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特許7545822封止用樹脂シート、封止用多層樹脂シートおよび電子素子パッケージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】封止用樹脂シート、封止用多層樹脂シートおよび電子素子パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20240829BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240829BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H01L23/30 R
H01L23/28 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020117104
(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公開番号】P2021015974
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2019130148
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】大原 康路
(72)【発明者】
【氏名】飯野 智絵
(72)【発明者】
【氏名】土生 剛志
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-098300(JP,A)
【文献】特開2018-006482(JP,A)
【文献】特開2012-028484(JP,A)
【文献】特開2008-177432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 23/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂を含有し、素子を封止するための封止用樹脂シートであり、
下記の<試験1>により求めれる第1進入長さX1、および、下記の<試験2>により求められる第2進入長さX2が、下記式(1)を満足することを特徴とする、封止用樹脂シート。
X1-X2≦30μm (1)
<試験1>
ステップA:前記封止用樹脂シートから、縦10mm、横10mm、厚み260μmのサンプルシートを形成する。
ステップB:縦3mm、横3mm、厚み200μmのダミー素子が、厚みT50μmのバンプを介してガラス基板に実装されたダミー素子実装基板を準備する。
ステップC:前記サンプルシートによって、前記ダミー素子実装基板における前記ダミー素子を、真空平板プレスにより、温度65℃、圧力0.1MPa、真空度1.6kPa、プレス時間1分で封止して、前記サンプルシートから封止体を形成する。
ステップD:前記ステップCの後に、前記封止体を、150℃、大気圧下、1時間加熱により熱硬化させて、前記封止体から硬化体を形成する。
ステップE:前記ステップDの後に、前記ダミー素子の側端縁を基準として、前記側端縁から前記ダミー素子と前記ガラス基板との間の間に前記硬化体が進入する前記第1進入長さX1を測定する。
<試験2>
前記バンプの厚みTを50μmから20μmに変更する以外は、前記試験1と同様にステップBを実施し、続いて、前記ステップC~前記ステップEを実施して、前記硬化体が前記隙間に進入する前記第2進入長さX2を実施する。
【請求項2】
前記第1進入長さX1が、50μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の封止用樹脂シート。
【請求項3】
前記素子は、基板に実装され、前記基板に対して厚み方向長さが互いに異なる複数の隙間が隔てられており、
前記素子は、第1素子および第2素子を含み、
前記複数の隙間は、
前記第1素子および前記基板の間に位置する第1隙間と、
前記第2素子および前記基板の間に位置し、前記第1隙間より厚み方向長さが短い第2隙間とを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の封止用樹脂シート。
【請求項4】
前記素子は、基板に実装され、前記基板に対して厚み方向長さが互いに異なる複数の隙間が隔てられており、
前記基板は、絶縁板と、前記絶縁板の一方面に配置される端子とを備え、
前記複数の隙間は、
前記素子および前記絶縁板の間に位置する第1隙間と、
前記素子および前記端子の間に位置する第2隙間とを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の封止用樹脂シート。
【請求項5】
前記素子を封止するときに、前記封止用樹脂シートが前記素子に接触する請求項1~4に記載の封止用樹脂シートと、
前記素子を封止するときに、前記封止用樹脂シートに対して前記素子の反対側に位置し、熱硬化性樹脂を含有する第2封止用樹脂シートと
を厚み方向に順に備えることを特徴とする、封止用多層樹脂シート。
【請求項6】
厚み方向における一方面を有する基板と、
前記基板の前記一方面に実装され、前記基板の前記一方面に対して第1隙間T1が隔てられる第1電子素子と、
前記基板の前記一方面に実装され、前記基板の前記一方面に対して、前記第1隙間T1より狭い第2隙間T2が隔てられる第2電子素子と、
前記基板の前記一方面に配置され、前記第1電子素子と前記第2電子素子とを封止する、請求項1~4のいずれか一項に記載の封止用樹脂シートの硬化体と、
を備えることを特徴とする、電子素子パッケージ。
【請求項7】
厚み方向における一方面を有する基板と、
前記基板の前記一方面に実装され、前記基板の前記一方面に対して第1隙間T1が隔てられる第1電子素子と、
前記基板の前記一方面に実装され、前記基板の前記一方面に対して、前記第1隙間T1より狭い第2隙間T2が隔てられる第2電子素子と、
前記基板の前記一方面に配置され、前記第1電子素子と前記第2電子素子とを封止する、請求項5に記載の封止用多層樹脂シートの硬化体と、
を備えることを特徴とする、電子素子パッケージ。
【請求項8】
前記第2隙間T2に対する前記第1隙間T1の比(T1/T2)の下限は、1.1であることを特徴とする、請求項6または7に記載の電子素子パッケージ。
【請求項9】
前記第2隙間T2に対する前記第1隙間T1の比(T1/T2)の上限は、100であることを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載の電子素子パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂シートおよび封止用多層樹脂シート、詳しくは、封止用樹脂シート、および、それを備える封止用多層樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱硬化性樹脂を含む封止用シートを用いて、基板に隙間を隔てて実装される素子を、プレスにより封止し、その後、熱硬化性樹脂を熱硬化させて、封止用シートから硬化体を形成することが知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-162909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器の高機能化に伴い、素子の小型化が要求されている。それに伴い、硬化体に対しても、硬化時の寸法精度の向上が要求されている。具体的には、封止用シートには、素子の側端縁から、素子および基板間の隙間に進入する硬化体の進入長さを揃えて(近似させて)、素子の特性への影響を精度よくコントロールすることが求められる。
【0005】
また、隙間の端縁を確実に閉塞して、素子への封止性を向上させることも求められる。
【0006】
そして、進入長さは、基板および素子の隙間の厚み(厚み方向長さ)によって、通常、相違する。
【0007】
例えば、第1隙間と、それより薄い(狭い)第2隙間とがある場合には、第1隙間における進入長さは、第2隙間における進入長さより、長い傾向にある。
