(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】吊下装置
(51)【国際特許分類】
B66C 1/38 20060101AFI20240829BHJP
B64D 1/22 20060101ALI20240829BHJP
B66C 1/36 20060101ALI20240829BHJP
F16D 41/12 20060101ALI20240829BHJP
F16H 25/12 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B66C1/38
B64D1/22
B66C1/36 D
F16D41/12 B
F16H25/12 D
(21)【出願番号】P 2020184919
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-11-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年9月29日~令和2年9月30日にJapan Drone2020にて展示
(73)【特許権者】
【識別番号】000137878
【氏名又は名称】株式会社ミヤマエ
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【氏名又は名称】青木 覚史
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】近内 浩行
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-018929(JP,A)
【文献】特開昭61-257889(JP,A)
【文献】特開2017-218262(JP,A)
【文献】実公昭47-018678(JP,Y1)
【文献】国際公開第2014/206859(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00- 3/20
B64D 1/22
F16D 41/12
F16H 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
先端が前記ケースに進入して荷物を拘束する拘束位置、及び先端が前記ケースから退出して荷物をリリースするリリース位置に回動可能に前記ケースに支持されたフックと、
前記フックを前記拘束位置にロックするロック状態、及び前記フックの前記拘束位置から前記リリース位置への回動を許容する解除状態に状態変化可能に前記ケースに支持されたロック部材と、
上端位置及び下端位置の間を上下方向に往復動可能に前記ケースに支持され、荷重が負荷されて上下方向の一方に移動し、荷重の負荷が解除されて上下方向の他方に移動する昇降部材と、
前記ケース内に収容され、前記昇降部材がN(Nは2以上の整数)回の往復動をすることによって、前記ロック部材をロック状態から前記解除状態に状態変化させる解除機構とを備えることを特徴とする吊下装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吊下装置において、
前記ロック部材は、前記フックに設けられた凹部に進入することによって前記ロック状態となり、前記凹部から退出することによって前記解除状態となる突起を有し、
前記解除機構は、
前記ロック部材の前記突起が設けられた側に当接するカム面を有し、前記ケースに回転可能に支持されたカムホイールと、
前記昇降部材の下方への移動を前記カムホイールを正回転させる向きに伝達し、前記昇降部材の上方への移動を前記カムホイールに伝達しない動力伝達部とを有し、
前記カム面は、前記昇降部材がN回往復動するたびに前記ロック部材に当接して、前記突起を前記凹部から退出させる隆起部を有することを特徴とする吊下装置。
【請求項3】
請求項2に記載の吊下装置において、
前記動力伝達部は、
前記昇降部材に設けられた直線ギヤに噛合されて、荷重の負荷が解除されて前記昇降部材が下方へ移動するのに伴って正回転し、荷重が負荷されて前記昇降部材が上方へ移動するのに伴って逆回転する回転ギヤと、
前記ケースに回転可能に支持されて、前記回転ギヤと一体回転する回転軸と、
前記カムホイール及び前記回転軸の間に配置され、前記回転軸の正回転を前記カムホイールに伝達し、前記回転軸の逆回転を前記カムホイールに伝達しないワンウェイクラッチと、
前記カムホイールの外周面に圧接されて、前記カムホイールの正回転を許容し、前記カムホイールの逆回転を阻止するラチェット爪とを有することを特徴とする吊下装置。
【請求項4】
請求項3に記載の吊下装置において、
前記フックを前記リリース位置に向けて付勢する第1付勢部材と、
前記突起を前記凹部に進入させる向きに前記ロック部材を付勢する第2付勢部材とをさらに備え、
前記隆起部は、前記昇降部材がN回目に下方に移動する過程において、
前記昇降部材が前記上端位置及び前記下端位置の間の中間位置に到達したときに前記ロック部材に当接して、前記突起を前記凹部から退出させ、
前記昇降部材が前記下端位置に到達したときに前記ロック部材を既に通過して、前記凹部に隣接する当接面に前記突起を当接させることを特徴とする吊下装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の吊下装置において、
前記フックは、
前記ケースに固定された支軸に回動可能に取り付けられたフック基端部と、
前記フック基端部に対して前記支軸と直交する向きに接離可能で、且つ前記フック基端部と共に回動するフック先端部と、
前記フック先端部を前記フック基端部に近接させる向きに付勢する第3付勢部材とを有し、
前記拘束位置の前記フック先端部は、
