(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】難燃性樹脂組成物、これを用いたケーブル及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
C08L 31/04 20060101AFI20240829BHJP
C08K 3/02 20060101ALI20240829BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240829BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20240829BHJP
H01B 7/295 20060101ALI20240829BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20240829BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C08L31/04 S
C08K3/02
C08K3/22
C08K3/34
H01B7/295
H01B7/18 H
H01B7/00 301
(21)【出願番号】P 2020209751
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2019232503
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【氏名又は名称】青木 博昭
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】川本 慎二
(72)【発明者】
【氏名】井戸 航洋
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-226850(JP,A)
【文献】特開昭61-213238(JP,A)
【文献】特開昭61-235442(JP,A)
【文献】特開2002-260451(JP,A)
【文献】特開2014-111721(JP,A)
【文献】特開2016-189270(JP,A)
【文献】特開昭56-010549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
H01B 7/295
H01B 7/18
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、
金属水酸化物と、
赤リンと、
三酸化アンチモンと、
ハロイサイトとを含み、
前記熱可塑性樹脂がエチレン酢酸ビニル共重合体で構成され、
前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、
前記金属水酸化物が100~120質量部の割合で配合され、
前記赤リンが5~15質量部の割合で配合され、
前記三酸化アンチモンが1~15質量部の割合で配合され、
前記ハロイサイトが2~40質量部の割合で配合されている、難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
導体と、
前記導体を包囲するシースとを備え、
前記シースが、請求項1に記載の難燃性樹脂組成物の架橋体で構成される、ケーブル。
【請求項3】
前記導体と前記シースとの間に絶縁層をさらに備え、
前記シースの酸素指数が前記絶縁層の酸素指数よりも大きく、酸素指数が36以上である、請求項2に記載のケーブル。
【請求項4】
複数本のケーブルを備え、前記複数本のケーブルが請求項2又は3に記載のケーブルを含む、ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性樹脂組成物、これを用いたケーブル及びワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルの被覆、チューブ、テープ、包装材、建材等にはいわゆる難燃性樹脂組成物が広く使用されている。
【0003】
例えば下記特許文献1には、例えば難燃性樹脂組成物からなる被覆層で導体を被覆したケーブルが開示されている。同文献には、被覆層を、熱可塑性樹脂又はゴム100重量部と、金属水和物30~200重量部からなる組成物に対して、脂肪酸の金属塩0.01~20重量部及び赤リン5重量部を配合した難燃性樹脂組成物で構成することにより、優れた難燃性をケーブルに付与し得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の難燃性樹脂組成物は、ケーブルに付与する機械的特性及び難燃性の点で改善の余地を有していた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ケーブルに優れた機械的特性及び難燃性を付与することができる難燃性樹脂組成物、これを用いたケーブル及びワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため検討を重ねた。その結果、本発明者らは、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂と、金属水酸化物と、赤リンと、三酸化アンチモンと、ハロイサイトとを含み、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記金属水酸化物が100~120質量部の割合で配合され、前記赤リンが5~15質量部の割合で配合され、前記三酸化アンチモンが1~15質量部の割合で配合され、前記ハロイサイトが2~40質量部の割合で配合されている、難燃性樹脂組成物である。
