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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】自動クレーンの制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/48 20060101AFI20240829BHJP
   B66D 1/48 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B66C13/48 E
B66C13/48 F
B66D1/48
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021080528
(22)【出願日】2021-05-11
(65)【公開番号】P2022174610
(43)【公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】593005644
【氏名又は名称】JFE物流株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】八尋 和広
(72)【発明者】
【氏名】谷口 康弘
(72)【発明者】
【氏名】新井 佑美
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-191279(JP,A)
【文献】特開2017-222435(JP,A)
【文献】特開2001-301922(JP,A)
【文献】特開平01-122899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
B66D 1/00- 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤにより吊下げられて被移送物を把持するリフターを巻上げ巻下げする巻上げ巻下げ機を制御する制御部を備えた自動クレーンの制御装置であって、
空荷巻下げ時及び在荷巻下げ時における前記リフターの減速完了高さ及び前記リフターの減速開始高さを予め設定された床面レベルに基づいて設定する高さ設定部と、
在荷巻下げによって前記被移送物を各置場に着床させたときに、前記予め設定された床面レベルと各置場ごとの実際の床面レベルとの差を学習させて各置場ごとの床面レベル学習値を算出する床面レベル学習値算出部と、
前記予め設定された床面レベルを、前記床面レベル学習値算出部で算出された前記各置場ごとの床面レベル学習値の分だけ下げて、前記高さ設定部で設定された前記リフターの減速完了高さ及び前記リフターの減速開始高さを前記各置場ごとの床面レベル学習値の分だけ下げるように補正する高さ補正部とを備え、
前記制御部は、前記空荷巻下げ時及び前記在荷巻下げ時に、前記高さ補正部で補正された前記リフターの減速開始高さで前記リフターの巻下げ速度を高速度から減速し、前記高さ補正部で補正された前記リフターの減速完了高さで前記リフターの巻下げ速度の減速を停止し、前記リフターの停止位置で前記リフターの低速度での巻下げを停止するように前記巻上げ巻下げ機を制御することを特徴とする自動クレーンの制御装置。
【請求項2】
前記床面レベル学習値算出部によって算出される前記各置場ごとの床面レベル学習値hl’は、前記被移送物の着床時における前記予め設定された床面レベルと前記各置場ごとの実際の床面レベルとの差をhn’、当該被移送物の着床時より以前の着床時にまでに学習された、前記予め設定された床面レベルと前記各置場ごとの実際の床面レベルとの差の学習値をho’としたとき、以下の式によって算出されることを特徴とする請求項1に記載の自動クレーンの制御装置。
hl’=α・hn’+(1-α)ho’
ここで、αは学習係数(平滑化定数)である。
【請求項3】
ワイヤにより吊下げられて被移送物を把持するリフターを巻上げ巻下げする巻上げ巻下げ機を制御する制御ステップを備えた自動クレーンの制御方法であって、
空荷巻下げ時及び在荷巻下げ時における前記リフターの減速完了高さ及び前記リフターの減速開始高さを予め設定された床面レベルに基づいて設定する高さ設定ステップと、
在荷巻下げによって前記被移送物を各置場に着床させたときに、前記予め設定された床面レベルと各置場ごとの実際の床面レベルとの差を学習させて各置場ごとの床面レベル学習値を算出する床面レベル学習値算出ステップと、
前記予め設定された床面レベルを、前記床面レベル学習値算出ステップで算出された前記各置場ごとの床面レベル学習値の分だけ下げて、前記高さ設定ステップで設定された前記リフターの減速完了高さ及び前記リフターの減速開始高さを前記各置場ごとの床面レベル学習値の分だけ下げるように補正する高さ補正ステップとを含み、
前記制御ステップでは、前記空荷巻下げ時及び前記在荷巻下げ時に、前記高さ補正ステップで補正された前記リフターの減速開始高さで前記リフターの巻下げ速度を高速度から減速し、前記高さ補正ステップで補正された前記リフターの減速完了高さで前記リフターの巻下げ速度の減速を停止し、前記リフターの停止位置で前記リフターの低速度での巻下げを停止するように前記巻上げ巻下げ機を制御することを特徴とする自動クレーンの制御方法。
【請求項4】
前記床面レベル学習値算出ステップによって算出される前記各置場ごとの床面レベル学習値hl’は、当該被移送物の着床時における前記予め設定された床面レベルと前記各置場ごとの実際の床面レベルとの差をhn’、当該被移送物の着床時より以前の着床時にまでに学習された、前記予め設定された床面レベルと前記各置場ごとの実際の床面レベルとの差の学習値をho’としたとき、以下の式によって算出されることを特徴とする請求項3に記載の自動クレーンの制御方法。
hl’=α・hn’+(1-α)ho’
ここで、αは学習係数(平滑化定数)である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動クレーンのリフターの巻下げ時間の短縮を可能とする自動クレーンの制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輸送台車と海上の船舶との間での荷役作業に使用されるバースクレーンによる荷役作業の効率を向上させるものとして、例えば、特許文献1に示すものが知られている。
特許文献1に示すバースクレーンの自動化装置は、荷役までの距離、荷物の幅、内径及び重量を計測するセンサが設けられたリフターと、吊り下げたリフターの巻上げ距離を計測するアブソコーダが設けられたウインチと、リフターから荷物までの距離、荷物の幅、内径及び重量並びにリフターの巻上げ距離の計測値が入力され、今回巻上げ距離を演算するクレーン制御装置とを備えている。そして、潮の干満及び積荷重量の変化による船倉床面の上昇又は下降を取り込んで前回巻上げ距離を学習しながら今回巻上げ距離を演算する。
