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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】木杭ユニット
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/26 20060101AFI20240829BHJP
   F24F 3/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
E02D5/26
F24F3/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020179640
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070532
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】506011087
【氏名又は名称】株式会社セリタ建設
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】芹田 章博
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-205068(JP,A)
【文献】登録実用新案第3026080(JP,U)
【文献】特開2004-211389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/26
F24F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良に用いられる木杭を複数本束ねた木杭ユニットであって、
先端部分において前記木杭の長手方向に対して90度未満の角度で横断された複数の個別木杭を備え、当該個別木杭の長手方向で最長尺となる側面部分を中心に向けて複数の前記個別木杭が束ねられており、
少なくとも3本以上の前記個別木杭が、隣接する他の個別木杭に接触した状態で束ねられて中心部分に空隙領域を形成しており、当該空隙領域に中空の熱交換パイプがU字状に収納され、前記熱交換パイプの両端の開口部分が前記空隙領域の上部から露出した状態で配設されていることを特徴とする木杭ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の木杭ユニットにおいて、
前記個別木杭の長手方向で最長尺となる側面部分が平面状に加工されており、各前記個別木杭の平面を含む側面部分により前記空隙領域が形成されている木杭ユニット。
【請求項3】
地盤改良に用いられる木杭を複数本束ねた木杭ユニットであって、
先端部分において前記木杭の長手方向に対して90度未満の角度で横断された複数の個別木杭を備え、当該個別木杭の長手方向で最長尺となる側面部分を中心に向けて複数の前記個別木杭が束ねられており、
相互に接触して配置された複数の前記個別木杭の集合体における側面の外周に張着されて、前記個別木杭の集合体を一体的に拘束する拘束手段を備え、前記個別木杭の外側表面と前記拘束手段との間に生じる空隙領域に中空の熱交換パイプがU字状に収納され、前記熱交換パイプの両端の開口部分が前記空隙領域から露出した状態で配設されていることを特徴とする木杭ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良に用いられる木杭に関し、特に複数の木杭を束ねてユニット化した木杭ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良において用いられる杭基礎には、木杭、コンクリート杭、鋼杭などが使用される。その中でも含水量が多い軟弱地盤においては木杭の使用が適している場合が多い。木杭の場合は、十分な支持力を維持しつつ周辺の含水比を低下させることができる。また、他にも様々なメリットがあり、例えば、十分な水分がある場合は非常に長期間に亘って耐久力を維持することが可能であったり、工事の手間やコストを低減することが可能となる。さらに、二酸化炭素の排出量を抑制することも可能である。
【0003】
このような木杭を利用した技術が特許文献1に開示されている。特許文献1に示す技術は、排水手段を備えたカーボンストック用木杭を地盤に打設するカーボンストック方法であり、丸太の側面に排水溝を形成してなるものである。特に、特許文献1の図11及び図12には、複数の丸太を束ねて先端部分に円錐形のボトムキャップを取り付けた場合の構造が開示されている。
