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  • 特許-使い捨ておむつ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20240829BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61F13/49 311A
A61F13/51
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021017963
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2022120913
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】514192756
【氏名又は名称】株式会社ネオックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】安野 民雄
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-532096(JP,A)
【文献】特開2017-018549(JP,A)
【文献】特開2016-185175(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198929(WO,A1)
【文献】特開2005-246811(JP,A)
【文献】特開2014-201023(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0239104(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の背中に当たる背中被覆部を有し、前記背中被覆部が伸縮性を有する使い捨ておむつであって、
前記背中被覆部に、横方向である長手方向に引き伸ばされて立体化する立体化部材が備えられ、
前記立体化部材が、柔軟なシート材に一定方向に延びるスリットを千鳥状に配設したスリットシートを重ね合わせた状態にして構成され、
前記立体化部材が、前記スリットの延びる方向を前記立体化部材の長手方向と交差する上下方向に向けるとともに、前記立体化部材の長手方向の両端部が収縮状態の前記背中被覆部に対して固定された
使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記立体化部材が、前記背中被覆部を構成し人体に接する内側シートの下に備えられた
請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記立体化部材が、前記スリットシートを巻き折りして又は丸めて構成された
請求項1または請求項2に記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記立体化部材が吸水機能を有するものである
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、背中漏れ防止機能を有している使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
おむつをしていても背中から便が漏れる背中漏れは、予期せぬときに起こり、親や介護者にとって悩みの種であった。
【0003】
背中漏れ防止対策として、おむつの正しい付け方やサイズの確認のほか、一般的には背中とおむつとの間にティッシュペーパーを挟むことが行われていた。下記特許文献1のように専用の漏れ防止パッドも案出されている。
【0004】
漏れ防止パッドは、吸水性を有する素材を円筒状にしたものであって、使用に際しては、両面テープでおむつに固定する。仰向けに寝た状態では漏れ防止パッドが潰れ、腰に違和感がないとされている。
【0005】
しかし、漏れ防止パッドは円筒状であるので、押しつぶされた時に人体の曲面に対応した形には変形しにくい。また、漏れ防止パッドは、おむつ着用の都度取り付けて使用するものであるため、漏れ防止パッドの装着を失念することもあり、その場合には効果が得られない。
【0006】
この点、下記特許文献2には、背漏れ防止ポケットを備えた使い捨ておむつが開示されている。このおむつは、前身頃から股間部を通り後身頃にわたるように外装体に取り付けられた内装体のウエスト側の部分に、股間部側に入り口を有するポケットを備えている。便はポケットで受けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-18549号公報
【文献】特開2019-54939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、人体の背面は背骨に対応する部分がその左右両側部分よりも凹んでいる。このため、いくら弾性体で締め付けたとしても、凹み部分におむつを密着させることはできない。特許文献2のようにポケットを備えていても、ポケットはその部分を構成する内装体の一部であり、特別に膨らんで積極的に隙間を埋めるわけではないので、ポケット部分は人体に密着するとは限らない。人体の凹曲面の形状は人それぞれ多様であるので、ポケット部分が当たることで人体との隙間が少しでも小さくなればよいが、そうでない場合には確実性の高い漏れ防止効果は望めない。
