(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】圧力調節装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
H01J37/20 A
(21)【出願番号】P 2022209976
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2020500071の分割
【原出願日】2018-07-06
【審査請求日】2023-01-26
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509245670
【氏名又は名称】プロトチップス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ウォールデン ザ セカンド,フランクリン スタンプリー
(72)【発明者】
【氏名】デーミアノ ジュニア,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ガルディナー,ダニエル スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】カーペンター,ウィリアム ブラッドフォード
【審査官】大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0033355(US,A1)
【文献】特開2011-175809(JP,A)
【文献】特開2014-026840(JP,A)
【文献】特開2003-308801(JP,A)
【文献】特開2014-182919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子顕微鏡試料ホルダーを通る、供給源からの気体の流れを調節するための圧力調節装置であって、
前記気体を供給する上流タンクと、
前記上流タンクに接続され、前記上流タンクから、前記上流タンクの下流に配置された前記電子顕微鏡試料ホルダーに前記気体を供給するための流入管路と、
前記電子顕微鏡試料ホルダーに接続され、前記電子顕微鏡試料ホルダーから、前記電子顕微鏡試料ホルダーを流れた後の前記気体を受け入れるための流出管路と、
前記流出管路に接続された下流タンクであって、前記上流タンクよりも圧力が低い前記下流タンクと、
前記流出管路に接続され、前記電子顕微鏡試料ホルダーの下流に配置された可変の漏出弁と、を備え、
前記可変の漏出弁は、前記上流タンクから前記電子顕微鏡試料ホルダーを通る前記気体の流量を計測し、
前記気体の流量は、前記上流タンクまたは前記下流タンクの圧力変化率に基づいて計算され、
前記気体は、前記上流タンクと前記下流タンクとの間の圧力差により、前記可変の漏出弁を流れる、圧力調節装置。
【請求項2】
前記流出管路に接続された残留気体分析計(RGA)をさらに備え、
前記残留気体分析計は、前記電子顕微鏡試料ホルダーの下流に配置される、請求項1に記載の圧力調節装置。
【請求項3】
前記残留気体分析計は、前記可変の漏出弁の下流に配置される、請求項2に記載の圧力調節装置。
【請求項4】
前記電子顕微鏡試料ホルダーは、入口弁を有し、
前記
圧力調節装置から前記電子顕微鏡試料ホルダー
を遮断するために、前記電子顕微鏡試料ホルダー
への流入および前記前記電子顕微鏡試料ホルダーからの流出の両方を同時に
閉鎖する、請求項1に記載の圧力調節装置。
【請求項5】
前記可変の漏出弁の下流に配置された弁をさらに備え、
前記弁は、前記下流タンクまたは前記残留気体分析計に流出気体を選択的に導くことを特徴とする請求項2に記載の圧力調節装置。
【請求項6】
前記電子顕微鏡試料ホルダーの下流に配置された弁をさらに備え、
前記弁は、前記下流タンクまたは前記残留気体分析計に流出気体を選択的に導くことを特徴とする請求項2に記載の圧力調節装置。
【請求項7】
前記下流タンクは、前記上流タンクよりも低い圧力に維持される、請求項1に記載の圧力調節装置。
【請求項8】
前記上流タンクの上流に配置され、前記流入管路に接続されて、高圧力の実験用気体の前記気体への導入を制御することで、前記気体の混合物を
動的に変化させるための
少なくとも1つの電気的に駆動される弁をさらに備え
、
前記少なくとも1つの弁をソフトウェアを用いて制御することにより、前記混合物は所望の混合割合に到達するように動的に変化する、請求項1に記載の圧力調節装置。
【請求項9】
前記電子顕微鏡試料ホルダーの先端部の圧力は、前記高圧力の実験用気体を前記気体に追加するときに、前記電子顕微鏡試料ホルダーの下流の前記可変の漏出弁を制御して、前記電子顕微鏡試料ホルダーを通る前記気体の導入を変化させることにより維持される、請求項
