(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】無線給電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/10 20160101AFI20240829BHJP
H01R 31/06 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H02J50/10
H01R31/06 B
(21)【出願番号】P 2020132890
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 優一
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-516229(JP,A)
【文献】特表2010-517502(JP,A)
【文献】特開平10-208804(JP,A)
【文献】特開2006-102055(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0300205(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/10
H01R 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線給電可能な無線送電ユニットと、
無線給電コンセントと、を備え、
前記無線給電コンセントは、前記無線送電ユニットから無線給電によって受電する受電手段と、プラグ栓刃を差し込むプラグ栓刃差込口と、
前記無線送電ユニットに接触する接触面と、該プラグ栓刃差込口が設けられる差込面と、を有し、
前記無線給電コンセントの前記接触面にそれぞれ断面形状が異なる2以上の嵌合孔が設けられるとともに、前記無線送電ユニットの表面にそれぞれ断面形状が異なる2以上の嵌合突起が設けられ、
前記無線送電ユニットから受電した電力を、前記プラグ栓刃差込口に差し込まれたプラグ栓刃を具備する電力消費機器に給電
し、
それぞれの前記嵌合孔と前記嵌合突起が嵌合することによって前記無線送電ユニットの表面と前記接触面が接近するとともに、前記無線給電コンセントは前記無線送電ユニットから受電可能となる、
ことを特徴とする無線給電装置。
【請求項2】
前記嵌合突起は、前記無線送電ユニットによる給電が可能な伝送距離まで接近できない程度の長さを有し、
前記嵌合孔は、前記伝送距離まで接近するように前記嵌合突起を収容できる程度の深さを有している、
ことを特徴とする請求項1記載の無線給電装置。
【請求項3】
前記差込面が、前記接触面に対して傾斜して形成された、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の無線給電装置。
【請求項4】
前記無線送電ユニットは、壁体内に設置され、
前記無線送電ユニットの表面が、前記壁体の壁面と同一又は略同一面である、
ことを特徴とする
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の無線給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、無線給電に関するものであり、より具体的には、無線給電による受電が可能な無線給電コンセントと、これを用いた無線給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外で電気を使用するために、建物等の外側にコンセントを設けることがある。この屋外用コンセントは、雨水等による漏電を防ぐために特許文献1に示すような防水カバーが取り付けられるのが一般的である。ところが防水カバーを取り付けることによって壁面から大きく突出することになり、歩行者がつまずくといった安全性の問題や、美観を損ねる問題、作業機械等が誤って衝突することによる破損の問題などがあり、さらに盗電の問題も指摘することができる。
【0003】
そのため、防水カバーを取り付けることなく屋外で電気を利用できれば好適である。この場合、特許文献2で開示されるような無線給電の技術を利用することが考えられる。無線給電によれば、屋外にコンセント(特に、プラグ栓刃差込口)を常設する必要がなく、すなわち雨水等による漏電のおそれがないため防水カバーが不要となるうえ、従来の屋外用コンセントに比べ盗電も回避しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-206970号公報