【0008】
そのため、第2隙間における硬化体の進入長さを抑制できるように、封止用シートの組成を調整しても、第1隙間における硬化体の進入長さを抑制できず、第1隙間に対応する素子、および、第2隙間に対応する素子の特性への影響を精度よくコントロールできないという不具合がある。
【0009】
一方、第1隙間における硬化体の進入長さを抑制できるように、封止用シートの組成を調整すれば、第2隙間における硬化体の進入長さを十分に抑制できる。しかし、この場合には、硬化時の封止用シートの流動性が極端に低下するため、第2隙間の端縁を確実に閉塞できず、第2隙間に対応する素子に対する封止性が低減するという不具合がある。
【0010】
本発明は、基板に対して厚み方向長さが互いに異なる複数の隙間に対する進入長さを近似させながら、それらに対応する素子に対する封止性にも優れる封止用樹脂シートおよび封止用多層樹脂シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明[1]は、熱硬化性樹脂を含有し、素子を封止するための封止用樹脂シートであり、熱硬化性樹脂を含有し、下記の<試験1>により求めれる第1進入長さX1、および、下記の<試験2>により求められる第2進入長さX2が、下記式(1)を満足する、封止用樹脂シートを含む。
【0012】
X1-X2≦30μm (1)
<試験1>
ステップA:前記封止用樹脂シートから、縦10mm、横10mm、厚み260μmのサンプルシートを形成する。
ステップB:縦3mm、横3mm、厚み200μmのダミー素子が、厚みT50μmのバンプを介してガラス基板に実装されたダミー素子実装基板を準備する。
ステップC:前記サンプルシートによって、前記ダミー素子実装基板における前記ダミー素子を、真空平板プレスにより、温度65℃、圧力0.1MPa、真空度1.6kPa、プレス時間1分で封止して、前記サンプルシートから封止体を形成する。
ステップD:前記ステップCの後に、前記封止体を、150℃、大気圧下、1時間加熱により熱硬化させて、前記封止体から硬化体を形成する。
ステップE:前記ステップDの後に、前記ダミー素子の側端縁を基準として、前記側端縁から前記ダミー素子と前記ガラス基板との間の前記隙間に前記硬化体が進入する前記第1進入長さX1を測定する。
<試験2>
前記バンプの厚みTを50μmから20μmに変更する以外は、前記試験1と同様にステップBを実施し、続いて、前記ステップC~前記ステップEを実施して、前記硬化体が前記隙間に進入する前記第2進入長さX2を実施する。
【0013】
本発明[2]は、前記第1進入長さX1が、50μm以下である、[1]に記載の封止用樹脂シートを含む。
【0014】
本発明[3]は、前記素子は、基板に実装され、前記基板に対して厚み方向長さが互いに異なる複数の隙間が隔てられており、前記素子は、第1素子および第2素子を含み、前記複数の隙間は、前記第1素子および前記基板の間に位置する第1隙間と、前記第2素子および前記基板の間に位置し、前記第1隙間より厚み方向長さが短い第2隙間とを含む、[1]または[2]に記載の封止用樹脂シートを含む。
【0015】
本発明[4]は、前記素子は、基板に実装され、前記基板に対して厚み方向長さが互いに異なる複数の隙間が隔てられており、前記基板は、絶縁板と、前記絶縁板の一方面に配置される端子とを備え、前記複数の隙間は、前記素子および前記絶縁板の間に位置する第1隙間と、前記素子および前記端子の間に位置する第2隙間とを含むことを特徴とする、[1]または[2]に記載の封止用樹脂シートを含む。
【0016】
本発明[5]は、前記素子を封止するときに、前記封止用樹脂シートが前記素子に接触する[1]~[4]のいずれか一項に記載の封止用樹脂シートと、前記素子を封止するときに、前記封止用樹脂シートに対して前記素子の反対側に位置し、熱硬化性樹脂を含有する第2封止用樹脂シートとを厚み方向に順に備える、封止用多層樹脂シートを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明の封止用樹脂シートおよび封止用多層樹脂シートは、第1進入長さX1および第2進入長さX2が式(1)(X1-X2≦30μm)を満足する。そのため、封止用樹脂シートおよび封止用多層樹脂シートは、基板に対して厚み方向長さが互いに異なる複数の隙間への硬化体の進入長さを揃え(近似させ)ることができ、素子への特性の影響を精度よくコントロールできながら、素子に対する封止性に優れる。従って、本発明の封止用樹脂シートおよび封止用多層樹脂シートを、厚み方向長さが異なる隙間に対応する素子に配置し、これを加熱して硬化体を形成するときに、これらの隙間への硬化体の進入量を制御して、素子を封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1A図1Dは、封止用樹脂シート、および、それを含む封止用多層樹脂シートから第1進入長さX1を測定するステップ図であり、図1Aが、サンプルシートを形成するステップA、図1Bが、基板との間隔Tが50μmであるダミー素子を準備するステップB、図1Cが、サンプルシートおよびダミー素子をプレスして封止体を形成するステップC、図1Dが、封止体を加熱して硬化体を形成するステップDを示す。
図2図2A図2Dは、封止用樹脂シート、および、それを含む封止用多層樹脂シートから第2進入長さX2を測定するステップ図であり、図2Aが、サンプルシートを形成するステップA、図2Bが、基板との間隔Tが20μmであるダミー素子を準備するステップB、図2Cが、サンプルシートおよびダミー素子をプレスして封止体を形成するステップC、図2Dが、封止体を加熱して硬化体を形成するステップDを示す。
図3図3A図3Dは、封止用樹脂シート、および、封止用多層樹脂シートの第2実施形態を用いて、基板との間隔(T1、T2)が異なる複数の電子素子を封止して、電子素子パッケージを製造する工程図であり、図3Aが、封止用樹脂シートを準備する工程、図3Bが、厚みが異なる複数の電子素子を準備する工程、図3Cが、封止用樹脂シートおよび複数の電子素子をプレスして封止体を形成する工程、図3Dが、封止体を加熱して硬化体を形成する工程を示す。
図4図4A図4Dは、図3A図3Dの一実施形態の変形例の工程断面図であり、図4Aが、電極への距離、および、基板への異なる距離を形成する他方面を有する電子素子を準備する工程、図4Bが、封止用樹脂シートおよび封止用多層樹脂シートを、複数の電子素子に配置する工程、図4Cが、これらをプレスして封止体を形成する工程、図4Dが、封止体を加熱して硬化体を形成する工程を示す。
図5図5は、図4Aに示す電子素子を備える素子実装基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<封止用樹脂シートの一実施形態>
本発明の封止用樹脂シートおよび封止用多層樹脂シートの一実施形態を順に説明する。
【0020】
封止用樹脂シートは、素子(図3B図4A参照)を封止するための樹脂シートである。より具体的には、封止用樹脂シートは、基板に実装され、基板に対する複数の隙間を有し、隙間の厚み方向長さ(以下、単に厚みという場合がある)が異なる素子(図3B図4A参照)を封止するための樹脂シートである。封止用樹脂シートは、熱硬化性樹脂を含有する。
【0021】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。これらは、単独または2種以上併用することができる。
【0022】
熱硬化性樹脂として、好ましくは、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、後の封止用樹脂シートの製造方法で詳述する。
【0023】
なお、熱硬化性樹脂は、完全硬化前(BステージまたはAステージを含む)、および、完全硬化後(Cステージ)のいずれでもよい。好ましくは、完全硬化前、より好ましくは、Bステージである。
【0024】
[第1進入長さおよび第2進入長さ]
