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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】自動製氷機
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/045 20180101AFI20240829BHJP
【FI】
F25C1/045 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020151269
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2022045597
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】真田 智之
(72)【発明者】
【氏名】石富 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】嘉藤 由秋
(72)【発明者】
【氏名】門脇 静馬
(72)【発明者】
【氏名】富永 祐之
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-325143(JP,A)
【文献】実開昭54-032690(JP,U)
【文献】特開2008-177921(JP,A)
【文献】特開2004-314194(JP,A)
【文献】特開2002-323276(JP,A)
【文献】特開平06-257909(JP,A)
【文献】実開平04-058650(JP,U)
【文献】実開昭60-045946(JP,U)
【文献】実開昭51-120446(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/12
F16H 51/00 - 53/08
F25C 1/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(12)の内部に、下向きに開口する凹板状の製氷室(16)と、前記製氷室(16)の下方に配置された水皿(20)と、前記水皿(20)をその一端側を軸として上下に傾動させる水皿傾動機構(50)とを備えた自動製氷機において、
前記水皿傾動機構(50)は、アクチュエータモータ(AM)と、該アクチュエータモータ(AM)の駆動に応じて回動するカム部材(51R)と、前記カム部材(51R)の回動端側に上端部が保持されて下端部が前記水皿(20)の傾動端部に接続されたコイルばね(28R)とを備え、
前記カム部材(51R)は、回動中心からの半径方向に延在する第1部材(53)と、前記コイルばね(28R)の上端部を保持する第2部材(63)とを備え、当該第1部材(53)および第2部材(63)を分離可能に接続することで構成され
前記第2部材(63)に設けられた嵌合部(64)が嵌合する溝部(54)が前記第1部材(53)に設けられて、該溝部(54)における長手方向の一端側が前記第1部材(53)の側端面(53c)に開口する嵌合口(54a)となっており、
前記嵌合部(64)は、前記溝部(54)への挿入方向の末端側から先端側に向かうにつれて幅寸法が次第に小さくなるテーパ状に形成されており、前記溝部(54)は、前記嵌合部(64)の形状に合わせて、長手方向の前記一端側から他端側に向かうにつれて幅寸法が次第に小さくなるように形成されている
ことを特徴とする自動製氷機。
【請求項2】
筐体(12)の内部に、下向きに開口する凹板状の製氷室(16)と、前記製氷室(16)の下方に配置された水皿(20)と、前記水皿(20)をその一端側を軸として上下に傾動させる水皿傾動機構(50)とを備えた自動製氷機において、
前記水皿傾動機構(50)は、アクチュエータモータ(AM)と、該アクチュエータモータ(AM)の駆動に応じて回動するカム部材(51R)と、前記カム部材(51R)の回動端側に上端部が保持されて下端部が前記水皿(20)の傾動端部に接続されたコイルばね(28R)とを備え、
前記カム部材(51R)は、回動中心からの半径方向に延在する第1部材(53)と、前記コイルばね(28R)の上端部を保持する第2部材(63)とを備え、当該第1部材(53)および第2部材(63)を分離可能に接続することで構成され
前記第2部材(63)に設けられた嵌合部(64)が嵌合する溝部(54)が前記第1部材(53)に設けられて、該溝部(54)における長手方向の一端側が前記第1部材(53)の側端面(53c)に開口する嵌合口(54a)となっており、
前記溝部(54)に前記嵌合部(64)が嵌合することに応じて、当該嵌合部(64)および溝部(54)に跨る収容部(58,70)が形成され、
前記第2部材(63)に移動可能に備えられる被収容部(67b)を、前記溝部(54)に前記嵌合部(64)が嵌合した状態で前記収容部(58,70)の外側から内側に移動させることで、該収容部(58,70)のうち前記溝部(54)による形成部分(58)によって前記嵌合口(54a)側への前記被収容部(67b)の移動が規制される状態となり、これによって前記溝部(54)からの前記嵌合部(64)の離脱が防がれる一方、当該被収容部(67b)を前記収容部(58,70)の内側から外側に移動させることで前記被収容部(67b)に対する移動規制が解除されて、これにより前記溝部(54)に対する前記嵌合部(64)の離脱方向への移動が許容される
ことを特徴とする自動製氷機。
【請求項3】
筐体(12)の内部に、下向きに開口する凹板状の製氷室(16)と、前記製氷室(16)の下方に配置された水皿(20)と、前記水皿(20)をその一端側を軸として上下に傾動させる水皿傾動機構(50)とを備えた自動製氷機において、
前記水皿傾動機構(50)は、アクチュエータモータ(AM)と、該アクチュエータモータ(AM)の駆動に応じて回動するカム部材(51R)と、前記カム部材(51R)の回動端側に上端部が保持されて下端部が前記水皿(20)の傾動端部に接続されたコイルばね(28R)とを備え、
