(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】医療用キャップ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61J 1/05 20060101AFI20240829BHJP
A61M 39/04 20060101ALI20240829BHJP
A61M 39/20 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61J1/05 315B
A61J1/05 315D
A61M39/04
A61M39/20
(21)【出願番号】P 2020196150
(22)【出願日】2020-11-26
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2019221983
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000225278
【氏名又は名称】内外化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003764
【氏名又は名称】弁理士法人OMNI国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】樋上 和紀
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-015040(JP,A)
【文献】特開2013-039292(JP,A)
【文献】特開2019-188119(JP,A)
【文献】特開2004-283519(JP,A)
【文献】特開2019-092630(JP,A)
【文献】特開2005-073839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
A61M 39/04
A61M 39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性栓体と、
前記弾性栓体の周縁部を上面側及び下面側からそれぞれ支持した状態で、前記弾性栓体を内部に保持する外枠体とを備える医療用キャップであって、
前記弾性栓体の周縁部の側周面には、弾性栓体の上面から下面の方向、又は下面から上面の方向に向かって延在する、
幅が細長い複数の帯状溝が相互に離間して設けられており、
前記外枠体の内側面には、前記弾性栓体の前記帯状溝に当接する突条部が設けられており、
前記弾性栓体の前記側周面は、前記帯状溝を含め、前記外枠体の内側面との接触面で溶着している医療用キャップ。
【請求項2】
前記帯状溝は、前記下面から前記上面に達するように延在している請求項1に記載の医療用キャップ。
【請求項3】
弾性栓体と、
前記弾性栓体を内部に保持する外枠体とを備える医療用キャップであって、
前記外枠体は、上側枠部及び下側枠部を備え、
前記上側枠部は、前記弾性栓体の周縁部を上面側から支持する第1上面側支持部を有し、
前記下側枠部は、前記弾性栓体の周縁部を下面側から支持する下面側支持部を有しており、
前記弾性栓体の周縁部の側周面には、
前記弾性栓体
の下面から上面
に達するように延在する、
幅が細長い複数の帯状溝が相互に離間して設けられており、
前記上側枠部は、前記弾性栓体との接触面で非溶着の状態で当接し、かつ、前記帯状溝と当接しておらず、
前記下側枠部は、前記下面側支持部と接合し、かつ、前記弾性栓体の前記帯状溝と前記上側枠部との間の空間に埋め込まれた
複数の突条部
と、前記突条部と接合し、かつ、前記弾性栓体の周縁部を上面側から支持する第2上面側支持部とを備え、さらに、前記弾性栓体及び前記上側枠部との接触面で溶着して
おり、
前記上側枠部の前記第1上面側支持部は、前記下側枠部の第2上面側支持部を覆うようにして、前記弾性栓体の前記周縁部を上面側から支持する医療用キャップ。
【請求項4】
前記帯状溝は、前記弾性栓体の周縁部の側周面に均等に配置されている請求項1~
3の何れか1項に記載の医療用キャップ。
【請求項5】
前記弾性栓体に於ける前記
上面の少なくとも一部には、シリコーンオイルが含浸されている請求項1~
4の何れか1項に記載の医療用キャップ。
【請求項6】
弾性栓体と、
前記弾性栓体の周縁部を上面側及び下面側からそれぞれ支持した状態で、前記弾性栓体を内部に保持する外枠体とを備える医療用キャップの製造方法であって、
前記弾性栓体であって、前記周縁部の側周面に、前記弾性栓体の下面から上面の方向に向かって延在する
、幅が細長い複数の帯状溝が相互に離間して設けられたものを作製する工程と、
前記外枠体の成形用のキャビティを形成可能にする第1金型及び第2金型を用意し、前記弾性栓体の下面を上向きにして前記第1金型内に載置した後、前記第1金型と第2金型とを型閉じし、さらに、前記キャビティ内に溶融樹脂材料を注入した後、前記溶融樹脂材料を硬化させて前記外枠体を成形する工程とを有し、
前記外枠体を成形する工程は、前記弾性栓体の帯状溝にも前記溶融樹脂材料が流れ込むことにより、前記弾性栓体の前記帯状溝に溶着した突条部を、内側面に複数備えた前記外枠体を成形する医療用キャップの製造方法。
【請求項7】
前記弾性栓体を作製する工程は、前記帯状溝が前記下面から前記上面に達するように延在している弾性栓体を作製する工程である請求項
6に記載の医療用キャップの製造方法。
【請求項8】
弾性栓体と、
前記弾性栓体を内部に保持する外枠体とを備え、
前記外枠体は、上側枠部及び下側枠部を有しており、
前記上側枠部は、前記弾性栓体の周縁部を上面側から支持する第1上面側支持部を有し、
前記下側枠部は、前記弾性栓体の周縁部を下面側から支持する下面側支持部を有している医療用キャップの製造方法であって、
前記弾性栓体であって、前記周縁部の側周面に、前記弾性栓体の下面から上面
に達するように延在する
、幅が細長い複数の帯状溝が相互に離間して設けられたものを作製する工程と、
前記上側枠部の成形用のキャビティを形成可能にする共通下金型及び第1上金型を用いて、前記共通下金型と前記第1上金型とを型閉じし、さらに、前記キャビティ内に溶融樹脂材料を注入した後、前記溶融樹脂材料を硬化させて前記上側枠部を成形する工程と、
