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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】水力駆動除塵装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/08 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
E02B5/08 104C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023185120
(22)【出願日】2023-10-28
【審査請求日】2023-12-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 本発明の水力駆動除塵装置は、京葉ガスエナジーソリューション株式会社を管理者として、令和5年6月6日から試運転が開始された。
(73)【特許権者】
【識別番号】506095696
【氏名又は名称】株式会社荒谷建設コンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】岩苔 宏
(72)【発明者】
【氏名】高木 周一
(72)【発明者】
【氏名】萬谷 昌毅
(72)【発明者】
【氏名】石田 康博
(72)【発明者】
【氏名】浅野 拓馬
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-144132(JP,U)
【文献】特開2000-120045(JP,A)
【文献】実開昭60-165525(JP,U)
【文献】特開2006-348549(JP,A)
【文献】特開2002-212932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路の幅方向に延びる回転軸の周りに回転するドラム状で、外周面に前記幅方向に延びる羽根板が間隔をあけて複数枚設けられ、前記羽根板で水を受けて回転する水車を、前記水路に配置するとともに、
前記水車の略下半部の下流側に、前記羽根板先端の回転軌道に一定距離で対向する円弧面を持つバー部材を複数、前記水路の幅方向に櫛状に形成され、前記水を通過させて塵芥Dを捕捉するバースクリーンと、前記バースクリーンの上端から下流方向に連設され塵芥Dを受ける塵芥受け部を備え、前記塵芥Dを除去する水力駆動除塵装置であって、
前記水車の回転軸は、前記水路の水位よりも上位に配置されるとともに、前記バースクリーンの上端は、前記水車の回転軸よりも低い位置に配置され、
前記羽根板には、汲み上げた水を溜める凹所を持つレーキが設けられ、
前記水車の回転にしたがって、前記水路の水位から上方に出た、前記羽根板の前記レーキを、前記バースクリーンの上端に対して下降傾斜させ、前記レーキの凹所に溜められた水を前記バースクリーンの上端に流し込むようにし、
さらに、前記バースクリーンの前記バー部材のそれぞれの間に、上端部に設けた支軸を中心にして下流側に回動自在の塵芥侵入防止部材を設けたことを特徴とする水力駆動除塵装置。
【請求項2】
前記レーキの先端に、前記バースクリーンのバー部材間に入り込む複数の突起部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の水力駆動除塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路を流れる水の力によって回転し、その水路を流れる塵芥を掻き揚げて排出する水力駆動除塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば水力発電に使用する水路には、その水路を流れてくる塵芥を除去するための除塵装置が設けられている。