これにより、潮の干満及び積荷重量の変化による船倉床面の下降又は上昇を考慮して前回の実績からリフターの今回巻上げ距離を算出し、最も短い距離でリフターを移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-191279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、輸送台車と海上の船舶との間での荷役作業に使用されるバースクレーンではないが、製鉄所の倉庫などにおけるコイルなどの被移送物の荷役作業では、天井クレーン等の自動クレーンを用いて床面上に被移送物を載置したり、床面上に載置された被移送物を他の場所で搬送したりすることが行われている。
この自動クレーンの制御装置では、床面上の被移送物を把持するためにリフターを巻下げる場合(空荷巻下げ時)や被移送物を把持しているリフターを巻下げて被移送物を床面上に載置する場合(在荷巻下げ時)において、まず、高速度でリフターを減速開始高さまで巻下げ、次いで、減速開始高さでリフターの巻下げ速度を高速度から減速し、そして、減速完了高さでリフターの巻下げ速度の減速を停止し、更に、リフターの停止位置でリフターの低速度での巻下げを停止するように制御することが行われる。この理由は、高速度のままリフターを巻下げると、床面にリフターが衝突してしまうおそれがあるからである。
【0005】
この自動クレーンに制御装置によるリフターの巻下げ制御においては、減速を停止した減速完了高さからリフターの停止位置まで低速度でリフターの巻下げが行われるため、リフターの巻下げ時間を短縮して1つの被移送物をハンドリングするサイクルタイムを短縮させるためにはリフターが低速度で移動する減速完了高さからリフターの停止位置までの距離(以下、クリープ距離という)が短い方が好ましい。
【0006】
ここで、リフターの減速完了高さは、被移送物を床面上の複数の置場に安全に載置できるように、床面における最も高い場所の床面レベル(位置)を基準とした予め設定された床面レベルに基づいて設定されているのが一般的である。
しかしながら、実際の各置場の床面レベルは、この床面における最も高い場所の床面レベル(位置)を基準とした予め設定された床面レベルよりは低いことから、リフターの減速完了高さが実際の各置場の床面レベルに対して高い位置に設定されてしまい、減速完了高さからリフターの停止位置までの距離を短くするのが困難な状況となっている。
【0007】
一方、特許文献1に示すバースクレーンの自動化装置にあっては、潮の干満及び積荷重量の変化による船倉床面の下降又は上昇を考慮して前回の実績からリフターの今回巻上げ距離を算出し、最も短い距離でリフターを移動させることができるものの、船倉床面の下降又は上昇に応じて巻下げ時間の短縮を図ることはできない。このため、特許文献1に示すバースクレーンの自動化装置を前述の自動クレーンに制御装置に適用してリフターの巻下げ時間を短縮して1つの被移送物をハンドリングするサイクルタイムを短縮させることができない。
【0008】
従って、本発明はこの従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、実際の各置場の床面レベルに応じてリフターの減速完了高さを下げてリフターのクリープ距離を短くし、リフターの巻下げ時間を短縮することができる自動クレーンの制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る自動クレーンの制御装置は、ワイヤにより吊下げられて被移送物を把持するリフターを巻上げ巻下げする巻上げ巻下げ機を制御する制御部を備えた自動クレーンの制御装置であって、空荷巻下げ時及び在荷巻下げ時における前記リフターの減速完了高さ及び前記リフターの減速開始高さを予め設定された床面レベルに基づいて設定する高さ設定部と、在荷巻下げによって前記被移送物を各置場に着床させたときに、前記予め設定された床面レベルと各置場ごとの実際の床面レベルとの差を学習させて各置場ごとの床面レベル学習値を算出する床面レベル学習値算出部と、前記予め設定された床面レベルを、前記床面レベル学習値算出部で算出された前記各置場ごとの床面レベル学習値の分だけ下げて、前記高さ設定部で設定された前記リフターの減速完了高さ及び前記リフターの減速開始高さを前記各置場ごとの床面レベル学習値の分だけ下げるように補正する高さ補正部とを備え、前記制御部は、前記空荷巻下げ時及び前記在荷巻下げ時に、前記高さ補正部で補正された前記リフターの減速開始高さで前記リフターの巻下げ速度を高速度から減速し、前記高さ補正部で補正された前記リフターの減速完了高さで前記リフターの巻下げ速度の減速を停止し、前記リフターの停止位置で前記リフターの低速度での巻下げを停止するように前記巻上げ巻下げ機を制御することを要旨とする。
【0010】
また、本発明の別の態様に係る自動クレーンの制御方法は、 ワイヤにより吊下げられて被移送物を把持するリフターを巻上げ巻下げする巻上げ巻下げ機を制御する制御ステップを備えた自動クレーンの制御方法であって、空荷巻下げ時及び在荷巻下げ時における前記リフターの減速完了高さ及び前記リフターの減速開始高さを予め設定された床面レベルに基づいて設定する高さ設定ステップと、在荷巻下げによって前記被移送物を各置場に着床させたときに、前記予め設定された床面レベルと各置場ごとの実際の床面レベルとの差を学習させて各置場ごとの床面レベル学習値を算出する床面レベル学習値算出ステップと、前記予め設定された床面レベルを、前記床面レベル学習値算出ステップで算出された前記各置場ごとの床面レベル学習値の分だけ下げて、前記高さ設定ステップで設定された前記リフターの減速完了高さ及び前記リフターの減速開始高さを前記各置場ごとの床面レベル学習値の分だけ下げるように補正する高さ補正ステップとを含み、前記制御ステップでは、前記空荷巻下げ時及び前記在荷巻下げ時に、前記高さ補正ステップで補正された前記リフターの減速開始高さで前記リフターの巻下げ速度を高速度から減速し、前記高さ補正ステップで補正された前記リフターの減速完了高さで前記リフターの巻下げ速度の減速を停止し、前記リフターの停止位置で前記リフターの低速度での巻下げを停止するように前記巻上げ巻下げ機を制御することを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る自動クレーンの制御装置及び制御方法によれば、実際の各置場の床面レベルに応じてリフターの減速完了高さを下げてリフターのクリープ距離を短くし、リフターの巻下げ時間を短縮することができる自動クレーンの制御装置及び制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る制御装置を備えた自動クレーンの概略構成図である。
図2図1に示す自動クレーンの制御装置による処理の流れを示すフローチャートである。
