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特許7545833不織布及びその製造方法、並びにマット用裏材
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】不織布及びその製造方法、並びにマット用裏材
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/542 20120101AFI20240829BHJP
   A47G 27/02 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
D04H1/542
A47G27/02 109
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020141937
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037682
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】391021570
【氏名又は名称】呉羽テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾上 弘
(72)【発明者】
【氏名】有川 珠紀
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-061992(JP,A)
【文献】登録実用新案第3028700(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/542
A47G 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非熱溶融繊維と熱溶融繊維とを含み、非熱溶融繊維と熱溶融繊維の重量比(非熱溶融繊維/熱溶融繊維)が、0.01/99.99~30/70であり、前記非熱溶融繊維が前記熱溶融繊維の溶融固化物で覆われた断面長さが0.30mm以上である突起状樹脂塊が少なくとも片面に存在しており、前記突起状樹脂塊は樹脂塊が突起(ただし、不織布の表面から垂直方向に沿って一方向に突出する突起を除く)を有するものである、不織布。
【請求項2】
前記突起状樹脂塊が不織布の少なくとも片面に点在しており、前記突起状樹脂塊の平均高さが0.22mm以上である請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記非熱溶融繊維の繊度が1.0dtex以上30dtex以下である請求項1又は2に記載の不織布。
【請求項4】
前記熱溶融繊維の繊度が1.0dtex以上40dtex以下である請求項1~3のいずれかに記載の不織布。
【請求項5】
前記非熱溶融繊維が、綿、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、ビニロン繊維、アラミド繊維、及びアクリル繊維から選択される少なくとも1種である請求項1~4のいずれかに記載の不織布。
【請求項6】
前記熱溶融繊維として、融点が180℃以上の繊維を含む請求項1~5のいずれかに記載の不織布。
【請求項7】
前記熱溶融繊維として、融点が80℃以上180℃未満の繊維をさらに含む請求項6に記載の不織布。
【請求項8】
前記融点が80℃以上180℃未満の繊維の含有量が、1重量%以上50重量%以下である請求項7に記載の不織布。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の不織布を用いた、マット用裏材。
【請求項10】
非熱溶融繊維0.01重量%以上30重量%以下と熱溶融繊維70重量%以上99.99重量%以下を含む原料繊維を均一に混繊し、カーディングによりカードラップを形成し積み重ねて積層ウェブを形成する工程、前記積層ウェブをニードルパンチ加工する工程、ニードルパンチ面側を火炎に曝して前記熱溶融繊維を溶融し、断面長さが0.30mm以上である突起状樹脂塊を形成する工程を含前記突起状樹脂塊は樹脂塊が突起(ただし、不織布の表面から垂直方向に沿って一方向に突出する突起を除く)を有するものである、不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布及びその製造方法、並びに前記不織布を用いたマット用裏材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車内のフロアカーペットは、床面に接着され容易に交換や洗浄ができないため、汚れを防止するためにマットが敷かれるのが一般的である。前記マットとしては、タフトカーペットや立毛カーペットが用いられるが、フロアカーペット上を滑って危険であるため、裏面に樹脂、ゴム類等をバッキングして突起状物を形成することにより、マットがフロアカーペット上を滑るのを防止していた。また近年では、不織布表面に溶融塊を形成することにより滑り止め効果を有する不織布を得て、これを裏材として表材となるタフトカーペットや立毛カーペットと一体化することが試みられている。不織布を裏材として使用することにより、マットの軽量化が図れる。