従来の除塵装置には、水路の上流側に水車を設けると共に、その下流側にレーキを有する掻き揚げコンベアを設け、水車を水路の水流によって回転させ、その回転力で掻き揚げコンベアを周回させ、周回する掻き揚げコンベアのツメ部で水路を流れてくる塵芥を捕捉するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、水路に、水車とツメ部を持つ掻き揚げコンベアとスクリーンを設け、水車を水路の水流によって回転させ、その回転力で掻き揚げコンベアを周回させ、周回する掻き揚げコンベアのツメ部でスクリーンに付着した塵芥を捕捉するものも開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、ドラムに張り付いた塵芥をドラムの下流で水上に設置されたレーキで掻き取り、回転する掻寄装置で所定位置に掻き寄せるものも開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-84870号公報
【文献】特開2014-31624号公報
【文献】特開2006-307518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の除塵装置は、周回する掻き揚げコンベアのツメ部で水路を流れてくる塵芥を捕捉する構成であるため、掻き揚げコンベアの両側を流れる塵芥は捕捉することができない。
また、水車の上流側に掻き揚げコンベアを設けているので、掻き揚げコンベアによって水流の流量と流速が低下する。従って、水車を効果的に回転させることができず、その結果、掻き揚げコンベアも効率的に周回させることができず、塵芥を良好に捕捉することができない。
【0007】
また、特許文献2に記載の除塵装置は、周回する掻き揚げコンベアのツメ部でスクリーンに付着した塵芥を捕捉する構成であるため、スクリーンの前側(上流側)には掻き揚げコンベアの上昇する部分のみでなく、必然的に下降する部分も存在したいわゆる二重ベルト構造が形成される。そのため、下降するベルト部分のツメ部も塵芥を捕捉してしまい、掻き揚げコンベアとスクリーンの下端部との間に多量の塵芥が噛み込まれてしまう。その結果、掻き揚げコンベアの作動不良が発生し、塵芥を良好に捕捉することができない。
【0008】
さらに、特許文献3に記載の除塵装置は、ネット状のスクリーンとレーキとの間から塵芥がすり抜けるものであるので塵芥を良好に捕捉することができない。また、これはドラム内の塵芥を、水流を利用してドラムの側方から排出してドラム内に塵芥が蓄積することを防止するものであるので、ドラムの側方から排出された塵芥は下流に流されてしまう。
【0009】
そこで、本発明の目的とするところは、水路の水流によって回転する回転力を利用して水路を流れる塵芥を良好に捕捉して排出することのできる水力駆動除塵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の水力駆動除塵装置(1)は、
水路(W1)の幅方向に延びる回転軸(11)の周りに回転するドラム状で、外周面に前記幅方向に延びる羽根板(12)が間隔をあけて複数枚設けられ、前記羽根板(12)で水を受けて回転する水車(10)を、前記水路(W1)に配置するとともに、
前記水車(10)の略下半部の下流側に、前記羽根板(12)先端の回転軌道に一定距離で対向する円弧面(21a)を持つバー部材(21)を複数、前記水路(W1)の幅方向に櫛状に形成され、前記水を通過させて塵芥(D)を捕捉するバースクリーン(20)と、前記バースクリーン(20)の上端から下流方向に連設され塵芥(D)を受ける塵芥受け部(40)を備え、前記塵芥(D)を除去するものであって、
前記水車(10)の回転軸(11)は、前記水路(W1)の水位よりも上位に配置されるとともに、前記バースクリーン(20)の上端は、前記水車(10)の回転軸(11)よりも低い位置に配置され、
前記羽根板(12)には、汲み上げた水を溜める凹所(32)を持つレーキ(30)が設けられ、
前記水車(10)の回転にしたがって、前記水路(W1)の水位から上方に出た、前記羽根板(12)の前記レーキ(30)を、前記バースクリーン(20)の上端に対して下降傾斜させ、前記レーキ(30)の凹所(32)に溜められた水を前記バースクリーン(20)の上端に流し込むようにし、
さらに、前記バースクリーン(20)の前記バー部材(21)のそれぞれの間に、上端部に設けた支軸(51)を中心にして下流側に回動自在の塵芥侵入防止部材(50)を設けたことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記レーキ(30)の先端に、前記バースクリーン(20)のバー部材(21)間に入り込む複数の突起部(31)を設けたことを特徴とする。