【0009】
本発明の難燃性樹脂組成物は、ケーブルに優れた機械的特性及び難燃性を付与することができる。
【0010】
なお、本発明者らは、本発明の難燃性樹脂組成物において、上記の効果が得られる理由については以下のように推察している。
【0011】
まず、難燃性樹脂組成物が、金属水酸化物及び赤リンを含むが、三酸化アンチモン及びハロイサイトを含まない場合、燃焼時において、難燃性樹脂組成物内で生成される断熱難燃層は、生成速度が遅く且つ強度の点で弱いと考えられる。これに対し、本発明の難燃性樹脂組成物は、金属水酸化物及び赤リンのみならず、三酸化アンチモン及びハロイサイトをも含んでおり、三酸化アンチモンは断熱難燃層の生成促進効果を有し、ハロイサイトはそれ自体で断熱難燃層に対する断熱効果を有する。その結果、断熱難燃層の生成速度及び強度が向上し、難燃性樹脂組成物が優れた難燃性を有するのではないかと考えられる。
【0012】
一方、本発明の難燃性樹脂組成物はハロイサイトを熱可塑性樹脂100質量部に対して2質量部以上の配合割合で含むため、ハロイサイトによって補強効果が効果的に発揮される。このため、ハロイサイトは、難燃性を向上させるが機械特性には悪影響を及ぼす赤リンの影響を相殺する。その結果、難燃性樹脂組成物が優れた機械的特性を有するのではないかと考えられる。
【0013】
また本発明は、導体と、前記導体を包囲するシースとを備え、前記シースが、上述した難燃性樹脂組成物の架橋体で構成される、ケーブルである。
【0014】
本発明のケーブルでは、シースが、上述した難燃性樹脂組成物の架橋体で構成され、この難燃性樹脂組成物は、優れた機械的特性及び難燃性をケーブルに付与することができるものである。このため、本発明のケーブルは、優れた機械的特性及び難燃性を有することが可能となる。
【0015】
上記ケーブルは、前記導体と前記シースとの間に絶縁層をさらに備え、前記シースの酸素指数が前記絶縁層の酸素指数よりも大きく、酸素指数が36以上である場合に特に有効である。
【0016】
これは、シースが上記難燃性樹脂組成物で構成されていない場合には、シースの酸素指数が絶縁層の酸素指数よりも大きくても、ケーブルの燃焼時に絶縁層が燃焼して分解溶融する時に生じるドリップにより、シース内で生成される難燃断熱層が破壊されやすく、燃焼が拡大するおそれがあるところ、本発明のケーブルのようにシースが上記難燃性樹脂組成物で構成される場合、シースが優れた難燃性を有するため、シース内の難燃断熱層が破壊されにくく、燃焼が拡大しにくいためである。
【0017】
また本発明は、複数本のケーブルを備え、前記複数本のケーブルが、上述したケーブルを含む、ワイヤハーネスである。
【0018】
本発明のワイヤハーネスは、複数本のケーブルを含み、複数本のケーブルが上述したケーブルを含む。そして、上述したケーブルは、優れた機械的特性及び難燃性を有する。従って、本発明のワイヤハーネスは、優れた機械的特性及び難燃性を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ケーブルに優れた機械的特性及び難燃性を付与することができる難燃性樹脂組成物、これを用いたケーブル及びワイヤハーネスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のケーブルの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明のワイヤハーネスの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
[難燃性樹脂組成物]
本発明の難燃性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含むベース樹脂と、難燃剤と、架橋剤とを含む。難燃剤は、金属水酸化物と、赤リンと、三酸化アンチモンと、ハロイサイトとを含む。そして、難燃性樹脂組成物においては、熱可塑性樹脂100質量部に対して、金属水酸化物が100~120質量部の割合で配合され、赤リンが5~15質量部の割合で配合され、三酸化アンチモンが1~15質量部の割合で配合され、ハロイサイトが2~40質量部の割合で配合されている。
【0023】
本発明の難燃性樹脂組成物は、ケーブルに優れた機械的特性及び難燃性を付与することができる。
【0024】
以下、ベース樹脂、難燃剤及び架橋剤について詳細に説明する。
【0025】
