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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240829BHJP
   B41J 2/345 20060101ALI20240829BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20240829BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H01L21/60 311S
B41J2/345 K
H05K1/18 L
H05K3/34 502E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020132421
(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2022029196
(43)【公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 俊夫
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-151506(JP,A)
【文献】特開2018-012341(JP,A)
【文献】特開平05-021523(JP,A)
【文献】特開2000-164632(JP,A)
【文献】特開2002-170852(JP,A)
【文献】特開2005-224950(JP,A)
【文献】特開平06-099601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
B41J 2/345
H05K 1/18
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の一方を向く主面を有する基材、および前記主面の上に配置された配線層を有する支持部材と、
実装面を有するICチップと、
前記実装面に配置された複数の導電性接合材と、
前記主面の上に配置され、主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層と、を備え、前記ICチップが前記支持部材にフリップチップ実装されたサーマルプリントヘッドであって、
前記基材の前記主面には、絶縁膜が設けられておらず、
前記配線層は、前記抵抗体層に導通しており、
前記ICチップは、前記各発熱部に流す電流を制御し、
前記支持部材は、前記複数の導電性接合材に対応して配置され、かつ少なくとも2つの凹状パッド部を含む複数のパッド部を有し、
前記複数のパッド部は、主走査方向に配列されており、
前記凹状パッド部は、底面と、前記基材の厚さ方向に見て前記底面を向く内壁面と、を有し、
前記内壁面は、前記配線層により構成されており、
前記凹状パッド部は、主走査方向に互いに離間し、かつ各々が副走査方向に延びる一対の起立壁を含んで構成されており、
前記一対の起立壁は、主走査方向一方側および主走査方向他方側を向き、互いに対向する一対の前記内壁面を有する、サーマルプリントヘッド
【請求項2】
前記配線層は、前記主面の上に配置された第1層と、前記第1層の一部分の上に配置された第2層と、を含み、
前記内壁面は、前記第2層により構成され、
前記底面は、前記第1層により構成される、請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記複数のパッド部は、主走査方向および副走査方向に複数ずつ配列されており、
前記複数のパッド部のうち主走査方向および副走査方向において4隅にあるものは前記凹状パッド部である、請求項1または2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記複数のパッド部は、そのすべてが前記凹状パッド部である、請求項1または2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記導電性接合材は、はんだバンプである、請求項1ないし4のいずれかに記載のサ ーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記配線層の少なくとも一部は、Agを含む材料からなる、請求項1ないし5のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記ICチップは、前記複数の発熱部に対して副走査方向上流側に配置されており、
前記配線層は、前記複数の発熱部に繋がる第1金属部と、前記第1金属部に対して副走査方向上流側の領域に配置され、かつ前記複数の導電性接合材に繋がる第2金属部と、を含む、請求項1ないし6のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記第1金属部はAuを含む材料からなり、前記第2金属部はAgを含む材料からなる、請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
前記基材は、基板と、前記基板上に配置され、前記主面を有するグレーズ層と、を含む、請求項1ないし8のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
前記基板は、セラミックからなる、請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ICチップの実装構造、当該実装構造を有するサーマルプリントヘッド、およびサーマルプリントヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のサーマルプリントヘッドの一例が開示されている。同文献に開示のサーマルプリントヘッドは、基板、グレーズ層、電極層(配線層)、発熱抵抗体(抵抗体層)、および駆動IC(ICチップ)を備える。基板は、絶縁材料からなる板状の部材であり、たとえばアルミナ(Al23)などのセラミックからなる。グレーズ層は、基板の表面に形成されており、たとえばガラスからなる。配線層は、グレーズ層上に形成されており、抵抗体層に選択的に電流を流すための電流経路を構成している。抵抗体層は、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する。ICチップは、各発熱部に流す電流を制御する。
【0003】
特許文献1に開示されたサーマルプリントヘッドにおいて、ICチップは、フリップチップ実装により基板上に搭載されている。ICチップにおいて基板と対向する実装面には、たとえばはんだバンプからなる複数の導電性接合材が設けられている。配線層には複数のパッド部が設けられており、基板へのICチップの搭載時には、マウンタによってICチップを配線層上に配置し、複数の導電性接合材と複数のパッド部とを仮付けする。そして、リフロー処理により複数の導電性接合材を溶融させて、複数のパッド部と複数の導電性接合材とを接合させる。このようなICチップの実装構造によれば、ICチップの複数の導電性接合材と配線層の複数のパッド部とを一括して接合することができる。また、複数のパッド部それぞれに通じる個別配線のピッチを狭くすることが可能であり、配線の微細化にも適している。
【0004】
しかしながら、フリップチップ実装時のICチップの搭載位置がずれていると、リフロー処理により、導電性接合材が本来の接合対象とは異なるパッド部や個別配線と接触ないし接合するおそれがある。この場合、意図しない電流経路が形成されて、電気的な短絡が生じるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-87938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、フリップチップ実装時における不具合を防止するのに適したICチップの実装構造、および当該実装構造を備えたサーマルプリントヘッドを提供することを主たる課題とする。
【0007】
本開示の第1の側面によって提供されるICチップの実装構造は、厚さ方向の一方を向く主面を有する基材、および前記主面の上に配置された配線層を有する支持部材と、実装面を有するICチップと、前記実装面に配置された複数の導電性接合材と、を備え、前記ICチップが前記支持部材にフリップチップ実装された実装構造であって、前記支持部材は、前記複数の導電性接合材に対応して配置され、かつ少なくとも2つの凹状パッド部を含む複数のパッド部を有し、前記凹状パッド部は、底面と、前記基材の厚さ方向に見て前記底面を向く内壁面と、を有し、前記内壁面は、前記配線層により構成される。
【0008】
本開示の第2の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドは、本開示の第1の側面に係るICチップの実装構造を有し、前記主面の上に配置され、主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層を備え、前記配線層は、前記抵抗体層に導通しており、前記ICチップは、前記各発熱部に流す電流を制御する。
