(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】青果物鮮度保持収納袋用の合成樹脂フィルム、および、それを用いた青果物鮮度保持収納袋
(51)【国際特許分類】
B65D 81/26 20060101AFI20240829BHJP
B65D 85/34 20060101ALI20240829BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B65D81/26 C
B65D85/34 160
B65D85/50 120
(21)【出願番号】P 2024037301
(22)【出願日】2024-03-11
【審査請求日】2024-04-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508219715
【氏名又は名称】株式会社ベルグリーンワイズ
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【氏名又は名称】長谷 久生
(74)【代理人】
【識別番号】100126170
【氏名又は名称】水野 義之
(72)【発明者】
【氏名】河井 兼次
(72)【発明者】
【氏名】黒川 雄太
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-144836(JP,A)
【文献】特開2014-140349(JP,A)
【文献】特開2022-029033(JP,A)
【文献】特開2021-133973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/26
B65D 85/34
B65D 85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
青果物の鮮度保持収納袋の形成に用いられる長尺状の合成樹脂フィルムであって、
二軸延伸ポリプロピレンフィルムによって形成されており、
レーザを照射することによって表裏を貫通する部分が形成されており、その貫通部分の周囲に、熱収縮に起因した塊状部分が形成されているとともに、
前記貫通部分の周囲の塊状部分を長手方向に5等分した各点における前記塊状部分の最上部の角度と最下部の角度の平均値が30°以上100°未満であり、かつ、
前記貫通部分の周囲の塊状部分を長手方向に5等分した各点における前記塊状部分の幅が100μm以上300μm未満であることを特徴とする青果物鮮度保持収納袋形成用の合成樹脂フィルム。
【請求項2】
前記貫通部分が、S字状に屈曲した一定幅の長尺な貫通線条であることを特徴とする請求項1に記載の青果物鮮度保持収納袋形成用の合成樹脂フィルム。
【請求項3】
前記二軸延伸ポリプロピレン
フィルムの厚みが5~50μmであることを特徴とする請求項1に記載の青果物鮮度保持収納袋形成用の合成樹脂フィルム。
【請求項4】
前記S字状に屈曲した一定幅の長尺な貫通線条が、0.05~2.0mmの幅、2.0~20.0mmの長さ、および、1.0~15.0mmの高さを有するものであることを特徴とする
請求項2に記載の青果物鮮度保持収納袋形成用の合成樹脂フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の合成樹脂フィルムによって形成されていることを特徴とする青果物の青果物鮮度保持収納袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果物の鮮度保持収納袋、および、その青果物の鮮度保持収納袋の形成に用いる長尺な合成樹脂フィルム(フィルムロール)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
葉菜類、果菜類、根菜類、フルーツ、菌茸類等の各種の青果物を鮮度を保持した状態で収納するための収納袋として、合成樹脂製のフィルムによって形成された二方袋、三方袋、ピロー袋、パウチ、ガゼット袋等の収納袋が知られている。そのような合成樹脂製のフィルムからなる収納袋は、2枚の合成樹脂フィルムを重ねて(あるいは単一の合成樹脂フィルムを折り畳んで)外周をヒートシール(熱接着)する製袋加工によって形成されることが多い。そのため、ヒートシールの容易性(比較的に低い温度でヒートシールできること)の観点から、ポリオレフィン製のフィルムによって形成された収納袋が広く用いられている。また、ポリオレフィンフィルムからなる収納袋は、水蒸気透過度が低いため、良好な青果物の鮮度保持効果を発現させる目的で、微細な透過孔やスリットを設けて水蒸気透過度を調整したものも開発されている(特許文献1)。
【0003】
上記したような微細な透過孔やスリットを設けたポリオレフィンフィルムからなる収納袋は、通常、一定幅の長尺なポリオレフィンフィルムを巻回してなるフィルムロールを引き出して、レーザ(レーザ光線)の照射や針の突き刺し加工によって微細な透過孔やスリットを形成し、しかる後、その透過孔やスリットを穿設した長尺状のフィルムを、一旦、ロール状に巻き取った後に、製袋加工を施すことによって製造される。また、そのように透過孔やスリットを設けたポリオレフィンフィルムからなる収納袋を製造する際には、同一形状の収納袋を効率的に製造するために、透過孔やスリットの形成時に、ポリオレフィンフィルムの片端縁に一定の間隔で光電管マークを印字して、製袋加工時に、それらの光電管マークをセンサで検知したタイミングでヒートシールする(溶断ショットする)方法が広く採用されている。
【0004】