【0017】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0018】
本発明の水力駆動除塵装置によれば、複数の羽根板で水を受けて回転する水車と、複数のバー部材を櫛状に配置して塵芥を捕捉するバースクリーンと、バースクリーンで捕捉した塵芥を受ける塵芥受け部を備える構成において、複数の羽根板に汲み上げた水を溜める凹所を持つレーキを、水路の水位から上方に出た際にバースクリーンの上端に対して下降傾斜させて、凹所に溜めた水をバースクリーンの上端に流し込むので、水路を流れる塵芥を良好に捕捉して排出することができる。
【0019】
すなわち、バースクリーンで捕捉した塵芥をレーキで掻き揚げて、レーキが水路の水位から上方に出て、バースクリーンの上端に対して下降傾斜を形成した際に、その塵芥をレーキに溜めた水とともにバースクリーンの上端に連設された塵芥受け部に流し込むので、塵芥を水の流れによって円滑に塵芥受け部に送って排出することができる。
またさらに、バースクリーンのバー部材のそれぞれの間に塵芥侵入防止部材を設けたので、塵芥がバー部材の間を通過することを防止できる。塵芥はバースクリーンの上流面に留められレーキで掻き上げられる。これにより、発電量を低下させたり、例えば下流に設けた水車などの構造物を損傷させるといった事態を防止することができる。
【0020】
なお、レーキの先端は、バースクリーンには直接、接することはなく、バースクリーンとの間に若干の隙間を設けるか、あるいは近接させてもよいが、レーキの先端に、バースクリーンのバー部材間に入り込む複数の突起部を設けて、バースクリーン上の塵芥を下から掻き揚げるようにしてもよい。
【0026】
ここで、仮に木の枝などの大きな塵芥がバー部材の間に侵入した際には、塵芥侵入防止部材は、上端部に設けた支軸を中心にして下流側に回動自在であるため、大きな塵芥の圧力によって上端部の支軸を中心として下半部が下流側に回動して、大きな塵芥をバー部材の間に侵入させる。これにより、大きな塵芥が上流側に大きく突出してレーキや羽根板と干渉して水車の回転を阻害するといった事態を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る水力駆動除塵装置を示す斜視図である。
図2図1に示す水力駆動除塵装置に設けられたレーキを示す斜視図である。
図3図2に示すレーキの他の例を示す斜視図である。
図4図1に示す水力駆動除塵装置の一部拡大正面図である。
図5図1に示す水力駆動除塵装置の一部拡大側面図である。
図6図1に示す水力駆動除塵装置の一部拡大側面図である(塵芥侵入防止部材の動きを示す)。
図7図2に示すレーキとバースクリーンとの位置関係を示す要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1乃至図7を参照して、本発明の実施形態に係る水力駆動除塵装置1を説明する。
【0029】
本実施形態に係る水力駆動除塵装置1は、水路W1に配置され、この水路W1を流れる水に含まれる塵芥Dを除去するものであり、塵芥Dを除去した水は例えば水力発電機の発電用に利用される。
【0030】
この水力駆動除塵装置1は、図1に示すように、水車10と、バースクリーン20と、塵芥受け部40を備える。なお、本実施形態では水路W1に隣接して余水路W2を設け、本実施形態の水力駆動除塵装置1で除去した塵芥Dはこの余水路W2に送って、水とともに排出される。
【0031】
水車10は、水路W1の幅方向に延びる回転軸11の周りに回転するドラム状であり、その外周面に水路W1の幅方向に延びる平板状の複数の羽根板12が、回転軸11から等間隔をあけて放射状に設けられる。各羽根板12は水路W1の幅方向の全長とほぼ同じ長さを有する。また、複数の羽根板12は、棒状の支持部材13を介して回転軸11と連結される。また、これら支持部材13はその先端部同士が補強部材14で連結され、これにより水車10としての必要な強度が確保される。なお、支持部材13の形状は特に限定されるものではなく例えば板状であってもよく