8に記載の圧力調節装置。
【請求項10】
前記可変の漏出弁を前記電子顕微鏡試料ホルダーの近くに支持するためのブームをさらに備える、請求項1に記載の圧力調節装置。
【請求項11】
前記上流タンクの圧力または前記下流タンクの圧力を測定するための、気体に依存しない圧力計をさらに備える、請求項1に記載の圧力調節装置。
【請求項12】
前記可変の漏出弁は目標流量を達成するために、ソフトウェア又はファームウェア制御部によって調節される、請求項
11に記載の圧力調節装置。
【請求項13】
前記上流タンクおよび前記下流タンクの少なくとも一方の圧力変化率に基づいて、ソフトウェア又はファームウェア制御部によって、前記気体の前記流量を計算する、請求項1に記載の圧力調節装置。
【請求項14】
前記圧力調節装置内の最大の圧力降下は、前記可変の漏出弁を通じて生じる、請求項1に記載の圧力調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2017年7月6日に出願された米国仮特許出願第62/529,195号(発明の名称「独立して圧力および流量を調節する電子顕微鏡試料ホルダーの流体取扱方法」)の優先権の利益を主張し、米国仮特許出願第62/529,195号は、その全体が本明細書に取り込まれている。
【0002】
本開示は、気体の流量を供給することに関する。より詳細には、本開示は、電子顕微鏡用の試料ホルダーに気体を供給し、圧力および流量を調節することに関する。
【背景技術】
【0003】
従来技術のシステムでは、撮像中の反応作用を制御または維持するために、流体が電子顕微鏡試料ホルダーを通って流れる。典型的な密閉されたセルの流体システムでは、TEM柱が超高真空または高真空を維持できるように、気体が流入管路から、気密封止されたウィンドウによって囲まれた撮像領域内に入り、流出管路口を通ってTEMホルダーから出る。
【0004】
いくつかの従来技術のシステムは、システムを通る流量を調節し測定する。このようなシステムでは、1つ以上の質量流量調節装置(MFC)によって流量を調節することが一般的である。MFCは気体の流れを測定し、調節するために使用される装置である。質量流量調節装置は、特定の流量範囲で特定タイプの気体を調節するように設計・調整されている。気体の種類に依存するので、試料ホルダーに対する、広い範囲の純粋なガスの流量を調節するには、それぞれ異なる調整が行われた複数のMFCが必要となる。ユーザは典型的にはナノ粒子の気体反応を研究しており、電子顕微鏡試料ホルダーを通る流量としては、0.005 SCCMと同等かそれ以下の低い値が要求される。典型的なMFCは、これらの流量に単独では到達することができず、システムに追加構成要素を追加したり複雑化させたりする必要がある。一実施例として、より低い流量を達成するために、システムは、MFCから試料ホルダーへ流れる気体の流量の一部の流れ方向を変更させ、残りの気体を排出させるために、切替弁、および、減少した流量を測定するための少なくとも1つの追加の気体流量センサが必要となる。また、このようなシステムでは、達成可能な流量がシステムの圧力に依存する。例えば、システム内の圧力が低いと最高流量が制限され、システム内の圧力が高いと最低流量が制限される。また、MFCは特定の気体の種類に対して調整されているので、複雑な気体の混合物または未知の気体の混合物を正確に計量することができない。そのような混合物の例としては、自動車の排気ガスが挙げられる。
【0005】
従来技術の欠点を考慮すると、次のようなシステムに対する新規なアプローチが必要である。そのシステムとは、電子顕微鏡ホルダーを通る様々な気体の流量を調節するシステムであって、該システムに入ってくる気体の圧力に依存せず、かつ、気体の種類に対しても依存せずに、全範囲の流量に対して目的を達成可能なシステムである。
【発明の概要】
【0006】
この概要は、以下の詳細な説明でさらに説明される概念を簡略化された形態で紹介する。この概要は、特許請求の範囲の重要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきでもない。
【0007】
この発明は、既知の容積のタンクに接続された圧力計器に依存しない高感度の気体を利用し、可変の漏出弁で流量を調整する。非常に低い流量を含む広範囲の流量を、気体単体または気体混合組成物とは無関係に、正確に調節し、測定することができる。また、正確な気体の混合も実現できる。
【0008】