図3】空荷巻下げ時におけるクリープ距離の増加を説明するための図である。
図4】在荷巻下げ時におけるクリープ距離の増加を説明するための図である。
図5】床面レベル学習値の算出の仕方を説明するための図である。
図6】比較例の場合の空荷巻下げ時のクリープ距離と学習値との関係を示すグラフである。
図7】比較例の場合の空荷巻下げ時のクリープ距離のヒストグラムである。
図8】実施例の場合の空荷巻下げ時のクリープ距離と学習値との関係を示すグラフである。
図9】実施例の場合の空荷巻下げ時のクリープ距離のヒストグラムである。
図10】比較例の場合の在荷巻下げ時のクリープ距離と学習値との関係を示すグラフである。
図11】比較例の場合の在荷巻下げ時のクリープ距離のヒストグラムである。
図12】実施例の場合の在荷巻下げ時のクリープ距離と学習値との関係を示すグラフである。
図13】実施例の場合の在荷巻下げ時のクリープ距離のヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るゲート残り処理装置について図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0014】
図1には、本発明の一実施形態に係る制御装置を備えた自動クレーンの概略構成が示されている。
図1に示す自動クレーン1は、例えば、倉庫(図示せず)内の所定の置場に載置された被移送物としてのコイルCを他の置場に搬送する際に使用される。
この自動クレーン1は、天井クレーンで構成され、倉庫の床面上に設けられた2本の柱15の上に設置された2条の走行レール2を走行するガータ3と、ガータ3上に設置された横行レール16を横行するクラブ5と、クラブ5に設置された巻上げ巻下げ機7と、巻上げ巻下げ機7にワイヤ8により吊下げられて被移送物を把持するリフター10とを備えている。
【0015】
ガータ3は、走行レール2上を走行する走行車輪4と、走行車輪4を駆動する走行モータ(図示せず)とを備えている。
また、クラブ5は、ガータ3の横行レール16上を横行する横行車輪6と、横行車輪6を駆動する横行モータ(図示せず)とを備えている。
巻上げ巻下げ機7は、駆動モータで駆動するウインチで構成され、ワイヤ8により吊下げられて被移送物を把持するリフター10を巻上げ及び巻下げする。巻上げ巻下げ機7には、ウインチの回転軸の回転角度を検出してリフター10の巻下げ量を検出する巻下げ量検出センサ9が設置されている。
【0016】
リフター10は、可動自在に対向配置された左右一対の左側のアーム11L及び右側のアーム11Rを備えている。左側のアーム11L及び右側のアーム11Rのそれぞれには、コイルCの中心孔C1内に挿入されてコイルCを支持する爪12L.12Rが設けられている。各爪12L,12Rには、コイルCの荷重を検出するロードセル13L,13Rと、コイルCの中心孔C1を検出する孔検出センサ14L,14Rとが設置されている。
【0017】
また、自動クレーン1は、走行車輪4を駆動する走行モータ及び横行車輪6を駆動する横行モータの駆動を制御するとともに、巻上げ巻下げ機7を制御する制御部21を有する制御装置20を備えている。制御部21の構成については後述する。
また、この制御装置20は、高さ設定部22、床面レベル学習値算出部23、及び高さ補正部24を備えている。前述の制御部21、高さ設定部22、床面レベル学習値算出部23、及び高さ補正部24は、演算処理機能を有するコンピュータシステムであり、ハードウェアに予め記憶された各種専用のコンピュータプログラムを実行することにより、制御部21、高さ設定部22、床面レベル学習値算出部23、及び高さ補正部24の各機能をソフトウェア上で実現する。
【0018】
高さ設定部22は、空荷巻下げ時(床面の所定の置場上のコイルCを把持するためにリフター10を巻下げる時、図3参照)及び在荷巻下げ時(コイルCを把持しているリフター10を巻下げてコイルCを床面の置場上に載置する時、図4参照)におけるリフター10の減速完了高さE及びリフター10の減速開始高さSを予め設定された床面レベルFに基づいて設定する。
【0019】
ここで、「予め設定された床面レベルF」とは、上位計算機25によって予め設定された、複数の置場を有する床面における最も高い位置の置場を基準とした床面の高さ位置である。予め設定された床面レベルFの情報は、上位計算機25から高さ設定部22に入力される。
また、「リフター10の減速開始高さS」とは、リフター10の巻下げ時に、リフター10が高速度から減速を開始する高さである。また、「リフター10の減速完了高さE」とは、リフター10の減速を停止して、低速度とする高さである。リフター10の空荷巻下げ時の前述の高速度は、例えば、300mm/s程度に設定され、また、前述の低速度は、例えば、40mm/s程度に設定される。また、リフター10の在荷巻下げ時の前述の高速度は、例えば、150mm/s程度に設定され、また、前述の低速度は、例えば、20mm/s程度に設定される。
【0020】
ここで、空荷巻下げ時(図3参照)における「リフター10の減速完了高さE」は、コイルCの外径をD、コイルCの中心孔C1の内径をdとしたときに、上位計算機25から入力される予め設定された床面レベルFから(D+d)/2だけ高くした位置に設定される。コイルCの外径D及びコイルCの中心孔C1の内径dの情報は、上位計算機25から高さ設定部22に入力される。空荷巻下げ時における「リフター10の減速完了高さE」は、目標高さAと同一である。また、空荷巻下げ時における「リフター10の減速開始高さS」は、上位計算機25から入力される予め設定された床面レベルFに基づいて設定された「リフター10の減速完了高さE」に対し、リフター10の減速時の惰走(速度変化の状態)の距離だけ高くした位置に設定される。この設定に必要なリフター10の速度情報は上位計算機25から高さ設定部22に入力される。
【0021】
また、在荷巻下げ時(図4参照)における「リフター10の減速完了高さE」は、コイルCの外径をD、コイルCの中心孔C1の内径をdとしたときに、上位計算機25から入力される予め設定された床面レベルFから(D+d)/2+所定距離βだけ高くした位置に設定される。所定距離βは、コイルCの下面から予め設定された床面レベルFまでの距離であり、在荷巻下げ時にコイルCが床面に衝突する危険性を回避するために必要な距離である。所定距離βは、例えば、100mm~200mmに設定される。所定距離βの情報は、上位計算機25から高さ設定部22に入力される。空荷巻下げ時における「リフター10の減速完了高さE」は、目標高さAよりも所定距離β分だけ高い。また、空荷巻下げ時における「リフター10の減速開始高さS」は、上位計算機25から入力される予め設定された床面レベルFに基づいて設定された「リフター10の減速完了高さE」に対し、リフター10の減速時の惰走(速度変化の状態)の距離だけ高くした位置に設定される。