【0032】
バースクリーン20は、水車10の略下半部の下流側に設けられて複数のバー部材21で構成される。複数のバー部材21は、羽根板12の先端(あるいはレーキ30の先端)の回転軌道に一定距離で対向する円弧面21aを持ち、水路W1の幅方向に櫛状に形成される。複数のバー部材21のそれぞれの間にはスリット22が形成される。このバースクリーン20によって、水のみをスリット22を通して通過させ、塵芥Dをバー部材21で捕捉する。バースクリーン20は、羽根板12と同様に、水路W1の幅方向の全長とほぼ同じ長さを有する。従って、水路W1を流れてくる全ての水から塵芥Dを除去することができる。
【0033】
塵芥受け部40は、バースクリーン20の上端(あるいはそれより下位)から下流方向に連設される。塵芥受け部40は水平状に配置された横板41と、その下流側端部から立設された縦板42で構成される。この塵芥受け部40の少なくとも横板41は、余水路W2に向けて下降傾斜させることが好ましい。これにより、塵芥受け部40に上載した塵芥Dを、その自重によって、水とともに余水路W2に円滑に流して送ることができる。
なお、横板41はここでは通常の板(水平板)を余水路W側に傾けたものであるが、これに限定されることなく、例えば、横板41自体を湾曲させ、余水路W側と下流側に下がるように傾斜させるがバースクリーン20の上端では傾きのない水平にするようにしてもよい。
【0034】
また、本実施形態の水力駆動除塵装置1は、複数の羽根板12のそれぞれに、汲み上げた水を溜める凹所32を持つレーキ30を設けている。このレーキ30の凹所32は、図2に示すように、羽根板12の幅方向で、水車10の回転軸11方向に配置した後壁33と、底壁34と、二つの側壁35とで形成している。
これにより、汲み上げた水を確実に溜めることができる。
【0035】
またレーキ30の先端部には、複数の突起部31が幅方向に等間隔で複数配置されていて、複数のバー部材21間に入り込むようにされている。こうすることにより、図7に示すように、突起部31をバースクリーン20のスリット22に侵入させ、スリット22に入り込んだ塵芥Dを、この突起部31によって良好に掻き揚げて排出することができる。
突起部31は、先端より後端が幅広の台形状に形成され、バー部材21の先端と接触し難く、仮に大きな枝などの塵芥の挟み込みによりバー部材21の先端と接触したとしてもバー部材21から離れやすくしてある。なお、突起部31を台形状ではなく単なる矩形状に形成してもよい。
【0036】
また、この水力駆動除塵装置1は、図5に示すように、回転軸11を、水路W1の水位よりも上位に配置し、バースクリーン20の上端を、水車10の回転軸11よりも低い位置に配置している。こうすることによって、水車10の回転にしたがって、水路W1の水位から上方に出るレーキ30を、バースクリーン20の上端に対して下降傾斜させることができる。従って、レーキ30の凹所32に溜められた水をバースクリーン20の上端に、水の自重で流し込むことができる。
【0037】
なお、レーキ30の側壁35は、図2に示したように、その上端を下流側に向けて下降傾斜させた傾斜面35aとしている。これにより、長尺状の小枝など、凹所32に収まらない塵芥Dを側壁35の傾斜面35aに載せた状態でバースクリーン20の上端まで送り、そこで傾斜面35aを滑り落として塵芥受け部40に送ることができる。
【0038】
また、本実施形態では、各レーキ30を、羽根板12の幅方向の全長の一部に設け、かつ、その先端を、羽根板12の先端よりも突出させている。すなわち、レーキ30の先端より羽根板12の先端を、水車10の回転軸11側に後退させて、羽根板12の先端とバースクリーン20との間に塵芥Dが詰まることのない隙間を形成している。これにより、水車10を円滑に回転させることができる。なお、各レーキ30の幅方向の長さは全て同じに設定している。
【0039】
また、本実施形態では、複数のレーキ30の設置箇所を、隣接する羽根板12においてその幅方向に沿って一定間隔でずらして配置している。従って、当然ながら、各羽根板12に設けられたレーキ30の設置箇所は、羽根板12の幅方向においてそれぞれ異なる。こうした配置の形態にはいわゆる千鳥状などがあるが、特に限定されるものではない。このように複数のレーキ30を一定間隔でずらして配置することにより、バースクリーン20で捕捉した塵芥Dの全てを複数のレーキ30で少しずつ確実に掻き揚げることができる。また、捕捉した塵芥Dを排出するのに適した量の水を汲み上げて供給することができる。
