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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】液体材料塗布方法および塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/00 20060101AFI20240829BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240829BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240829BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20240829BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B05D3/00 D
B05D7/00 K
B05C5/00 101
B05C11/00
B05C11/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022005868
(22)【出願日】2022-01-18
(65)【公開番号】P2023104710
(43)【公開日】2023-07-28
【審査請求日】2024-05-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390026387
【氏名又は名称】武蔵エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】生島 和正
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/019978(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/088921(WO,A1)
【文献】特開2012-173504(JP,A)
【文献】国際公開第2019/171791(WO,A1)
【文献】特開2019-062871(JP,A)
【文献】特表2016-524782(JP,A)
【文献】特表2017-529676(JP,A)
【文献】特開2003-338370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B05C 5/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置ズレを含んで配置された複数のワークに対して所定の塗布パターンで塗布を行う液体材料塗布方法であって、
前記複数のワークのそれぞれの水平位置情報を、初期走査経路を移動する撮像装置で測定する水平位置情報測定工程、
前記複数のワークのそれぞれの距離測定位置の高さ情報を距離測定装置で測定する高さ情報測定工程、
前記水平位置情報測定工程で測定した水平位置情報および前記高さ情報測定工程で測定した高さ情報に基づき、前記複数のワークに前記塗布パターンで塗布を行う塗布工程を備え、
前記高さ情報測定工程において、前記水平位置情報測定工程で測定した前記ワークの水平位置情報に基づき前記初期走査経路を、位置ズレを含んだワークのそれぞれの距離測定位置を通過するように補正し、当該補正された走査経路により前記距離測定装置が移動されることを特徴とする液体材料塗布方法。
【請求項2】
前記初期走査経路は、位置ずれなく配置された複数のワークの距離測定位置を、前記距離測定装置が通るように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の液体材料塗布方法。
【請求項3】
前記複数のワークが、ワーク載置部材に配置されたワークであることを特徴とする請求項1または2に記載の液体材料塗布方法。
【請求項4】
液体材料を吐出する吐出装置、前記撮像装置および前記距離測定装置を備える吐出ヘッドと、前記ワーク載置部材を固定するワークテーブルとを相対移動させることにより、位置ズレを含んで配置された複数のワークに対して所定の塗布パターンで塗布を行うことを特徴とする請求項3に記載の液体材料塗布方法。
【請求項5】
前記水平位置情報測定工程において、前記複数のワークの水平位置情報を前記撮像装置と前記複数のワークとを相対移動しながら連続測定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液体材料塗布方法。
【請求項6】
前記複数のワークが配列状にワーク載置部材に配置された同一のワークであり、
前記水平位置情報測定工程において、前記撮像装置が、前記ワーク載置部材に配置された第1行または第1列のワーク上を直線的に移動し、第1行または第1列の最後のワーク外で折り返すことで前記ワーク載置部材の第2行または第2列の端部に移動し、第2行または第2列のワーク上を直線的に移動する走査経路により移動されることを特徴とする請求項5に記載の液体材料塗布方法。