(A)ベース樹脂
ベース樹脂は熱可塑性樹脂を含む。
【0026】
熱可塑性樹脂としては、例えばエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン(メタ)アクリル酸アルキル共重合体などのエチレン-αオレフィン共重合体;ポリエチレン;ポリプロピレンなどが挙げられる。中でも、EVAが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物を架橋させる際に、熱可塑性樹脂を容易に架橋させることできる。
【0027】
(B)難燃剤
難燃剤は、金属水酸化物と、赤リンと、三酸化アンチモンと、ハロイサイトとを含む。
【0028】
(金属水酸化物)
金属水酸化物としては、例えば水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0029】
中でも、水酸化アルミニウムが好ましい。この場合、水酸化アルミニウムは水に不溶であるため、難燃性樹脂組成物をシースに用いた場合に、シースが水と接触しても、シースをより安定化させることができる。
【0030】
金属水酸化物は、熱可塑性樹脂100質量部に対して100~120質量部の割合で配合される。この場合、熱可塑性樹脂100質量部に対する金属水酸化物の配合割合が100質量部未満である場合に比べて、ケーブルに対してより優れた難燃性を付与することができる。また、熱可塑性樹脂100質量部に対する金属水酸化物の配合割合が120質量部を超える場合に比べて、ケーブルの機械的特性をより向上させることができる。
【0031】
熱可塑性樹脂100質量部に対する金属水酸化物の配合割合は、ケーブルの難燃性をより向上させる観点からは、110質量部以上であることが好ましい。
【0032】
(赤リン)
赤リンの平均粒径は特に制限されるものではないが、赤リンの平均粒径は、例えば20μm以上である。但し、赤リンの平均粒径は、40μm以下であることが好ましい。この場合、赤リンの平均粒径が40μmを超える場合に比べて、難燃性樹脂組成物の引張強度の低下がより抑制される。
【0033】
赤リンは、熱可塑性樹脂100質量部に対して5~15質量部の割合で配合されている。この場合、熱可塑性樹脂100質量部に対する赤リンの配合割合が5質量部未満である場合に比べて、ケーブルに対してより優れた難燃性を付与することができる。また、熱可塑性樹脂100質量部に対する赤リンの配合割合が15質量部を超える場合に比べて、ケーブルの機械的特性をより向上させることができる。
【0034】
但し、熱可塑性樹脂100質量部に対する赤リンの配合割合は、ケーブルの機械的特性を向上させる観点からは、10質量部以下であることが好ましい。
【0035】
(三酸化アンチモン)
三酸化アンチモンは、熱可塑性樹脂100質量部に対して1~15質量部の割合で配合されている。この場合、熱可塑性樹脂100質量部に対する三酸化アンチモンの配合割合が1質量部未満である場合に比べて、ケーブルに対してより優れた難燃性を付与することができる。また、熱可塑性樹脂100質量部に対する三酸化アンチモンの配合割合が15質量部を超える場合に比べて、ケーブルの機械的特性をより向上させることができる。
【0036】
但し、熱可塑性樹脂100質量部に対する三酸化アンチモンの配合割合は、ケーブルの機械的特性を向上させる観点からは、2質量部以下であることが好ましい。
【0037】
(ハロイサイト)
ハロイサイトは、熱可塑性樹脂100質量部に対して2~40質量部の割合で配合されている。この場合、熱可塑性樹脂100質量部に対するハロイサイトの配合割合が2質量部未満である場合に比べて、ケーブルに対してより優れた機械的特性及び難燃性を付与することができる。また、熱可塑性樹脂100質量部に対するハロイサイトの配合割合が40質量部を超える場合に比べて、ケーブルの機械的特性及び難燃性をより向上させることができる。
【0038】
但し、熱可塑性樹脂100質量部に対するハロイサイトの配合割合は、ケーブルの機械的特性を向上させる観点からは、30質量部以下であることが好ましい。
【0039】
(他の難燃剤)
難燃剤は、金属水酸化物、赤リン、三酸化アンチモン及びハロイサイトとは別の種類の難燃剤をさらに含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0040】
(C)架橋剤
架橋剤(加硫剤)は、熱可塑性樹脂を架橋させることができるものであれば特に限定されない。架橋剤としては、例えば有機過酸化物などが挙げられる。
【0041】
有機過酸化物としては、例えばジクミルパーオキサイド(DCP)、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルぺルオキシ)バレラート、α,α’-ジ(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3などが挙げられる。
【0042】