また、透過孔やスリットを設けたポリオレフィンフィルムからなる収納袋により青果物を収納する方法しては、ピロー包装機等を用いて、透過孔やスリットを穿設するとともに所定の間隔で光電管マークを印字した長尺なフィルムを、長手方向に二つ折りにして端縁をヒートシールすることによって長尺な筒状体とし、その長尺な筒状体内に、青果物を充填しながら、光電管マークをセンサで検知したタイミングでヒートシールすることによって製袋と同時に青果物を収納する方法(所謂、自動包装)も用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の如き透過孔やスリットを形成したポリオレフィンフィルムからなる収納袋を製造する場合には、透過孔やスリットの形成の仕方によっては、巻き取ったフィルムロールの透過孔やスリットの形成部分の外側や内側のフィルムが変形してしまい、その変形に基づいて、製袋加工時に光電管マークの読み取りミスが発生してしまうことがある。そのため、適切な位置で溶断シールが実施されないことに起因して異形の収納袋が製造されたり、歩留まりがわるくなったりする事態が起こり得る。また、青果物を自動包装する場合には、適切な位置で溶断シールが実施されないことに起因して、青果物の一部を噛み込んだヒートシール部分が形成されてしまうことがある。さらに、透過孔やスリットの形成の仕方によっては、青果物を収納した状態で積み重ねて使用する場合の収納袋の鮮度保持効果が不良なものとなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、上記従来の青果物の鮮度保持収納袋の形成用の合成樹脂フィルムの問題点を解消し、製袋加工時や自動包装時に光電管マークの読み取りミスを発生させることなく歩留まり良く効率的に鮮度保持収納袋を製造することができる上、青果物を収納させた状態で積み重ねて使用した場合でも良好な鮮度保持効果を発現する鮮度保持収納袋を形成可能な長尺な合成樹脂フィルム(フィルムロール)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、青果物の鮮度保持収納袋の形成に用いられる長尺状の合成樹脂フィルムであって、二軸延伸ポリプロピレンフィルムによって形成されており、レーザを照射することによって表裏を貫通する部分が形成されており、その貫通部分の周囲に、熱収縮に起因した塊状部分が形成されているとともに、前記貫通部分の周囲の塊状部分を長手方向に5等分した各点における前記塊状部分の最上部の角度と最下部の角度の平均値が30°以上100°未満であり、かつ、前記貫通部分の周囲の塊状部分を長手方向に5等分した各点における前記塊状部分の幅が100μm以上300μm未満であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記貫通部分が、S字状に屈曲した一定幅の長尺な貫通線条であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みが5~50μmであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項2に記載された発明において、前記S字状に屈曲した一定幅の長尺な貫通線条(以下、S字状貫通線条という)が、0.05~2.0mmの幅、2.0~20.0mmの長さ、および、1.0~15.0mmの高さを有するものであることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載された発明は、請求項1~3のいずれかに記載の合成樹脂フィルムによって形成されていることを特徴とする青果物の鮮度保持収納袋である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る青果物鮮度保持収納袋形成用の合成樹脂フィルム(以下、単に、鮮度保持収納袋形成用フィルムという)は、鮮度保持効果の高い青果物鮮度保持収納袋を容易に製造することができる。さらに、請求項1に係る鮮度保持収納袋形成用フィルムは、レーザ照射による貫通部分の周囲の塊状部分が特定の形状を有しているため、巻き取った際の貫通部分の外側および内側のフィルムの変形量を低減させることができるので、製袋加工時には、光電管マークの読み取りミスを発生させることなく、歩留まり良く加工することができ、自動包装時には、光電管マークの読み取りミスに起因した青果物の噛み込み等を効果的に防止することができる。
【0014】
請求項2に係る鮮度保持収納袋形成用フィルムは、貫通部分がS字状貫通線条であるため、非常に鮮度保持効果の高い青果物鮮度保持収納袋を容易に製造することができる。
【0015】
請求項3に係る鮮度保持収納袋形成用フィルムは、所定の厚みを有する二軸延伸ポリプロピレンフィルムによって形成されているため、巻き取った場合に貫通部分の外側および内側のフィルムの変形量を大幅に低減できるため、製袋加工時に光電管マークの読み取りミスをより高い精度で防止することが可能となる。
【0016】
請求項4に係る鮮度保持収納袋形成用フィルムは、S字状貫通線条が所定の大きさ・形状に調整されているため、きわめて鮮度保持効果の高い青果物鮮度保持収納袋を容易に製造することができる。
【0017】
請求項5に係る青果物の鮮度保持収納袋は、貫通部分が設けられているため非常に高い青果物の鮮度保持効果を発現させることができる上、製造時(すなわち、長尺状のフィルム(フィルムロール)から製袋する際)に、光電管マークの読み取りミスが発生しないため、歩留まり良く安価かつ容易に製造することができる。また、請求項5に係る青果物の鮮度保持収納袋は、青果物を収納させた状態で積み重ねて使用した場合でも、きわめて良好な鮮度保持効果を発現することができる(以下、青果物を収納させた状態で積み重ねて使用した場合の鮮度保持特性を、積層時の鮮度保持特性という)。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】鮮度保持収納袋形成用フィルムの貫通部分(S字状貫通線条)の形成部分を示す説明図である(aは平面図であり、bはaにおけるA-A線断面図であり、cはbにおけるα部分を拡大して示す説明図である)。