少なくとも1つの実施形態において、電子顕微鏡試料ホルダーを通る気体の流量を調節するシステムは、圧力調節された気体供給部と、気体供給部から試料ホルダーに気体を供給するための流入管路と、試料ホルダーから気体を受け取るための流出管路と、流出管路内の気体の流れを調節する可変の漏出弁とを含む。可変の漏出弁は、気体調節弁とも呼ばれ、流量の範囲を規定している流路の開口を増減させることによって気体の流量を変化させる。可変の漏出弁の一実施例は、Pfeiffer Vacuum SAS(フランス、アネシー)によって製造販売されているEVR 116型「気体調整弁」である。このバルブは、5×10-6のhPa・l/sから1.25×103のhPa・l/sの範囲の気体流量を提供する。
【0009】
少なくとも1つの実施例において、ブームは、試料ホルダーの近傍で可変の漏出弁を支持する。ここで、ブームとは、可変の漏出弁を試料ホルダーの近傍に位置決めするために使用される圧力調節装置から任意に延びる機械的支持体である。密閉されたセル撮像に理想的な薄い流体ギャップのために、可変の漏出弁の流量圧縮部分と、試料ホルダーの先端に生じる自然圧縮部分との間の体積を減少させることは、実験中に、流線のより速い流出/排出、および酸化気体から還元気体へのより速い遷移を可能にする。よって、可変の漏出弁を試料ホルダーのすぐ近くに配置することが好ましい。2つの流量制限器の間の体積を減少させることは、制限器を通して気体を流入するのに必要な時間を最小限にする。これは、新しい実験用の気体へのより速い遷移を可能にし、捕捉された気体が試料領域に逆流することを防止することができる。
【0010】
少なくとも1つの実施例において、気体が圧力調節装置の上流タンクまたは流体源から試料ホルダーおよび可変の漏出弁を通って圧力調節装置の下流タンクに流れるが、これは可変の漏出弁が流出管路内の気体流量を計量するときの2つのタンクの圧力差異による。可変の漏出弁は流出管路上にあるので、気体の供給源によって、電子顕微鏡内の撮像領域での実験用圧力が計測されるようにすることができる。最大の圧力降下は、漏出弁によって生じる。換言すれば、試料ホルダーの試料領域の圧力は、気体の供給源と同じ圧力に近い。上流の流体の供給源は、タンク、チューブ、またはあらゆる気体容器もしくは気体の供給源であり得る。上流の流体の供給源は、試料ホルダーを通して空気を吸入することが望まれる場合、空気に曝される開放管であってもよい。
【0011】
少なくとも1つの実施例において、可変の漏出弁と試料ホルダーとの間に入口弁がある。この入口弁は、試料ホルダーの近くにあってもよいし、または試料ホルダーに取り付けられていてもよい。
【0012】
少なくとも1つの実施例において、インライン残留気体分析計(RGA)は、可変の漏出弁と圧力調節装置との間にある。残留気体分析計(RGA)は、低圧力環境中に存在する気体の化学成分を効果的に測定する分光計である。
【0013】
少なくとも1つの実施例において、可変の漏出弁は、残留気体分析計(RGA)に直接取り付けられる。
【0014】
少なくとも1つの実施例において、システムが可変の漏出弁の下流に開閉弁を含み、開閉弁は流出管路から圧力調節装置または残留気体分析計(RGA)に流出気体を選択的に流す。この開閉弁は、手動で操作されてもよいし、自動式であってもよい。
【0015】
少なくとも1つの実施例において、このシステムは残留気体分析計(RGA)を含み、流出管路は、RGAに連結される前に可変の漏出弁に連結される。
【0016】
少なくとも1つの実施例において、気体群は、正確で検証可能な混合比を作り出すために、気体が混合タンクに連続で追加される。
【0017】
少なくとも1つの実施例において、流量を正確に計量する機能に影響を与えることなく、様々な複雑な気体の混合がシステムによって可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
先の概要および以下の詳細な説明は、以下に簡単に説明されるような特定の例示的な実施形態および特徴を示す本図面を考慮して読まれるべきである。しかし、概要および詳細な説明は、明示的に示された実施形態および特徴のみに限定されない。
【
図1】電子顕微鏡試料ホルダーを通る気体の流れを調節するための従来技術によるシステムの概略図である。
【
図2】少なくとも1つの実施形態における、電子顕微鏡試料ホルダーを通る気体の流れを調節するための、改良されたシステムの概略図である。
【
図3】少なくとも1つの他の実施形態における、電子顕微鏡試料ホルダーを通る流体の流れを調節し、流体組成を分析するための、統合化されたインライン残留気体分析計(RGA)を有する改良されたシステムの概略図である。