【0009】
本開示の第3の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドの製造方法は、基材を準備する工程と、前記基材の上に配線層を形成することにより、前記基材および前記配線層からなる支持部材を形成する工程と、前記支持部材の上に、前記基材の厚さ方向に見て前記配線層の一部に重なる抵抗体層を形成する工程と、複数の導電性接合材が実装面に配置されたICチップを前記基材にフリップチップ実装する工程と、を備え、前記支持部材を形成する工程では、少なくとも2つの凹状パッド部を含み、前記複数の導電性接合材に対応する複数のパッド部が形成され、前記凹状パッド部は、底面と、前記基材の厚さ方向に見て前記底面を向く内壁面と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ICチップのフリップチップ実装時の位置ずれが改善され、当該位置ずれに起因する不具合を防止するのに適する。
【0011】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
図2図1のII-II線に沿う概略断面図である。
図3図1に示すサーマルプリントヘッドの要部拡大平面図である。
図4図2の部分拡大図である。
図5図3のV-V線に沿う部分拡大断面図である。
図6図4の部分拡大図である。
図7図1に示すサーマルプリントヘッドの要部拡大平面図である。
図8図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図9図1に示すサーマルプリントヘッドの製造方法の一例の一工程を示す断面図である。
図10図9に続く工程を示す断面図である。
図11図10に続く工程を示す断面図である。
図12図11に続く工程を示す断面図である。
図13図12に続く工程を示す断面図である。
図14図13に続く工程を示す断面図である。
図15図14に続く工程を示す断面図である。
図16図15に続く工程を示す断面図である。
図17図16に示す工程を説明するための拡大断面図である。
図18】リフロー処理後の状態を示す図17と同様の断面図である。
図19図16に示す工程を説明するための拡大断面図である。
図20】リフロー処理後の状態を示す図19と同様の断面図である。
図21図1に示すサーマルプリントヘッドの第1変形例を示す図7と同様の要部拡大平面図である。
図22図1に示すサーマルプリントヘッドの第2変形例を示す図7と同様の要部拡大平面図である。
図23図22のXXIII-XXIII線に沿う拡大断面図である。
図24図22のXXIV-XXIV線に沿う拡大断面図である。
図25図1に示すサーマルプリントヘッドの第3変形例を示す図6と同様の断面図である。
図26図1に示すサーマルプリントヘッドの第4変形例を示す図6と同様の断面図である。
図27図1に示すサーマルプリントヘッドの第5変形例を示す図6と同様の断面図である。
図28】本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す図4と同様の断面図である。
図29図28の部分拡大図である。
図30図28に示すサーマルプリントヘッドの変形例を示す図29と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
本開示において、「ある物Aがある物Bに形成されている」および「ある物Aがある物B上に形成されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接形成されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに形成されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物Bに配置されている」および「ある物Aがある物B上に配置されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接配置されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに配置されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物B上に位置している」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに接して、ある物Aがある物B上に位置していること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物が介在しつつ、ある物Aがある物B上に位置していること」を含む。また、「ある物Aがある物Bにある方向に見て重なる」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bのすべてに重なること」、および、「ある物Aがある物Bの一部に重なること」を含む。
【0015】
<第1実施形態>
図1図8は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA1は、基板1、グレーズ層2、配線層3、抵抗体層4、保護層5、ICチップ6、保護樹脂71およびコネクタ72を備えている。サーマルプリントヘッドA1は、ICチップ6がフリップチップ実装された実装構造(本開示に係るICチップの実装構造)を具備するものである。サーマルプリントヘッドA1は、プラテンローラ81(図2参照)によって搬送される印刷媒体82に印刷を施すプリンタに組み込まれるものである。このような印刷媒体82としては、たとえばバーコードシートやレシートを作成するための感熱紙が挙げられる。
【0016】
図1は、サーマルプリントヘッドA1を示す平面図である。図2は、図1のII-II線に沿う概略断面図である。図3は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大平面図である。図4は、図2の一部を拡大した断面図である。図5は、図3のV-V線に沿う部分拡大断面図である。図6は、図4の一部を拡大した断面図である。図7は、サーマルプリントヘッドA1の要部拡大平面図であり、ICチップの一部を表す。図8は、図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。なお、理解の便宜上、図1および図3においては、保護層5を省略している。図4においては、コネクタ73を省略している。図7においては、保護樹脂71を省略している。また、これらの図において、基板1の長手方向(主走査方向)をx方向とし、短手方向(副走査方向)をy方向とし、厚さ方向をz方向として説明する。また、y方向については、図1図3の下方(図2図4の左方)を印刷媒体が送られてくる「上流」とし、図1図3の上方(図2図4の右方)を印刷媒体が排出される「下流」とする。また、z方向については、図2図4の上方(方向zを示す矢印が指す方向)を「上方」とし、その反対方向を「下方」とする。以下の図においても同様である。
【0017】
基板1は、たとえばAl23などのセラミックからなり、その厚さがたとえば0.6~1.0mm程度とされている。図1に示すように、基板1は、x方向に長く延びる長矩形状とされている。グレーズ層2、配線層3、抵抗体層4、保護層5、ICチップ6および保護樹脂71は、基板1上に配置されている。コネクタ72は、外部の機器との接続を行うためのものであり、たとえば、基板1 のy方向における図1中下端部に設けられている。
【0018】
グレーズ層2は、基板1上に配置されており、例えば非晶質ガラスなどのガラス材料からなる。本実施形態のグレーズ層2は、一定の厚みを有するように形成されており、z方向の上方を向く略平坦な主面21を有している。グレーズ層2の厚みは、たとえば50~200μmである。
【0019】
サーマルプリントヘッドA1は、いわゆる厚膜型と呼ばれる構成を備えており、厚膜印刷を利用して製作される。グレーズ層2は、ガラスペーストを基板1上に厚膜印刷したのちに、これを焼成することにより形成されている。換言すると、グレーズ層2は、厚膜形成技術によって形成されている。
【0020】
配線層3は、抵抗体層4に通電するための経路を構成するためのものであり、グレーズ層2の主面21上に配置されている。配線層3は、抵抗体層4の比抵抗値よりも小さな比抵抗値を有するように形成されている。本実施形態の配線層3は、第1金属部3aと、第1金属部3aとは異なる金属からなる第2金属部3bと、を有する。具体的には、第1金属部3aは金(Au)を主成分とした導電体からなり、第2金属部3bは銀(Ag)を主成分とした導電体からなる。第1金属部3aは、たとえば添加元素としてロジウム、バナジウム、ビスマス、シリコンなどが添加されたレジネートAuからなる。導電性の観点から言えば、第1金属部3aのみで構成した方が優れた性質を得ることができるが、コスト面の問題を考慮するとより安価な第2金属部3bを併用することが望ましい。