【0004】
一方、地盤改良における杭を用いて地熱エネルギーを有効的に利用する技術が特許文献2ないし4に開示されている。特許文献2に示す技術は、建物の室内を空調するためのヒートポンプの熱交換器を有するヒートポンプユニットと、地中に埋設された採熱杭と、熱交換器と採熱杭とを経由するように設けられた不凍液管と、不凍液管に満たされた不凍液と、不凍液管に不凍液を循環させるためのポンプを備え、循環により地盤と室内空気の熱との熱交換をする地熱利用型のヒートポンプシステムにおいて、ヒートポンプユニットを建物の床下空間に設置するものである。
【0005】
特許文献3に示す技術は、地熱交換器を構成する熱交換用パイプをあらかじめ杭にセットすることができ、翼付き鋼管杭の杭頭部を拡径することにより、水平力と鉛直力のバランスがとれた構造とすると共に、貫入性能もよいねじ込み式の地熱利用鋼管杭に関するものであり、先端部又はその近傍に翼が取付けられた下杭と、この下杭より大径で接合部材を介して下杭と一体に接合された上杭とからなり、回転力を与えることにより地中に埋設される拡頭式のねじ込み式鋼管杭を有し、上杭内に熱交換用パイプを設置したものである。
【0006】
特許文献4に示す技術は、地中に埋めた熱交換ユニットにより得られる地熱を利用して居住室を冷房又は暖房する地熱利用冷暖房システムにおいて、熱交換ユニットは、建物の基礎から地中に打ち込まれた中空鋼管杭内に、両端が前記中空鋼管杭から上方に突出する折返管路を挿入し、前記中空鋼管杭と折返管路との間にアルカリ性水溶液からなる熱交換液を貯留して構成し、折返管路の一端を居住室への空気の供給管路と結び、前記折返管路の他端を居住室からの空気の回収管路と結んだものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-205068号公報
【文献】特開2012-47360号公報
【文献】特開2005-188865号公報
【文献】特開2013-148277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には複数の木杭を束ねてユニット化している構成が開示されているが、先端部分が円錐状に加工されているため、一本一本の個別の木杭の加工に手間が掛かってしまうという課題を有する。
【0009】
特許文献2に示す技術は、採熱杭と不凍液管を用いて地熱を利用する技術であるが、地中に埋設するに当たっては採熱杭と不凍液管をどのような形状、構成にするかが極めて重要である。すなわち、採熱杭の杭としての基本的な機能を保持しつつ、不凍液管による熱の移動をどのように配置構成して効果的に地熱を利用できるかが極めて重要であり、特許文献2にはそれらの具体的な構成が開示されていない。
【0010】
特許文献3、4には、地中に埋設する鋼管と熱交換用の管の構成が具体的に開示されているものの、いずれも鋼管を用いるものであることから工事が大掛かりになると共にコストも非常に大きなものになってしまうという課題を有する。また、いずれの文献に係る技術においても共通して鋼管を細かく加工する必要があり、作業に手間が掛かってしまうという課題を有する。
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、簡単な加工で複数の木杭をユニット化して支持力を高めると共に、ユニット化した木杭を利用して効果的に地熱エネルギーを取得する木杭ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る木杭ユニットは、地盤改良に用いられる木杭を複数本束ねた木杭ユニットであって、先端部分において前記木杭の長手方向に対して90度未満の角度で横断された複数の個別木杭を備え、当該個別木杭の長手方向で最長尺となる側面部分を中心に向けて複数の前記個別木杭が束ねられているものである。
【0013】
このように、本発明に係る木杭ユニットにおいては、地盤改良に用いられる木杭を複数本束ねた木杭ユニットであり、先端部分において前記木杭の長手方向に対して90度未満の角度で横断された複数の個別木杭を備え、当該個別木杭の長手方向で最長尺となる側面部分を中心に向けて複数の前記個別木杭が束ねられているため、個別木杭の加工が先端部分を所定角度で一方向に横断するのみに簡素化されると共に、複数本に束ねられた木杭により地上の建築物を強固に支持することができるという効果を奏する。
