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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】DINレール取付装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/12 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
H05K7/12 S
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021155071
(22)【出願日】2021-09-24
(65)【公開番号】P2023046465
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】598108799
【氏名又は名称】泰和電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】守 正剛
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 鉄夫
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-048276(JP,A)
【文献】特開2006-253531(JP,A)
【文献】特開2004-259900(JP,A)
【文献】実開昭61-151387(JP,U)
【文献】特開2004-260021(JP,A)
【文献】特開2012-174715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DINレールに着脱可能に取り付けられるDINレール取付装置であって、
DINレールを着脱可能に嵌合するレール溝が設けられたベース部材と、
コイルばねの付勢力を利用して前記レール溝とDINレールとの嵌合を保持するロック部材と、
を備え、
前記レール溝幅方向の一方の端部には、DINレール幅方向の一方の端縁と係合するレール係合部が突設され、
前記ロック部材の先端には、前記レール溝に嵌合されたDINレールの他方の端縁に係合する係合端部が設けられ、
前記レール係合部とDINレールの一方の端縁が係合した状態で、前記係合端部とDINレールの他方の端縁が係合することにより、前記レール溝とDINレールとの嵌合を保持することとし、
前記ベース部材には、さらに、前記レール溝の他方の端部に向かって垂直に延伸しかつ前記ロック部材を摺動可能に嵌合するスライド溝が設けられ、
前記スライド溝には、前記ロック部材を付勢する前記コイルばねを支持し前記ロック部材の摺動方向におけるDINレールから遠ざかる方向への動きの範囲を規制する略直方体形状の係止部と、前記ロック部材を摺動方向に進退可能に案内するガイド部とを設け、前記係止部におけるレール溝側の面には、前記コイルばねのいずれか一方の先端を挿入した状態で保持する第1のばね受け穴部を設け、
前記ロック部材には、さらに、前記コイルばねを挿入するための開口であるばね挿入口と、前記ガイド部と摺動方向において係合するガイド係合部を設け、前記ばね挿入口の内部のロック部材先端側には、前記第1のばね受け穴部の穴よりも深めに形成されかつ前記コイルばねの他方の先端を挿入した状態で保持する第2のばね受け穴部を設け、
前記ロック部材は、前記コイルばねの他方の先端が前記第2のばね受け穴部の最深部に突き当たるまで挿通され、前記コイルばねの一方の先端が前記第1のばね受け穴部に嵌め込まれ、かつ前記ガイド部と前記ガイド係合部が係合した状態において、前記係合端部とDINレールの端縁が係合するロック位置から、前記係止部に支持されたコイルばねが全圧縮したときの位置の範囲で、前記スライド溝を進退可能に摺動する、
ことを特徴とするDINレール取付装置。
【請求項2】
前記レール係合部周辺のレール溝上に、DINレールの寸法誤差を吸収するための突起部を設ける、
ことを特徴とする請求項1に記載のDINレール取付装置。
【請求項3】
前記ばね挿入口は、短手方向を前記スライドに設けられた前記係止部を挿通可能な長さとし、かつ長手方向を前記ロック部材の摺動方向の動きを可能とする長さとする
ことを特徴とする請求項1または2に記載のDINレール取付装置。
【請求項4】
前記ロック部材は、前記係止部に支持された前記コイルばねの付勢力により前記係合端部とDINレールの端縁が係合する位置を保持する、