【0022】
なお、リフター10の空荷巻下げ時及び在荷巻下げ時の停止位置Tの設定は、後述するように、制御部21が行うものである。リフター10の空荷巻下げ時の停止位置Tは、孔検出センサ14L,14Rが中心孔C1を検出してから、爪12L,12Rの上面が中心孔C1の上端に対して所定距離αだけ下がった位置に設定される。この所定距離αは、爪12L,12RがコイルCの中心孔C1内に確実に挿入されるのを保証する距離であり、例えば、30mm~50mmに設定される。また、リフター10の在荷巻下げ時の停止位置Tは、ロードセル13L,13RがコイルCの荷重を検出しなくなってから、爪12L,12Rの上面が中心孔C1の上端に対して所定距離αだけ下がった位置に設定される。この所定距離αは、空荷巻下げ時の停止位置を設定する際の所定距離αと同一である。
【0023】
このように、高さ設定部22において、空荷巻下げ時及び在荷巻下げ時におけるリフター10の減速完了高さE及びリフター10の減速開始高さSを予め設定された床面レベルFに基づいて設定される。しかしながら、図3及び図4に示すように、各置場における実際の床面レベルF’は、予め設定された床面レベルFが複数の置場を有する床面における最も高い位置の置場を基準とした床面の高さ位置であることから、予め設定された床面レベルFよりも低い位置にある。
【0024】
図示はしないが、例えば、床面における所定の置場Xでは、実際の床面レベルF’は、予め設定された床面レベルFに対し、平均で約150mmほど、床面における他の置場Yでは、実際の床面レベルF’は、予め設定された床面レベルFに対し、平均で約60mmほど、床面における更に他の置場Zでは、実際の床面レベルF’は、予め設定された床面レベルFに対し、平均で約1mmほど低くなっている。
【0025】
この場合には、本来の設定であれば後述するリフター10の停止位置はT(図3及び図4参照)であるところ、実際の床面レベルF’は、予め設定された床面レベルFに対し低くなっているから、その低くなった差分だけリフター10の停止位置もT’(図3及び図4参照)と低くなる。
この場合に、高さ設定部22で設定されたリフター10の減速完了高さE及びリフター10の減速開始高さSに基づいて、制御装置20によってリフター10の空荷巻下げ及び在荷巻下げの制御を行うとする。すると、減速を停止した減速完了高さEからリフター10の停止位置T’までの距離(クリープ距離)P’が本来の減速を停止した減速完了高さEからリフター10の停止位置Tまでの距離Pよりも長くなる。逆に言うと、リフターの減速完了高さEが実際の各置場の床面レベルF’に対して高い位置に設定されてしまっており、クリープ距離が長くなってしまっている。
【0026】
このように巻下げが低速度で行われるクリープ距離が長いと、リフターの巻下げ時間が長くなり、1つのコイルCをハンドリングするサイクルタイムが長くなってしまうことから、本実施形態にあっては、実際の各置場の床面レベルF’に応じてリフター10の減速完了高さEを下げてリフター10のクリープ距離を短くするようにしている。このため、制御装置20は、床面レベル学習値算出部23及び高さ補正部24を備えている。
【0027】
床面レベル学習値算出部23は、在荷巻下げによってコイルCを各置場に着床させたときに、予め設定された床面レベルFと各置場ごとの実際の床面レベルF’との差を学習させて各置場ごとの床面レベル学習値hl’を算出する。
床面レベル学習値hl’の算出について、図5を参照して具体的に説明する。
図5に示すように、リフター10のロードセル13L,13RがコイルCの荷重を検出しなくなる設定上の在荷OFF高さ(目標高さAと同じ)は、コイルCの外径をD、コイルCの中心孔C1の内径をdとしたときに、予め設定された床面レベルFからh1=(D+d)/2に設定される。
【0028】
一方、リフター10のロードセル13L,13RがコイルCの荷重を検出しなくなる実際の在荷OFF高さは、予め設定された床面レベルFからH1に設定される。予め設定された床面レベルFからリフター10の巻上上端高さまでの高さMは、予め定まっている。実際の在荷OFF高さは、予め設定された床面レベルFからリフター10の巻上上端位置までの高さMからリフター10の巻上上端位置から実際の在荷OFF高さまでの実測値M1を引いたH1=M-M1で表せる。リフター10の巻上上端位置から実際の在荷OFF高さまでの実測値M1は、リフター10のロードセル13L,13RがコイルCの荷重を検出しなくなった際の、巻上げ巻下げ機7に設置された巻下げ量検出センサ9で検出されるリフター10の巻下げ量から求められる。
【0029】
そして、予め設定された床面レベルFと各置場ごとの実際の床面レベルF’との差h’は、以下(1)式によって表せる。
h’=h1-H1=(D+d)/2-(M-M1) …(1)
ここで、コイルCの外径Dの情報、コイルCの中心孔C1の内径dの情報、及び予め設定された床面レベルFからリフター10の巻上上端高さまでの高さMの情報は、上位計算機25から床面レベル学習値算出部23に入力される。また、リフター10の巻上上端高さから実際の在荷OFF高さまでの実測値M1の情報は、巻下げ量検出センサ9から床面レベル学習値算出部23に入力される。
【0030】
そして、予め設定された床面レベルFと各置場ごとの実際の床面レベルF’との差h’を学習させて各置場ごとの床面レベル学習値hl’を算出する。
各置場ごとの床面レベル学習値hl’は、コイルCの着床時における予め設定された床面レベルFと各置場ごとの実際の床面レベルF’との差をhn’、当該コイルCの着床時より以前の着床時にまでに学習された、予め設定された床面レベルFと各置場ごとの実際の床面レベルF’との差の学習値をho’としたとき、以下の(2)式によって算出される。
hl’=α・hn’+(1-α)ho’ …(2)
【0031】
ここで、αは学習係数(平滑化定数)であり、各計測データの変動の吸収や学習の収束速度などを考慮して決定する。この(2)式は、いわゆる指数平滑法であり、α(平滑化定数)を大きくすると最新のデータを重視、あるいは収束を早めることになる。一方、α(平滑化定数)を小さくすると、すべてのデータを等しく扱う、あるいは収束がゆっくりになる。本実施形態では、αの設定値は0.5(50%)になっている。
【0032】
各置場ごとの床面レベル学習値hl’は、各置場ごとに算出されるものであり、コイルCを各置場ごとに着床させたときにその値は更新される。
また、高さ補正部24は、上位計算機25で予め設定された床面レベルFを、床面レベル学習値算出部23で算出された各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げて、高さ設定部22で設定されたリフター10の減速完了高さE及びリフター10の減速開始高さSを各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げるように補正する。
