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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】異常診断装置及び異常診断方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
G05B23/02 302V
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020097149
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021189964
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】國眼 陽子
(72)【発明者】
【氏名】岡 恵子
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 久恵
(72)【発明者】
【氏名】馬場 宣明
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 規和
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 伯之
(72)【発明者】
【氏名】平 友恒
(72)【発明者】
【氏名】緒方 英治
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特許第5684941(JP,B1)
【文献】特開2013-025367(JP,A)
【文献】特開2015-181072(JP,A)
【文献】特開2016-045853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器から取得された運転データが、前記機器そのものの性能に由来する情報である性能情報と、前記機器の運転に関する情報である運転条件情報のどちらかであるのかを判定するためのデータ種別情報を格納しているデータ種別記憶部と、
前記運転データを予め学習した結果であり、前記運転データが異常であるか、正常であるかを判定するための学習データを格納している学習データ記憶部と、
前記機器から新たに取得された前記運転データである新規運転データについて、前記学習データを基に、異常と判定された前記新規運転データが前記運転条件情報である場合、前記学習データ記憶部に格納されている前記学習データと、前記新規運転データとの比較に基づいて、前記学習データとして適切な前記新規運転データを、新たな前記学習データとして前記学習データ記憶部に追加格納する学習データ追加部と、
前記学習データ記憶部に格納されている前記学習データの誤差範囲を基に設定される追加可能領域の内部に収まっている前記新規運転データを、前記学習データとして適切であると判定する追加判定部と、
を有することを特徴とする異常診断装置。
【請求項2】
前記新規運転データが新たな前記学習データとして追加格納された前記学習データ記憶部に格納されている前記学習データを基に前記追加可能領域を作成する追加可能領域作成部
を有することを特徴とする請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項3】
前記運転条件情報であると判定された前記新規運転データが格納されるデータ記憶部を有し、
前記学習データ追加部は、
前記データ記憶部に、前記運転条件情報であると判定された前記新規運転データが前記データ記憶部に所定量蓄積された後に、前記比較、及び、前記学習データの追加に関する処理が行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項4】
前記新規運転データが前記運転条件情報と判定されなかった場合、外部への報知を出力する報知部
を有することを特徴とする請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項5】
前記比較において用いられる前記学習データは、前記学習データ記憶部に格納されている前記学習データのうちの一部である
ことを特徴とする請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項6】
前記学習データの追加が行われる場合、前記学習データが追加することを機器の管理者に報知する報知部
を有する特徴とする請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項7】
前記機器は、空気調和機である
ことを特徴とする請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項8】
機器から取得された運転データが、前記機器そのものの性能に由来する情報である性能情報と、前記機器の運転に関する情報である運転条件情報のどちらかであるのかを判定するためのデータ種別情報を格納しているデータ種別記憶部と、
前記運転データを予め学習した結果であり、前記運転データが異常であるか、正常であるかを判定するための学習データを格納している学習データ記憶部と、
を有する異常診断装置が、
前記学習データ記憶部に格納されている前記学習データを基に、前記機器から新たに取得された前記運転データである新規運転データが異常であるか否かを判定する異常判定ステップと、
データ種別記憶部に格納されている前記データ種別情報を基に、前記異常判定ステップの結果、異常と判定された前記新規運転データが、前記性能情報であるか、前記運転条件情報であるかを判定する種別判定ステップと、
前記種別判定ステップの結果、前記新規運転データが前記運転条件情報である場合、前記学習データ記憶部に格納されている前記学習データと、前記新規運転データとの比較に基づいて、前記学習データとして適切な前記新規運転データを、新たな前記学習データとして前記学習データ記憶部に追加格納する追加格納ステップと、