【請求項7】
前記水平位置情報測定工程の前記走査経路において、前記撮像装置が、前記最後のワーク外に位置してから1または複数の丸みを有する軌道により折り返すことを特徴とする請求項6に記載の液体材料塗布方法。
【請求項8】
前記水平位置情報測定工程の前記走査経路において、撮像対象となる最初のワークに前記撮像装置が到達する前に前記撮像装置を所定の相対移動速度まで加速するための助走区間と、撮像対象となる最後のワークの撮像後に前記撮像装置を所定の相対移動速度まで減速するための終走区間とが設定されていることを特徴とする請求項6または7に記載の液体材料塗布方法。
【請求項9】
前記高さ情報測定工程において、前記複数のワークの高さ情報を前記距離測定装置と前記複数のワークとを相対移動しながら連続測定することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の液体材料塗布方法。
【請求項10】
前記塗布工程において、前記高さ情報測定工程で測定した前記ワークの高さ情報に基づき補正された塗布経路により塗布を行うことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の液体材料塗布方法。
【請求項11】
前記複数のワークが前記ワーク載置部材の円形または楕円形の凹部に回転角度が不統一に配置されたワークであることを特徴とする請求項3,4,6,7および8のいずれかに記載の液体材料塗布方法。
【請求項12】
前記ワークが、ゲル状体であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の液体材料塗布方法。
【請求項13】
液体材料を吐出する吐出装置と、
前記吐出装置とワークとを相対移動させる相対移動装置と、
演算装置および塗布プログラムを記憶する記憶装置を有する制御部と、を備える液体材料塗布装置であって、
前記塗布プログラムが、前記吐出装置および前記相対移動装置の動作を制御して位置ズレを含んで配置された複数のワークに対して請求項1ないし12のいずれかに記載の液体材料塗布方法を実行する液体材料塗布装置。
【請求項14】
液体材料を吐出する吐出装置と、
前記吐出装置とワーク載置部材とを相対移動させる相対移動装置と、
演算装置および塗布プログラムを記憶する記憶装置を有する制御部と、を備える液体材料塗布装置であって、
前記塗布プログラムが、前記吐出装置および前記相対移動装置の動作を制御して前記ワーク載置部材に配列状に位置ズレを含んで配置された複数の同一のワークに対して請求項6ないし8のいずれかに記載の液体材料塗布方法を実行する液体材料塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配列状に配置された複数のワークに対して同一の塗布パターンで塗布を行う液体材料塗布方法および塗布装置に関する。本明細書にいう「塗布」には、滴下、線引き、非滴下によるドット形成、充填、コーティング、封止などの態様が含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来、配列状に配置された複数のワークに対して塗布を行う場合、パレットや治具を用いてワークを固定配置することにより、物理的に位置決めして塗布作業を行っていた。
また、塗布経路に設定された吐出位置の高さが一定で無い場合、吐出位置の高さを距離測定装置により測定し、吐出ヘッドの高さを調整することが行われている。例えば、特許文献1では、塗布経路に沿って凹凸検出装置を移動し、経路の基板表面の凹凸(高さ)を測定し、経路の高さルートを設定すること開示されている(段落[0062]~[0067])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-138013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
規則的に配置された複数のワークに位置ズレが生じる場合には、塗布経路に設定された吐出開始位置を補正することが必要である。また、ワークがゲル状体のように物理的に固定して位置決めすることが難しい場合においても、吐出開始位置の補正が必要である。
【0005】
そこで、本発明は、規則的に配置されたワークに位置ズレが生じる条件下においても、高精度な塗布を行うことが可能な液体材料塗布方法および塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体材料塗布方法は、位置ズレを含んで配置された複数のワークに対して所定の塗布パターンで塗布を行う液体材料塗布方法であって、前記複数のワークのそれぞれの水平位置情報を、初期走査経路を移動する撮像装置で測定する水平位置情報測定工程、前記複数のワークのそれぞれの距離測定位置の高さ情報を距離測定装置で測定する高さ情報測定工程、前記水平位置情報測定工程で測定した水平位置情報および前記高さ情報測定工程で測定した高さ情報に基づき、前記複数のワークに前記塗布パターンで塗布を行う塗布工程を備え、前記高さ情報測定工程において、前記水平位置情報測定工程で測定した前記ワークの水平位置情報に基づき前記初期走査経路を、位置ズレを含んだワークのそれぞれの距離測定位置を通過するように補正し、当該補正された走査経路により前記距離測定装置が移動されることを特徴とする