前記カム部材(51R)は、回動中心からの半径方向に延在する第1部材(53)と、前記コイルばね(28R)の上端部を保持する第2部材(63)とを備え、当該第1部材(53)および第2部材(63)を分離可能に接続することで構成され
前記第2部材(63)に設けられた嵌合部(64)が嵌合する溝部(54)が前記第1部材(53)に設けられて、該溝部(54)における長手方向の一端側が前記第1部材(53)の側端面(53c)に開口する嵌合口(54a)となっており、
前記カム部材(51R)が前記水皿(20)を開放する回動位置にある状態で前記嵌合口(54a)が水平方向より上側を向くように構成されている
ことを特徴とする自動製氷機。
【請求項4】
前記被収容部(67b)は、前記第2部材(63)の固定穴(68)に挿入されて固定される締結部材(67)の頭部であり、
前記嵌合部(64)は、当該嵌合部(64)に対する前記締結部材(67)の挿入方向に向かうにつれて幅寸法が次第に小さくなるテーパ状に形成されており、前記溝部(54)は、前記嵌合部(64)の形状に合わせて、前記挿入方向に向かうにつれて幅寸法が次第に小さくなるように形成されている請求項記載の自動製氷機。
【請求項5】
記第2部材(63)に設けられた被係止部(71)を係止する係止部(59)が、前記第1部材(53)における前記溝部(54)と異なる位置に設けられている請求項~4の何れか一項に記載の自動製氷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製氷室に対して水皿を傾動可能に枢支した自動製氷機に関する。
【背景技術】
【0002】
多量の氷塊を製造し得る自動製氷機が、喫茶店やレストラン等の施設その他の厨房において好適に使用されている。自動製氷機としては、製氷室(製氷部)に設けられている製氷小室の開口を閉成する水皿から製氷小室に向けて対応的に製氷水を噴射供給して氷塊を製造し、この生成された氷塊を、水皿が製氷小室の開口を開放する状態で落下放出するよう構成した所謂クローズドセルタイプの製氷機構を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。例えば図12および図13に示すように、この製氷機構15は、製氷小室16aが設けられた製氷室16、製氷小室16aの開口を開閉可能な水皿20、該水皿20に供給される製氷水を貯留する製氷水タンク22等によって構成されており、筐体12の内側に配設されている。製氷室16は、製氷小室16aが下向きに開口する凹板状であり、その上面には冷凍回路を構成する蒸発管18が蛇行配置されて、下方には水皿20が配置されている。水皿20は、製氷水を貯留する製氷水タンク22を下側に一体的に備え、製氷水タンク22にはポンプモータPMが取り付けられている。すなわち、ポンプモータPMにより製氷水タンク22内の製氷水が吸入されて水皿20に供給される。
【0003】
水皿20は、支持機構30によって一端部(図12では左端部)が枢支され、他端部(図12では右端部)が水皿傾動機構50に連繋している。水皿傾動機構50は、水皿20の前記他端部を昇降させるものであって、電動モータに減速機を組み合わせたアクチュエータモータAMと、該アクチュエータモータAMの駆動により双方向に回動するカム部材26F,26Rと、該カム部材26F,26Rおよび水皿20を連繋するコイルばね(引張コイルばね)28F,28Rとを備えている。そして、自動製氷機では、製氷運転に入ると、アクチュエータモータAMの駆動によりカム部材26F,26Rを一方向に回動させて、水皿20を製氷室16から離間する開放位置からコイルばね28F,28Rを介して斜め上方へ引き上げて閉成位置へ到来させ、製氷室16を下方から閉成する。また除氷運転に入ると、アクチュエータモータAMの駆動によりカム部材26F,26Rを他方向に回動させ、水皿20を斜め下方へ強制的に下降させて製氷室16を全面的に開放し、水皿20を開放位置にコイルばね28F,28Rを介して保持する。図12に示すように、水皿20は、閉成位置では上面が水平な水平姿勢となり、開放位置では上面が傾斜した傾斜姿勢となる。すなわち、水皿傾動機構50は、水皿20を閉成位置(水平姿勢)および開放位置(傾斜姿勢)の相互で移動させる。なお、水皿20の「傾動」とは、水皿20の水平姿勢(閉成位置)および傾斜姿勢(開放位置)の間の移動のことであって、傾斜姿勢から水平姿勢への移動を含む。また、以下の記載では、水皿20の前記一端部(支持機構30で枢支される側)を「軸側端部」と称し、前記他端部(水皿傾動機構50で支持される側)を「傾動端部」と称する。
【0004】
図13に示すように、水皿傾動機構50は、水皿20の傾動端部の2箇所、具体的には前側部位および後側部位を支持するように構成されている。すなわち、水皿傾動機構50は、水皿20の傾動端部のうち前側部位を支持するための前側のカム部材(前カム部材)26Fおよびコイルばね(前コイルばね)28Fと、水皿20の傾動端部のうち後側部位を支持するための後側のカム部材(後カム部材)26Rおよびコイルばね(後コイルばね)28Rとを備える。前カム部材26Fは、アクチュエータモータAMの駆動により回動するカムシャフト24の前端側に固定されており、後カム部材26Rは、カムシャフト24の後端側に固定されている。各カム部材26F,26Rは、カムシャフト24から径方向に延出する形状であり、アクチュエータモータAMの駆動によってカムシャフト24を中心に回動するので、カムシャフト24に固定される側の端部が軸側端部、カムシャフト24から離間する側の端部(延出端部)が回動端部となる。前コイルばね28Fは、その上端部のフック29bが、前カム部材26Fの回動端部における前面から突出する保持部85の外周面に形成された保持溝部89に引っ掛けられ、下端部のフック29bが、水皿20の傾動端部における前面から突出する保持部85の外周面に形成された保持溝部89に引っ掛けられることで、前カム部材26Fおよび水皿20の間を連繋している。