【
図4】少なくとも1つの他の実施形態における、流体の流れを調節し、電子顕微鏡試料ホルダーを通る流体組成を分析するための、統合化された弁で調整されたRGAを有する改良されたシステムの概略図である。
【
図5】少なくとも1つの他の実施形態における、電子顕微鏡試料ホルダーを通る気体の流量を調節するための、統合化された直接的なRGAを有する改良されたシステムの概略図である。
【
図6A】少なくとも1つの実施形態における、正確な混合気体組成を生成するために、電子顕微鏡ホルダーを通るこれらの気体群の流れの前に、一度に1つずつシステムに気体を追加する方法を表す改良されたシステムの概略図である。
【
図6B】気体混合物の組成を検証するために使用することができるシステムに接続された残留気体分析計(RGA)を有する、
図6Aの改善されたシステムの概略図である。
【
図7A】少なくとも1つの実施形態における、検証されていない組成物の混合物などの複雑な気体が受け入れられる、改良されたシステムの概略図である。
【
図7B】予め検証された組成の混合物が受け入れられる、
図7Aの改善されたシステムの概略図である。
【
図7C】純粋な気体が受け入れられる、
図7Aの改善されたシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
これらの説明は、より広範な特許請求の範囲の1つまたは複数の特定の実施形態を理解するのに充分な細部にわたって提示されている。これらの説明は特許請求の範囲を明示的に記載された実施形態および特徴に限定することなく、これらの特定の実施形態の特定の特徴を説明し、例示する。これらの説明を考慮すると、特許請求の範囲の領域から逸脱することなく、追加の同様の実施形態および特徴が生じうる。「ステップ」の用語は、プロセスまたは方法の特徴に関連して明示的に使用または暗示され得るが、順序または連続性が明示的に述べられない限り、そのような表現または暗示されたステップの間で、特定の順序または連続性が暗示されるものではない。
【0020】
本図面およびこれらの説明において表現または暗示されるあらゆる寸法は、例示の目的のために提供される。したがって、本図面およびこれらの説明の範囲内のすべての実施形態が、そのような例示的な寸法に従ってなされるわけではない。図面は必ずしも縮尺通りではない。したがって、本図面およびこれらの説明の範囲内のすべての実施形態が、図面内の相対的な寸法に関する本図面の見かけの縮尺に従ってなされるわけではない。しかしながら、それぞれの図面について、少なくとも1つの実施形態が、図面の見かけの相対的な縮尺に従って実施される。
【0021】
図1は、電子顕微鏡試料ホルダー100を通る気体の流量を調節するための従来技術によるシステム1000の概略図である。気体又は気体の混合物は、流入管路126から流量調節装置106に入る。圧力および流量調節装置106は、気体の流量を測定するために使用される流量センサ114の上流の弁110および圧力調整器112を介して、流入管路102への経路内の気体を受け入れる。圧力および流量調節装置106は流入管路102および試料ホルダー100に気体を供給し、流出管路104を介して試料ホルダー100から戻ってくる気体を受け入れる。
【0022】
流出管路104を通って流量調節装置106に戻る気体は、出口管130を通って流量調節装置106を出て気体の出口128に至る経路で第2の圧力調整器116を通過する。バイパス管120およびインライン弁122は、第1の圧力調整器112から第2の圧力調整器116へ直接気体の一部を分流させ、試料ホルダー100を通る気体流量を低減させるために使用される。試料ホルダー100内の圧力は、上流の第1の圧力調整器112および下流の第2の圧力調整器116によって調節される。流量は流量センサ114によって計測される。
【0023】
図2は、電子顕微鏡試料ホルダー200を通る気体の流量を調節するための、少なくとも1つの実施形態による改良されたシステム2000の概略図である。試料ホルダー200への気体の流量は、流入管路202および流出管路204を通って供給される。圧力調節装置206は流入管路202に気体を供給し、流出管路204を介して試料ホルダー200から戻る気体を受け入れる。圧力調節装置206は上流タンク212から流入管路202に気体を供給し、流出管路204から下流タンク216に流出した気体を受け入れ、下流タンクは上流タンク212よりも低い圧力で維持される。気体は2つのタンクの圧力差により、上流タンク212から試料ホルダー200を通って下流タンク216に流れる。流量は、上流タンク212および/または下流タンク216における圧力変化の割合(例えば、Torr L/秒)を計算することによってソフトウェア又はファームウェア制御部218を使用して容易に計算される。この計算において、それぞれのタンクに配置されたバラトロン(登録商標)722Bシリーズ小型絶対静電容量圧力計などの気体に依存しない圧力計測器による、時間が記録された圧力測定値が用いられる。