【0014】
特に、複数の個別木杭が束ねられることで相互間に支持力が生じ、地中への埋設時に偏心性を抑え、方向を安定させて直進することが可能となり、木杭ユニットを正確な位置に正確な姿勢で埋設することが可能になるという効果を奏する。また、複数の個別木杭が束ねられることで、個別木杭同士が接触している箇所やその周辺の領域において側面形状が水平方向に対して平坦ではなく凹凸を有する形状となるため、水平方向における土砂との摩擦力を大きくし、地上の構造物を安定して支持することが可能になるという効果を奏する。さらに、複数の個別木杭が束ねられた状態にも関わらず先端の中心部分に向かってテーパ状になっているため、側方への土圧増加によりスムーズに地中に埋設することが可能になる。
【0015】
本発明に係る木杭ユニットは必要に応じて、少なくとも3本以上の前記個別木杭が、隣接する他の個別木杭に接触した状態で束ねられて中心部分に空隙領域を形成しており、当該空隙領域に中空の熱交換パイプがU字状に収納され、前記熱交換パイプの両端の開口部分が前記空隙領域の上部から露出した状態で配設されているものである。
【0016】
このように、本発明に係る木杭ユニットにおいては、少なくとも3本以上の個別木杭が、隣接する他の個別木杭に接触した状態で束ねられて中心部分に空隙領域を形成しており、当該空隙領域に中空の熱交換パイプがU字状に収納され、前記熱交換パイプの両端の開口部分が前記空隙領域の上部から露出した状態で配設されているため、3本以上の個別木杭が拘束された場合に生じる中心部分の空間を利用して、非常に簡易的な構造で地熱エネルギーを取り出すことができるという効果を奏する。
【0017】
本発明に係る木杭ユニットは必要に応じて、個別木杭の長手方向で最長尺となる側面部分が平面状に加工されており、各個別木杭の平面を含む側面部分により空隙領域が形成されているものである。
【0018】
このように、本発明に係る木杭ユニットにおいては、個別木杭の長手方向で最長尺となる側面部分が平面状に加工されており、各個別木杭の平面を含む側面部分により空隙領域が形成されているため、空隙領域の容積を拡大させて太い熱交換パイプで効率よく熱交換を行うことが可能になるという効果を奏する。
【0019】
本発明に係る木杭ユニットは必要に応じて、相互に接触して配置された複数の前記個別木杭の集合体における側面の外周に張着されて、前記個別木杭の集合体を一体的に拘束する拘束手段を備え、前記個別木杭の外側表面と前記拘束手段との間に生じる空隙領域に中空の熱交換パイプがU字状に収納され、前記熱交換パイプの両端の開口部分が前記空隙領域から露出した状態で配設されているものである。
【0020】
このように、本発明に係る木杭ユニットにおいては、相互に接触して配置された複数の前記個別木杭の集合体における側面の外周に張着されて、前記個別木杭の集合体を一体的に拘束する拘束手段を備え、前記個別木杭の外側表面と前記拘束手段との間に生じる空隙領域に中空の熱交換パイプがU字状に収納され、前記熱交換パイプの両端の開口部分が前記空隙領域から露出した状態で配設されているため、個別木杭の外側表面と拘束手段との間に生じる空間を利用して、非常に簡易的な構造で地熱エネルギーを取り出すことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施形態に係る木杭ユニットを構成する個別の木杭の構造を示す六面図である。
図2】第1の実施形態に係る木杭ユニットの全体斜視図である。
図3】第1の実施形態に係る木杭ユニットの構造を示す六面図である。
図4】第2の実施形態に係る木杭ユニットの全体斜視図である。
図5】第2の実施形態に係る木杭ユニットの断面図である。
図6】第2の実施形態に係る木杭ユニットの上面図である。
図7】第2の実施形態に係る木杭ユニットにおいて先端にキャップを嵌めた場合の構造を示す図である。
図8】第3の実施形態に係る木杭ユニットの上面図である。
図9】その他の実施形態に係る木杭ユニットの全体斜視図である。
図10】その他の実施形態に係る木杭ユニットの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る木杭ユニットについて、図1ないし図3を用いて説明する。本実施形態に係る木杭ユニットは、地盤改良に用いられる木杭を複数本束ねてユニットにすることで地上の建築物を強固に支持すると共に、木杭を束ねることで生じる空隙を利用して地熱エネルギーを取得するものである。