前記共通下金型内の前記上側枠部の内部に、下面を上向きにして前記弾性栓体を載置し、前記共通下金型と組み合わせた際に前記下側枠部の成形用のキャビティを形成可能にする第2上金型を用いて、前記共通下金型と型閉じし、さらに、前記キャビティ内に溶融樹脂材料を注入した後、前記溶融樹脂材料を硬化させて前記下側枠部を成形する工程とを有し、
前記下側枠部を成形する工程は、前記弾性栓体の前記帯状溝と前記上側枠部との間の空間にも、前記溶融樹脂材料を注入することにより、前記弾性栓体の前記帯状溝と前記上側枠部との間の空間に埋め込まれ、前記下面側支持部と接合した
複数の突条部と、
前記突条部と接合し、かつ、前記弾性栓体の周縁部を上面側から支持する第2上面側支持部とを備え
、さらに前記第2上面側支持部が前記上側枠部の前記第1上面側支持部により覆われるようにして設けられた前記下側枠部を成形する工程であり、
前記上側枠部は、前記弾性栓体との接触面で非溶着の状態で当接し、かつ、前記帯状溝と当接していない医療用キャップの製造方法。
【請求項9】
前記弾性栓体を作製する工程は、前記帯状溝が前記弾性栓体の周縁部の側周面に均等に配置されている弾性栓体を作製する工程である請求項
6~
8の何れか1項に記載の医療用キャップの製造方法。
【請求項10】
前記弾性栓体として、前記
上面の少なくとも一部にシリコーンオイルが含浸されたものを用いる請求項
6~
9の何れか1項に記載の医療用キャップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液容器、採血管、バイアル瓶等の薬剤容器等に用いる医療用キャップ及びその製造方法に関する。特に、針刺し及び針抜きの際の弾性栓体のめくれや位置ズレの発生を防止することが可能な医療用キャップ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野に用いられる薬液ボトルや点滴用の輸液ボトル等の薬剤容器の口部には、針でその薬液を取り出せるようにするため、外枠体(例えば、熱可塑性合成樹脂等)の内部に弾性栓体(例えば、ゴムや熱可塑性エラストマー樹脂等)を備えた医療用キャップが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の輸液用栓体は、プラスチック製の枠体の内部にゴム栓が収容されており、さらにゴム栓が支持体に支持されることで、当該ゴム栓を枠体の内部に固定した構造を有している。また、ゴム栓が薬液に接触する側の面には、ゴム栓と3mm以上離間させた状態で、プラスチックの薄膜が被覆するように設けられている。これにより、特許文献1では、薬液の密封性を向上させ、ゴム栓と薬液の接触による微粒子の混入等を防止し、中空針で刺通した際に実質的にコアリングの発生を防止できるとされている。
【0004】
ここで、ゴム栓の針刺面側における周縁部には環状溝が設けられており、枠体にはこの環状溝に嵌合する環状リブが設けられている(
図1及び
図2)。これにより、特許文献1の輸液用栓体では、穿刺針を用いてゴム栓の針刺面に針刺しを行う際に、ゴム栓のめくれや位置ズレが発生するのを抑制可能にしている。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の輸液用栓体は、ゴム栓の環状溝を枠体の環状リブと単に嵌合させて、ゴム栓を枠体内部に収容するだけである。そのため、直径が大きい穿刺針を用いる場合や、穿刺抵抗が大きい場合には、依然として、穿刺針による針刺し及び針抜きの際にゴム栓のめくれや位置ズレが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、穿刺針を用いた弾性栓体への針刺し及び針抜きの際に、弾性栓体のめくれや位置ズレが発生するのを抑制することにより、良好な密閉性を維持し、薬液等の漏洩及び空気との接触による変質を防止することが可能な医療用キャップ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の医療用キャップは、前記の課題を解決するために、弾性栓体と、前記弾性栓体の周縁部を上面側及び下面側からそれぞれ支持した状態で、前記弾性栓体を内部に保持する外枠体とを備える医療用キャップであって、前記弾性栓体の周縁部の側周面には、弾性栓体の上面から下面の方向、又は下面から上面の方向に向かって延在する、複数の帯状溝が相互に離間して設けられており、前記外枠体の内側面には、前記弾性栓体の前記帯状溝に当接する突条部が設けられており、前記弾性栓体の前記側周面は、前記帯状溝を含め、前記外枠体の内側面との接触面で溶着していることを特徴とする。
【0009】
前記の構成に於いて、前記帯状溝は、前記下面から前記上面に達するように延在していることが好ましい。
【0010】
また、本発明の他の医療用キャップは、前記の課題を解決するために、弾性栓体と、前記弾性栓体を内部に保持する外枠体とを備える医療用キャップであって、前記外枠体は、上側枠部及び下側枠部を備え、前記上側枠部は、前記弾性栓体の周縁部を上面側から支持する第1上面側支持部を有し、前記下側枠部は、前記弾性栓体の周縁部を下面側から支持する下面側支持部を有しており、前記弾性栓体の周縁部の側周面には、弾性栓体の上面から下面の方向、又は下面から上面の方向に向かって延在する、複数の帯状溝が相互に離間して設けられており、前記上側枠部の内側面は、前記弾性栓体の前記側周面と、前記帯状溝を除いて当接し、前記下側枠部は、前記下面側支持部と接合し、かつ、前記弾性栓体の前記帯状溝と前記上側枠部との間の空間に埋め込まれた突条部を複数備えており、さらに、前記弾性栓体及び前記上側枠部との接触面で溶着していることを特徴とする。
【0011】
前記の構成に於いて、前記帯状溝は、前記下面から前記上面に達するように延在しており、前記下側枠部における前記突条部は、前記上側枠部の前記第1上面側支持部とも接触面で溶着していることが好ましい。
【0012】
前記の構成に於いて、前記帯状溝は、前記下面から前記上面に達するように延在しており、前記下側枠部は、前記突条部と接合し、かつ、前記弾性栓体の周縁部を上面側から支持する第2上面側支持部を備え、前記上側枠部の前記第1上面側支持部は、前記下側枠部の第2上面側支持部を覆うようにして、前記弾性栓体の前記周縁部を上面側から支持することが好ましい。