また、後コイルばね28Rは、その上端部のフック29bが、後カム部材26Rの回動端部における前面から突出する保持部85の外周面に形成された保持溝部89に引っ掛けられ、下端部のフック29bが、水皿20の傾動端部における後面から突出する保持部85の外周面に形成された保持溝部89に引っ掛けられることで、後カム部材26Rおよび水皿20の間を連繋している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-257909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水皿20は、製氷水として使用される水道水に含まれる不純物等に起因して経時的に汚れるため、清掃等のメンテナンスが随時行われる。ここで、筐体12から水皿20を取り外してメンテナンスを行う場合、コイルばね28F,28Rの下端部に設けられるフック29bを水皿20から外すか、コイルばね28F,28Rの上端部に設けられるフック29bをカム部材26F,26Rから外す必要があるが、一般的にはコイルばね28F,28Rの両端部のフック29bを外れないように変形させているため、この作業には非常に手間がかかる。
【0007】
そこで本発明は、従来の自動製氷機に内在する前記問題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、水皿を容易に取り外すことができる自動製氷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願には、次のような技術的思想が含まれている。
筐体の内部に、下向きに開口する凹板状の製氷室と、前記製氷室の下方に配置された水皿と、前記水皿をその一端側を軸として上下に傾動させる水皿傾動機構とを備えた自動製氷機において、
前記水皿傾動機構は、アクチュエータモータと、該アクチュエータモータの駆動に応じて回動するカム部材と、前記カム部材の回動端側に上端部が保持されて下端部が前記水皿の傾動端部に接続されたコイルばねとを備え、
前記カム部材は、回動中心からの半径方向に延在する第1部材と、前記コイルばねの上端部を保持する第2部材とを備え、当該第1部材および第2部材を分離可能に接続することで構成されていることを要旨とする。
この構成によれば、カム部材における第1部材および第2部材の接続を解除することで水皿の傾動端部が筐体側から分離されるので、コイルばねの上端部または下端部を変形させる必要が生じない。すなわち、水皿を取り外す場合に、水皿の傾動端部を筐体側と分離する作業が容易となる。
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る自動製氷機は、
筐体の内部に、下向きに開口する凹板状の製氷室と、前記製氷室の下方に配置された水皿と、前記水皿をその一端側を軸として上下に傾動させる水皿傾動機構とを備えた自動製氷機において、
前記水皿傾動機構は、アクチュエータモータと、該アクチュエータモータの駆動に応じて回動するカム部材と、前記カム部材の回動端側に上端部が保持されて下端部が前記水皿の傾動端部に接続されたコイルばねとを備え、
前記カム部材は、回動中心からの半径方向に延在する第1部材と、前記コイルばねの上端部を保持する第2部材とを備え、当該第1部材および第2部材を分離可能に接続することで構成され、
前記第2部材に設けられた嵌合部が嵌合する溝部が前記第1部材に設けられて、該溝部における長手方向の一端側が前記第1部材の側端面に開口する嵌合口となっており、
前記嵌合部は、前記溝部への挿入方向の末端側から先端側に向かうにつれて幅寸法が次第に小さくなるテーパ状に形成されており、前記溝部は、前記嵌合部の形状に合わせて、長手方向の前記一端側から他端側に向かうにつれて幅寸法が次第に小さくなるように形成されていることを要旨とする。
請求項に係る発明によれば、カム部材における第1部材および第2部材の接続を解除することで水皿の傾動端部が筐体側から分離されるので、コイルばねの上端部または下端部を変形させる必要が生じない。すなわち、水皿を取り外す場合に、水皿の傾動端部を筐体側と分離する作業が容易となる。また、第1部材と第2部材とを組み付ける際、溝部に対して嵌合部を容易に挿入することができる。また、嵌合部を逆向きで溝部に挿入しようとするミスを防ぐことができる。
【0010】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項2の発明に係る自動製氷機は、
筐体の内部に、下向きに開口する凹板状の製氷室と、前記製氷室の下方に配置された水皿と、前記水皿をその一端側を軸として上下に傾動させる水皿傾動機構とを備えた自動製氷機において、
前記水皿傾動機構は、アクチュエータモータと、該アクチュエータモータの駆動に応じて回動するカム部材と、前記カム部材の回動端側に上端部が保持されて下端部が前記水皿の傾動端部に接続されたコイルばねとを備え、
前記カム部材は、回動中心からの半径方向に延在する第1部材と、前記コイルばねの上端部を保持する第2部材とを備え、当該第1部材および第2部材を分離可能に接続することで構成され、
前記第2部材に設けられた嵌合部が嵌合する溝部が前記第1部材に設けられて、該溝部における長手方向の一端側が前記第1部材の側端面に開口する嵌合口となっており、
前記溝部に前記嵌合部が嵌合することに応じて、当該嵌合部および溝部に跨る収容部が形成され、
前記第2部材に移動可能に備えられる被収容部を、前記溝部に前記嵌合部が嵌合した状態で前記収容部の外側から内側に移動させることで、該収容部のうち前記溝部による形成部分によって前記嵌合口側への前記被収容部の移動が規制される状態となり、これによって前記溝部からの前記嵌合部の離脱が防がれる一方、当該被収容部を前記収容部の内側から外側に移動させることで前記被収容部に対する移動規制が解除されて、これにより前記溝部に対する前記嵌合部の離脱方向への移動が許容されることを要旨とする。
