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▶ インベンタム セミコンダクター ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】容量性負荷の適応制御
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/20 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
H03F3/20
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023030804
(22)【出願日】2023-03-01
(65)【公開番号】P2023135621
(43)【公開日】2023-09-28
【審査請求日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】22162171
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523074537
【氏名又は名称】インベンタム セミコンダクター ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】INVENTVM Semiconductor SRL
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ レッツィ
(72)【発明者】
【氏名】ダーリン エスポージト
(72)【発明者】
【氏名】エンリコ オベルティ
(72)【発明者】
【氏名】ミケーレ キアブレーラ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ムサッチ
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-516520(JP,A)
【文献】特開2009-200551(JP,A)
【文献】国際公開第2020/137299(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0358945(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0260333(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量性負荷(L)を駆動する回路(2000,3000,8000)であって、
入力信号(VIN)に基づいて前記容量性負荷(L)を駆動する増幅器(1100,3100)であって、少なくともブーストコンバータを含む前記増幅器(1100,3100)と、
前記回路(2000,3000,8000)の少なくとも複数の部分に電力を供給するために、前記容量性負荷(L)のキャパシタンス(C)および電源の電圧(VBAT)をトラッキングするように構成された動的モデル(2400,3400,8400)と、
前記動的モデル(2400,3400,8400)の出力に基づいて前記入力信号(VIN)をフィルタリングするように構成された適応フィルタ(2300,6300,9300)と、を備える回路(2000,3000,8000)。
【請求項2】
前記動的モデル(3400,8400)は、
算出増幅器電流(IOUT_PRED)を出力するように構成された負荷電流モデル(3410,4410)であって、前記算出増幅器電流(IOUT_PRED)は、少なくとも前記入力信号(VIN)および前記容量性負荷(L)のトラッキングされた前記キャパシタンス(C)の関数として前記増幅器(1100,3100)によって出力されることが予想される電流である、前記負荷電流モデル、および
算出ブースト電流(IBST_PRED)を出力するように構成されたブースト電流モデル(3420,5420)であって、前記算出ブースト電流(IBST_PRED)は、少なくとも前記入力信号(VIN)及び前記電源の電圧(VBAT)の関数として前記ブーストコンバータのインダクタによって出力されることが予想される電流である、前記ブースト電流モデル、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の回路(3000,8000)。
【請求項3】
前記負荷電流モデル(4410)は、
前記容量性負荷(L)の両端間の電圧を示す値を入力Vとして受け取り、
前記容量性負荷(L)を流れる前記電流を示す値を入力Iとして受け取り、
前記入力信号を示す値を入力VINとして受け取り、
前記算出増幅器電流IOUT_PREDを、IOUT_PRED = f (VIN * YL)として出力するように構成されており、
ここで、Yは負荷(L)のアドミタンスであり、fは全単射関数である、請求項2に記載の回路(3000,8000)。
【請求項4】
前記負荷電流モデル(4410)は、
およびIから計算された前記容量性負荷(L)の算出キャパシタンス値(CL_PRED)を出力するように構成された負荷キャパシタンスモデル(4411)と、
INから計算された前記増幅器の予想出力電圧(VOUT_PRED)を出力するように構成された増幅器モデル(4412)と、
前記容量性負荷(L)の前記算出キャパシタンス値(CL_PRED)および前記予想出力電圧(VOUT_PRED)に基づいて、前記算出増幅器電流(IOUT_PRED)を、IOUT_PRED = f (VOUT_PRED * YL)として計算するように構成された電流演算器(4413)であって、fは全単射関数である、前記電流演算器(4413)と、を含む、請求項2または3に記載の回路(3000,8000)。
【請求項5】
前記負荷キャパシタンスモデル(4411)は、最小平均二乗フィルタを含む、請求項4に記載の回路(3000,8000)。
【請求項6】
前記負荷電流モデル(4410)は、前記容量性負荷(L)の電圧から電流への伝達関数のモデルを含む、請求項3に記載の回路(3000,8000)。
【請求項7】
前記ブースト電流モデル(5420)は、
前記電源の両端間の電圧を示す値を入力VBATとして受け取り、
前記ブーストコンバータの効率を示す値を入力ηとして受け取り、
前記算出増幅器電流を示す値を入力IOUT_PREDとして受け取り、
前記入力信号を示す値を入力VINとして受け取り、
算出ブースト電流IBST_PREDを、IBST_PRED = f [VOUT * IOUT_PRED / (η * VBAT)]として出力するように構成されており、
ここで、fは全単射関数である、請求項2または3に記載の回路(3000,8000)。
【請求項8】
前記動的モデル(3400,8400)は、係数演算ロジック(3430,7430)をさらに含み、前記係数演算ロジックは、
前記算出増幅器電流(IOUT_PRED)および前記算出ブースト電流(IBST_PRED)のうちの少なくとも一方を入力として受け取り、
前記算出増幅器電流(IOUT_PRED)および前記算出ブースト電流(IBST_PRED)のうちの少なくとも1つの値に基づいて、前記適応フィルタ(2300、6300、9300)を制御するための少なくとも1つの係数(ROFF、XMULT)を出力するようにさらに構成されている、請求項2または3に記載の回路(3000,8000)。
【請求項9】
前記適応フィルタ(6300,9300)は、制御入力として少なくともロールオフ係数(ROFF)を有する可変ローパスフィルタ(6310)を含み、
前記係数演算ロジック(3430,7430)は、前記ロールオフ係数(ROFF)を、前記算出ブースト電流(IBST_PRED)および前記算出増幅器電流(IOUT_PRED)のうちの少なくとも一方の関数として計算するように構成されている、請求項8に記載の回路(3000,8000)。
【請求項10】
前記入力信号(VIN)と前記適応フィルタ(2300,6300,9300)との間に接続された遅延素子(8500)をさらに備える請求項1~3のいずれか1項に記載の回路(8000)。
【請求項11】
前記入力信号(VIN)と前記動的モデル(3400、8400)との間に接続された第2の適応フィルタ(8440)をさらに備え、
前記第2の適応フィルタ(8440)は、前記適応フィルタ(2300,6300,9300)と実質的に同じフィルタリングを提供するように構成されており、
前記第2の適応フィルタ(8440)は、前記動的モデル(3400,8400)の前記出力に基づいて前記入力信号(VIN)をフィルタリングするように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の回路(8000)。
【請求項12】
前記適応フィルタ(9300)は、少なくとも2つの枝路に沿って前記入力信号(VIN)をフィルタリングする複数のローパスフィルタ(9331,9341)およびハイパスフィルタ(9332,9342)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の回路(3000,8000)。
【請求項13】
前記容量性負荷(L)は、1つまたは複数の圧電部品またはMEMSをベースとしたスピーカーである、請求項1~3のいずれか1項に記載の回路(8000)。
【請求項14】
スピーカーと、前記スピーカーを駆動する請求項1~3のいずれか1項に記載の回路(2000,3000,8000)と、を備えるデバイス。
【請求項15】
プロセッサ(10100)およびメモリ(10300)を備えるコンピューティングユニット(10000)であって、前記メモリは、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに請求項1~3のいずれか1項に記載の回路として動作させる複数の命令を備える、コンピューティングユニット(10000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量性負荷、好ましくは圧電負荷及び/又は微小電気機械システム(MEMS)を駆動するための方法及びデバイスに関し、さらに好ましくは、容量性負荷がスピーカーである場合に関する。本発明の複数の実施形態は、駆動信号におけるアーチファクトの導入を制限するように容量性負荷ドライバーの電圧及び/又は電流の有利な制御を可能にする。