前記学習データ記憶部に格納されている前記学習データの誤差範囲を基に設定される追加可能領域の内部に収まっている前記新規運転データを、前記学習データとして適切であると判定する追加判ステップと、
を実行することを特徴とする異常診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の異常を診断する異常診断装置及び異常診断方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機等のように定常的に稼働することが想定される装置を対象として、その運転データから異常診断を行うシステムが提供されている。このような異常診断は、機器の状態が正常動作状態であるか、異常状態であるかを判定(診断)し、その結果として異常状態であると判定された場合には異常を報知するものである。ここで異常状態とは、機器に何らかの故障または劣化が生じている状態を示す。このような異常診断により、劣化や故障の早期検出による、機器のダウンタイムの低減が期待されている。
【0003】
これらの異常診断は、空気調和装置の状態をセンサ等により検出し、センサの検出値に基づいた所定の診断手法を用いて行われる。診断対象となる各種機器の中には、設置される環境、機器の機種または使用される状態等によって運転条件が多岐にわたるものがある。その場合、特定のセンサ項目における計測値の変化が、機器そのものの異常によるものなのか、それとも運転条件の変化によるものかを判別することが非常に困難となる場合がある。つまり、機器そのものには異常がないのに、運転条件の変化が原因で「異常」と診断されてしまう場合がある。
【0004】
このような課題に対し、例えば、特許文献1が開示されている。特許文献1には、「異常診断システムは、空気調和装置の異常診断を行う異常診断システムであって、第1導出部と、第2導出部と、異常診断部とを備える。第1導出部は、診断時における空気調和装置の状態に関する状態値に基づき導出値を導出する。第2導出部は、空気調和装置の正常動作時における状態値に基づき正常値を導出する。異常診断部は、導出値および正常値に対して統計処理による検定を行い、導出値と正常値とに有意差ありとみなされる場合に空気調和装置が異常状態にあると診断する」異常診断システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009‐002650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、運転状態の分類を初期に作成する。そして、特許文献1に記載の技術では、この分類に適合した運転状態のデータのみを診断対象としている。このため、センサデータによっては、分類に適合していないために診断対象とすることができない可能性がある。また、特許文献1に記載の技術では、安定状態抽出部により状態が安定しているデータを抽出する。そのため、機器が故障し、安定状態となっていない場合、データの抽出さえ実行できない可能性がある。
【0007】
このような背景に鑑みて本発明がなされたのであり、本発明は、機器の異常診断における精度の向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するため、本発明は、機器から取得された運転データが、前記機器そのものの性能に由来する情報である性能情報と、前記機器の運転に関する情報である運転条件情報のどちらかであるのかを判定するためのデータ種別情報を格納しているデータ種別記憶部と、前記運転データを予め学習した結果であり、前記運転データが異常であるか、正常であるかを判定するための学習データを格納している学習データ記憶部と、前記機器から新たに取得された前記運転データである新規運転データについて、前記学習データを基に、異常と判定された前記新規運転データが前記運転条件情報である場合、前記学習データ記憶部に格納されている前記学習データと、前記新規運転データとの比較に基づいて、前記学習データとして適切な前記新規運転データを、新たな前記学習データとして前記学習データ記憶部に追加格納する学習データ追加部と、前記学習データ記憶部に格納されている前記学習データの誤差範囲を基に設定される追加可能領域の内部に収まっている前記新規運転データを、前記学習データとして適切であると判定する追加判定部と、を有することを特徴とする。
その他の解決手段は実施形態中に記載する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機器の異常診断における精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態における管理システムの構成例を示す図である。
図2】本実施形態に係る異常診断装置の構成例を示す機能ブロック図である。
図3】データ種別記憶部に格納されている種別データの例を示す図である。
図4】本実施形態で行われる異常診断方法の処理手順を示すフローチャートである。
図5】追加可否判定の手法の一例を示す図である。
図6】異常診断装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
[異常診断装置1]
図1は、本実施形態における管理システムZの構成例を示す図である。
管理システムZは、少なくとも1つの診断対象システムD、サービスセンタC2に設置されているデータ端末5と、遠隔監視センタC1に設置されている異常診断装置1とを有する。
診断対象システムDのうち、診断対象システムDaには2台の空気調和機2と、これらの空気調和機2に接続されている制御装置3が備えられている。
空気調和機2は、異常診断装置1が行う診断の対象であり、室内の空気を任意の状態へ制御する。空気調和機2は、マルチエアコンや、電算機を収納している室内を冷却するための産業用エアコン等である。