【文献】特開2005-094843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示される技術をはじめ、これまで無線給電の技術は屋内における利用が主流であり、屋外での利用に適した技術が提案されることはなかった。また従来の無線給電では、受電する機器もコイルを内蔵しているなど無線給電用のものを対象としており、プラグを有する非無線給電用の機器(以下、「一般電力消費機器」という。)でも受電することができる技術が提案されることはなかった。
【0006】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、屋外でも無線給電を有効に利用することができる無線給電コンセントと、これを用いた無線給電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、壁体内に設置された無線送電ユニットを屋外で利用するという点、無線送電ユニットと一般電力消費機器を中継する無線給電コンセントを利用するという点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われた発明である。
【0008】
本願発明の無線給電コンセントは、受電手段とプラグ栓刃差込口を備えたものである。このうち受電手段は、無線給電可能な無線送電ユニットから無線給電によって受電する手段である。またプラグ栓刃差込口は、電力消費機器に接続されたプラグ栓刃を差し込むものである。そして、一般電力消費機器のプラグ栓刃をプラグ栓刃差込口に差し込むことによって、無線送電ユニットから受電した一般電力が電力消費機器に給電される。
【0009】
本願発明の無線給電装置は、本願発明の無線給電コンセントと無線給電可能な無線送電ユニットを備えたものである。
【0010】
本願発明の無線給電装置は、無線給電コンセントが接触面と差込面を有するものとすることもできる。この接触面は無線送電ユニットに接触する面であり、一方の差込面はプラグ栓刃差込口が設けられる面である。
【0011】
本願発明の無線給電装置は、嵌合孔と嵌合突起が設けられたものとすることもできる。嵌合孔は無線給電コンセントの接触面に設けられ、嵌合突起は無線送電ユニットの表面に設けられる。
【0012】
本願発明の無線給電装置は、無線送電ユニットが壁体内に設置されたものとすることもできる。この場合、無線送電ユニットの表面が壁体の壁面と略同一面(同一含む)となるように設置される。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の無線給電コンセント、及び無線給電装置には、次のような効果がある。
(1)無線給電のために製造された専用の電力消費機器に限らず、非無線給電用の一般電力消費機器も無線給電により受電することができる。
(2)無線送電ユニットを壁体内に設置することで防水カバーの設置を回避することができ、その結果、歩行者がつまずくといった安全性の問題や、美観を損ねる問題、作業機械が誤って衝突することによる破損の問題が生ずることを抑制することができる。
(3)嵌合孔と嵌合突起を設けることによって第三者の利用を防ぎ、すなわち盗電を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は本願発明の無線給電コンセントを模式的に示す断面図、(b)は本願発明の無線給電コンセントを模式的に示す正面図、(c)は本願発明の無線給電コンセントを模式的に示す背面図。
【
図2】(a)は無線送電ユニットを模式的に示す断面図、(b)は本無線送電ユニットを模式的に示す正面図。
【
図3】受電側表面が壁体面と略同一面となるように設置された無線送電ユニットを模式的に示す断面図。
【
図4】(a)は無線送電ユニットに無線給電コンセントを装着した状態を模式的に示す断面図、(b)は無線給電コンセントに一般電力消費機器のプラグ栓刃を差し込んだ状態を模式的に示す断面図。
【
図5】差込面が受電側接触面に対して傾斜して形成された無線給電コンセントを模式的に示す断面図。
【
図6】(a)は送電側表面に嵌合突起が設けられた無線送電ユニットと受電側接触面に嵌合孔が設けられた受電コイルを模式的に示す断面図、(b)は嵌合孔に嵌合突起が嵌合することで送電側表面と受電側接触面が接近した無線送電ユニットと受電コイルを模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願発明の無線給電コンセント、及び無線給電装置の実施の例を図に基づいて説明する。なお、本願発明の無線給電コンセント、及び無線給電装置は、磁界共鳴方式や電界結合方式、電波受信方式など、従来用いられている種々の無線給電方式を採用することができるが、便宜上ここでは電磁誘導方式を採用するケースで説明する。この電磁誘導方式は、送電側と受電側との間で発生する誘導磁束を利用して電力を給電(送電)する方式であり、通常は送電側、受電側ともにコイルが設けられる。