【0007】
上記液体材料塗布方法において、前記初期走査経路は、位置ずれなく配置された複数のワークの距離測定位置を、前記距離測定装置が通るように設定されていることを特徴とする。
上記液体材料塗布方法において、前記複数のワークが、ワーク載置部材に配置されたワークであることを特徴としてもよい。
上記液体材料塗布方法において、液体材料を吐出する吐出装置、前記撮像装置および前記距離測定装置を備える吐出ヘッドと、前記ワーク載置部材を固定するワークテーブルとを相対移動させることにより、位置ズレを含んで配置された複数のワークに対して所定の塗布パターンで塗布を行うことを特徴としてもよい。
上記液体材料塗布方法において、前記水平位置情報測定工程において、前記複数のワークの水平位置情報を前記撮像装置と前記複数のワークとを相対移動しながら連続測定することを特徴としてもよい。
上記液体材料塗布方法において、前記複数のワークが配列状にワーク載置部材に配置された同一のワークであり、前記水平位置情報測定工程において、前記撮像装置が、前記ワーク載置部材に配置された第1行または第1列のワーク上を直線的に移動し、第1行または第1列の最後のワーク外で折り返すことで前記ワーク載置部材の第2行または第2列の端部に移動し、第2行または第2列のワーク上を直線的に移動する走査経路により移動されることを特徴としてもよい。
上記液体材料塗布方法において、前記水平位置情報測定工程の前記走査経路において、前記撮像装置が前記最後のワーク外位置してから1または複数の丸みを有する軌道により折り返すことを特徴としてもよい。
【0008】
上記液体材料塗布方法において、前記水平位置情報測定工程の前記走査経路において、撮像対象となる最初のワークに前記撮像装置が到達する前に前記撮像装置を所定の相対移動速度まで加速するための助走区間と、撮像対象となる最後のワークの撮像後に前記撮像装置を所定の相対移動速度まで減速するための終走区間とが設定されていることを特徴としてもよい。
上記液体材料塗布方法において、前記高さ情報測定工程において、前記複数のワークの高さ情報を前記距離測定装置と前記複数のワークとを相対移動しながら連続測定することを特徴としてもよい。
上記液体材料塗布方法において、前記塗布工程において、前記高さ情報測定工程で測定した前記ワークの高さ情報に基づき補正された塗布経路により塗布を行うことを特徴としてもよい。
上記液体材料塗布方法において、前記複数のワークが前記ワーク載置部材の円形または楕円形の凹部に回転角度が不統一に配置されたワークであることを特徴としてもよい。
上記液体材料塗布方法において、前記ワークが、ゲル状体であることを特徴としてもよい。
【0009】
本発明の第1の観点の液体材料塗布装置は、液体材料を吐出する吐出装置と、前記吐出装置とワークとを相対移動させる相対移動装置と、演算装置および塗布プログラムを記憶する記憶装置を有する制御部と、を備える液体材料塗布装置であって、前記塗布プログラムが、前記吐出装置および前記相対移動装置の動作を制御して位置ズレを含んで配置された複数のワークに対して上記液体材料塗布方法を実行する。
【0010】
本発明の第2の観点の液体材料塗布装置は、液体材料を吐出する吐出装置と、前記吐出装置とワーク載置部材とを相対移動させる相対移動装置と、演算装置および塗布プログラムを記憶する記憶装置を有する制御部と、を備える液体材料塗布装置であって、前記塗布プログラムが、前記吐出装置および前記相対移動装置の動作を制御して前記ワーク載置部材に配列状に位置ズレを含んで配置された複数の同一のワークに対して上記液体材料塗布方法を実行する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、規則的に配置された複数のワークに位置ズレが生じる条件下においても、高精度な塗布を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態例に係る液体材料塗布装置を説明する図である。
図2】第1実施形態例に係るワーク(単体)を説明する図である。
図3】第1実施形態例に係るワーク(単体)の各要素を説明する図である。
図4】第1実施形態例に係るワーク載置部材の説明図である。
図5図4のワーク載置部材にワークを配列状に配置した状態を説明する図である。
図6】初期走査経路を説明する図である。
図7図4のワーク載置部材に配置したワークの位置ズレを説明する図である。
図8】初期走査経路における折り返し部を説明する図である。
図9】第2実施形態例に係るワーク(単体)の説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図10】第2実施形態例に係るワーク載置部材にワークを配列状に配置した状態を説明する図である。