例えば、特許文献1には、表皮材層の下面側に不織布層が積層一体化された自動車用マットにおいて、前記不織布層の下面側に露出した繊維(毛羽)を焼成し、不織布層の下面の繊維が溶融固着した防滑層を形成することにより、防滑性に優れた自動車用マットとすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-46421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来から知られる上記特許文献1のマットでは滑り止め効果が十分に満足できるものではなかった。特に近年、自動車におけるフロアカーペットは軽量化、及びコスト削減のために、従来のような意匠性を求めたディロア調やコード調の立毛タイプのカーペットではなく、立毛表面を有さないタイプのカーペットが使用されることがある。このような立毛表面を有さないタイプのカーペットをフロアカーペットとして用いる場合には、立毛タイプのカーペットを用いる場合よりも、同じマットを使用しても滑り止め効果が得られにくいことがある。このため、従来のマット用裏材よりも滑り止め効果が高い、マット用裏材及びマット用裏材として用いることが可能な部材が求められている。
【0005】
そこで本発明は、このような実状に対処するためになされたものであり、滑り防止性に優れた不織布及びその製造方法、並びに前記不織布を用いたマット用裏材を提供することを課題として掲げた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] 非熱溶融繊維と熱溶融繊維とを含み、非熱溶融繊維と熱溶融繊維の重量比(非熱溶融繊維/熱溶融繊維)が、0.01/99.99~30/70であり、前記非熱溶融繊維が前記熱溶融繊維の溶融固化物で覆われた断面長さが0.30mm以上である突起状樹脂塊が少なくとも片面に存在している不織布。
[2] 前記突起状樹脂塊が不織布の少なくとも片面に点在しており、前記突起状樹脂塊の平均高さが0.22mm以上である[1]に記載の不織布。
[3] 前記非熱溶融繊維の繊度が1.0dtex以上30dtex以下である[1]又は[2]に記載の不織布。
[4] 前記熱溶融繊維の繊度が1.0dtex以上40dtex以下である[1]~[3]のいずれかに記載の不織布。
[5] 前記非熱溶融繊維が、綿、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、ビニロン繊維、アラミド繊維、及びアクリル繊維から選択される少なくとも1種である[1]~[4]のいずれかに記載の不織布。
[6] 前記熱溶融繊維として、融点が180℃以上の繊維を含む[1]~[5]のいずれかに記載の不織布。
[7] 前記熱溶融繊維として、融点が80℃以上180℃未満の繊維をさらに含む[6]に記載の不織布。
[8] 前記融点が80℃以上180℃未満の繊維の含有量が、1重量%以上50重量%以下である[7]に記載の不織布。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の不織布を用いた、マット用裏材。
[10] 非熱溶融繊維0.01重量%以上30重量%以下と熱溶融繊維70重量%以上99.99重量%以下を含む原料繊維を均一に混繊し、カーディングによりカードラップを形成し積み重ねて積層ウェブを形成する工程、前記積層ウェブをニードルパンチ加工する工程、ニードルパンチ面側を火炎に曝して前記熱溶融繊維を溶融し、断面長さが0.30mm以上である突起状樹脂塊を形成する工程を含む、不織布の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の不織布は、非熱溶融繊維と熱溶融繊維とを含み、非熱溶融繊維と熱溶融繊維の重量比(非熱溶融繊維/熱溶融繊維)が、0.01/99.99~30/70であり、前記非熱溶融繊維が前記熱溶融繊維の溶融固化物で覆われた断面長さが0.30mm以上である突起状樹脂塊が少なくとも片面に存在する。前記突起状樹脂塊が存在することにより、滑り防止性に優れた不織布を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る不織布の一例を示す概略断面部分拡大図である。
図2(a)】図2(a)は、実施例13で得られた不織布の突起状樹脂塊が存在する面側の断面拡大写真(150倍)である。
図2(b)】図2(b)は、比較例1で得られた不織布の樹脂塊が存在する面側の断面拡大写真(150倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、必要に応じて図示例を参照しつつ本発明に係る不織布及びその製造方法、並びにマット用裏材に関して詳細に説明する。ただし、本発明は下記図示例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えることは可能であり、それらはいずれも本発明の技術範囲に包含される。
【0010】
(不織布4)
図1の概略断面部分拡大図に示すように、不織布4は、非熱溶融繊維1が熱溶融繊維2の溶融固化物で覆われた断面長さが0.30mm以上である突起状樹脂塊3を少なくとも片面に有し、前記非熱溶融繊維1と前記熱溶融繊維2の重量比(非熱溶融繊維1/熱溶融繊維2)が、0.01/99.99~30/70であることを特徴とする。不織布4は、非熱溶融繊維1が熱溶融繊維2の溶融固化物で覆われた前記突起状樹脂塊3が存在するため、滑り防止性に優れる。
【0011】
(突起状樹脂塊3)