【背景技術】
【0002】
圧電部品は、様々な電子デバイスにおいてより一般的になってきている。一例として、圧電部品は、携帯電話、タブレット、PCなどの電子デバイスにおいて触覚振動および/またはスピーカーを製造するために使用されることができる。同様に、MEMSデバイスは、加速度センサなどのセンサまたはアクチュエータとしてますます使用されている。
【0003】
圧電部品およびMEMSデバイスは、多くの場合、ドライバーから見て、第1近似において容量性負荷と見なされる。このことは、多くの場合、低インピーダンスをもたらす。例えば、8オーム未満の値は、特に高周波信号の分野では一般的である。このことは、より高いインピーダンス負荷と比較して非常に大きな電流を必要とする。
【0004】
さらに、特にモバイルデバイスでは、容量性負荷は、典型的にはシステムバッテリによって電力供給され、1Sセルの電圧は典型的には3Vから5Vまでの範囲である。例えば、PZT薄膜又はMEMSマイクロスピーカーなどの容量性負荷を駆動する場合の典型的なピーク電圧は、20Vよりも高くなり得る。
【0005】
したがって、バッテリ電圧を必要な駆動レベルまで上昇させるためにブーストコンバータが必要とされる。バッテリから引き出される電流は、容量性負荷に流れる瞬時電流よりも数倍大きくなり得る。
【0006】
したがって、電圧および/または電流の適切な制御は、保護をトリガーすること、および/または1つまたは複数の構成要素の飽和に達することを回避するように実装されるべきである。特に、様々な種類の保護回路が、電圧および電流を制限するために、ドライバー、ブーストコンバータ、又はバッテリ自体に実装され得る。そのような保護回路を介在することは、負荷を駆動する信号にアーチファクトを発生させる可能性があり、または防止のために回路の1つまたは複数の部分をシャットダウンさせる可能性さえある。同様の状況は、駆動チェーンに沿った1つまたは複数の構成要素が飽和するときに生じる。
【0007】
図1Aは、増幅器1100と、抵抗器1210および容量性負荷L自体によって形成されるローパスフィルタ1200Aと、を備え、容量性負荷Lを駆動する回路1000Aを概略的に示す。
【0008】
この構成において、増幅器1100から引き出される電流は、ローパスフィルタ1200Aによって、高周波数において制限され得る。しかしながら、この構成は、増幅器1100が最大電圧を出力するように設定され、および/または出力電力のかなりの部分が直列接続された抵抗器1210によって消費されるので、効率的ではない。
【0009】
別の既知の解決策が、容量性負荷Lを駆動する回路1000Bを概略的に示す図1Bに示されている。ここでは、ローパスフィルタ1200Bは、直列接続されたトランジスタ1210における高電力損失を回避するために、増幅器1100の前に配置される。
【0010】
しかしながら、この場合にも、ローパスフィルタ1200Bは最悪の場合のシナリオのために設計されなければならない。これは、最大負荷キャパシタンス、最大入力信号振幅および最大周波数を含む。バッテリ駆動式デバイスでは、これは最低バッテリレベルをさらに含む。そのような最悪の場合のシナリオは頻繁にある状況ではないので、動作時間のほとんどの間、フィルタ1200Bは過剰なフィルタリングをもたらすことは明らかである。例えば、容量性負荷Lとしての音を生成するために使用される圧電部品の場合、この実装では、これが通常必要とされない条件下で、利用可能な音を変換器の圧力レベルまで低下させる。
【0011】
図1Cは、適応フィルタ1300と負荷のモデル1400とを備えるさらに別の代替的な駆動回路1000Cを示す。適応フィルタ1300は、負荷Lのモデル1400に基づいて、入力信号と増幅器1100との間の電圧および/または電流を制御することができる。これは、例えば初期特徴付け段階中に、負荷の特定の特性に従ってモデルを更新することによって、図1Bについて説明した最悪の場合のフィルタ設計制限を克服することができる。
【0012】
それにもかかわらず、負荷モデル1400が確定され、負荷変動をトラッキングしないので、この実装も理想的ではない。これは、負荷モデルが最悪の場合の仮定に基づくことを強制する。さらに、バッテリ駆動式デバイスの場合、システムバッテリレベルに関する情報がないので、バッテリからの利用可能な電流および/または電圧に関する設計仮定も、最悪の場合の条件に対して行わなければならない。
【0013】
したがって、容量性負荷の効率的な駆動を可能にする駆動回路および/または方法を提供する必要があり、特に、バッテリ駆動式デバイスにおける実装のために提供する必要がある。
【発明の概要】
【0014】
概して、本発明は、その特性が動的に調整される適応フィルタに関する。この調整は、特に、負荷および電池の動的に調整された特性に基づくことができる。フィルタの動的調整によって、アーチファクトを導入することなく、または過電流保護メカニズムをトリガーすることなく、負荷への駆動信号を最大化することが可能である。
【0015】
本発明の一実施形態は、容量性負荷を駆動する回路に関し得、この回路は、入力信号に基づいて負荷を駆動する増幅器であって、少なくともブーストコンバータ(boost converter)を含む増幅器と、負荷のキャパシタンス(capacitance)、および回路の少なくとも複数の部分に電力供給する電源の電圧をトラッキングする(track)ように構成された動的モデルと、動的モデルの出力に基づいて入力信号をフィルタリングするように構成された適応フィルタと、を備える。
【0016】
この構成によれば、有利には、負荷のキャパシタンス値(capacitance value)および電源の電圧の変動を考慮して容量性負荷を駆動することが可能である。これにより、適応フィルタは、駆動能力を不必要に制限する可能性がある最悪のシナリオの構成ではなく、実際の駆動の構成を表す条件下で動作することが可能になる。
【0017】
いくつかの実施形態では、動的モデルは、算出増幅器電流を出力するように構成された負荷電流モデルであって、算出増幅器電流は、少なくとも入力信号および負荷のトラッキングされたキャパシタンスの関数として増幅器によって出力されることが予想される電流である、負荷電流モデル、および/または算出ブースト電流を出力するように構成されたブースト電流モデルであって、算出ブースト電流は、少なくとも入力信号および電源の電圧の関数としてブーストコンバータのインダクタ(inductor)によって出力されることが予想される電流である、ブースト電流モデルを含むことができる。
【0018】
この構成によれば、有利には、それらの値を容易に利用可能な複数の入力信号に基づいてモデリングすることが可能である。モデリングされたそれらの値によって、動的モデルが、入力信号ならびに負荷および電源条件の関数として適応フィルタを駆動することを可能にし得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、負荷電流モデルは、負荷の両端間の電圧を示す値を入力Vとして受け取り、負荷を流れる電流を示す値を入力Iとして受け取り、入力信号を示す値を入力VINとして受け取り、算出増幅器電流IOUT_PREDを、IOUT_PRED = f (VIN * YL)として出力するように構成されることができ、Yは負荷のアドミタンス(admittance)であり、fは全単射関数(bijective function)である。
【0020】
この構成によれば、有利には、算出増幅器電流IOUT_PREDを簡易的で信頼できる方法で計算することが可能である。
いくつかの実施形態では、負荷電流モデルは、VおよびIから計算された負荷の算出キャパシタンス値を出力するように構成された負荷キャパシタンスモデルと、VINから計算された増幅器の予想出力電圧を出力するように構成された増幅器モデルと、負荷の算出キャパシタンス値および予想出力電圧に基づいて、算出増幅器電流を、IOUT_PRED = f (VOUT_PRED * YL)として計算するように構成された電流演算器であって、fは全単射関数である、電流演算器とを備えることができる。
【0021】
この構成によれば、有利には、算出増幅器電流IOUT_PREDを簡易的で信頼できる方法で計算することが可能である。
いくつかの実施形態では、負荷キャパシタンスモデルは、最小平均二乗フィルタ(least mean square filter)を備えることができる。
【0022】
この構成によれば、有利には、負荷キャパシタンスを流れる信号の電圧および電流測定値に基づいて負荷キャパシタンスを簡易的で確実に計算することが可能である。
いくつかの実施形態では、負荷電流モデルは、負荷の電圧から電流への伝達関数(voltage to current transfer function)のモデルを含むことができる。
【0023】
この構成によれば、VOUT_PREDの値を、Cを変数として有する伝達関数に挿入することによって、IOUT_PREDの値を簡易的でかつ確実に計算することが有利に可能である。
【0024】
いくつかの実施形態では、ブースト電流モデルは、電源の両端間の電圧を示す値を入力VBATとして受け取り、ブーストコンバータの効率を示す値を入力ηとして受け取り、算出増幅器電流を示す値を入力IOUT_PREDとして受け取り、入力信号を示す値を入力VINとして受け取り、算出ブースト電流IBST_PREDを、IBST_PRED = f [VOUT * IOUT_PRED / (η * VBAT)]として出力するように構成され得、fは全単射関数である。
【0025】
この構成によれば、有利には、算出ブースト電流IBST_PREDを簡易的でかつ信頼できる方法で計算することが可能である。
いくつかの実施形態では、ブースト電流モデルは、VINから計算された増幅器の予想出力電圧を出力するように構成された増幅器モデルと、予想出力電圧に基づいて、算出ブースト電流を計算するように構成された電流演算器とを備えることができる。
【0026】
