(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】回路基板の製造方法及び回路基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/16 20060101AFI20240829BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H05K1/16 B
H01F41/02 Z
(21)【出願番号】P 2020123922
(22)【出願日】2020-07-20
【審査請求日】2023-06-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)総務省委託研究「電波資源拡大のための研究開発のうち“不要電波の高分解能計測・解析技術を活用したノイズ抑制技術の研究開発”」成果に係る特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148840
【氏名又は名称】松本 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100191673
【氏名又は名称】渡邉 久典
(72)【発明者】
【氏名】嶋 博司
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/133018(WO,A1)
【文献】特開2013-243330(JP,A)
【文献】特開2020-004823(JP,A)
【文献】特開2010-041906(JP,A)
【文献】特開2004-111525(JP,A)
【文献】特開2009-176797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/16
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の製造方法であって、
キャビティが形成された第1基板部材を用意する工程と、
複数の磁性体片を有する磁性部材を用意する工程と、
前記磁性部材を前記キャビティ内に配置する配置工程と、
第2基板部材を前記第1基板部材上に配置して前記キャビティを塞ぐ工程と、を備え、
前記キャビティは、横方向において互いに対向する一対の壁面によって少なくとも部分的に規定されており、かつ前記横方向と直交する上下方向において上方へ開いており、
前記磁性体片は、所定間隔で所定方向に配列されるように位置決め部材によって連結されており、
前記位置決め部材は、前記磁性体片と同一の材料を用いて前記磁性体片と一体に形成されており、
前記配置工程は、前記所定方向が前記横方向と一致するように、又は前記所定方向が前記横方向及び前記上下方向の双方と直交する前後方向と一致するように行われる
ものであり、
前記回路基板の製造方法は、前記キャビティを通過するように前記第1基板部材及び前記第2基板部材を貫通するビアを形成し、それによって、前記位置決め部材を少なくとも部分的に除去し、前記磁性体片を互いに分離するビア形成工程をさらに備える
回路基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の回路基板の製造方法であって、
前記ビア形成工程は、前記ビアの直径寸法が、前記所定方向と直交する幅方向における前記位置決め部材の幅寸法よりも大きくなるように行われ、
前記位置決め部材の前記幅寸法と前記ビアの前記直径寸法との差は、前記幅方向に一致する方向における前記キャビティの寸法と前記磁性部材の寸法との差よりも大きい
回路基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の回路基板の製造方法であって、
前記位置決め部材は、
前記磁性体片と同一の材料を用いて前記磁性体片と一体に形成されたものに代えて、前記磁性体片とは異なる材料からなり、前記磁性体片の一面同士を連結している
回路基板の製造方法。
【請求項4】
回路基板であって、
第1基板部材と、磁性部材と、第2基板部材とを備え、
前記第1基板部材には、前記磁性部材に対応するキャビティが形成されており、
前記キャビティは、横方向において互いに対向する一対の壁面によって少なくとも部分的に規定されており、かつ前記横方向と直交する上下方向において上方へ開いており、
前記磁性部材は、複数の磁性体片を有しており、
前記磁性体片は、前記キャビティ内に配置され、かつ前記横方向に沿って、又は前記横方向及び前記上下方向と直交する前後方向に沿って、所定間隔で配列されており、
前記第2基板部材は、前記第1基板部材上に配置されて前記キャビティを塞いで
おり、
互いに隣り合う前記磁性体片の互いに対向する面の夫々には、切断痕が残されているか、又は切断痕を有する位置決め部材が接続されており、
前記第1基板部材と前記第2基板部材とを貫通するビアをさらに備えており、
前記ビアは、前記切断痕と接している
回路基板。