突起状樹脂塊3は、非熱溶融繊維1が熱溶融繊維2の溶融固化物で覆われた構造を有しており、断面長さが0.30mm以上である。なお、前記断面長さは、不織布4の厚み方向に沿う断面拡大画像(例えば、倍率50倍)を撮影して、突起状樹脂塊3が存在する不織布4表面に沿って直線を引き、該直線上の突起状樹脂塊3の長さを測定することにより求められる値である。突起状樹脂塊3の突起は、不織布4の突起状樹脂塊3が存在する面を拡大観察した際に容易に観察できるものである。突起状樹脂塊3を形成する際に、非熱溶融繊維1は溶融せずにその形状を維持したまま突起状樹脂塊3の骨格となる。
【0012】
図2(a)には、本発明に係る不織布4(後述の実施例13の不織布)の断面拡大写真を示す。一方、図2(b)には、非熱溶融繊維を含有しない不織布を焼成することにより樹脂塊を形成した従来の不織布(後述の比較例1の不織布)の断面拡大写真を示す。図2(a)に示すように、本発明の不織布4は、非熱溶融繊維1及び熱溶融繊維2を特定の重量比で含有することにより、非熱溶融繊維1が熱溶融繊維2の溶融固化物で覆われた、突起状樹脂塊3を有する。一方、図2(b)に示すように、従来の不織布に形成される樹脂塊は丸みを帯びている(すなわち、樹脂塊が突起を有さない)。本発明の不織布4は、突起状樹脂塊3が存在することにより、従来の丸みを帯びた樹脂塊よりもフロアカーペット等に対して引っかかりを強くできるため、滑り防止性に優れる。
【0013】
ここで不織布4の突起状樹脂塊3が存在する面を拡大観察すると、突起状樹脂塊3における突起が不織布4の表面から不規則な方向に突出していることがわかる。前記突起が、不織布4の表面から垂直方向に沿って一方向に突出するのではなく、不規則な方向に突出していることにより、フロアカーペット等により引っかかりやすく、滑り止め効果が発揮される。
【0014】
突起状樹脂塊3の骨格、つまり突起状樹脂塊3中の非熱溶融繊維1は真っ直ぐであってもよく、湾曲していてもよい。突起状樹脂塊3において熱溶融繊維2の溶融固化物は、前記非熱溶融繊維1に沿う形状で形成される。
【0015】
また突起状樹脂塊3は、後述する突起状樹脂塊形成前不織布の少なくとも片面を加熱することにより形成されるため、突起状樹脂塊3は主に不織布4表面に存在する。
【0016】
そして、突起状樹脂塊3は、後述する突起状樹脂塊形成前不織布の少なくとも片面を加熱することにより、加熱前に非熱溶融繊維1が存在していたところに溶融した熱溶融繊維2が凝集することで形成されるため、突起状樹脂塊3が存在している不織布4表面を肉眼で観察すると、突起状樹脂塊3は不織布4表面全体に一様に存在する(形成される)のではなく、突起状樹脂塊3は不織布4表面に部分的に存在する(形成される;つまり点在する)こととなる。
【0017】
突起状樹脂塊3は、非熱溶融繊維1の少なくとも一部が熱溶融繊維2の溶融固化物で覆われていてもよく、非熱溶融繊維1の全部が熱溶融繊維2の溶融固化物で覆われていてもよい。また、1つの突起状樹脂塊3には1本の非熱溶融繊維1が含まれていてもよく、2本以上の非熱溶融繊維1が含まれていてもよく、1つの突起状樹脂塊3に含まれる非熱溶融繊維1の本数に上限はないが、20本以下が好ましく、10本以下がより好ましい。より大きな突起状樹脂塊3を得られることから、1つの突起状樹脂塊3には2本以上の非熱溶融繊維1が含まれることが好ましい。
【0018】
突起状樹脂塊3の大きさとしては、平均高さが0.22mm以上であることが好ましく、0.24mm以上であることがより好ましく、0.26mm以上であることがさらに好ましく、0.28mm以上であることがよりさらに好ましく、0.29mm以上であることがことさら好ましく、0.30mm以上であることが特に好ましく、また0.70mm以下であることが好ましく、0.60mm以下であることがより好ましく、0.55mm以下であることがさらに好ましく、0.50mm以下であることがよりさらに好ましい。
なお、本明細書中における突起状樹脂塊3の平均高さは、不織布4の厚み方向に沿う断面拡大画像(例えば、倍率150倍)を撮影し、任意の10点の突起状樹脂塊3の高さ(突起状樹脂塊3が存在する不織布4表面からの垂直高さ;図2(a)に示すh)を測定して、その平均値を算出することにより求められる値である。突起状樹脂塊3の平均高さが前記範囲内にあることにより、滑り防止性により優れた不織布4を得ることができる。
【0019】
不織布4における非熱溶融繊維1と熱溶融繊維2の重量比(非熱溶融繊維/熱溶融繊維)は、0.01/99.99~30/70であり、0.1/99.9~28/72が好ましく、0.5/99.5~25/75がより好ましく、1.0/99.0~20/80がさらに好ましい。また、非熱溶融繊維1として加熱により収縮し易いキュプラ、ビニロン繊維、アクリル繊維等を用いる際に、熱溶融繊維2を溶融するための加熱において非熱溶融繊維1の収縮率が50%以上となる場合には、不織布4における非熱溶融繊維1と熱溶融繊維2の重量比(非熱溶融繊維/熱溶融繊維)は、5.0/95.0~20/80がよりさらに好ましく、7.5/92.5~20/80がことさら好ましく、10/90~20/80が特に好ましい。非熱溶融繊維1と熱溶融繊維2の重量比が前記範囲内にあることにより、滑り防止性に優れた不織布4を得ることができる。熱溶融繊維2に対する非熱溶融繊維1の重量が多いと、非熱溶融繊維1を覆う熱溶融繊維2の溶融固化物が少なくなり、高さが低く細かい樹脂塊となるため、所望の滑り止め効果が得られない。また、熱溶融繊維2に対する非熱溶融繊維1の重量が多いと、熱溶融繊維2による繊維間の接合が強固とできないことがあり、非熱溶融繊維1が加熱により炭化する繊維である場合、炭化した非熱溶融繊維1が不織布4から落下し易くなる恐れがあるため好ましくない。