この構成によれば、有利には、算出ブースト電流を簡易的で且つ信頼できる方法で計算することが可能である。
いくつかの実施形態では、動的モデルは、算出増幅器電流および/または算出ブースト電流を入力として受け取り、算出増幅器電流および算出ブースト電流のうちの少なくとも1つの値に基づいて適応フィルタを制御するための少なくとも1つの係数を出力するように構成された係数演算ロジック(coefficient computing logic)をさらに備えることができる。
【0027】
この構成によれば、有利には、実際の駆動条件の関数であり、最悪のシナリオを考慮した関数ではない計算された電流に基づいて適応フィルタを制御することが可能である。
いくつかの実施形態では、適応フィルタは、制御入力として少なくともロールオフ係数(roll-off coefficient)を有する可変ローパスフィルタを備えることができ、演算ロジックは、算出ブースト電流および/または算出出力電流の関数としてロールオフ係数を計算するように構成されることができる。
【0028】
この構成によれば、有利には、実際の駆動条件を示す計算された電流に基づいて適応フィルタのロールオフ係数を制御することが可能である。
いくつかの実施形態では、係数演算ロジックは、算出増幅器電流を入力として受け取り、算出増幅器電流の最大値として最大算出増幅器電流を決定するように構成された第1のピーク検出器を備えることができ、および/または係数演算ロジックは、算出ブースト電流を入力として受け取り、算出ブースト電流の最大値として最大算出ブースト電流を決定するように構成された第2のピーク検出器を備えることができ、係数演算ロジックは、最大算出増幅器電流を予め設定された最大増幅器電流と比較し、および/または最大算出ブースト電流を予め設定された最大ブースト電流と比較し、比較の結果に基づいて少なくとも1つの係数を出力するように構成された比較器を備えることができる。
【0029】
この構成によれば、有利には、それら電流によって到達される最大値に基づいてそれら係数の値を制御することが可能であり、これにより、それらの最大値は最も多くのアーチファクトを引き起こし得る値であるので、適応フィルタは、それらの最大値に基づいて制御され得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、適応フィルタは、制御入力として少なくとも乗数係数を有する乗算器を備えることができ、演算ロジックは、算出ブースト電流および/または計算された出力電流の関数として乗数係数を計算するように構成されることができる。
【0031】
この構成によれば、有利には、どのように適応フィルタが入力信号に対して動作するかにおいて柔軟性の向上を提供することが可能である。
いくつかの実施形態では、係数演算ロジックは、少なくとも1つの係数を入力として受け取るように構成された少なくとも1つの平滑化フィルタを備えることができ、動的モデルは、少なくとも1つの平滑化フィルタの適用後に少なくとも1つの係数を出力するように構成されることができる。
【0032】
この構成によれば、有利には、増幅においてアーチファクトを引き起こし得るフィルタの高速変動を回避することが可能である。
いくつかの実施形態では、回路は、入力信号と適応フィルタとの間に接続された遅延素子をさらに備えることができる。
【0033】
この構成によれば、有利には、動的モデルの処理に十分な時間を与えることが可能である。
いくつかの実施形態では、回路は、入力信号と動的モデルとの間に接続された第2の適応フィルタをさらに備えることができ、第2の適応フィルタは、適応フィルタと実質的に同じフィルタリングを提供するように構成されることができ、第2の適応フィルタは、動的モデルの出力に基づいて入力信号をフィルタリングするように構成されている。
【0034】
この構成によれば、有利には、増幅器に供給される入力を示す動的モデルへの入力を供給することが可能である。
いくつかの実施形態では、適応フィルタは、少なくとも2つの枝路、好ましくは3つの枝路に沿って入力信号をフィルタリングする複数のローパスフィルタおよびハイパスフィルタを備えることができる。
【0035】
この構成によれば、有利には、それら枝路のうちの1つまたは複数の枝路に係数を適用することによって、フィルタのロールオフを容易に制御することが可能である。
いくつかの実施形態では、容量性負荷は、1つまたは複数の圧電部品またはMEMSをベースとしたスピーカーであり得る。
【0036】
この構成によれば、有利には、アーチファクトを導入することなく、かつ最悪のシナリオを考慮してスピーカーに印加される駆動電力を不必要に制限することなく、スピーカーを駆動する駆動回路を用いることが可能である。
【0037】
本発明のさらなる実施形態は、デバイスに関し得、このデバイスは、スピーカーと、スピーカーを駆動する任意の前述の実施形態による回路とを備える。
本発明のさらなる実施形態は、プロセッサおよびメモリを備えるコンピューティングユニットに関し得、メモリは、複数の命令を備え、複数の命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、前述の実施形態のいずれかの回路として動作させる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1A図1Aは、従来技術による容量性負荷Lのための駆動回路1000Aを概略的に示す。
図1B図1Bは、従来技術による容量性負荷Lのための駆動回路1000Bを概略的に示す。
図1C図1Cは、従来技術による容量性負荷Lのための駆動回路1000Cを概略的に示す。
図2図2は、駆動回路2000を概略的に示す図である。
図3図3は、駆動回路3000を概略的に示す。
図3A図3Aは、ブーストコンバータを備える増幅器3100を概略的に示す。
図4A図4Aは、負荷電流モデル4410の可能性のある構成要素を概略的に示す。
図4B図4Bは、負荷Lの可能性のあるモデリングを概略的に示す。
図4C図4Cは、負荷電流モデル4410の可能性のある複数の構成要素を概略的に示す。
図5A図5Aは、ブースト電流モデル5420の可能性のある構成要素を概略的に示す。
図5B図5Bは、ブースト電流モデル5420の可能性のある複数の構成要素を概略的に示す。
図6図6は、フィルタ6300の可能性のある複数の構成要素を概略的に示す。
図7図7は、係数演算ロジック7430の可能性のある複数の構成要素を概略的に示す。
図8図8は、駆動回路8000を概略的に示す。
図9図9は、フィルタ9300の可能性のある複数の構成要素を概略的に示す。
図10図10は、駆動回路10000を概略的に示す。
図11図11は、コンピューティングデバイス11000を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本開示のいくつかの例は、概して、複数の回路または他の電気デバイスを提供する。回路および他の電気デバイス、ならびに各々によって提供される機能へのすべての言及は、本明細書において図示および説明されるもののみを包含することに限定されることを意図していない。開示される様々な回路または他の電気デバイスに特定のラベルが割り当てられ得るが、そのようなラベルは、回路および他の電気デバイスについての動作の範囲を限定することを意図していない。そのような回路および他の電気デバイスは、所望される特定のタイプの電気的実装に基づいて、任意の方式で、互いに組み合わせられてもよく、および/または分離されてもよい。
【0040】
本明細書において開示される任意の回路または他の電気デバイスは、任意の数のマイクロコントローラ、グラフィックスプロセッサユニット(GPU : graphics processor unit)、集積回路、メモリデバイス(例えば、FLASH、ランダムアクセスメモリ(RAM : random access memory)、読み出し専用メモリ(ROM : read only memory)、電気的プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM : electrically programmable read only memory)、電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM : electrically erasable programmable read only memory)、またはそれらの他の好適な変形)、および本明細書において開示される1つまたは複数の動作を実行するために互いに協働するソフトウェアを含み得ることが認識される。加えて、それら電気デバイスのうちの任意の1つまたは複数の電気デバイスは、開示されるような任意の数の機能を行うようにプログラムされた非一時的コンピュータ可読媒体内に実装されるプログラムコードを実行するように構成されてもよい。
【0041】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、限定的な意味で解釈されるべきではないことを理解されたい。本発明の範囲は、以下に説明される実施形態または図面によって限定されることを意図しておらず、図面は例示的なものにすぎないと解釈される。
【0042】
図面は概略的な表現であると見なされるべきであり、図面に示された要素は必ずしも縮尺通りに示されていない。むしろ、様々な要素は、それらの機能および全体的な目的が当業者に明らかになるように表されている。図面に示されるか、または本明細書において説明される複数の機能ブロック、複数のデバイス、複数の構成要素、または他の複数の物理的もしくは機能的ユニット間の任意の接続または結合は、間接的な接続または結合によって実施されてもよい。構成要素間の結合は、無線接続を介して確立されてもよい。複数の機能ブロックは、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組合せで実装されてもよい。
【0043】
本明細書において説明される技術によれば、容量性負荷(capacitive load)を高効率の方法で駆動することが可能であり、そうでなければ駆動信号にアーチファクトを導入するであろう過電圧又は過電流保護のトリガーを回避し、エネルギー消費を制限する。