空気調和機2には、作動状態や環境状態を検知するセンサ201が複数設けられている。これらのセンサ201は、例えば外気温度、室内温度、空気調和機2の圧縮機の周波数、内部を循環する冷媒の温度や圧力、冷媒の吸入管温度等といった状態検出値を検出する。
【0013】
診断対象システムDaにおいて、制御装置3は、診断対象システムDaに備えられている複数(図1の例では2台)の空気調和機2と通信線により接続されている。そして、制御装置3は、それぞれの空気調和機2に対して、制御のための設定値を設定することによって、複数の空気調和機2を制御する。また、制御装置3は、通信網Nを介して異常診断装置1に接続されている。そして、制御装置3は、空気調和機2の運転データ101(図3参照)を、遠隔監視センタC1に設置されている異常診断装置1へと送信する。この運転データ101には、それぞれの空気調和機2が有するセンサ201で検出された状態検出値や、空気調和機2に対する制御の設定値、空気調和機2で実行された制御内容、空気調和機2の消費電力等が含まれる。これらの運転データ101は、所定時間毎、例えば1分毎に検出される。そして、運転データ101は制御装置3により継続的、あるいは、断続的に収集され、蓄積される。そして、前記したように、制御装置3は、蓄積された運転データ101を、異常診断装置1へと送信する。なお、診断対象システムDaの例では2台の空気調和機2の運転データ101が区別されて異常診断装置1へ送信される。
【0014】
なお、診断対象システムDaには、2台の空気調和機2が備えられているが、1台でもよいし、3台以上でもよい。また、診断対象システムDaでは、1台の制御装置3に2台の空気調和機2が接続されているが、これに限らない。例えば、それぞれの空気調和機2に、制御装置3が接続されていてもよい。
【0015】
診断対象システムDb,Dcのそれぞれには、機器4と、制御装置3とが備えられている。機器4は、空気調和機2でもよいし、その他の機器4でもよい。その他の機器4とは、冷凍機や昇降機、プラント装置等、定常的に稼働することが想定される装置である。あるいは、機器4として、ビル内の全空調ユニット等、一つ以上の機器4が連結されることで構成されているものでもよい。さらに、機器4として、給湯装置や照明等他の設備機器が含まれてもよい。
また、診断対象システムDaの空気調和機2が、機器4で置き換えられてもよい。
診断対象システムDb,Dcにおいて、制御装置3には機器4が接続され、診断対象システムDaと同様に、制御装置3は機器4の運転データ101を異常診断装置1へ送信する。
【0016】
異常診断装置1は、複数の診断対象システムDのそれぞれに設置されている空気調和機2や、機器4の異常診断を行う装置である。また、異常診断装置1は、空気調和機2や、機器4が配置された診断対象システムDから離れた遠隔監視センタC1内に配置される。ただし、いずれかの診断対象システムDに異常診断装置1が配置されてもよい。これにより、異常診断装置1は診断対象システムDを遠隔監視する。
異常診断装置1は、制御装置3により送られる空気調和機2や、機器4の運転データ101から、空気調和機2が正常動作状態か異常状態かを判断する。また、異常状態であると判断された場合、異常診断装置1は、診断対象システムDの管理者等に異常の通知を行うと共にサービスセンタC2のデータ端末5に異常の通知を行う。
【0017】
異常の通知を受信したデータ端末5は、サービスセンタC2に所属するサービスマンPに空気調和機2の保守作業の指示を通知する。通知を受けたサービスマンPは異常が検知された診断対象システムDへの保守作業に出動する。
なお、ここでの異常状態とは、空気調和機2や、機器4に何らかの故障または劣化が生じている状態を示す。
【0018】
また、ここでは、空気調和機2や、機器4の運転データ101は、通信網Nを介して異常診断装置1へ送信されるとしている。つまり、図1の例では、制御装置3は、通信網Nを介して異常診断装置1に接続している。しかし、制御装置3が、通信網Nを介さずに、つまり、ピアツーピア(Peer to Peer)や、VPN(Virtual Private Network)の形式で、異常診断装置1に直接接続されてもよい。
【0019】
[異常診断装置1]
図2は、本実施形態に係る異常診断装置1の構成例を示す機能ブロック図である。
以下では、診断対象となる機器4は、空気調和機2であるものとする。
異常診断装置1は、入力・出力ベクトル抽出部111、学習データ選択部112、回帰モデル作成部113、異常度算出部114、閾値算出部115、異常判定部116を有する。さらに異常診断装置1は、データ種別特定部121、有効/無効判定部122、報知部123、学習データ追加部126を有する。さらに、異常診断装置1は、評価データ記憶部102、学習データ記憶部118、データ種別記憶部124、無効データ記憶部125、特性作成部119、特性データ記憶部119A、追加判定部127を有する。
【0020】
なお、入力・出力ベクトル抽出部111、学習データ選択部112、回帰モデル作成部113、異常度算出部114、閾値算出部115、異常判定部116、学習データ記憶部118は、特開2013-25367号公報に記載の技術であるので、ここでの説明は簡単なものとする。なお、以降では入力・出力ベクトル抽出部111、学習データ選択部112、回帰モデル作成部113、異常度算出部114、閾値算出部115、異常判定部116、学習データ記憶部118、特性作成部119、特性データ記憶部119Aを学習・異常判定部110と称する場合がある。
【0021】
そして、データ種別特定部121、有効/無効判定部122、報知部123、学習データ追加部126及びデータ種別記憶部124、特性作成部119、特性データ記憶部119A、追加判定部127が、本実施形態の特徴部分である。データ種別特定部121、有効/無効判定部122、報知部123、学習データ追加部126及びデータ種別記憶部124、無効データ記憶部125、追加判定部127を追加学習部120と称する場合がある。
【0022】