【0020】
(非熱溶融繊維1)
非熱溶融繊維1とは、融点を有さない又は明瞭な融点を有さない繊維のことである。非熱溶融繊維1としては、後述の熱溶融繊維2を溶融する際の加熱による変化がない、又は熱溶融繊維2を溶融する際の加熱により完全に溶融せずに炭化して繊維形状を保持する繊維が好ましい。非熱溶融繊維1は、熱溶融繊維2を溶融するための加熱を行っても繊維形状が保持されるため、突起状樹脂塊3における骨格を成す。不織布4は、非熱溶融繊維1を含むことにより、非熱溶融繊維1を骨格として有する突起状樹脂塊3を得られるため、滑り防止性に優れたものとなる。
【0021】
非熱溶融繊維1としては、例えば、綿、パルプ、麻、毛、絹等の天然繊維;レーヨン、ポリノジック、キュプラ、レヨセル等の再生繊維;ビニロン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維等の合成繊維;ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維等の無機物から構成される繊維;が挙げられる。非熱溶融繊維1は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、非熱溶融繊維1としては、綿、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、ビニロン繊維、アラミド繊維、及びアクリル繊維から選択される少なくとも1種であることが好ましく、加熱により収縮し難く形状保持性が高い点からレーヨンがより好ましく、難燃性を付与したレーヨンがさらに好ましい。前記レーヨンを非熱溶融繊維1として含有する場合、レーヨンの含有量は、非熱溶融繊維1中、80重量%以上100重量%以下が好ましく、90重量%以上100重量%以下がより好ましい。なお、レーヨンは焼成時に燃焼や炭化する恐れがあるため、焼成を想定した用途には、一般的には使用されないものである。しかしながら本願発明者らが検討したところ、非熱溶融繊維1としてレーヨンを使用することにより、レーヨンが加熱により収縮し難く形状保持性が高いため、特に突起状樹脂塊3を大きく、つまり断面長さを長くしたり、高さをより高くしたりすることができることがわかった。
【0022】
非熱溶融繊維1の繊度は、1.0dtex以上が好ましく、1.5dtex以上がより好ましく、2.0dtex以上がさらに好ましく、2.2dtex以上がよりさらに好ましく、また30dtex以下が好ましく、25dtex以下がより好ましく、22dtex以下がさらに好ましく、20dtex以下がよりさらに好ましい。非熱溶融繊維1の繊度が前記範囲内にあることにより、大きな突起状樹脂塊3を得ることができ、滑り防止性により優れた不織布4を得ることができる。なお、非熱溶融繊維1の繊度が前記範囲を下回ると突起状樹脂塊3が小さくなって滑り止め効果が低下する。
【0023】
非熱溶融繊維1は、長繊維でも短繊維でもよく、突起状樹脂塊3を形成しやすいことから短繊維が好ましい。非熱溶融繊維1の繊維長は、5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましく、20mm以上がさらに好ましく、30mm以上がよりさらに好ましく、また150mm以下が好ましく、130mm以下がより好ましく、100mm以下がさらに好ましく、80mm以下がよりさらに好ましい。
【0024】
(熱溶融繊維2)
熱溶融繊維2とは、明瞭な融点を有する繊維のことである。不織布4において、熱溶融繊維2が溶融固化することで突起状樹脂塊3を得ることができる。また、熱溶融繊維2が溶融固化することで、不織布4における繊維間の接合性向上にも寄与する。
【0025】
熱溶融繊維2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等のポリエステル繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド繊維;ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維等のポリ塩化ビニル系繊維;等の合成繊維が挙げられる。熱溶融繊維2は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、熱溶融繊維2としては、強度に優れ、劣化が少ない点からポリエステル繊維が好ましい。
【0026】
熱溶融繊維2の繊度は、1.0dtex以上が好ましく、1.5dtex以上がより好ましく、2.0dtex以上がさらに好ましく、2.2dtex以上がよりさらに好ましく、また40dtex以下が好ましく、35dtex以下がより好ましく、33dtex以下がさらに好ましく、25dtex以下がよりさらに好ましく、22dtex以下がことさら好ましく、20dtex以下が特に好ましい。熱溶融繊維2の繊度が前記範囲内にあることにより、突起状樹脂塊3の高さを適度にすることができ、より滑り防止性に優れた不織布4を得ることができる。