【0044】
図2は、容量性負荷Lのための駆動回路2000を概略的に示す。本出願の文脈では、別段の指定がない限り、容量性負荷は、MEMS負荷、圧電部品、キャパシタ(capacitor)、または駆動回路によって駆動されるときに1つまたは複数のキャパシタによって第1近似(first approximation)としてモデリングされ得る任意の他の構成要素のいずれかであり得る。好ましくは、容量性負荷はスピーカーであり、さらに好ましくは、圧電部品によって具現化されるスピーカーである。
【0045】
図2に見られるように、回路2000は、入力信号VINに基づいて負荷Lを駆動する増幅器1100を備える。特に、増幅器1100は、電圧を低いレベルVIN_FILTから高いレベルVに増大させるために、少なくともブーストコンバータ(boost converter)を備える。このようにして、高い駆動電圧を必要とする負荷Lを駆動することが可能である。
【0046】
回路2000は、負荷LのキャパシタンスCと、回路2000の少なくとも複数の部分に電力を供給する電源(例えば、バッテリ)の電圧VBATとをトラッキングするように構成された動的モデル2400をさらに含む。特に、電源は、少なくとも増幅器1100に電力を供給するように構成されている。好ましい実施形態では、電源は、回路2000全体に電力を供給するように構成されることができる。
【0047】
この実施形態および残りの説明全体を通して、回路2000を駆動するエネルギー源としてバッテリが参照されるが、同様の考慮が、任意の他の電源、例えば、任意の種類の電圧発生器に適用され得ることは明らかであろう。本発明は、バッテリの電圧がAC電源電圧発生器のような他の電源の電圧よりも大きく変化する可能性があるので、バッテリ駆動式デバイスに適用される場合に特に有利である。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
電圧VBATのトラッキングは、例えば電圧センサを用いて既知の方法で達成されることができる。動作のために、本発明は、電圧VBATが、トラッキングされた電源電圧にボルトで対応する必要がないことに留意されたい。電圧VBATが、トラッキングされた電源電圧の指標を提供することで十分である。すなわち、電圧VBATは、トラッキングされた電源電圧に適用される任意の双一義的関数(bi-univocal function)から取得され得る。
【0049】
キャパシタンスCのトラッキングを、例えば電圧Vおよび電流Iを測定し、次いでそれらからキャパシタンスCを計算することによって、既知の方法で行うこともできる。
【0050】
さらに、回路2000は、動的モデル2400の出力に基づいて入力信号VINをフィルタリングするように構成された適応フィルタ2300をさらに含む。好ましくは、適応フィルタ2300は、少なくとも、所定のカットオフ周波数およびロールオフ値を有するローパスフィルタを実装することができる。
【0051】
概して、いくつかの実施形態では、動的モデル2400は、電圧VBATが低下した場合に適応フィルタ2300にフィルタリングを増強させる出力を適応フィルタ2300に提供することができる。代替的にまたは追加的に、動的モデル2400は、キャパシタンスCが増大した場合に適応フィルタ2300にフィルタリングを増強させる出力を適応フィルタ2300に提供することができる。ここでは、フィルタリングの増強は、より低いカットオフ周波数及び/又はより高いロールオフ値を適用することを意味すると理解することができる。
【0052】
負荷のキャパシタンスCおよび電源の電圧VBATをトラッキングすることによって、モデル2400は、有利には、両方のパラメータを考慮し、最悪の場合の条件またはそのパラメータの一方もしくは両方に対して設計されることを回避することができる。このことは、フィルタリングの増強が実際に必要とされる条件に制限されることを可能にし、したがって、回路2000の性能を低下させ得る過度のフィルタリングを回避する。
【0053】
したがって、適応フィルタ2300について上述した挙動および動的モデル2400に対するその影響を達成するために、いくつかの可能性のある実施形態を実装することができることは明らかである。以下では、いくつかの可能性のある実装形態について説明するが、本発明はそれに限定されない。
【0054】
図3は、動的モデル2400の実装の一例を提供し得る動的モデル3400におけるブロック3410、3420、および3430の追加の存在により回路2000とは異なる回路3000を示す。図示された実施形態は、ブロック3410および3420の両方で動作するが、いくつかの実施形態では、それらのうちの1つのみが実装されてもよいことは明らかであろう。
【0055】
特に、動的モデル3400は、算出増幅器電流IOUT_PREDを出力するように構成された負荷電流モデル3410を含み、算出増幅器電流IOUT_PREDは、少なくとも入力信号VINおよび負荷のトラッキングされたキャパシタンスCの関数として増幅器1100によって出力されることが予想される電流である。
【0056】
代替的に又は追加的に、動的モデル3400は、算出ブースト電流IBST_PREDを出力するように構成されたブースト電流モデル3420を含み、算出ブースト電流IBST_PREDは、少なくとも入力信号VIN及び電源の電圧VBATの関数としてブーストコンバータのインダクタによって出力されることが予想される電流である。
【0057】
これらの電流の意味を明確にするために、図3Aは、ブーストコンバータ3110と、ブーストコンバータ3110によって電力を供給されるドライバー3120とを備える増幅器3100を概略的に示す。しかしながら、いくつかの代替可能な実装が可能であることは、当業者には明らかであろう。
【0058】
算出増幅器電流IOUT_PREDは、入力信号VINおよび負荷のキャパシタンスCを含むいくつかの入力パラメータの関数として、増幅器3100によって、特にドライバー3120によって出力される電流IOUTの計算されたバージョンであると理解することができる。同様に、算出ブースト電流IBST_PREDは、入力信号VINおよび電源の電圧VBATを含むいくつかの入力パラメータの関数として、ブーストコンバータ3110内のインダクタを流れる予想される電流IBSTの計算されたバージョンであると理解することができる。
【0059】
それぞれの電流についての示された入力パラメータの使用によって、さらなる処理のために十分に簡易的でかつ信頼性のある電流の計算が可能となる。さらに、算出増幅器電流IOUT_PREDおよび/または算出ブースト電流IBST_PREDの計算は、有利には、他のパラメータを用いるよりも、適応フィルタ2300をより細かく制御するために使用され得る動的モデル3400を提供することを可能にする。
【0060】
当業者は、増幅器のトポロジ(topology)が定義されると、示された値をどのように計算するかを理解するように、計算された値とそれぞれの入力パラメータとの間の特定の関係は、増幅器の特定のトポロジに依存し得ることは明らかである。
【0061】
いくつかの実施形態では、算出増幅器電流IOUT_PREDと入力信号VINとを関係付ける関数は、VINが上昇するにつれてIOUT_PREDが増加し、および/またはVINが低下するにつれてIOUT_PREDが減少するようなものであり得る。代替的に又は追加的に、算出増幅器電流IOUT_PREDとキャパシタンスCとを関係付ける関数は、Cが増大するにつれてIOUT_PREDが増加し、及び/又はCが低下するにつれてIOUT_PREDが減少するようなものであり得る。
【0062】
同様に、いくつかの実施形態では、算出ブースト電流IBST_PREDと入力信号VINとを関係付ける関数は、VINが上昇するにつれてIBST_PREDが増加し、および/またはVINが低下するにつれてIBST_PREDが減少するようなものであり得る。代替的に又は追加的に、算出ブースト電流IBST_PREDと電源電圧VBATとを関係付ける関数は、VBATが低下するにつれてIBST_PREDが増加し、及び/又はVBATが上昇するにつれてIBST_PREDが減少するようなものであり得る。
【0063】
図4Aは、負荷電流モデル3410の可能性のある実装形態であり得る負荷電流モデル4410を概略的に示す。負荷電流モデル4410は、負荷Lの両端間の電圧値および負荷Lを流れる電流値をそれぞれ示す入力VおよびIを受け取るように構成され、または、以下でより詳細に説明されるように、負荷Lのキャパシタンス値にわたる入力VおよびIを受け取るように構成されている。
【0064】
ここで、「を示す値」という用語は、負荷電流モデル4410に入力されるそれらの値が、負荷電流モデル4410が負荷における各値を決定することを可能にすることを示すことを意図している。例えば、入力Vは、単純に、負荷の両端間の測定された電圧Vであり得る。言い換えれば、「を示す値」という用語は、その最も直接的な実装において、それぞれの値に対応するものとして解釈することができる。
【0065】
しかしながら、本発明は、これに限定されず、負荷電流モデル4410が負荷の両端間の測定される電圧Vを決定することを可能にする、負荷電流モデル4410によって受け取られるVについての任意の値を代わりに使用することができる。例えば、負荷電流モデル4410によって受け取られる値Vは、負荷の両端間の測定された電圧Vに係数を乗じたものであり得る。代替的に又は追加的に、負荷電流モデル4410によって受け取られる値Vは、負荷の両端間の測定されたアナログ電圧Vのデジタル表現であり得る。さらに代替的または追加的に、負荷電流モデル4410によって受け取られる値Vは、負荷の両端間の測定された電圧値Vの関数である電流値であり得る。同様の考慮が入力Iにも適用される。
【0066】
負荷電流モデル4410は、入力信号VINを示す値を入力VINとして受け取るようにさらに構成されている。どのように負荷電流モデル4410への入力VINが入力信号VINを示す値であり得るかについては、上記と同じ考慮が適用される。