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載のDINレール取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DINレールに着脱可能に取り付けられるDINレール取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DINレールは、DIN(Deutsche Industrie Normen:ドイツ工業規格)に準拠してどのメーカでも統一された寸法で製造されており、ねじによる取り付けに比べ着脱が容易で、施工およびメンテナンスの工数を削減できることから、各種制御コンポーネントを制御盤内に取り付ける際に一般的によく利用されている。そのため、DINレールに各種制御コンポーネントを取り付けるための機器であるDINレール取付装置にも、様々な構造および形状のものが存在する。
【0003】
たとえば、下記引用文献1には、直方体形状に形成された筐体とロック部材とを備えたDINレール取付型機器が開示されている。具体的には、このDINレール取付型機器の筐体には、DINレールと嵌合可能なレール溝が設けられ、さらに、このレール溝の幅方向の一方の端には、DINレールの係合片部と係合する係合部が突設されている。また、筐体には、レール溝に向かって垂直に延伸し、ロック部材を摺動可能に嵌合するスライダ溝が設けられている。また、ロック部材の表面には突出するように形成されたバネ片部が設けられ、さらに、ロック部材の先端にはDINレールの係合片部と係合する係合側端部が設けられている。操作者は、DINレールの一方の係合片部に、レール溝に突設された係合部を係合させて(引っ掛けて)、レール溝にDINレールを嵌合させる。そして、ロック部材の摺動により、係合側端部を、レール溝に嵌合されたDINレールの他方の係合片部に係合させる。このとき、ロック部材は、バネ片部がスライダ溝内のロック用凹部に係合することによりスライダ溝内で保持され、レール溝とDINレールとの嵌合状態を保持する。
【0004】
また、下記引用文献2には、DINレールに取付け固定するボディ部とボディ部にスライド自在に嵌合する板状のスライド部とを有する配線器具取付けアダプタが開示されている。具体的には、この配線器具取付けアダプタのボディ部には、DINレールと嵌合可能なレール溝が設けられ、さらに、このレール溝の幅方向の一方の端には、DINレールの一端縁に係合する係合片が設けられている。また、ボディ部には、レール溝に向かって垂直に延伸し、スライド部をスライド自在に挿入嵌合するスライド溝が形成されている。また、スライド部の両側面には先端部に差込み棒部を配した湾曲ばねが形成され、スライド部の先端にはDINレールの他端縁に係合する係合片が設けられている。また、スライド機構を組み立てる場合には、スライド部を、スライド溝に挿入し、湾曲ばねの先端部に配した差込み棒部をボディ部の差込み穴に差込み、固定する。これにより、ボディ部とスライド部とが湾曲ばねを介して弾性的に連結された状態になる。そして、配線器具取付けアダプタをDINレールに取付け固定する場合には、スライド部を引っ張ってスライドさせた状態で、レール溝に設けられた係合片とスライド部先端の係合片との間にDINレールを介入させた後、スライド部から手を離してスライド部を復帰させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-174715号公報(特許4844911号)
【文献】特開平6-223927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2に記載されたロック部材およびスライド部には、構造上、負荷に対して弱い部分が存在し、耐久性および信頼性の面で改善の余地が残る。
【0007】
具体的には、上記特許文献1においては、バネ片部の付け根部分や、ロック部材の表面に突出するように形成されたバネ片部の先端部分に、負担(曲げ、荷重等)が集中している。そのため、このロック部材を継続的に使用した場合には、使用を繰り返すことによる摩耗や変形、破損等の不具合により、筐体との係合を維持できなくなる可能性がある。
【0008】
また、上記特許文献2においては、スライド部の両側面に形成された湾曲ばねの付け根部分や、湾曲ばねの先端部およびその先端部に配した差込み棒部等に、スライド部のスライドによるねじれ方向の負荷(曲げ、荷重等)がかかる。そのため、このスライド部を継続的に使用した場合には、この負荷による破損等の不具合によって、ボディ部と連結された状態を維持できなくなる可能性がある。
【0009】
そして、筐体(ボディ部)との係合が維持できなくなると、ロック部材(スライド部)が後退してDINレールから外れるため、レール溝とDINレールとの嵌合状態を保持できなくなる。すなわち、DINレール取付装置がDINレールから外れる。
【0010】