入力・出力ベクトル抽出部111は、空気調和機2から出力される運転データ101から回帰モデルに使用する入力ベクトル及び出力ベクトルを抽出する。入力ベクトル及び出力ベクトルは、特開2013-25367号公報に記載のものであるが、入力ベクトルは予測の基となる実際の運転データ101であり、出力ベクトルは予測される運転データ101である。なお、特開2013-25367号公報に記載されているように出力ベクトルも実際の運転データ101であってもよい。
学習データ記憶部118には、抽出された入力ベクトルと出力ベクトルとが学習データとして蓄積される。
また、特性作成部119は、空気調和機2から出力される運転データ101から性能に関連する傾向を抽出し、空気調和機2の特性データを作成する。そして、特性作成部119は、作成した特性データを特性データ記憶部119Aに格納する。この特性データは、学習データ記憶部118に新たな学習データを追加する際、追加するデータ(後記する無効データ)が学習データとして適切か否かを判定するためのデータとなる。特性作成部119が作成する特性データについては後記する。
【0023】
学習データ選択部112は、学習データ記憶部118に蓄積された学習データから、新たに抽出された入力ベクトルとの類似度に基づいて、学習データ(ここでは入力ベクトル)を選択する。なお、後記するように新たに抽出された入力ベクトルは評価データ記憶部102に蓄積される。
回帰モデル作成部113は、選択された学習データを用いて回帰モデルを作成する。ここでの回帰モデルは、特開2013-25367号公報に記載されているようにガウシアンプロセス等が用いられる。
【0024】
異常度算出部114は、回帰モデル作成部113によって作成された回帰モデルを基に異常度を算出する。具体的には、異常度算出部114は、特開2013-25367号公報に記載されている手法によって異常度を算出する。
閾値算出部115は、特開2013-25367号公報に記載されている閾値を算出する。
異常判定部116は、異常度算出部114で算出された異常度と、閾値算出部115で算出された閾値とを基に特開2013-25367号公報に記載されている手法によって運転データ101の異常判定を行う。すなわち、異常判定部116は、学習データ記憶部118に格納されている学習データに基づいて、新規に取得された運転データ101が異常であるか否かを判定する。
【0025】
評価データ記憶部102に格納される評価データについては後記する。
【0026】
このように本実施形態における学習・異常判定部110は、特開2013-25367号公報に記載の手法を用いることで、運転データ101の異常を判定している。しかし、この手法は、空気調和機2等のように運転データ101の変更が、しばしば行われる機器4に対応していない。すなわち、特開2013-25367号公報に記載の手法では、空気調和機2そのものの異常はないのに、単に運転データ101が変更されたことが原因で異常と判定されるおそれがある。そのため、さらなる改良が必要である。このような改良のため、本実施形態では学習・異常判定部110内に特性作成部119と、特性データ記憶部119Aと、追加学習部120とを備えている。追加学習部120の各構成については後記する。
【0027】
データ種別記憶部124には、種別データが格納されている。ここで、種別データの説明を行う。
図3は、データ種別記憶部124に格納されている種別データの例を示す図である。
図3に示すように、種別データは、「No」、「データ名称」、「データ収集方式」「種別」の各フィールドを有している。
「No」は、各データの種別に関する通し番号である。
「データ名称」は、「外気温度」や、「吸い込み空気温度」等といったデータの名称である。
「データ収集方式」は、データがどのように取得されたかを示すものである。図3の例では、「データ収集方式」として「センサデータ」及び「物理量」とがある。「センサデータ」は、センサ201から取得される生データである。「物理量」は、「センサデータ」を基に、所定の数式や、マップ等によって算出されるものである。
【0028】
「種別」は、データが「運転条件」に関するデータか、「性能」に関するデータか、に関する情報が格納されている。「運転条件」は空気調和機2の運転状態や、環境にともなって変化するデータである。「性能」は、空気調和機2そのものに由来するデータである。
なお、運転データ101の種別に関する情報は、予め管理者等によって作成され、データ種別記憶部124に格納される。
【0029】
このように、本実施形態では、運転データ101に対して、予め「運転条件」を示すデータか、「性能」を示すデータかを分類した種別データが備えられている。図3に示すような分類は診断対象となる機器4(ここでは空気調和機2)によりほぼ一意的に決定される値である。従って、一般的な機器4の知識さえあれば設定することに困難はない。
【0030】
図2の説明に戻る。
データ種別特定部121は、異常判定部116によって異常判定された運転データ101の種別を特定する。
有効/無効判定部122は、データ種別特定部121で特定された種別を基に、異常判定部116で判定された異常が有効であるか、無効であるかを判定する。異常が有効である、無効であることについては後記する。
報知部123は、有効/無効判定部122によって異常が有効であると判定された場合においてユーザに異常が発生した旨を報知する。
無効データ記憶部125は、有効/無効判定部122によって、異常が「無効」と判定された運転データ101を格納する。
追加判定部127では、特性作成部119が作成し、特性データ記憶部119Aに格納されている空気調和機2や、機器4の特性データに基づいて、無効データ記憶部125に格納されている運転データ101が学習データに追加可能か否かを判定する。