【0021】
図3図8等に示すように、配線層3は、共通電極33、複数の個別電極34、および複数の信号配線部37、および複数のパッド部38を有している。
【0022】
共通電極33は、共通部331および複数の共通電極帯状部332を有する。具体的には、共通部331は、抵抗体層4に対してy方向下流側に配置されており、x方向に沿って延びている。複数の共通電極帯状部332は、各々が共通部331からy方向上流側に延びており、x方向に等ピッチで配列されている。
【0023】
複数の個別電極34は、抵抗体層4に対して部分的に通電するためのものであり、共通電極33に対して逆極性となる部位である。個別電極34は、抵抗体層4からICチップ6に向かって延びている。複数の個別電極34は、x方向に配列されており、各々が個別電極帯状部35および連結部36を有している。
【0024】
各個別電極帯状部35は、y方向に延びた帯状部分であり、共通電極33の隣り合う2つの共通電極帯状部332の間に位置している。連結部36は、個別電極帯状部35からICチップ6に向かって延びる部分であり、そのほとんどがy方向に沿った部位およびy方向に対して傾斜した部位を有している。連結部36は、y方向上流側において、x方向に比較的狭い間隔で配列されている。当該y方向上流側において隣り合う連結部36どうしの間隔は、たとえば20μm以下程度となっている。図7に示すように、各連結部36のy方向上流側端部は、z方向に見てICチップ6と重なっている。
【0025】
複数の信号配線部37は、コネクタ72とICチップ6とに接続される配線パターンを構成している。図7に示すように、複数の信号配線部37は、ICチップ6の近傍において、x方向に配列されるとともに各々がy方向に延びている。各信号配線部37のy方向下流側端部は、z方向に見てICチップ6と重なっている。なお、サーマルプリントヘッドA1に使用されるICチップ6は、通常、長矩形状の平面形状を有する(図1参照)。ICチップ6の長辺は、抵抗体層4が延びる方向であるx方向(主走査方向)に沿う。
【0026】
本実施形態では、図3図5に示すように、第1金属部3aは、共通電極33の共通部331および複数の共通電極帯状部332と、複数の個別電極34における個別電極帯状部35と、を含む。第1金属部3aは、抵抗体層4(後述の複数の発熱部41)に繋がっている。第2金属部3bは、第1金属部3aに対してy方向上流側の領域に配置されている。第2金属部3bは、複数の個別電極34における連結部36と、複数の信号配線部37と、を含む。
【0027】
図6図8に示すように、複数のパッド部38は、複数の導電性接合材62を介して、フリップチップ実装されたICチップ6と接続される部分である。複数のパッド部38は、x方向およびy方向に複数ずつ配列されている。図7に示すように、複数のパッド部38は、複数の連結部36(個別電極34)のいずれかのy方向上流側端部、または複数の信号配線部37のいずれかのy方向下流側端部につながっている。本実施形態において、複数のパッド部38は、y方向において2列に形成されている。
【0028】
ICチップ6の実装面61(基板1に対向する面)には、複数の導電性接合材62が配置されている。導電性接合材62は、たとえばはんだバンプである。上記複数のパッド部38は、複数の導電性接合材62に対応して配置されている。
【0029】
上記パッド部38は、x方向においては、複数の連結部36(個別電極34)や複数の信号配線部37に対応して多数配列されている。x方向において隣接するパッド部38の間隔L1は、比較的小さくされており、たとえば10~20μm程度である。一方、y方向におけるパッド部38の間隔L2は、比較的大きくされており、たとえば100~200μm程度である。
【0030】
複数のパッド部38は、少なくとも2つの凹状パッド部381を含む。本実施形態においては、複数のパッド部38のすべてが凹状パッド部381とされている。パッド部38という文言は、凹状パッド部381と、凹状ではないパッド部(厚さ方向に沿って見て全範囲が平坦であるパッド部)との双方を含む。
【0031】
本実施形態では、配線層3(第2金属部3b)は、第1層31および第2層32を含んで構成されており、凹状パッド部381は、第1層31および第2層32により構成される。具体的には、第1層31は、グレーズ層2の主面21上に配置されている。第1層31は、上方を向く平坦な表面311を有する。第1層31の厚さは、たとえば2~5μm程度である。第2層32は、第1層31の表面311上に配置されている。第2層32は、第1層31の一部分の上に配置されている。第2層32は、複数のパッド部38(凹状パッド部381)に対応して複数の領域に形成される。第2層32の各領域は、z方向に見て矩形環状とされており、頂面321を有する。頂面321は、第2層32におけるz方向上端面である。第2層32の厚さ(表面311から頂面321までのz方向における寸法)は、たとえば2~5μm程度である。
【0032】
本実施形態において、凹状パッド部381は、底面312および内壁面322を有する。底面312は、第1層31の表面311のうち、z方向に見て第2層32によって囲まれた領域により構成される。内壁面322は、第2層32の各領域のうち、z方向に見て底面312を向く面によって構成される。本実施形態では、内壁面322は、z方向に見て底面312を囲む矩形環状とされている。そして、図6図8に示すように、複数の導電性接合材62は、それぞれ、その一部が凹状パッド部381の内側空間に収容されつつ、凹状パッド部381(配線層3の第1層31ないし第2層32)に接合されている。
【0033】
抵抗体層4は、配線層3を構成する材料よりも抵抗率が高い、たとえば酸化ルテニウムなどからなり、x方向に延びる帯状に形成されている。図3に示すように、抵抗体層4は、共通電極33の複数の共通電極帯状部332と複数の個別電極34の個別電極帯状部35とに交差している。さらに、抵抗体層4は、共通電極33の複数の共通電極帯状部332と複数の個別電極34の個別電極帯状部35に対して基板1とは反対側に積層されている。抵抗体層4のうち各共通電極帯状部332と各個別電極帯状部35とに挟まれた部位が、配線層3によって部分的に通電されることにより発熱する発熱部41とされている。1個の個別電極帯状部35を挟んで隣り合う2個の発熱部41の発熱によって1個の印字ドットが形成される。抵抗体層4の厚さは、たとえば3~10μm程度である。
【0034】
保護層5は、配線層3および抵抗体層4を保護するためのものである。保護層5は、たとえば非晶質ガラスからなる。ただし、保護層5は、複数の凹状パッド部381(パッド部38)を含む領域を露出させている。
【0035】
ICチップ6は、複数の個別電極34を選択的に通電させることにより、抵抗体層4を部分的に発熱させる機能を果たす。図1図4に示すように、ICチップ6は、抵抗体層4(複数の発熱部41)に対してy方向上流側に配置されている。本実施形態において、グレーズ層2上に複数のICチップ6がフリップチップ実装により配置されている。上述のように、ICチップ6の実装面61には複数の導電性接合材62が設けられており、これら導電性接合材62が複数の凹状パッド部381に接合されている。図2図4および図6に示すように、ICチップ6は、保護樹脂71によって覆われている。保護樹脂71は、たとえば黒色の軟質樹脂からなる。また、ICチップ6とコネクタ72とは、上記複数の信号配線部37によって接続されている。ICチップ6には、コネクタ72を介して外部から送信される印字信号、制御信号および複数の発熱部41に供給される電圧が入力される。複数の発熱部41は、印字信号および制御信号にしたがって個別に通電されることにより、選択的に発熱させられる。
【0036】
上記構成において、基板1および当該基板1上に配置されたグレーズ層2は、本開示における「基材」を構成している。また、基板1およびグレーズ層2(基材)と、グレーズ層2の主面21上に配置された配線層3とが、本開示における「支持部材」を構成する。
【0037】
次に、サーマルプリントヘッドA1の使用方法の一例について簡単に説明する。
【0038】
サーマルプリントヘッドA1は、プリンタに組み込まれた状態で使用される。図2に示したように、当該プリンタ内において、サーマルプリントヘッドA1の各発熱部41はプラテンローラ81に対向している。当該プリンタの使用時には、プラテンローラ81が回転することにより、感熱紙などの印刷媒体82が、y方向に沿ってプラテンローラ81と各発熱部41との間に一定速度で送給される。印刷媒体82は、プラテンローラ81によって保護層5のうち各発熱部41を覆う部分に押しあてられる。一方、図3に示した各個別電極34には、ICチップ6によって選択的に電位が付与される。これにより、共通電極33と複数の個別電極34の各々との間に電圧が印加される。そして、複数の発熱部41には選択的に電流が流れ、熱が発生する。そして、各発熱部41にて発生した熱は、保護層5を介して印刷媒体82に伝わる。そして、印刷媒体82上のx方向に線状に延びるライン領域に、複数のドットが印刷される。また、各発熱部41にて発生した熱は、グレーズ層2にも伝わり、グレーズ層2にて蓄えられる。