請求項に係る発明によれば、カム部材における第1部材および第2部材の接続を解除することで水皿の傾動端部が筐体側から分離されるので、コイルばねの上端部または下端部を変形させる必要が生じない。すなわち、水皿を取り外す場合に、水皿の傾動端部を筐体側と分離する作業が容易となる。また、第2部材に備えられる被収容部の位置に応じて、溝部からの嵌合部の離脱を防ぐ状態と、溝部に対する嵌合部の離脱方向への移動を許容する状態とに切り換えることができる。すなわち、第1・第2部材の固定・固定解除作業を容易に行うことができる。
【0011】
請求項4に係る発明では、
前記被収容部は、前記第2部材の固定穴に挿入されて固定される締結部材の頭部であり、
前記嵌合部は、当該嵌合部に対する前記締結部材の挿入方向に向かうにつれて幅寸法が次第に小さくなるテーパ状に形成されており、前記溝部は、前記嵌合部の形状に合わせて、前記挿入方向に向かうにつれて幅寸法が次第に小さくなるように形成されていることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、溝部に嵌合部が嵌合した状態で固定穴に締結部材を挿入固定していく場合に、作業者が嵌合部に締結部材を押し付けることによる押圧力(締結部材の挿入方向にかかる力)を溝部によって確実に受け止めることができる。すなわち、締結部材の挿入固定に応じて嵌合部が溝部から外れる不具合を防ぐことができる。
【0012】
請求項5に係る発明では、
記第2部材に設けられた被係止部を係止する係止部が、前記第1部材における前記溝部と異なる位置に設けられていることを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、第1部材の溝部に第2部材の嵌合部が嵌合する構成に加えて、第1部材における溝部と異なる位置に設けられる係止部によって第2部材の被係止部を係止する構成を備えることにより、第1部材および第2部材の接続状態を安定させることができる。
【0013】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項3の発明に係る自動製氷機は、
筐体の内部に、下向きに開口する凹板状の製氷室と、前記製氷室の下方に配置された水皿と、前記水皿をその一端側を軸として上下に傾動させる水皿傾動機構とを備えた自動製氷機において、
前記水皿傾動機構は、アクチュエータモータと、該アクチュエータモータの駆動に応じて回動するカム部材と、前記カム部材の回動端側に上端部が保持されて下端部が前記水皿の傾動端部に接続されたコイルばねとを備え、
前記カム部材は、回動中心からの半径方向に延在する第1部材と、前記コイルばねの上端部を保持する第2部材とを備え、当該第1部材および第2部材を分離可能に接続することで構成され、
前記第2部材に設けられた嵌合部が嵌合する溝部が前記第1部材に設けられて、該溝部における長手方向の一端側が前記第1部材の側端面に開口する嵌合口となっており、
前記カム部材が前記水皿を開放する回動位置にある状態で前記嵌合口が水平方向より上側を向くように構成されていることを要旨とする。
請求項に係る発明によれば、カム部材における第1部材および第2部材の接続を解除することで水皿の傾動端部が筐体側から分離されるので、コイルばねの上端部または下端部を変形させる必要が生じない。すなわち、水皿を取り外す場合に、水皿の傾動端部を筐体側と分離する作業が容易となる。また、作業者が水皿を取り外す場合に、水皿の荷重が、嵌合部が溝部から外れる方向への力として作用しない。従って、作業者は、安全に第1部材および第2部材の接続を解除することができる。
【0014】
本願には、次のような技術的思想が含まれている。
筐体の内部に、下向きに開口する凹板状の製氷室と、前記製氷室の下方に配置された水皿と、前記水皿をその一端側を軸として上下に傾動させる水皿傾動機構とを備えた自動製氷機において、
前記水皿傾動機構は、アクチュエータモータと、該アクチュエータモータの駆動に応じて回動するカム部材と、前記カム部材の回動端側に上端部が保持されて下端部が前記水皿の傾動端部に接続されたコイルばねとを備え、
前記カム部材は、回動中心からの半径方向に延在する第1部材と、前記第1部材の回動端側に装着される第2部材とを備え、前記第1部材の回動端側と前記第2部材との間に前記コイルばねの上端部を保持するように構成され、
前記第1部材および前記第2部材は、その一方に設けられた係止爪の係止に応じて互いに接続されていることを要旨とする。
この構成によれば、第1部材と第2部材とを分離することでコイルばねが外れるので、作業者が水皿を取り外す場合にコイルばねの上端部を変形させる必要が生じない。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る自動製氷機によれば、水皿を容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1に係る自動製氷機を前側から見た斜視図である。
図2】筐体からフロントパネルを取り外し、かつ水皿が開放位置に傾動した状態の正面図である。なお、前カム部材および前コイルばねの図示を省略し、後カム部材および後コイルばねを確認できる状態で示してある。
図3】(a)は、筐体の内部構造を左側から見た斜視図であり、(b)は、(a)におけるA1領域の拡大図であり、(c)は、(a)におけるA2領域の拡大図であり、(d)は、枢支ピンの全体図である。
図4】(a)は、アクチュエータモータ、カムシャフト、前カム部材および後カム部材の接続関係に関する説明図(各部材を右側から見た状態)であり、(b)は、前カム部材の動作に関する説明図であり、(c)は、(a)における前カム部材の要部拡大正面図であり、(d)は、前コイルばねの要部拡大正面図である。