【0067】
負荷電流モデル4410は、数式1として算出増幅器電流IOUT_PREDを出力するように構成されている。
(数式1)IOUT_PRED = f (VIN * k * YL)
ここで、Yは負荷Lのアドミタンスであり、kは、好ましくは増幅器1100の乗算に対応する乗算係数であり、fは全単射関数である。いくつかの実装形態では、関数fは単純に恒等関数(identity function)であり得る、すなわち、fは上記の式から除去され得る。
【0068】
したがって、どのように算出増幅器電流IOUT_PREDが、入力パラメータに基づいて簡易的にかつ確実に計算されることができるかが明らかである。特に、どのように負荷LのアドミタンスYを残りの入力パラメータ、すなわち入力VおよびIから導出できるかは、当業者には明らかであろう。
【0069】
いくつかの実施形態では、アドミタンスYの計算のための負荷Lを、負荷LのキャパシタンスCのみから導出することができる。代替的または追加的に、負荷Lは、インダクタンスL1、インダクタンスL2、および抵抗器R1のうちの1つまたは複数と直列に接続されたキャパシタンスCを含むようにモデリングされ得る。
【0070】
より具体的には、図4Bに見られるように、増幅器1100から見た負荷Lは、順に、L、R、CおよびLのうちの1つまたは複数の直列接続によってモデリングされ得る。L、R、CおよびLのすべてが図4Bに示されているが、当業者は負荷Lをモデリングするための代替的な方法を認識しているので、本発明がこの特定のモデルに限定されないことは明らかであろう。いくつかの実施形態では、入力VおよびIは、キャパシタンスCにおいて取得された測定値に関連すると理解することができ、したがって、既知の方法でこのキャパシタンスの値を導出するために使用されることができる。モデルの残りのパラメータ、例えばL、RおよびLは、負荷Lの既知の構成に基づいて、予め設定された値に設定されることができる。
【0071】
図4Cは、いくつかの実施形態において、どのように負荷電流モデル4410が実装され得るかについてのさらなる詳細を概略的に示す。特に、図示の実装形態では、負荷電流モデル4410は、VおよびIから計算された負荷Lの算出キャパシタンス値CL_PREDを出力するように構成された負荷キャパシタンスモデル4411を含むことができる。上述したように、キャパシタンスにおける電圧及び電流の測定値からのキャパシタンス値の計算は、当業者に知られている。
【0072】
負荷電流モデル4410は、VINから計算された増幅器の予想出力電圧VOUT_PREDを出力するように構成された増幅器モデル4412をさらに含むことができる。すなわち、増幅器モデル4412は、増幅器1100の動作をモデルリングすることができる。このようにして、入力VINが与えられた場合に増幅器1100が出力する出力VOUT_PREDを計算することが可能である。増幅器モデル4412は、単純な利得段または複雑な伝達関数であり得る。いくつかの実施形態において、増幅器モデル4412は、信号周波数に依存し得る。その最も簡易的な形態では、VOUT_PREDは、増幅器1100によって適用される乗算係数をVOUT_PREDに乗算することによって、VINによって取得されることができる。負荷電流モデル4410は、負荷Lの算出キャパシタンス値CL_PREDおよび予想出力電圧VOUT_PREDに基づいて、数式2として算出増幅器電流IOUT_PREDを計算するように構成された電流演算器4413をさらに含むことができる。
【0073】
(数式2)IOUT_PRED= f (VOUT_PRED * YL)
ここで、fは全単射関数である。いくつかの実装形態では、関数fは単純に恒等関数であり得る、すなわち、fは上記の式から除去され得る。
【0074】
この場合も、Yについて前述の考慮が適用される。すなわち、負荷Lは、負荷キャパシタンスモデル4411によって計算されたキャパシタンスCよりも大きく備える回路によってモデリングされてもよく、電流演算器4413における結果としてのアドミタンスYの計算は、既知の方法でそのことを考慮に入れることができる。換言すれば、負荷電流モデル4410は、負荷の可変成分Cのトラッキングを可能にする。負荷Lの任意の他の構成要素は、負荷Lの構成に基づいて、所定の値に割り当てられてもよい。
【0075】
上述したように、当業者は、入力VおよびIに基づいてCの値を計算するためのいくつかの方法を知っている。可能性のある特定の実装形態では、負荷キャパシタンスモデル4411は、最小平均二乗フィルタを含むことができる。
【0076】
特に、負荷のキャパシタンス・アドミタンスを、Cの関数として、例えば、s*Cとして定義することができ、既知の方法の
【0077】
【数1】
として離散的な方法で表すことができる。
【0078】
最小平均二乗フィルタアルゴリズムを使用して、係数aおよびbを既知の方法で計算することができ、したがってCの値を計算することができる。
さらに、いくつかの実施形態では、負荷電流モデル4410は、負荷Lの電圧から電流への伝達関数のモデル、および/または負荷Lのキャパシタンス値Cのモデルを含むことができる。このようにして、IOUT_PREDの値を、Cを変数として有する伝達関数にVOUT_PREDの値を挿入することによって簡単に計算することができる。
【0079】
電流IOUTの予測値IOUT_PRED、すなわち、所与の負荷L、特に負荷Lの所与のキャパシタンスCの関数として、および所与の入力信号VINの関数として増幅器1100によって出力される電流の予測値IOUT_PREDの計算について、いくつかの方法を説明してきた。
【0080】
これにより、動的モデルは、どのような電流IOUT_PREDが増幅器1100によって出力されるかを計算することができ、この場合、この電流は利用可能であるべきである。以下でより明らかになるように、この電流を閾値と比較することができ、その結果、IOUT_PREDが得られることができない場合、信号VINに作用して電流IOUTを許容することができる値にするために、動的モデルが適応フィルタ2300に指示を与えることができる。
【0081】
さらに、電流IOUT_PREDの計算は、負荷Lの状態、特に負荷Lの可変キャパシタンス成分Cの状態の関数であるので、モデルは、負荷Lが設計によって許容されるようなより大きな電流を引き出している最悪のシナリオを考慮するように事前にプログラムされる代わりに、負荷Lの実際の状態を、潜在的にかつ好ましくはリアルタイムでトラッキングすることができる。
【0082】
このことは、当業者に知られているように、複数の半導体構成要素がプロセス、経年、温度、および駆動条件などのすべての可能性のある条件下で評価された場合にかなり広い範囲の複数の特性を有するので重要な利点となる。しかしながら、最悪のシナリオ、すなわち、これらの特性の最悪の可能性のある組み合わせは、統計的に非常に起こりにくい事象であり、したがって、パラメータの静的なセットでモデル2400を設計することは、ほとんどの場合、必要とされないフィルタ2300による重いフィルタリングにつながる。
【0083】
上記の説明は、どのように算出増幅器電流IOUT_PREDが計算され得るかについての詳細を提供した。以下では、どのように算出ブースト電流IBST_PREDが計算され得るかを説明する。負荷Lのモデルリングについて上記でなされた考察が適用され続ける。
【0084】
図5Aは、ブースト電流モデル3420の可能性のある実装形態であり得るブースト電流モデル5420を概略的に示す。ブースト電流モデル5420は、
電源の両端間の電圧を示す値であるVBAT
ブーストコンバータ3110の効率を示す値であるη、
算出増幅器電流を示す値であるIOUT_PRED、および
入力信号を示す値であるVINを、入力として受け取り、
算出ブースト電流IBST_PREDを、IBST_PRED= f [VOUT * IOUT_PRED / (η * VBAT)]として出力するように構成されている。
【0085】
ここで、VOUTを、例えば、VINと増幅器1100の増幅率との乗算によって、既知の方法でVINから計算することができ、fは全単射関数である。いくつかの実装形態では、関数fは単純に恒等関数であり得る、すなわち、fは上記の式から除去され得る。
【0086】
これにより、算出ブースト電流IBST_PREDを容易かつ確実に算出することができる。算出ブースト電流IBST_PREDの値は、電力供給源から引き出される電流に関する重要な指標を提供し、以下でより明らかになるように、この値は、電力供給源が提供することができる値よりも高いかどうかを判定するために使用されることができ、フィルタリングが必要であることを示す。
【0087】
さらに、動的モデル3400は、算出増幅器電流IOUT_PREDを再利用することによって、すでに使用されている計算リソースを効率的に使用することができる。
図5Bは、いくつかの実施形態において、どのようにブースト電流モデル5420が実装され得るかについてのさらなる詳細を概略的に示す。特に、図示の実装形態では、ブースト電流モデル5420は、VINから計算された増幅器の予想出力電圧VOUT_PREDを出力するように構成された増幅器モデル4412を含むことができる。
【0088】
増幅器モデル4412は、図4Cに示されるものに加えて図5Bに示されるが、同じ増幅器モデル4412がモデル4410および5420によって共有され得ることは、当業者には明らかであろう。例えば、ブロック3410および3420の両方に予想出力電圧VOUT_PREDを供給するために、単一の増幅器モデルはVINに接続されることができる。代替的に又は追加的に、モデル4410は、IOUT_PREDの値に加えて、VOUT_PREDの値をモデル5420に出力することができる。
【0089】