【0039】
次に、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一例について、図9図20を参照しつつ、以下に説明する。なお、図9図16はそれぞれ、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一工程を示す断面図であって、図4に示す断面の部分拡大図に対応する。
【0040】
まず、図9に示すように、基板1を準備する。基板1は、たとえばAl23などのセラミックからなる板材であり、所定の厚さを有する。
【0041】
次いで、図10に示すように、グレーズ層2を形成する。グレーズ層2の形成は、基板1上にガラスペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することにより行う。グレーズ層2は、基板1の全面を覆う。グレーズ層2は、主面21を有する。主面21は、略平坦であり、z方向の上方を向く。図9および図10に示した工程が、本開示の「基材を準備する工程」に相当する。
【0042】
次いで、図11に示すように、配線層3の第1金属部3aを形成する。ここで、まずグレーズ層2の主面21上にレジネートAuのペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することにより、金属膜を形成する。次いで、金属膜に対してたとえばエッチング等を用いたパターニングを施すことにより、所定形状の第1金属部3aが形成される。
【0043】
次に、図12に示すように、配線層3(第2金属部3b)の第1層31を形成する(第1層形成工程)。ここで、まずグレーズ層2の主面21上にネガ型の感光性Agペーストをスクリーン印刷により配置し、乾燥する。次いで、たとえばフォトマスクを使用して、主面21上の感光性Agペーストを紫外線により部分的に露光する。感光性Agペーストの露光箇所は、第1層31となるべき部位である。次いで、現像液を用いて、感光性Agペーストのうち露光した部分以外を除去する。次いで、主面21上に残存する感光性Agペーストを焼成して膜化させる。これにより、第1層31が形成される。なお、第1層31の形成に用いられる上記感光性Agペーストは、本開示でいう「第1感光性金属ペースト」に相当する。
【0044】
次いで、図13に示すように、配線層3(第2金属部3b)の第2層32を形成する。ここで、まず第1層31の表面311上にネガ型の感光性Agペーストをスクリーン印刷により配置し、乾燥する。次いで、たとえばフォトマスクを使用して、第1層31上の感光性Agペーストを紫外線により部分的に露光する。感光性Agペーストの露光箇所は、第2層32となるべき部位である。次いで、現像液を用いて、感光性Agペーストのうち露光した部分以外を除去する。次いで、第1層31上に残存する感光性Agペーストを焼成して膜化させる。これにより、第2層32が形成される。ここで、第2層32は、複数の連結部36の端部および複数の信号配線部37の端部それぞれに対応した複数の領域に形成されており、第2層32の各領域はz方向に見て矩形環状に形成される。第2層32の形成により、第1層31の表面311のうちz方向に見て第2層32によって囲まれた各領域が底面312となる。また、第2層32の各領域において、z方向に見て底面312を向く面が内壁面322となる。このようにして、本工程では、各々が底面312および内壁面322を有する、複数の凹状パッド部381が形成される。なお、第2層32の形成に用いられる上記感光性Agペーストは、本開示でいう「第2感光性金属ペースト」に相当する。
【0045】
次いで、図14に示すように、抵抗体層4を形成する。抵抗体層4の形成は、たとえば酸化ルテニウムなどの抵抗体を含む抵抗体ペーストを厚膜印刷し、これを焼成することによって行う。
【0046】
次いで、図15に示すように、保護層5を形成する。保護層5の形成は、たとえばガラスペーストを厚膜印刷によって保護層5を形成すべき領域に塗布し、これを焼成することによって行う。その後、基板1をx方向およびy方向に沿って格子状に切断し、複数の個片に分割する。当該個片に分割する工程は、たとえばレーザ照射により行う。各個片が、サーマルプリントヘッドA1の基板1に相当する。
【0047】
次に、図16に示すように、ICチップ6をグレーズ層2上にフリップチップ実装により搭載する。ここで、まず複数の導電性接合材62にたとえばフラックス(図示略)を塗布して、ICチップ6の実装面61に形成された複数の電極(図示略)に導電性接合材62をそれぞれ配置しておく。別の方法として、複数の電極(図示略)にフラックス(図示略)を塗布した後に、各電極に各導電性接合材62を配置してもよい。ICチップ6の搭載時には、マウンタ(図示略)によって複数の導電性接合材62と複数のパッド部38(凹状パッド部381)とを位置合わせしつつICチップ6を配線層3上に載置し、複数の導電性接合材62と複数のパッド部38(凹状パッド部381)とを上記フラックスにより仮付けする。次いで、リフロー処理により複数の導電性接合材62を溶融させて、複数のパッド部38(凹状パッド部381)と複数の導電性接合材62とを接合させる。
【0048】
上記リフロー処理の前、上記のようにICチップ6を配線層3上に載置し、複数の導電性接合材62と複数のパッド部38(凹状パッド部381)とを仮付けした時点において、機械的なバラつきによりICチップ6の搭載位置がずれる場合がある。この場合、たとえば図17図19に示すように、複数のパッド部38(凹状パッド部381)に対して複数の導電性接合材62の位置がずれている。図17は、複数の導電性接合材62(ICチップ6)のy方向における位置ずれの態様を示し、図19は、複数の導電性接合材62(ICチップ6)のx方向における位置ずれの態様を示す。
【0049】
図17図19に示した態様では、リフロー処理の際に導電性接合材62が溶融するのに伴い、導電性接合材62が凹状パッド部381の凹形状(底面312と内壁面322とにより囲まれた空間)に落ち込むように誘導される。これにより、図18図20に示すように、導電性接合材62が凹状パッド部381に収容され、導電性接合材62およびICチップ6の位置ずれが改善される。
【0050】
ICチップ6のフリップチップ実装後、保護樹脂71の形成やコネクタ72の取り付けなどを行うことにより、サーマルプリントヘッドA1が得られる。
【0051】
次に、サーマルプリントヘッドA1の作用について説明する。
【0052】
フリップチップ実装されたICチップ6の実装面61には、複数の導電性接合材62が配置されている。配線層3(支持部材)は、複数の導電性接合材62に対応して配置された複数のパッド部38を有し、当該複数のパッド部38は少なくとも2つの凹状パッド部381を含む。このような構成によれば、ICチップ6の搭載時に多少の位置ずれが生じても、配線層3(支持部材)への導電性接合材62の接合時(リフロー処理時)には、導電性接合材62が凹状パッド部381(底面312と当該底面312を向く内壁面322とにより囲まれた空間)に落ち込むように誘導される。これにより、導電性接合材62およびICチップ6の位置ずれが改善され、ICチップ6のフリップチップ実装時の位置ずれに起因する不具合を防止するのに適する。
【0053】
配線層3は、第1層31および第2層32を含む。第1層31はグレーズ層2の主面21上に配置され、第2層32は、第1層31の一部分の上に配置されている。凹状パッド部381の底面312は第1層31によって構成されており、凹状パッド部381の内壁面322は第2層32により構成されている。このよう構成によれば、凹状パッド部381に収容された導電性接合材62は、底面312および内壁面322(第1層31および第2層32)に跨って接合されるので接合面積が大きくなり、導電性接合材62の接合強度を高めるのに適する。また、本実施形態では、導電性接合材62と配線層3(第1層31および第2層32)との接合面積が大きくなるので、導電性接合材62と配線層3との導通接合の信頼性が向上する。
【0054】
本実施形態において、凹状パッド部381を構成する内壁面322は、z方向に見て底面312を囲む矩形環状(環状)をなす。このような構成によれば、ICチップ6の搭載時にx方向およびy方向の双方に位置ずれが生じる場合であっても、導電性接合材62およびICチップ6のx方向およびy方向の双方の位置ずれが改善される。
【0055】
本実施形態では、複数のパッド部38のすべてが凹状パッド部381とされている。このような構成によれば、ICチップ6のフリップチップ実装時における位置ずれの改善効果がより確実に得られる。
【0056】
<第1実施形態の変形例>