図11図10のワーク載置部材に配置したワークの位置ズレを説明する図であり、(a)は第1のワークの平面図、(b)は第2のワークの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態例を説明する。
[第1実施形態例]
<塗布装置>
本実施形態の塗布装置101は、図1に示すように、吐出ヘッド110と、該吐出ヘッド110とワークテーブル102とを相対的に移動させる相対移動装置(104,105,106)とを備えて構成される。
【0014】
相対移動装置(104,105,106)は、吐出ヘッド110とワークテーブル102とをX方向107へ相対的に移動させるX移動装置104、吐出ヘッド110とワークテーブル102とをY方向108に相対的に移動させるY移動装置105、吐出ヘッド110とワークテーブル102とをZ方向109へ相対的に移動させるZ移動装置106から構成される。
Y移動装置105は、筐体103の上面にY方向108へ延びるよう設けられている。X移動装置104は、Y移動装置105と直角方向にY移動装置105を跨ぐよう配置されたアーチ状のフレーム121に設けられる。X移動装置104には、Z移動装置106が設けられ、Z移動装置106に吐出ヘッド110が設けられる。吐出ヘッド110は、Z移動装置106によりZ方向109に移動可能であると共に、X移動装置104によりX方向107に移動可能となっている。Y移動装置105上にはワークテーブル102が設置され、Y移動装置105によりY方向108に移動可能となっている。
【0015】
相対移動装置(104,105,106)は、移動制御装置122により制御されて吐出ヘッド110をワーク載置部材20上の任意の位置へ、任意の速度で移動させることができる。相対移動装置(104,105,106)としては、例えば、サーボモータやステッピングモータなどの電動モータと、ボールネジとを組合せた装置や、リニアモータを用いた装置、ベルトやチェーンで動力を伝える装置を用いることができる。
【0016】
ワークテーブル102は、板状の部材からなり、ワーク載置部材20を固定するための機構(不図示)が設けられている。ワーク載置部材20を固定するための機構としては、例えば、ワークテーブル102内部から上面へ通じる複数の孔を開け、その孔から空気を吸い込むことでワーク載置部材20を吸着する機構、ワーク載置部材20を固定用部材で挟み込み、その部材をネジ等の固定手段でワークテーブル102に固定することでワーク載置部材20を固定する機構を用いることができる。
【0017】
吐出ヘッド110は、液体材料吐出装置111と、撮像装置112と、距離測定装置113とを備えている。
液体材料吐出装置111は、先端にノズルが設けられ液体材料が貯留された貯留容器を備え、吐出制御装置123により動作を制御されるエア式ディスペンサである。吐出制御装置123は、信号ケーブル124により移動制御装置122に接続され、同装置から指令を受けて動作する相対移動装置(104,105,106)の動作と連係して吐出装置111の貯留容器内に調圧されたエアを所望時間だけ印加する制御を行う。吐出制御装置123には、液体材料を圧送するための圧縮気体を供給する圧縮気体源126が接続される。なお、図示の構成例とは異なり、吐出制御装置123と移動制御装置122とを物理的に一つの制御装置で実現する構成を採用してもよい。
【0018】
撮像装置112は、ワーク載置部材20に配列状に配置されたワーク10のそれぞれの画像を移動しながら撮像するためのものであり、例えばCCDカメラである。レンズは、重量およびコストの観点から、レンズ構成枚数が少ない単焦点レンズを用いることが好ましい。本実施形態では、Z移動装置106により撮像装置112を昇降できるので、ズームレンズは不要である。ワークの位置を高精度で測定するために、比較的倍率が高く被写界深度が浅いレンズを用いることが好ましい。撮像装置112は、撮像した画像をソフトウェアで処理することができるよう画像データを出力できるものであればCCDカメラ以外のものを採用することもでき、必要に応じて拡大レンズや照明を備えてもよい。撮像装置112は、L字形のホルダー114の側面に連結されており、移動制御装置122と信号ケーブル(図示せず)により接続されている。移動制御装置122は撮像装置112から受信した撮像画像を画像処理してワーク10の水平位置を算出する機能を専用ソフトウェアより実現している。
【0019】
距離測定装置113は、レーザー光をワークに照射してワーク表面までの距離を計測するレーザー変位計等の非接触式計測装置である。距離測定装置113は、L字形のホルダー114の側面に連結されており、移動制御装置122と信号ケーブル(図示せず)により接続されている。移動制御装置122は、距離測定装置113から受信した信号に基づき吐出装置111とワーク10との距離を算出する機能を専用ソフトウェアより実現している。
【0020】