また、従来から、DINレール(上記特許文献に記載されたDINレールの係合片部および端縁に相当)の摩耗および変形等の経年劣化によって発生する寸法変化や、DINレールの製造誤差等により、機器のぐらつきや機器を強く固定できない等の問題が生じているが、DINレール両端の係合による取り付けだけは、この問題を解決することはできない。
【0011】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、耐久性および信頼性に優れ、かつ経年劣化や製造誤差等によるDINレール側の寸法誤差を吸収して安定的な取り付けを可能とするDINレール取付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかるDINレール取付装置は、DINレールに着脱可能に取り付けられるDINレール取付装置であって、たとえば、DINレールを着脱可能に嵌合するレール溝が設けられたベース部材と、コイルばねの付勢力を利用してレール溝とDINレールとの嵌合を保持するロック部材と、を備える。また、レール溝幅方向の一方の端部には、DINレール幅方向の一方の端縁と係合するレール係合部が突設され、ロック部材の先端には、レール溝に嵌合されたDINレールの他方の端縁に係合する係合端部が設けられ、レール係合部とDINレールの一方の端縁が係合した状態で、係合端部とDINレールの他方の端縁が係合することにより、レール溝とDINレールとの嵌合を保持する。また、ベース部材には、さらに、上記レール溝の他方の端部に向かって垂直に延伸しかつロック部材を摺動可能に嵌合するスライド溝が設けられ、スライド溝には、ロック部材を付勢するコイルばねを支持しロック部材の摺動方向におけるDINレールから遠ざかる方向への動きの範囲を規制する略直方体形状の係止部と、ロック部材を摺動方向に進退可能に案内するガイド部とを設け、前記係止部におけるレール溝側の面には、前記コイルばねのいずれか一方の先端を挿入した状態で保持する第1のばね受け穴部を設け、ロック部材には、さらに、前記コイルばねを挿入するための開口であるばね挿入口と、ガイド部と摺動方向において係合するガイド係合部を設け、前記ばね挿入口内部のロック部材先端側には、前記第1のばね受け穴部の穴よりも深めに形成されかつ前記コイルばねの他方の先端を挿入した状態で保持する第2のばね受け穴部を設けることとした。そして、ロック部材は、前記コイルばねの他方の先端が前記第2のばね受け穴部の最深部に突き当たるまで挿通され、前記コイルばねの一方の先端が前記第1のばね受け穴部に嵌め込まれ、かつガイド部とガイド係合部が係合した状態において、係合端部とDINレールの端縁が係合するロック位置から、係止部に支持されたコイルばねが全圧縮したときの位置の範囲で、スライド溝を進退可能に摺動する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、従来から課題となっていた、構造上、負荷に対して弱い部分、たとえば、負担(曲げ、荷重等)が集中する箇所やねじれ方向の負荷(曲げ、荷重等)がかかる箇所を排除する構成とした。そして、ロック部材の摺動方向におけるの動きの範囲を規制し、ロック部材の摺動方向におけるの動きの範囲内では、ロック部材とベース部材との係合が常時維持され、DINレール取付装置のベース部材からロック部材が外れることがない取り付け構造を実現した。これにより、耐久性および信頼性に優れたDINレール取付装置を提供することができる。
【0014】
また、本発明にかかるDINレール取付装置においては、レール係合部周辺のレール溝上に、DINレールの寸法誤差を吸収するための突起部を設けることが望ましい。これにより、DINレールの摩耗および変形等の経年劣化によって発生する寸法変化や、DINレールの製造誤差等を吸収して、DINレールを安定的に強く保持することが可能となる。
【0015】
また、本発明にかかるDINレール取付装置においては、上記ばね挿入口は、短手方向をスライドに設けられた係止部を挿通可能な長さとし、長手方向をロック部材の摺動方向の動きを可能とする長さとする、ことが望ましい。
【0016】
また、本発明にかかるDINレール取付装置において、上記ロック部材は、係止部に支持されたコイルばねの付勢力により係合端部とDINレールの端縁が係合する位置を保持することとした。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかるDINレール取付装置によれば、耐久性および信頼性に優れたDINレール取付装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明にかかるDINレール取付装置の構造の一例を示す図である。
図2図2は、本発明にかかるDINレール取付装置を構成する部材を示す図である。