図21図24は、上記した第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドA1の変形例を示している。なお、図21以降の図面において、上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
【0057】
<第1実施形態の第1変形例>
図21は、第1実施形態の第1変形例を示している。本変形例のサーマルプリントヘッドA11は、複数のパッド部38の一部が凹状パッド部381として構成されており、複数のパッド部38のすべてが凹状パッド部381として構成された上記サーマルプリントヘッドA1と異なっている。
【0058】
図21に例示したサーマルプリントヘッドA11においては、複数のパッド部38は、x方向およびy方向に複数ずつ配列されており、これらパッド部38のうちx方向およびy方向の4隅に位置するものが凹状パッド部381として構成される。各凹状パッド部381の具体的構成は、上記サーマルプリントヘッドA1と同じである。したがって、凹状パッド部381を構成する第2層32の各領域は、z方向に見て矩形環状とされている。凹状パッド部381は、第1層31により構成される底面312と、第2層32により構成され、かつz方向に見て底面312を囲む矩形環状をなす内壁面322と、を有する。本変形例において、凹状パッド部381の配置以外の構成は上記のサーマルプリントヘッドA1と同一である。
【0059】
詳細な図示説明は省略するが、フリップチップ実装されたICチップ6の実装面61には、複数の導電性接合材62が配置されている。本変形例においても、配線層3(支持部材)は、複数の導電性接合材62に対応して配置された複数のパッド部38を有し、当該複数のパッド部38は複数(4個)の凹状パッド部381を含む。このような構成によれば、ICチップ6の搭載時に多少の位置ずれが生じても、配線層3(支持部材)への導電性接合材62の接合時(リフロー処理時)には、導電性接合材62が凹状パッド部381(底面312と当該底面312を向く内壁面322とにより囲まれた空間)に落ち込むように誘導される。これにより、導電性接合材62およびICチップ6の位置ずれが改善され、ICチップ6のフリップチップ実装時の位置ずれに起因する不具合を防止するのに適する。なお、図21に示された4個の凹状パッド部381に代えて、ICチップ6の対角線方向に沿った2つの隅に1個ずつ凹状パッド部381を配置してもよい。この場合には、1個のICチップ6に2個の凹状パッド部381が配置される。上述した2個の凹状パッド部381に加えて、もう1箇所の隅に位置する凹状パッド部381を含めた3個の凹状パッド部381を使用してもよい。この場合にも、ICチップ6のフリップチップ実装時の位置ずれに起因する不具合を防止することができる。
【0060】
配線層3は、第1層31および第2層32を含む。第1層31はグレーズ層2の主面21上に配置され、第2層32は、第1層31の一部分の上に配置されている。凹状パッド部381の底面312は第1層31によって構成されており、凹状パッド部381の内壁面322は第2層32により構成されている。このよう構成によれば、凹状パッド部381に収容された導電性接合材62は、底面312および内壁面322(第1層31および第2層32)に跨って接合されるので接合面積が大きくなり、導電性接合材62の接合強度を高めるのに適する。また、本実施形態では、導電性接合材62と配線層3(第1層31および第2層32)との接合面積が大きくなるので、導電性接合材62と配線層3との導通接合の信頼性が向上する。
【0061】
本変形例では、複数のパッド部38のうちx方向およびy方向の4隅に位置するものが凹状パッド部381として構成される。このような構成によれば、ICチップ6のフリップチップ実装時における位置ずれの改善効果が適切に得られる。
【0062】
<第1実施形態の第2変形例>
図22図24は、第1実施形態の第2変形例を示している。本変形例のサーマルプリントヘッドA12は、凹状パッド部381の具体的構成が上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と異なっている。
【0063】
図22図24に例示したサーマルプリントヘッドA12においては、凹状パッド部381を構成する第2層32の各領域の形状がサーマルプリントヘッドA1と異なっている。凹状パッド部381を構成する第2層32の各領域は、x方向に互いに離間し、かつ各々がy方向に延びる一対の起立壁により構成される。第1層31の表面311のうち、z方向に見て上記一対の起立壁に挟まれた部位が凹状パッド部381の底面312である。そして上記一対の起立壁は、互いに対向する一対の内壁面322を有し、当該一対の内壁面322は、ICチップ6の長手方向に相当するx方向一方側およびx方向他方側を向いている。
【0064】
本変形例のサーマルプリントヘッドA12において、フリップチップ実装されたICチップ6の実装面61には、複数の導電性接合材62が配置されている。本変形例においても、配線層3(支持部材)は、複数の導電性接合材62に対応して配置された複数のパッド部38を有し、当該複数のパッド部38は複数の凹状パッド部381を含む。このような構成によれば、ICチップ6の搭載時にx方向において多少の位置ずれが生じても、配線層3(支持部材)への導電性接合材62の接合時(リフロー処理時)には、導電性接合材62が凹状パッド部381(底面312と当該底面312を向く内壁面322とにより囲まれた空間)に落ち込むように誘導される。これにより、導電性接合材62およびICチップ6の位置ずれが改善され、ICチップ6のフリップチップ実装時の位置ずれに起因する不具合を防止するのに適する。
【0065】
配線層3は、第1層31および第2層32を含む。第1層31はグレーズ層2の主面21上に配置され、第2層32は、第1層31の一部分の上に配置されている。凹状パッド部381の底面312は第1層31によって構成されており、凹状パッド部381に内壁面322は第2層32により構成されている。このよう構成によれば、凹状パッド部381に収容された導電性接合材62は、底面312および内壁面322(第1層31および第2層32)に跨って接合されるので接合面積が大きくなり、導電性接合材62の接合強度を高めるのに適する。また、本実施形態では、導電性接合材62と配線層3(第1層31および第2層32)との接合面積が大きくなるので、導電性接合材62と配線層3との導通接合の信頼性が向上する。
【0066】
本変形例では、内壁面322は第2層32により構成されている。また、凹状パッド部381は、x方向一方側およびx方向他方側を向き、互いに対向する一対の内壁面322を有する。このような構成によれば、ICチップ6のフリップチップ実装時に、ICチップ6の長手方向に相当するx方向の位置ずれを適切に改善することができる。また、x方向において隣接するパッド部38の間隔L1は、y方向におけるパッド部38の間隔L2よりも小さい。かかる構成において、第2層32の形成領域を減らしつつ、ICチップ6の位置ずれ改善効果が効率的に得られる。
【0067】
<第1実施形態の第3変形例>
図25は、第1実施形態の第3変形例を示している。本変形例のサーマルプリントヘッドA13において、配線層3は第2層32を有さず、単一層からなり、これに伴い凹状パッド部381の構成が上記サーマルプリントヘッドA1と異なっている。
【0068】
図25に例示したサーマルプリントヘッドA13において、複数のパッド部38のすべてが凹状パッド部381であり、各凹状パッド部381は、配線層3が表面311から部分的に凹んだ構成とされている。凹状パッド部381は、底面313および内壁面314を有する。底面313は、配線層3において相対的に厚さが小である部位により構成されている。内壁面322は、z方向に見て底面313を囲む環状をなす。このような凹状パッド部381を有する配線層3は、グレーズ層2の主面21上に形成されており、たとえばAgを主成分として含む導電体からなる。配線層3の形成においては、まず主面21上にAgペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することにより、金属膜を形成する。次いで、金属膜に対してたとえばエッチング等の手法を用いたパターニングを施すことにより、複数の個別電極34および複数の信号配線部37等を有する配線層3を形成する。次いで、配線層3にたとえばハーフエッチング等の手法を用いたパターニングを施すことにより、底面313および内壁面314を有する凹状パッド部381が形成される。
【0069】