【請求項5】
請求項4に記載の回路基板であって、
前記磁性体片が配列されている方向と直交する直交方向において、前記ビアの直径の寸法は、前記切断痕の寸法よりも大きいものであり、
前記直交方向において、前記ビアの直径の寸法と前記切断痕の寸法との差は、前記キャビティの寸法と前記磁性部材の寸法との差よりも大きい
回路基板。
【請求項6】
請求項4に記載の回路基板であって、
前記磁性体片は、前記磁性体片とは異なる材料からなる位置決め部材によって連結されている
回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の製造方法及び回路基板に関し、特に、磁性部材を内蔵する回路基板の製造方法及び磁性部材を内蔵する回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、磁性部材を内蔵する回路基板の一例を開示している。特許文献1の回路基板は、キャビティが形成された主基板と、キャビティ内に配置される磁性部材と、主基板の上下に配置される上側プリプレグ及び下側プリプレグとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回路基板に内蔵された磁性部材は、磁心として利用される。磁心として所望の特性を得るために、磁性部材にはギャップが設けられることが多い。ここで、単一の大きなギャップは、磁束の漏洩範囲が広いので周囲への影響が大きい。そのため、回路基板に内蔵される磁性部材においては、磁束の漏洩範囲を狭くすることができる分散ギャップを採用することが望まれる。
【0005】
特許文献1の回路基板において、キャビティと磁性部材とは一対一に対応している。この構成を利用して、分散ギャップを備える磁心を構成するには、複数のキャビティとそれらに対応する複数の磁性体片が必要である。ここで、キャビティの夫々とそれに対応する磁性体片との間には、通常隙間が存在する。そのため、キャビティ内に配置された磁性体片の位置はばらつく可能性があり、隣り合う磁性体片間のギャップもばらつく可能性がある。その結果、特許文献1の構成を利用して形成した分散ギャップを備える磁心は、所望の特性を得ることができない可能性があるという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、基板に形成されたキャビティ内に、所定間隔で複数の磁性体片を配置することができる回路基板の製造方法を提供し、もって、キャビティ内に複数の磁性体片が所定間隔で配置された回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の回路基板の製造方法として、
キャビティが形成された第1基板部材を用意する工程と、
複数の磁性体片を有する磁性部材を用意する工程と、
前記磁性部材を前記キャビティ内に配置する配置工程と、
第2基板部材を前記第1基板部材上に配置して前記キャビティを塞ぐ工程と、を備え、
前記キャビティは、横方向において互いに対向する一対の壁面によって少なくとも部分的に規定されており、かつ前記横方向と直交する上下方向において上方へ開いており、
前記磁性片は、所定間隔で所定方向に配列されるように位置決め部材によって連結されており、
前記配置工程は、前記所定方向が前記横方向と一致するように、又は前記所定方向が前記横方向及び前記上下方向の双方と直交する前後方向と一致するように行われる
回路基板の製造方法を提供する。
【0008】
本発明は、第2の回路基板の製造方法として、第1の回路基板の製造方法であって、
前記位置決め部材は、前記磁性体片と同一の材料を用いて前記磁性体片と一体に形成されており、
前記回路基板の製造方法は、前記キャビティを通過するように前記第1基板部材及び前記第2基板部材を貫通するビアを形成し、それによって、前記位置決め部材を少なくとも部分的に除去し、前記磁性体片を互いに分離するするビア形成工程をさらに備える
回路基板の製造方法を提供する。
【0009】
本発明は、第3の回路基板の製造方法として、第2の回路基板の製造方法であって、
前記ビア形成工程は、前記ビアの直径寸法が、前記所定方向と直交する幅方向における前記位置決め部材の幅寸法よりも大きくなるように行われ、
前記位置決め部材の前記幅寸法と前記ビアの前記直径寸法との差は、前記幅方向に一致する方向における前記キャビティの寸法と前記磁性部材の寸法との差よりも大きい
回路基板の製造方法を提供する。
【0010】
本発明は、第4の回路基板の製造方法として、第1の回路基板の製造方法であって、
前記位置決め部材は、前記磁性体片とは異なる材料からなり、前記磁性体片の一面同士を連結している
回路基板の製造方法を提供する。
【0011】
本発明は、第1の回路基板として、
第1基板部材と、磁性部材と、第2基板部材とを備え、
前記第1基板部材には、前記磁性部材に対応するキャビティが形成されており、