図3図3は、本発明にかかるDINレール取付装置を組み立てる手順を示す図である。
図4図4は、本発明にかかるDINレール取付装置を組み立てる手順を示す図である。
図5図5は、本発明にかかるDINレール取付装置をDINレールに取り付けた状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかるDINレール取付装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、本願の明細書および図面において、同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する場合がある。
【0020】
<構成>
図1は、本発明にかかるDINレール取付装置の構造の一例を示す図であり、詳細には、(a)はレール取付面を示す正面図であり、(b)は側面図である。また、図2は、本発明にかかるDINレール取付装置を構成する部材を示す図である。図1および図2において、本実施形態のDINレール取付装置1は、ベース部材10(図2(a)参照)と、ロック部材20(図2(b)参照)と、コイルばね30(図2(c)参照)とを備えている。なお、図2(b)は、右側がロック部材20を正面から見た図(正面図)であり、左側がロック部材20の側面図である。
【0021】
DINレール取付装置1は、DINに準拠するDINレールに着脱可能に取り付けられる機器であり、たとえば、コントローラユニット、PLC(Programmable Logic Controller)ユニット、インバータユニット、サーボユニット、電源ユニット、I/Oユニット、センサユニット、スイッチユニット、セーフユニット、リレーユニット等の制御機器の取付用に用いられる。なお、このDINレール取付装置1を用いてDINレールに取り付ける機器に、特に制限はなく、DINレール取付装置1は必要に応じてどのような機器をDINレールに取り付けるために用いてもよい。
【0022】
図1および図2に示すように、ベース部材10におけるレール取付面の左右方向には、全長に亘って延在し、DINレールを着脱可能に嵌合するレール溝11が設けられている。このレール溝11の上側端部には、DINレール幅方向の両端の周縁に沿って延伸する係合辺部と係合する係合部12が突設(本実施形態では左右2か所に配設)され(図1(b)参照)、さらに、係合部12周辺のレール溝11上には、DINレールの継続使用による係合辺部の摩耗および変形等の経年劣化によって発生する寸法変化や、DINレールの製造誤差等を吸収してDINレールを安定的に強く保持するために、約1mm程度の突起部13が設けられている。本実施形態では、一例として、各係合部12周辺のレール溝11上に、2つずつ突起部13が設けられている。なお、突起部13を設ける位置および数については、特に限定はなく、上記要因による寸法誤差を吸収して安定的にDINレールを保持可能なものであればよく、たとえば、各係合部12周辺のレール溝11上に突起部13を少なくとも1つ設けることが望ましい。
【0023】
また、ベース部材10におけるレール取付面の上下方向には、レール溝11の下側端部中央に向かって垂直に延伸し、ロック部材20を摺動可能に嵌合するスライド溝14が設けられている(図2(a)参照)。このスライド溝14の幅方向中央には、ロック部材20の厚みと同程度の長さでかつ略直方体形状の係止部15が設けられている。この係止部15は、ロック部材20の摺動方向におけるDINレールから遠ざかる方向への動きの範囲を規制するストッパーとしての機能を有する。また、略直方体形状の係止部15におけるレール溝11側の面には、コイルばね30のいずれか一方の先端を挿入した状態で保持するばね受け穴部16が設けられている。
【0024】
また、ベース部材10におけるスライド溝14の左右端部には、ロック部材20をスライド溝14の摺動方向に進退可能に案内するガイド部17が設けられている。このガイド部17は、ロック部材20と係合するようにスライド溝14の左右端部に沿って突設され、所定の間隙を介して部分的に設けられている。本実施形態では、一例として、ガイド部17の幅長と上記所定の間隙が略同一長となるようにガイド部17が配設され、かつスライド溝14を挟んで左右のガイド部17がそれぞれ対向する位置となるように4か所ずつ設けられている。すなわち、合計8つのガイド部17が突設されている(図2(a)参照)。
【0025】