【0023】
木杭は森林伐採による環境破壊などが進んだことが原因で戦後長い間あまり使用されなかった。しかしながら、それより以前には多くの木杭が利用されており長期間に亘って腐食することなく当時の状態のまま建築物を支持している。そのようなことから、近年木杭を利用した地盤改良が行われている。地盤改良に用いられる木杭は、地下水の水位よりも深い位置まで埋設した場合は、木杭が常時水中にある状態となるため何も処理しなくても腐食が進むことがない。地下水の水位よりも浅い位置までしか埋設しない場合は、防腐処理や防蟻処理を行うことで長期間状態を維持することが可能となっている。
【0024】
図1は、本実施形態に係る木杭ユニットを構成する個別の木杭(以下、個別木杭という)の構造を示す六面図である。図1(A)が個別木杭の上面図、図1(B)が個別木杭の下面図、図1(C)が個別木杭の正面図、図1(D)が個別木杭の背面図、図1(E)が個別木杭の右側面図、図1(F)が個別木杭の左側面図である。図1に示すように、個別木材2の先端部分は、長手方向Aに対して90度未満の所定角度αで横断されている。この横断は、個別木杭2の一方の側面部分S1から対向する他方の側面部分S2に向かって所定角度αで単一方向に切断されたものである。より具体的には、例えば図1(C)を用いて説明すると、一方の側面部分S1から長手方向Aに対して垂直で、且つ、対向する下方の側面部分S2に向かって刃を入れ、そのまま左右の水平を維持した状態で単一方向に刃を移動して切断する。
【0025】
このような形状は、従来行われていた先端を円錐状に形成する場合に比べて極めて簡単に形成することが可能となり、作業工程を簡素化することができる。なお、図1において個別木杭2は皮を剥いだ状態を示している。
【0026】
図2は、本実施形態に係る木杭ユニットの全体斜視図、図3は、本実施形態に係る木杭ユニットの構造を示す六面図である。図2及び図3に示す木杭ユニット1は、図1に示す個別木杭2(2a,2b,2c)を3本まとめて拘束手段3で拘束したものである。このとき、個別木杭2の長手方向の寸法が最長尺となる側面部分S2をそれぞれ中心に向けた状態で拘束する。つまり、図2及び図3に示すように、3本の個別木杭2a,2b,2cが集合することで木杭ユニット1の先端中心部分が先鋭となり、地盤に木杭ユニット1を打ち込みやすくなる。また、個別木杭2a,2b,2cの3本分の支持力で地上の建築物を支持することができるため、木杭の埋設箇所を低減して処理の効率化を図ることができる。
【0027】
なお、個別木杭2の拘束本数は使用環境に応じて2本以上であればよい。いずれの本数の場合であっても個別木杭2の形状は同一とし、最長寸法となる側面部分S2を中心に向けて拘束する。例えば2本の場合は、側面部分S2同士が接触するようにそれぞれの個別木杭2が配置されて拘束される。
【0028】
このように、本実施形態に係る木杭ユニット1においては、先端部分において木杭の長手方向に対して90度未満の角度で横断された複数の個別木杭2を備え、当該個別木杭2の長手方向で最長尺となる側面部分S2を中心に向けて複数の個別木杭2が束ねられているため、個別木杭2の加工が先端部分を所定角度で一方向に切断するのみに簡素化されると共に、複数本に束ねられた個別木杭2により地上の建築物を強固に支持することができる。
【0029】
特に、複数の個別木杭2が束ねられることで相互間に支持力が生じ、地中への埋設時に偏心性を抑え、方向を安定させて直進することが可能となり、木杭ユニットを正確な位置に正確な姿勢で埋設することが可能になる。また、複数の個別木杭2が束ねられることで、個別木杭2同士が接触している箇所やその周辺の領域において側面形状が水平方向に対して平坦ではなく凹凸を有する形状となるため、水平方向における土砂との摩擦力を大きくし、地上の構造物を安定して支持することが可能になる。さらに、複数の個別木杭2が束ねられた状態にも関わらず先端の中心部分に向かってテーパ状になっているため、側方への土圧増加によりスムーズに地中に埋設することが可能になる。
【0030】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る木杭ユニットについて、図4ないし図6を用いて説明する。本実施形態に係る木杭ユニット1は、前記第1の実施形態に係る木杭ユニット1の機能を拡張したものであり、複数の個別木杭2が拘束されることで生じる空間を利用して木杭ユニット1が埋設された地中の地熱エネルギーを取り出すものである。なお、本実施形態においては複数の個別木杭2を拘束することで空間を生じさせる必要があるため、少なくとも3本以上の個別木杭2(2a,2b,2c)の集合体を拘束するものとする。また、本実施形態において前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0031】