図5】(a)は、後カム部材をその回動端側が下側に位置する状態で後面側から見た斜視図であり、(b)は、後カム部材をその回動端側が下側に位置する状態で前面側から見た斜視図であり、(c)は、後カム部材における第1部材および第2部材が分離された状態を前面側から見た斜視図であり、(d)は、後カム部材における第1部材(回動端側)および第2部材が分離された状態を後面側から見た斜視図である。
図6】(a)は、後コイルばねを保持した状態の第2部材の正面図であり、(b)は、第1部材および第2部材の嵌合位置についての横断背面図である。
図7】(a)は、第1部材および第2部材をボルトの挿通箇所で切断した断面図であり、(b)は、第1部材および第2部材の嵌合位置についてボルトが緩んだ状態を示す斜視図である。
図8】第1部材および第2部材の嵌合位置について、溝部に対する嵌合部の挿入方向の基端側から見た状態を示している。
図9】第1部材および第2部材の嵌合位置について、溝部に対する嵌合部の挿入方向の先端側から見た状態を示している。
図10】(a)は、実施例2における後カム部材を構成する第1部材および第2部材と、後コイルばねとを分離して後面側から見た分解斜視図であり、(b)は、回動端側が上側に位置する状態の後カム部材と、後コイルばねとを前面(裏面)側から見た斜視図である。
図11】実施例3における水皿の取付構造を示す説明図である。
図12】従来の自動製氷機の内部構造を正面側から見た状態を示している。
図13】従来の自動製氷機の内部構造を左側から見た状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る自動製氷機につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、説明の便宜上、図12および図13に示した自動製氷機と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、以下の記載において方向や位置を説明する際に用いる「左」、「右」、「上」、「下」、「前」、「後」等は、自動製氷機を前側(フロントパネルの正面側)から見た状態を基準としている。
【実施例1】
【0018】
実施例1の自動製氷機10は、略箱状の筐体12(図1参照)の内部に、製氷室16、水皿20および製氷水タンク22等からなる所謂クローズドセルタイプの製氷機構15と、水皿20の一端部(図2では左端部、以下「軸側端部」という)を枢支するための支持機構30と、水皿20の他端部(図2では右端部、以下「傾動端部」という)を支持して当該水皿20を上下に傾動させる水皿傾動機構50とを収容している(図2および図3(a)参照)。筐体12は、図1に示すように、その前面を構成するフロントパネル12aおよび上面を構成する天板12bが、当該筐体12の骨格となる枠体12c(図2および図3(a)参照)に着脱自在に取り付けられて構成されている。筐体12の内側上部には、製氷機構15、支持機構30および水皿傾動機構50の各構成部材等が取り付けられる2本の取付柱体12d(図3(a)参照)が、前後方向に離間して左右方向に延在するように枠体12cの上部に固定されている。また、水皿20は、製氷水タンク22やポンプモータPM等とユニット化されており、製氷室16とは別に取付柱体12dに取り付けられている。
【0019】
(支持機構30について)
支持機構30は、図3(a)、図3(b)および図3(c)に示すように、各取付柱体12dに1つずつ固定された合計2つの軸受け金具32F,32Rと、水皿20の左側面(軸側端部)に固定されて互いに前後方向に離間する合計2つの水皿支持板34F,34Rとを備えている。具体的には、前側の取付柱体12dに固定された前側の軸受け金具32Fで、前側の水皿支持板34Fが枢支されており(図3(c)参照)、後側の取付柱体12dに固定された後側の軸受け金具32Rで、後側の水皿支持板34Rが枢支されている(図3(b)参照)。すなわち、支持機構30は、水皿支持板34F,34Rおよび軸受け金具32F,32Rの組み合わせ(以下「支持組」という)を2組備えており、この2組の支持組によって水皿20の軸側端部の前側部位および後側部位を支持している。
【0020】
ここで、従来においては、2つの支持組に対して個別に枢支ピンを差し込み、各枢支ピンの抜け止めを個別に抜け止めピンで行うようにしていたため、後側(筐体12の奥側)の支持組を組み付けたり分離したりする作業を筐体12の前側から行い難かった。これに対し、実施例1の自動製氷機10では、図3(b)および図3(c)に示すように、2つの支持組を構成する水皿支持板34F,34Rおよび軸受け金具32F,32Rを共通の枢支ピン36で相対移動(回転)可能に連結し、この枢支ピン36の前方への抜けを、筐体12内部の前寄り位置に配置される1つの抜け止め手段40(図2および図3(c)参照)で規制するようにしている。具体的には、2つの水皿支持板34F,34Rおよび2つの軸受け金具32F,32Rの夫々を前後方向に貫通する貫通穴38(軸受け金具32Rの貫通穴38のみ図示している)を挿通するように1つの枢支ピン36を前側から後側に向けて閂状に差し込むことで、各軸受け金具32F,32Rに対して各水皿支持板34F,34Rを、枢支ピン36を軸とする回転方向に移動可能に連結している。枢支ピン36は、図3(d)に示すように細い円柱状の棒体であり、差し込み方向の先端部36aがテーパ状となっているため各貫通穴38への挿入がし易く、また、差し込み方向の末端部36bが他の部位よりも大径になっているため各貫通穴38を通過して後方に抜け出ることがない。なお、各軸受け金具32F,32Rの貫通穴38は、散水用の散水パイプP(図3(b)参照)が挿通する位置の近傍に設けられているので、枢支ピン36を通す際に、各軸受け金具32F,32Rに対する散水パイプPの挿通位置を基準にして貫通穴38を見つけ易い。