学習データ追加部126は、無効データ記憶部125に格納されている運転データ101のうち、追加判定部127における判定結果が「追加可能」であるデータを学習データとして学習データ記憶部118に追加する。また、このとき、報知部123は、学習データ記憶部118に学習データを追加することをユーザに報知する。
【0031】
運転データ101には、それぞれの空気調和機2が有するセンサ201で検出された状態検出値や、空気調和機2に対する制御の設定値、空気調和機2で実行された制御内容、空気調和機2の消費電力等が含まれる。また、図3に示されるように、運転データ101には、センサ201で検出された値そのもののセンサデータだけでなく、センサ201で検出された値を基に算出された物理量も含まれる。
【0032】
異常診断装置1は、学習データ記憶部118に学習データとなる入力ベクトルと出力ベクトルを蓄積するために、機器4の異常がない状態で一定期間、学習データを収集する。機器4の異常がない状態とは、例えば、新規に設置された後の一定期間等、機器4の異常がないとされる期間である。また、ここで一定期間とは、診断対象の機器4(本実施形態の例では空気調和機2)で想定される運転条件が表れる期間が望ましいが、すべての運転条件を網羅する必要はない。診断対象の機器4で想定される運転条件が表れる期間とは、例えば、診断対象の機器4が空気調和機2である場合、夏の設定から、冬の設定に切り替わるまでの期間である。そして、異常診断装置1の入力・出力ベクトル抽出部111は、入力・出力ベクトル抽出部111より抽出する。抽出された運転データ101は学習用データベース6に学習データとして蓄積される。
【0033】
また、前記した一定期間が過ぎると、異常診断装置1は、取得した運転データ101を評価データ記憶部102に格納していく。評価データ記憶部102に蓄積された運転データ101を評価データと称する。そして、評価データ記憶部102に評価データが所定量蓄積されると、入力・出力ベクトル抽出部111が評価データ記憶部102に格納された運転データ101から入力ベクトルと、出力ベクトルとを抽出する。そして、学習データ選択部112が、学習データ記憶部118に格納されている学習データと、評価データから抽出される学習データとの類似度に基づいて、学習データ記憶部118から学習データを選択する。なお、ここでの学習データは出力ベクトルである。
【0034】
[フローチャート]
図4は、本実施形態で行われる異常診断方法の処理手順を示すフローチャートである。
なお、図4では、本実施形態の特徴部分である異常判定部116の処理以降について示す。
まず、異常判定部116による異常判定処理が行われる(S1)。異常判定部116は、学習データ記憶部118に格納されている学習データに基づいて、新規に取得された運転データ101が異常であるか否かを判定する。実際には、学習データ選択部112が選択した学習データに基づいて、回帰モデル作成部113が回帰モデルを作成する。そして、異常度算出部114が、回帰モデル作成部113によって作成された回帰モデルを基に異常度を算出する。そして、異常判定部116は、異常度算出部114が算出して異常度と、閾値算出部115によって算出された閾値とを基に、新規に取得された運転データ101が異常であるか否かを判定する。
【0035】
ステップS1による異常判定処理の結果、異常と判定されなかった場合、すなわち正常と判定された場合(S1→正常)、異常診断装置1はステップS1に処理を戻す。
ステップS1による異常判定の結果、異常と判定された場合(S1→異常)、データ種別特定部121は、データ種別記憶部124に格納されている種別データを基に、異常と判定された運転データ101の種別を判定する(S2)。運転データ101の種別とは図3の例に示す「種別」(「運転条件」、「性能」)である。なお、制御装置3から取得される運転データ101には、「データ名称」等に関する情報が属性情報として付されている。
なお、運転データ101が異常と判定されるということは、対象となる運転データ101が異常度の算出に影響の大きかった運転データ101に類似しているいうことでもある。
【0036】
そして、有効/無効判定部122は、ステップS2の結果を基に、異常と判定された運転データ101が有効であるか、無効であるかを判定する(S3)。具体的には、異常と判定された運転データ101の種別が「性能」である場合、有効/無効判定部122は、異常判定が「有効」であると判定する。また、異常と判定された運転データ101の種別が「運転条件」である場合、有効/無効判定部122は、異常判定が「無効」であると判定する。これは、種別が「運転条件」である場合、該当する運転データ101に基づく学習データとして蓄積されていなかったため、異常と判定されたおそれがあるためである。また、運転データ101の種別が「性能」である場合、機器4(空気調和機2)そのものが原因で異常判定された可能性があるため、「有効」と判定される。
【0037】
ステップS3の結果、「有効」と判定された場合(S3→「有効」)、報知部123は、異常が発生した旨を報知し(S4)、異常診断装置1はステップS1へ処理を戻す。報知は、例えば、サービスセンタC2に備えられているデータ端末5の表示部(不図示)に対して、機器4(空気調和機2)に異常が発生した旨の情報を機器4(空気調和機2)のID等とともに表示する。報知を受けたサービスセンタC2のサービスマンPは異常が発生した機器4(空気調和機2)の保守作業に出動する。
【0038】
ステップS3の結果、「無効」と判定された場合(S3→「無効」)、有効/無効判定部122は、「無効」と判定された評価データ(=運転データ101)を無効データ記憶部125に格納する(S11)。なお、無効データ記憶部125に格納された評価データ(=運転データ101)を無効データと適宜称する。また、運転データ101から抽出された入力ベクトル及び出力ベクトルが無効データ記憶部125に格納されてもよい。なお、ステップS11の処理は省略可能である。ステップS11の処理が省略される場合、無効データ記憶部125も省略可能である。