【
図2】鮮度保持収納袋形成用フィルムを用いて青果物の鮮度保持収納袋を製袋する様子を示す説明図(平面図)である。
【
図3】鮮度保持収納袋形成用フィルムから製造された鮮度保持収納袋を示す説明図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る鮮度保持収納袋形成用フィルムは、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)によって形成されており、レーザを照射することによって、
図1の如く、貫通部分(フィルムの表裏を貫通する空洞部分、
図1では、S字状線条)Lが形成されているとともに、その貫通部分Lの周囲に、塊状部分(すなわち、レーザの照射で発生した熱により溶融、収縮して固まった部分)Bが形成されている。なお、後述するように所定の条件でレーザを照射することによって、
図1の如く、断面(貫通部分の長手方向に対して直交する鉛直断面)が略矩形状(頂点が丸くなった矩形状)の塊状部分Bが形成される。そして、本発明に係る鮮度保持収納袋形成用フィルムは、当該塊状部分Bの最上部の角度θ
tと最下部の角度θ
bの平均値θ
aが所定の数値範囲内に調整されているとともに、当該塊状部分Bの幅Wが所定の数値範囲内に調整されたものである。そのようにOPPフィルムにレーザを照射することによって貫通部分を形成するとともに、その貫通部分の周囲の塊状部分Bの形状(上下の頂点の角度の平均値θ
aおよび幅W)を特定の形状に調整することによって、製袋時や自動包装時における光電管マークの読み取りミスの発生を抑制することが可能となり、青果物が収納された鮮度保持収納袋の積層時の鮮度保持特性を良好なものとすることが可能となる。
【0020】
本発明に係る鮮度保持収納袋形成用フィルムは、OPPフィルムによって形成されたものであることが必要である。OPPフィルムの厚みは、特に限定されないが、5~90μmの範囲であると好ましく、20~70μmの範囲であるとより好ましい。OPPフィルムの厚さが5μmを下回ると、所謂“腰”がなくなってしまい、鮮度保持収納袋に形成して青果物を収納した際に皺が入り易くなる上、ボリューム感が発現されず扱いにくくなるので好ましくない。反対に、OPPフィルムの厚さが90μmを上回ると、剛性が高くなりすぎて、鮮度保持収納袋に形成して青果物を収納した後の密封作業を行いにくくなるので好ましくない。また、OPPフィルムの延伸倍率も、特に限定されず、任意の延伸倍率のものを用いることができるが、長手方向(MD方向)、幅方向(TD方向)に、それぞれ、2~5倍延伸したものを用いると、製造された鮮度保持収納袋の柔軟性および剛性が適度なものとなるので好ましい。
【0021】
そして、本発明に係る鮮度保持収納袋形成用フィルムは、レーザを照射することによって、長手方向に沿って所定の間隔で貫通部分が形成されている必要がある。貫通部分の形状は、特に限定されず、単純な円形、楕円形の孔や、三角形、四角形等の多角形の孔でも良いし、直線状あるいは曲線状の貫通した線条でも良い。また、貫通部分の形状をS字状貫通線条(すなわち、S字状に屈曲した一定幅の長尺な貫通線条)にすると、青果物を収納した鮮度保持収納袋の鮮度保持特性が良好なものとなるので好ましい。
【0022】
さらに、上記の如く、貫通部分の形状をS字状貫通線条にする場合には、S字の形状は特に限定されないが、鋭角部分を有さない連続した曲線によって形成されていると好ましく、上側の部分の先端が下向きに屈曲しており、かつ、下側の部分の先端が上向きに屈曲した形状であるとより好ましい。加えて、貫通部分の形状をS字状貫通線条にする場合には、S字状貫通線条の大きさを、0.05~2.0mmの幅、2.0~20.0mmの長さ、および、1.0~15.0mmの高さ(すなわち、S字の上下方向の最大長さ)を有するものとすると、鮮度保持収納袋に形成する際に、S字状貫通線条の周囲に形成される塊状部分Bの外側面の傾斜角度を所定の角度に調整しやすくなり、光電管マークの読み取りミスの発生をより効果的に抑制することが可能となる上、鮮度保持収納袋の鮮度保持特性が非常に良好なものとなるので好ましい。
【0023】
また、本発明に係る鮮度保持収納袋形成用フィルムは、上記の如くレーザの照射によってOPPフィルムに穿設される貫通部分の周囲に形成される塊状部分Bを、特定の形状に調整することが必要である。すなわち、本発明に係る鮮度保持収納袋形成用フィルムは、貫通部分の周囲の塊状部分Bの最上部の角度θ
tと最下部の角度θ
bの平均値θ
a(すなわち、塊状部分Bの全周を長手方向に5等分する各点P
1~P
5において、それぞれ、塊状部分Bの最上部の角度θ
tと最下部の角度θ
bとの平均値である角度θ
bを測定して、それらの傾斜角度θ
a1~θ
a5 を平均した平均値、
図1(c)参照)が、30°以上100°未満に調整されていることが必要である(なお、塊状部分Bの最上部の角度θ
tと最下部の角度θ
bの測定方法例については後述する)。当該塊状部分Bの上下の頂点の角度θ
t,θ
bの平均値θ
aが30°を下回ると、ロール状に巻き取った場合に貫通部分の外側および内側のフィルムの変形量が大きくなるため、製袋加工時や自動包装時に光電管マークの読み取りミスが発生し易くなるので好ましくない。反対に、塊状部分Bの上下の頂点の角度θ
t,θ
bの平均値θ