本実施形態の塗布装置101は、図示しない教示用端末機を接続することができる。教示用端末機から、相対移動装置(104,105,106)の位置や吐出ヘッド110の動作などを教示することができ、教示された内容は移動制御装置122に記憶される。塗布装置101は、関連する複数の教示内容を順番に並べて、一つのまとまりとして再生することができる。言い換えると、塗布装置101は、教示内容に従って、吐出ヘッド110や相対移動装置(104,105,106)を動作させることができる。このまとまりを塗布プログラムと言い、一連の動作は、移動制御装置122の記憶装置に記憶された塗布プログラムを実行することにより再生される。教示用端末機として、例えば、簡易な表示装置と複数のスイッチを備えた専用の端末機や、専用のソフトウェアがインストールされたパーソナルコンピュータを用いることができる。教示用端末機からは、移動制御装置122に記憶された塗布プログラムに基づく塗布装置101の動作の開始や停止を行うことができる。また、これと同じ操作は、筐体103上面に設置された操作スイッチ125により行うこともできる。
【0021】
<ワーク>
本実施形態のワーク10は、図2に示すように、直方体状であり、上面に矩形の塗布面11が設けられている。すなわち、第1実施形態例における各ワーク10の塗布パターンは矩形の枠形である。図3に示すように、ワーク10には、距離測定装置113により測定される距離測定位置12が設定される。距離測定位置12は、図3に例示した場所に限定されず、塗布面11の任意の箇所を測定位置とすることができる。ワーク10には、撮像装置112の焦点調節や水平位置情報測定、高さ情報測定などを行うためのアライメントマークを設けてもよいが、本実施形態ではアライメントマークを設けず、塗布面11の角部などを基準として焦点調節を行っている。ワーク10は、後述のワーク載置部材20の載置部21に配置された状態で、塗布面11に液体材料を塗布される。
【0022】
<ワーク載置部材>
ワーク載置部材20は、図4に示すように、4行×8列の配列状に配置された32個の載置部21を有するパレットである。32個の載置部21は、ワーク10よりもひとまわり大きい矩形の凹部であり、全て同一形状である。図5に示すように、32個の載置部21のそれぞれにワーク10が載置され、固定される。なお、ワーク載置部材20に設ける載置部21の個数は例示のものに限定されず、任意の数の載置部21を配列状に配置することが可能である。ワーク載置部材20には、後述の画像処理のためのアライメントマークを設けてもよいが、本実施形態ではアライメントマークを設けず、載置部21の角部などを基準として画像処理を行っている。
【0023】
<塗布方法>
(1)走査経路の設定
ワーク載置部材20に対して、移動原点Sを有する初期走査経路Rが設定される。本実施形態の初期走査経路Rは、図6に示すように、行方向に吐出ヘッド110が移動し、各行の終端に位置する3箇所の折り返し部C1~C3において方向を180度転換する。各行の始端部には、吐出ヘッド110を所定の相対移動速度まで加速するための助走区間Aと、吐出ヘッド110を所定の相対移動速度まで減速するための終走区間Eが設けられている。例えば、図6に示すように、第1行目に配置されたワーク10~10を通る走査経路には助走区間A1と終走区間E1が設けられており、第2行目以降も同様である。
【0024】
初期走査経路Rは、理想的に配置された32個のワーク10の距離測定位置12を通るように設定されている。しかし、実際に配置されたワーク10には水平方向および高さ方向の位置ズレが生じていることから、初期走査経路Rの補正が必要となる。ワークの水平方向の位置ズレは、例えば、ワーク載置部21の凹部がワーク10の外形よりもひとまわり大きく形成されていることにより生じる。ワークの高さ方向の位置ズレは、例えば、ワークとパレットの間の隙間(ガタ)により生じる。なお、以下では、ワークの高さ方向の位置ズレを、ワークの傾きという場合がある。
【0025】
(2)ワークの水平位置情報の取得
撮像装置112が初期走査経路Rを移動するように、撮像装置112とワークテーブル102とを相対移動装置(104,105,106)により相対移動させながら、32個のワーク10を連続的に撮像する。本実施形態では、各ワーク10の距離測定位置12を画像内に含むよう撮像する。この際、撮像装置112による撮像時に各ワークの測定位置で相対移動を停止させると、時間がかかるだけでなく、停止の際にワークテーブル102に振動が与えられるので避けるべきである。
【0026】
また、行方向の最後に位置するワーク10(例えば10)を撮像した後、少なくとも最後のワーク10の外に撮像装置112が移動するまで直線的な相対移動を継続し、曲線部を含む軌道で折り返して撮像装置112を次の行に位置させることが好ましく、ワーク載置部材20の外に撮像装置112が移動するまで直線的な相対移動を継続することがより好ましい。すなわち、図8に示すように、距離E1の間は撮像装置112の直線的な移動を継続することが好ましい。図8に示す経路R3のような軌道で撮像装置112を移動させた場合には、ワークテーブル102に不要な振動が与えられるからである。