ブースト電流モデル5420は、当業者には明らかな方法で、予想出力電圧VOUT_PREDに基づいて算出ブースト電流IBST_PREDを計算するように構成された電流演算器5421をさらに含むことができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、電流演算器5421は、予想出力電圧VOUT_PREDが増大する場合に算出ブースト電流IBST_PREDを増加させ、および/または予想出力電圧VOUT_PREDが低下する場合に算出ブースト電流IBST_PREDを減少させる関数を実装することができる。代替的に又は追加的に、電流演算器5421は、電源電圧VBATが低下する場合に算出ブースト電流IBST_PREDを増加させ、及び/又は電源電圧VBATが増大する場合に算出ブースト電流IBST_PREDを減少させる関数を実装することができる。
【0091】
これは、算出ブースト電流IBST_PREDを計算するための効率的な方法を提供する。
このように、どのように算出ブースト電流IBST_PREDおよび/または算出増幅器電流IOUT_PREDが計算され得るかが説明された。上述したように、これらの値は、それぞれの電流を同一の数値で示す必要はない。すなわち、算出ブースト電流IBST_PREDおよび/または算出増幅器電流IOUT_PREDの値が、既知の方法で、全単射関数fを用いてそれぞれの電流に関係付けられれば十分である。
【0092】
例として、増幅器電流が10mAに対応する場合、所与の組の入力に対して、算出増幅器電流IOUT_PREDは、値10mAをXの値に関連付けることが可能である限り、例えば、電圧として表される場合にXボルトとして表すことができる。
【0093】
算出ブースト電流IBST_PREDおよび/または算出増幅器電流IOUT_PREDに基づいて、動的モデル3400は、適応フィルタ2300の動作に影響を及ぼす1つまたは複数の出力を適応フィルタ2300に提供することができる。
【0094】
概して、算出ブースト電流IBST_PREDおよび/または算出増幅器電流IOUT_PREDのいずれかの値がそれぞれの予め設定された閾値を超える場合、動的モデル3400は、適応フィルタ2300に入力信号VINのフィルタリングを増強させる1つまたは複数の出力を適応フィルタ2300に提供することができる。この概略的な概念を実装する動作のより具体的な方法について、以下でより詳細に説明する。
【0095】
図3および図6に見られるように、動的モデル3400は、算出増幅器電流IOUT_PREDおよび/または算出ブースト電流IBST_PREDを入力として受け取り、算出増幅器電流IOUT_PREDおよび算出ブースト電流IBST_PREDのうちの少なくとも1つの値、好ましくは最大値に基づいて適応フィルタ6300を制御するための少なくとも1つの値を出力するように構成された係数演算ロジック3430をさらに含むことができる。
【0096】
特に、適応フィルタ6300はローパスフィルタ6310を含むことができ、そのロールオフ係数はROFFの値によって制御されることができる。例えば、ROFFが増大すると、ロールオフ係数は増大することができ、ROFFが低下すると、ロールオフ係数は低下し得る。代替的にまたは追加的に、適応フィルタ6300は、乗算係数がXMULTの値によって制御され得る乗算器を備え得る。例えば、XMULTが増大すると、乗算係数は増大することができ、XMULTが低下すると、乗算係数は低下し得る。以下の説明では、適応フィルタ6300は、ROFFとXMULTの両方の制御を実現するものとする。しかしながら、これらの制御のうちの1つのみが可能である実施形態が可能であることは明らかであろう。
【0097】
概して、XMULTおよび/またはROFFのいずれも、IOUT_PREDおよび/またはIBST_PREDのいずれかに基づいて計算されることができる。いくつかの好ましい実施形態では、XMULTおよび/またはROFFのいずれかを、IOUT_PREDおよび/またはIBST_PREDの両方に基づいて計算することができる。
【0098】
特に、係数演算ロジック3430は、IOUT_PREDおよび/またはIBST_PREDのうちの少なくとも1つが予め設定された閾値を上回る場合、XMULTのうちの少なくとも1つを低下させ、および/またはROFFを増大させるように構成され得る。換言すれば、係数演算ロジック3430は、それら電流のうちの少なくとも1つが予め設定された閾値を上回る場合、フィルタ6300のフィルタリングが増強されるように構成されることができ、その結果、特に飽和及び/又は制限及び/又は保護回路によるアーチファクトを導入することなく、駆動回路が正確に動作することができることを保証することができる。
【0099】
したがって、IOUT_PREDおよび/またはIBST_PREDの閾値は、回路および/または負荷および/または電源によって許容されることができるそれぞれの最大電流に応じて選択されることができる。特定の回路構成に応じて、どのように閾値の特定の値を選択することができるかは、当業者には明らかであろう。
【0100】
したがって、係数演算ロジック3430は、フィルタ6300の動作を変更するために、IOUT_PREDおよび/またはIBST_PREDのうちの少なくとも1つが予め設定された閾値を上回る場合、XMULTおよび/またはROFFのうちの少なくとも1つに作用するように構成され得る。XMULTおよび/またはROFFの両方は、VINと比較して出力信号VIN_FILTの振幅を低減する効果を有するが、それらの効果が異なることは当業者には明らかであろう。特に、XMULTは入力信号の全ての周波数に適用され、ROFFは特定のカットオフ周波より上の周波数にのみ適用される。
【0101】
したがって、好ましい実施形態では、XMULTとROFFの両方を組み合わせて使用することが特に有利である。例えば、それら算出電流のうちの1つがその対応する閾値を許容している信号が、カットオフ周波数よりも低い周波数である場合、ROFFを増加させても何の効果ももたらさない。同様に、前述の信号がカットオフ周波数よりわずかに高いだけである場合、ROFFの大きな増大を必要とするが、XMULTの穏やかな低下は、その信号の他の周波数を過度に制限することなく同じ結果を達成する可能性がある。
【0102】
これは、有利には、IOUT_PREDおよび/またはIBST_PREDのうちの少なくとも1つが予め設定された閾値を上回る場合にXMULTおよびROFFの両方に作用するように演算ロジック3430を構成することによって達成されることができる。動作が両方の係数について実施される好ましい実施形態では、フィルタ6300によって適用される総フィルタリングのより大きなフィルタリングが、XMULTを低減することによるよりもROFFを増大させることによって達成されるように、演算ロジック3430を構成することがさらに好ましい可能性がある。
【0103】
代替的に又は追加的に、演算ロジック3430は、最初にROFFに作用するように構成されることができ、予め設定された閾値までの増加が、算出電流または複数の算出電流をそれぞれの閾値未満にするのに十分でない場合、演算ロジック3430は、さらに、XMULTに単独で又はROFFと組み合わせて作用することができる。
【0104】
説明全体を通して、実施形態は、フィルタ6310のロールオフ値を参照して説明されるが、さらなる代替実施形態では、ロールオフ値に対する作用の代わりに、またはそれに加えて、フィルタ6310のカットオフ周波数に作用することによって、同様の結果を得ることができる。したがって、この説明において、ROFFの増大が参照されるとき、このことは、カットオフ周波数の低下によって置き換えられ得るか、またはそれに追加され得る代替実施形態が実装されることができる。同じことが、ROFFの低下に対しても逆で当てはまる。
【0105】
上記では、演算ロジック3430およびフィルタ6300の概略的な動作が提供されたが、さらなる特定の可能性のある実装形態が以下で説明される。本発明がこれらの特定の実装に限定されないことは、当業者には明らかであろう。
【0106】
特に、いくつかの実施形態では、適応フィルタ6300は、制御入力として少なくともロールオフ係数ROFFを有する可変ローパスフィルタ6310を含むことができ、演算ロジック3430は、好ましくは前述のように、算出ブースト電流IBST_PREDおよび/または算出出力電流IOUT_PREDの関数としてロールオフ係数ROFFを計算するように構成されることができる。
【0107】
さらに、いくつかの実施形態では、適応フィルタ6300は、制御入力として少なくとも乗数係数XMULTを有する乗算器6320を含むことができ、演算ロジック7430は、好ましくは前述のように、算出ブースト電流IBST_PREDおよび/または算出出力電流IOUT_PREDの関数として乗数係数XMULTを計算するように構成されることができる。
【0108】
いくつかの好ましい実施形態では、平滑化フィルタ(図示せず)を係数XMULTおよび/またはROFFに適用することができる。好ましくは、平滑化フィルタは、負荷Lの駆動信号におけるアーチファクトを回避するのに十分遅いアタックタイム(attack time)を有することができる。特に、負荷Lが圧電スピーカーである場合、平滑化フィルタは、スピーカーによって出力されるオーディオ信号における可聴アーチファクトを回避するのに十分遅いアタックタイムを有するように構成されることができる。すなわち、平滑化フィルタによって、アーチファクトを生成する可能性があるそれぞれの係数の急激な変動を回避することが可能である。したがって、アタックタイムの特定の値は、回路および/または負荷の特定の構成に依存する。基準値として、いくつかの好ましい実施形態では、アタックタイムは好ましくは1~100msの範囲であり、さらに好ましくは50~500msの範囲である。
【0109】
0(ゼロ)よりも高いアタックタイムを有する平滑化フィルタを有するフィルタを実装する実施形態では、電流予測において極大値が生じる場合、アタックタイムは、過電流状態を防止するのに十分に速く反応しない可能性があり、その場合、可能性のある電流制限に起因するアーチファクトにつながる可能性がある。したがって、これらの実施形態において、乗算器6320に基づくフィルタリングは、局所的な過電流状況に対してより速く反応することができるので、特に有利である。