この封止用樹脂シートは、下記の<試験1>および<試験2>のそれぞれを実施し、<試験1>により求めれる第1進入長さX1、および、下記の<試験2>により求められる第2進入長さXは、下記式(1)を満足する。
【0025】
X1-X2≦30μm (1)
<試験1>
ステップA:図1Aに示すように、封止用樹脂シートから、縦10mm、横10mm、厚み260μmのサンプルシート61を形成する。
【0026】
ステップB:図1Bに示すように、縦3mm、横3mm、厚み200μmのダミー素子71が、厚みT50μmのバンプ23を介してガラス基板72に実装されたダミー素子実装基板74を準備する。
【0027】
ステップC:図1Cに示すように、サンプルシート61によって、ダミー素子実装基板74におけるダミー素子71を、真空平板プレスにより、温度65℃、圧力0.1MPa、真空度1.6kPa、プレス時間1分で封止して、サンプルシート61から封止体31を形成する。
【0028】
ステップD:図1Dに示すように、ステップCの後に、封止体31を、150℃、大気圧下、1時間加熱により熱硬化させて、封止体31から硬化体41を形成する。
【0029】
ステップE:図1Dの拡大図に示すように、ステップDの後に、ダミー素子71の側端縁75を基準として、側端縁75からダミー素子71とガラス基板72との隙間26に硬化体41が進入する第1進入長さX1を測定する。
【0030】
<試験2>
図2A図2Dに示すように、バンプ23の厚みTを50μmから20μmに変更(薄く)する以外は、上記試験1と同様にステップBを実施し、続いて、ステップC~ステップEを実施して、側端縁75からの硬化体41が進入する第2進入長さX2を測定する。
【0031】
<試験1および試験2の各ステップの詳細>
図1Aおよび図2Aに示すように、ステップAにおいて、試験1および試験2のいずれにおいても、サンプルシート61は、封止用樹脂シートを上記サイズにカットして準備する。
【0032】
図1Bおよび図2Bに示すように、ステップBにおいて、試験1および試験2のいずれにおいても、ダミー素子71は、面方向に延びる略平板形状(チップ形状)を有する。
【0033】
図1Bおよび図2Bに示すように、試験1および試験2のいずれにおいても、ガラス基板72は、面方向に延びる略平板形状を有する。
【0034】
試験1および試験2のいずれにおいても、バンプ23は、ダミー素子71の厚み方向他方面28と、ガラス基板72の厚み方向一方面25に間に配置される。
【0035】
図1Bに示すように、試験1では、バンプ23の厚みTは、50μmである。試験1において、厚み方向に投影したときに、バンプ23と重複しない領域では、ダミー素子71の厚み方向他方面28と、ガラス基板72の厚み方向一方面25との間には、上記したバンプ23の厚みT50μmと同一サイズの隙間26が隔てられる。
【0036】
図2Bに示すように、試験2では、バンプ23の厚みは、20μmである。試験2において、厚み方向に投影したときに、バンプ23と重複しない領域では、ダミー素子71の厚み方向他方面28と、ガラス基板72の厚み方向一方面25との間には、上記したバンプ23の厚みT20μmと同一サイズの隙間26が隔てられる。
【0037】
図1Cおよび図2Cに示すように、ステップCにおいて、2つの平板を備えるプレス27により、サンプルシート61およびダミー素子実装基板74をセットして、それらをプレスする。
【0038】
ステップDでは、サンプルシート61における熱硬化性樹脂が熱硬化(完全硬化、Cステージ化)する。
【0039】
ステップEでは、側端縁75は、面方向に隣接するダミー素子71の内側端縁を含む。
<差(X1-X2)>
<試験1>により求めれる第1進入長さX1(図1D参照)、および、下記の<試験2>により求められる第2進入長さX2(図2D参照)が、下記式(1)を満足する。
【0040】
X1-X2≦30μm (1)
X1-X2(差)が30μmを上回れば、第2進入長さX2が、第1進入長さX1より、顕著に短くなる。つまり、第2進入長さX2と、第1進入長さX1とを揃えることができない。
【0041】
この場合には、少なくとも、第2進入長さX2そのものが過度に短い場合(1)と、第2進入長さX2が過度に短くなくても、第1進入長さX1が過度に長い場合(2)とを含む。
【0042】
場合(1)では、封止用樹脂シート1の材料(熱硬化性樹脂組成物)の処方が極端に流動性が低い。そのため、図2Dの拡大図における仮想線で示すように、隙間26の外側において硬化体41が形成(充填)されない第2隙間(未充填部分)が大きく形成され、そのため、電子に対する封止性が低減してしまう。
【0043】
一方、場合(2)では、例えば、素子の厚み方向他方面に設けられる電極(図示せず)に硬化体41が接触することに起因する素子の機能への影響が大きくなってしまう。つまり、素子への影響を精度よくコントロールできない。
【0044】
X1-X2(差)の上限は、好ましくは、27μm、より好ましくは、26μm、さらに好ましくは、25μm、とりわけ好ましくは、20μm、最も好ましくは、15μmであり、さらには、15μm、10μm、5μmが好適である。
【0045】
他方、X1-X2(差)の下限は、例えば、0μmである。通常、隙間26の間隔Tが50μmである試験1、および、隙間26の間隔Tが20μmである試験2のうち、試験1は、試験2より、隙間への間口(隙間の端縁)が広い。そのため、X1-X2(差)は、通常、0μm未満とならず、下記式(2)を満足する。
0≦X1-X2≦30μm (2)
X1-X2(差)の下限は、好ましくは、1μmであり、また、好ましくは、3μmである。
【0046】
なお、この一実施形態では、第2進入長さX2および/または第1進入長さX1が、正数、負数のいずれをも含む。
【0047】
なお、第2進入長さX2が負数ということは、ダミー素子71の側端縁75より外側に突出する空間(図2Dの太い破線参照)が形成されることを意味する。第1進入長さX1が負数である場合には、上記した第2進入長さX2が負数である場合と同様である。
【0048】
好ましくは、第2進入長さX2および第1進入長さX1のいずれも正数である。第2進入長さX2および第1進入長さX1のいずれも正数であれば、隙間26の外側において未充填部分が形成されないので、素子に対する封止性に優れる。
【0049】
具体的には、第1進入長さX1の上限は、例えば、100μm、好ましくは、90μm、より好ましくは、75μm、さらに好ましくは、55μm、とりわけ好ましくは、50μm、最も好ましくは、40μmであり、さらには、30μm、20μm、10μmが好適である。
【0050】
第1進入長さX1が上記した上限以下であれば、異なる隙間のいずれに対しても、硬化体の進入を抑制でき、いずれの素子への影響も確実に抑制できる。
【0051】
なお、第2進入長さX2の具体的な上限および下限は、上記した第1進入長さX1とともに上記式(1)を満足するように設定されていれば、特に限定されない。
【0052】
<封止用樹脂シートの製造方法>
封止用樹脂シートを調製するには、まず、熱硬化性樹脂を準備する。好ましくは、熱硬化性樹脂および層状ケイ酸塩化合物を含有する熱硬化性樹脂組成物を調製する。
【0053】
熱硬化性樹脂の好適な例であるエポキシ樹脂は、主剤、硬化剤および硬化促進剤を含有するエポキシ樹脂組成物として調製される。
【0054】
主剤としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などの2官能エポキシ樹脂、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂などの3官能以上の多官能エポキシ樹脂などが挙げられる。これら主剤は、単独で使用または2種以上を併用することができる。主剤として、好ましくは、2官能エポキシ樹脂、より好ましくは、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0055】
主剤のエポキシ当量の下限は、例えば、10g/eq.、好ましくは、100g/eq.である。主剤のエポキシ当量の上限は、例えば、300g/eq.、好ましくは、250g/eq.である。