【0027】
さらに好ましくは、各折り返し部ではワーク載置部材20外で、1または複数の丸みを有する軌道で撮像装置112を折り返し移動させる。例えば、図8に示す初期走査経路Rの折り返し部C1のように、各折り返し部ではワーク載置部材20外で円弧状の軌跡を描くように撮像装置112を移動させる。図8とは異なり、角部を1/4円などの曲線で丸めた略コの字形の軌道で撮像装置112を移動させるのでもよい。
なお、本実施形態では、図6に示すように、撮像装置112を行方向に往復移動させる態様を説明したが、列方向に往復移動させる際も同様である。すなわち、列方向の最後に位置するワーク10を撮像した後も直線的な相対移動を継続し、ワーク載置部材20外で円弧状の軌跡を描くように撮像装置112を移動させることが好ましい。
【0028】
撮像装置112により取得した撮像画像は、移動制御装置122に送信され、画像処理によりワークの水平方向の位置ズレを算出する。より詳細には、移動制御装置122は、載置部21の角部およびワーク10の角部を画像処理により抽出し、当該ワーク10が載置されている載置部21との位置関係からワーク10の水平方向の位置ズレ量を算出する作業を全てのワーク10に対して実行する。なお、複数または全部のワーク10が含まれる撮像画像では、ワークの位置ズレを高精度に測定することができないため、本実施形態ではワーク10のそれぞれと1対1で対応する撮像画像を用いて、位置ズレ量の算出を行っている。
【0029】
(3)走査経路の補正
移動制御装置122は、初期走査経路R上に全ての各ワークの距離測定位置12が存在するかを判定する。初期走査経路R上に位置しない距離測定位置がある場合は、初期走査経路Rを補正して、全てのワークの距離測定位置12を通る補正走査経路R2を作成する。また、移動制御装置122は、各ワーク10の水平方向の位置ズレを補正走査経路R2に紐付ける。具体的には、各ワーク10の塗布面11を塗布するための塗布開始位置を含む塗布パターンの水平座標情報を補正する。
【0030】
図7は、移動原点Sに最も近いワーク10を含むワーク載置部材20の要部拡大図である。図7(a)に示すように、初期走査経路Rは、距離測定位置12および12と重なるように設定されているが、距離測定位置12および12とは重なっていない。そのため、図7(b)に示すように、初期走査経路Rを、全てのワーク10の距離測定位置12を通過する補正走査経路R2に補正する。この際、隣接する2つの距離測定位置12を結ぶ経路は、角部を含まない経路とすることが好ましい。ワークテーブル102に不要な振動が与えられることを防げるからである。
【0031】
(4)ワークの高さ情報の取得
距離測定装置113が補正走査経路R2を通過するように、距離測定装置113とワークテーブル102とを相対移動装置(104,105,106)により相対移動させながら、32個のワーク10の高さを連続的に測定する。この際、距離測定装置113による測定時に各ワークの測定位置で相対移動を停止させると、時間がかかるだけでなく、停止の際にワークテーブル102に振動が与えられるので避けるべきである。
【0032】
(5)塗布経路の設定
移動制御装置122は、距離測定装置113により取得した、各ワーク10の傾き(高さ方向の位置ズレ)を補正走査経路R2に紐付ける。具体的には、各ワーク10の塗布面11を塗布するための塗布パターンの塗布開始位置を含む高さ座標情報を補正する。これにより、補正走査経路R2に水平方向および高さ方向の位置ズレの情報が付加され、これが塗布経路RAとなる。
【0033】
(6)塗布作業の実行
移動制御装置122は、塗布経路RAに沿って吐出装置111とワークテーブル102とを相対移動させ、吐出制御装置123は塗布経路に設定された各ワークの吐出位置において、塗布パターンの塗布を実行する。ワーク載置部材20に配置されたワーク10に位置ズレが生じているとき、塗布経路RAは、各ワークの位置ズレ情報に基づいて水平および高さ方向の座標情報の補正が施されているので、各ワークに正確に塗布パターンの塗布を実行することが可能である。一のワーク載置部材20に対する塗布作業が完了すると、次のワーク載置部材20がワークテーブル102に載置され、上述の(1)~(6)の工程が再び実施される。
【0034】
以上に説明した第1実施形態例の塗布装置101および同装置により実施される塗布方法によれば、塗布経路において、水平方向および高さ方向にワーク10の位置ズレが生じる条件下においても、高精度な塗布を行うことが可能となる。
また、塗布経路RAは、ワーク10に不要な振動を与えることが無いように設定されているため、不要な振動による品質低下の問題を解消することが可能である。
【0035】
[第2実施形態例]
第2実施形態例は、ワーク30およびワーク載置部材40において、第1実施形態例と相違する。以下では、第1実施形態例との一致点については説明を省略する。