【0033】
そして、制御部21は、走行車輪4を駆動する走行モータ及び横行車輪6を駆動する横行モータの駆動を制御するとともに、巻上げ巻下げ機7を制御する。制御部21は、巻上げ巻下げ機7による空荷巻下げ時及び在荷巻下げ時に、高さ補正部24で補正されたリフターの減速開始高さ(各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げた減速開始高さS)でリフター10の巻下げ速度を高速度から減速し、高さ補正部24で補正されたリフター10の減速完了高さ(各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げた減速完了高さE)でリフター10の巻下げ速度の減速を停止し、リフターの停止位置T’でリフター10の低速度での巻下げを停止するように巻上げ巻下げ機7を制御する。
【0034】
制御部21の制御について具体的に説明すると、空荷巻下げ時には、先ず、コイルCが載置されている置場の上方にリフター10が位置するように、制御部21は、走行車輪4を駆動する走行モータ及び横行車輪6を駆動する横行モータの駆動を制御する。
次いで、制御部21は、巻上げ巻下げ機7を制御してリフター10を巻上げ上端高さから前述の高速度で巻下げ、リフター10の爪12L,12Rの上面が高さ補正部24で補正されたリフターの減速開始高さ(各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げた減速開始高さS)になったところで巻下げ速度の減速を開始するよう巻上げ巻下げ機7を制御する。リフター10の爪12L,12Rの上面が高さ補正部24で補正されたリフターの減速開始高さとなったか否かは、巻上げ巻下げ機7に設置された巻下げ量検出センサ9で検出される巻下げ量が、予め設定された床面レベルFからリフター10の巻上上端位置までの距離M(図5参照)から予め設定された床面レベルFから高さ補正部24で補正されたリフターの減速開始高さまでの距離を差し引いた距離と等しくなったか否かで判断する。
【0035】
次いで、制御部21は、リフター10の爪12L,12Rの上面が高さ補正部24で補正されたリフター10の減速完了高さ(各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げた減速完了高さE)になったところで、巻下げ速度の減速を停止し、巻下げ速度が前述の低速度となるよう巻上げ巻下げ機7を制御する。リフター10の爪12L,12Rの上面が高さ補正部24で補正されたリフターの減速完了高さとなったか否かは、巻上げ巻下げ機7に設置された巻下げ量検出センサ9で検出される巻下げ量が、予め設定された床面レベルFからリフター10の巻上上端位置までの距離M(図5参照)から予め設定された床面レベルFから高さ補正部24で補正されたリフターの減速完了高さまでの距離を差し引いた距離と等しくなったか否かで判断する。
【0036】
次いで、制御部21は、リフター10の爪12L,12Rの上面がリフター10の停止位置T’となったところで、リフター10の低速度での巻下げを停止するように巻上げ巻下げ機7を制御する。
ここで、リフター10の停止位置T’は、前述したように(前述ではリフター10の停止位置Tの設定)、孔検出センサ14L,14RがコイルCの中心孔C1を検出してから、爪12L,12Rの上面が中心孔C1の上端に対して所定距離αだけ下がった位置に設定される。この所定距離αは、爪12L,12RがコイルCの中心孔C1内に確実に挿入されるのを保証する距離であり、例えば、30mm~50mmに設定される。
【0037】
リフター10の爪12L,12Rの上面がリフター10の停止位置T’となったか否かは、巻上げ巻下げ機7に設置された巻下げ量検出センサ9で検出される巻下げ量が、リフター10の巻上上端位置からリフター10の停止位置T’までの距離と等しくなったか否かで判断する。
そして、制御部21は、リフター10の巻下げを停止した後、リフター10の爪12L,12RをコイルCの中心孔C1内に挿通するように巻上げ巻下げ機7を制御し、コイルCの吊り上げに備える。
【0038】
また、制御部21は、在荷巻下げ時には、先ず、コイルCを把持しているリフター10がコイルCの載置予定の置場の上方に位置するように、制御部21は、走行車輪4を駆動する走行モータ及び横行車輪6を駆動する横行モータの駆動を制御する。
次いで、制御部21は、巻上げ巻下げ機7を制御してリフター10を巻上げ上端高さから前述の高速度で巻下げ、リフター10の爪12L,12Rの上面が高さ補正部24で補正されたリフターの減速開始高さ(各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げた減速開始高さS)になったところで巻下げ速度の減速を開始するよう巻上げ巻下げ機7を制御する。リフター10の爪12L,12Rの上面が高さ補正部24で補正されたリフターの減速開始高さとなったか否かは、巻上げ巻下げ機7に設置された巻下げ量検出センサ9で検出される巻下げ量が、予め設定された床面レベルFからリフター10の巻上上端位置までの距離M(図5参照)から予め設定された床面レベルFから高さ補正部24で補正されたリフターの減速開始高さまでの距離を差し引いた距離と等しくなったか否かで判断する。
【0039】
次いで、制御部21は、リフター10の爪12L,12Rの上面が高さ補正部24で補正されたリフター10の減速完了高さ(各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げた減速完了高さE)になったところで、巻下げ速度の減速を停止し、巻下げ速度が前述の低速度となるよう巻上げ巻下げ機7を制御する。リフター10の爪12L,12Rの上面が高さ補正部24で補正されたリフターの減速完了高さとなったか否かは、巻上げ巻下げ機7に設置された巻下げ量検出センサ9で検出される巻下げ量が、予め設定された床面レベルFからリフター10の巻上上端位置までの距離M(図5参照)から予め設定された床面レベルFから高さ補正部24で補正されたリフターの減速完了高さまでの距離を差し引いた距離と等しくなったか否かで判断する。
【0040】
次いで、制御部21は、リフター10の爪12L,12Rの上面がリフター10の停止位置T’となったところで、リフター10の低速度での巻下げを停止するように巻上げ巻下げ機7を制御する。
ここで、リフター10の停止位置T’は、前述したように(前述ではリフター10の停止位置Tの設定)、ロードセル13L,13RがコイルCの重量を検出しなくなってから、爪12L,12Rの上面が中心孔C1の上端に対して所定距離αだけ下がった位置に設定される。この所定距離αは、爪12L,12RがコイルCの中心孔C1内に確実に挿入されるのを保証する距離であり、例えば、30mm~50mmに設定される。