図4は、本実施形態に係る木杭ユニットの全体斜視図、図5は、本実施形態に係る木杭ユニットのB-B断面図、図6は、本実施形態に係る木杭ユニット1の上面図である。図に示すように、3本の個別木杭2(2a,2b,2c)が、隣接する他の個別木杭2と相互に接触した状態で拘束されることで、木杭ユニット1の中心部分には空隙領域Gが形成される。木杭ユニット1の先端側の空隙領域Gには、当該木杭ユニット1を打撃して地中に埋設する際に泥などが侵入しないようにキャップ4が取り付けられている。
【0032】
キャップ4の上側の空隙領域GにはU字状に形成された熱交換パイプ5が配設されており、その両端部5a,5bは地上の熱交換システム(例えば、ヒートポンプ等)に接続できるようになっている。なお、ヒートポンプ等の仕組みについては一般的に知られたものであるため説明は省略する。熱交換パイプ5は、ステンレスや銅などの熱伝導率が高い素材で構成されており、導管内部には不凍液が充填されポンプなどにより循環している。
【0033】
例えば、夏場の暑い時期であれば地上の熱を不凍液を介して地中に運び、そこで比較的温度が低い地中に放熱する。逆に冬場の寒い時期であれば比較的温度が高い地中の熱を不凍液を介して地上に運び、そこで放熱することで温めることができる。つまり、一年を通して比較的安定した気温を維持することが可能となり、植物栽培などの環境において非常に有効なシステムとなる。
【0034】
木杭ユニット1が地下水の水位よりも深い位置に埋設される場合は、個別木杭2(2a,2b,2c)同士の隙間から水分が侵入することで熱交換パイプ5を地中の水中に保持した状態となり、熱交換効率を格段に向上させることが可能となる。一方、木杭ユニット1が地下水の水位よりも浅い位置に埋設され、空隙領域Gに水が浸水しない場合は、例えば底面が閉口している中空状の細長い管(以下、投入管という)に水を貯留し、その投入管にU字状の熱交換パイプ5を両端部分が上方に露出するように挿通した状態で投入管と共に空隙領域G内に設置することで、熱交換パイプ5を地中の水中に保持した状態と同様の状態を維持することができる。なお、この場合、投入管に極小の孔を穿けておき長時間を掛けて少しずつ水分が入れ替わるようにしてもよい。入れ替え用の水分は雨水を利用してもよいし、予め地上で貯留した水を利用してもよいし、水道管からの供給を受けてもよい。
【0035】
なお、上記においては熱交換パイプ5に不凍液を循環させることで熱交換を行う構成としたが、例えば、複数の木杭ユニット1を経由するように熱交換パイプ5を配設し、熱交換パイプ5を中空の状態にして一旦側の開口部から外気を取り入れ、複数の木杭ユニット1を経由しながら熱交換を行い、他端側の開口部から建築物の内部に放出することで空気循環を行いながら温度調整を行うことも可能となる。
【0036】
また、上記において木杭ユニット1の先端側の空隙領域Gにキャップ4を取り付ける構造としたが、キャップ4を使用することなく、空隙領域Gに予め充填材を充填した状態で打撃して埋設し、埋設後に充填材を地上から取り除くことで空隙領域Gに泥などが侵入するのを防止するようにしてもよい。このとき、熱交換パイプ5は、木杭ユニット1が埋設された最深部まで挿入してもよいし、途中位置まで挿入するようにしてもよい。途中位置まで挿入する場合は、熱交換パイプ5を係止するために敢えて充填材を空隙領域G内に残すようにしてもよいし、熱交換パイプ5をフックのようなもので引っ掛けて係止させてもよい。
【0037】
さらに、図7に示すように、先端部分にキャップ4を嵌め込むことで、埋設時に空隙領域Gに泥などが侵入するのを防止するようにしてもよい。
【0038】
このように、本実施形態に係る木杭ユニット1においては、少なくとも3本以上の個別木杭2が、隣接する他の個別木杭2に接触した状態で束ねられて中心部分に空隙領域Gを形成しており、当該空隙領域Gに中空の熱交換パイプ5がU字状に収納され、熱交換パイプ5の両端の開口部分が空隙領域Gから露出した状態で配設されているため、3本以上の個別木杭2が拘束された場合に生じる中心部分の空間を利用して、非常に簡易的な構造で地熱エネルギーを取り出すことができる。