前記キャビティは、横方向において互いに対向する一対の壁面によって少なくとも部分的に規定されており、かつ前記横方向と直交する上下方向において上方へ開いており、
前記磁性部材は、複数の磁性体片を有しており、
前記磁性体片は、前記キャビティ内に配置され、かつ前記横方向に沿って、又は前記横方向及び前記上下方向と直交する前後方向に沿って、所定間隔で配列されており、
前記第2基板部材は、前記第1基板部材上に配置されて前記キャビティを塞いでいる
回路基板を提供する。
【0012】
本発明は、第2の回路基板として、第1の回路基板であって、
互いに隣り合う前記磁性体片の互いに対向する面には、切断痕が残されているか、又は切断痕を有する位置決め部材が接続されている
回路基板を提供する。
【0013】
本発明は、第3の回路基板として、第2の回路基板であって、
前記第1基板部材と前記第2基板部材とを貫通するビアをさらに備えており、
前記ビアは、前記切断痕と接している
回路基板を提供する。
【0014】
本発明は、第4の回路基板として、第3の回路基板であって、
前記磁性体片が配列されている方向と直交する直交方向において、前記ビアの直径の寸法は、前記切断痕の寸法よりも大きいものであり、
前記直交方向において、前記ビアの直径の寸法と前記切断痕の寸法との差は、前記キャビティの寸法と前記磁性部材の寸法との差よりも大きい
回路基板を提供する。
【0015】
本発明は、第5の回路基板として、第1の回路基板であって、
前記磁性体片は、前記磁性体片とは異なる材料からなる位置決め部材によって連結されている
回路基板を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の回路基板の製造方法は、磁性部材として、所定間隔で所定方向に配列されるように位置決め部材によって連結された複数の磁性体片を用いる。これにより、キャビティ内における磁性部材の位置がばらついても、磁性体片間の間隔にばらつきは生じない。こうして、本発明によれば、基板に形成されたキャビティ内に、所定間隔で配置された複数の磁性体片を有する回路基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施の形態による導体部形成前の回路基板を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1の回路基板に含まれる磁性部材を示す平面図である。
【
図4】
図2の磁性部材の変形例を示す平面図である。
【
図6】
図2の磁性部材の別の変形例を示す平面図である。
【
図8】
図1の回路基板の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図1の回路基板を用いて形成された導体部形成後の回路基板を示す平面図である。
【
図10】
図9の導体部形成後の回路基板を示す底面図である。
【
図11】
図9の回路基板におけるビアと磁性部材との位置関係を示す平面図である。キャビティ及び磁性部材が破線で示されている。
【
図12】
図11の回路基板におけるビアと位置決め部材との関係の一例を示す平面図である。
【
図13】
図11の回路基板におけるビアと位置決め部材との関係を示す別の例を示す平面図である。
【
図14】
図1の回路基板におけるキャビティの寸法と磁性部材の寸法との差を説明するための平面図である。
【
図15】
図11の回路基板におけるビアの直径寸法と位置決め部材の幅寸法との差を説明するための平面図である。
【
図16】
図1の回路基板の変形例を用いて形成された導体部形成後の回路基板を示す平面図である。キャビティ及び磁性部材が破線で示されている。
【
図17】本発明の他の実施の形態による回路基板を示す分解斜視図である。
【
図18】
図17の回路基板を示す平面図である。キャビティ及び磁性部材が破線で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照すると、本発明の一実施の形態に係る回路基板10は、第1基板部材12と、磁性部材14と、第2基板部材16とを備えている。なお、この回路基板10は、後述する導体部22が形成されていない回路基板10、即ち導体部形成前の回路基板10である。
【0019】
図1に示されるように、第1基板部材12は、矩形の板状である。第1基板部材12の中央部には、矩形のキャビティ121が形成されている。第1基板部材12は、単一の矩形の板材で構成されてもよいし、複数の板材を積層して構成されてもよい。または、第1基板部材12は、板材とシート材とを組み合わせて構成されてもよい。
【0020】
第1基板部材12のキャビティ121は、矩形の板材に加工を施すことにより形成されてよい。または、枠状の板材と矩形の板材又はシート材とを張り合わせることにより形成されてもよい。板材として、例えば、ガラスエポキシを用いることができる。また、シート材として、例えば、プリプレグを用いることができる。
【0021】