第2実施形態例のワーク30は、図9に示すように、塗布面31を備える隆起部32と、本体33とを備えている。円柱形の隆起部32には、上面に凹部34が形成されており、凹部34を囲むように環状の塗布面31が設けられている。すなわち、第2実施形態例における各ワーク30の塗布パターンはリング形である。本体33は、隆起部32よりも大径の円盤形である。ワーク30には、距離測定装置113により測定される距離測定位置35が設定される。距離測定位置35は、図9に例示した場所に限定されず、塗布面31の任意の箇所を測定位置とすることができる。
【0036】
ワーク載置部材40は、図10に示すように、配列状に配置された複数の載置部41を有するパレットである。複数の載置部41は、ワーク30よりもひとまわり大きい円形の凹部であり、全て同一形状である。図10に示すように、複数の載置部41のそれぞれにワーク30が載置され、固定される。なお、ワーク30および載置部41は、楕円形であってもよい。
図11は、図10に示すワーク載置部材40の載置部41の拡大図である。載置部41はワーク30よりも大きく構成されていることから、水平方向の位置ズレが生じる。また、ワークの本体33が円盤形であることから、載置部41に載置されたワーク30には回転姿勢の不統一を含む位置ズレが生じる。すなわち、図11(a)および(b)に示すように、載置部41に対する塗布面31の位置は、水平方向および回転角度において、ワーク30ごとに相違している。なお、本実施形態例においても、ワーク30には高さ方向の位置ズレ(傾き)も生じ得る。
【0037】
第2実施形態例においても、第1実施形態例と同様に、(1)走査経路の設定、(2)ワークの水平位置情報の取得、(3)走査経路の補正、(4)ワークの高さ情報の取得、および(5)塗布経路の設定が実行された後に塗布作業が実行される。これにより、ワーク載置部材40に載置された複数のワーク30に位置ズレが生じていても、高精度な塗布を各塗布面31に実行することが可能である。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態例の記載に限定されるものではない。本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で様々な変更、改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、ワークがゲル状体のように物理的に固定して位置決めすることが難しい場合や製造公差によりワークの形状等にばらつきが生じる場合にも、本発明によれば高精度な塗布を各塗布面に実行することが可能である。
【0039】
また、実施形態例では、ワーク載置部材に配列状に配置されたワークの例で説明したが、本発明の適用対象は、配列状に配置されたワークに限定されない。例えば、位置ズレを含んで基板上に規則的に配置された複数の素子に対して所定の塗布パターンで液体材料を塗布する場合にも、本発明は適用可能である。
【0040】
また、実施形態例では、先端にノズルを有する貯留容器内に調圧されたエアを所望時間だけ印加して吐出を行うエア式ディスペンサの例を説明したが、ディスペンサはこれに限定されず、様々な種類のものを使用することが可能である。
液体材料がノズルの吐出口から離間する前にワークに接触するタイプの吐出方式としては、フラットチュービング機構またはロータリチュービング機構を有するチュービング式、先端にノズルを有する貯留容器の内面に密着摺動するプランジャーを所望量移動して吐出するプランジャー式、ノズルと連通する液室内のスクリューの回転により液体材料を吐出するスクリュー式、所望圧力が印加された液体材料をバルブの開閉により吐出制御するバルブ式などが例示される。
【0041】
液体材料がノズルの吐出口から離間した後にワークに接触するタイプの吐出方式としては、プランジャー(弁体)を進出移動させ、急激に停止して、液体材料に慣性力を印加してノズルの先端より飛翔吐出させるジェット式、連続噴射方式或いはデマンド方式のインクジェットタイプなどが例示される。
【符号の説明】
【0042】
10:ワーク(第1実施形態例)、11:塗布面、12:距離測定位置、20:ワーク載置部材(第1実施形態例)、21:載置部(矩形)、30:ワーク(第2実施形態例)、31:塗布面、32:隆起部、33:本体、34:凹部、35:距離測定位置、40:ワーク載置部材(第2実施形態例)、41:載置部(円形)、101:液体材料塗布装置、102:ワークテーブル、103:筐体、104:X移動装置、105:Y移動装置、106:Z移動装置、107:X方向、108:Y方向、109:Z方向、110:吐出ヘッド、111:液体材料吐出装置、112:撮像装置、113:距離測定装置、114:ホルダー、121:フレーム、122:移動制御装置、123:吐出制御装置、124:信号ケーブル、125:操作スイッチ、126:圧縮気体源

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11