荷重が負荷されて前記フック基端部から離間することによって、前記ケースに係止されて前記リリース位置への回動を阻止し、
荷重の負荷が解除されて前記フック基端部に近接することによって、前記ケースとの係止が解除されて前記リリース位置への回動を許容することを特徴とする吊下装置。
【請求項6】
請求項5に記載の吊下装置において、
前記ケースは、前記フック基端部から離間した前記フック先端部に下側から当接して、前記フック先端部に負荷された荷重を支持する支持部を有することを特徴とする吊下装置。
【請求項7】
請求項2に記載の吊下装置において、
前記カムホイールは、前記カム面と反対側の面から突出し、回転中心から放射状に延びる複数の突条を有し、
前記動力伝達部は、荷重の負荷が解除されて前記昇降部材が上方に移動する過程で前記突条を乗り越え、荷重が負荷されて前記昇降部材が下方に移動する過程で前記突条に係合して前記カムホイールを所定の回転角だけ回転させる係合爪を有することを特徴とする吊下装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を吊下する吊下装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローンに救援物資を運搬させる「レスキュードローン」が研究されている。ここで、救援物資を必要とする現場にはドローンが着陸できるスペースがあるとは限らないので、ドローンが飛行した状態で救援物資をリリースする必要がある。また、飛行中のドローンから救援物資を取り外す作業には危険が伴うので、救援物資を自動でリリースする機構が必要となる。さらに、電気信号によるフックの開閉は現場の電波事情の影響を受けるので、機械的な方法で救援物資をリリースする必要がある。
【0003】
そこで、特許文献1には、荷重が加わると閉状態になり、荷重が除去されると開状態になる吊下げ用フックが開示されている。これにより、ドローンが上昇して救援物資が地面から離間すると、救援物資の自重によって吊下げ用フックが閉状態なる。一方、ドローンが下降して救援物資が接地すると、吊下げ用フックが開状態になって救援物資がリリースされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、気流の影響を受けてドローンが急降下すると、吊下げ用フックから一時的に荷重が除去される。その結果、ドローンの飛行中に救援物資がリリースされてしまうという課題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、目的地で自動的に荷物をリリースできると共に、運搬中に意図せず荷物がリリースされるのを防止することができる吊下装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような技術的課題を解決するため、ケースと、先端が前記ケースに進入して荷物を拘束する拘束位置、及び先端が前記ケースから退出して荷物をリリースするリリース位置に回動可能に前記ケースに支持されたフックと、前記フックを前記拘束位置にロックするロック状態、及び前記フックの前記拘束位置から前記リリース位置への回動を許容する解除状態に状態変化可能に前記ケースに支持されたロック部材と、上端位置及び下端位置の間を上下方向に往復動可能に前記ケースに支持され、荷重が負荷されて上下方向の一方に移動し、荷重の負荷が解除されて上下方向の他方に移動する昇降部材と、前記ケース内に収容され、前記昇降部材がN(Nは2以上の整数)回の往復動をすることによって、前記ロック部材をロック状態から前記解除状態に状態変化させる解除機構とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、目的地で自動的に荷物をリリースできると共に、運搬中に意図せず荷物がリリースされるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】第1実施形態に係る吊下装置の外観斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る吊下装置の分解斜視図である。
【
図4】フックがリリース位置に配置された吊下装置の平面図及び斜視図である。
【
図5】フックが拘束位置で天吊りピンが上端位置に配置された吊下装置の平面図及び斜視図である。
【
図6】フックが拘束位置で天吊りピンが下端位置に配置された吊下装置の平面図及び斜視図である。
【
図7】ロックピンが解除状態に状態変化する直前の吊下装置の平面図及び斜視図である。
【
図8】ロックピンが解除状態に状態変化した時点の吊下装置の平面図及び斜視図である。
【
図9】第2実施形態に係る吊下装置の外観斜視図である。
【
図10】第2実施形態に係る吊下装置を前方側から見た分解斜視図である。
【
図11】第2実施形態に係る吊下装置を後方側から見た分解斜視図である。
【
図12】フックがリリース位置に配置された吊下装置の斜視図である。
【
図13】フックが拘束位置でロックピンが解除状態の吊下装置の斜視図である。
【
図14】フックが拘束位置でロックピンがロック状態の吊下装置の斜視図である。
【
図15】
図14の状態から昇降部材が上方に移動した吊下装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態に係る吊下装置1を図面に基づいて説明する。なお、以下に記載する本発明の実施形態は、本発明を具体化する際の一例を示すものであって、本発明の範囲を実施形態の記載の範囲に限定するものではない。従って、本発明は、実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。
【0011】
図1は、吊下装置1の使用態様の一例を示す図である。