図1から理解されるように、第1基板部材12のキャビティ121は、磁性部材14に対応している。換言すると、キャビティ121は、磁性部材14を収容することができる大きさを有している。本実施の形態において、キャビティ121は、四つの側壁131X,131Yと、底面133とで規定されている。また、キャビティ121は、上下方向において上方へ開いている。本実施の形態において、四つの側壁131X,131Yは、上下方向と直交する横方向において互いに対向する一対の側壁131Xと、上下方向及び横方向の双方と直交する前後方向において互いに対向する一対の側壁131Yとからなる。本実施の形態において、上下方向はZ方向である。+Z方向が上方であり、-Z方向が下方である。また、横方向はX方向であり、前後方向はY方向である。
【0022】
図2及び
図3に示されるように、磁性部材14は、複数の磁性体片141を有している。本実施の形態において、磁性体片141の数は三つである。ただし、本発明はこれに限られない。磁性体片141の数は、二つでもよし、四つ以上でもよい。
【0023】
図2及び
図3に示されるように、磁性体片141の夫々は、矩形の板状である。本実施の形態において、磁性体片141は、同一形状、同一サイズに形成されている。また、磁性体片141は、長辺が互いに平行となるように、所定間隔で所定方向に配列されている。このような配列を実現するため、磁性体片141は位置決め部材143によって互いに連結されている。隣り合う磁性体片141間の隙間は、磁気回路におけるギャップとして働く。したがって、所定間隔は、磁性部材14に求められる磁気特性に応じて決定される。所定方向は、任意の一方向である。本実施の形態において、所定方向は横方向と一致している。
【0024】
図2及び
図3に示されるように、本実施の形態において、互いに隣り合う磁性体片141は、二つの位置決め部材143によって連結されている。位置決め部材143の夫々は、互いに隣り合う磁性体片141の一面同士を連結している。詳しくは、位置決め部材143の夫々は、互いに隣り合う磁性体片141の互いに対向する面同士を連結している。
【0025】
本実施の形態において、位置決め部材143は、磁性体片141と同一の材料からなり、磁性体片141と一体に形成されている。磁性体片141及び位置決め部材143の材料として、軟磁性金属粉末をバインダで結着したものを用いることができる。ただし、本発明はこれに限られない。位置決め部材143は、磁性体片141とは異なる材料を用いて構成されてもよい。また、位置決め部材143の数や配置は、使用する材料等に応じて定めることができる。
【0026】
図4及び
図5は、磁性部材14に代えて回路基板10に使用可能な別の磁性部材14Aを示している。この磁性部材14Aは、複数の磁性体片141と一枚の絶縁樹脂シートからなる位置決め部材143Aとを備えている。位置決め部材143Aは、磁性体片141の一面同士を連結している。詳しくは、位置決め部材143Aは、磁性体片141の下面同士を互いに連結している。横方向及び前後方向の夫々において、位置決め部材143Aの寸法は、磁性体片141が配置される領域の寸法よりも大きい。しかしながら、本発明はこれに限られない。横方向及び前後方向の少なくとも一つにおいて、位置決め部材143Aの寸法は、磁性体片141が配置される領域の寸法と同じか又は小さくてもよい。
【0027】
図6及び
図7は、磁性部材14に代えて回路基板10に使用可能なさらに別の磁性部材14Bを示している。この磁性部材14Bは、複数の磁性体片141と複数の絶縁樹脂からなる位置決め部材143Bとを備えている。位置決め部材143Bのそれぞれは、磁性体片141の一面同士を連結している。詳しくは、位置決め部材143Bは、互いに隣り合う磁性体片141の互いに対向する面同士を互いに連結している。前後方向において、位置決め部材143Bの寸法は、磁性体片141の寸法に等しい。しかしながら、本発明はこれに限られない。前後方向において、位置決め部材143Bの寸法は、磁性体片141が配置される領域の寸法より小さくもよい。
【0028】
再び
図1を参照すると、第2基板部材16は矩形の板状又はシート状である。横方向及び前後方向のそれぞれにおいて、第2基板部材16のサイズは、キャビティ121のサイズよりも大きい。本実施の形態において、第2基板部材16の横方向及び前後方向のサイズは、第1基板部材12の横方向及び前後方向のサイズにそれぞれ等しい。ただし、本発明はこれに限られない。第2基板部材16は、キャビティ121の上面を塞ぐのに十分な大きさを有していればよい。第2基板部材16は、例えば、プリプレグである。
【0029】
図1に加え
図8を参照して、本実施の形態による回路基板10の製造方法について説明する。
【0030】
まず、キャビティ121が形成された第1基板部材12を用意する(ステップS801)。キャビティ121は、第1基板部材12となる板材に加工を施して形成してもよいし、フレーム状の板材と別の板材又はシート材とを張り合わせて形成してもよい。