熱可塑性樹脂100質量部に対する架橋剤の配合割合は特に制限されるものではないが、ケーブルの耐熱老化性及び屈曲性をより向上させる観点からは、2質量部以上であることが好ましく、6質量部以上であることがより好ましい。
【0043】
但し、熱可塑性樹脂100質量部に対する架橋剤の配合割合は、7質量部以下であることが好ましい。この場合、熱可塑性樹脂100質量部に対する架橋剤の配合割合が7質量部を超える場合に比べて、架橋剤の配合割合が減少することで、反応残差物のガスが発生しにくくなり、架橋時に難燃性樹脂組成物の発泡及び膨れがより生じにくくなる。
【0044】
(D)その他の添加剤
難燃性樹脂組成物は、必要に応じて架橋助剤(加硫促進剤)、酸化防止剤、カーボンブラックをさらに含んでもよい。
【0045】
上記難燃性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、難燃剤及び架橋剤等を混練することにより得ることができる。混練は、例えばバンバリーミキサ、タンブラ、加圧ニーダ、混練押出機、二軸押出機、ミキシングロール等の混練機で行うことができる。
【0046】
[ケーブル]
次に、本発明のケーブルの実施形態について
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るケーブルの一実施形態を示す断面図である。
【0047】
図1に示すように、ケーブル10は、3本のコア3と、3本のコア3を包囲するシース4とを備えている。コア3は、導体1と、導体1を被覆する絶縁層2とを備えている。
【0048】
ここで、シース4は、上述した難燃性樹脂組成物の架橋体で構成され、上述した難燃性樹脂組成物は、ケーブル10に優れた機械的特性及び難燃性を付与することができるものである。このため、ケーブル10は、優れた機械的特性及び難燃性を有することが可能となる。
【0049】
<コア>
(導体)
導体1は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成されたものであってもよい。また、導体1は、導体径や導体の材質などについて特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。導体1の材料としては、例えば、銅、アルミニウム、又はそれらを含む合金が好ましいが、カーボン材料などの導電性物質も適宜使用できる。
【0050】
(絶縁層)
絶縁層2は、絶縁材料で構成されていればよいが、ケーブル10の屈曲性を向上させる観点からは、絶縁材料は、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴムなどのゴム材料で構成されることが好ましい。
【0051】
絶縁材料は架橋されていても架橋されていなくてもよい。
【0052】
絶縁層2の酸素指数は特に制限されるものではないが、絶縁材料がゴム材料などの易燃焼性材料で構成される場合は通常、23以下である。
【0053】
<シース>
シース4の酸素指数は、絶縁層2の酸素指数以下であっても絶縁層2の酸素指数より大きくてもよいが、シース4の酸素指数が絶縁層2の酸素指数より大きく、シース4の酸素指数が36以上である場合にケーブル10は有効である。
【0054】
これは、シース4が上述した難燃性樹脂組成物で構成されていない場合には、ケーブル10の燃焼時にコア3の絶縁層2が燃焼して分解溶融する時に生じるドリップにより、シース4内で生成される難燃断熱層が破壊され、コア3がむき出しになり、燃焼が拡大するおそれがあるところ、シース4が上述した難燃性樹脂組成物で構成されている場合には、シース4が優れた難燃性を有するため、シース4内の難燃断熱層が破壊されにくく、燃焼が拡大しにくいためである。
【0055】
シース4の酸素指数と絶縁層2の酸素指数の差は特に制限されるものではないが、6以上である場合には、難燃性の点で特に有効である。
【0056】
[ワイヤハーネス]
次に、本発明のワイヤハーネスの実施形態について
図2を参照しながら説明する。
図2は、本発明のワイヤハーネスの一実施形態を示す断面図である。
【0057】
図2に示すように、ワイヤハーネス20は、複数本(
図2では4本)のケーブル10と、複数本のケーブル10を束ねるテープ21とを備える。テープ21は、複数本のケーブル10をその長さ方向に沿って全体的に被覆している必要はなく、複数本のケーブル10をその長さ方向に沿って必要な箇所で部分的に被覆していればよい。
【0058】
このワイヤハーネス20は、複数本のケーブルを含み、複数本のケーブルが上述したケーブル10を含む。そして、上述したケーブル10は、優れた機械的特性及び難燃性を有する。従って、ワイヤハーネス20は、優れた機械的特性及び難燃性を有する。
【0059】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態ではケーブル10は、3本のコア3を有しているが、コア3の本数は1本又は2本でもよく、4本以上であってもよい。
【0060】
またコア3は絶縁層2を有しているが、コア3は絶縁層2を有していなくてもよい。