【0024】
電子的に調節される可変の漏出弁220は、流出管路204内の気体流量を計量する。
図1で概略的に表されたブーム222は、使用時に電子顕微鏡に取り付けられる試料ホルダー200に比較的近接して流入管路及び流出管路並びに弁220を支持する。
【0025】
可変の漏出弁220は、電子的に調節される必要はなく、手動であってもよい。電子的に駆動される可変の漏出弁は、ソフトウェアワークフローに組み込むことができるという点で有利である。ブームも任意に選択できる。試料と漏出弁との間の体積を制限するのに有利である。TEMから吊り下げられるか、またはTEMからさらに離れて、細い毛細管の管によって低い容量に調節させて接続される補助器具が使用されてもよい。細い毛細管は流入速度を制限する(すなわち、低下させる)。
【0026】
試料ホルダー200は試料ホルダー200への流入および流出の両方を同時に開閉する入口弁208を有し、これは容易かつ安全であるという点で有利である。ホルダーの入口弁208は任意に選択できる。入口弁により、使用者は、次の2つの主要な目的のためにホルダーを完全に閉じることができる。:(1)試料の準備移動-使用者はグローブボックス内の多岐管からサンプルを準備し、次いで、それを動かして、内部を空気に曝すことなく、多岐管に引っ掛けることができる。ここで、グローブボックスは一対の手袋が側面の開口から突出する閉鎖室であり、室の内部は好ましい気体または混合気体で満たされる。これは、空気に敏感なサンプルにとって有利である。(2)ユーザは実験用気体(通常、還元気体から酸化気体へと進む)を変化するとき、新しい気体と混合する実験用気体分子がシステム内に無視できる量しか存在しないように、全ての気体毛細管を流入し、時には排出しなければならない(管を通して不活性気体を流入させる)。これは、典型的には試料ホルダー200上で直接流入させること、または試料ホルダー200を通して不活性気体を流入させることよりも好ましい。試料ホルダー200上の入口弁208を閉じることにより、ユーザは、試料ホルダー200内のサンプルで生じていることに影響を及ぼすことなく、システム内の残りの気体を流入/排出を実行することができる。流入および排出が完了した後、実験タンク212からの気体を入口弁208の上流に流し、入口弁208を開いて気体を試料ホルダーに供給する。
【0027】
図3は、電子顕微鏡試料ホルダー200を通る気体の流量を調節するための、少なくとも1つの他の実施形態における、統合化されたインライン残留気体分析計(RGA)を有する改良されたシステム3000の概略図である。
図3に、可変の漏出弁220と圧力調節装置206との間にRGA224が使用される。図示の
図3のシステムでは、可変の漏出弁220が直接RGA224に取り付けられている。RGA224はRGA224が可変の漏出弁を通る実験用気体を計測しながら、高真空環境で操作され得るように、漏出弁220の下流に配置される。高圧力は弁220の流入側にあり、弁220の他方の側は高真空であり、RGA224は高真空環境にある。
【0028】
図3のシステム3000は、RGAによる気体の流出の流量特性の測定に加えて、圧力および流量を独立して調節することを提供する。試料ホルダー200の近傍の気体組成を有利に分析し、これにより試料ホルダー200からの反応を特徴付け、流出管路204に沿って流れる気体の種類のその後の反応または他の挙動を低減するために、RGA224はブーム222と試料ホルダー200との間に位置している。
【0029】
図4は、電子顕微鏡試料ホルダー200を通る気体の流量を調節するための、少なくとも1つの他の実施形態における、統合化された弁を備えたRGAを有する改良されたシステム4000の概略図である。
図4に、残留気体分析計(RGA)224は、弁230が流出気体を圧力調節装置206及び/又はRGA224に導くT字形接合部において、弁230を介して流出管路204から気体をサンプリングする。流量は、可変の漏出弁220によって計測される。弁230は、気体の一部または全部をRGA224に導くことができる。
【0030】