そして、追加判定部127は、無効データの量が一定量に達したか否かを、例えば所定時間毎に判定する(S12)。所定時間は、1週間あるいは1ヶ月等である。なお、ステップS12は、前の学習データの追加から一定時間(例えば、1週間や、1ヶ月)が経過したかの判定でもよい。
ステップS12の結果、無効データの量が一定量に達していない場合(S12→No)、異常診断装置1はステップS1へ処理を戻す。
【0039】
ステップS12の結果、無効データの量が一定量に達している場合(S12→Yes)、追加判定部は追加可否判定を行う(S13)。追加可否判定では、追加判定部127が特性データ記憶部119Aに格納されている特性データと、無効データとを比較する。そして、追加判定部127は、比較の結果を基に、それぞれの無効データについて、学習データ記憶部118への追加の可否を判定する。つまり、追加判定部127では、無効データが空気調和機2や、機器4の学習データ記憶部118に保存された学習データが持つ所定の特性を満たしているかを判定する。一定量蓄積された無効データのうち、特性を満たしているものは学習データ記憶部118に追加可能、満たさない場合は学習データ記憶部118に追加不可となる。
【0040】
(追加可否判定)
ここで、図5を参照して、図4のステップS13における追加可否判定の手法の一例について説明する。
図5は、図4のステップS13における追加可否判定の手法の一例を示す図である。
特性作成部119では、学習データから所定の学習データを2つ以上抽出し、その相関から特性データを作成する。この特性データは、運転条件に関わる学習データで作成される。
図5では、作成する特性データの一例として、運転条件相当指標、及び、出力相当指標の学習データを抽出し、その相関を2次元グラフに表示している。この2次元グラフを特性グラフと称する。運転条件相当指標は、例えば、空気調和機2の設定温度等であり、出力相当指標は、例えば、空気調和機2によって冷却された室内温度である。なお、特性グラフの座標軸に、何を選択するかについては、ユーザによって決定される。
【0041】
また、図5において、黒丸M1は学習データ記憶部118に格納済みの学習データを示す。そして、×印M2は無効データ記憶部125に格納されている無効データであり、追加判定部127の判定に応じて、これから学習データとして学習データ記憶部118に追加予定のデータである。
一般に実際の機器4(空気調和機2)における運転データ101は、誤差や、抽出したセンサデータ以外の運転条件の違い等で、最小二乗法等から求められる近似線からある程度の幅をもって分散した傾向を持つ。ここではこの幅を考慮し、運転条件相当指標の増加に対して出力相当指標の上限の傾向を特徴とした。
【0042】
以下、このことを具体的に説明する。
ここで、線L1は黒丸M1で示す無効データに対して最小二乗法で求められる近似線を示している。また、線L21は、線L1に対して+σの値を有する直線を示し、線L22は、線L1に対して-σの値を有する直線を示す。ここで、σは標準偏差である。なお、ここでは、線L21,L22を最小二乗法で求められる近似線(線L1)に対して、±σの値を有する直線としているが、これに限らない。例えば、線L1に対して±2σとしたり、±(σ+C)(Cは所定の定数)としたり、これまでの経験から求められる値を基にしたりして線L21,L22が決定されてもよい。
【0043】
なお、図5における2つの座標軸、黒丸M1で示す無効データ、線L1,L21、L22が特性データとなる。
【0044】
追加判定部127は、一定量蓄積された無効データから運転条件相当指標と出力相当指標の無効データを抽出し(×印M2)、その無効データの相関が、既存の学習データの特性を満たしていれば「追加可能」と判定する。また、無効データの相関が、既存の学習データの特性を満たしていなければ、追加判定部202は「追加不可」と判定する。そして、学習データ追加部126は、「追加可能」と判定された無効データを、新たな学習データとして、学習データ記憶部118に追加格納する。
【0045】
具体的には、図5における線21より上の領域(ドットで示される領域)が追加不可領域A1として設定される。また、図5における線21より下の領域(ドットで示される領域以外の領域)が追加可能領域A2として設定される。そして、×印M2で示される無効データのうち、追加不可領域A1に属する無効データ(×印M21)は、既存の学習データの特性から外れているため、追加判定部202は学習データとして不適と判定する。すなわち、追加判定部202は、×印M21で示される無効データを「追加不可」と判定する。これは、追加不可領域A1に属する無効データ(×印M21)は、劣化等が原因で、異常な値となっていることが考えられるためである。
【0046】
対して、×印M2で示される無効データのうち、追加不可領域A1以外(追加可能領域A2)に属する無効データ(×印M22)は、既存の学習データの特性の範囲内に存在するため、学習データとして適切と判定する。すなわち、追加判定部127は、×印M22で示される無効データを学習データ記憶部118に追加可能と判定する。
【0047】
なお、本実施形態では、図5において、線L1より上の領域を追加不可領域A1としているが、これに限らない。図5において線L2より下の領域を追加不可領域A1としてもよいし、線L1より上の領域と、線L2より下の領域との双方を追加不可領域A1としてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、最小二乗法で求められる近似線(線L1)に対する学習データ記憶部118に格納済みの学習データ(黒丸M1)の標準偏差を基に追加不可領域A1及び追加可能領域A2が設定されている。しかし、これに限らず、例えば、クラスタ分析によって追加可能領域A2が設定され、追加可能領域A2以外の領域が追加不可領域A1として設定されてもよい。
【0049】