【0041】
リフター10の爪12L,12Rの上面がリフター10の停止位置T’となったか否かは、巻上げ巻下げ機7に設置された巻下げ量検出センサ9で検出される巻下げ量が、リフター10の巻上上端位置からリフター10の停止位置T’までの距離と等しくなったか否かで判断する。
そして、制御部21は、リフター10の巻下げを停止した後、リフター10の爪12L,12RをコイルCの中心孔C1から抜け出るように巻上げ巻下げ機7を制御し、リフター10の巻上げに備える。
【0042】
なお、制御部21によるリフター10の巻上げ制御について関単に説明すると、空荷巻下げによってリフター10を巻下げ、リフター10の爪12L,12RをコイルCの中心孔C1内に挿通した後は、制御部21は、巻上げ巻下げ機7を制御してリフター10を低速度(例えば、20mm/s)で巻上げ、リフター10の爪12L,12Rの上面が高さリフターの第1加速開始高さ(前述の空荷巻下げにおける高さ補正部24で補正されたリフター10の減速完了高さと同じ高さ)になったところで加速し、リフター10の爪12L,12Rの上面が高さリフターの第2加速開始高さ(前述の空荷巻下げにおける高さ補正部24で補正されたリフター10の減速開始高さと同じ高さ)になったところで更に高速度(例えば、150mm/s)に至るまで加速してリフター10を巻上げるように巻上げ巻下げ機7を制御する。
【0043】
また、在荷巻下げによってリフター10を巻下げ、リフター10の爪12L,12RをコイルCの中心孔C1から抜け出した後は、制御部21は、巻上げ巻下げ機7を制御してリフター10を高速度(例えば、300mm/s)で巻上げるように巻上げ巻下げ機7を制御する。
【0044】
このように、本実施形態に係る自動コイルの制御装置20によれば、在荷巻下げによって被移送物としてのコイルCを各置場ごとに着床させたときに、予め設定された床面レベルFと各置場ごとの実際の床面レベルF’との差h’を学習させて各置場ごとの床面レベル学習値hl’を算出する床面レベル学習値算出部23と、予め設定された床面レベルFを、床面レベル学習値算出部23で算出された各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げて、高さ設定部22で設定されたリフターの減速完了高さE及びリフター10の減速開始高さSを各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げるように補正する高さ補正部24とを備える。制御部21が、空荷巻下げ時及び在荷巻下げ時に、高さ補正部24で補正されたリフターの減速開始高さでリフター10の巻下げ速度を高速度から減速し、高さ補正部24で補正されたリフター10の減速完了高さでリフター10の巻下げ速度の減速を停止し、リフター10の停止位置でリフター10の低速度での巻下げを停止するように巻上げ巻下げ機7を制御する。
【0045】
これにより、実際の各置場の床面レベルF’に応じてリフター10の減速完了高さEを下げてリフター10のクリープ距離(リフター10が低速度で移動する減速完了高さからリフターの停止位置までの距離)を短くし、リフター10の巻下げ時間を短縮することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る自動コイルの制御装置20によれば、床面レベル学習値算出部23によって算出される各置場ごとの床面レベル学習値hl’は、コイルCの着床時における予め設定された床面レベルFと各置場ごとの実際の床面レベルF’との差をhn’、当該コイルCの着床時より以前の着床時にまでに学習された、予め設定された床面レベルFと各置場ごとの実際の床面レベルF’との差の学習値をho’としたとき、前述の(2)式によって算出される。
【0047】
これにより、迅速かつ適切に各置場ごとの床面レベル学習値hl’を算出し、実際の各置場の床面レベルF’に応じてリフター10の減速完了高さEを各置場ごとの床面レベル学習値hl’分だけ下げてクリープ距離を短くすることができる。
次に、図1に示す自動クレーンの制御装置20による巻下げ時の制御方法を、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0048】
先ず、ステップS1において、制御装置20の高さ設定部22が、空荷巻下げ時及び在荷巻下げ時におけるリフター10の減速完了高さE及びリフター10の減速開始高さSを予め設定された床面レベルFに基づいて設定する(高さ設定ステップ)。
ここで、「予め設定された床面レベルF」の定義は前述したとおりである。予め設定された床面レベルFの情報は、上位計算機25から高さ設定部22に入力される。
【0049】
また、「リフター10の減速開始高さS」及び「リフター10の減速完了高さE」の定義は前述した通りである。空荷巻下げ時における「リフター10の減速完了高さE」の設定に必要なコイルCの外径D及びコイルCの中心孔C1の内径dの情報は、上位計算機25から高さ設定部22に入力される。また、空荷巻下げ時における「リフター10の減速開始高さS」の設定に必要なリフター10の速度情報は、上位計算機25から高さ設定部22に入力される。また、在荷巻下げ時における「リフター10の減速完了高さE」の設定に必要なコイルCの外径D及びコイルCの中心孔C1の内径dの情報及び所定距離βの情報は、上位計算機25から高さ設定部22に入力される。また、空荷巻下げ時における「リフター10の減速完了高さE」の設定に必要なリフター10の速度情報は、上位計算機25から高さ設定部22に入力される。
【0050】
次いで、ステップS2において、制御装置20の床面レベル学習値算出部23が、在荷巻下げによってコイルCを各置場に着床させたときに、予め設定された床面レベルFと各置場ごとの実際の床面レベルF’との差を学習させて各置場ごとの床面レベル学習値hl’を算出する(床面レベル学習値算出ステップ)。
この床面レベル学習値hl’の算出方法については、前述した通りである。
【0051】
次いで、ステップS3において、制御装置20の高さ補正部24が、上位計算機25で予め設定された床面レベルFを、ステップS2(床面レベル学習値算出ステップ)で算出された各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げて、ステップS1(高さ設定ステップ)で設定されたリフター10の減速完了高さE及びリフター10の減速開始高さSを各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げるように補正する(高さ補正ステップ)。
【0052】