【0056】
主剤の軟化点の下限は、例えば、50℃、好ましくは、70℃、より好ましくは、72℃、さらに好ましくは、75℃である。主剤の軟化点の上限は、例えば、130℃、好ましくは、110℃、より好ましくは、90℃である。
【0057】
主剤の軟化点が上記した下限以上であれば、図2Cに示す工程において、封止用樹脂シート1が流動できる。従って、図2Cに示す工程の時間短縮、および、図2Cに示す工程における封止用樹脂シート1の厚み方向一方面を平坦にできる。
【0058】
硬化剤は、加熱によって、上記した主剤を硬化させる潜在性硬化剤である。硬化剤としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂などのフェノール樹脂が挙げられる。硬化剤がフェノール樹脂であれば、フェノール樹脂が主剤とともに、それらの硬化体が、高い耐熱性と高い耐薬品性とを有する。従って、硬化体は、封止信頼性に優れる。
【0059】
硬化促進剤は、加熱によって、主剤の硬化を促進する触媒(熱硬化触媒)である。硬化促進剤としては、例えば、有機リン系化合物、例えば、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ-PW)などのイミダゾール化合物などが挙げられる。好ましくは、イミダゾール化合物が挙げられる。
【0060】
熱硬化性樹脂組成物(固形分)(図1Aおよび図2Aに示す封止用樹脂シート1に相当)における熱硬化性樹脂(好ましくは、エポキシ樹脂組成物)の含有割合の下限は、例えば、5質量%、好ましくは、15質量%、より好ましくは、17質量%である。熱硬化性樹脂組成物(固形分)における熱硬化性樹脂(好ましくは、エポキシ樹脂組成物)の含有割合の上限は、例えば、30質量%、好ましくは、25質量%、より好ましくは、20質量%、さらに好ましくは、18質量%である。
【0061】
熱硬化性樹脂組成物における主剤の割合の下限は、例えば、1質量%、好ましくは、3質量%、より好ましくは、10質量%である。熱硬化性樹脂組成物における主剤の割合の上限は、例えば、30質量%、好ましくは、15質量%、より好ましくは、12.5質量%である。エポキシ樹脂組成物における主剤の割合の下限は、例えば、30質量%、好ましくは、50質量%である。エポキシ樹脂組成物における主剤の割合の上限は、例えば、80質量%、好ましくは、70質量%である。
【0062】
硬化剤の割合は、下記の当量比となるように設定される。具体的には、主剤中のエポキシ基1当量に対する、フェノール樹脂中の水酸基の合計の下限が、例えば、0.7当量、好ましくは、0.9当量である。主剤中のエポキシ基1当量に対する、フェノール樹脂中の水酸基の合計の上限が、例えば、1.5当量、好ましくは、1.2当量である。具体的には、主剤100質量部に対する硬化剤の含有部数の下限は、例えば、20質量部、好ましくは、40質量部である。主剤100質量部に対する硬化剤の含有部数の上限は、例えば、80質量部、好ましくは、60質量部である。
【0063】
主剤100質量部に対する硬化促進剤の含有部数の下限は、例えば、0.05質量部である。主剤100質量部に対する硬化促進剤の含有部数の上限は、例えば、5質量部である。
【0064】
層状ケイ酸塩化合物は、封止用樹脂シートから封止体および硬化体(後述)を順に形成するときの流動調整剤である。具体的には、封止用樹脂シートを加熱して硬化体を形成するときに、硬化体の流動性を低減する、硬化時流動低減剤である。
【0065】
層状ケイ酸塩化合物は、例えば、二次元(面方向に)に広がった層が、厚み方向に積み重なった構造(三次元構造)を有するケイ酸塩であって、フィロケイ酸塩と呼称される。
【0066】
具体的には、層状ケイ酸塩化合物としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイトなどのスメクタイト、例えば、カオリナイト、例えば、ハロイサイト、例えば、タルク、例えば、マイカなどが挙げられる。層状ケイ酸塩化合物として、好ましくは、スメクタイトが挙げられ、より好ましくは、モンモリロナイトが挙げられる。
【0067】
層状ケイ酸塩化合物は、表面が変性されていない未変性物であってもよく、また、表面が有機成分により変性された変性物でもよい。好ましくは、熱硬化性樹脂との優れた親和性を得る観点から、層状ケイ酸塩化合物は、表面が有機成分により変性されている。具体的には、層状ケイ酸塩化合物として、表面が有機成分で変性された有機化スメクタイト、さらに好ましくは、表面が有機成分で変性された有機化ベントナイトが挙げられる。
【0068】
有機成分として、アンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、フォスフォニウムなどの有機カチオン(オニウムイオン)が挙げられる。
【0069】
アンモニウムとしては、例えば、ジメチルジステアリルアンモニウム、ジステアリルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、オクチルアンモニウム、2-ヘキシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、トリオクチルアンモニウムなどが挙げられる。イミダゾリウムとしては、例えば、メチルステアリルイミダゾリウム、ジステアリルイミダゾリウム、メチルヘキシルイミダゾリウム、ジヘキシルイミダゾリウム、メチルオクチルイミダゾリウム、ジオクチルイミダゾリウム、メチルドデシルイミダゾリウム、ジドデシルイミダゾリウムなどが挙げられる。ピリジニウムとしては、例えば、ステアリルピリジニウム、ヘキシルピリジニウム、オクチルピリジニウム、ドデシルピリジニウムなどが挙げられる。フォスフォニウムとしては、例えば、ジメチルジステアリルフォスフォニウム、ジステアリルフォスフォニウム、オクタデシルフォスフォニウム、ヘキシルフォスフォニウム、オクチルフォスフォニウム、2-ヘキシルフォスフォニウム、ドデシルフォスフォニウム、トリオクチルフォスフォニウムなどが挙げられる。有機カチオンは、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、アンモニウム、より好ましくは、ジメチルジステアリルアンモニウムが挙げられる。
【0070】
有機化層状ケイ酸塩化合物として、好ましくは、表面がアンモニウムで変性された有機化スメクタイト、より好ましくは、表面がジメチルジステアリルアンモニウムで変性された有機化ベントナイトが挙げられる。
【0071】
層状ケイ酸塩化合物の平均粒子径の下限は、例えば、1nm、好ましくは、5nm、より好ましくは、10nmである。層状ケイ酸塩化合物の平均粒子径の上限は、例えば、100μm、好ましくは、50μm、より好ましくは、10μmである。なお、層状ケイ酸塩化合物の平均粒子径は、例えば、レーザー散乱法における粒度分布測定法によって求められた粒度分布に基づいて、D50値(累積50%メジアン径)として求められる。
【0072】
層状ケイ酸塩化合物としては、市販品を用いることができる。例えば、有機化ベントナイトの市販品として、エスベンシリーズ(ホージュン社製)などが用いられる。
【0073】
熱硬化性樹脂組成物(封止用樹脂シート)における層状ケイ酸塩化合物の含有割合の下限は、例えば、0.1質量%、好ましくは、0.5質量%で、より好ましくは、1質量%、さらに好ましくは、2質量%、とりわけ好ましくは、3質量%、とりわけ好ましくは、4質量%、最も好ましくは、5質量%である。熱硬化性樹脂組成物(封止用樹脂シート)における層状ケイ酸塩化合物の含有割合の上限は、例えば、25質量%、好ましくは、20質量%、より好ましくは、15質量%、さらに好ましくは、10質量%である。
【0074】
層状ケイ酸塩化合物の含有割合が上記した下限以上であれば、上記式(1)を確実に満足できる。
【0075】
なお、熱硬化性樹脂組成物には、例えば、層状ケイ酸塩化合物以外の無機フィラー、熱可塑性樹脂、顔料、シランカップリング剤、その他の添加剤を添加することができる。