【0009】
そこで、この発明は、着用したときに背中とおむつの間の隙間を柔軟に変形して埋める構成を採用して、背中漏れ防止の確実性を高めることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのための手段は、人体の背中に当たる背中被覆部を有し、前記背中被覆部が伸縮性を有する使い捨ておむつであって、前記背中被覆部に、横方向である長手方向に引き伸ばされて立体化する立体化部材が備えられ、前記立体化部材が、柔軟なシート材に一定方向に延びるスリットを千鳥状に配設したスリットシートを重ね合わせた状態にして構成され、前記立体化部材が、前記スリットの延びる方向を前記立体化部材の長手方向と交差する上下方向に向けるとともに、前記立体化部材の長手方向の両端部が収縮状態の前記背中被覆部に対して固定された使い捨ておむつである。
【0011】
この構成では、使い捨ておむつを着用する際に、背中被覆部を伸ばすと立体化部が引き伸ばされる。引き伸ばされた立体化部材は立体化して厚みのある状態になるとともに、周囲の形状に合わせて柔軟に変形し、人体との間の隙間を埋める。立体化部材は、柔軟なスリットシートを重ね合わせた状態にして構成されているので、多様な曲面形状に対応して変形するうえ、人体に対する当たりは柔らかい。立体化部材は使用に際して初めて立体化するものであるので、使用前の状態において嵩張らない。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、着用に際して自動的に立体化して、存在する隙間に応じてこの隙間を埋める立体化部材を備えたので、背中漏れを確実に防止することができる。しかも、立体化部材はスリットシートで構成されているので、立体化部材の変形は自在であるうえにクッション性も有し人体に対する当たりは柔らかい。このため、人体にストレスを与えることもなく背中漏れ防止を実現できる。また立体化部材を備えていてもおむつは使用前において嵩張ることはないので、輸送や管理を効率的に行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】使い捨ておむつの斜視図。
図2】スリットシートの表面図。
図3】立体化部材の断面図。
図4】立体化部材を内蔵した背中被覆部の断面図。
図5】立体化部材の変形態様を示す断面図。
図6】立体化部材の作用を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、使い捨ておむつ11(以下、「おむつ」という)と、おむつ11に内蔵された要部を示す斜視図である。
【0016】
図示例のおむつ11は、いわゆるパンツタイプであるが、テープタイプであってもよい。いずれのおむつ11も、人体の背中に当たる背中被覆部12を有し、フィット性を高めるために背中被覆部12は伸縮性を有している。なお、ここで「背中」とは腰を含む意味である。
【0017】
このおむつ11は、背中漏れ防止の確実性を高めるため、着用したときに背中との間の隙間を柔軟に変形して埋める構成を採用している。
【0018】
すなわち、おむつ11は背中被覆部12に、横方向である長手方向に引き伸ばされると図1に仮想線で示したように立体化する立体化部材31を備えている。
【0019】
立体化部材31は、図2に示したようなスリットシート32を重ね合わせた状態にして構成されている。スリットシート32は、シート材33に一定方向に延びるスリット34を千鳥状に配設したものである。スリット34はシート材33の厚み方向に貫通し、スリット34の長手方向と交差する方向に引っ張ると開いて、スリット34の周辺部分が起立または倒伏する。
【0020】
図示例のスリット34は直線からなり、一直線上に複数のスリット34が間欠形成されている。スリット34が一直線上に並ぶ部分をスリット列35とし、複数のスリット列35はスリット34の長手方向と直交する方向に並設される。並設に際して隣り合うスリット列35同士において、スリット34の長手方向の中間位置とスリット34間の中間位置が並設方向に並べられる。
【0021】
スリットシート32を構成するシート材33には柔軟な素材が使用される。そのシート材33には、通気性や柔軟性の点から例えば不織布が好適に用いられる。
【0022】
このようなスリットシート32は、図3の(a)に示したように巻き折りして、前述の重ね合わせた状態に構成される。巻き折りする際の折り線36は、図2に仮想線で示したように、スリット34の長手方向と直交する方向である。また重ね合わせる数(層数)は、スリットシート32の厚さや柔軟性などに応じて設定され、例えば図2に仮想線で示した位置に巻き折りすると6層構造となる。
【0023】
巻き折りされたスリットシート32は、図1に示したような偏平な短冊板状の立体化部材31となる。立体化部材31の長さは、引き伸ばされた時に背中漏れを防止するのに十分な長さであり、例えば胴回りの3分の1程度の長さに設定されるとよい。立体化部の太さ(幅)は、立体化して膨らんだ時に隙間を埋めて、便を堰き止められるように適宜設定される。
【0024】
スリットシート32を構成するシート材33には、柔軟性に加えて、吸水機能を有するものを使用することもできる。吸水機能は、シート材33に高吸水性の樹脂や繊維を保持させることで得られる。
【0025】