また、ロック部材20は、レール溝11とDINレールとの嵌合状態を保持するための部材である。このロック部材20は、たとえば、スライド溝14内をレール溝11に対して進退可能に摺動するようにベース部材10に装着され、図1に示すように、通常状態において、コイルばね30によりレール溝11に向けて付勢されている。すなわち、ロック部材20の通常位置は、コイルばね30の付勢力によりDINレールをロックする位置(ロック位置)となる。また、このロック部材20の先端(図2(b)の上端)には、レール溝11に嵌合されたDINレールの係合辺部に係合する係合端部21が設けられ、この係合端部21とDINレールの係合辺部が係合することにより、レール溝11とDINレールとの嵌合状態が保持される。
【0026】
また、ロック部材20の側面には、ベース部材10に設けられたガイド部17と摺動方向において係合する係合部22が設けられている。この係合部22は、ガイド部17の上記所定の間隙に挿通可能な幅長で、部分的に突設されている。本実施形態においては、ロック部材20をスライド溝14に対して垂直方向から載せられるように構成し、たとえば、係合部22は、ロック部材20の左右側面に4か所ずつ配設されている(図2(b)参照)。また、係合部22がガイド部17と係合した状態において、ロック部材20は、スライド溝14内をレール溝11に対して進退可能に摺動する。
【0027】
また、ロック部材20後端の両側面には、摺動方向におけるDINレールへ近づく方向への動きの範囲を規制するストッパーとしての機能を有する係止部23が設けられている。これにより、コイルばね30の付勢力でDINレール方向へ摺動するロック部材20を、図1に示すように、係止部23とガイド部17が当接することによって係止する。
【0028】
また、ロック部材20の中央部分には、図2(c)に示すコイルばね30を挿入するための開口であるばね挿入口24が設けられている。なお、ばね挿入口24は、ロック部材20の摺動方向に長い矩形に形成され、図1に示すとおり、短手方向を略直方体形状の係止部15を挿通可能な長さとし、長手方向をロック部材20の摺動方向の動きを可能とする長さとする。また、ばね挿入口24内部のロック部材20先端側には、コイルばね30のいずれか一方の先端を挿入した状態で保持するばね受け穴部25が設けられている。
【0029】
そして、図1に示すように構成されたDINレール取付装置1において、ロック部材20の進退方向(摺動方向)の移動範囲は、ロック部材20の係止部23がベース部材10のガイド部17に当接する位置(ロック部材20が最も前進した位置:図1のロック部材20の位置)からコイルばね30が全圧縮したときの位置(ロック部材20が最も後退した位置)の範囲となる。なお、ロック部材20が最も後退した位置まで後退する場合、本実施形態では、コイルばね30を支持する係止部15がストッパーとなる。そして、ロック部材20は、コイルばね30の付勢力によって最も前進した位置に保持され、この位置がロック部材20の通常状態の位置となる。
【0030】
<組み立て手順>
つづいて、図2に示す各部材を用いて、図1に示すDINレール取付装置1を組み立てる手順について説明する。
【0031】
図3および図4は、本発明にかかるDINレール取付装置を組み立てる手順を示す図である。図3において、第1工程(S1)では、ロック部材20を、摺動方向と直交する方向(スライド溝14の表面に対して垂直方向)からスライド溝14上に載せる。具体的には、ロック部材20の係合部22をベース部材10のガイド部17の間隙に、そして、略直方体形状の係止部15をロック部材20のばね挿入口24に、それぞれ挿通することによって、ロック部材20をスライド溝14上に載せる。このとき、図3に示すとおり、略直方体形状の係止部15におけるレール溝11側の面とばね挿入口24とは当接することとし、ロック部材20の摺動方向(スライド方向)におけるDINレールから遠ざかる方向への動きの範囲を規制する。すなわち、ベース部材10およびロック部材20が本実施形態の構造を有することにより、ロック部材20は、図3に示す位置でのみスライド溝14上に載せることが可能となる。たとえば、ロック部材20の係合部22をその他のガイド部17の間隙に載せようとしてもベース部材10の係止部15が邪魔になり、一方、ロック部材20のばね挿入口24の上記と異なる位置に係止部15を挿通しようとしてもベース部材10のガイド部17が邪魔となり、図3に示す位置以外では、ロック部材20をスライド溝14の上に載せることができない構造となっている。なお、上記第1工程完了段階においては、ベース部材10のガイド部17とロック部材20の係合部22は係合していない。
【0032】
つぎに、第2工程(S2)では、ロック部材20を、第1工程で載せた位置(図3参照)から、係止部23がガイド部17に当接する位置(図4参照)まで、摺動する。このとき、ロック部材20は、ベース部材10のガイド部17とロック部材20の係合部22が係合した状態で、ロック位置まで前進する。