【0021】
ここで、図3(c)に示すように、枢支ピン36が前方に抜けるのを防止するための抜け止め手段(実施例1では給水弁取付板)40が前側の軸受け金具32Fの前面に取り付けられ、当該抜け止め手段40が枢支ピン36の末端部36bを軸受け金具32Fとの間に挟持して移動を規制している。このため、作業者が水皿20を取り外してメンテナンスを行う際、フロントパネル12aを開放して、筐体12の内部空間の手前側に位置している抜け止め手段40を取り外すようにすれば、1つの枢支ピン36を貫通穴38から手前側に抜き出すことができるようになり、これだけで、各支持組における軸受け金具32F,32Rと水皿支持板34F,34Rとの接続を解除することができる。すなわち、水皿20を取り外すために水皿20の軸側端部を筐体12側から分離する作業を、天板12bを開放することなく、筐体12の前側から容易に行うことができる。
【0022】
(水皿傾動機構50について)
以下、実施例1の自動製氷機10に備えられる水皿傾動機構50につき、図2図9を参照して詳細に説明する。水皿傾動機構50は、製氷運転を行う場合には、製氷室16の製氷小室16a(図12および図13参照)の開口を塞ぐ閉成位置に水皿20を保持することにより、蒸発管18で冷却される製氷室16の製氷小室16aに対する水皿20からの製氷水の噴射供給を可能とする。また、製氷運転が終了し、蒸発管18で製氷室16を加熱する除氷運転に移行する場合には、水皿20を閉成位置から開放位置に傾動させて製氷小室16aを開放し、除氷運転において水皿20を開放位置に保持することで、製氷室16の製氷小室16aからの氷塊の放出を可能とする。そして、除氷運転が終了し、製氷運転に移行する場合には、水皿20を開放位置から閉成位置に傾動させて製氷小室16aを閉成する。ここで、水皿傾動機構50は、図2図3(a)および図4(a)に示すように、水皿20を傾動させる駆動源としてのアクチュエータモータAMと、水皿20の傾動端部における前側部位を支持するための前カム部材51Fおよび前コイルばね28F(図3(a)参照)と、水皿20の傾動端部における後側部位を支持するための後カム部材51Rおよび後コイルばね28R(図2参照)と、前カム部材51Fおよび後カム部材51Rを接続するカムシャフト24(図4(a)参照)とを備えている。なお、図2は、前カム部材51Fおよび前コイルばね28Fを取り除いた状態である。
【0023】
図4(a)に示すように、筐体12の内側上部に前後に離間して設けられる2本の取付柱体12dの各下面に、カムシャフト24を回動可能に支持する回動支持部材23が夫々取り付けられている。各回動支持部材23は、取付柱体12dの下面から垂下するように設けられており、その下端部に、前後方向に開口する円筒状のシャフト支持部23aが設けられている。カムシャフト24は、2つのシャフト支持部23a(回動支持部材23)に挿通されて前後に離間する2箇所が回動可能に支持されている。そして、カムシャフト24の前端部が前カム部材51Fの後面に開口するシャフト固定穴52aに挿入されて、カムシャフト24および前カム部材51Fが相互に固定されている。また、カムシャフト24の後端部が後カム部材51Rの前面に開口するシャフト固定穴52aに挿入されて、カムシャフト24および後カム部材51Rが相互に固定されている。
【0024】
また、図4(a)に示すように、前側の取付柱体12dの前面には、下方に開放するコ字状の取付基板13が固定されており、この取付基板13にアクチュエータモータAMが、回転軸AMa(図4(a)参照)を後方に延出させた姿勢で取り付けられている。この状態で、アクチュエータモータAMの回転軸AMaは、カムシャフト24と同一線上に延在している。回転軸AMaは、前カム部材51Fの前面に開口する軸固定穴52bに挿入され、これにより回転軸AMaおよび前カム部材51Fが相互に固定されている。すなわち、前カム部材51Fおよび後カム部材51Rは、カムシャフト24によって連結され、アクチュエータモータAMの駆動による回転軸AMaの回転に応じて一体的に回動するように構成されている。なお、アクチュエータモータAMは、水皿20を開放する際に、回転軸AMaが前から見て左側に回転するように駆動し、水皿20を閉成する際に、回転軸AMaが前から見て右側に回転するように駆動する。そこで、以下の記載では、アクチュエータモータAMにおける回転軸AMaが左回転する駆動(水皿20を開放する駆動)を「正駆動」とし、回転軸AMaが右回転する駆動(水皿20を閉成する駆動)を「逆駆動」として説明する。また、カムシャフト24およびカム部材51F,51Rは、アクチュエータモータAMの駆動に伴い、回転軸AMaの回転方向と同方向に回動する。このため、カムシャフト24およびカム部材51F,51Rについては、左方向への回動(回転)を「正転」、右方向への回動(回転)を「逆転」と表現する。
【0025】
図4(a)の中央より左側と、図4(b)とには、前カム部材51Fについて、水皿20を閉成位置に引き上げた時の姿勢で示してある。これらの図示のように、前カム部材51Fは、一方向(当該図示の上下方向)に長細い板状の合成樹脂製部材であり、その長手方向の一端部(当該図示での下端部)の幅寸法が、他端部(当該図示での上端部)の幅寸法より大きく形成されている。そして、図4(b)に示すように、前カム部材51Fのうち幅寸法の大きな前記一端部には、前述した回転軸AMaが固定される軸固定穴52bが前面に開口し、また後面には、前述したカムシャフト24の前端部が固定されるシャフト固定穴52aが開口するように形成されている。また、シャフト固定穴52aから離間する前記他端部には、前コイルばね28Fの上端部を保持する保持部85(後述)が前方に突出するように設けられている。すなわち、前カム部材51Fは、回動中心がカムシャフト24と同じで、かつ径方向にアーム状に延出した形状であり、その延出端側に前コイルばね28Fの上端部を保持するように構成されている。なお、以下の記載では便宜上、前カム部材51Fの回動中心側となる前記一端部を「軸側端部」と称し、回動中心から離間する延出端側となる前記他端部を「回動端部」と称する。