次いで、ステップS4において、制御装置20の制御部21は、空荷巻下げ時及び在荷巻下げ時に、ステップS3(高さ補正ステップ)で補正されたリフターの減速開始高さ(各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げた減速開始高さS)でリフター10の巻下げ速度を前述の高速度から減速し、ステップS3(高さ補正ステップ)で補正されたリフター10の減速完了高さ(各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げた減速完了高さE)でリフター10の巻下げ速度の減速を停止して巻下げ速度を前述の低速度とし、リフターの停止位置T’でリフター10の低速度での巻下げを停止するように巻上げ巻下げ機7を制御する。
【0053】
この制御部21による空荷巻下げ時及び在荷巻下げ時について、具体的に説明すると、前述したように、空荷巻下げ時には、先ず、コイルCが載置されている置場の上方にリフター10が位置するように、制御部21は、走行車輪4を駆動する走行モータ及び横行車輪6を駆動する横行モータの駆動を制御する。
【0054】
次いで、制御部21は、巻上げ巻下げ機7を制御してリフター10を巻上げ上端高さから高速度で巻下げ、リフター10の爪12L,12Rの上面がステップS3(高さ補正ステップ)で補正されたリフターの減速開始高さ(各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げた減速開始高さS)になったところで巻下げ速度の減速を開始するよう巻上げ巻下げ機7を制御する。リフター10の爪12L,12Rの上面がステップS3(高さ補正ステップ)で補正されたリフターの減速開始高さとなったか否かは、巻上げ巻下げ機7に設置された巻下げ量検出センサ9で検出される巻下げ量が、予め設定された床面レベルFからリフター10の巻上上端位置までの距離M(図5参照)から予め設定された床面レベルFからステップS3(高さ補正ステップ)で補正されたリフターの減速開始高さまでの距離を差し引いた距離と等しくなったか否かで判断する。
【0055】
次いで、制御部21は、リフター10の爪12L,12Rの上面がステップS3(高さ補正ステップ)で補正されたリフター10の減速完了高さ(各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げた減速完了高さE)になったところで、巻下げ速度の減速を停止するよう巻上げ巻下げ機7を制御する。リフター10の爪12L,12Rの上面がステップS3(高さ補正ステップ)で補正されたリフターの減速完了高さとなったか否かは、巻上げ巻下げ機7に設置された巻下げ量検出センサ9で検出される巻下げ量が、予め設定された床面レベルFからリフター10の巻上上端位置までの距離M(図5参照)から予め設定された床面レベルFからステップS3(高さ補正ステップ)で補正されたリフターの減速完了高さまでの距離を差し引いた距離と等しくなったか否かで判断する。
【0056】
次いで、制御部21は、リフター10の爪12L,12Rの上面がリフター10の停止位置T’となったところで、リフター10の低速度での巻下げを停止するように巻上げ巻下げ機7を制御する。
ここで、リフター10の停止位置T’は、前述したように、孔検出センサ14L,14RがコイルCの中心孔C1を検出してから、爪12L,12Rの上面が中心孔C1の上端に対して所定距離αだけ下がった位置に設定される。この所定距離αは、爪12L,12RがコイルCの中心孔C1内に確実に挿入されるのを保証する距離であり、例えば、30mm~50mmに設定される。
【0057】
リフター10の爪12L,12Rの上面がリフター10の停止位置T’となったか否かは、巻上げ巻下げ機7に設置された巻下げ量検出センサ9で検出される巻下げ量が、リフター10の巻上上端位置からリフター10の停止位置T’までの距離と等しくなったか否かで判断する。
そして、制御部21は、リフター10の巻下げを停止した後、リフター10の爪12L,12RをコイルCの中心孔C1内に挿通するように巻上げ巻下げ機7を制御し、コイルCの吊り上げに備える。
【0058】
また、制御部21は、在荷巻下げ時には、先ず、コイルCを把持しているリフター10がコイルCの載置予定の置場の上方に位置するように、制御部21は、走行車輪4を駆動する走行モータ及び横行車輪6を駆動する横行モータの駆動を制御する。
【0059】
次いで、制御部21は、巻上げ巻下げ機7を制御してリフター10を巻上げ上端高さから前述の高速度で巻下げ、リフター10の爪12L,12Rの上面がステップS3(高さ補正ステップ)で補正されたリフターの減速開始高さ(各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げた減速開始高さS)になったところで巻下げ速度の減速を開始するよう巻上げ巻下げ機7を制御する。リフター10の爪12L,12Rの上面がステップS3(高さ補正ステップ)で補正されたリフターの減速開始高さとなったか否かは、先述と同様に、巻上げ巻下げ機7に設置された巻下げ量検出センサ9で検出される巻下げ量が、予め設定された床面レベルFからリフター10の巻上上端位置までの距離M(図5参照)から予め設定された床面レベルFからステップS3(高さ補正ステップ)で補正されたリフターの減速開始高さまでの距離を差し引いた距離と等しくなったか否かで判断する。
【0060】
次いで、制御部21は、リフター10の爪12L,12Rの上面がステップS3(高さ補正ステップ)で補正されたリフター10の減速完了高さ(各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げた減速完了高さE)になったところで、巻下げ速度の減速を停止し、巻下げ速度が前述の低速度となるよう巻上げ巻下げ機7を制御する。リフター10の爪12L,12Rの上面がステップS3(高さ補正ステップ)で補正されたリフターの減速完了高さとなったか否かは、前述と同様に、巻上げ巻下げ機7に設置された巻下げ量検出センサ9で検出される巻下げ量が、予め設定された床面レベルFからリフター10の巻上上端位置までの距離M(図5参照)から予め設定された床面レベルFから高さ補正部24で補正されたリフターの減速完了高さまでの距離を差し引いた距離と等しくなったか否かで判断する。
【0061】
次いで、制御部21は、リフター10の爪12L,12Rの上面がリフター10の停止位置T’となったところで、リフター10の低速度での巻下げを停止するように巻上げ巻下げ機7を制御する。
ここで、リフター10の停止位置T’は、ロードセル13L,13RがコイルCの重量を検出しなくなってから、爪12L,12Rの上面が中心孔C1の上端に対して所定距離αだけ下がった位置に設定される。この所定距離αは、爪12L,12RがコイルCの中心孔C1内に確実に挿入されるのを保証する距離であり、例えば、30mm~50mmに設定される。
【0062】
リフター10の爪12L,12Rの上面がリフター10の停止位置T’となったか否かは、巻上げ巻下げ機7に設置された巻下げ量検出センサ9で検出される巻下げ量が、リフター10の巻上上端位置からリフター10の停止位置T’までの距離と等しくなったか否かで判断する。