なお、ステップS13で行われる判定は式と座標とに基づいて行われてもよいし、画像に基づいて判定されてもよい。画像に基づいて判定されるとは、図5に示すような座標、プロット状況、追加不可領域A1、追加可能領域A2の画像を基に、×印M21で示される無効データが追加不可領域A1の内部にあるか、追加可能領域A2の内部にあるかを追加判定部127が判定することである。つまり、追加判定部127で印M21で示される無効データと比較しやすいものであれば、判定の形式は問われない。また、より詳細に判定したい場合は、2つ以上の特性データが用いられてもよい。つまり、追加判定部127は、複数の特性データを基に追加可否判定を複数回行うことも可能である。この場合、すべての追加可否判定で「追加可能」と判定された無効データを学習データ記憶部118に追加することも可能であるし、所定回数「追加可能」と判定された無効データを学習データ記憶部118に追加することも可能である。
【0050】
図4の説明へ戻る。
ステップS13の結果、学習データ追加部126は、追加可能と判定された無効データを学習データ記憶部118の学習データとして追加する(S14)。追加可能と判定された無効データとは、図5において追加可能領域A2にプロットされている×印M22で示されるデータである。
【0051】
そして、報知部123はユーザに対して学習データ記憶部118に学習データを追加する旨を報知する(S21)。
次に、特性作成部119は、以前、特性データを作成してから所定時間経過したか否かを判定する(S22)。
ステップS22の結果、所定時間経過していない場合(S22→No)、異常診断装置1はステップS1へ処理を戻す。
ステップS22の結果、所定時間経過している場合(S22→Yes)、特性作成部119は、学習データ記憶部118に格納されている学習データを基に特性データを作成する(S23)。特性作成部119は作成した特性データを特性データ記憶部119Aに格納する。その後、異常診断装置1はステップS1へ処理を戻す。
なお、ステップS22の処理は省略可能である。
【0052】
[ハードウェア構成]
図6は、異常診断装置1のハードウェア構成を示す図である。
異常診断装置1は、メモリ301、CPU(Central Processing Unit)302、HD(Hard Disk)等の記憶装置303、通信装置304を有する。
通信装置312は、空気調和機2や、機器4や、評価データ記憶部102との通信を行う。
また、記憶装置303に格納されているプログラムがメモリ301にロードされ、CPU302によって実行される。これによって、図2に示す学習・異常判定部110及び追加学習部120と、学習・異常判定部110及び追加学習部120を構成する各部111~119,121~127が具現化する。
そして、記憶装置303は、図2の学習データ記憶部118、データ種別記憶部124、無効データ記憶部125を含む。
【0053】
なお、本実施形態では、学習データ追加部126による処理(S13)において、運転データ101をすでに蓄積されていた学習データに合わせて格納するとしているが、これに限らない。例えば、追加される学習データが、すでに格納されていた学習データに対して大幅に変化した場合、学習データ追加部126は、すでに蓄積されていた学習データを消去してから、追加の学習データを学習用データベース6へ格納してもよい。あるいは、特開2013-25367号公報に記載されている手法で、学習データ記憶部118が更新されてもよい。
【0054】
本実施形態の異常診断装置1は、異常判定された場合において、その運転データ101の種別が運転条件である場合、無効データ記憶部125に運転データ101を格納している。前記したように、これは、これまでとは異なる運転条件であるため、誤って異常判定された可能性があることを示している。言い換えれば、異常診断装置1は運転条件の変化を検出しているといえる。つまり、異常診断装置1は、診断対象の空気調和機2の運転条件が変化したことを検出し、運転条件が変化したときに学習データの追加のための運転データ101を蓄積している。これによって、追加学習に必要な運転データ101を蓄積することができる。
【0055】
さらに、本実施形態の異常診断装置1は、前記したように、運転条件の変化にともない、異常判定の基準となる学習データを追加することができる。つまり、異常診断装置1は、診断運用を開始する前に学習データを一定期間収集した後、実際の診断運用を開始する。
これにより、必ずしも診断の運用開始時において、診断対象の機器4で想定されるすべての運転条件に対する学習データがなくてもよい。つまり、後から学習データを追加することがあるため、すべての運転条件(例えば、春夏秋冬にわたって)にわたって、最初に学習データを収集する必要がない。つまり、運転データ101の異常を判定するための学習データは、例えば、四季のうちの、夏の間だけのように、一部の運転条件下で作成された後、診断を運用開始できる。そして、評価データ(運転データ101)が、運転条件から外れた場合に学習データが追加される。このため、本実施形態の異常診断装置1は、異常診断を開始できる時期を早めることができる。すなわち、異常診断ができない期間を短縮することができる。また、本実施形態によれば、診断運用開始時における学習データのデータ量を少なくすることができる。
【0056】
また、本実施形態の異常診断装置1は、前記したように、追加学習する無効データが学習データの特性と一致することを判定した後、追加する構成としている。これにより、学習データに劣化等が原因で不適切なデータが混入することを抑制して学習データを追加することができるので、精度よく異常診断することができる。
【0057】
そして、本実施形態では、無効データ記憶部125に一定量の無効データが蓄積された後、追加判定部127によって無効データを学習データとして追加するか否かの追加可否判定(図4のステップS13)が行われる。これによって、絶えず、無効データを学習データとして追加するか否かの判定が行われることがなくなるので、処理負荷を軽減することができる。