aが100°以上になると、製袋後に青果物を収納した鮮度保持収納袋(あるいは、自動包装した鮮度保持収納袋)を複数個積み重ねた場合に、下側に位置した鮮度保持収納袋が、水蒸気等の透過量の低下に起因して良好な鮮度保持特性を発現し得なくなるので好ましくない。なお、塊状部分Bの上下の頂点の角度θ
t,θ
bの平均値θ
aは、40°以上90°未満であるとより好ましい。
【0024】
さらに、本発明に係る鮮度保持収納袋形成用フィルムは、貫通部分の周囲の塊状部分Bの幅Wが100μm以上300μm未満に調整されていることが必要である。当該塊状部分Bの幅Wが110μmを下回ると、製袋後に青果物を収納した鮮度保持収納袋(あるいは、自動包装した鮮度保持収納袋)を複数個積み重ねた場合に、下側に位置した鮮度保持収納袋が、水蒸気等の透過量の低下に起因して良好な鮮度保持特性を発現し得なくなるので好ましくない。反対に、塊状部分Bの幅Wが300μm以上になると、ロール状に巻き取った場合に貫通部分の外側および内側のフィルムの変形量が大きくなるため、製袋加工時や自動包装時に光電管マークの読み取りミスが発生し易くなるので好ましくない。なお、塊状部分Bの幅は、140μm以上220μm未満であるとより好ましい。
【0025】
加えて、本発明に係る鮮度保持収納袋形成用フィルムは、貫通部分の周囲の塊状部分Bの外側面の傾斜角度θ(すなわち、塊状部分Bの全周を長手方向に5等分する各点P
1~P
5において、それぞれ、塊状部分Bの上側の外側面の水平面に対する傾斜角度θ
uと塊状部分Bの下側の外側面の水平面に対する傾斜角度θ
dとの平均値である傾斜角度θ(傾斜角度θ
1~θ
5)を測定して、それらの傾斜角度θ
1~θ
5 を平均した平均値、
図1(c)参照)が、25°以上80°未満に調整されていると、製袋加工時の光電管マークの読み取りミスの防止効果、および、複数個積み重ねた場合の下側に位置した青果物の鮮度保持収納袋における鮮度保持特性の低下防止効果が、より安定したものとなるので好ましい。すなわち、当該塊状部分Bの外側面の傾斜角度が25°を下回ると、製袋後に青果物を収納した鮮度保持収納袋(あるいは、自動包装した鮮度保持収納袋)を複数個積み重ねた場合に、下側に位置した鮮度保持収納袋が、水蒸気等の透過量の低下に起因して良好な鮮度保持特性を発現し得なくなるので好ましくない。反対に、塊状部分Bの外側面の傾斜角度が80°以上になると、ロール状に巻き取った場合に貫通部分の外側および内側のフィルムの変形量が大きくなるため、製袋加工時や自動包装時に光電管マークの読み取りミスが発生し易くなるので好ましくない。なお、塊状部分Bの外側面の傾斜角度θは、30°以上75°未満であるとより好ましい。
【0026】
さらに、本発明に係る鮮度保持収納袋形成用フィルムは、貫通部分の周囲の塊状部分Bの高さHとフィルムの厚みとの差(すなわち、塊状部分Bの実質高さ)が110μm以上500μm未満に調整されていると、製袋加工時の光電管マークの読み取りミスの防止効果、および、複数個積み重ねた場合の下側に位置した青果物の鮮度保持収納袋における鮮度保持特性の低下防止効果が、より安定したものとなるので好ましい。当該塊状部分Bの実質高さが110μmを下回ると、製袋後に青果物を収納した鮮度保持収納袋(あるいは、自動包装した鮮度保持収納袋)を複数個積み重ねた場合に、下側に位置した鮮度保持収納袋が、水蒸気等の透過量の低下に起因して良好な鮮度保持特性を発現し得なくなるので好ましくない。反対に、塊状部分Bの実質高さが500μm以上になると、ロール状に巻き取った場合に貫通部分の外側および内側のフィルムの変形量が大きくなるため、製袋加工時や自動包装時に光電管マークの読み取りミスが発生し易くなるので好ましくない。なお、塊状部分Bの実質高さは、120μm以上350μm未満であるとより好ましい。
【0027】
上記したような特定の形状の貫通部分および塊状部分Bを形成するためには、OPPフィルムに対して、特定の態様でレーザを照射するのが効果的である。すなわち、貫通部分を穿設するためのレーザとしては、半導体レーザ、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、YAGレーザ、ファイバレーザ等を好適に用いることができるが、炭酸ガスレーザ(CO2レーザ)を用いると、小型の装置により高い出力で光軸にずれのないレーザを得ることが可能となり、形成される貫通部分の寸法精度が高くなり、貫通部分の周囲の塊状部分Bの形状を調整しやすいので好ましい。また、CO2レーザを用いて貫通部分および塊状部分Bを形成する際の出力、波長は、特に限定されないが、出力を10~40Wの範囲内に調整し、波長を8.0~12.0μmの範囲内に調整すると、上記した特定の形状の貫通部分および塊状部分Bを短時間で効率的に形成することが可能となるので好ましい。
【0028】
さらに、本発明の要件である特定の形状の貫通部分および塊状部分Bを形成するためには、OPPフィルムの厚み方向に焦点距離を変更可能なレーザマーカ(たとえば、焦点位置をX,Y,Z軸の3次元方向で制御可能な3次元制御式のレーザマーカ)を利用して、焦点がOPPフィルム表面から0.1~1.5mm離れた位置になるように(すなわち、上側からレーザを照射する場合には、焦点がOPPフィルム表面から0.1~1.5mm下側に位置するように)調整して、レーザを照射するのが好ましく、焦点がOPPフィルム表面から0.3~1.2mm離れた位置に調整すると、より好ましい。
【0029】
また、OPPフィルムにCO2ガスレーザを照射して貫通部分を形成する場合には、レーザ照射装置とOPPフィルムとの距離を50~300mmとなるように調整すること、スキャンスピードを500~2,500mm/sec.に調整することや、照射回数を1~6回に調整することによっても、貫通部分の周囲の塊状部分Bの外側面の傾斜角度や塊状部分Bの実質高さを調整しやすくなる。