【0076】
無機フィラーとしては、例えば、オルトケイ酸塩、ソロケイ酸塩、イノケイ酸塩などの層状ケイ酸塩化合物以外のケイ酸塩化合物、例えば、石英(ケイ酸)、シリカ(無水ケイ酸)、窒化ケイ素などのケイ素化合物(層状ケイ酸塩化合物以外のケイ素化合物)などが挙げられる。また、無機フィラーとして、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素なども挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、層状ケイ酸塩化合物以外のケイ素化合物、より好ましくは、シリカが挙げられる。
【0077】
無機フィラーの形状は、特に限定されず、例えば、略球形状、略板形状、略針形状、不定形状などが挙げられる。好ましくは、略球形状が挙げられる。
【0078】
無機フィラーのメジアン径の上限は、例えば、50μm、好ましくは、20μm、より好ましくは、10μmである。無機フィラーのメジアン径の下限は、また、例えば、0.1μm、好ましくは、0.5μmである。なお、無機フィラーの平均粒子径は、例えば、レーザー散乱法における粒度分布測定法によって求められた粒度分布に基づいて、D50値(累積50%メジアン径)として求められる。
【0079】
また、無機フィラーは、第1フィラーと、第1フィラーのメジアン径より小さいメジアン径を有する第2フィラーとを含むことができる。
【0080】
第1フィラーのメジアン径の下限は、例えば、1μm、好ましくは、3μmである。第1フィラーのメジアン径の上限は、例えば、50μm、好ましくは、30μmである。
【0081】
第2フィラーのメジアン径の上限は、例えば、0.9μm、好ましくは、0.8μmである。第2フィラーのメジアン径の下限は、例えば、0.01μm、好ましくは、0.1μmである。
【0082】
第1フィラーのメジアン径の、第2フィラーのメジアン径に対する比の下限は、例えば、2、好ましくは、5である。第1フィラーのメジアン径の、第2フィラーのメジアン径に対する比の上限は、例えば、50、好ましくは、20である。
【0083】
第1フィラーおよび第2フィラーの材料は、ともに同一あるいは相異っていてもよい。
【0084】
さらに、無機フィラーは、その表面が、部分的あるいは全体的に、シランカップリング剤などで表面処理されていてもよい。
【0085】
熱硬化性樹脂組成物における無機フィラーの含有割合の下限は、例えば、50質量%、好ましくは、55質量%、より好ましくは、60質量%、さらに好ましくは、65質量%である。熱硬化性樹脂組成物における無機フィラーの含有割合の上限は、例えば、90質量%、好ましくは、85質量%、より好ましくは、80質量%、さらに好ましくは、75質量%である。
【0086】
無機フィラーの含有割合および/または含有部数が上記した下限以上であれば、図3Cに示す工程における封止用樹脂シート1が流動できる。
【0087】
なお、無機フィラー100質量部に対する層状ケイ酸塩化合物の含有部数の下限は、例えば、1質量部、好ましくは、2質量部、より好ましくは、3質量部、さらに好ましくは、5質量部である。無機フィラー100質量部に対する層状ケイ酸塩化合物の含有部数の上限は、例えば、25質量部、好ましくは、20質量部、より好ましくは、15質量部、さらに好ましくは、10質量部、とりわけ好ましくは、8質量部である。
【0088】
無機フィラーが第1フィラーと第2フィラーとを含む場合には、熱硬化性樹脂組成物における第1フィラーの含有割合の下限は、熱硬化性樹脂組成物中、例えば、30質量%、好ましくは、40質量%である。熱硬化性樹脂組成物における第1フィラーの含有割合の上限は、熱硬化性樹脂組成物中、例えば、60質量%、好ましくは、50質量%である。
第1フィラー100質量部に対する第2フィラーの含有部数の下限は、例えば、30質量部、好ましくは、40質量部、より好ましくは、50質量部である。第1フィラー100質量部に対する第2フィラーの含有部数の上限は、例えば、70質量部、好ましくは、60質量部、より好ましくは、55質量部である。
【0089】
熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂(6-ナイロンや6,6-ナイロンなど)、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、飽和ポリエステル樹脂(PETなど)、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体などが挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0090】
熱可塑性樹脂として、好ましくは、熱硬化性樹脂との分散性を向上させる観点から、アクリル樹脂が挙げられる。
【0091】
アクリル樹脂としては、例えば、直鎖または分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、その他のモノマー(共重合性モノマー)とを含むモノマー成分を重合してなる、カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルコポリマー(好ましくは、カルボキシル基含有アクリル酸エステルコポリマー)などが挙げられる。
【0092】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシルなどの炭素数1~6のアルキル基などが挙げられる。
【0093】
その他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマーなどが挙げられる。
【0094】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量の下限は、例えば、10万、好ましくは、30万である。熱可塑性樹脂の重量平均分子量の上限は、例えば、100万、好ましくは、90万である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトフラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値に基づいて測定される。
【0095】
熱可塑性樹脂の割合(固形分割合)は、熱硬化性樹脂の熱硬化を阻害しないように調整される。具体的には、熱硬化性樹脂組成物における熱可塑性樹脂の割合(固形分割合)の下限は、例えば、1質量%、好ましくは、2質量%である。熱硬化性樹脂組成物における熱可塑性樹脂の割合(固形分割合)の上限は、例えば、10質量%、好ましくは、5質量%である。
【0096】
なお、熱可塑性樹脂は、適宜の溶媒で希釈されて調製されていてもよい。
【0097】
顔料としては、例えば、カーボンブラックなどの黒色顔料が挙げられる。顔料の粒子径の下限は、例えば、0.001μmである。顔料の粒子径の上限は、例えば、1μmである。熱硬化性樹脂組成物に対する顔料の割合の下限は、例えば、0.1質量%である。顔料の粒子径は、顔料を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径である。熱硬化性樹脂組成物に対する顔料の割合の上限は、例えば、2質量%である。
【0098】
シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基を含有するシランカップリング剤が挙げられる。エポキシ基を含有するシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどの3-グリシドキシジアルキルジアルコキシシラン、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどの3-グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。好ましくは、3-グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。熱硬化性樹脂組成物におけるシランカップリング剤の含有割合の下限は、例えば、0.1質量%、好ましくは、1質量%である。熱硬化性樹脂組成物におけるシランカップリング剤の含有割合の上限は、例えば、10質量%、好ましくは、5質量%である。