【0040】
また、複数のレーキ30の設置箇所を上記した形態としたことに加え、各レーキ30の幅方向の長さを全て同じとし、複数の羽根板12を、前述したように、回転軸11から等間隔をあけて放射状に設けたことにより、回転軸11に常に均等な力を作用させることができる。従って、水車10を安定的に回転させて塵芥Dを良好に排出することができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、図4および図6に示すように、バースクリーン20のバー部材21のそれぞれの間であるスリット22に、上端部に設けた支軸51を中心にして下流側に回動自在の塵芥侵入防止部材50を設けている。また、塵芥侵入防止部材50の高さ方向のほぼ中間部の上流側には溝部52を設け、バースクリーン20にこの溝部52に嵌まる突起状のストッパー23を設けている。溝部52がストッパー23に嵌まることで、塵芥侵入防止部材50が上流側に回動するのを防止している。なお、塵芥侵入防止部材50を回動自在とすることなくスリット22内に固定して設けるようにしてもよい。
【0042】
また、塵芥侵入防止部材50には、図6に示すように、下流側に突出する当接部53を設けている。これにより、塵芥侵入防止部材50が下流側に回動した際に、この当接部53を塵芥受け部40の下面に当接させて、塵芥侵入防止部材50が必要以上に下流側へ回動するのを規制している。なお、当接部53は塵芥侵入防止部材50の回動時のバランスウェイトとして機能している。
【0043】
本実施形態に係る水力駆動除塵装置1は次のように作動する。まず、水車10を、水路W1を流れる水を羽根板12で受けて回転させ(図1では反時計回り方向に回転させる)、その水をバースクリーン20の複数のバー部材21のそれぞれの間である複数のスリット22を通過させる。このとき、水に含まれる塵芥Dは複数のバー部材21によって捕捉されてその位置に留まり、その位置に留まった塵芥Dは、回転する水車10の羽根板12に設けられたレーキ30によって上方に掻き揚げられてバースクリーン20の上端に達する。
【0044】
なお、水車10は連続的に回転するので、一回の回転のみで塵芥Dを塵芥受け部40まで掻き揚げることができなくても、少なくともバースクリーンの20の上部まで移動させることができ、これを複数回繰り返すことによって確実に塵芥受け部40まで掻き揚げることができる。
【0045】
この状態で、レーキ30はバースクリーン20の上端に対して下降傾斜しているので、塵芥Dはその自重によってバースクリーン20の上端および塵芥受け部40の横板41に自重で移動し始める。また、レーキ30は汲み上げた水を溜める凹所32を有しており、下降傾斜によりその水をバースクリーン20の上端に流すので、塵芥Dはこの水の流れに乗って塵芥受け部40に円滑に送られる。塵芥受け部40に送られた塵芥Dと水は、塵芥受け部40の縦板42によって堰き止められるので水路W1へのこぼれ落ちを防止できる。
【0046】
塵芥受け部40に送られた塵芥Dは、レーキ30から流れてきた水によって塵芥受け部40を水路W1の幅方向に流れて隣接する余水路W2に流れ落ちる。この際、塵芥受け部40の横板41を余水路W2に向けて下方傾斜させることにより、塵芥Dを水と一緒に容易に余水路W2に送ることができる。複数のレーキ30がこうした動作を連続的に繰り返すことによって、バースクリーン20で捕捉した塵芥Dを、塵芥受け部40と協働して余水路W2に連続的に送って排出することができる。従って,塵芥Dの排出を良好に行うことができる。
【0047】
なお、水路W1を流れてくる塵芥Dの中には木の枝などの比較的大きな塵芥Dも含まれ、こうした塵芥Dがスリット22に入り込んで挟まった状態になることが考えられる。こうした状態では、挟まった塵芥Dが羽根板12に当たって水車10の回転を阻害してしまう。本実施形態における塵芥侵入防止部材50は、上端部に設けた支軸51を中心にして下流側に回動自在としている。