【0016】
(無線給電コンセント)
図1は、本願発明の無線給電コンセント100を模式的に示す図であり、(a)はその断面図、(b)はその正面図、(c)はその背面図である。この図に示すように本願発明の無線給電コンセント100は、受電コイル110(受電手段)とプラグ栓刃差込口120を含んで構成され、さらに受電函体130や係止爪140、後述する嵌合突起(あるいは嵌合孔)を含んで構成することもできる。
【0017】
図1(a)に示すように受電コイル110は受電函体130内に収容され、この受電函体130には略平行(平行含む)な差込面130F(図では右側面)と受電側接触面130B(図では左側面)が形成されている。なお受電コイル110は、受電側接触面130B側に向くように配置される。また、差込面130Fには
図1(b)に示すように「一般電力消費機器」のプラグ栓刃を差し込むプラグ栓刃差込口120が設けられ、一方、受電側接触面130Bには
図1(c)に示すように複数(図では3つ)の係止爪140が設けられる。ここで一般電力消費機器とは、既に説明したとおりプラグを有する非無線給電用の機器(従来の一般的な電気機器や電子機器)のことである。
【0018】
(無線給電装置)
本願発明の無線給電装置は、
図1に示す無線給電コンセント100と、
図2に示す無線送電ユニット200を含んで構成される。
図2は、無線送電ユニット200を模式的に示す図であり、(a)はその断面図、(b)はその正面図である。この図に示すように無線送電ユニット200は、送電コイル210(送電手段)を含んで構成され、さらに送電函体220や係止溝230、後述する嵌合孔(あるいは嵌合突起)を含んで構成することもできる。
【0019】
図2(a)に示すように送電コイル210は送電函体220内に収容され、この送電函体220には送電側表面220S(図では右側面)が形成され、さらにこの送電側表面220Sには
図2(b)に示すように複数(図では3つ)の係止溝230が設けられる。なお送電コイル210は送電側表面220S側に向くように配置され、また送電コイル210は直接、あるいはブレーカーなどを通じて電源に接続されており、送電コイル210に電流を流すことができる構造とされている。
【0020】
本願発明の無線給電装置を屋外で使用するときは、
図3に示すように送電側表面220Sが屋外に現れるように無線送電ユニット200を壁体CW内に設置(埋設)するとよい。このとき、送電側表面220Sが壁体CWの壁面と略同一面(同一含面む)となるように無線送電ユニット200を配置すれば、従来の防水カバーのように壁面から大きく突出する(つまり障害物をつくる)ことを回避することができ、その結果、歩行者がつまずいたり、作業機械等が誤って衝突したりすることがなく、また美観を損ねることもない。
【0021】
(使用例)
図4は、本願発明の無線給電装置を屋外で使用する例を模式的に示す断面図であり、(a)は無線送電ユニット200に無線給電コンセント100を装着した状態を示し、(b)はさらに無線給電コンセント100に一般電力消費機器APのプラグ栓刃BLを差し込んだ状態を示している。なお無線送電ユニット200は、
図3に示すように、送電側表面220Sが屋外に現れるように、しかも送電側表面220Sが壁体CWの壁面と略同一面となるように設置されている。またこの場合の受電函体130と送電函体220は、雨水等が内部に侵入しないように防水加工が施されたもの、あるいは防水材で製作されたものを用いるとよい。
【0022】
本願発明の無線給電装置を使用する場合、
図4(a)に示すように無線給電コンセント100を無線送電ユニット200に取り付ける。より詳しくは、受電函体130の受電側接触面130Bと送電函体220の送電側表面220Sが向かい合うように、しかも接触面130Bと送電側表面220Sが接近(あるいは接触)するように取り付ける。これにより、受電コイル110と送電コイル210が向かい合うとともに給電可能な距離(つまり伝送距離)まで接近し、送電コイル210に電流を流すことによって誘導磁束が生じ、受電コイル110に電流が流れる(つまり受電する)わけである。
【0023】
無線給電コンセント100を無線送電ユニット200に取り付けるにあたっては、係止爪140(
図1)と係止溝230(
図2)を利用するとよい。係止爪140を係止溝230に嵌め込むことによって、無線給電コンセント100を無線送電ユニット200に固定する(つまり落下防止する)ことができて好適となる。なお