【0030】
一方、鮮度保持収納袋形成用フィルムによって製造される鮮度保持収納袋は、OPPフィルムに形成する貫通部分の形状・大きさを調整することによって、水蒸気透過度を5g/(m2・day.atm)以上3,000g/(m2・day.atm)未満に調整するのが好ましい。鮮度保持収納袋の水蒸気透過度が5g/(m2・day.atm)未満であったり、3,000g/(m2・day.atm)以上であったりすると、良好な鮮度保持特性を発現し得なくなるので好ましくない。
【0031】
加えて、鮮度保持収納袋形成用フィルムによって製造される鮮度保持収納袋の形状は、特に限定されず、左右および下部をヒートシールしてなる三方袋、二つ折りされたOPPフィルムの左右をヒートシールしてなる二方袋、OPPフィルムの左右を折り込んで背面でヒートシールしたピロー袋等の各種の形状のものとすることができる。さらに、鮮度保持収納袋の大きさは、青果物を入れるのに適した大きさであれば特に限定されないが、幅100~1200mm×高さ150~900mmの大きさであると、ハンドリング性、青果物の鮮度保持特性が良好となるので好ましい。また、本発明に係る鮮度保持収納袋形成用フィルムは、製袋と同時に青果物を収納する自動包装によって、(各種の青果物を収納した)二方袋、三方袋、ピロー袋等の形状にすることができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例・比較例によって本発明に係る鮮度保持収納袋形成用フィルム、および、それを用いた鮮度保持収納袋について詳細に説明するが、本発明に係る鮮度保持収納袋形成用フィルムおよび鮮度保持収納袋は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することが可能である。また、実施例および比較例における特性の評価方法は以下の通りである。
【0033】
<貫通部分の塊状部分の傾斜角度、最上部および最下部の角度、幅および高さ>
株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX-1000を用いて、クイック深度合成&3Dにより、実施例・比較例で得られた鮮度保持収納袋形成用フィルムに形成された貫通部分の3次元画像を取得し、得られた3次元画像に対して、デジタルマイクロスコープVHX-1000にインストールされている「3D形状測定ソフト」(型式VHX-H3M)の中の「3D計測モード」の「面間角度」を利用して、貫通部分の周囲の塊状部分Bの外側面において指定した2点(すなわち、塊状部分Bの外側面と直交する鉛直面内における塊状部分Bの中間高さ位置(約1/2の高さの部分) および、 塊状部分Bの基端(略水平な部分))の面同士の傾斜角度差を計測し、傾斜角度(面間角度)θとした。なお、傾斜角度(面間角度)θの測定は、塊状部分Bの上側の外側面の水平面に対する傾斜角度θ
uと塊状部分Bの下側の外側面の水平面に対する傾斜角度θ
dとを測定し、それらの傾斜角度θ
uと傾斜角度θ
dとの平均値を算出して傾斜角度θとした。また、傾斜角度θの測定は、3次元画像における塊状部分Bを長手方向に5等分する各点P
1~P
5(
図1(a)参照)において、傾斜角度θ
1~θ
5をそれぞれ測定し、それらの測定値の平均値を算出した。さらに、同様な画像処理方法によって、塊状部分Bの最上部の角度θ
t(すなわち、上記各点P
1~P
5 での塊状部分Bの長手方向に対して垂直な鉛直面における塊状部分Bの上部内側の傾斜面S
t1と上部外側の傾斜面S
t2との成す角度θ
t)、最下部の角度θ
b(すなわち、上記各点P
1~P
5 での塊状部分Bの長手方向に対して垂直な鉛直面における塊状部分Bの下部内側の傾斜面S
b1と下部外側の傾斜面S
b2との成す角度θ
b)、幅Wおよび高さHを測定した(
図1(c)参照)。そして、測定された塊状部分Bの高さHからフィルムの厚みを減算して塊状部分Bの実質高さを算出した。
【0034】
<青果物の鮮度保持効果(単体)>
実施例・比較例で得られた鮮度保持収納袋(350gのブロッコリーを自動包装によって収納したピロー袋)を、10℃×40%RHの環境下にて7日間に亘って保管した後に、収納されたブロッコリーの状態を、異臭、変色の発生状況の観点から4段階で官能評価した。
◎:異臭、変色がまったく認められない(包装前のものとの差がない)
○:ごくわずかな異臭、変色が認められる
△:異臭、変色が明確に認められる
×:全体的に異臭、変色の程度が著しく、商品価値を喪失している
【0035】
<積層時の鮮度保持効果>
実施例・比較例で得られた5個の鮮度保持収納袋(350gのブロッコリーを自動包装によって収納したピロー袋)を、上下に重ねた状態で、10℃×40%RHの環境下にて7日間に亘って保管した。しかる後、最下段に配置されたピロー袋、および、その上に配置されたピロー袋に収納されたブロッコリーの状態を、上記した「青果物の鮮度保持効果」と同一の基準で官能評価した(2つの袋のピロー袋の平均として評価した)。
【0036】
[実施例1]
厚さ25μmで幅620mmの長尺なOPPフィルム(東洋紡株式会社製 二軸延伸防曇ポリプロピレンフィルム P5573)に、ライン速度40m/分、巻き出し張力50N、巻き取り張力30Nの条件下で、所定の間隔(200mm間隔)で、
図2の如く、株式会社キーエンス製 3AxisCO
2レーザーマーカ ML-Z9600/9610 を用いて、以下の条件で、CO