【0027】
熱溶融繊維2は、長繊維でも短繊維でもよいが、短繊維であることが好ましく、熱溶融繊維2の繊維長は、5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましく、20mm以上がさらに好ましく、30mm以上がよりさらに好ましく、また150mm以下が好ましく、130mm以下がより好ましく、100mm以下がさらに好ましく、80mm以下がよりさらに好ましい。
【0028】
熱溶融繊維2としては、融点が180℃以上の繊維(以下、高融点繊維ともいう)を含むことが好ましい。高融点繊維の融点としては、200℃以上が好ましく、220℃以上がより好ましく、240℃以上がさらに好ましく、250℃以上がよりさらに好ましく、また400℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましく、330℃以下がさらに好ましい。高融点繊維としては、1種類の高融点繊維又は複数種の高融点繊維を組み合せて使用することができる。
【0029】
高融点繊維の形態は、特に限定されず、中実繊維でも中空繊維でもよく、捲縮を有していても有していなくてもよい。高融点繊維としては、ポリエステル短繊維が好ましい。
【0030】
また熱溶融繊維2としては、融点が80℃以上180℃未満の繊維(以下、低融点繊維ともいう)を含むことが好ましい。低融点繊維の融点としては、95℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましく、また170℃以下が好ましく、165℃以下がより好ましい。低融点繊維としては、1種類の低融点繊維又は複数種の低融点繊維を組み合せて使用することができる。
【0031】
熱溶融繊維2として前記高融点繊維と前記低融点繊維とを含む場合、低融点繊維の融点としては、含有される高融点繊維よりも融点が30℃以上低いことが好ましく、40℃以上低いことがより好ましく、50℃以上低いことがさらに好ましい。熱溶融繊維2として、高融点繊維と低融点繊維とを含むことにより、熱溶融繊維2を溶融する際に、低融点繊維が高融点繊維よりも先に溶融し、突起状樹脂塊3の骨格となる非熱溶融繊維1の少なくとも一部を低融点繊維の溶融物で被覆することで、非熱溶融繊維1の形状保持に寄与するため好ましい。また、熱溶融繊維2として、高融点繊維と低融点繊維とを含むことにより、不織布4における繊維間の接合をより強固とできるため、非熱溶融繊維1が骨格である突起状樹脂塊3も不織布4により強力に固着し、より滑り防止性に優れた不織布4を得ることができるため好ましい。なお、前記非熱溶融繊維1が加熱により炭化する繊維である場合には、低融点繊維の融点が非熱溶融繊維が炭化する温度よりも低い温度であることが好ましい。低融点繊維の融点が、非熱溶融繊維1が炭化する温度よりも低い温度であれば、非熱溶融繊維1が炭化するよりも先に低融点繊維が溶融して非熱溶融繊維1に被覆することで、炭化した非熱溶融繊維1の脱落を防ぐことができる。
【0032】
低融点繊維の形態は、特に限定されないが、低融点繊維としては、ポリエチレン-ポリプロピレン、ポリエチレン-ポリエステル、ポリエステル-変性ポリエステル等の融点の異なる複数の樹脂からなる芯鞘構造、偏心構造、或いはサイドバイサイド構造を有する複合繊維;変性ポリエステル繊維;変性ポリアミド繊維;変性ポリプロピレン繊維等の変性ポリオレフィン繊維;等が使用できる。中でも、低融点繊維としては、生産性がよく入手が容易であることから、芯鞘構造を有する複合繊維が好ましい。なお、複数の樹脂からなる複合繊維の場合には、複数の樹脂のうちの少なくとも1つが前記低融点繊維の融点の範囲内であればよい。
【0033】
熱溶融繊維2として、高融点繊維と低融点繊維とを含む場合、低融点繊維の含有量は、熱溶融繊維2中、1重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましく、3重量%以上がさらに好ましく、4重量%以上がよりさらに好ましく、また60重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、45重量%以下がさらに好ましく、40重量%以下がよりさらに好ましい。また、熱溶融繊維2として、高融点繊維と低融点繊維とを含む場合、低融点繊維の含有量は、不織布4中、1重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましく、3重量%以上がさらに好ましく、また50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、35重量%以下がさらに好ましく、30重量%以下がよりさらに好ましい。不織布4における低融点繊維の含有量が前記上限値を超えると、熱溶融繊維2の溶融時、不織布4が不安定となり厚さの調節が困難となる恐れがあるため好ましくない。
【0034】
(不織布4の製造方法)
突起状樹脂塊3を有する不織布4の製造方法は、非熱溶融繊維1及び熱溶融繊維2を含む積層ウェブを形成する工程、前記積層ウェブを結合する工程、及び結合した積層ウェブの少なくとも片面を加熱して前記熱溶融繊維2を溶融し、突起状樹脂塊3を形成する工程の3工程を含む。本発明の不織布の製造方法によれば、滑り防止性に優れた不織布4を製造することが可能である。
【0035】