【0110】
好ましい実施形態では、係数XMULTは、有利には、IOUT_PREDおよび/またはIBST_PREDの現在の閾値と、それぞれの閾値を超えているとして検出されたIOUT_PREDおよび/またはIBST_PREDの値との比に対応することができる。一例として、IOUT_PREDが、対応する閾値の110%である場合、係数XMULTは、有利には、100/110に対応することができ、その結果、乗算器6320による乗算は、過電流状況をもたらさないレベルに信号を戻すことができる。
【0111】
OUT_PRED及びIBST_PREDの両方に基づいて動作するこれらの実施形態では、IOUT_PRED及びIBST_PREDの両方の電流閾値がそれぞれの電流によって超えられる場合、係数XMULTは、好ましくは、上述したように計算された2つの比のうちの低い方に対応することができる。
【0112】
さらなる好ましい実施形態では、乗算器6320の動作は、有利には、平滑化フィルタのアタックタイムに対応する時間範囲に制限されて、この時間領域においても十分なフィルタリングを可能にすることができる。代替的に、乗算器6320は、フィルタのアタックタイムに対応する時間範囲において、後続の時間範囲よりも高いフィルタリングを提供するように構成され得る。
【0113】
したがって、上記した説明では、どのようにフィルタ2300が動的モデル2400によって受け取られたフィードバックに基づいて様々な種類のフィルタリングを提供することができるかを例示した。概して、動的モデルの動作は、過電流状態を示す信号を出力するために、係数演算ロジック3430による1つまたは複数の電流の計算およびそれらの電流と予め設定された閾値との比較に基づくものとして例示されている。この比較は、例えば、アナログ信号で動作する場合には差動増幅器をベースとした比較器を実装することによって、またはデジタル信号で動作する場合にはデジタル比較器を実装することによって、それ自体知られている複数の方法で係数演算ロジック3430によって実装されることができる。
【0114】
以下では、その比較のための特に有利な実装が図7を参照して説明されるさらなる特定の実施形態が説明される。
特に、図7に見られるように、いくつかの実施形態では、係数演算ロジック3430の可能性のあるさらなる実装形態であり得る係数演算ロジック7430は、第1のピーク検出器7431および/または第2のピーク検出器7432を含み得る。
【0115】
第1のピーク検出器7431は、算出増幅器電流IOUT_PREDを入力として受け取り、算出増幅器電流IOUT_PREDの最大値として最大算出増幅器電流IOUT_PRED_MAXを決定するように構成されている。同様に、第2のピーク検出器7432は、算出ブースト電流IBST_PREDを入力として受け取り、最大算出ブースト電流IBST_PRED_MAXを算出ブースト電流IBST_PREDの最大値として決定するように構成されている。
【0116】
係数演算ロジック7430は、最大算出増幅器電流IOUT_PRED_MAXを予め設定された最大増幅器電流IOUT_MAXと比較し、および/または最大算出ブースト電流IBST_PRED_MAXを予め設定された最大ブースト電流IBST_MAXと比較し、その比較の結果に基づいて少なくとも1つの係数ROFF,XMULTを出力するように構成された比較器7433をさらに含むことができる。
【0117】
1つまたは複数の入力の関数としての1つまたは複数の係数に対する特定の変更に関しては、前述の実施形態を参照されたい。特に、IOUT_PREDおよびIBST_PREDとそれぞれの閾値との比較について前述を参照した場合、同様の考慮を、IOUT_PRED_PEAKおよびIBST_PRED_PEAKとそれぞれの閾値、すなわちIOUT_MAXおよびIBST_MAXとの比較に適用することができる。
【0118】
ピーク検出器の導入は、過電流状態をもたらす電流信号の部分を考慮することを可能にする。これにより、比較器7433への入力が簡略化され、比較器はピーク値に対してのみ動作すればよく、信号全体に対しては動作しなくてよい。いくつかの好ましい実施形態では、それらピーク検出器は、それぞれの入力の最大振幅を出力することが好ましい。いくつかのさらなる好ましい実施形態では、それらはまた、例えば、絶対的および/または相対的な値で、最大振幅の持続時間に関する情報を出力してもよい。このタイミング情報は、例示されていないそれぞれのタイミング閾値と比較することによって、比較器によって使用されることもできる。このようにして、ピーク検出器によって出力されたタイミング情報が対応する閾値よりも高くない場合、比較器は、その出力の動作を行わないように構成されることができる。これは、例えば、ノイズ、短い一時的効果、および/または測定誤差によって引き起こされる非常に狭いピークおよび/またはスパイクに反応することを回避するために有用であり得る。
【0119】
この手法の代替として、図7に見られるように、係数演算ロジック7430は、少なくとも1つの係数ROFF,XMULTを入力として受け取り、少なくとも1つの平滑化フィルタ7434,7435の適用後に少なくとも1つの係数ROFF,XMULTを出力するように構成された少なくとも1つの平滑化フィルタ7434,7435を含むことができる。
【0120】
このようにして、フィルタ2300の伝達関数の急激な変化を回避することができる。これにより、例えば負荷としてスピーカーを駆動する回路を使用する場合に可聴アーチファクトなどのアーチファクトを引き起こす可能性がある、フィルタ2300によってフィルタリングされる信号の急激な変化が回避される。したがって、任意選択の平滑化フィルタは、演算ロジック7430の出力を低域通過させるための簡易的でかつ効果的な方法を提供する。好ましい実施形態では、1つまたは複数の平滑化フィルタは、ローパスフィルタによって実装され得る。
【0121】
さらに、平滑化フィルタ7434の実装が平滑化フィルタ7435の実装から独立していることは明らかであろう。さらに、当業者であれば、平滑化フィルタ7434および7435の特性が同じである必要はないことを理解するであろう。特に、それらの各々は、アーチファクトの回避とアルゴリズム有効性の最大化との間でトレードするようにプログラミングされ得るそれ自体のアタックタイムおよび/またはリリースタイムを有することができる。好ましい実施形態では、アタックタイムおよび/またはリリースタイムは、好ましくは10マイクロ秒~1秒、さらにより好ましくは100マイクロ秒~500msである。
【0122】
以上、どのように本発明の様々な実施形態が駆動回路の1つまたは複数の電流を計算することができるか、およびどのようにこの情報をフィードバックループとして使用して入力信号をフィルタリングして、過電流状態による信号へのアーチファクトの導入を回避することができるかについて説明した。
【0123】
図8は、特に、入力信号VINと適応フィルタ2300との間に接続された遅延素子8500の存在により、前述の実施形態とは異なる駆動回路8000を概略的に示す。
概して、遅延素子の目的は、フィードバックループにおける処理によって生じる遅延が、動的モデル8400を用いて補償されることを可能にすることである。このようにして、フィルタ2300によってフィルタリングされる信号の部分が、動的モデル8400によって以前にモデリングされたものであることを保証することが可能である。
【0124】
したがって、いくつかの好ましい実施形態では、遅延素子8500によって導入される遅延は、動的モデル8400の処理時間に対応することができる。好ましくは、動的モデル8400の処理時間は、その複数の入力のうちの1つまたは複数の入力の変化と、その複数の出力のうちの1つまたは複数の出力の対応する変化との間に生じる時間であると理解することができる。
【0125】
いくつかの実用的な実装形態では、0.5msから5msまでの間の遅延が、駆動回路の動作に著しく悪影響を及ぼすことなく、動的モデル8400の処理に十分な時間を提供することが分かっている。
【0126】
さらに、図8に見られるように、駆動回路8000は、とりわけ、入力信号VINと動的モデル8400との間に接続された第2の適応フィルタ8440の存在により、前述の実施形態とは異なる。
【0127】
フィルタ8440は遅延8500とは独立して実装できることは明らかであろう。この点において、説明全体を通して、各々が複数の特徴を含む様々な実施形態が例示および/または説明されていることに留意されたい。このことは、本発明を例示および/または説明した実施形態の特徴の特定の組み合わせに限定するものではない。逆に、実施形態のいずれかからの任意の特徴を、任意の残りの実施形態からの任意の特徴と組み合わせることができる。
【0128】
特に、第2の適応フィルタ8440は、適応フィルタ2300と実質的に同じフィルタリングを提供するように構成されることができる。ここで、「実質的に」という用語は、第2の適応フィルタ8440によって提供されるフィルタリングが、モデル8400に出力される信号によって、モデル8400がフィルタ2300を駆動する場合に前述の動作を得ること、特にドライバー1100および/または負荷Lにおける過電流状態を回避することができるようにモデル8400を動作させるようなものであることを意味するように解釈されることができる。言い換えれば、フィルタ2300および8440は、厳密に同じ出力を供給する必要はないが、先に定義されたように、その目的に従ってモデル8400の動作を可能にするのに十分に類似した出力を供給する。
【0129】
さらなる実施形態では、第2の適応フィルタ8440は、適応フィルタ2300によって適用されるフィルタリングの+/-10%の範囲内のフィルタリングを提供するように構成され得る。さらなる実施形態では、第2の適応フィルタ8440は、フィルタ2300と同じフィルタリングを提供するように構成され得る。
【0130】
さらに、第2の適応フィルタ8440は、フィルタ2300に関して説明されたものと同様の方法で、動的モデルの出力に基づいて入力信号VINをフィルタリングするように構成され得る。このことは、フィルタ8440の出力がフィルタ2300の出力と互換性があることを保証するので、モデル8400は、回路内の電流の変化をより正確にモデリングすることができる。