【0033】
最後に、第3工程(S3)では、コイルばね30の一方の先端をばね挿入口24から挿入し、さらに、その先端をばね受け穴部25の最深部に突き当たるまで挿通する。その後、コイルばね30の他方の先端をばね挿入口24から挿入し、さらに、その先端をばね受け穴部16に嵌め込む。なお、作業効率の簡易性とばねの外れ防止の観点から、ばね受け穴部25の穴は深めに形成され、ばね受け穴部16の穴はばね受け穴部25の穴よりも浅めに形成されているものとする。
【0034】
上記の第1工程から第3工程の作業により、ロック部材20のベース部材10への装着が完了し、図1に示すようなDINレール取付装置1が形成される。
【0035】
<DINレールへの取り付け、取り外し手順>
つづいて、本発明にかかるDINレール取付装置をDINレールに取り付ける手順、およびDINレールから取り外す手順、について説明する。
【0036】
図1(a)の状態において、DINレール取付装置1をDINレールに取り付ける場合は、まず、DINレールにおける一方の係合辺部とベース部材10に設けられた2つの係合部12とを係合させ、この係合を維持した状態で、DINレール取付装置1の下部を、ロック部材20の係合端部21がDINレールにおける他方の係合辺部に当接するまで移動させる。
【0037】
つぎに、ロック部材20の係合端部21がDINレールの他方の係合辺部に当接した状態から、DINレール取付装置1の下部をさらに押し込むと、係合端部21の傾斜面へ作用する力により、コイルばね30の付勢力に抗してロック部材20が後退を開始する。
【0038】
その後、DINレール取付装置1の下部をさらに押し込むことにより、ロック部材20がさらに後退し、係合端部21の先端がDINレールの係合辺部の端縁を乗り超えると、コイルばね30の付勢力によってロック部材20が前進する方向に戻され、すなわち、ロック位置まで押し戻され、ロック部材20の係合端部21とDINレールの係合辺部が係合する。これにより、レール溝11とDINレールが嵌合し、DINレール取付装置1がDINレールに取り付けられる。そして、ロック位置でロック部材20の係合端部21とDINレールの係合辺部との係合が継続している間は、レール溝11とDINレールとの嵌合状態が保持される。
【0039】
このとき、たとえば、DINレールの継続使用による係合辺部の摩耗および変形等によって発生する寸法変化や、DINレールの製造誤差が発生した場合であっても、係合部12周辺のレール溝11上に突起部13が設けられているため、寸法誤差を吸収してDINレールを安定的に強く保持することができる。
【0040】
図5は、DINレール取付装置1をDINレールに取り付けた状態の一例を示す図である。
【0041】
一方、図5の状態において、DINレール取付装置1をDINレールから取り外す場合は、たとえば、ドライバ等を使用してロック部材20をアンロック位置(ロック部材20の係合端部21がスライド溝14内に収納された位置)まで後退させ、ロック部材20の係合端部21とDINレールの係合辺部との係合状態を解除する。この状態で、DINレール取付装置1の下方をレール溝11から引き離し、さらに、ベース部材10に設けられた2つの係合部12をDINレールの係合辺部から外すことによって、DINレール取付装置1をDINレールから取り外す。
【0042】
<効果>
本実施形態においては、従来から課題となっていた、構造上、負荷に対して弱い部分、たとえば、負担(曲げ、荷重等)が集中する箇所やねじれ方向の負荷(曲げ、荷重等)がかかる箇所を排除する構成とした。そして、ロック部材20の摺動方向におけるの動きの範囲を規制し、ロック部材20の摺動方向におけるの動きの範囲内では、ロック部材20とベース部材10との係合が常時維持され、組み立てが完了したDINレール取付装置1のベース部材10からロック部材20が外れることがない取付構造を実現した。これにより、耐久性および信頼性に優れたDINレール取付装置を提供することができる。また、本実施形態においては、上記のように耐久性および信頼性に優れたDINレール取付装置1を、ベース部材10とロック部材20とコイルばね30とからなる非常に少ない部品点数で、かつ簡易な組み立て手順および低コストで、実現することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 DINレール取付装置
10 ベース部材
11 レール溝
12 係合部
13 突起部
14 スライド溝
15 係止部
16 ばね受け穴部
17 ガイド部
20 ロック部材
21 係合端部
22 係合部
23 係止部
24 ばね挿入口
25 ばね受け穴部
30 コイルばね
図1
図2
図3
図4
図5