【0099】
まず、上記した各成分を配合して混合し、熱硬化性樹脂組成物を調製する。
【0100】
必要により、溶媒をさらに適宜の割合で配合して、熱硬化性樹脂組成物のワニスを調製する。溶媒としては、特に限定されず、例えば、アセトンなどのケトン系溶媒、例えば、メタノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられ、好ましくは、ケトン系溶媒が挙げられる。
【0101】
その後、ワニスを、図示しない剥離シートに塗布し、その後、加熱により乾燥させて、シート形状を有する封止用樹脂シート1(図1Aおよび図2A参照)を製造する。
【0102】
なお、溶媒を配合せず、混練によって、熱硬化性樹脂組成物を調製し、押出によって、封止用樹脂シート1を製造することもできる。
【0103】
なお、この封止用樹脂シートは、Bステージ(半硬化状態)であって、具体的には、Cステージ前の状態である。つまり、完全硬化前の状態である。封止用樹脂シートは、上記した乾燥における加熱や、混練押出における加熱によって、Aステージ組成物から、Bステージシートに形成される。
【0104】
封止用樹脂シート1の厚みの下限は、例えば、10μm、好ましくは、25μm、より好ましくは、50μmである。封止用樹脂シート1の厚みの上限は、例えば、3000μm、好ましくは、1000μm、より好ましくは、500μm、さらに好ましくは、300μm、とりわけ好ましくは、100μmである。
【0105】
<電子素子パッケージの製造>
次いで、封止用樹脂シートによって、素子の一例としての電子素子を封止して、電子素子パッケージ50を製造する方法を、図3A図3Dを参照して説明する。
【0106】
この方法では、図3Aに示すように、まず、封止用樹脂シート1を準備する。封止用樹脂シート1は、厚み方向に互いに対向する厚み方向一方面およびおよび他方面を有する。
【0107】
別途、図3Bに示すように、電子素子21を準備する。例えば、複数の電子素子21を準備する。
【0108】
図3Bに示すように、複数の電子素子2のそれぞれは、面方向に延びる略平板形状(チップ形状)を有する。複数の電子素子2のそれぞれの厚み方向他方面28には、図示しない電極が設けられている。電子素子21は、例えば、公知の電子材料を含有する。
【0109】
複数の電子素子21の基板22に対する隙間(間隔)Tは、複数の電子素子21毎に、異なる。
【0110】
例えば、複数の電子素子21は、基板22に対して第1隙間T1が隔てられる第1素子91と、基板22に対して、第1隙間T1より狭い第2隙間T2で隔てられる第2素子92とを含む。
【0111】
第1素子91および第2素子92(複数の電子素子21)のそれぞれは、第1隙間T1および第2隙間T2のそれぞれが形成される厚み方向他方面28を有するように、基板22に、第1バンプ31および第2バンプ32のそれぞれ(次に説明)を介して実装されている。
【0112】
隙間Tに対する第隙間Tの比(T/T)の下限は、例えば、1.1、好ましくは、1.2、より好ましくは、1.5、さらに好ましくは、2である。第隙間Tに対する第隙間Tの比(T/T)の上限は、例えば、10,000、好ましくは、1,000、より好ましくは、100、さらに好ましくは、10である。
【0113】
なお、この一実施形態では、複数の電子素子21のそれぞれは、例えば、同一形状および同一サイズ(面方向長さおよび厚み)を有する。
【0114】
複数の電子素子21および基板22は、素子実装基板24に備えられる。
【0115】
基板22は、面方向に延びる略平板形状を有する。基板22の厚み方向一方面25は、例えば、複数の電子素子21の厚み方向他方面28に平行する。基板22は、絶縁板と、その一方面に配置される電極(図示せず)とを含む。電極(図示せず)は、第1バンプ31および第2バンプ32のそれぞれを介して、電気的に接続されている。
【0116】
第1バンプ31および第2バンプ32は、第1素子91および第2素子92に対応して設けられる。
【0117】
第1バンプ31は、第1素子91の電極(図示せず)と、基板22の端子(図示せず)の間に配置される。第1バンプ31の厚みは、第1素子91と基板22との間の間に形成される第1隙間81の厚みに相当する。
【0118】
第2バンプ32は、第2素子92の電極(図示せず)と、基板22の端子(図示せず)の間に配置される。第2バンプ32の厚みは、第1素子91と基板22との間の間に形成される第2隙間82の厚みに相当する。
【0119】
第1バンプ31および第2バンプ32の材料としては、例えば、半田、金などの金属などが挙げられる。
【0120】
次いで、図3Bに示すように、封止用樹脂シート1を、複数の電子素子21に配置する。具体的には、封止用樹脂シート1の厚み方向他方面を、複数の電子素子21の厚み方向一方面に接触させる。
【0121】
次いで、図3Cに示すように、封止用樹脂シート1および素子実装基板24を、プレスする。具体的には、封止用樹脂シート1および素子実装基板24を、熱プレスする。
【0122】
例えば、2つの平板を備えるプレス27により、封止用樹脂シート1および素子実装基板24を厚み方向に挟みながら、それらをプレスする。なお、プレス27の平板には、例えば、図示しない熱源が備えられる。
【0123】
プレス条件(圧力、時間、さらには、温度など)は、特に限定されず、封止用樹脂シート1が、複数の電子素子21のそれぞれの周側面を被覆する一方、素子実装基板24(電子素子21、第1バンプ31、第2バンプ32など)が損傷しない条件が選択される。より具体的には、プレス条件は、封止用樹脂シート1が複数の電子素子21のそれぞれの周側面の外側において流動して、複数の電子素子21のそれぞれの周側面を被覆しつつ、複数の電子素子21のそれぞれと平面視で重複しない基板22の厚み方向一方面25に接触できるように、設定される。
【0124】
具体的には、プレス圧の下限は、例えば、0.05MPa、好ましくは、0.1MPaである。プレス圧の上限は、例えば、10MPa、好ましくは、5MPaである。プレス時間の下限は、例えば、0.3分、好ましくは、0.5分である。プレス時間の上限は、例えば、10分、好ましくは、5分である。
【0125】
具体的には、加熱温度の下限は、例えば、40℃、好ましくは、60℃である。加熱温度の上限は、例えば、100℃、好ましくは、95℃である。
【0126】
封止用樹脂シート1のプレスよって、封止用樹脂シート1は、複数の電子素子21の外形に対応して塑性変形する。封止用樹脂シート1の厚み方向他方面は、複数の電子素子21のそれぞれの厚み方向一方面および周側面と、複数の電子素子21と平面視で重複しない基板22の厚み方向一方面25とに対応する形状に変形する。
【0127】
これによって、封止用樹脂シート1は、第1隙間81の端縁、および、第2隙間82の端縁を閉塞する。これによって、電子素子21は、優れた封止性で封止される。
【0128】
なお、封止用樹脂シート1は、Bステージを維持しながら、塑性変形する。
【0129】
これによって、封止用樹脂シート1は、複数の電子素子21のそれぞれの周側面を被覆しつつ、平面視において、電子素子21と重複しない基板22の厚み方向一方面25に接触する。
【0130】
これによって、複数の電子素子21を封止する封止体31が、封止用樹脂シート1から形成(作製)される。封止体31の厚み方向一方面は、平坦面になる。
【0131】
このとき、図示しないが、封止体31は、第1隙間81および第2隙間82にわずかに進入することが許容される。
【0132】
その後、図3Dに示すように、封止体31を加熱して、封止体31から硬化体41を形成する。
【0133】
具体的には、封止体31および素子実装基板24をプレス27から取り出し、続いて、封止体31および素子実装基板24を乾燥機で、大気圧下で、加熱する。
【0134】