【0058】
また、本実施形態では、無効データを学習データとして追加するか否かの判定に用いられる特性データには、学習データ記憶部118に格納されている学習データのうち、一部が特性データに用いられる。このようにすることによって、図4のステップS13における追加可否判定の処理負荷を軽減することができる。
【0059】
そして、本実施形態では、図4のステップS23に示されるように、新たに無効データが追加された学習データ記憶部118に格納されている学習データを用いて、特性データが新たに作成される。これによって、図4のステップS13における追加可否判定の精度を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態では、学習データ記憶部118に学習データの追加が行われる場合、その旨がユーザに通知される。これにより、ユーザは学習データ記憶部118に格納されている学習データが変化したことを認識することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、必要に応じて(運転条件が変化した際に)学習データが追加されている。しかし、これに限らず、運転データ101の種別は、機器4の方式によりほぼ一意的に決まるものである。従って、すでに診断を開始している同種の機器4から、新たに診断を開始する機器4に学習データを適用することも可能である。これにより、異常診断を開始できる時期をさらに早めることができる。
さらに、本実施形態によれば、学習データ(入力ベクトル・出力ベクトル)の追加が可能であるので、異常判定の精度を向上させることができる。つまり、予兆診断の精度を向上させることができる。
【0062】
本実施形態の異常診断装置1は、前記したように運転条件の変化に基づいて、異常診断の基準となる学習データを追加する。従って、診断運用開始時において、未知の異常状態に対しても、時間が経過するに従って異常状態であると診断することができるようになる。これによって、ユーザが診断の対象の機器4に関する知識が少ない場合であっても異常診断を精度良く、かつ、容易に行うことができる。
【0063】
また、本実施形態の異常診断装置1では、運転データ101の種別を予め分類しておき、取得した運転データ101の種別が性能のときのみ報知する。これによって、迅速な保守作業の開始が可能となる。
【0064】
また、本実施形態によれば、機器4の運転条件の変化による異常の誤検出を防ぐことができる。つまり、種別が運転条件の運転データ101において、運転条件が変化したことで、本来、機器4そのものに異常が発生したわけではないのに、異常と判定されることを防ぐことができる。このようにすることで、運転データ101に対して、単に閾値を設けることにより異常を判断する場合と比べて、さらに詳細な判定を行うことができる。これにより、保守作業の精度を向上させ、保守作業の効率性を向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、無効と判定された運転データ101を無効データ記憶部125に一定量蓄積した後、学習データの追加可否判定を行っている。このようにすることで、学習データの追加処理を常に行う必要がなく、効率的な処理を行うことができる。
【0066】
また、本実施形態では、学習・異常判定部110の構成は、特開2013-25367号公報に記載のものと同様の構成を有している。しかし、運転データ101の学習、及び、この学習を基に運転データ101の異常判定を行うものであれば、特開2013-25367号公報に記載のものと同様の構成でなくてもよい。
【0067】
さらに、本実施形態は、学習手法として特開2013-25367号公報に記載の手法が用いられているが、クラスタリング等、その他の機械学習が適用されてもよい。
【0068】
本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を有するものに限定されるものではない。
【0069】
また、前記した各構成、機能、各部110~116,121~123,126、各記憶部102,118,124~125等は、それらの一部またはすべてを、例えば集積回路で設計すること等によりハードウェアで実現してもよい。また、前記した各構成、機能等は、図示しないCPU等のプロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、HDに格納すること以外に、メモリや、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、IC(Integrated Circuit)カードや、SD(Secure Digital)カード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に格納することができる。
【0070】
また、本実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんどすべての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0071】
1 異常診断装置
2 空気調和機
3 制御装置(機器)
4 機器
101 運転データ(新規運転データ)
116 異常判定部
118 学習データ記憶部(学習データ)
119 特性作成部(追加可能領域作成部)
121 データ種別特定部
122 有効/無効判定部
123 報知部
124 データ種別記憶部
125 無効データ記憶部(データ記憶部)
126 学習データ追加部
127 追加判定部
A2 追加可能領域
S1 異常判定処理(異常判定ステップ)
S2 種別判定(種別判定ステップ)
S14 追加可能な無効データを追加(追加格納ステップ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6