図5は、電子顕微鏡試料ホルダー200を通る気体の流量を調節するための、少なくとも1つの他の実施形態における、統合化された直接接続型RGAを有する改良されたシステム5000の概略図である。
図5に、流出管路204は残留気体分析計(RGA)224に入る前に、可変の漏出弁220に直接接続する。流量は、上流タンク212内の圧力変化率によって決定される。この構成では、可変の漏出弁220はブーム222に取り付けられていない。その代わり、可変の漏出弁は、RGA224の近くに取り付けられるか、またはRGA224に取り付けられている。
【0031】
図6Aおよび
図6Bは、少なくとも1つの実施形態において、流入させる気体が電子顕微鏡ホルダー200を通って流れる前に正確な混合気体組成を生成するために、一度に1つずつシステムに気体を流入させる一方法を示す、改良されたシステム6000の概略図である。種々の気体の加圧容器601、602、603は、ポート701、702、703を介して圧力調節装置206に接続されている。加圧容器601、602および603からの気体は、加圧容器601、602および603と上流タンク212との間に位置する弁608、609または610を開くことによって、圧力調節装置206に連続して入る。上流タンク212は、第1の気体が上流タンク212に入る前に気体を排出させる。上流タンク212に取り付けられた圧力計606は、気体が上流タンク212に流入することにつれて上昇する圧力を記録する。上流タンク212内に既知の正確な混合気体を生成するために、以下のステップが実行される:(ステップ1)第1の弁608、609、または610が開き、最初の気体が上流タンク212内に流れ込み、上流タンク212内の圧力を増加させる。所望の圧力に達すると、第1の弁608、609または610は閉じる。(ステップ2)第2の弁608、609または610が開き、2回目の気体が上流タンク212に流れ込み、最初の気体と混合し、上流タンク212内の圧力をさらに増加させる。所望の圧力に達すると、第2の弁608、609または610は閉じる。(ステップ3)このプロセスは、所望の組成が達成されるまで、同じ方法を繰り返す。正確な混合物の構成は、ファームウェアまたはソフトウェア制御部218によって、記録された圧力、およびダルトンの添加圧力の法則および理想気体法則によって決定される上流タンク212の体積を用いて容易に計算することができる。
【0032】
システム6000によって実現される流量技術は追加で高価な対応する装置を必要とせずに、上流タンク212を有効活用することで気体混合物を混合調整することを可能にする。気体の流入は、上流タンク212、圧力計606および電子的に駆動される弁を使用して、体積混合に続いて気体を混合してなされる。体積混合は、純粋な気体、混合気体、複合気体および蒸気の部分圧力をタンクに流入させ、所望の混合割合で目標の実験用圧力まで全圧力を加圧することである。供給タンクの圧力を蒸気の圧力以下に下げ、次いで蒸発する液体を蒸気中に流入させて、部分的な圧力を室温で蒸気の圧力にすることによっても、蒸気を得ることができる。必要であれば、総圧力を上げるために、追加の流入気体を追加することができる。体積混合物は、高圧力タンクを構成することができる。
【0033】
図6Bは、気体を上流タンク212からRGA224に流すことによって残留気体分析計(RGA)224を用い気体成分を確かめるための、少なくとも1つの他の実施形態による統合化された直接接続型RGAを有する改良されたシステム6000の概略図である。
【0034】
図7A、7B、および7Cは試料ホルダー200を通る正確に調節可能な体積流量を供給しながら、純粋な気体708、混合気体710、および複合気体712を供給タンクに流入させるためのシステムの融通性を示す改良されたシステム7000の概略図である。
図7Cでは、純粋な気体708がH
2、N
2、O
2などの最も純粋な天然の気体である。
図7Bでは、混合気体710が5%H
2/95%N
2など、事前に検証された組成の混合物である。
図7Aでは、複合気体712は、車両排気ガスのような未検証組成物の混合物である。統合された気体の多岐管706は
図2または
図4で示されるように、圧力調節装置206およびブーム222を一体化し、試料ホルダーを通る気体に関して、正確かつ広い範囲での流量および圧力を可能にする。
【0035】
特定の実施形態および特徴は、本図面を参照することで記載されている。これらの説明は、あらゆる単一の実施形態またはあらゆる特定の特徴の組み合わせに限定されず、これらの説明の範囲および添付の特許請求の範囲の趣旨から逸脱することなく、類似の実施形態および特徴が生じ得るか、または修正および追加が行われ得ることを理解されたい。