そして、制御部21は、リフター10の巻下げを停止した後、リフター10の爪12L,12RをコイルCの中心孔C1から抜け出るように巻上げ巻下げ機7を制御し、リフター10の巻上げに備える。
【0063】
このように、本実施形態に係る自動コイルの制御方法によれば、在荷巻下げによって被移送物としてのコイルCを各置場に着床させたときに、予め設定された床面レベルFと各置場ごとの実際の床面レベルF’との差h’を学習させて各置場ごとの床面レベル学習値hl’を算出する床面レベル学習値算出ステップ(ステップS2)と、予め設定された床面レベルFを、床面レベル学習値算出ステップ(ステップS2)で算出された各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げて、高さ設定ステップ(ステップS1)で設定されたリフターの減速完了高さE及びリフター10の減速開始高さSを各置場ごとの床面レベル学習値hl’の分だけ下げるように補正する高さ補正ステップ(ステップS3)とを含む。また、空荷巻下げ時及び在荷巻下げ時に、高さ補正ステップ(ステップS4)で補正されたリフターの減速開始高さでリフター10の巻下げ速度を高速度から減速し、高さ補正ステップ(ステップS3)で補正されたリフター10の減速完了高さでリフター10の巻下げ速度の減速を停止し、リフター10の停止位置でリフター10の低速度での巻下げを停止するように巻上げ巻下げ機7を制御する制御ステップ(ステップS4)を含む。
【0064】
これにより、実際の各置場の床面レベルF’に応じてリフター10の減速完了高さEを下げてリフター10のクリープ距離(リフター10が低速度で移動する減速完了高さからリフターの停止位置までの距離)を短くし、リフター10の巻下げ時間を短縮することができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
【0065】
例えば、被移送物としてコイルCを例示したが、コイルC以外の被移送物を自動クレーンの制御装置20によって巻下げ巻上げ制御するようにしてもよい。本実施形態の自動クレーンの制御装置は、トングを用いたスラブ搬送にも使用することができる。
【実施例
【0066】
本発明の効果を検証すべく、実施例及び比較例のそれぞれによって空荷巻下げ及び在荷巻下げを制御した場合のクリープ距離について調査した。
実施例は、図1に示す自動クレーンの制御装置20によって空荷巻下げ及び在荷巻下げを制御した例である。
比較例は、図1に示す自動クレーンの制御装置20から床面レベル学習値算出部23及び高さ補正部24を省略し、予め設定された床面レベルと各置場ごとの実際の床面レベルとの差を学習させることなく、空荷巻下げ及び在荷巻下げを制御した例である。
【0067】
(空荷巻下げ制御)
実施例及び比較例のそれぞれによる空荷巻下げについては、床面における複数の置場に載置されたコイルCに対し162回巻下げ制御を行い、クリープ距離を調査した。その結果を図6乃至図9に示す。図6は、比較例の場合の空荷巻下げ時のクリープ距離と学習値(予め設定された床面レベルと各置場ごとの実際の床面レベルとの差)との関係を示すグラフである。図7は、比較例の場合の空荷巻下げ時のクリープ距離のヒストグラムである。図8は、実施例の場合の空荷巻下げ時のクリープ距離と学習値との関係を示すグラフである。図9は、実施例の場合の空荷巻下げ時のクリープ距離のヒストグラムである。
【0068】
比較例の場合、図6に示すように、学習値(予め設定された床面レベルと各置場ごとの実際の床面レベルとの差)が0mm~-250mm程度変化しているのに対しクリープ距離が約0mm~約370mmまでバラついていた。なお、学習値における「-」は、各置場ごとの実際の床面レベルが予め設定された床面レベルに対して凹んでいる状態を示している。
【0069】
そして、比較例の場合、図7に示すように、クリープ距離の平均は189mm、標準偏差σが62mm、クリープ平均時間は4.7秒であった。
これに対して、実施例の場合、図8に示すように、学習値(予め設定された床面レベルと各置場ごとの実際の床面レベルとの差)が0mm~-250mm程度変化しているのに対しクリープ距離が約5mm~約65mmであった。
【0070】
そして、実施例の場合、図9に示すように、クリープ距離の平均は35mm、標準偏差σが10mm、クリープ平均時間が0.9秒であり、クリープ距離、そのバラつき及びクリープ平均時間が大幅に短縮された。
【0071】
(在荷巻下げ制御)
実施例及び比較例のそれぞれによる在荷巻下げについては、床面における複数の置場に載置されたコイルCに対し242回巻下げ制御を行い、クリープ距離を調査した。その結果を図10乃至図13に示す。図10は、比較例の場合の在荷巻下げ時のクリープ距離と学習値(予め設定された床面レベルと各置場ごとの実際の床面レベルとの差)との関係を示すグラフである。図11は、比較例の場合の在荷巻下げ時のクリープ距離のヒストグラムである。図12は、実施例の場合の在荷巻下げ時のクリープ距離と学習値との関係を示すグラフである。図13は、実施例の場合の在荷巻下げ時のクリープ距離のヒストグラムである。
【0072】
比較例の場合、図10に示すように、学習値(予め設定された床面レベルと各置場ごとの実際の床面レベルとの差)が0mm~-250mm程度変化しているのに対しクリープ距離が約190mm~約560mmまでバラついていた。
そして、比較例の場合、図11に示すように、クリープ距離の平均は374mm、標準偏差σが62mm、クリープ平均時間は18.7秒であった。
【0073】
これに対して、実施例の場合、図12に示すように、学習値(予め設定された床面レベルと各置場ごとの実際の床面レベルとの差)が0mm~-250mm程度変化しているのに対しクリープ距離が約200mm~約250mmであった。
そして、実施例の場合、図13に示すように、クリープ距離の平均は224mm、標準偏差σが7mm、クリープ平均時間が11.2秒であり、クリープ距離、そのバラつき及びクリープ平均時間が大幅に短縮された。
【符号の説明】
【0074】
1 自動クレーン
2 走行レール
3 ガータ
4 走行車輪
5 クラブ
6 横行車輪
7 巻上げ巻下げ機
8 ワイヤ
9 巻下げ量検出センサ
10 リフター
11L,11R アーム
12L,12R 爪
13L,13R ロードセル
14L,14R 孔検出センサ
15 柱
16 横行レール
20 制御装置
21 制御部
22 高さ設定部
23 床面レベル学習値算出部
24 高さ補正部
25 上位計算機
C コイル(被移送物)
C1 中心孔
図1
図2
図3
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図10
図11
図12
図13