加熱温度(キュア温度)の下限は、例えば、100℃、好ましくは、120℃である。加熱温度(キュア温度)の上限は、例えば、200℃、好ましくは、180℃である。加熱時間の下限は、例えば、10分、好ましくは、30分である。加熱時間の上限は、例えば、180分、好ましくは、120分である。
【0135】
上記した封止体31の加熱によって、封止体31から、Cステージ化(完全硬化)した硬化体41が形成される。硬化体41の厚み方向一方面は、露出面である。
【0136】
第1隙間81および第2隙間82へのわずかな進入が許容された封止体31の端縁が、隙間26の内部にさらにわずかに進入して、硬化体41となることが許容される。
【0137】
そして、この一実施形態では、第1進入長さX1および第2進入長さX2が式(1)(X1-X2≦30μm)を満足する。
【0138】
そのため、封止用樹脂シート1は、基板22に対して厚み方向長さが互いに異なる複数の隙間への硬化体41の進入長さを揃え(近似させ)ることができ、電子素子21への特性の影響を精度よくコントロールできながら、電子素子21に対する封止性に優れる。
【0139】
より具体的には、封止用樹脂シート1は、第1素子91および基板22間の第1隙間81への硬化体51の進入長さと、第2素子92および基板22間の第2隙間82への硬化体51の進入長さを揃え(近似させ)ることができ、第1素子91および第2素子92への特性を影響を精度よくコントロールできながら、第1素子91および第2素子92に対する封止性に優れる。つまり、複数の電子素子21に対する封止性に優れる。
【0140】
また、封止用樹脂シート1を、サイズが異なる第1隙間81および第2隙間82のそれぞれに対応する第1素子91および第2素子92のそれぞれに配置し、これを加熱して硬化体41を形成するときに、サイズが異なる第1隙間81および第2隙間82への硬化体41の進入量を制御して、第1素子91および第2素子92を均一に封止することができる。
【0141】
従って、高い機能を有する第1素子91および第2素子92を含む電子素子21を備える電子素子パッケージ50を製造することができる。
【0142】
<封止用多層樹脂シート>
図3Aに示すように、封止用樹脂シート1は、封止用多層樹脂シート11に、第2封止用樹脂シート12とともに備えられてもよい。
【0143】
封止用多層樹脂シート11は、図3A図3Dに示すように、複数の電子素子21を封止するときに、複数の電子素子21に接触する封止用樹脂シート1と、複数の電子素子21を封止するときに、封止用樹脂シート1に対して複数の電子素子21の反対側に位置する第2封止用樹脂シート12とを備える。
【0144】
封止用多層樹脂シート11は、封止用樹脂シート1と、第2封止用樹脂シート12とを厚み方向一方側に順に備える。具体的には、封止用多層樹脂シート11は、封止用樹脂シートと、その厚み方向一方面全面に配置される第2封止用樹脂シート12とを備える。好ましくは、封止用多層樹脂シート11は、封止用樹脂シート1と、第2封止用樹脂シート12とのみを備える。
【0145】
第2封止用樹脂シート12の厚みの下限は、例えば、25μm、好ましくは、50μm、より好ましくは、100μm、さらに好ましくは、150μmである。第2封止用樹脂シート12の厚みの上限は、例えば、1000μm、好ましくは、500μm、より好ましくは、300μmである。
【0146】
封止用多層樹脂シート11は、封止用樹脂シートと第2封止用樹脂シート12とを貼り合わせることにより、準備される。
【0147】
封止用多層樹脂シート11の<試験1>および<試験2>のそれぞれで求められる第1進入長さX1および第2進入長さX2は、封止用樹脂シート1単独の<試験1>および<試験2>のそれぞれで求められる第1進入長さX1および第2進入長さX2と実質的に同一である。
【0148】
なお、封止用多層樹脂シート11の<試験1>および<試験2>のそれぞれで求められる第1進入長さX1および第2進入長さX2の測定対象は、例えば、第2封止用樹脂シート12の硬化体ではなく、封止用樹脂シート1の硬化体である。
【0149】
封止用多層樹脂シート11も、上記した封止用樹脂シート1と同様の作用効果を奏することができる。
【0150】
さらに、封止用多層樹脂シート11が第2封止用樹脂シート12を具備することで、他の機能を付与することができる。他の機能としては、例えば、硬化後の反り抑制などが挙げられる。
【0151】
さらにまた、図3A図3Dでは、封止用多層樹脂シート11および封止用樹脂シート1で、複数の電子素子21を封止しているが、これに限定されず、例えば、図1A図1Dに示すように、単数の電子素子を封止することもできる。
【0152】
なお、封止用樹脂シート1が上記した下限以上の割合でフィラーを含有し、第2封止用樹脂シート12が上記した下限以上の割合でフィラーを含有すれば、図3Cに示すプレスによって、封止用樹脂シート1と第2封止用樹脂シート12とが、流動できる。
【0153】
このとき、封止用樹脂シート1は、電子素子21に接触する一方、第2封止用樹脂シート12は、封止用樹脂シート1に対して電子素子21の反対側に位置する。つまり、封止体31において隙間26に面する端縁は、封止用樹脂シート1から形成される。一方、封止体31の厚み方向一方面は、第2封止用樹脂シート12から形成される。
【0154】
その後、図3Dに示すように、封止体31を加熱して、封止体31から硬化体41を形成する。
【0155】
この封止用多層樹脂シート11も、上記した封止用樹脂シート1と同じ作用効果を奏することができる。
【0156】
とりわけ、封止用樹脂シート1および第2封止用樹脂シート12が、50℃以上、130℃以下の軟化点を有するエポキシ樹脂の主剤を含有すれば、図3Cに示す工程において、封止用樹脂シート1および第2封止用樹脂シート12が流動できる。従って、図3Cに示す工程の時間短縮、および、図3Cに示す工程における第2封止用樹脂シート12の厚み方向一方面を平坦にできる。
【0157】
さらに、封止用樹脂シート1および第2封止用樹脂シート12が、エポキシ樹脂の主剤とともにフェノール樹脂を硬化剤として含有すれば、硬化体41が、高い耐熱性と高い耐薬品性とを有する。従って、硬化体41は、封止信頼性に優れる。
【0158】
なお、図3Cに示す工程において、第2封止用樹脂シート12は、押圧力を受けて流動化し、厚み方向一方面が平坦になる。また、図3Cに示す工程において、封止用多層樹脂シート11では、上述のように、第2封止用樹脂シート12とともに封止用樹脂シート1が、押圧力を受けて軟化流動して、電子素子21の外形に追従して変形する。図3Cに示す工程では、封止用樹脂シート1が、隙間26にわずかに進入することが許容される。
【0159】
そして、図3Dに示す工程では、封止用樹脂シート1は、昇温に伴う粘度の低下に基づいて、流動が抑制され、隙間26への過度の進入が抑制される。すなわち、封止用樹脂シート1を含む封止用多層樹脂シート11が硬化した硬化体41では、硬化体進入長さYを低減できる。
【0160】
[変形例]
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態および変形例を適宜組み合わせることができる。
【0161】
図4A図5に示すように、電子素子21と、絶縁板20および端子29間に厚みが互いに異なる隙間T1およびT2があってもよい。素子実装基板24は、第1隙間81、および、第2隙間82を含む。
【0162】
なお、図4A図4Dは、図5に示す電子素子パッケージのX-X線に沿う工程断面図である。図4Aでは、X-X線に沿う部材(具体的には、端子29、バンプ33)をハッチング処理し、X-X線に沿わないが、X-X線の面方向一方側において視認される部材をハッチ処理なしで描画する。
【0163】
この変形例では、基板22は、絶縁板20および端子29を備える。
【0164】
絶縁板20は、面方向に延びる略平板形状を有する。
【0165】