【0026】
図4(a)および図4(b)に示すように、前カム部材51Fの回動端部には、前コイルばね28Fの上端部(後述するフック29b)を保持する保持部85が、当該前カム部材51Fの前面から前方に向けて突出する円筒状に設けられている。この保持部85は、その突出方向の途中位置が小径になっており、この小径部分(以下「小径部86」という)の外周面が溝状に凹んで環状の保持溝部89を形成している。なお、以下の記載では便宜上、保持部85における小径部86よりも基端側を「台座部87」と称すると共に、保持部85における小径部86よりも突出端側を「フランジ88」と称する。このように、保持部85は、前カム部材51Fの回動端部から前方に向けて台座部87が突出し、この台座部87の突出端面から、台座部87よりも小径の小径部86が突出して、この小径部86の突出端部に、当該小径部86より大径のフランジ88が位置している。これにより、凹状の保持溝部89を、小径部86の外周面と、台座部87およびフランジ88の対向面とが保持部85の外周面に形成している。
【0027】
ここで、図4(c)および図4(d)に示すように、前コイルばね28Fの上端部には、前カム部材51Fの保持部85に形成された保持溝部89に係合するフック29bが設けられている。フック29bは、後コイルばね28Fを構成する素線(金属線)のうち螺旋状の巻回部29aよりも端側の部分を環状に曲げることで形成されており、その内周側が保持部85を通すための開口29cとなっている。より具体的に、フック29bは、上下方向にやや長い楕円形であり、その左右方向の内径寸法が上下方向の内径寸法より小さくなっている。そして、このフック29bの左右方向の内径寸法が、保持部85における小径部86の外径寸法よりも大きく、台座部87やフランジ88の外径寸法よりも小さい寸法に設定されている。フック29bを形成している素線の端部29d(図4(d)参照)は他の部位と固定されておらず、当該端部29dをフック29bの外方に向けて引っ張ることでフック29bの開口29cの面積が広がるようにフック29bを変形可能となっている。すなわち、後コイルばね28Fの上端部を前カム部材51Fの回動端部で保持させる場合には、後コイルばね28Fの上端部に設けられるフック29bの開口29cを強制的に広げた状態で、前カム部材51Fにおける保持部85の保持溝部89に引っ掛けるようにして係合させる。フック29bが保持溝部89に係合した後は、作業者が素線の端部29dを引っ張るのをやめれば、フック29bの開口29cが縮小して元の形状となり、保持部85の台座部87とフランジ88とによってフック29bの抜け止めがなされる。なお、フック29bの形状は楕円形(環状)に限られるものではなく、保持溝部89に係合させ得るものであれば矩形状や三角形状等の他の形状を採用することもできる。
【0028】
前コイルばね28Fは、その上端部と同様のフック29bが下端部にも設けられており、この下端部のフック29bは、前述した上端部のフック29bと同じ手法で、水皿20の傾動端部における前側部位の保持部85に保持させることができる。なお、水皿20に設けられる保持部85については、前述した前カム部材51Fの保持部85と基本的に同じ構造(台座部87、小径部86およびフランジ88を有し、保持溝部89を形成するもの)であるので、具体的な構造についての説明は省略する。
【0029】
図4(a)の中央より右側と、図5(a)および図5(b)とには、後カム部材51Rについて、水皿20を閉成位置に引き上げた時の姿勢(回動位置)で示してある。なお、図5(a)は、後カム部材51Rを後面側から見た状態であり、図5(b)は前面側から見た状態である。これらの図示から明らかなように、後カム部材51Rは、前カム部材51Fと同様に一方向(当該図示の上下方向)に長細い板状の合成樹脂製部材であり、その長手方向の一端部(当該図示での下端部)の幅寸法が、他端部(当該図示での上端部)の幅寸法より大きく形成されている。そして、後カム部材51Rには、幅寸法の大きな長手方向の前記一端部を前後に貫通するようにシャフト固定穴52aが形成されている。このシャフト固定穴52aには、前述のようにカムシャフト24の後端部が前面側から固定される。また、後カム部材51Rにおける長手方向の前記他端部(シャフト固定穴52aから離間する側)には、後コイルばね28Rの上端部を保持する円筒状の保持部85(後述)が後方に突出するように設けられている。すなわち、後カム部材51Rは、回動中心がカムシャフト24と同じで、かつ径方向にアーム状に延出した形状であり、その延出端側に後コイルばね28Rの上端部を保持するように構成されている。以下の記載では便宜上、後カム部材51Rの回動中心側となる前記一端部を「軸側端部」と称し、回動中心から離間する延出端側となる前記他端部を「回動端部」と称する。
【0030】
図4(a)、図5(a)および図5(b)に示すように、後カム部材51Rの回動端部には、後コイルばね28Rの上端部(フック29b)を保持する保持部85が、当該後カム部材51Rの後面から後方に向けて突出するように位置している。ここで、後カム部材51Rの保持部85は、前述した前カム部材51Fの保持部85と同様、突出方向の途中位置に小径部86が設けられ、この小径部86を挟んで突出方向の基端側に台座部87、突出端側にフランジ88が設けられて、保持部85の外周面に環状かつ凹状の保持溝部89が形成されている。但し、後カム部材51Rに設けられる保持部85は別体(後述する第2部材63)として当該後カム部材51Rの本体(後述する第1部材53)に取り付けられており、この点が後カム部材51Fの保持部85と異なっている。なお、後コイルばね28Rとしては、前述した前コイルばね28Fと同じ部材が用いられる(具体的構造の説明を省略する)。