2レーザを断続的に照射することによって貫通部分(S字状貫通線条)を形成した。しかる後、貫通部分を形成した長尺なOPPフィルムをロール状に巻き取った。また、レーザの照射と並行して、同じ間隔(200mm間隔)で、OPPフィルムの片端縁に、矩形(長手方向3.0mm×幅方向5.0mm)の光電管マークを断続的に印字することによって、実施例1の鮮度保持収納袋形成用フィルムを得た。
<レーザ照射条件>
・出力:95ワット
・スキャンスピード:1,450mm/秒
・印字(照射)回数:5回(同一の線条を5回なぞって印字)
・深さ方向(Z座標)の焦点距離:0.5mm(フィルムの表面から約0.5mm下側に焦点を設定)
・長手方向(X座標)の焦点距離:50mm
・幅方向(Y座標)の焦点距離:-2.14mm
【0037】
しかる後、得られた鮮度保持収納袋形成用フィルム(貫通部分を設け、かつ、光電管マークを印字したOPPフィルム)を用い、株式会社ケイ・エス・アール製 逆ピロー包装機を用いて、ヒートシール温度160℃、15袋/分の条件下で、ブロッコリーを自動包装することによって、ブロッコリー350g入りの100個のピロー袋(青果物鮮度保持収納袋)を連続的に製造した。自動包装する際には、光電センサによる光電管マークの検知に基づいてOPPフィルムを横断するようにヒートシールを行ったが、光電管マークの読み取りミスは発生しなかった。
図3は、得られたピロー袋(ブロッコリーを収納していない状態)を示したものであり、ピロー袋Pは、高さ280mm×幅230mmの大きさを有しており、上下の端縁がヒートシールされているとともに、裏面の中央(幅方向の中央)が鉛直状にヒートシールされている。そして、表面の中央から所定の長さ(10mm)右側で下端から所定の長さ(15mm)上方の部分に、S字状に屈曲した一定幅(0.4mm)の帯状に貫通してなる所定の大きさ(長さ=約10.0mm、高さ=5.0mm)の貫通部分(S字状貫通線条)Lが、その長手方向をピロー袋Pの幅方向に対して63°傾斜させた状態で形成されている。
【0038】
また、得られた鮮度保持収納袋形成用フィルム(貫通部分を設け、かつ、光電管マークを印字したOPPフィルム)を用い、株式会社川島製作所製 タテピロー包装機を用いて、ヒートシール温度160℃、30袋/分の条件下で、枝豆を自動包装することによって、枝豆200g入りの幅165mm×高さ210mmの大きさを有する100個のピロー袋(青果物鮮度保持収納袋)を連続的に製造した。自動包装する際には、光電センサによる光電管マークの検知に基づいてOPPフィルムを横断するようにヒートシールを行ったが、光電管マークの読み取りミスは発生しなかった。
【0039】
そして、得られたピロー袋を用いて、上記した方法によって、青果物(ブロッコリー)の鮮度保持特性を評価した。実施例1の鮮度保持収納袋形成用フィルム・ピロー袋の評価結果を、鮮度保持収納袋形成用フィルムの加工条件、特性とともに表1,2に示す。
【0040】
[実施例2]
貫通部分を形成する際のレーザの照射条件を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、OPPフィルムに貫通部分を形成するとともに光電管マークを印字して巻き取ることによって、実施例2の鮮度保持収納袋形成用フィルムを得た。
<レーザ照射条件>
・出力:95ワット
・スキャンスピード:1,450mm/秒
・印字(照射)回数:2回(同一の線条を2回なぞって印字)
・深さ方向(Z座標)の焦点距離:2.3mm(フィルムの表面から約2.3mm下側に焦点を設定)
・長手方向(X座標)の焦点距離:50mm
・幅方向(Y座標)の焦点距離:-2.14mm
【0041】
しかる後、得られた鮮度保持収納袋形成用フィルムを用い、実施例1と同様な方法で、ブロッコリーを自動包装することによって、ブロッコリー350g入りの100個のピロー袋を連続的に製造した。自動包装する際には、光電管マークの読み取りミスは発生しなかった。また、得られた鮮度保持収納袋形成用フィルムを用い、実施例1と同様な方法で、枝豆を自動包装することによって、枝豆200g入りの100個のピロー袋を連続的に製造した。自動包装する際には、光電管マークの読み取りミスは発生しなかった。そして、得られたピロー袋を用いて、上記した方法によって、青果物(ブロッコリー)の鮮度保持特性を評価した。実施例2の鮮度保持収納袋形成用フィルム・ピロー袋の評価結果を、鮮度保持収納袋形成用フィルムの加工条件、特性とともに表1,2に示す。
【0042】
[実施例3]
貫通部分を形成する際のレーザの照射条件を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、OPPフィルムに貫通部分を形成するとともに光電管マークを印字して巻き取ることによって、実施例3の鮮度保持収納袋形成用フィルムを得た。
<レーザ照射条件>
・出力:78ワット
・スキャンスピード:1,450mm/秒
・印字(照射)回数:6回(同一の線条を6回なぞって印字)
・深さ方向(Z座標)の焦点距離:0.5mm(フィルムの表面から約0.5mm下側に焦点を設定)
・長手方向(X座標)の焦点距離:50mm
・幅方向(Y座標)の焦点距離:-2.14mm
【0043】
しかる後、得られた鮮度保持収納袋形成用フィルムを用い、実施例1と同様な方法で、ブロッコリーを自動包装することによって、ブロッコリー350g入りの100個のピロー袋を連続的に製造した。自動包装する際には、光電管マークの読み取りミスは発生しなかった。また、得られた鮮度保持収納袋形成用フィルムを用い、実施例1と同様な方法で、枝豆を自動包装することによって、枝豆200g入りの100個のピロー袋を連続的に製造した。自動包装する際には、光電管マークの読み取りミスは発生しなかった。そして、得られたピロー袋を用いて、上記した方法によって、青果物(ブロッコリー)の鮮度保持特性を評価した。実施例3の鮮度保持収納袋形成用フィルム・ピロー袋の評価結果を、鮮度保持収納袋形成用フィルムの加工条件、特性とともに表1,2に示す。