【0031】
次に、複数の磁性体片141を有する磁性部材14を用意する(ステップS802)。磁性体片141は、位置決め部材143と一体に成形されていてもよいし、磁性体片141とは異なる部材からなる位置決め部材143A又は143Bで連結されていてもよい。いずれにせよ、複数の磁性体片141は、互いに連結されており、隣り合う二つの磁性体片141間は所定間隔に維持されている。
【0032】
次に、磁性部材14を第1基板部材12のキャビティ121内に配置する(ステップS803)。このとき、磁性部材14は、所定方向が横方向と一致するようにキャビティ121内に配置される。ただし、本発明はこれに限られない。磁性部材14は、回路基板10に求められる特性に応じて、所定方向が前後方向と一致するようにキャビティ121内に配置されてもよい。こうして、複数の磁性体片141は、所定間隔で横方向又は前後方向に沿って、キャビティ121内に配置される。
【0033】
次に、キャビティ121の上面を塞ぐように、第2基板部材16を第1基板部材12の上に配置する(ステップS804)。このとき、絶縁接着剤等を用いて、第2基板部材16を第1基板部材12に固定する。第2基板部材16がプリプレグの場合は、絶縁接着剤等に代えて、プリプレグに含まれる樹脂を利用してもよい。いずれの場合も、キャビティ121内が絶縁接着剤又は樹脂で満たされるようにする。必要なら、第2基板部材16を第1基板部材12の上に配置する前に、キャビティ121内に樹脂を充填する。以上により、
図1に示される回路基板10、即ち、導体部形成前の回路基板10が完成する。
【0034】
次に、導体部形成前の回路基板10に導体部22(
図9及び
図10参照)を形成する(ステップS805)。これにより、導体部22が形成された導体部形成後の回路基板20が完成する。
【0035】
図9及び
図10から理解されるように、導体部22は、複数の上側導体部221と複数の下側導体部223と複数のビア225とからなる。上側導体部221は、第2基板部材16の上面上に形成される。下側導体部223は、第1基板部材12の下面上に形成される。さらに、ビア225は、第1基板部材12と第2基板部材16とを貫通し上側導体部221と下側導体部223とを電気的に接続するように形成される。詳しくは、上側導体部221、下側導体部223及びビア225は、コイルを形成するように互いに接続される。本実施の形態において、上側導体部221の数は三つであり、下側導体部223の数は四つである。また、ビア225の数は六つである。ただし、本発明はこれに限られない。上側導体部221、下側導体部223及びビア225の数や配置は、所望の特性に応じて決定される。
【0036】
導体部22の形成方法は特に限定されず、公知の方法により行うことができる。その場合、上側導体部221及び下側導体部223を形成した後にビア225を形成してもよいし、ビア225を形成した後に上側導体部221及び下側導体部223を形成してもよい。ビア225を形成する工程は、上側導体部221を形成する工程及び下側導体部223を形成する工程の双方から独立して行われてもよいし、いずれか一方又は両方と同時に行われてもよい。
【0037】
図11を参照すると、導体部形成後の回路基板20において、ビア225は、キャビティ121を通過する領域内に形成されている。詳しくは、ビア225は、キャビティ121を通過する領域内において、第1基板部材12(
図10参照)及び第2基板部材16を貫通するように形成されている。
【0038】
図11に示されるように、前後方向において外側に位置する四つのビア225は、位置決め部材143とそれぞれ重なる位置に形成されている。これらのビア225は、対応する位置決め部材143を少なくとも部分的に除去し、隣り合う磁性体片141間を分離する。換言すると、本実施の形態による回路基板20の製造方法は、キャビティ121を通過するように第1基板部材12及び第2基板部材16を貫通するビア225を形成し、それによって、位置決め部材143を少なくとも部分的に除去し、磁性体片141を互いに分離するビア形成工程を備えている。
【0039】
図12から理解されるように、前後方向において、ビア225の直径寸法は、位置決め部材143の寸法以上である。換言すると、ビア形成工程は、ビア225の直径寸法が、所定方向と直交する幅方向(前後方向)における位置決め部材143の幅寸法よりも大きくなるように行われる。前後方向において、ビア225の直径寸法が位置決め部材143の幅寸法よりも小さいと、互いに隣り合う磁性体片141が連結されたままとなるからである。即ち、互いに隣り合う磁性体片141がビア225の形成によって分離されず、回路基板20として、所望の磁性特性を得ることができないからである。
【0040】
一方、