本変形例のサーマルプリントヘッドA13において、フリップチップ実装されたICチップ6の実装面61には、複数の導電性接合材62が配置されている。本変形例においても、配線層3(支持部材)は、複数の導電性接合材62に対応して配置された複数のパッド部38を有し、当該複数のパッド部38は複数の凹状パッド部381を含む。このような構成によれば、ICチップ6の搭載時に多少の位置ずれが生じても、配線層3(支持部材)への導電性接合材62の接合時(リフロー処理時)には、導電性接合材62が凹状パッド部381(底面313と当該底面313を向く内壁面314とにより囲まれた空間)に落ち込むように誘導される。これにより、導電性接合材62およびICチップ6の位置ずれが改善され、ICチップ6のフリップチップ実装時の位置ずれに起因する不具合を防止するのに適する。
【0070】
凹状パッド部381は、配線層3に形成されており、底面313および内壁面314を有する。底面313は、配線層3において相対的に厚さが小である部位により構成されており、内壁面322は、z方向に見て底面313を囲む環状をなす。このよう構成によれば、凹状パッド部381に収容された導電性接合材62は、底面312および内壁面322に跨って接合されるので配線層3との接合面積が大きくなり、導電性接合材62の接合強度を高めるのに適する。また、内壁面322がz方向に見て底面313を囲む環状をなす構成によれば、ICチップ6の搭載時にx方向およびy方向の双方に位置ずれが生じる場合であっても、導電性接合材62およびICチップ6のx方向およびy方向の双方の位置ずれが改善される。
【0071】
本変形例では、複数のパッド部38のすべてが凹状パッド部381とされている。このような構成によれば、ICチップ6のフリップチップ実装時における位置ずれの改善効果がより確実に得られる。
【0072】
<第1実施形態の第4変形例>
図26は、第1実施形態の第4変形例を示している。本変形例のサーマルプリントヘッドA14において、配線層3は単一層からなり、これに伴い凹状パッド部381の構成が上記サーマルプリントヘッドA1と異なっている。
【0073】
図26に例示したサーマルプリントヘッドA14において、複数のパッド部38のすべてが凹状パッド部381であり、各凹状パッド部381は、配線層3が部分的にグレーズ層2まで貫通した構成とされている。凹状パッド部381は、底面211および内壁面315を有する。底面211は、グレーズ層2の主面21において配線層3から露出する部位によって構成されている。内壁面315は、z方向に見て底面211を囲む環状とされており、配線層3の貫通部内面により構成される。本変形例において、凹状パッド部381は、グレーズ層2と配線層3とにより構成される。
【0074】
本変形例おける配線層3は、グレーズ層2の主面21上に形成されており、たとえばAgを主成分として含む導電体からなる。配線層3の形成においては、まず主面21上にAgペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することにより、金属膜を形成する。次いで、金属膜に対してたとえばエッチング等の手法を用いたパターニングを施すことにより、複数の個別電極34および複数の信号配線部37等を有する配線層3が形成され、これと併せて、各々が底面211および内壁面315を有する複数の凹状パッド部381が形成される。
【0075】
本変形例のサーマルプリントヘッドA14において、フリップチップ実装されたICチップ6の実装面61には、複数の導電性接合材62が配置されている。本変形例においても、グレーズ層2ないし配線層3(支持部材)は、複数の導電性接合材62に対応して配置された複数のパッド部38を有し、当該複数のパッド部38は複数の凹状パッド部381を含む。このような構成によれば、ICチップ6の搭載時に多少の位置ずれが生じても、配線層3(支持部材)への導電性接合材62の接合時(リフロー処理時)には、導電性接合材62が凹状パッド部381(底面211と当該底面211を向く内壁面315とにより囲まれた空間)に落ち込むように誘導される。これにより、導電性接合材62およびICチップ6の位置ずれが改善され、ICチップ6のフリップチップ実装時の位置ずれに起因する不具合を防止するのに適する。
【0076】
凹状パッド部381の底面211は、グレーズ層2の主面21において配線層3から露出する部位によって構成されている。内壁面315は、配線層3により構成されており、z方向に見て底面211を囲む環状とされている。このような構成によれば、ICチップ6の搭載時にx方向およびy方向の双方に位置ずれが生じる場合であっても、導電性接合材62およびICチップ6のx方向およびy方向の双方の位置ずれが改善される。
【0077】
本変形例では、複数のパッド部38のすべてが凹状パッド部381とされている。このような構成によれば、ICチップ6のフリップチップ実装時における位置ずれの改善効果がより確実に得られる。
【0078】
<第1実施形態の第5変形例>
図27は、第1実施形態の第5変形例を示している。本変形例のサーマルプリントヘッドA15は、配線層3は単一層からなり、これに伴い凹状パッド部381の構成が上記サーマルプリントヘッドA1と異なっている。
【0079】
図27に例示したサーマルプリントヘッドA15において、複数のパッド部38のすべてが凹状パッド部381である。各凹状パッド部381は、表面311から部分的に凹んだ構成と配線層3が部分的にグレーズ層2まで貫通した構成との組み合わせにより構成される。凹状パッド部381は、底面212、中間面316、内壁面317および内壁面318を有する。底面212は、グレーズ層2の主面21において配線層3から露出する部位によって構成されている。内壁面318は、z方向に見て底面212を囲む環状とされており、配線層3の貫通部内面により構成される。中間面316は、配線層3において相対的に厚さが小である部位により構成されている。内壁面317は、z方向に見て底面212および中間面316を囲む環状をなす。本変形例において、凹状パッド部381は、グレーズ層2と配線層3とにより構成される。
【0080】
本変形例おける配線層3は、グレーズ層2の主面21上に形成されており、たとえばAgを主成分として含む導電体からなる。配線層3の形成においては、まず主面21上にAgペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することにより、金属膜を形成する。次いで、金属膜に対してたとえばエッチング等の手法を用いたパターニングを施すことにより、複数の個別電極34および複数の信号配線部37等を有する配線層3を形成する。次いで、配線層3にたとえばハーフエッチング等の手法を用いたパターニングを施すことにより、中間面316および内壁面317を形成する。次いで、配線層3にエッチング等の手法を用いたパターニングを施すことにより、各々が底面212、中間面316、内壁面317および内壁面318を有する複数の凹状パッド部381が形成される。
【0081】
本変形例のサーマルプリントヘッドA15において、フリップチップ実装されたICチップ6の実装面61には、複数の導電性接合材62が配置されている。本変形例においても、グレーズ層2ないし配線層3(支持部材)は、複数の導電性接合材62に対応して配置された複数のパッド部38を有し、当該複数のパッド部38は複数の凹状パッド部381を含む。このような構成によれば、ICチップ6の搭載時に多少の位置ずれが生じても、配線層3(支持部材)への導電性接合材62の接合時(リフロー処理時)には、導電性接合材62が凹状パッド部381(底面212と当該底面212を向く内壁面317,318とにより囲まれた空間)に落ち込むように誘導される。これにより、導電性接合材62およびICチップ6の位置ずれが改善され、ICチップ6のフリップチップ実装時の位置ずれに起因する不具合を防止するのに適する。
【0082】
凹状パッド部381の底面211は、グレーズ層2の主面21において配線層3から露出する部位によって構成されている。内壁面317は、配線層3により構成されており、z方向に見て底面211を囲む環状とされている。このような構成によれば、ICチップ6の搭載時にx方向およびy方向の双方に位置ずれが生じる場合であっても、導電性接合材62およびICチップ6のx方向およびy方向の双方の位置ずれが改善される。
【0083】
内壁面318は、z方向に見て底面212を囲む環状をなす。中間面316は、配線層3において相対的に厚さが小である部位により構成されており、内壁面317は、z方向に見て底面212および中間面316を囲む環状をなす。このような構成によれば、凹状パッド部381に収容された導電性接合材62は、内壁面318、中間面316および内壁面317に跨って接合されるので配線層3との接合面積が大きくなり、導電性接合材62の接合強度を高めるのに適する。
【0084】
本変形例では、複数のパッド部38のすべてが凹状パッド部381とされている。このような構成によれば、ICチップ6のフリップチップ実装時における位置ずれの改善効果がより確実に得られる。
【0085】
<第2実施形態>
図28図29は、本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA2は、グレーズ層2の構成および配線層3の構成が上記実施形態のサーマルプリントヘッドA11と異なっている。これに伴い、凹状パッド部381の構成が上記サーマルプリントヘッドA1と異なっている。