積層ウェブを形成する工程における、計量、混繊、及び積層は一般的な製造方法を用いればよい。例えば、非熱溶融繊維1及び熱溶融繊維2として短繊維を用いる場合には、短繊維ウェブの製造方法を用いることができる。短繊維ウェブの製造方法としては、例えば、非熱溶融繊維1及び熱溶融繊維2を計量し、非熱溶融繊維1及び熱溶融繊維2を特定の重量割合で含む原料繊維を均一に混繊し、カード機を用いてカーディングによりカードラップを形成して、クロスラッパーにより所定の厚みに積み重ねればよい。
【0036】
得られた積層ウェブ(例えば、短繊維ウェブ)を結合する方法としては、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、水流絡合法等が挙げられるが、ニードルパンチ法が好ましい。
【0037】
ニードルパンチ法による結合を行う場合、ニードルパンチ加工の条件としては、単位面積当たりの打ち込み本数が、50本/cm2以上であることが好ましく、60本/cm2以上であることがより好ましく、70本/cm2以上であることがさらに好ましく、80本/cm2以上であることがよりさらに好ましく、また300本/cm2以下であることが好ましく、280本/cm2以下であることがより好ましく、270本/cm2以下であることがさらに好ましく、260本/cm2以下であることがよりさらに好ましい。また、ニードルパンチ加工における針深さは、3mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、6mm以上がさらに好ましく、また17mm以下が好ましく、15mm以下がより好ましく、14mm以下がさらに好ましい。ニードルパンチ加工の条件を前記範囲とすることにより、機械的強度を有し、且つ柔軟性も有する不織布4を得ることができる。
【0038】
ニードルパンチ加工は、積層ウェブの片面のみに行ってもよく、両面に行ってもよいが、両面に行うことが好ましい。
【0039】
結合した積層ウェブ(以下、突起状樹脂塊形成前不織布ともいう)の厚さとしては、1.5mm以上が好ましく、1.8mm以上がより好ましく、2.0mm以上がさらに好ましく、2.2mm以上がよりさらに好ましく、また10.0mm以下が好ましく、8.0mm以下がより好ましく、6.0mm以下がさらに好ましく、5.0mm以下がよりさらに好ましい。突起状樹脂塊形成前不織布の厚さが前記範囲内であることにより、軽量で機械的強度も有する不織布4を得ることができる。
【0040】
突起状樹脂塊形成前不織布の少なくとも片面を加熱して前記熱溶融繊維2を溶融し、突起状樹脂塊3を形成する工程における加熱方法としては、通常の毛焼き工程やカレンダー工程等で用いられる表面加熱機(例えば、ガス毛焼き機等)を利用して、突起状樹脂塊形成前不織布表面の熱溶融繊維2を直接、火炎に曝す方法が挙げられる。なお、火炎でなく、同様な熱風を吹き付けることによって加熱することが可能な場合もあるが、突起状樹脂塊3が有する熱溶融繊維2の溶融固化物は、ガス火による溶融固化物が好ましい。加熱による熱溶融繊維2の溶融状態や溶融深さは、加熱温度、加熱時間、及び/又は加熱熱源からの突起状樹脂塊形成前不織布の距離を調節することにより適宜調整することができる。
【0041】
熱溶融繊維2を溶融する際の加熱温度としては、300℃以上1200℃以下が好ましい。なお、熱溶融繊維2として前記高融点繊維を含む場合には、熱溶融繊維2を溶融する際の加熱温度の下限としては、高融点繊維の融点+30℃以上であることが好ましい。熱溶融繊維2を溶融する際の突起状樹脂塊形成前不織布への火炎接触時間としては、熱溶融繊維2が過剰に溶融することにより不織布4としての嵩高さ等を保てなくなるのを防ぐため、可及的短時間とすることが好ましい。また、熱溶融繊維2を溶融する際の突起状樹脂塊形成前不織布の火炎孔からの距離は1.0cm以上3.0cm以下が好ましく、火炎長は3.0cm以上7.0cm以下であることが好ましい。
【0042】
突起状樹脂塊形成前不織布において熱溶融繊維2を溶融するための加熱処理を行う面は、ニードルパンチ加工を行った面(ニードルパンチ面ともいう)側であることが好ましい。すなわち突起状樹脂塊3は、ニードルパンチ面に存在することが好ましい。ニードルパンチ加工を両面に行った突起状樹脂塊形成前不織布の場合には、最後にニードルパンチ加工を行った面(最終ニードルパンチ面ともいう)側に熱溶融繊維2を溶融するための加熱処理を行ってもよく、最後にニードルパンチ加工を行った面とは反対面側に熱溶融繊維2を溶融するための加熱処理を行ってもよく、両面に熱溶融繊維2を溶融するための加熱処理を行ってもよいが、少なくとも最後にニードルパンチ加工を行った面側に熱溶融繊維2を溶融するための加熱処理を行うことが好ましい。つまり突起状樹脂塊形成前不織布の毛羽立ちが少ない面側に前記加熱処理を行うことが好ましい。また、加熱処理を行う面において前記加熱処理を行う面積は、加熱処理を行う面の30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、100%であってもよい。
【0043】
上述の3工程を製造工程に有することにより、不織布4を製造することができる。
【0044】