立体化部材31は、スリットシート32を巻き折りするほか、円筒状に丸めて構成してもよい。また、図3の(b)に示したように九十九折状に重ねてもよく、図3の(c)のように複数枚のスリットシート32を重ね合わせてもよい。図3の(d)に示した例は、二つ折りしたスリットシート32同士を噛み合わせるように重ね合わせたものである。
【0026】
立体化部材31が吸水機能を有するようにするためには、前述したようにスリットシート32自体に吸水性を持たせるほか、図3の(e)に示したように、立体化部材31の内部に別体の吸水性シート37を備えてもよい。吸水性シート37は高吸水性の不織布等で構成し得る。
【0027】
このような立体化部材31は、その長手方向が背中被覆部12の腰回りに沿って延びるように内蔵される。立体化部材31のスリット34は立体化部材31の長手方向と交差する方向に延びているので、スリット34の延びる方向はおむつ11の上下方向となる。
【0028】
内蔵に際して立体化部材31は背中被覆部12に対して固定される。具体的には、図4の模式図に示したように、自然長における立体化部材31の長手方向の両端部31aが収縮(自然長)状態の背中被覆部12に固定される。
【0029】
図4中、21は背中被覆部12を構成し人体に接する内側シートであり、22は背中被覆部12を構成する外側シートである。内側シート21と外側シート22は引き伸ばしできるように皺を有する状態であり、外側シート22の内部には弾性部材23が備えられている。弾性部材23は、例えば糸ゴムや、帯状、網状、フィルム状の弾性材料で構成される。
【0030】
背中被覆部12に内蔵された立体化部材31は、内側シート21の下に位置する、つまり内側シート21で覆われることになる。
【0031】
立体化部材31は、外側シート22に対向する面における両端部31aのみが図4に塗りつぶして示した接着部38によって固定される。接着部38は、ホットメルト接着剤やヒートシール、超音波溶着等の適宜手段で構成できる。
【0032】
立体化部材31の固定に際しては、立体化部材31の自然長と伸長性と、背中被覆部12の伸長性を考慮して、背中被覆部12における立体化部材31の両端部31aの固定位置が設定される。図4に示した例では、背中被覆部12における立体化部材31の両端部31aを固定する間隔を、自然長における立体化部材31の両端部31a間の距離と同じにしている。立体化部材31の伸張性が背中被覆部12と比較して低く、立体化部材31のためにおむつ11の着用ができなくなる場合や、おむつ11の着用動作で立体化部材31が引き伸ばされ過ぎるという場合には、背中被覆部12における立体化部材31の両端部31aを固定する間隔を立体化部材31の自然長よりも短くする。
【0033】
以上のように構成されたおむつ11は、着用するときに背中被覆部12が引き伸ばされると、内部の立体化部材31も自動的に引き伸ばされる。図1に示したようなパンツタイプのおむつ11では、履かせる動作によって、テープタイプのおむつではテープを留めるときに背中被覆部12が引っ張られる。
【0034】
立体化部材31が引き伸ばされると、図5に示したように、スリットシート32の重なり合う部分がそれぞれ立体化する。すなわち、スリット34が開き、スリット34の周囲が起立しまた倒伏して、スリットシート32の厚み方向の嵩が増す。これにより、図1に仮想線で示したように立体化部材31が膨らむ。つまり、立体化部材31はおむつを着用すると自動的に膨らむ。なお、図5においては便宜上、3層の立体化部材31を示した。
【0035】
このように立体化部材31が膨らむため、作用状態の断面図である図6に模式的に示したように、外側シート22と共に左右方向に延びて立体化した立体化部材31は、人体の背面における凹んでいることによってできる隙間を積極的に埋める。
【0036】
膨らんだ立体化部材31は、凹曲面に沿って柔軟に変形するので、多様な形態の隙間でも閉じることができる。しかも、立体化部材31はスリット34が開いてその周囲が起伏して立体化するので、スリットシート32の素材と相まって柔らかく、人体に対する過度の圧迫を生じさせることはない。立体化部材31がたとえ円筒状に丸めて構成されたものであっても、柔軟な変形性ゆえに、隙間を閉じることと人体にストレスを与えないことの両立をはかれる。
【0037】
また、立体化部材31は内側シート21の下に備えられており、内側シート21で覆われていることになるので、内側シート21が緩衝作用を果たし、人体に対する感触を良好な状態できる。
【0038】
このようにして、おむつ11の立体化部材31は背中にできる隙間を積極的に埋めるので、背中漏れを確実に防止できるうえ、着用感を良好にすることもできる。
【0039】
また、立体化部材31はスリットシート32を巻き折りして構成されているので、一体性は高い。このため、人体の動きに対しても追従性が良好で、確実な効果を期待できる。
【0040】
立体化部材31が吸水機能を有するものである場合には、吸水機能が発揮されることによって、より確実に背中漏れを防げる。
【符号の説明】
【0041】
11…使い捨ておむつ
12…背中被覆部
31…立体化部材
31a…端部
32…スリットシート
33…シート材
34…スリット
37…吸水性シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6