図1に示すように、吊下装置1は、ドローン(Unmanned Aerial Vehicle)2から垂下されたロープ3に吊り下げられた状態で、ワイヤ4を介して荷物5を吊下する。この状態でドローン2が発着地P1から目的地P2に飛行し、目的地P2で吊下装置1が荷物5を自動でリリースする。これにより、発着地P1から目的地P2にドローン2で荷物5を運搬することができる。
【0012】
荷物5は、例えば、救援物資(食料、飲料水、防寒具など)である。発着地P1は、救援物資を搬送する拠点(例えば、警察署、消防署、防災拠点など)であって、ドローン2が発着するのに必要なスペースが確保されている。一方、目的地P2は、救援物資を必要とする人がいる場所(例えば、遭難者のいる山中、災害によって孤立した地域など)であって、ドローン2が着陸するのに必要なスペースが確保されているとは限らない。
【0013】
そこで、荷物5は、発着地P1に着陸したドローン2の吊下装置1に取り付けられる。そして、ドローン2は、吊下装置1を介して荷物5を吊下した状態で、発着地P1を離陸し、目的地P2の上空まで飛行する。そして、ドローン2は、ウインチ(図示省略)からロープ3を繰り出して荷物5を目的地P2に接地させる。
【0014】
このようなドローン2の使用方法は、「レスキュードローン」と呼ばれる。ここで、吊下装置1は、目的地P2で接地した荷物5を自動でリリースすると共に、ドローン2の飛行中に意図せず荷物5がリリースされるのを防止する機能を有する。但し、吊下装置1の使用方法は、前述の例に限定されない。
【0015】
図2は、第1実施形態に係る吊下装置1の外観斜視図である。
図3は、第1実施形態に係る吊下装置1の分解斜視図である。
図2及び
図3に示すように、吊下装置1は、ケース10と、フック20と、ロックピン(ロック部材)30と、天吊りピン(昇降部材)40と、解除機構50とを主に備える。
【0016】
ケース10は、フック20及び天吊りピン40を支持すると共に、ロックピン30及び解除機構50を収容する内部空間を有する。ケース10は、前ケース11及び後ケース12を複数のボルト及びナットで締結することによって構成される。ケース10は、フック挿入孔13と、係止部14と、荷重支持部15、16と、上端位置規制部17と、下端位置規制部18とを主に備える。これらの説明は後述する。
【0017】
フック20は、荷物5に取り付けられたワイヤ4が係止(玉掛け)される部分である。フック20は、拘束位置(
図5、6、7、8参照)とリリース位置(
図4参照)との間で回動可能にケース10に支持されている。また、フック20は、フック基端部21と、フック先端部22と、支軸23と、連結ピン24(
図5参照)と、トーションバネ(第1付勢部材)25と、圧縮バネ(第3付勢部材)26とを主に備える。
【0018】
拘束位置は、フック20(より詳細には、後述するフック先端部22)の先端が、後ケース12のフック挿入孔13に進入する位置である。フック20が拘束位置のとき、ケース10とフック20とで環が形成されるので、フック20に係止されたワイヤ4が外れることがない。すなわち、拘束位置は、荷物5を拘束する位置である。
【0019】
リリース位置は、フック20の先端がフック挿入孔13から退出した位置である。フック20がリリース位置のとき、ケース10とフック20とで形成した環の一部が破断するので、フック20に対してワイヤ4を挿抜することができる。すなわち、リリース位置は、荷物5をリリースする位置である。
【0020】
フック基端部21は、ケース10に固定された支軸23に回動可能に取り付けられている。そして、フック基端部21は、トーションバネ25によってリリース位置に向けて付勢されている。フック基端部21には、貫通孔(凹部)21aと、当接面21bとが形成されている。貫通孔21aは、フック20の回動平面と直交する方向(換言すれば、支軸23の延設方向)に、フック基端部21を貫通している。当接面21bは、貫通孔21aに隣接する平面である。また、当接面21bは、支軸23を中心とする円弧形状の平面である。
【0021】
フック先端部22は、ワイヤ4を係止するために、鉤型に湾曲している。フック先端部22は、連結ピン24を介してフック基端部21に接続されている。フック先端部22は、フック基端部21と共に回動する。そして、フック先端部22は、被係止部22aと、被支持部22b、22cとを有する。
【0022】
また、フック先端部22は、フック基端部21に対して、フック20の回動軌跡の法線方向(換言すれば、連結ピン24の延設方向)に接離可能に構成されている。そして、フック先端部22は、圧縮バネ26によってフック基端部21に近接する向きに付勢されている。より詳細には、フック先端部22は、荷重(典型的には、荷物5の重量)が負荷されることによって、圧縮バネ26の付勢力に抗してフック基端部21から離間する。一方、フック先端部22は、荷重の負荷が解除されることによって、圧縮バネ26の付勢力によってフック基端部21に近接する。
【0023】
被係止部22aは、フック先端部22の先端に設けられている。すなわち、被係止部22aは、拘束位置のときにフック挿入孔13に進入する。そして、被係止部22aは、フック先端部22がフック基端部21から離間することによって係止部14に係止され、フック20が拘束位置からリリース位置に回動するのを阻止する。一方、被係止部22aは、フック先端部22がフック基端部21に近接することによって係止部14による係止が解除され、フック20が拘束位置からリリース位置に回動するのを許容する。
【0024】