【0013】
前記の構成に於いて、前記帯状溝は、前記弾性栓体の周縁部の側周面に均等に配置されていることが好ましい。
【0014】
本発明の医療用キャップの製造方法は、前記の課題を解決するために、弾性栓体と、前記弾性栓体の周縁部を上面側及び下面側からそれぞれ支持した状態で、前記弾性栓体を内部に保持する外枠体とを備える医療用キャップの製造方法であって、前記弾性栓体であって、前記周縁部の側周面に、前記弾性栓体の下面から上面の方向に向かって延在する複数の帯状溝が相互に離間して設けられたものを作製する工程と、前記外枠体の成形用のキャビティを形成可能にする第1金型及び第2金型を用意し、前記弾性栓体の下面を上向きにして前記第1金型内に載置した後、前記第1金型と第2金型とを型閉じし、さらに、前記キャビティ内に溶融樹脂材料を注入した後、前記溶融樹脂材料を硬化させて前記外枠体を成形する工程とを有し、前記外枠体を成形する工程は、前記弾性栓体の帯状溝にも前記溶融樹脂材料が流れ込むことにより、前記弾性栓体の前記帯状溝に溶着した突条部を、内側面に備えた前記外枠体を成形することを特徴とする。
【0015】
前記の構成に於いて、前記弾性栓体を作製する工程は、前記帯状溝が前記下面から前記上面に達するように延在している弾性栓体を作製する工程であることが好ましい。
【0016】
本発明の他の医療用キャップの製造方法は、前記の課題を解決するために、弾性栓体と、前記弾性栓体を内部に保持する外枠体とを備え、前記外枠体は、上側枠部及び下側枠部を有しており、前記上側枠部は、前記弾性栓体の周縁部を上面側から支持する第1上面側支持部を有し、前記下側枠部は、前記弾性栓体の周縁部を下面側から支持する下面側支持部を有している医療用キャップの製造方法であって、前記弾性栓体であって、前記周縁部の側周面に、前記弾性栓体の下面から上面の方向に向かって延在する複数の帯状溝が相互に離間して設けられたものを作製する工程と、前記上側枠部の成形用のキャビティを形成可能にする共通下金型及び第1上金型を用いて、前記共通下金型と前記第1上金型とを型閉じし、さらに、前記キャビティ内に溶融樹脂材料を注入した後、前記溶融樹脂材料を硬化させて前記上側枠部を成形する工程と、前記共通下金型内の前記上側枠部の内部に、下面を上向きにして前記弾性栓体を載置し、前記共通下金型と組み合わせた際に前記下側枠部の成形用のキャビティを形成可能にする第2上金型を用いて、前記共通下金型と型閉じし、さらに、前記キャビティ内に溶融樹脂材料を注入した後、前記溶融樹脂材料を硬化させて前記下側枠部を成形する工程とを有し、前記下側枠部を成形する工程は、前記弾性栓体の前記帯状溝と前記上側枠部との間の空間にも、前記溶融樹脂材料を注入することにより、前記弾性栓体の前記帯状溝と前記上側枠部との間の空間に埋め込まれ、前記下面側支持部と接合した突条部を複数備える前記下側枠部が成形されることを特徴とする。
【0017】
前記の構成に於いて、前記弾性栓体を作製する工程は、前記帯状溝が前記下面から前記上面に達するように延在している弾性栓体を作製する工程であり、前記下側枠部を成形する工程は、前記突条部が前記上側枠部の前記第1上面側支持部とも接触面で溶着している下側枠部を成形する工程であることが好ましい。
【0018】
前記の構成に於いて、前記弾性栓体を作製する工程は、前記帯状溝が前記下面から前記上面に達するように延在している弾性栓体を作製する工程であり、前記下側枠部を成形する工程は、前記突条部と接合し、かつ、前記弾性栓体の周縁部を上面側から支持する第2上面側支持部を備え、さらに前記第2上面側支持部が前記上側枠部の前記第1上面側支持部により覆われるようにして設けられた下側枠部を成形する工程であることが好ましい。
【0019】
前記の構成に於いて、前記弾性栓体を作製する工程は、前記帯状溝が前記弾性栓体の周縁部の側周面に均等に配置されている弾性栓体を作製する工程であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の医療用キャップによれば、弾性栓体の周縁部における側周面に帯状溝を設け、外枠体の内側面には帯状溝に当接する突条部を設ける。さらに、弾性栓体の側周面は、帯状溝を含め、外枠体の内側面との接触面において溶着している。これにより、本発明の医療用キャップにおいては、弾性栓体と、これを内部に収容する外枠体の内側面との間で溶着面積を大きくしている。その結果、本発明によれば、穿刺針による針刺し及び針抜きの際に弾性栓体のめくれや位置ズレの発生を良好に防止することが可能な医療用キャップ及びその製造方法を提供することができる。
【0021】
また、本発明の他の医療用キャップによれば、外枠体は、弾性栓体の周縁部を上面側から支持するための上面側支持部を備えた上側枠部と、弾性栓体の周縁部を下面側から支持するための下面側支持部を備えた下側枠部とを有している。また、弾性栓体の周縁部における側周面に帯状溝を設け、下側枠部の内側面には帯状溝に当接する突条部を設ける。さらに、弾性栓体の側周面は、帯状溝を含め、下側枠部の内側面との接触面において溶着している。これにより、本発明の他の医療用キャップにおいては、弾性栓体と、これを内部に収容する外枠体の下側枠部の内側面との間で溶着面積を大きくしている。その結果、本発明によれば、穿刺針による針刺し及び針抜きの際に弾性栓体のめくれや位置ズレの発生を良好に防止することが可能な医療用キャップ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1(a)及び
図1(b)は、実施の形態1に係る医療用キャップを模式的に表す斜視図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は、前記医療用キャップを表す断面模式図である。
【
図3】前記医療用キャップにおける弾性栓体を模式的に表す斜視図である。
【
図4】
図2(a)に示す医療用キャップのA-A線矢視断面図である。
【
図5】前記医療用キャップにおける帯状溝を針刺面側から見た様子を表す拡大平面図である。
【