【0086】
図28に示したサーマルプリントヘッドA11において、グレーズ層2は、ヒーターグレーズ部22およびガラス層23を有する。ヒーターグレーズ部22は、x方向と直角である断面形状がz方向に膨出した形状であり、x方向に長く延びるz方向視帯状である。ガラス層23は、ヒーターグレーズ部22に隣接して形成されており、上面(主面231)が平坦な形状である。ガラス層23は、ヒーターグレーズ部22の一部に重なっている。抵抗体層4(複数の発熱部41)は、ヒーターグレーズ部22の上に配置されており、z方向視においてヒーターグレーズ部22と重なっている。このようなヒーターグレーズ部22およびガラス層23を有するグレーズ層2を形成する際には、基板1上にガラスペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することを複数回繰り返す。
【0087】
図29に示すように、配線層3は、基層3cおよびめっき層3dを有する。基層3cは、配線層3の大部分を占めており、共通電極33、複数の個別電極34および複数の信号配線部37は基層3cにより構成される。基層3cを構成する材料としては、たとえばAlが挙げられる。基層3cは、たとえばスパッタリングなどの薄膜形成技術によって形成される。基層3cの厚さは、たとえば、0.5~2.0μm程度である。
【0088】
めっき層3dは、複数のパッド部38(凹状パッド部381)を形成するために設けられたものであり、基層3cの一部分に積層されている。めっき層3dは、複数の個別電極34における連結部36のy方向上流側端部付近と、複数の信号配線部37のy方向下流側端部付近と、に積層される。めっき層3dは、たとえばNiからなる無電解めっきである。めっき層3dの厚さは、たとえば、1~2μm程度である。
【0089】
本実施形態のサーマルプリントヘッドA2において、複数のパッド部38のすべてが凹状パッド部381である。各凹状パッド部381は、配線層3(基層3cおよびめっき層3d)が部分的にグレーズ層2(ガラス層23)まで貫通した構成とされている。凹状パッド部381は、底面232および内壁面303を有する。底面232は、ガラス層23の主面231において配線層3から露出する部位によって構成されている。内壁面303は、z方向に見て底面232を囲む環状とされており、めっき層3dの貫通部内面により構成される。本変形例において、凹状パッド部381は、グレーズ層2(ガラス層23)と配線層3(めっき層3d)とにより構成される。
【0090】
凹状パッド部381の形成においては、基層3cに対してエッチング等の手法を用いてパターニングを施すことにより、複数の個別電極34や複数の信号配線部37の形成とともに、基層3cの表面301からガラス層23まで貫通する孔302を形成する。これにより、ガラス層23の主面231の一部が配線層3から露出し、底面232となる。次いで、基層3cの表面301の一部および孔302を覆うめっき層3dを形成する。これにより、めっき層3dにおいては、z方向に見て底面232を向く内壁面303が形成される。このようにして、各々が底面232および内壁面303を有する複数の凹状パッド部381が形成される。
【0091】
本実施形態のサーマルプリントヘッドA2において、フリップチップ実装されたICチップ6の実装面61には、複数の導電性接合材62が配置されている。本実施形態においても、グレーズ層2ないし配線層3(支持部材)は、複数の導電性接合材62に対応して配置された複数のパッド部38を有し、当該複数のパッド部38は複数の凹状パッド部381を含む。このような構成によれば、ICチップ6の搭載時に多少の位置ずれが生じても、配線層3(支持部材)への導電性接合材62の接合時(リフロー処理時)には、導電性接合材62が凹状パッド部381(底面232と当該底面232を向く内壁面303とにより囲まれた空間)に落ち込むように誘導される。これにより、導電性接合材62およびICチップ6の位置ずれが改善され、ICチップ6のフリップチップ実装時の位置ずれに起因する不具合を防止するのに適する。
【0092】
凹状パッド部381の底面232は、ガラス層23(グレーズ層2)の主面231において配線層3から露出する部位によって構成されている。内壁面315は、配線層3により構成されており、z方向に見て底面211を囲む環状とされている。このような構成によれば、ICチップ6の搭載時にx方向およびy方向の双方に位置ずれが生じる場合であっても、導電性接合材62およびICチップ6のx方向およびy方向の双方の位置ずれが改善される。
【0093】
本実施形態では、複数のパッド部38のすべてが凹状パッド部381とされている。このような構成によれば、ICチップ6のフリップチップ実装時における位置ずれの改善効果がより確実に得られる。
【0094】
<第2実施形態の変形例>
図30は、第2実施形態の変形例を示している。本変形例のサーマルプリントヘッドA21は、配線層3の基層3cおよびめっき層3dの構成が上記実施形態のサーマルプリントヘッドA2と異なっている。これに伴い、凹状パッド部381の構成が上記サーマルプリントヘッドA2と異なっている。
【0095】
本変形例のサーマルプリントヘッドA21において、複数のパッド部38のすべてが凹状パッド部381である。各凹状パッド部381は、配線層3が部分的に凹んだ構成とされている。凹状パッド部381は、底面306および内壁面307を有する。底面306は、配線層3において相対的に厚さが小である部位により構成されている。内壁面307は、z方向に見て底面306を囲む環状をなす。底面306および内壁面307は、めっき層3d(配線層3)により構成される。
【0096】
凹状パッド部381の形成においては、まず基層3cに対してエッチング等の手法を用いてパターニングを施すことにより、複数の個別電極34や複数の信号配線部37を形成する。次に、ハーフエッチング等の手法を用いて、基層3cの表面301から凹んだ凹面304を形成する。次いで、基層3cの表面301の一部および凹面304を覆うめっき層3dを形成する。これにより、めっき層3dにおいては、上面305から凹んだ底面306、およびz方向に見て底面306を向く内壁面307が形成される。このようにして、各々が底面306および内壁面307を有する複数の凹状パッド部381が形成される。
【0097】
本変形例のサーマルプリントヘッドA21において、フリップチップ実装されたICチップ6の実装面61には、複数の導電性接合材62が配置されている。本実施形態においても、配線層3(支持部材)は、複数の導電性接合材62に対応して配置された複数のパッド部38を有し、当該複数のパッド部38は複数の凹状パッド部381を含む。このような構成によれば、ICチップ6の搭載時に多少の位置ずれが生じても、配線層3(支持部材)への導電性接合材62の接合時(リフロー処理時)には、導電性接合材62が凹状パッド部381(底面306と当該底面306を向く内壁面307とにより囲まれた空間)に落ち込むように誘導される。これにより、導電性接合材62およびICチップ6の位置ずれが改善され、ICチップ6のフリップチップ実装時の位置ずれに起因する不具合を防止するのに適する。
【0098】
凹状パッド部381は、めっき層3d(配線層3)に形成されており、底面306および内壁面307を有する。底面306は、配線層3において相対的に厚さが小である部位により構成されており、内壁面307は、z方向に見て底面306を囲む環状をなす。このよう構成によれば、凹状パッド部381に収容された導電性接合材62は、底面306および内壁面307に跨って接合されるので配線層3との接合面積が大きくなり、導電性接合材62の接合強度を高めるのに適する。また、内壁面307がz方向に見て底面306を囲む環状をなす構成によれば、ICチップ6の搭載時にx方向およびy方向の双方に位置ずれが生じる場合であっても、導電性接合材62およびICチップ6のx方向およびy方向の双方の位置ずれが改善される。
【0099】
本変形例では、複数のパッド部38のすべてが凹状パッド部381とされている。このような構成によれば、ICチップ6のフリップチップ実装時における位置ずれの改善効果がより確実に得られる。
【0100】
第2実施形態では、基板1上には、ヒーターグレーズ部22およびガラス層23を含むグレーズ層2が配置されており、このグレーズ層2に対して、薄膜形成技術によって様々な層が形成されている。この構成に代えて、上記グレーズ層2に対して、厚膜形成技術によって様々な層を形成してもよい。
【0101】
第2実施形態では、基板1がたとえばAl23などのセラミックからなるが、これに代えて基板1がシリコン基板などの半導体基板からな構成としてもよい。半導体基板からなる基板1の場合、半導体基板を複数の個片に分割することで当該半導体基板から複数のサーマルプリントヘッドが製造される。
【0102】