被支持部22b、22cは、フック先端部22がフック基端部21から離間することによって、ケース10の荷重支持部15、16に載置される。換言すれば、荷重支持部15、16は、被支持部22b、22cを下側から支持することによって、フック20に負荷された荷重を支持する。一方、被支持部22b、22cは、フック先端部22がフック基端部21に近接することによって、荷重支持部15、16から離間する。
【0025】
ロックピン30は、フック20を拘束位置にロックするロック状態と、フック20の拘束位置からリリース位置への回動を許容する解除状態とに状態変化可能にケース10に支持されている。より詳細には、ロックピン30は、カムホイール51のカム面51aに対面する位置に配置されている。また、ロックピン30の基端部は、後ケース12に固定された支軸31に回動可能に取り付けられている。支軸23、31は、互いに直交する方向に延設されている。
【0026】
さらに、ロックピン30の先端部には、フック基端部21に向けて突出する突起32が形成されている。突起32は、フック20が拘束位置のときに貫通孔21aに対面し、フック20がリリース位置のときに当接面21bに対面する。そして、ロックピン30は、前ケース11とロックピン30との間に配置されたコイルバネ(第2付勢部材)によって、突起32を貫通孔21aに進入させる向き(または、突起32を当接面21bに圧接させる向き)に付勢されている。
【0027】
すなわち、突起32は、フック20が拘束位置のときに、コイルバネの付勢力によって貫通孔21aに進入している。この状態がロックピン30のロック状態である。一方、フック20が拘束位置のときに、後述するカムホイール51の隆起部51b、51cにロックピン30が乗り上げると、コイルバネの付勢力に抗して突起32が貫通孔21aから退出する。この状態がロックピン30の解除状態である。さらに、突起32は、フック20がリリース位置のときに、コイルバネの付勢力によって当接面21bに当接する。そして、フック20がリリース位置から拘束位置に回動すると、突起32は、当接面21b上をスライドして貫通孔21aに進入する。
【0028】
天吊りピン40は、上下方向に延設されたピン形状の部材である。天吊りピン40は、上端位置(
図5、7参照)と下端位置(
図4、6参照)との間を上下方向に往復動可能な状態でケース10に支持されている。天吊りピン40は、接続部41と、ラックギヤ(直線ギヤ)42と、被規制部43とを主に備える。
【0029】
接続部41は、天吊りピン40の上端に設けられている。接続部41は、ケース10から上方に突出している。接続部41には、ロープ3の下端が接続される。ラックギヤ42は、天吊りピン40の下部において、上下方向に直線的に延びている。被規制部43は、接続部41及びラックギヤ42の間において、天吊りピン40から径方向に張り出すフランジ形状の部分である。被規制部43は、ケース10の上端位置規制部17及び下端位置規制部18の間に配置される。そして、天吊りピン40は、上端位置規制部17及び被規制部43の間に配置されたコイルバネ(第2付勢部材)44によって、下方に向けて付勢されている。
【0030】
フック20に拘束された荷物5の重量がフック20を介してケース10に負荷されると、コイルバネ44の付勢力に抗してケース10が下方(すなわち、相対的に天吊りピン40が上方)に移動する。また、ケース10に対する重量の負荷が解除されると、コイルバネ44の付勢力によってケース10が上方(すなわち、相対的に天吊りピン40が下方)に移動する。そして、天吊りピン40の移動範囲(すなわち、上端位置及び下端位置)は、上端位置規制部17及び下端位置規制部18によって規制される。
【0031】
解除機構50は、ケース10の内部に収容されている。解除機構50は、天吊りピン40がN回往復動することによって、ロックピン30をロック状態から解除状態に状態変化させる役割を担う。なお、Nは、2以上の整数である。第1実施形態ではN=3の例を説明するが、Nの具体的な値は前述の例に限定されない。
【0032】
解除機構50は、カムホイール51と、回転ギヤ52と、回転軸53と、ワンウェイクラッチ54と、ラチェット爪55と、コイルバネ(付勢部材)56とを主に備える。回転ギヤ52、回転軸53、ワンウェイクラッチ54、ラチェット爪55、及びコイルバネ56は、動力伝達部を構成する。動力伝達部は、天吊りピン40の下方への移動をカムホイール51を正回転させる向きに伝達し、天吊りピン40の上方への移動をカムホイール51に伝達しない。
【0033】
カムホイール51は、円板形状の部材である。カムホイール51は、フック基端部21及びロックピン30の間において、ワンウェイクラッチ54を介して回転軸53に取り付けられている。
【0034】
カムホイール51のロックピン30に対面する面は、カム面51aとなっている。カム面51aは、ロックピン30の突起32が設けられた側に当接する。そして、カム面51aには、周方向の一部に隆起部51b、51cが形成されている。第1実施形態に係るカム面51aには、周方向の2箇所に隆起部51b、51cが等間隔(180°間隔)に設けられている。但し、カム面51aに形成される隆起部51b、51cの数は2つに限定されず、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0035】
隆起部51b、51cは、カムホイール51が正回転する際の前端側がスロープとなっている。そして、隆起部51b、51cは、天吊りピン40がN回往復動するたびに、ロックピン30に当接する。換言すれば、ロックピン30は、天吊りピン40がN回往復動するたびに、スロープに沿って隆起部51b、51cに乗り上げる。これにより、突起32が貫通孔21aから退出して、ロックピン30がロック状態から解除状態に状態変化する。なお、第1実施形態において、「正回転」とは