図6】前記医療用キャップの製造方法を説明するための断面模式図であって、同図(a)は上側枠部を成形する様子を表し、同図(b)は第1上金型と共通下金型を型開きした様子を表し、同図(c)は上側枠部に弾性栓体を載置した様子を表す。
【
図7】前記医療用キャップの製造方法を説明するための断面模式図であって、同図(a)は下側枠部を成形する様子を表し、同図(b)は第2上金型と共通下金型を型開きした様子を表す。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、実施の形態2に係る医療用キャップを表す断面模式図である
【
図9】
図8(a)に示す医療用キャップのB-B線矢視断面図である。
【
図10】前記医療用キャップの製造方法を説明するための断面模式図であって、同図(a)は上側枠部を成形する様子を表し、同図(b)は第1上金型と共通下金型を型開きした様子を表し、同図(c)は上側枠部に弾性栓体を載置した様子を表す。
【
図11】前記医療用キャップの製造方法を説明するための断面模式図であって、同図(a)は下側枠部を成形する様子を表し、同図(b)は第2上金型と共通下金型を型開きした様子を表す。
【
図12】
図12(a)及び
図12(b)は、他の実施の形態に係る医療用キャップを表す断面模式図である
【
図13】
図12(a)に示す前記医療用キャップのC-C線矢視断面図である。
【
図14】本発明の他の実施の形態に係る医療用キャップの弾性栓体を模式的に表す斜視図である。
【
図15】本発明の他の実施の形態に係る医療用キャップの弾性栓体を模式的に表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態1)
[医療用キャップ]
本発明の実施の形態1に係る医療用キャップについて、
図1~5を参照しながら以下に説明する。但し、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。
【0024】
図1(a)及び
図1(b)は、本実施の形態1に係る医療用キャップを模式的に表す斜視図である。
図2(a)及び
図2(b)は、医療用キャップを表す断面模式図である。
図3(a)及び
図3(b)は、医療用キャップにおける弾性栓体を模式的に表す斜視図である。
図4は、
図2(a)に示す医療用キャップのA-A線矢視断面図である。
図5は、帯状溝115を針刺面111側から見た様子を表す拡大平面図である。
【0025】
図1(a)、
図1(b)、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、本実施の形態の医療用キャップ10は、弾性栓体11と、外枠体12とを少なくとも備える。
【0026】
弾性栓体11は、針刺面111を上面側にし、接液面112を下面側にして外枠体12の内部に収容される。ここで「針刺面」とは、本実施の形態に係る医療用キャップ10が薬剤容器に装着され、薬液等を取り出す際に、穿刺針により針刺しが行われる面を意味し、「上面」に含まれる。また、「接液面」とは、薬剤容器に貯蔵されている薬液等が接する面を意味し、「下面」に含まれる。針刺面111には、穿刺針により刺通する際の位置指標の役目を果たす複数の凹部111aが設けられている。凹部111aの平面視における大きさ(面積)については特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。また、凹部111aの数についても特に限定されず、少なくとも1つ設けられていればよい。
【0027】
弾性栓体11の全体形状は特に限定されないが、本実施の形態に於いては、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、略円柱状である。但し、針刺面111と周縁部113との間には、針刺面111が周縁部113に対し垂直方向に立ち上がるように針刺面側段差部116が設けられている。また、接液面112と周縁部113との間にも、接液面112が周縁部113に対し垂直方向に立ち上がるように接液面側段差部117が設けられている。
【0028】
また、周縁部113の側周面114には、
図3(a)、
図3(b)及び
図4に示すように、4つの帯状溝115が設けられている。各帯状溝115は、相互に均等となるように離間して配置されるのが好ましい。また、帯状溝115は、上面、及び下面の双方に達するように直線状に延在している。但し、本実施の形態において、帯状溝115は、少なくとも上面から下面の方向に向かって、又は下面から上面の方向に向かって直線状に延在していれば足りる。従って、帯状溝115は、上面から下面の方向に向かって延在する場合は、下面に達していなくてもよい。また、帯状溝115は、下面から上面の方向に向かって延在する場合も同様、上面に達していなくてもよい。
【0029】
本実施の形態において、帯状溝115の数は複数であればよく、4つの場合に限定されない。帯状溝115の数が多いほど、外枠体12の内側面と溶着する面積を大きくすることができ、穿刺針による針刺し及び針抜きの際の弾性栓体11のめくれ及び位置ズレの発生を防止することができる(「溶着」の詳細については後述する。)。尚、帯状溝115同士の離間距離は特に限定されないが、離間距離が相互に均等となるように配置する場合は、帯状溝115の数により適宜設定される。
【0030】
帯状溝115の底面の形状は、
図5に示すように、平面状となっている。但し、本実施の形態はこの形状に限定されず、例えば、緩やかな曲面状、テーパー状又はV字状等であってもよい。
【0031】
帯状溝115の幅wは特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。幅wを大きくする程、外枠体12の内側面と溶着する面積を大きくすることができ、穿刺針による針刺し及び針抜きの際の弾性栓体11のめくれ及び位置ズレの発生を一層防止することができる。
【0032】
帯状溝115の深さdは、周縁部113の形成領域内であれば特に限定されない。深さdが周縁部113の形成領域を超え、針刺面111及び/又は接液面112の内側にまで達すると、針刺し可能な有効面積が小さくなり好ましくない。
【0033】