本開示に係るサーマルプリントヘッドは、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示に係るサーマルプリントヘッドの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0103】
上記実施形態において、本開示に係るICチップの実装構造をサーマルプリントヘッドに適用した場合について説明したが、本開示のICチップの実装構造は他の電子装置等に適用してもよい。本開示に係るICチップの実装構造において、ICチップがフリップチップ実装された基材の主面には、絶縁膜が設けられていない構成が好適である。当該絶縁膜の例として、プリント基板におけるソルダーレジスト等のレジスト膜、フレキシブル基板におけるポリイミドフィルムなどの樹脂フィルムが挙げられる。
【0104】
本開示は、以下の付記に関する構成を含む。
【0105】
〔付記1〕
厚さ方向の一方を向く主面を有する基材、および前記主面の上に配置された配線層を有する支持部材と、
実装面を有するICチップと、
前記実装面に配置された複数の導電性接合材と、を備え、前記ICチップが前記支持部材にフリップチップ実装された実装構造であって、
前記支持部材は、前記複数の導電性接合材に対応して配置され、かつ少なくとも2つの凹状パッド部を含む複数のパッド部を有し、
前記凹状パッド部は、底面と、前記基材の厚さ方向に見て前記底面を向く内壁面と、を有し、
前記内壁面は、前記配線層により構成される、ICチップの実装構造。
〔付記2〕
前記基材の前記主面には、絶縁膜が設けられていない、付記1に記載のICチップの実装構造。
〔付記3〕
前記主面の上に配置され、主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層を備え、
前記配線層は、前記抵抗体層に導通しており、
前記ICチップは、前記各発熱部に流す電流を制御する、付記2に記載の実装構造を有する、サーマルプリントヘッド。
〔付記4〕
前記配線層は、前記主面の上に配置された第1層と、前記第1層の一部分の上に配置された第2層と、を含み、
前記内壁面は、前記第2層により構成され、
前記底面は、前記第1層により構成される、付記3に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記5〕
前記凹状パッド部は、主走査方向一方側および主走査方向他方側を向き、互いに対向する一対の前記内壁面を有する、付記4に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記6〕
前記内壁面は、前記基材の厚さ方向に見て前記底面を囲む環状をなす、付記4に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記7〕
前記底面は、前記配線層において相対的に厚さが小である部位により構成されており、
前記内壁面は、前記基材の厚さ方向に見て前記底面を囲む環状をなす、付記3に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記8〕
前記底面は、前記主面において前記配線層から露出する部位によって構成されており、
前記内壁面は、前記基材の厚さ方向に見て前記底面を囲む環状をなす、付記3に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記9〕
前記複数のパッド部は、主走査方向および副走査方向に複数ずつ配列されており、
前記複数のパッド部のうち主走査方向および副走査方向において4隅にあるものは前記凹状パッド部である、付記3ないし8のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記10〕
前記複数のパッド部は、そのすべてが前記凹状パッド部である、付記3ないし8のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記11〕
前記導電性接合材は、はんだバンプである、付記3ないし10のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記12〕
前記配線層の少なくとも一部は、Agを含む材料からなる、付記3ないし11のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記13〕
前記ICチップは、前記複数の発熱部に対して副走査方向上流側に配置されており、
前記配線層は、前記複数の発熱部に繋がる第1金属部と、前記第1金属部に対して副走査方向上流側の領域に配置され、かつ前記複数の導電性接合材に繋がる第2金属部と、を含む、付記3ないし11のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記14〕
前記第1金属部はAuを含む材料からなり、前記第2金属部はAgを含む材料からなる、付記13に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記15〕
前記基材は、基板と、前記基板上に配置され、前記主面を有するグレーズ層と、を含む、付記3ないし14のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記16〕
前記基板は、セラミックからなる、付記15に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記17〕
基材を準備する工程と、
前記基材の上に配線層を形成することにより、前記基材および前記配線層からなる支持部材を形成する工程と、
前記支持部材の上に、前記基材の厚さ方向に見て前記配線層の一部に重なる抵抗体層を形成する工程と、
複数の導電性接合材が実装面に配置されたICチップを前記基材にフリップチップ実装する工程と、を備え、
前記支持部材を形成する工程では、少なくとも2つの凹状パッド部を含み、前記複数の導電性接合材に対応する複数のパッド部が形成され、
前記凹状パッド部は、底面と、前記基材の厚さ方向に見て前記底面を向く内壁面と、を有する、サーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記18〕
前記支持部材を形成する工程は、前記基材の上に第1層を形成する第1層形成工程と、前記第1層の上に、前記内壁面を構成する第2層を形成する第2層形成工程と、を含む、付記17に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記19〕
前記第1層形成工程は、前記基材の上にネガ型の第1感光性金属ペーストを印刷するステップと、前記第1感光性金属ペーストを部分的に露光するステップと、前記第1感光性金属ペーストのうち露光した部分以外を除去するステップと、前記第1感光性金属ペーストを焼成するステップと、を含み、
前記第2層形成工程は、前記基材の上にネガ型の第2感光性金属ペーストを印刷するステップと、前記第2感光性金属ペーストを部分的に露光するステップと、前記第2感光性金属ペーストのうち露光した部分以外を除去するステップと、前記第2感光性金属ペーストを焼成するステップと、を含む、付記18に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記20〕
前記第1感光性金属ペーストおよび前記第2感光性金属ペーストのうち少なくとも前記第2感光性金属ペーストは、Agを含む、付記19に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【符号の説明】
【0106】
A1,A11,A12,A13,A14,A15,A2,A21:サーマルプリントヘッド
1 :基板
2 :グレーズ層
21 :主面
211 :底面
212 :底面
22 :ヒーターグレーズ部
23 :ガラス層
231 :主面
232 :底面
3 :配線層
3a :第1金属部
3b :第2金属部
3c :基層
3d :めっき層
301 :表面
302 :孔
303 :内壁面
304 :凹面
305 :上面
306 :底面
307 :内壁面
31 :第1層
311 :表面
312 :底面
313 :底面
314 :内壁面
315 :内壁面
316 :中間面
317 :内壁面
318 :内壁面
32 :第2層
321 :頂面
322 :内壁面
33 :共通電極
331 :共通部
332 :共通電極帯状部
34 :個別電極
35 :個別電極帯状部
36 :連結部
37 :信号配線部
38 :パッド部
4 :抵抗体層
41 :発熱部
5 :保護層
6 :ICチップ
61 :実装面
62 :導電性接合材
71 :保護樹脂
72 :コネクタ
81 :プラテンローラ
82 :印刷媒体
図1
図2
図3
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図5
図6
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