【0048】
従って、挟まった塵芥Dの力によってその上端部の支軸51を中心としてその下半部が下流側に回動して、塵芥Dの少なくとも一部を受け入れた状態で回動を停止し、そこに留めることができる。この回動の停止は、塵芥侵入防止部材50の当接部53が塵芥受け部40の横板41の下面に当接することによって行われる。これにより、塵芥Dの上流側への突出量を規制して、塵芥Dがレーキ30や羽根板12に当たるのを防止することができ、水車10を円滑に回転させることができる。従って、塵芥Dを良好に排出することができる。
【0049】
また、この塵芥侵入防止部材50によってスリット22の幅を狭めるので、塵芥Dの通過をさらに防止することができる。塵芥Dはバースクリーン20の上流面に留められレーキ30で掻き上げられる。従って、塵芥Dの浸入による発電量の低下や、例えば下流に設けた水車などの構造物の損傷をさらに確実に防止することができる。
【0050】
なお、本実施形態に係る水力駆動除塵装置1の上流側に荒目スクリーン(図示せず)を設けることにより、本装置1で掻き揚げることのできない大きな流下物を、この荒目スクリーンで止めて除去することができる。
【0051】
上記した本実施形態におけるレーキ30は、羽根板12の幅方向の全長の一部に設けているが、これに限定されず、複数の羽根板12の幅方向の全長にわたって設けることもできる。この場合、多くの塵芥Dを一度に掻き揚げることができるとともに、より多くの水を汲み上げることができる。
【0052】
また、本実施形態のレーキ30は、図2に示すように、レーキ30の先端に複数の先端部31を設けて、バースクリーン20のバー部材21間のスリット22に先端部31が入り込むようにしたが、図3に示すように、先端に複数の先端部31を設けることなく、凹部のない面一の傾斜面を形成するようにしてもよい。この場合、レーキ30の先端は、バースクリーン20のバー部材21間のスリット22内に入り込むことはなく、バースクリーン20との間に若干の隙間を設けるか、あるいは近接させる状態となる。また、レーキ30の先端を、羽根板12の先端から突出させないようにすることもできる。例えば、レーキ30の先端を羽根板12の先端と揃えることも可能である。この場合、レーキ30を羽根板12で補強できるという利点がある。
【0053】
なお、本発明のように水車10と、バースクリーン20と、塵芥受け部40とを備え、塵芥Dを掻き揚げるレーキ30をバースクリーン20に対して下降傾斜させると共に、そのレーキ30で汲み上げた水を流すことによって塵芥Dを良好に排出することのできる水力駆動除塵装置1は、上述した特許文献にも一切記載されていない。
【符号の説明】
【0054】
1 水力駆動除塵装置
10 水車
11 回転軸
12 羽根板
13 支持部材
14 補強部材
20 バースクリーン
21 バー部材
21a 円弧面
22 スリット
23 ストッパー
30 レーキ
31 突起部
32 凹所
33 後壁
34 底壁
35 側壁
35a 傾斜面
40 塵芥受け部
41 横板
42 縦板
50 塵芥侵入防止部材
51 支軸
52 溝部
53 当接部
D 塵芥
W1 水路
W2 余水路
【要約】
【課題】水路の水による力を利用し、水路を流れる塵芥を排出する水力駆動除塵装置を提供する。
【解決手段】水路W1の幅方向に延びる回転軸11の周りに回転し、外周面に複数枚設けた羽根板12で水を受けて回転する水車10を水路W1に配置する。水車10の略下半部の下流側に、羽根板12先端の回転軌道に対向するバー部材21を複数、水路W1の幅方向に設けて塵芥Dを捕捉させるバースクリーン20と、その上端に配置された塵芥受け部40を設ける。回転軸11を水路W1の水位より上位に配置し、バースクリーン20の上端を水車10の回転軸11より低い位置に配置する。羽根板12に凹所32を持つレーキ30を設け、水車10の回転により水路W1の水位から上方に出たレーキ30を、バースクリーン20の上端に対して下降傾斜させ、レーキの凹所32に溜められた水をバースクリーン20の上端から塵芥受け部40に流し込む。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7