前記弾性栓体11に用いる材料としては、例えば、ゴムや熱可塑性エラストマー樹脂が挙げられる。前記ゴムとしては特に限定されず、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレン-イソブチレンゴム等が例示できる。また、熱可塑性エラストマー樹脂としては特に限定されず、例えば、オレフィン系、スチレン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリ塩化ビニル系、ポリブタジエン系、ポリアミド系、ポリウレタン系等が例示できる。中でも共役ジエン系の熱可塑性エラストマーに水素添加した熱可塑性エラストマー(SEBS、SEPS、HSBR、SEBR、CEBC)が好適である。これらの熱可塑性エラストマー樹脂は単独で又は2種以上を併用することができる。
【0034】
弾性栓体11の特性については特に限定されず、医療用注入針等の穿刺針が貫通できる程度の硬度を有していればよい。また、通常の保管の際に容易に変形したり、破損したりしない程度の形状保持性を有するものが好ましい。弾性栓体11の硬度は、JIS K6253法による測定に於いて、A5~A50であることが好ましく、A10~A45であることがより好ましい。
【0035】
外枠体12は、その内部に弾性栓体11を保持することが可能であり、少なくとも弾性栓体11の周縁部113を針刺面111(上面)側から支持する上側枠部12aと、接液面112(下面)側から支持する下側枠部12bとを備える。上側枠部12aは下側枠部12bとの接触面において溶着しており、一体となっている。また、下側枠部12bは、弾性栓体11との接触面において溶着している。但し、上側枠部12aと弾性栓体11とは接触面において非溶着の状態で当接している。
【0036】
ここで、「溶着」とは、後述の通り、下側枠部12bを射出成形等により成形する際に注入される溶融樹脂の熱により、これに接した弾性栓体11及び上側枠部12aの表面が溶融した結果、当該下側枠部12bの成形後に、弾性栓体11及び上側枠部12aと、下側枠部12bとがその接触面において結合した状態にあることを意味する。
【0037】
上側枠部12aは、
図2(a)及び2(b)に示すように、外壁部121と、第1上面側支持部122と、上側フランジ部123とを少なくとも備える。
【0038】
外壁部121は、全体形状が略円筒状となっている。外壁部121の内側面125は、弾性栓体11における周縁部113の側周面114との接触面において、溶着することなく当接している(
図2(b)参照)。
【0039】
第1上面側支持部122は、弾性栓体11の周縁部113の上面側と溶着することなく当接している。また、第1上面側支持部122は、下側枠部12bの突条部126の先端部の端面115aと接触面で溶着している。
【0040】
上側フランジ部123は、外壁部121の第1上面側支持部122とは反対側の端部において、外方に張り出すように設けられている。上側フランジ部123は、後述する下側枠部12bの下側フランジ部124と溶着しており、一体となってフランジ部を形成する。上側フランジ部123及び下側フランジ部124からなるフランジ部は、薬剤容器の口部との接合に用いられる。
【0041】
下側枠部12bは、
図2(a)、2(b)及び4に示すように、突条部126と、下面側支持部127と、下側フランジ部124とを少なくとも備える。
【0042】
突条部126は、弾性栓体11の帯状溝115と、上側枠部12aの内側面125との間の空間を埋め込むように設けられている。突条部126は、弾性栓体11の帯状溝115との接触面で溶着している。突条部126が、帯状溝115において弾性栓体11と溶着することにより、弾性栓体11が上側枠部12aと溶着しない構造でありながら、穿刺針による針刺し及び針抜きの際に、弾性栓体11のめくれや位置ズレによる空隙の発生を防止することができる。その結果、密閉性を向上させ、薬液や輸液等の漏洩、及び空気との接触による変質を防止することができる。また、突条部126は、上側枠部12aの内側面125との接触面でも溶着している。突条部126は、帯状溝115において弾性栓体11と溶着しているので、これにより、弾性栓体11を間接的に上側枠部12aとも接合することが可能となり、弾性栓体11の外枠体12内部での保持を良好に維持することができる。
【0043】
突条部126の形状は、弾性栓体11の帯状溝115の形状に応じて適宜設定される。また、突条部126の大きさ、すなわち、幅及び高さも帯状溝115の幅w及び深さdに応じて適宜設定される。
【0044】
下面側支持部127は、弾性栓体11との接触面において溶着しており、弾性栓体11を下面側から支持する。より具体的には、下面側支持部127は、周縁部113の下面側、接液面側段差部117、及び接液面112の周辺部118と溶着した状態で支持している。これにより、弾性栓体11は、外枠体12の第1上面側支持部122と下面側支持部127とにより挟持された状態で、外枠体12の内部に固定される。
【0045】
下側フランジ部124は、下面側支持部127の端部において、外方に張り出すように設けられている。下側フランジ部124は、前述の通り、上側フランジ部123と接触面で溶着しており、一体となってフランジ部を構成するものである。従って、その詳細な説明は省略する。
【0046】
外枠体12(上側枠部12a及び下側枠部12b)を構成する材料としては、合成樹脂のうち、医療用途としての安全性が確立されたものを好適に用いることができる。中でも熱可塑性樹脂を用いるのが一般的である。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂等の従来医療用途に用いられている樹脂が好ましいが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、外枠体12を構成する材料には、着色剤等の任意の成分を添加してもよい。
【0047】