図4では、受電コイル110(受電側接触面130B)側に係止爪140を設けるともに無線送電ユニット200(送電側表面220S)側に係止溝230を設ける例を示しているが、受電コイル110側に係止溝を設けるともに無線送電ユニット200側に係止突起を設けることもできる。また、無線給電コンセント100を無線送電ユニット200に固定することができれば、係止爪140と係止溝230の組み合わせに限らず、雄ねじと雌ねじの組み合わせや、カプラー等を利用することもできる。
【0024】
無線給電コンセント100を無線送電ユニット200に取り付けると、
図4(a)に示すようにプラグ栓刃差込口120に設けられた受電函体130が屋外側に現れる。そのため、
図4(b)に示すようにプラグ栓刃BLをプラグ栓刃差込口120に差し込むことができ、電気機器や電子機器を含むあらゆる一般電力消費機器APの利用が可能となる。なお、コイルを内蔵している無線給電専用の電力消費機器を利用する場合は、無線給電コンセント100を取り付けることなく送電ユニット200から直接受電するとよい。このように本願発明の無線給電装置は、コイルを内蔵しない一般電力消費機器APを利用することもできるうえに、無線給電専用の電力消費機器を利用することもできるわけである。
【0025】
(変形例)
ここまで、受電函体130の差込面130Fと受電側接触面130Bが略平行(平行含む)に形成される無線給電コンセント100について説明したが、本願発明の無線給電コンセント100は差込面130Fが受電側接触面130Bに対して大きく傾斜した(略平行ではない)ものとすることもできる。例えば
図5では、差込面130Fが受電側接触面130Bに対して傾斜(この図では30°傾斜)して形成されている。この場合、一般電力消費機器APのプラグ栓刃BLを下方から差し込むことになり、差込面130Fが傾斜した効果で雨水等がプラグ栓刃BLに直接当たることを防止できて好適となる。さらに差込面130Fは、
図1や
図5に示すように受電側接触面130Bと対向する位置に形成するほか、受電側接触面130Bと略直交(直交含む)する位置(例えば、
図5の場合は紙面側の側面)に形成することもできる。
【0026】
本願発明の無線給電装置は、
図6に示すように盗電防止機能を設けたものとすることもできる。より詳しくは、
図6(a)に示すように無線送電ユニット200の送電側表面220Sに嵌合突起240を設けるとともに、受電コイル110の受電側接触面130Bに嵌合突起240が嵌合可能な嵌合孔150を設ける。
図6(a)から分かるように、送電側表面220Sに嵌合突起240が設けられているため、フラットな(つまり、嵌合孔150が設けられていない)受電側接触面130Bを有する無線給電コンセント100は送電側表面220Sに接近することができず(すなわち伝送距離を得られることができず)、受電することができない。これに対して受電側接触面130Bに嵌合孔150が設けられた無線給電コンセント100は、
図6(b)に示すように嵌合突起240を嵌合孔150に嵌合させることによって受電側接触面130Bと送電側表面220Sが伝送距離まで接近し、受電することができるわけである。
【0027】
盗電防止を目的とするため、嵌合突起240は伝送距離まで接近できない程度の長さを有し、一方の嵌合孔150は伝送距離まで接近するように嵌合突起240を収容できる程度の深さを有している。また、嵌合突起240と嵌合孔150は、例えば鍵と鍵孔のように複雑な断面形状にするとよい。なお、
図6では嵌合突起240と嵌合孔150を2箇所ずつ設ける例を示しているが、嵌合突起240と嵌合孔150は1個所ずつ設けることもできるし、3以上の個所に設けることもできる。さらに嵌合突起240と嵌合孔150を2以上の個所に設ける場合は、それぞれ異なる断面形状の嵌合突起240と嵌合孔150を2以上の個所に設けることもできる。また、嵌合突起240と嵌合孔150を設ける場合は、係止爪140と係止溝230といった受電コイル110を無線送電ユニット200に固定するための構成を省略することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本願発明の無線給電コンセント、及び無線給電装置は、電気を利用する様々な施設や環境で利用することができ、特に建設現場をはじめとする屋外施設等で好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
100 本願発明の無線給電コンセント
110 受電コイル
120 プラグ栓刃差込口
130 受電函体
130F 差込面
130B 受電側接触面
140 係止爪
150 嵌合孔
200 無線送電ユニット
210 送電コイル
220 送電函体
220S 送電側表面
230 係止溝
240 嵌合突起
AP 一般電力消費機器
BL プラグ栓刃
CW 壁体