化済み緩衝材12aとなる。
【0105】
以上の例では、緩衝材重ね部15が丸め機構15aである構成を示したが、緩衝材重ね部15は緩衝材12を折って重ねるものであっても、定尺の緩衝材12を複数重ねるものであってもよい。
【0106】
図27は、長尺の緩衝材12を九十九折り状に重ねる例を示しているが、定尺の緩衝材12を折ってもよい。
図28は、定尺の緩衝材12を複数枚重ねた例を示している。いずれの場合も、緩衝材12が有するスリット21の長手方向が揃えられた状態で緩衝材12同士が重なっている。
【0107】
これらのような緩衝材重ね部15を有する緩衝材供給装置11では、
図29、
図30に示したような引っ張り手段74を用いることができる。
【0108】
すなわち、重ねられた緩衝材12が載置されるステージ96における緩衝材12のスリット21の長手方向と交差する方向、この例では直交する方向の両端部に対応する部分に、複数のチャック83が備えられている。チャック83の爪部83aは上下に対向させて配設されている。
【0109】
複数のチャック83は、支持ロッド97上に一直線に並べて支持されており、中間位置のチャック83を除くその他のチャック83は支持ロッド97上を支持ロッド97の長手方向に沿って摺動可能である。チャック83間にはばね97aが備えられて、それぞれ支持ロッド97の長手方向両側に付勢されている。
【0110】
また左右一対の支持ロッド97は、エアシリンダやボールねじなど適宜のアクチュエータで構成されるけん引駆動部98によって、緩衝材12の両端部を掴む前進位置と、緩衝材12を引き伸ばす後退位置とに移動可能である。
【0111】
図示は省略するが、緩衝材12のスリット21の長手方向は、緩衝材12の縦横に対して傾斜した斜めであってもよい。
【0112】
また、緩衝材12は紙のほか、例えば合成樹脂や発泡樹脂、金属箔などであってもよい。
【符号の説明】
【0113】
11…緩衝材供給装置
12…緩衝材
12a…立体化済み緩衝材
12b…基材
13…ワゴン
14…供給準備部
15…緩衝材重ね部
15a…丸め機構
21…スリット
49…切断機構
74…引っ張り手段
83…チャック
83b…上方チャック
83c…下方チャック