【0044】
[実施例4]
貫通部分を形成する際のレーザの照射条件を以下のように変更するとともに、貫通部分の形状を、直径=3.0mmの円形に変更した以外は実施例1と同様にして、OPPフィルムに貫通部分を形成するとともに光電管マークを印字して巻き取ることによって、実施例4の鮮度保持収納袋形成用フィルムを得た。
<レーザ照射条件>
・出力:78ワット
・スキャンスピード:1,450mm/秒
・印字(照射)回数:6回(同一の線条を6回なぞって印字)
・深さ方向(Z座標)の焦点距離:0.5mm(フィルムの表面から約0.5mm下側に焦点を設定)
・長手方向(X座標)の焦点距離:50mm
・幅方向(Y座標)の焦点距離:-2.14mm
【0045】
しかる後、得られた鮮度保持収納袋形成用フィルムを用い、実施例1と同様な方法で、ブロッコリーを自動包装することによって、ブロッコリー350g入りの100個のピロー袋を連続的に製造した。自動包装する際には、光電管マークの読み取りミスは発生しなかった。また、得られた鮮度保持収納袋形成用フィルムを用い、実施例1と同様な方法で、枝豆を自動包装することによって、枝豆200g入りの100個のピロー袋を連続的に製造した。自動包装する際には、光電管マークの読み取りミスは発生しなかった。そして、得られたピロー袋を用いて、上記した方法によって、青果物(ブロッコリー)の鮮度保持特性を評価した。実施例4の鮮度保持収納袋形成用フィルム・ピロー袋の評価結果を、鮮度保持収納袋形成用フィルムの加工条件、特性とともに表1,2に示す。
【0046】
[比較例1]
貫通部分を形成する際のレーザの照射条件を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、OPPフィルムに貫通部分を形成するとともに光電管マークを印字して巻き取ることによって、比較例1の鮮度保持収納袋形成用フィルムを得た。
<レーザ照射条件>
・出力:98ワット
・スキャンスピード:1,450mm/秒
・印字(照射)回数:1回
・深さ方向(Z座標)の焦点距離:0mm(フィルムの表面に焦点を設定)
・長手方向(X座標)の焦点距離:50mm
・幅方向(Y座標)の焦点距離:-2.14mm
【0047】
しかる後、得られた鮮度保持収納袋形成用フィルムを用い、実施例1と同様な方法で、ブロッコリーを自動包装することによって、ブロッコリー350g入りの100個のピロー袋を連続的に製造した。自動包装する際には、光電管マークの読み取りミスは発生しなかった。また、得られた鮮度保持収納袋形成用フィルムを用い、実施例1と同様な方法で、枝豆を自動包装することによって、枝豆200g入りの100個のピロー袋を連続的に製造した。自動包装する際には、光電管マークの読み取りミスは発生しなかった。そして、得られたピロー袋を用いて、上記した方法によって、青果物(ブロッコリー)の鮮度保持特性を評価した。比較例1の鮮度保持収納袋形成用フィルム・ピロー袋の評価結果を、鮮度保持収納袋形成用フィルムの加工条件、特性とともに表1,2に示す。
【0048】
[比較例2]
貫通部分を形成する際のレーザの照射条件を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、OPPフィルムに貫通部分を形成するとともに光電管マークを印字して巻き取ることによって、比較例1の鮮度保持収納袋形成用フィルムを得た。
<レーザ照射条件>
・出力:95ワット
・スキャンスピード:1,450mm/秒
・印字(照射)回数:1回
・深さ方向(Z座標)の焦点距離:0.3mm(フィルムの表面から約0.3mm下側に焦点を設定)
・長手方向(X座標)の焦点距離:50mm
・幅方向(Y座標)の焦点距離:-2.14mm
【0049】
しかる後、得られた鮮度保持収納袋形成用フィルムを用い、実施例1と同様な方法で、ブロッコリーを自動包装することによって、ブロッコリー350g入りの100個のピロー袋を連続的に製造したところ、光電管マークの読み取りミスが多発した(歩留まり=約70%)。また、得られた鮮度保持収納袋形成用フィルムを用い、実施例1と同様な方法で、枝豆を自動包装することによって、枝豆200g入りの100個のピロー袋を連続的に製造した。自動包装する際には、光電管マークの読み取りミスは発生しなかった。そして、得られたピロー袋を用いて、上記した方法によって、青果物(ブロッコリー)の鮮度保持特性を評価した。比較例3の鮮度保持収納袋形成用フィルム・ピロー袋の評価結果を、鮮度保持収納袋形成用フィルムの加工条件、特性とともに表1,2に示す。
【0050】
[比較例3]
貫通部分を形成する際のレーザの照射条件を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、OPPフィルムに貫通部分を形成するとともに光電管マークを印字して巻き取ることによって、比較例1の鮮度保持収納袋形成用フィルムを得た。
<レーザ照射条件>
・出力:95ワット
・スキャンスピード:1,450mm/秒
・印字(照射)回数:8回(同一の線条を8回なぞって印字)
・深さ方向(Z座標)の焦点距離:2.5mm(フィルムの表面から約2.5mm下側に焦点を設定)
・長手方向(X座標)の焦点距離:50mm
・幅方向(Y座標)の焦点距離:-2.14mm
【0051】