以上の通り、本実施の形態の医療用キャップ10は、弾性栓体11の周縁部113における側周面114に帯状溝115を設け、下側枠部12bに帯状溝115と溶着する突条部126を設けた構成を採用している。これにより、本実施の形態では、帯状溝115を備えない弾性栓体と、突条部126を備えない外枠体とにより構成される従来の医療用キャップと比較して、弾性栓体11と下側枠部12bとの溶着面積を大きくしている。その結果、本実施の形態では、弾性栓体11を外枠体12の内部により強固に保持することができ、穿刺針による針刺し及び針抜きの際に弾性栓体11のめくれや位置ズレの発生を良好に防止することができる
【0048】
[医療用キャップの製造方法]
次に、本実施の形態に係る医療用キャップ10の製造方法について、
図6及び
図7に基づき説明する。
図6は、実施の形態1に係る医療用キャップ10の製造方法を説明するための断面模式図であって、同図(a)は上側枠部12aを成形する様子を表し、同図(b)は第1上金型31と共通下金型32を型開きした様子を表し、同図(c)は上側枠部12aに弾性栓体11を載置した様子を表す。
図7は、医療用キャップ10の製造方法を説明するための断面模式図であって、同図(a)は下側枠部12bを成形する様子を表し、同図(b)は第2上金型35と共通下金型32を型開きした様子を表す。
【0049】
医療用キャップ10の製造方法は、弾性栓体11を作製する工程と、上側枠部12aを成形する工程と、成形した上側枠部12aに弾性栓体11を載置した状態で、下側枠部12bを成形する工程とを少なくとも含む。
【0050】
弾性栓体11の作製工程は、例えば、弾性栓体11の構成材料としての熱可塑性エラストマーを圧潰しながら行うコンプレッション成形や射出成形等の公知の方法により行われる。コンプレッション成形及び射出成形の成形条件は特に限定されず、弾性栓体11の構成材料に応じて設定することができる。
【0051】
上側枠部12aの成形工程は、
図6(a)に示すように、第1上金型31と共通下金型32とを用いて、上側枠部12aを射出成形することにより行われる。第1上金型31はコア(凸型)であり、共通下金型32はキャビティ(凹型)である。第1上金型31と共通下金型32は、両者を型閉じした際に、上側枠部12aの成形が可能なキャビティが形成される構造となっている。
【0052】
上側枠部12aの構成材料となる樹脂を溶融した溶融樹脂33は、第1上金型31内のスプル、ランナーを通過し、ゲート34からキャビティ内に注入される。射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。射出された溶融樹脂33は所定時間冷却される。冷却時間は特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。
【0053】
次に、
図6(b)に示すように、第1上金型31と共通下金型32の型開きを行った後、
図6(c)に示すように、上側枠部12aの内部に弾性栓体11を載置する。弾性栓体11の載置は、接液面112(下面)が上向きとなるように載置する。ここで、上側枠部12aの開口部の内径は、弾性栓体11の針刺面111の直径と比べ大きくなるように設計され、成形されているのが好ましい。これにより、弾性栓体11を上側枠部12a内に載置する際に、開口部の内周面と、弾性栓体11の針刺面111を形成する部分との間に、例えば数mm程度のクリアランスを環状に形成することができる。その結果、弾性栓体11の上側枠部12aへのインサートを容易に行うことができる。
【0054】
続いて、
図7(a)に示すように、下側枠部12bの成形を行う。下側枠部12bの成形には、第2上金型35と共通下金型32とを用いる。第2上金型35はコア(凸型)である。第2上金型35と共通下金型32は、両者を型閉じすると、下側枠部12bの成形が可能なキャビティが形成される構造となっている。
【0055】
次に、型閉じにより形成されたキャビティ内に、下側枠部12bの構成材料となる樹脂を溶融した溶融樹脂37を注入する。溶融樹脂37は、第2上金型35内のスプル、ランナーを通過し、ゲート36からキャビティ内に注入される。キャビティ内に注入されると、弾性栓体11及び上側枠部12aのうち、溶融樹脂37と接触した表面は、溶融樹脂37の熱により溶融する。注入後、溶融樹脂37は所定時間冷却される。冷却後、弾性栓体11及び上側枠部12aとの接触面で溶着した状態の、下側枠部12bが成形される。尚、溶融樹脂37の射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。また、溶融樹脂37の冷却時間も特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。
【0056】
続いて、
図7(b)に示すように、第2上金型35と共通下金型32との型開きを行うと、本実施の形態に係る医療用キャップ10が得られる。
【0057】
(実施の形態2)
[医療用キャップ]
本実施の形態2に係る医療用キャップについて、
図8及び
図9を参照しながら以下に説明する。
図8(a)及び
図8(b)は、本実施の形態の医療用キャップを表す断面模式図である。
図9は、
図8(a)に示す医療用キャップのB-B線矢視断面図である。尚、実施の形態1の医療用キャップ10と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0058】
本実施の形態2に係る医療用キャップ20は、実施の形態1の医療用キャップ10と比較して、外枠体22の下側枠部22bが、弾性栓体11の周縁部113を上面側から支持する第2上面側支持部221を備える点が異なる。また、上側枠部22aが、下側枠部22bの第2上面側支持部221を覆うようにして、弾性栓体11の周縁部113を上面側から支持する第1上面側支持部222を備える点も異なる。この様な構成であると、外枠体22の下側枠部22bが、弾性栓体11の周縁部113を上面側及び下面側から支持することが可能となる。また、第2上面側支持部221は、弾性栓体11の周縁部113の上面側の外周縁で溶着しているので、穿刺針による針刺面111への針刺し及び針抜きの際、弾性栓体11のめくれや位置ずれを一層防止することができる。
【0059】