図4(A)の反時計回りの回転を指し、「逆回転」とは
図4(A)の時計回りの回転を指す。
【0036】
また、カムホイール51の外周面には、複数の凹部51dが形成されている。凹部51dは、Nに隆起部51b、51cの数を乗じた数(第1実施形態では6個)だけ形成される。また、凹部51dは、カムホイール51の外周面に等間隔(第1実施形態では60°間隔)に形成されている。
【0037】
回転ギヤ52は、回転軸53に外挿されている。また、回転ギヤ52は、天吊りピン40のラックギヤ42に噛合されている。そして、回転ギヤ52は、天吊りピン40の下方への移動に伴って正回転し、天吊りピン40の上方への移動に伴って逆回転する。回転軸53は、ケース10に回転可能に支持されている。そして、回転軸53は、回転ギヤ52と一体回転する。
【0038】
ワンウェイクラッチ54は、カムホイール51及び回転軸53の間に配置されている。そして、ワンウェイクラッチ54は、回転軸53の正回転をカムホイール51に伝達し、回転軸53の逆回転をカムホイール51に伝達しない。
【0039】
ラチェット爪55は、コイルバネ56によってカムホイール51の外周面に圧接されている。そして、ラチェット爪55は、カムホイール51の複数の凹部51dの1つに進入する。ラチェット爪55は、カムホイール51が正回転するときに凹部51dから退出し、カムホイール51が逆回転するときに凹部51dの壁面に係止される。すなわち、ラチェット爪55は、カムホイール51の正回転を許容し、カムホイール51の逆回転を阻止する。
【0040】
すなわち、天吊りピン40が下方に移動すると、回転ギヤ52の正回転が回転軸53及びワンウェイクラッチ54を通じてカムホイール51に伝達される。そして、カムホイール51は、コイルバネ56の付勢力に抗してラチェット爪55を凹部51dから退出させて、60°だけ正回転する。そして、ラチェット爪55は、退出した凹部51dに隣接する凹部51dに進入する。
【0041】
一方、天吊りピン40が上方に移動すると、回転ギヤ52の逆回転がワンウェイクラッチ54で遮断されて、カムホイール51に伝達されない。また、回転ギヤ52との間の摩擦などによって逆回転しようとするカムホイール51は、凹部51dに進入したラチェット爪55に係止されて、逆回転が阻止される。
【0042】
次に、
図4~
図8を参照して、第1実施形態に係る吊下装置1の動作を説明する。
図4は、フック20がリリース位置に配置された吊下装置1の平面図及び斜視図である。
図5は、フック20が拘束位置で天吊りピン40が上端位置に配置された吊下装置1の平面図及び斜視図である。
図6は、フック20が拘束位置で天吊りピン40が下端位置に配置された吊下装置1の平面図及び斜視図である。
図7は、ロックピン30が解除状態に状態変化する直前の吊下装置1の平面図及び斜視図である。
図8は、ロックピン30が解除状態に状態変化した時点の吊下装置1の平面図及び斜視図である。なお、
図4~
図8では、前ケース11及び各バネの図示を省略している。
【0043】
まず
図4に示すように、荷物5を吊下する前の吊下装置1は、フック20がリリース位置で、天吊りピン40が下端位置で、ロックピン30が解除状態(突起32が当接面21bに当接)で、隆起部51bがロックピン30を通過した直後の位置に配置されている。また、ドローン2は着陸した状態である。
【0044】
この状態で、作業員は、荷物5に取り付けたワイヤ4をフック20に係止し、フック20をリリース位置から拘束位置に回動させる。これにより、当接面21b上をスライドした突起32が貫通孔21aに進入して、ロックピン30がロック状態になる。
【0045】
次に、ドローン2が上昇して荷物5が地面から離間すると、荷物5の重量がフック先端部22に負荷される。これにより、
図5に示すように、天吊りピン40は、下端位置から上端位置まで上方に移動する。その結果、回転ギヤ52及び回転軸53が逆回転するが、ワンウェイクラッチ54で遮断されてカムホイール51は回転しない。また、フック先端部22は、圧縮バネ26の付勢力に抗してフック基端部21から離間する。その結果、被係止部22aが係止部14に係止され、被支持部22b、22cが荷重支持部15、16に支持される。
【0046】
次に、目的地P2の上空に到達したドローン2は、ウインチからロープ3を繰り出して、荷物5を接地させる。これにより、
図6に示すように、天吊りピン40は、上端位置から下端位置まで下方に移動する。ここまでで、
図4の状態から天吊りピン40が一往復(N=1)したことになる。その結果、回転ギヤ52、回転軸53、及びワンウェイクラッチ54が60°だけ正回転する。但し、隆起部51cは未だロックピン30に到達しないので、ロックピン30のロック状態は維持される。
【0047】
また、フック先端部22は、圧縮バネ26の付勢力によってフック基端部21に近接する。その結果、係止部14による被係止部22aの係止が解除されるが、ロックピン30が未だロック状態なので、フック20は拘束位置に留まる。また、被支持部22b、22cが荷重支持部15、16から離間するが、荷物5は接地しているので、荷物5の重量が支軸23に負荷されることはない。
【0048】
次に、ドローン2は、ウインチでロープ3を巻き取って荷物5を地面から離間させ、再びロープ3を繰り出して荷物5を接地させる。これにより、天吊りピン40が下端位置及び上端位置の間を一往復(N=2)し、隆起部51b、51cが反時計回りに60°移動する。このときの動きは、
図5及び
図6を用いた説明と共通する。フック先端部22の動きについても同様である。これにより、
図7に示すように、隆起部51cがロックピン30の直前の位置に到達するが、ロックピン30はロック状態のままである。