図13から理解されるように、横方向において、ビア225の直径は、隣り合う磁性体片141間の距離(所定間隔)以下であることが好ましい。横方向において、ビア225の直径が、所定間隔よりも大きいと、製造誤差等によりビア225の形成位置に位置ずれが生じた際に、一方の磁性体片141のみが部分的に大きく除去され、回路基板20として、所望の磁性特性を得られない可能性があるからである。
【0041】
図12から理解されるように、位置決め部材143をビア225の形成により切断すると、互いに隣り合う磁性体片141の互いに隣り合う面には、切断痕145を有する位置決め部材143の残部が接続された状態となる。製造誤差等により、ビア225の形成位置がずれたときには、互いに隣り合う磁性体片141の互いに隣り合う面に切断痕145が残される場合もあり得る。いずれにしても、ビア225は、切断痕145に面接触している。
【0042】
図11から
図13のそれぞれにおいて、ビア225の中心位置と、対応する位置決め部材143の中央位置とは一致している。しかしながら、実際の製造工程において、これらの位置は製造誤差等によって変化し得る。例えば、
図14に示されるように、前後方向においてキャビティ121の寸法と磁性部材14の寸法との差がD1のとき、磁性部材14は第1基板部材12に対して、最大D1の範囲で移動し得る。したがって、ビア225の形成によって位置決め部材143が必ず切断されるようにするには、ビア225の直径を位置決め部材143に比べてある程度大きくしなければならない。例えば、
図15に示されるように、前後方向において、位置決め部材143の幅寸法(切断痕145の寸法)とビア225の直径寸法との差がD2であり、かつ第1基板部材12とビア225の相対位置が固定されていると仮定した場合、D2はD1よりも大きく(D2>D1)なければならない。なお、本実施の形態において、前後方向は、磁性体片141が配列されている方向(横方向)と直交する直交方向に該当する。
【0043】
いずれにせよ、位置決め部材143の位置及びサイズ、ビア225の位置及びサイズは、製造誤差等を考慮して、ビア225の形成により対応する位置決め部材143が切断され、かつ所望の磁気特性が得られるように設定される。
【0044】
上述したように、本実施の形態において、複数の磁性体片141は、位置決め部材143によって互いに連結された状態で、キャビティ121内に収容される。これにより、キャビティ121内に、所定間隔で複数の磁性体片141を配置することでき、回路基板20は、所望の磁気特性を得ることができる。
【0045】
以上、本発明について、実施の形態を掲げて具体的に説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、上側導体部221の長手方向と磁性体片141の長手方向とが直交しているが、所望の特性に応じて、
図16に示される回路基板20Aのように、上側導体部221の長手方向と磁性体片141の長手方向と平行になるようにしてもよい。この場合も、隣り合う磁性体片141が磁性体片141と同一の材料からなる位置決め部材143により連結されているのであれば、ビア225の形成によって、位置決め部材143が切断されるようにする。
【0046】
また、上記実施の形態においては、一つの回路基板10を作成する場合について説明したが、複数の回路基板10B(
図18参照)を同時に作成するようにしてもよい。これは、例えば、
図17に示されるように、複数の磁性部材14に対応するキャビティ121Bを備える第1基板部材12Bと、それに対応する第2基板部材16Bとを用いることで実現できる。
図18に示されるように、磁性部材14をそれぞれ含むように第1基板部材12B及び第2基板部材16Bを二点鎖線に沿って切断することで、複数の回路基板10Bを得ることができる。なお、第1基板部材12B及び第2基板部材16Bを切断は、導体部22を形成した前でも後でもよい。また、各回路基板10Bにおけるキャビティ121Cは、横方向において互いに対向する一対の側壁131Xと底面133とで規定される。
【0047】
図17及び
図18に示す例では、複数の磁性部材14が互いに独立しているが、これらは互いに一体化されていてもよい。詳しくは、前後方向に隣り合う磁性体片141は、連続する単一の磁性体片として形成されていてもよい。この場合、得られる回路基板10Bの切断面には、磁性体片141の切断面が露出する。なお、回路基板10Bの切断面には、必要に応じて樹脂を塗布する等して保護層を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10,10B 導体部形成前の回路基板(回路基板)
20,20A 導体部形成後の回路基板(回路基板)
12,12B 第1基板部材
121,121B,121C キャビティ
131X,131Y 側壁
133 底面
14,14A、14B 磁性部材
141 磁性体片
143,143A、143B 位置決め部材
145 切断痕
16,16B 第2基板部材
22 導体部
221 上側導体部
223 下側導体部
225 ビア