第2上面側支持部221は突条部126と接合されており、弾性栓体11の周縁部113の上面側の外周縁を一部を覆うように環状に設けられている。また、第2上面側支持部221は、前記外周縁との接触面において弾性栓体11と溶着している。これにより、第2上面側支持部221は弾性栓体11を上面側から支持している。ここで、下側枠部22bにおいては、下面側支持部127が弾性栓体11を下面側から支持しているので、弾性栓体11は下面側支持部127と第2上面側支持部221とにより挟持された状態で、外枠体22の内部に固定される。
【0060】
上側枠部22aの第1上面側支持部222は、第2上面側支持部221を覆うように設けられている。また、第1上面側支持部222は、第2上面側支持部221との接触面において溶着している。さらに、第1上面側支持部222の一部は、弾性栓体11の周縁部113とも当接している。
【0061】
[医療用キャップの製造方法]
次に、本実施の形態に係る医療用キャップ20の製造方法について、
図10及び
図11に基づき説明する。
図10は、実施の形態2に係る医療用キャップ20の製造方法を説明するための断面模式図であって、同図(a)は上側枠部22aを成形する様子を表し、同図(b)は第1上金型41と共通下金型42を型開きした様子を表し、同図(c)は上側枠部22aに弾性栓体11を載置した様子を表す。
図11は、医療用キャップ20の製造方法を説明するための断面模式図であって、同図(a)は下側枠部22bを成形する様子を表し、同図(b)は第2上金型45と共通下金型42を型開きした様子を表す。
【0062】
先ず、弾性栓体11の作製工程は、実施の形態1の場合と同様である。従って、その説明は省略する。
【0063】
次に、上側枠部22aの成形工程は、
図10(a)に示すように、第1上金型41と共通下金型42とを用いて、上側枠部22aを射出成形することにより行われる。第1上金型41はコア(凸型)であり、共通下金型42はキャビティ(凹型)である。第1上金型41と共通下金型42は、両者を型閉じした際に、上側枠部22aの成形が可能なキャビティが形成される構造となっている。
【0064】
上側枠部22aの構成材料となる樹脂を溶融した溶融樹脂43は、第1上金型41内のスプル、ランナーを通過し、ゲート44からキャビティ内に注入される。射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。射出された溶融樹脂43は所定時間冷却される。冷却時間は特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。
【0065】
次に、
図10(b)に示すように、第1上金型41と共通下金型42の型開きを行った後、
図10(c)に示すように、上側枠部22aの内部に弾性栓体11を載置する。弾性栓体11の載置は、接液面112(下面)が上向きとなるように載置する。尚、実施の形態1でも述べた通り、上側枠部22aの開口部の内径は、弾性栓体11の針刺面111の直径と比べ大きくなるように設計され、成形されているのが好ましい。
【0066】
続いて、
図11(a)に示すように、下側枠部22bの成形を行う。下側枠部22bの成形には、第2上金型45と共通下金型42とを用いる。第2上金型45と共通下金型42は、両者を型閉じすると、下側枠部22bの成形が可能なキャビティが形成される構造となっている。
【0067】
次に、型閉じにより形成されたキャビティ内に、下側枠部22bの構成材料となる樹脂を溶融した溶融樹脂47を注入する。溶融樹脂47は、第2上金型45内のスプル、ランナーを通過し、ゲート46からキャビティ内に注入する。キャビティ内に注入されると、弾性栓体11及び上側枠部22aのうち、溶融樹脂47と接触した表面は、溶融樹脂47の熱により溶融する。注入後、溶融樹脂47は所定時間冷却される。冷却後、弾性栓体11及び上側枠部22aとの接触面で溶着した状態の、下側枠部22bが成形される。尚、溶融樹脂47の射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。また、溶融樹脂47の冷却時間も特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。
【0068】
続いて、
図11(b)に示すように、第2上金型45と共通下金型42との型開きを行うと、本実施の形態に係る医療用キャップ20が得られる。
【0069】
(その他の事項)
以上に述べた各実施の形態に於いては、外枠体が上側枠部と下側枠部からなる態様を例にして説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではない。
【0070】
例えば、本発明は、
図12(a)、
図12(b)及び
図13に示すように、一体的に成形された外枠体51の内部に弾性栓体11が保持された構造の医療用キャップ30であってもよい。
図12(a)及び
図12(b)は、他の実施の形態に係る医療用キャップ30を表す断面模式図である。また、
図13は、
図12(a)に示す医療用キャップのC-C線矢視断面図である。
【0071】
外枠体51は、その内部に弾性栓体11を保持することが可能であり、略円筒状の本体部52と、上面側支持部(第1上面側支持部)53と、下面側支持部54と、突条部55と、フランジ部56とを少なくとも備える。
【0072】
上面側支持部53は、弾性栓体11の周縁部113を針刺面111(上面)側から支持する。下面側支持部54は、弾性栓体11の周縁部113を接液面112(下面)側から支持する。突条部55は、弾性栓体11の帯状溝115と、本体部52の内側面57との間の空間を埋め込むように設けられている。フランジ部56は、薬剤容器の口部との接合に用いられる。
【0073】
外枠体51は、弾性栓体11との接触面の全面において溶着している。特に、突条部55は弾性栓体11の帯状溝115において、本体部52の内側面57との間の空間を埋め込むように設けられるので、弾性栓体11と外枠体51との間の溶着面積を大きくすることができる。これにより、穿刺針による針刺し及び針抜きの際に、弾性栓体11のめくれや位置ズレによる空隙の発生を防止することができる。その結果、密閉性を向上させ、薬液や輸液等の漏洩、及び空気との接触による変質を防止することができる。
【0074】