【0049】
次に、ドローン2は、ウインチでロープ3を巻き取って荷物5を地面から離間させ、再びロープ3を繰り出して荷物5を接地させる。これにより、天吊りピン40が下端位置及び上端位置の間をさらに一往復(N=3)する。
【0050】
ここで、
図8に示すように、隆起部51cは、天吊りピン40が3回目に下方に移動する過程において、天吊りピン40が上端位置及び下端位置の間の中間位置に到達したときに、ロックピン30に当接する(換言すれば、ロックピン30がスロープに沿って隆起部51cに乗り上げる)。これにより、突起32が貫通孔21aから退出して、ロックピン30がロック状態から解除状態に状態変化する。その結果、フック20が拘束位置からリリース位置に回動して、ワイヤ4がフック20から外れる。すなわち、吊下装置1が荷物5をリリースする。
【0051】
さらに、天吊りピン40が下端位置に到達すると、
図7の状態から隆起部51b、51cが反時計回りに60°移動して、
図4の状態に戻る。すなわち、隆起部51cがロックピン30を通過し、突起32が当接面21bに当接する。そして、目的地P2で荷物5をリリースしたドローン2は、発着地P1に帰投する。さらに、
図4~
図8を参照して説明した作業を繰り返すことによって、目的地P2に複数の荷物5を搬送することができる。
【0052】
第1実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0053】
第1実施形態によれば、発着地P1から目的地P2に向けて飛行するドローン2が気流の影響を受けて急降下し、荷物5の荷重がフック20から一時的に除去されたとしても、
図5の状態から隆起部51b、51cが反時計回りに60°移動するだけなので、ロックピン30のロック状態が維持される。すなわち、運搬中に意図せず荷物5がリリースされるのを防止することができる。
【0054】
また、第1実施形態によれば、目的地P2で地面に対して荷物5を接離することによって、吊下装置1から荷物5を自動的にリリースすることができる。なお、前述の説明では荷物5の接離を2回繰り返した例を説明したが、ドローン2の飛行中に天吊りピン40が一往復した場合には、目的地P2での荷物5の接離は1回でよい。また、荷物5がリリースされるまでの天吊りピン40の往復回数Nは、隆起部51b、51cの数及び回転ギヤ52の歯数などによって調整することができる。
【0055】
また、第1実施形態によれば、天吊りピン40が3回目に下方に移動する過程において、天吊りピン40が中間位置に到達したタイミングでロックピン30が解除状態となり(
図7)、天吊りピン40が下端位置に到達したときには隆起部51cが既にロックピン30を通過している。これにより、荷物5を繰り返し搬送する場合において、作業員がフック20をリリース位置から拘束位置に移動させるだけで、ロックピン30を解除状態からロック状態に状態変化させることができる。
【0056】
また、第1実施形態によれば、荷物5の重量がフック先端部22に負荷されている間、被係止部22aが係止部14に係止される。これにより、ドローン2の飛行中において、意図せずフック20がリリース位置に回動するのをさらに有効に防止できる。
【0057】
また、第1実施形態によれば、荷物5の重量がフック先端部22に負荷されている間、被支持部22b、22cが荷重支持部15、16で支持される。これにより、荷物5の重量が支軸23に負荷されないので、支軸23の変形に起因するフック20の回動不良を防止できる。その結果、目的地P2で荷物5がリリースできないトラブルを防止することができる。
【0058】
さらに、第1実施形態によれば、荷物5及びケース10の重量が負荷されて昇降部材140が上方に移動する。このため、コイルバネ44の付勢力とケース10の重量とのバランスを調整しておけば、重量の軽い荷物5を搬送することができる。
【0059】
[第2実施形態]
次に、
図9~
図15を参照して、第2実施形態に係る吊下装置100を説明する。なお、第1実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
図9は、第2実施形態に係る吊下装置100の外観斜視図である。
図10は、第2実施形態に係る吊下装置100を前方側から見た分解斜視図である。
図11は、第2実施形態に係る吊下装置100を後方側から見た分解斜視図である。
図9~
図11に示すように、吊下装置100は、ケース110と、フック120と、ロックピン(ロック部材)130と、昇降部材140と、解除機構150とを主に備える。
【0060】
ケース110は、フック120及び昇降部材140を支持すると共に、ロックピン130及び解除機構150を収容する内部空間を有する。ケース110は、左ケース111及び右ケース112を複数のボルト及びナットで締結することによって構成される。
【0061】
フック120は、拘束位置(
図13-15参照)とリリース位置(
図12参照)との間で回動可能にケース110に支持されている。より詳細には、フック120は、左ケース111に固定された支軸121に回動可能に取り付けられている。また、フック120は、トーションバネ122によってリリース位置に向けて付勢されている。さらに、フック120には、フック120の回動平面と直交する方向(換言すれば、支軸121の延設方向)に貫通する貫通孔(凹部)123が形成されている。
【0062】
ロックピン130は、フック120を拘束位置にロックするロック状態と、フック120の拘束位置からリリース位置への回動を許容する解除状態とに状態変化可能にケース110に支持されている。より詳細には、ロックピン130は、カムホイール151のカム面151aに対面する位置に配置されている。また、ロックピン130の基端部は、左ケース111に固定された支軸131に回動可能に取り付けられている。支軸121、131は、互いに直交する方向に延設されている。