しかる後、得られた鮮度保持収納袋形成用フィルムを用い、実施例1と同様な方法で、ブロッコリーを自動包装することによって、ブロッコリー350g入りの100個のピロー袋を連続的に製造したところ、光電管マークの読み取りミスが多発した(歩留まり=約70%)。また、得られた鮮度保持収納袋形成用フィルムを用い、実施例1と同様な方法で、枝豆を自動包装することによって、枝豆200g入りの100個のピロー袋を連続的に製造したところ、光電管マークの読み取りミスに起因した枝豆の噛み込みが多発した(発生率=約10%)。そして、得られたピロー袋を用いて、上記した方法によって、青果物(ブロッコリー)の鮮度保持特性を評価した。比較例3の鮮度保持収納袋形成用フィルム・ピロー袋の評価結果を、鮮度保持収納袋形成用フィルムの加工条件、特性とともに表1,2に示す。
【0052】
[比較例4]
貫通部分を形成する際のレーザの照射条件を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、OPPフィルムに貫通部分を形成するとともに光電管マークを印字して巻き取ることによって、比較例1の鮮度保持収納袋形成用フィルムを得た。
<レーザ照射条件>
・出力:95ワット
・スキャンスピード:1,450mm/秒
・印字(照射)回数:8回(同一の線条を8回なぞって印字)
・深さ方向(Z座標)の焦点距離:2.0mm(フィルムの表面から約2.0mm下側に焦点を設定)
・長手方向(X座標)の焦点距離:50mm
・幅方向(Y座標)の焦点距離:-2.14mm
【0053】
しかる後、得られた鮮度保持収納袋形成用フィルムを用い、実施例1と同様な方法で、ブロッコリーを自動包装することによって、ブロッコリー350g入りの100個のピロー袋を連続的に製造したところ、光電管マークの読み取りミスが多発した(歩留まり=約70%)。また、得られた鮮度保持収納袋形成用フィルムを用い、実施例1と同様な方法で、枝豆を自動包装することによって、枝豆200g入りの100個のピロー袋を連続的に製造したところ、光電管マークの読み取りミスに起因した枝豆の噛み込みが多発した(発生率=約25%)。そして、得られたピロー袋を用いて、上記した方法によって、青果物(ブロッコリー)の鮮度保持特性を評価した。比較例4の鮮度保持収納袋形成用フィルム・ピロー袋の評価結果を、鮮度保持収納袋形成用フィルムの加工条件、特性とともに表1,2に示す。
【0054】
【0055】
【0056】
表1,2から、貫通部分の周囲の塊状部分Bの上下の頂点の角度θt,θbの平均値θaおよび塊状部分Bの幅Wが本発明の要件を満たした鮮度保持収納袋形成用フィルムを用いて形成された鮮度保持収納袋(青果物を自動包装したもの)は、いずれも、青果物の鮮度保持効果、積層時の鮮度保持効果ともに良好であることが分かる(実施例1~4)。また、本発明の要件を満たした鮮度保持収納袋形成用フィルムを用いて鮮度保持収納袋を製造する場合には、光電管マークの読み取りミスが発生しなかったことが分かる(実施例1~4)。
【0057】
これに対して、貫通部分の周囲の塊状部分Bの上下の頂点の角度θt,θbの平均値θaが本発明の要件を外れて小さい鮮度保持収納袋形成用フィルムを用いて形成された鮮度保持収納袋(青果物を自動包装したもの)は、光電管マークの読み取りミスが発生しやすい上、積層時の鮮度保持効果が不良であることが分かる(比較例4)。また、S字状貫通線条の周囲の塊状部分Bの上下の頂点の角度θt,θbの平均値θaが本発明の要件を外れて大きい鮮度保持収納袋形成用フィルムを用いて鮮度保持収納袋を製造する場合には、積層時の鮮度保持効果が不良であることが分かる(比較例1,2)。一方、S字状貫通線条の周囲の塊状部分Bの幅Wが本発明の要件を外れて大きい鮮度保持収納袋形成用フィルムを用いて鮮度保持収納袋を製造する場合には、光電管マークの読み取りミスが発生しやすい上、積層時の鮮度保持効果が不良であることが分かる(比較例3)。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る鮮度保持収納袋形成用フィルムは、上記の如く優れた効果を奏するものであるため、各種の青果物の鮮度保持収納袋の製造用、あるいは、自動包装により各種の青果物を収納した鮮度保持収納袋の形成用の合成樹脂フィルムとして、好適に用いることができる。また、本発明に係る鮮度保持収納袋は、上記の如く優れた効果を奏するものであるため、各種の青果物の鮮度を保持するためのパッケージとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
F・・鮮度保持収納袋形成用フィルム
P・・鮮度保持収納袋
L・・S字状貫通線条(貫通部分)
M・・光電管マーク
B・・塊状部分
θu・・塊状部分の上側の外側面の傾斜角度
θd・・塊状部分の上側の外側面の傾斜角度
θt・・塊状部分の最上部の角度
θb・・塊状部分の最下部の角度
W・・塊状部分の幅
H・・塊状部分の高さ
【要約】
【課題】製袋加工時、自動包装時に光電管マークの読み取りミスを発生させることなく歩留まり良く効率的に鮮度保持収納袋を製造することができる上、良好な鮮度保持効果を発現する鮮度保持収納袋を形成可能な長尺な合成樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】所定の厚みの長尺なOPPフィルムFに、所定の間隔で、CO
2レーザを所定の条件で照射することによってS字状の透過線条L,L・・を形成した後にロール状に巻き取った。また、レーザの照射と並行して同じ間隔で、OPPフィルムFの片端縁に矩形の光電管マークM,M・・を断続的に印字した。しかる後、そのOPPフィルムFを用い、光電センサによる光電管マークM,M・・の検知に基づいて所定の間隔でヒートシールすることによって、青果物を収納した青果物鮮度保持収納袋を連続的に製造した。
【選択図】
図2