また、以上に述べた各実施の形態に於いては、弾性栓体として、上面及び下面のそれぞれで、周縁部と針刺面及び接液面との間に、それぞれ針刺面側段差部又は接液面側段差部が設けられている態様を例にして説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではない。
【0075】
例えば、本発明は、
図14(a)及び
図14(b)に示す弾性栓体61のように、周縁部113と針刺面111又は接液面112との間に、針刺面側段差部及び接液面側段差部がそれぞれ設けられておらず、上面及び下面が平坦状となったものを用いることも可能である。また、
図15(a)及び
図15(b)に示す弾性栓体71のように、周縁部113と針刺面111との間には針刺面側段差部116が設けられ、周縁部113と接液面112との間には接液面側段差部が設けられておらず、下面が平坦状となったものを用いることも可能である。
【0076】
さらに、以上に述べた各実施の形態に於いては、弾性栓体の針刺面の少なくとも一部、より具体的には、例えば、凹部が設けられている中央部にシリコーンオイルが含浸されていてもよい(以下、この領域を「シリコーンオイル含浸領域」という。)。これにより、凹部に穿刺針を刺通しても、含浸させているシリコーンオイルが穿刺針に対する弾性栓体の刺通抵抗(刺針抵抗、穿刺抵抗又は摩擦抵抗)を低減させる。その結果、各実施の形態では、刺通性に優れ、弾性栓体のめくれや位置ズレの発生を一層抑制した医療用キャップを提供することができる。また穿刺針には、刺通抵抗の低減のために、その表面にコーティング剤を塗布する場合がある。しかし、各実施の形態の医療用キャップでは、コーティング剤が塗布されていない穿刺針であっても、弾性栓体に含浸しているシリコーンオイルが刺通抵抗を低減させるため、良好な刺通性を示す。また、繰り返しの使用により、コーティング剤が剥離した穿刺針の場合であっても刺通抵抗の低減が可能である。さらに、針刺面に穿刺針の刺通を用意にするための切れ込みを設けなくとも、穿刺針の刺通抵抗を低減できるため、当該切れ込み等からの液漏れを防止しながら穿刺針の刺通性を向上させることができる。
【0077】
シリコーンオイル含浸領域に於けるシリコーンオイルの含浸量は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。シリコーンオイルの含浸量は、針刺面に塗布するシリコーンオイルの塗布量により調節可能である。また、シリコーンオイル含浸領域は少なくとも穿刺針による刺通が予定されている領域を含んでいればよく、その面積(範囲)や形状は特に限定されない。例えば、針刺面の全面にシリコーンオイルが含浸されていてもよい。また、シリコーンオイル含浸領域は、針刺面に複数設けられていてもよい。
【0078】
尚、シリコーンオイル含浸領域では、少なくともシリコーンオイルが含浸されていれば足りるが、さらに、シリコーンオイル含浸領域の表面に、シリコーンオイルからなる被覆膜が設けられていてもよい。
【0079】
また、弾性栓体のシリコーンオイル含浸領域に於ける刺通抵抗は、49N未満であることが好ましく、22N以上39N以下であることがより好ましく、24.5N以上34N以下であることが特に好ましい。前記刺針抵抗を49N未満にすることで、穿刺針をシリコーンオイル含浸領域に刺通する際の刺通性をさらに向上させることができる。尚、刺通抵抗の下限としては、弾性栓体に刺通させた穿刺針の保持力が損なわれない程度であれば特に限定されない。また「刺通抵抗」とは、弾性栓体の凹部に、シリコーンオイルが表面に塗布されていない樹脂針(長さ29mm、外径:4.6mm)を200mm/minの速度で刺通し、その際に穿刺針に加えられる力(穿刺力又は刺針力)を意味する。刺通抵抗は、例えば、含浸させるシリコーンオイルの粘度を調節することにより制御可能である。例えば、シリコーンオイルの粘度を大きくすることにより、刺通抵抗の値を低減することができる。また「刺通性」とは、穿刺針により弾性栓体を刺通したときの抵抗の程度を意味する。刺通抵抗の値が小さい程、刺通性が向上する。
【0080】
また、弾性栓体のシリコーンオイル含浸領域は、この領域に刺通した穿刺針が針抜けするまでの静荷重が、好ましくは8.6N以上、より好ましくは8.8N以上25N以下、特に好ましくは9.2N以上22N以下となる係止力(又は保持力)を有する。静荷重を8.6N以上にすることにより、刺通後の穿刺針の針抜けを良好に防止することができる。尚、弾性栓体に刺通させた穿刺針の抜針が過度に困難になるのを防止するとの観点からは、静荷重は30N以下であることが好ましい。静荷重の値は、例えば、弾性栓体の針刺面に於けるシリコーンオイル含浸領域に樹脂針(長さ22mm、外径:3.5mm)を刺通した後、当該樹脂針に600gの重さの重りを吊り下げ、1分経過する毎に、50g又は100gずつ重りを追加していき、樹脂針が弾性栓体から針抜けするときの重りの重さを測定することにより得られる。また、静荷重の値は、含浸させるシリコーンオイルの粘度及びシリコーンオイルの塗布量を調節することにより制御可能である。例えば、シリコーンオイルの粘度を小さくすることにより、静荷重の値を大きくすることができる。また、シリコーンオイルの塗布量を抑制することにより、静荷重の値が低減するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0081】
10、20、30 医療用キャップ
11、61、71 弾性栓体
12、22、51 外枠体
12a、22a 上側枠部
12b、22b 下側枠部
31、41 第1上金型
32、42 共通下金型
33、37、43 溶融樹脂
34、36、44、46 ゲート
35、45 第2上金型
52 本体部
53 上面側支持部
54、127 下面側支持部
55、126 突条部
56 フランジ部
57、125 内側面
111 針刺面
111a 凹部
112 接液面
113 周縁部
114 側周面
115 帯状溝
115a 端面
116 針刺面側段差部
117 接液面側段差部
118 周辺部
121 外壁部
122、222 第1上面側支持部
123 上側フランジ部
124 下側フランジ部
221 第2上面側支持部