【0061】
また上記実施形態では、難燃性樹脂組成物が架橋剤を含んでいるが、難燃性樹脂組成物の架橋が電子線架橋で行われる場合には、必ずしも架橋剤を含んでいなくてもよい。
【0062】
さらに上記実施形態では、上記ワイヤハーネス20は、テープ21を備えているが、ワイヤハーネス20はテープ21の代わりに結束帯、コルゲートチューブ等を用いることもできる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
(実施例1~15及び比較例1~7)
熱可塑性樹脂、金属水酸化物、赤リン、ハロイサイト、三酸化アンチモン、有機過酸化物及びアリル化合物を、表1~3に示す配合量で配合し、バンバリーミキサにて室温で10分混練し、難燃性樹脂組成物を得た。なお、表1~3において、各配合成分の配合量の単位は質量部である。
【0065】
上記熱可塑性樹脂、金属水酸化物、赤リン、有機過酸化物及びアリル化合物としては具体的には下記のものを用いた。
【0066】
(1)熱可塑性樹脂
エチレンビニル酢酸共重合体(EVA)
(2)金属水酸化物
水酸化アルミニウム
(3)赤リン
平均粒径36μm以下
(4)有機過酸化物
ジクミルパーオキサイド(DCP)
(5)アリル化合物
トリアリルシアヌレート(TAC)
【0067】
[特性評価]
上記のようにして得られた実施例1~15及び比較例1~7の難燃性樹脂組成物について、機械的特性、難燃性及び耐熱老化性の評価を行った。
【0068】
なお、難燃性の評価は、実施例1~15及び比較例1~7の難燃性樹脂組成物を用いて後述するようにして作製したケーブルを用いて行った。
【0069】
また、機械的特性及び耐熱老化性の評価は、実施例1~15及び比較例1~7の難燃性樹脂組成物を用いて、後述するようにして作製したシート状成形体を用いて行った。
【0070】
(ケーブルの作製)
まず、断面積0.75mm2の錫被覆(TA)軟銅線に、EPゴムからなる絶縁体(酸素指数:21)を充実押出で、厚さ1.0mmに被覆してコアを3芯作製した。その後、これら3芯のコアを撚り合わせた。そして、その上に、バンバリーミキサで混練した実施例1~15及び比較例1~7の難燃性樹脂組成物を充実押出で被覆した後、加硫させてシースを形成した。こうしてケーブルを作製した。このとき、シースの厚さは1.5mmであり、ケーブルの外径は10.7mmであった。
【0071】
(評価用シートの作製)
実施例1~15及び比較例1~7の難燃性樹脂組成物を、成形型を用いてシート状に成形した後、140℃で180分間プレス加工及び加硫を行い、厚さ2.0mm×200mm×200mmの寸法を有する評価用シートを得た。
【0072】
<機械的特性>
上記のようにして作製した評価用シートを用いてJIS3号ダンベル試験片を作製し、JIS C3005に準拠した引張試験を行い、引張強度T0及び引張伸びE0を測定した。結果を表1~3に示す。なお、引張試験は、引張速度500mm/min、標線間距離20mmの条件で行った。また機械的特性の合格基準は以下の通りとした。
(合格基準) 引張強度が7.8MPa以上で且つ引張伸びが200%以上であること
【0073】
<難燃性>
(1)酸素指数(OI(Oxygen Index))
上記のようにして作製したケーブルについて、JIS K7201-2に準拠してOIの測定を行った。結果を表1~3に示す。
(2)垂直トレイ燃焼試験に基づく難燃性
上記のようにして得られた10本のケーブルについて、JIS C3521に準拠して垂直トレイ燃焼試験を行った。このとき、試験は、10本のケーブルを5.4mm間隔で一列に並べた状態で行った。この燃焼試験によって、10本すべてのケーブルが全長にわたって炭化しなければ合格とし、1本でも全長にわたって炭化したケーブルがあれば不合格とした。結果を表1~3に示す。
【0074】
<耐熱老化性>
上記のようにして作製した評価用シートを用いてJIS3号ダンベル試験片を作製し、この試験片について、温度を100℃に設定したオーブンで168時間加熱を行った。そして、加熱後の試験片について、機械的特性評価時の引張試験と同様にして引張試験を行い、引張強度T1及び引張伸びE1を測定した。そして、これらの引張強度T1及び引張伸びE1と、機械的特性評価時に測定した引張強度T0及び引張伸びE0とから、下記式に基づいて強度残率及び伸び残率を算出した。結果を表1~3に示す。
強度残率=100×(T0-T1)/T0
伸び残率=100×(E0-E1)/E0
【表1】
【表2】
【表3】
【0075】
表1~3に示す結果より、実施例1~15の難燃性樹脂組成物は、機械的特性及び難燃性の点で合格基準に達していた。これに対し、比較例1~7の難燃性樹脂組成物は、機械的特性又は難燃性の点で合格基準に達していなかった。
【0076】
このことから、本発明の難燃性樹脂組成物が、ケーブルに優れた機械的特性及び難燃性を付与することができることが確認された。
【符号の説明】
【0077】
1…導体
2…絶縁層
4…シース
10…ケーブル
20…ワイヤハーネス