【0039】
(本発明の第3の実施形態)
本実施形態に係る木杭ユニットについて、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態に係る木杭ユニット1の上面図である。ここでは、個別木杭2の皮を剥ぐときに一側面のみを平面状に加工しておく。すなわち、図8において、一か所のみを弦Hの部分で長手方向に裁断することで個別木杭2の側面部分に平面となる領域を形成しておく。
【0040】
側面部分に上記平面が形成された状態で個別木杭2の先端部分を長手方向Aに対して所定角度αで横断する。その際に平面加工されている側面が上述した他方の側面部分S2となるように切断する。こうすることで、個別木杭2の長手方向で最長尺となる側面部分が平面状に加工されていることとなり、各個別木杭2の平面を中心にユニット化することで、広い空隙領域Gを形成することができる。空隙領域Gが広くなることで熱交換パイプ5を増やしたり、太くしたり、長くして熱交換効率を上げることが可能となる。
【0041】
なお、側面部分に平面加工する際に平面の領域が大きくなるほど個別木杭2の先端部分の先鋭さがなくなるため(平面のエッジに合わせて先端が平になるため)、先鋭さをある程度維持できるような平面領域に加工することが望ましい。
【0042】
また、上記では個別木杭2の皮を剥ぐ際に平面加工を行うように説明したが、平面加工を行うタイミングは特に限定されず、先端部分を先鋭に加工した後でもよい。
【0043】
このように、本実施形態に係る木杭ユニット1においては、個別木杭2の長手方向で最長尺となる側面部分S2が平面状に加工されており、各個別木杭2の平面を含む側面部分により空隙領域Gが形成されているため、空隙領域の容積を拡大させて太い熱交換パイプ5や長い熱交換パイプ5でより効率よく熱交換を行うことが可能になる。
【0044】
(本発明のその他の実施形態)
本実施形態に係る木杭ユニットについて、図9及び図10を用いて説明する。図9は、本実施形態に係る木杭ユニットの全体斜視図、図10は、本実施形態に係る木杭ユニットの上面図である。ここでは、2本の個別木杭2(2d,2e)を拘束して木杭ユニット1を形成している。
【0045】
図9及び図10に示すように、本実施形態に係る木杭ユニット1は、2本の個別木杭2(2d,2e)の集合体に対してその側面の外周にシート状の拘束手段3を張着して一体化している。このとき、それぞれの個別木杭2の側面に沿って個別に拘束手段3を張着するのではなく、2本の個別木杭2(2d,2e)を一体化した状態でその最外周に拘束手段3を張着することで、個別木杭2の外側表面と拘束手段3のシートとの間に空隙領域Fを形成する。
【0046】
空隙領域Fには上述したような中空の熱交換パイプ5がU字状に収納され、熱交換パイプ5の両端の開口部分は空隙領域Fから露出した状態で配設されている。このような構造にすることで、2本の個別木杭2で2箇所の空隙領域Fを形成することができ、その分熱交換パイプ5を増やすことができる。仮に3本の個別木杭2(2a,2b,2c)を本実施形態の構造にした場合は、2本の個別木杭2の組み合わせ(2a及び2b,2a及び2c,2b及び2cの3つの組み合わせ)と拘束手段3とで形成される3つの空隙(上方から見た場合に略三角形状に形成される拘束手段3の各3辺で形成される空隙)に加え、中心部分の空隙領域Gを合わせた合計4つの空隙領域を形成することが可能となり、さらに熱交換効率を向上させることができる。
【0047】
このように、本実施形態に係る木杭ユニット1においては、相互に接触して配置された複数の個別木杭2の集合体における側面の外周に張着されて、個別木杭2の集合体を一体的に拘束する拘束手段3を備え、個別木杭2の外側表面と拘束手段3との間に生じる空隙領域Fに中空の熱交換パイプ5がU字状に収納され、熱交換パイプ5の両端の開口部分が空隙領域Fから露出した状態で配設されているため、個別木杭2の外側表面と拘束手段3との間に生じる空隙領域を利用して、非常に簡易的な構造で効率よく地熱エネルギーを取り出すことができる。
【符号の説明】
【0048】
1 木杭ユニット
2(2a,2b,2c,2d,2e) 個別木杭
3 拘束手段
4 キャップ
5 熱交換パイプ
F,G 空隙領域
S1,S2 側面部分

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10