不織布4の厚さとしては、1.0mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、1.8mm以上がさらに好ましく、2.0mm以上がよりさらに好ましく、また10.0mm以下が好ましく、8.0mm以下がより好ましく、6.0mm以下がさらに好ましく、5.0mm以下がよりさらに好ましい。不織布4の厚さが前記範囲内であることにより、軽量で機械的強度も有する不織布4を得ることができる。
なお、前記突起状樹脂塊形成前不織布に対する不織布4の厚さ減少率((1-不織布4の厚さ(mm)/突起状樹脂塊形成前不織布の厚さ(mm))×100(%))は、5.0%以上が好ましく、5.5%以上がより好ましく、6.0%以上がさらに好ましく、6.5%以上がよりさらに好ましく、10.0%以上が特に好ましく、また35%以下が好ましく、32%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、25%以下がよりさらに好ましい。
【0045】
不織布4の目付としては、50g/m2以上が好ましく、80g/m2以上がより好ましく、100g/m2以上がさらに好ましく、120g/m2以上がよりさらに好ましく、また500g/m2以下が好ましく、350g/m2以下がより好ましく、300g/m2以下がさらに好ましく、250g/m2以下がよりさらに好ましい。不織布4の目付が前記範囲内であることにより、軽量で機械的強度も有する不織布4を得ることができる。
【0046】
不織布4の突起状樹脂塊3が存在する面の摩擦力は、3.7N以上が好ましく、4.0N以上がより好ましく、4.3N以上がさらに好ましく、4.6N以上がよりさらに好ましく、また上限は特にないが、20N以下であってもよい。不織布4の突起状樹脂塊3が存在する面の摩擦力が前記範囲内にあることにより、良好な滑り防止性を有するといえる。摩擦力が前記下限値を下回ると、十分な滑り防止性を得られないため好ましくない。ただし、不織布4の両面に突起状樹脂塊3が存在する場合には、少なくとも片方の面における摩擦力が前記範囲内であればよい。
なお、本明細書中における「摩擦力」は以下のようにして測定される値である。
まず、ポリエステル繊維(繊度3.3dtex、繊維長51mm)を60重量%と、ポリエステル繊維(繊度7.8dtex、繊維長51mm)を35重量%と、低融点ポリエステル繊維(芯鞘構造;鞘部融点110℃、繊度4.4dtex、繊維長51mm)を5重量%とを計量、混綿、カーディング及びクロス積層した積層ウェブを、平均針深さ9.5mm、総打ち込み本数250本/cm2で、積層ウェブの両面からニードルパンチ加工を施し、180℃で30秒間加熱処理して目付250g/m2、厚さ2.5mmの短繊維不織布Aを作製する。作製した短繊維不織布Aの両端を水平な測定台に粘着テープを用いて固定する。次いで、摩擦力を測定する不織布4を20cm×17cmのサイズにカットして測定用サンプルとし、該測定用サンプルの17cmの辺の端から0.5cmの中心部に、プッシュプルゲージのフックが係る程度の小穴を開けて、フックを用いてプッシュプルゲージを引っ掛ける。前記測定台の短繊維不織布A上に、測定用サンプルを突起状樹脂塊3が存在する面が短繊維不織布Aと接するように設置し、測定サンプル上におもり(15cm角サイズ、7.1g/cm2)を載せる。プッシュプルゲージを引張速度1cm/secで30cm水平に引張り、この際の引張り荷重のピーク値をプッシュプルゲージにて測定した。当該測定を5回行い、5回の測定の平均値を摩擦力とする。
【0047】
また、不織布4は着色されていてもよく、着色の方法は特に限定されない。不織布4を着色する方法としては、例えば、不織布4を構成する非熱溶融繊維1及び/又は熱溶融繊維2として原着繊維(紡糸前の原液の段階で顔料や染料等の着色剤を混合することにより着色された原糸)を用いる方法が挙げられる。
【0048】
不織布4は、優れた滑り防止性を有するため、マット用裏材として好適である。不織布4をマット用裏材として用いれば、フロアカーペット等に不織布4を裏材として用いるマットを敷いた際に、該マットがずれたり、剥がれたりするのを防ぐことができる。つまり、本発明のマット用裏材は滑り防止性に優れる。なお、不織布4をマット用裏材として用いる場合、不織布4の突起状樹脂塊3が存在する面がマットの外面となるようにマットの表材と接合する。
【0049】
不織布4をマット用裏材として用いる場合、マットの表材としては、ウィルトンカーペット等の織りカーペット、タフテッドカーペット等の刺繍カーペット、ニードルパンチカーペット等の圧縮カーペット等を用いることができる。
【0050】
不織布4と表材の接合方法としては、特に限定されないが、接着剤や熱溶融性シート等の接着部材を介して接合する方法等を用いることができる。
【実施例
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0052】
下記実施例及び比較例で得られた不織布は、以下の測定方法及び試験方法で物性を測定し、特性を評価した。
(1)目付;JIS L1913 6.2に準じて測定した。
(2)厚さ;(株)尾崎製作所製ダイヤルシックネスゲージ(形式:H-30)を用いて測定した。
(3)突起状樹脂塊の平均高さ:(株)キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX-1000を使用して倍率150倍で不織布の厚み方向に沿う断面の画像を撮影し、任意の10点(ただし、断面長さ0.30mm以上)の突起状樹脂塊の高さを測定しその平均値を突起状樹脂塊の平均高さとした。