【0063】
また、ロックピン130の先端部には、フック120に向けて突出する突起132が形成されている。突起132は、フック20が拘束位置のときに貫通孔123に対面する。そして、ロックピン130は、コイルバネ(第2付勢部材)133によって、突起132を貫通孔123に進入させる向きに付勢されている。
【0064】
昇降部材140は、荷物5に取り付けられたワイヤ4が係止(玉掛け)される部分である。昇降部材140は、ケース110と拘束位置のフック120とで形成される環の内側に配置される。すなわち、昇降部材140にワイヤ4を係止した状態でフック120を拘束位置に回動させると、荷物5が吊下装置100に拘束される。
【0065】
そして、昇降部材140は、上端位置(
図12、13、15参照)と下端位置(
図14参照)との間を上下方向に往復動可能な状態でケース110に支持されている。さらに、昇降部材140は、解除機構150のコイルバネ154によって、上端位置に向けて付勢されている。昇降部材140に荷重が負荷されると、コイルバネ154の付勢力に抗して昇降部材140が下方に移動する。また、昇降部材140に対する荷重の負荷が解除されると、コイルバネ44の付勢力によって昇降部材140が上方に移動する。
【0066】
解除機構150は、ケース110の内部に収容されている。解除機構150は、昇降部材140がN回往復動することによって、ロックピン130をロック状態から解除状態に状態変化させる役割を担う。第2実施形態ではN=5の例を説明するが、Nの具体的な値は前述の例に限定されず、2以上の整数であればよい。
【0067】
解除機構150は、カムホイール151と、動力中継部材152と、係合爪153と、コイルバネ154、155とを主に備える。動力中継部材152、係合爪153、及びコイルバネ154、155は、動力伝達部を構成する。動力伝達部は、昇降部材140の下方への移動をカムホイール151を正回転(
図10の時計回りの回転)させる向きに伝達し、昇降部材140の上方への移動をカムホイール151に伝達しない。
【0068】
カムホイール151は、円板形状の部材である。カムホイール51は、フック120及びロックピン130の間において、左ケース111に固定された支軸156に回転可能に取り付けられている。
【0069】
カムホイール151のロックピン130に対面する面は、カム面151aとなっている。カム面151aは、ロックピン130の突起132が設けられた側に当接する。そして、カム面151aには、周方向の一部に隆起部151bが形成されている。第2実施形態に係るカム面151aには、周方向の1箇所に隆起部151bが設けられている。
【0070】
隆起部151bは、カムホイール151が正回転する際の前端側がスロープとなっている。そして、隆起部151bは、昇降部材140がN回往復動するたびに、ロックピン130に当接する。換言すれば、ロックピン130は、昇降部材140がN回往復動するたびに、スロープに沿って隆起部151bに乗り上げる。これにより、突起132が貫通孔123から退出して、ロックピン130がロック状態から解除状態に状態変化する。
【0071】
また、カムホイール151には、カム面151aと反対側の面から突出する複数の突条151c、151d、151e、151f、151gが設けられている。突条151c~151gは、カムホイール151の回転中心から放射状に延びている。すなわち、第2実施形態において、隣接する突条151c~151gのなす角は、72°である。但し、突条151c~151gの数は前述の例に限定されない。
【0072】
動力中継部材152は、昇降部材140の下方への移動を係合爪153に伝達すると共に、コイルバネ154の付勢力を昇降部材140及び係合爪153に伝達する。動力中継部材152は、昇降部材140に下側から当接している。また、動力中継部材152は、支軸157を介して係合爪153を回動可能に支持している。さらに、動力中継部材152は、コイルバネ154によって上方に付勢されている。
【0073】
荷重が負荷された昇降部材140が下方に移動すると、動力中継部材152は、昇降部材140によって、コイルバネ154の付勢力に抗して押し下げられる。このとき、支軸157によって動力中継部材152に連結された係合爪153も下方に移動する。一方、昇降部材140に対する荷重の負荷が解除されると、動力中継部材152は、コイルバネ154の付勢力によって上方に移動すると共に、昇降部材140及び係合爪153を上方に押し上げる。
【0074】
係合爪153は、カムホイール151の突条151c~151gが形成された面に対面して配置されている。また、係合爪153は、コイルバネ155によって、カムホイール151に向けて付勢されている。そして、係合爪153は、上方に移動する過程で突条151c~151gの1つを乗り越える。すなわち、荷重の負荷が解除されて昇降部材140が上方に移動するとき、カムホイール151は回転しない。一方、係合爪153は、下方に移動する過程で突条151c~151gの1つに係合して、カムホイール151を所定の回転角(第2実施形態では、72°)だけ正回転させる。すなわち、荷重が負荷されて昇降部材140が下方に移動するとき、カムホイール151は正回転する。
【0075】
次に、
図12~
図15を参照して、第2実施形態に係る吊下装置100の動作を説明する。
図12は、フック120がリリース位置に配置された吊下装置100の斜視図である。
図13は、フック20が拘束位置でロックピン130が解除状態の吊下装置100の斜視図である。