【0131】
図9は、適応フィルタ9300の形態のフィルタ2300のさらなる可能性のある実装形態を示す。図9に見られるように、適応フィルタ9300は、少なくとも2つの枝路、好ましくは3つの枝路に沿って信号VINをフィルタリングする複数のローパスフィルタおよびハイパスフィルタを含むことができる。例えば、第1の枝路はローパスフィルタ9331を含み、第2の枝路はハイパスフィルタ9332およびローパスフィルタ9341を含み、第3の枝路はハイパスフィルタ9332およびハイパスフィルタ9342を含む。
【0132】
フィルタ9300の出力VIN_FILTは、加算器9360を用いて少なくとも2つの枝路の出力を組み合わせることによって取得される。
好ましくは、結合の前に、1つ以上の枝路の出力に利得を乗算することができる。例えば、例示された第2の枝路の出力は、乗算器9351において利得Gで乗算され、例示された第3の枝路の出力は、乗算器9352において利得Gで乗算される。
【0133】
好ましい実施形態では、ハイパスフィルタ9332およびローパスフィルタ9331は、オールパスセクション(all-pass section)9330を構成する。同様に、ハイパスフィルタ9342およびローパスフィルタ9341は、オールパスセクション9340を構成することができる。
【0134】
このような構成は特に有利である。特に、それはフィルタ9300のロールオフの容易な制御を可能にする。特に、0dB/decadeのロールオフ値であるフィルタリング動作が必要とされない場合、フィルタ9300は、GおよびGを適切に制御することによって、ならびに/またはオールパスセクション9330および/もしくはオールパスセクション9340のカットオフ周波数を適切に制御することによって、オールパスフィルタを実装することができる。
【0135】
特に、いくつかの実施形態では、反復プロセスは、フィルタ9300が要求されたプロファイルの近似となるように、ローパスおよびハイパスフィルタのカットオフ周波数ならびにGおよびGを特定するように構成されることができる。
【0136】
より具体的には、いくつかの実施形態では、GおよびGは、
【0137】
【数2】
として決定されることができる。
【0138】
ここで、dBは所望のロールオフであり、deltaおよびdeltaは、所望のロールオフの関数として反復プロセスによって決定されることができる。
以上、どのように本発明が一般的な容量性負荷Lを駆動する回路を提供することができるかについて説明した。上記の説明から明らかなように、これは、任意の容量性負荷に適用され、信号におけるアーチファクトの存在につながる可能性がある過電流状態を回避するために、入力信号をフィルタリングする場合に、キャパシタンスおよび/または電源における可能性のある変動をトラッキングすることができるという利点を有する。
【0139】
そのような挙動は、任意の負荷Lを駆動する場合に望ましいが、容量性負荷Lがスピーカーであるときに特に有利であり、スピーカーが1つまたは複数の圧電部品またはMEMSをベースとしたものである場合にさらに有利である。これらの技術を用いてスピーカーを実現するための様々な方法が知られており、それら自体も知られている。
【0140】
さらに、本発明は、負荷Lを直接測定することなく、負荷Lの両端間の電圧、負荷Lを流れる電流、および/またはドライバー1000の出力における電圧および/または電流の測定に依存して、上述した利点を得ることができることに留意されたい。したがって、本発明は、大幅な変更なしに、広範囲の負荷に適用することができる。
【0141】
本発明は駆動回路を対象としているが、本発明は、好ましくは1つまたは複数の圧電部品またはMEMSをベースとしたスピーカーと、スピーカーを駆動する上述した実施形態のいずれかによる回路とを備える携帯電話、テーブル、ノートブック、またはより一般的には任意の種類の電子デバイスなどのデバイスを対象とすることもできることは明らかであろう。
【0142】
さらに、本発明をデバイスに関して説明してきたが、対応する方法および/またはコンピューティングデバイスを実現できることは当業者には明らかである。
概して、上記した動的モデルおよび適応フィルタを参照して説明したすべての機能は、対応する方法ステップによって、および/またはCPUによって実行される対応する複数の命令によって実施されることができる。
【0143】
例えば、図10は、ステップS101~S104を含む方法を示す。
ステップS101は、動的モデルに対する複数の入力を取得することを含む。複数の入力は、例えば、VIN、V、I、VBAT、ηのいずれか、より一般的には、動的モデルに入力されるものとして説明した値のいずれかなど、前述の入力のいずれかとすることができる。好ましい実施形態では、動的モデルによってトラッキングされる複数の入力は、少なくとも負荷LのキャパシタンスCと、回路の少なくとも複数の部分に電力を供給するために使用される電源の電圧VBATとを含む。
【0144】
ステップS102は、動的モデルの1つまたは複数の出力を計算することを含む。複数の出力は、例えば、XMULT、ROFF、G、G、ηのいずれか、より一般的には、動的モデルによって出力されるものとして説明した値のいずれかなど、前述の出力のいずれかとすることができる。
【0145】
ステップS103は、前述したように、フィルタの特定の構成に応じて変化し得る動的モデルの複数の出力に基づいてフィルタを設定することを含む。
ステップS104は、負荷Lを駆動しながら、設定されたフィルタを用いて入力信号をフィルタリングすることを含む。
【0146】
デバイスの特徴に関して前述した機能を実行するために、さらなるステップを定義することができる。
同様に、本発明は、プロセッサを適切に駆動することによって前述した様々な機能を実施することができるコンピューティングデバイス11000によって実装されることができる。図11を参照すると、コンピューティングデバイス11000は、特に、プロセッサ11000、入力/出力手段11200、およびメモリ11300を含むことができる。メモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに前述した機能のいずれかを実行させることができる複数の命令を含むことができる。さらに、場合によってはメモリからの複数の命令に基づいて直接駆動される入力/出力手段11200を介して、および/またはプロセッサを介して、1つまたは複数の入力を取得し、1つまたは複数の出力を供給することが可能である。
【0147】
特に、本発明は、複数のディスクリート部品とコンピューティングデバイスとの組み合わせとして実現することもできる。好ましくは、コンピューティングデバイスは、動的モデルおよび/または様々なフィルタを実装するために使用されることができ、複数のディスクリート部品は、残りの特徴のために、特にドライバーのために使用されることができる。
【0148】
したがって、最悪の場合の仮定に基づかずに、実際の条件を考慮して、容量性負荷を効率的に駆動することができる方法が示された。この方法は、駆動電力を不必要に犠牲にすることなく、駆動電力を代わりに利用可能として、負荷が駆動されることを可能にし、駆動信号においてアーチファクトを生成することなく使用されることができる。同時に、本発明の構成は、そうでなければアーチファクトの生成につながるであろう負荷、電源および駆動信号の条件について増幅がリアルタイムで低減されることを可能にする。
【0149】
様々な特徴を有するいくつかの実施形態を説明および/または例示してきたが、本発明が特徴の特定の組み合わせに限定されないことは当業者には明らかであろう。代わりに、さらなる実施形態が、特許請求の範囲内で、1つまたは複数の実施形態から別々に特徴を組み合わせることによって得られることができる。
【符号の説明】
【0150】
1000A:駆動回路
1100:増幅器
1200A:ローパスフィルタ
1210:抵抗器
L:容量性負荷
1000B:駆動回路
1200B:ローパスフィルタ
1000C:駆動回路
1300適応フィルタ
1400:負荷モデル
2000:駆動回路
2300:適応フィルタ
2400動的モデル
IN:入力信号
:測定負荷電圧
:測定負荷電流
:負荷キャパシタンス
BAT:電源電圧
3000:駆動回路
3100:増幅器
3110:ブーストコンバータ
3120:ドライバー
3400:動的モデル
3410:負荷電流モデル
3420:ブースト電流モデル
3430:係数演算ロジック
OUT_PRED:算出増幅器電流
BST_PRED:算出ブースト電流
4410:負荷電流モデル
4411:負荷キャパシタンスモデル
4412:増幅器モデル
4413:電流演算器
L_PRED:算出負荷キャパシタンス
OUT_PRED:予想増幅器出力電圧
5420:ブースト電流モデル
5421:電流演算器
η:ブーストコンバータ効率
6300:適応フィルタ
6310:ローパスフィルタ
6320:乗算器
7430:係数演算ロジック
7431,7432:ピーク検出部
7433:比較器
7434,7435:平滑化フィルタ
8000:駆動回路
8400:動的モデル
8440:遅延
8500:遅延
9300:適応フィルタ
9330:オールパスセクション
9331:ローパスフィルタ
9332:ハイパスフィルタ
9340:オールパスセクション
9341:ローパスフィルタ
9342:ハイパスフィルタ
9351,9352:乗算器
9360:加算器
10000:方法
S101:入力の取得
S102:出力の計算
S103:フィルタの設定
S104:信号のフィルタリング
11000:コンピューティングユニット
11100:プロセッサ
11200:入力/出力
11300:メモリ
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図3A
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11