(4)滑り防止性;まず、ポリエステル繊維(繊度3.3dtex、繊維長51mm)を60重量%と、ポリエステル繊維(繊度7.8dtex、繊維長51mm)を35重量%と、低融点ポリエステル繊維(芯鞘構造;鞘部融点110℃、繊度4.4dtex、繊維長51mm)を5重量%とを計量、混綿、カーディング及びクロス積層した積層ウェブを、針深さ9.5mm、総打ち込み本数250本/cm2で、積層ウェブの両面からニードルパンチ加工を施し、180℃で30秒間加熱処理して目付250g/m2、厚さ2.5mmの短繊維不織布Aを作製する。作製した短繊維不織布Aの両端を水平な測定台に粘着テープを用いて固定する。次いで、摩擦力(滑り防止性)を測定する不織布を20cm×17cmのサイズにカットして測定用サンプルとし、該測定用サンプルの17cmの辺の端から0.5cmの中心部に、プッシュプルゲージのフックが係る程度の小穴を開けて、フックを用いてプッシュプルゲージを引っ掛ける。前記測定台の短繊維不織布A上に、測定用サンプルを突起状樹脂塊3が存在する面が短繊維不織布Aと接するように設置し、測定サンプル上におもり(15cm角サイズ、7.1g/cm2)を載せる。プッシュプルゲージを引張速度1cm/secで30cm水平に引張り、この際の引張り荷重のピーク値をプッシュプルゲージにて測定した。当該測定を5回行い、5回の測定の平均値を摩擦力とした。求めた摩擦力に基づき、下記の通り滑り防止性を評価した。
◎:摩擦力が4.6N以上であり、基準より摩擦力がかなり大きい。
○:摩擦力が3.7N以上4.5N以下であり、基準より摩擦力が大きい。
△:基準(摩擦力3.6N)。
×:摩擦力が3.5N以下であり、基準より摩擦力が小さい。
【0053】
下記実施例及び比較例で使用される繊維を表1にまとめて示す。
【0054】
【表1】
【0055】
実施例1
ポリエステル繊維(黒色、繊度6.6dtex、繊維長51mm;熱溶融繊維(b))を99.0重量%と、レーヨン繊維(白色、繊度7.8dtex、繊維長51mm;非熱溶融繊維(g))を1.0重量%とを、計量、混綿、カーディング及びクロス積層した積層ウェブを、平均針深さ8.5mm、総針本数200本/cm2で、積層ウェブの両面からニードルパンチ加工を施し、目付180g/m2、厚さ3.4mmの突起状樹脂塊形成前不織布を形成した。次いで、ガス毛焼き機を用いて、バーナーの火炎長5cm、火炎孔から距離2cmに前記突起状樹脂塊形成前不織布の最終ニードルパンチ面を配置して、処理速度10m/minでガス毛焼き加工を施し、表面に突起状樹脂塊が形成された不織布を得た。得られた不織布の滑り防止性の評価結果を表2に示す。
【0056】
実施例2~20、22~28、比較例1~4
表2~4に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にして不織布を製造した。製造した不織布の滑り防止性の評価結果を表2~4に示す。なお、比較例1の不織布は非熱溶融繊維を有しないため突起状樹脂塊ではなく丸みを帯びた樹脂塊が形成されるが、該樹脂塊の平均高さは前記突起状樹脂塊の平均高さの測定と同様にして測定し(樹脂塊が存在する不織布表面からの垂直高さは、図2(b)に示すhである)、不織布の滑り防止性は、該樹脂塊が存在する面が前記短繊維不織布Aと接するように設置することにより、前記滑り防止性評価と同様の方法で評価した。また、比較例2~4の不織布は非熱溶融繊維を有するため突起状の樹脂塊が形成されるが、非熱溶融繊維の含有率が高く、熱溶融繊維の含有率が低いため、断面長さが0.30mm未満の樹脂塊しか形成されなかった。
【0057】
実施例21
表4に示す条件に変更し、さらにガス毛焼き加工を施す面を最終ニードルパンチ面とは反対面側としたこと以外は、実施例1と同様にして不織布を製造した。製造した不織布の滑り防止性の評価結果を表4に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
表2~4から明らかなように、実施例1~28では、いずれも、非熱溶融繊維と熱溶融繊維とを含み、非熱溶融繊維と熱溶融繊維の重量比(非熱溶融繊維/熱溶融繊維)が、0.01/99.99~30/70の範囲内であり、前記非熱溶融繊維が前記熱溶融繊維の溶融固化物で覆われた突起状樹脂塊が存在する不織布であるため、摩擦力が大きく、滑り防止性に優れた不織布とすることができた。
【0062】
比較例1の不織布は、非熱溶融繊維を含まないため、非熱溶融繊維が熱溶融繊維の溶融固化物で覆われた突起状樹脂塊が得られず、実施例1~28の不織布よりも滑り防止性が劣っていた。
【0063】
比較例2~4の不織布は、非熱溶融繊維の含有量が多く、非熱溶融繊維と熱溶融繊維の重量比(非熱溶融繊維/熱溶融繊維)が0.01/99.99~30/70の範囲外であるため、断面長さが0.30mm以上の大きな突起状樹脂塊が得られず、実施例1~28の不織布よりも滑り防止性が劣っていた。なお、断面長さが0.10mm以上の樹脂塊の平均高さを上述の平均高さ測定方法と同様の方法で測定したところ、比較例2は0.16mm、比較例3は0.16mm、比較例4は0.12mmであった。
【符号の説明】
【0064】
1 非熱溶融繊維
2 熱溶融繊維
3 突起状樹脂塊
4 不織布
図1
図2(a)】
図2(b)】