図14は、フック20が拘束位置でロックピン130がロック状態の吊下装置100の斜視図である。
図15は、
図14の状態から昇降部材140が上方に移動した吊下装置100の斜視図である。なお、
図12~
図15において、ケース110及び各バネの図示を省略している。
【0076】
まず
図12に示すように、荷物5を吊下する前の吊下装置100は、フック120がリリース位置で、昇降部材140が上端位置で、ロックピン130が解除状態(ロックピン130が隆起部151bに乗り上げた状態)で、係合爪153が突条151cを乗り越えた状態である。また、ドローン2は着陸した状態である。
【0077】
この状態で、作業員は、荷物5に取り付けたワイヤ4を昇降部材140に係止し、フック120をリリース位置から拘束位置に回動させる。但し、この時点では、
図13に示すように、ロックピン130が隆起部151bに乗り上げているので、突起132は貫通孔123に進入しない。すなわち、ロックピン130は、フック120を拘束位置でロックしていない。
【0078】
そこで、作業員は、フック120を拘束位置に保持したまま、昇降部材140を下端位置まで押し下げる(荷重の負荷)。これにより、
図14に示すように、下方に移動する係合爪153は、突条151cに係合してカムホイール151を所定の回転角(=72°)だけ回転させ、カムホイール151が72°だけ回転した時点で突条151cとの係合が解除される。その結果、隆起部151bがロックピン130を通過して、突起132が貫通孔123に進入する。すなわち、ロックピン130が解除状態からロック状態に状態変化して、フック120が拘束位置でロックされる。
【0079】
次に、作業員が昇降部材140から手を離す(荷重の負荷が解除)と、
図15に示すように、コイルバネ154の付勢力によって昇降部材140及び係合爪153が上昇する。これにより、係合爪153が突条151cに隣接する突条151dを乗り越える。
【0080】
次に、ドローン2が上昇して荷物5が地面から離間すると、荷物5の重量(荷重)が昇降部材140に負荷される。これにより、昇降部材140及び係合爪153がコイルバネ154の付勢力に抗して下方に移動する。そして、下方に移動する係合爪153が突条151dに係合して、カムホイール151を72°だけ回転させる。このときの動きは、
図14を用いた説明と共通する。ここまでで、
図14の状態から昇降部材140が一往復(N=1)したことになる。
【0081】
次に、目的地P2の上空に到達したドローン2は、ウインチからロープ3を繰り出して、荷物5を接地させる。これにより、昇降部材140に対する荷重(荷物5の重量)の負荷が解除される。その結果、昇降部材140及び係合爪153が上方に移動し、係合爪153が突条151eを乗り越える。但し、隆起部151bは未だロックピン130に到達していないので、ロックピン130はロック状態のままである。このときの動きは、
図15を用いた説明と共通する。
【0082】
次に、ドローン2は、ウインチでロープ3を巻き取って荷物5を地面から離間させる。これにより、下方に移動する係合爪153が突条151eに係合して、カムホイール151を72°だけ回転させる(N=2)。そして、ウインチを制御して荷物5の接地及び離間を繰り返す(N=3、4、5)と、5回目に荷物5が地面から離間したタイミングでロックピン130が隆起部151bを乗り越える。
【0083】
これにより、突起132が貫通孔123から退出し、フック120がトーションバネ122の付勢力によって拘束位置からリリース位置に回動する。その結果、ワイヤ4が昇降部材140から外れて、吊下装置100から荷物5がリリースされる。さらに、荷物5がリリース(荷重の負荷が解除)されると、昇降部材140及び係合爪153が上方に移動して、
図12の状態に戻る。
【0084】
第2実施形態に係る吊下装置100は、第1実施形態に係る吊下装置1と同様に、目的地P2で自動的に荷物5をリリースできると共に、運搬中に意図せず荷物5がリリースされるのを防止することができる。
【0085】
また、第2実施形態によれば、荷重の負荷の解除が不十分(係合爪153が突条151c~151gを乗り越えない)だと、次に荷重を負荷してもカムホイール151が回転しない。一方、係合爪153が突条151c~151gを乗り越えた後に荷重を負荷すれば、カムホイール151を予め定められた回転角(=72°)だけ確実に回転させることができる。なお、昇降部材140を一往復させたときのカムホイール151の回転角は、突条151c~151gの数によって調整することができる。
【符号の説明】
【0086】
1,100…吊下装置、2…ドローン、3…ロープ、4…ワイヤ、5…荷物、10,110…ケース、11…前ケース、12…後ケース、13…フック挿入孔、14…係止部、15,16…荷重支持部、17…上端位置規制部、18…下端位置規制部、20,120…フック、21…フック基端部、21a,123…貫通孔、21b…当接面、22…フック先端部、22a…被係止部、22b,22c…被支持部、23,31,121,131,156,157…支軸、24…連結ピン、25,122…トーションバネ、26…圧縮バネ、30,130…ロックピン、32,132…突起、40…天吊りピン、41…接続部、42…ラックギヤ、43…被規制部、44,56,154,155…コイルバネ、50,150…解除機構、51,151…カムホイール、51a,151a…カム面、51b,51c,151b…隆起部、51d…凹部、52…回転ギヤ、53…回転軸、54…ワンウェイクラッチ、55…ラチェット爪、111…左ケース、112…右ケース、140…昇降部材、151c,151d,151e,151f,151g…突条、152…動力中継部材、153…係合爪