端子29は、絶縁板20の厚み方向一方面25に配置されている。端子29は、平面視において、電子素子21の周端縁に沿って延びる。また、端子29は、所定厚みT0を有する。端子29は、面方向に互いに間隔を隔てて複数配置されている。複数の端子29のそれぞれは、電子素子21の複数の電極(図示せず)のそれぞれに対応して設けられている。
【0166】
端子29の厚みT0は、第1隙間81の厚みT1より、薄い。具体的には、端子29の厚みT0の下限は、例えば、5μm、好ましくは、15μmである。端子29の厚みT0の上限は、例えば、100μm、好ましくは、50μmである。
【0167】
端子29は、電子素子21の電極(図示せず)と、バンプ33を介して、電気的に接続されている。
【0168】
バンプ33は、複数の端子29に対応して複数設けられている。複数のバンプ33のそれぞれは、電子素子21の電極(図示せず)のそれぞれと、端子29のそれぞれの間に配置される。バンプ33の材料は、上記した第1バンプ31の材料と同様である。バンプ33の厚みT2は、上記した第2バンプ32の厚みT2と同一である。バンプ33の厚みT2は、絶縁板20の厚み方向一方面25と、電子素子21の厚み方向他方面28とが平行である場合に、第1隙間81の厚みT1から、端子29の厚みT0を差し引いた値(T2-T0)に相当する。
【0169】
第2隙間82は、電子素子21および端子29間にバンプ23が介在することにより形成される隙間である。そのため、第2隙間82の厚みT2は、バンプ33の厚みT2と同一である。第2隙間82は、電子素子21の厚み方向他方面28と、端子29の厚み方向一方面30との間の空間である。なお、第2隙間82は、平面視において、電子素子21の側端縁75と部分的に重複する。詳しくは、第2隙間82は、厚み方向に投影したときに、電子素子21および端子29が重なる領域のうち、バンプ33を除く領域である。
【0170】
第1隙間81は、第2隙間82の厚みT1より厚い厚みT2を有する。第1隙間81は、第2隙間82に連通する。具体的には、第1隙間81の厚みT2は、第2隙間82の厚みT1と、端子29の厚みT0との合計厚みである。また、第1隙間81は、電子素子21の厚み方向他方面28と、絶縁板20の厚み方向一方面25との間(間隙、あるいは、空洞)である。また、第1隙間81は、厚み方向に投影したときに、電子素子21および絶縁板20が重なる領域のうち、端子29を除く領域である。また、第1隙間81は、電子素子21の側端縁75と部分的に重複する。
【0171】
第1隙間81および第2隙間82は、電子素子21の側端縁75の全部と重複する。
【0172】
図4A図5に示す変形例によれば、封止用樹脂シート1は、電子素子21および絶縁板20間の第1隙間81への硬化体51の進入長さと、電子素子21および端子29間の第2隙間82への硬化体51の進入長さを揃え(近似させ)ることができ、1つの電子素子21において第1隙間81に対応する部分と、第2隙間82に対応する部分との特性を影響を精度よくコントロールできながら、第1隙間81の外端縁および第2隙間82の外端縁に対する封止性に優れる。つまり、1つの電子素子21における複数の隙間に対する封止性に優れる。
【0173】
また、封止用樹脂シート1を、サイズが異なる第1隙間81および第2隙間82を有する1つの電子素子21に配置し、これを加熱して硬化体41を形成するときに、サイズが異なる第1隙間81および第2隙間82への硬化体41の進入量を制御して、1つの電子素子21の第1隙間81および第2隙間82のそれぞれの外側を均一に封止することができる。
【0174】
従って、高い機能を有する電子素子21を備える電子素子パッケージ50を製造することができる。
【0175】
また、封止用多層樹脂シート11における第2封止用樹脂シート12は、多層であってもよい。
【0176】
また、素子の一例として、電子素子21を挙げたが、半導体素子を挙げることもできる。
【実施例
【0177】
以下に調製例、比較調製例、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら調製例、比較調製例、実施例および比較例に限定されない。
また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0178】
調製例および比較調製例で使用した各成分を以下に示す。
【0179】
層状ケイ酸塩化合物:ホージュン社製のエスベンNX(表面がジメチルジステアリルアンモニウムで変性された有機化ベントナイト)
主剤:新日鐵化学社製のYSLV-80XY(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、高分子量エポキシ樹脂、エポキシ当量200g/eq.軟化点80℃)
硬化剤:群栄化学社製のLVR-8210DL(ノボラック型フェノール樹脂、潜在性硬化剤、水酸基当量:104g/eq.、軟化点:60℃)
硬化促進剤:四国化成工業社製の2PHZ-PW(2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール)
アクリル樹脂:根上工業社製のHME-2006M、カルボキシル基含有のアクリル酸エステルコポリマー(アクリル系ポリマー)、重量平均分子量:60万、ガラス転移温度(Tg):-30℃、固形分濃度20質量%のメチルエチルケトン溶液
シランカップリング剤:信越化学社製のKBM-403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
第1フィラー:FB-8SM(球状溶融シリカ粉末(無機フィラー)、平均粒子径7.0μm)
第2フィラー:アドマテックス社製のSC220G-SMJ(平均粒径0.5μm)を3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製の製品名:KBM-503)で表面処理した無機フィラー。無機フィラーの100質量部に対して1質量部のシランカップリング剤で表面処理した無機粒子。
【0180】
カーボンブラック:三菱化学社製の#20、粒子径50nm
【0181】
調製例1~調製例7および比較調製例1~比較調製例2
表1に記載の配合処方に従って、熱硬化性樹脂組成物のワニスを調製した。ワニスを剥離シートの表面に塗布した後、120℃で、2分間乾燥させて、厚み65μmの封止用樹脂シート1を作製した。封止用樹脂シート1は、Bステージであった。
【0182】
調製例8
表2に記載の配合処方に従って、熱硬化性樹脂組成物のワニスを調製した。ワニスを剥離シートの表面に塗布した後、120℃で、2分間乾燥させて、厚み195μmの第2封止用樹脂シート12を作製した。第2封止用樹脂シート12は、Bステージであった。
【0183】
実施例1~7および比較例1~比較例2
表3に示すような調製例の組合せで、封止用樹脂シートと第2封止用樹脂シートとを張り合わて、厚み260μmの封止用多層樹脂シート11を作製した。
【0184】
評価
上記した試験1~試験2のそれぞれを実施して、第1進入長さX1、および、第2進入長さX2のそれぞれを求め、続いて、X2/X1を求めた。その結果を表3に示す。
【0185】
そして、下記の基準1および基準2に従って、封止用多層樹脂シート11を評価した。
結果を表4に示す。
【0186】
<基準1>
○:下記式(1)を満足する。
×:下記式(1)を満足しない。
X1-X2≦30μm (1)
【0187】
<基準2>
○:X1が、50μm以下である。
○:X1が、50μm超過である。
【0188】
<基準3>
○:X2が、正数である。
△:X2が、負数である。
【0189】
【表1】
【0190】
【表2】
【0191】
【表3】
【0192】
【表4】
【符号の説明】
【0193】
1 封止用樹脂シート
11 封止用多層樹脂シート
20 絶縁板
21 電子素子
23 バンプ
26 隙間
29 端子
31 封止体
41 硬化体
61 サンプルシート
72 ガラス基板
74 ダミー素子実装基板
75 側端縁
81 第1隙間
82 第2隙間
91 第1素子
92 第2素子
T1 厚み(第1隙間)
T2 厚み(第2隙間)
X1 第1進入長さ
X2 第2進入長さ
図1
図2
図3
図4
図5