【0031】
ここで、前後の両カム部材51F,51Rは、図4(a)に示すように、その回動端部に設けられた保持部85でコイルばね28F,28Rを保持し、このコイルばね28F,28Rを介して水皿20の傾動端部を支持する。前カム部材51Fは、その回動端部が軸側端部の上方に位置する起立姿勢(図4(b)における符号x1の姿勢)の場合に、回動端部が最も高い位置となる。同様に、後カム部材51Rは、その回動端部が軸側端部の上方に位置する起立姿勢(図5(b)に示す姿勢)の場合に、回動端部が最も高い位置となる。従って、両カム部材51F,51Rが起立姿勢の場合、水皿20は最も上方まで引き上げられた状態となり、この時に水皿20は、上面が水平な水平姿勢で製氷室16に対する閉成位置に位置する。すなわち、カム部材51F,51Rは、起立姿勢で水皿20を閉成位置に保持可能である。一方で、前カム部材51Fは、その回動端部が軸側端部の斜め下方に位置する傾倒姿勢(図4(b)における符号x2の姿勢)の場合に、回動端部が最も低い位置となる。同様に、後カム部材51Rは、その回動端部が軸側端部の斜め下方に位置する傾倒姿勢(図2に示す姿勢)の場合に、回動端部が最も低い位置となる。従って、両カム部材51F,51Rが傾倒姿勢の場合、水皿20は最も下方位置まで下がった状態となり、この時に水皿20は、上面が傾斜した傾斜姿勢で製氷室16に対する開放位置に位置する。すなわち、カム部材51F,51Rは、傾倒姿勢で水皿20を開放位置に保持可能である。
【0032】
両カム部材51F,51Rは、起立姿勢の時に回動端部が水皿20の上面と接する(図4(a)参照)ように構成されており、その軸側端部には、径方向に膨出するカム部52cが形成されている(図4(b)および図5(b)参照)。このカム部52cの存在により、カム部材51F,51Rにおける軸側端部の外周面は、回動中心(シャフト固定穴52aの形成位置)からの離間寸法が一定ではなく、カム部52cの部分でシャフト固定穴52aから大きく離間している。そして、製氷運転から除氷運転への移行に際し、前カム部材51Fが起立姿勢から傾倒姿勢に向けて正転方向に回動することにより、前カム部材51Fにおける軸側端部の外周面(カム部52cの部分)が水皿20を下方に押圧し、製氷室16に生成された氷塊と水皿20の上面との氷結が強制的に解除されるようになっている。
【0033】
ここで、水皿20は、筐体12内部の水皿傾動機構50と支持機構30とによって傾動端部および軸側端部が支持されているので、作業者が水皿20を取り外してメンテナンスを行う際には、水皿20の傾動端部および軸側端部を筐体12から夫々分離させることになる。筐体12からの水皿20の軸側端部の取り外しは、前述した通りである。一方、筐体12から水皿20の傾動端部を分離する場合、コイルばね28F,28Rの上端部に設けられるフック29bをカム部材51F,51Rの保持部85から取り外すか、コイルばね28F,28Rの下端部に設けられるフック29bを水皿20の保持部85から取り外す必要がある。しかし、一般的には、フック29bを保持溝部89に係合させた後に、工具等を使ってフック29bを潰すことで開口29cを狭めているため、作業者がフック29bを保持溝部89から取り外そうとする際にはフック62が潰れた状態で保持溝部89にしっかり係合しており、フック29bを外す作業には手間がかかることになる。この場合に、フック29bの開口29cを大きめに形成し、かつ、保持溝部89に引っ掛けた後に潰さないようにしておけば、フック29bの取り外しは容易となるが、このようにすれば保持部85のフランジ88による抜け止めが効かずにフック29bが保持溝部89から離脱してしまう可能性が高まる。なお、フック29bが保持溝部89から離脱し得るタイミングとしては、例えば製氷運転から除氷運転への移行開始時がある。この場合は、閉成位置の水皿20の上面が製氷室16の氷塊と氷結している状態でカム部材51F,51Rが起立姿勢から傾倒姿勢に向けて正転方向への回動を開始するため、カム部材51F,51Rの保持部85と水皿20の保持部85との間の距離が次第に狭まって、水皿20の荷重がコイルばね28F,28Rにかかっていない状態となる。その結果、フック29bによる保持溝部89に対する引っ掛かりが弱くなり、保持溝部89からフック29bが離脱する可能性が高まる。このようなフック29bの離脱を防ぐ必要があることから、実施例1では、カム部材(後カム部材51R)について、その本体部分(後述する第1部材53)から保持部85(後述する第2部材63)を分離可能に接続する構成(分割構造)を採用することで、水皿20の取り外しの際、コイルばね(後コイルばね28R)のフック29bを保持溝部89から係合解除する必要がないようにしている。そこで、以下、図5図9を主に参照しながら、後カム部材51Rの分割構造について説明する。
【0034】
なお、実施例1では、水皿20の傾動端部における前側部分についての筐体12に対する着脱に関しては、従来通り、前カム部材51Fの保持部85に対する前コイルばね28Fのフック29bの係脱により行うものとし、水皿20の傾動端部における後側部分についての筐体12に対する着脱に関してのみ、後カム部材51Rを後述する第1部材53および第2部材63に分割することで行うものとする。これは、部材点数の増加を抑えるために片方のカム部材(後カム部材51R)のみを分割構造とする例であり、実際には当然ながら前カム部材51Fを分割構造とすることも可能である。また、分割構造を後カム部材51Rに採用するのは、筐体12の奥側に位置することで筐体12の前方からのフック29bの係合解除作業が困難なためである。なおこの筐体12奥側のフック29bについては、天板12bを取り外して機上方から保持溝部89からの係合解除作業を行うことも考えられるが、筐体12の上には物が置かれることも多く、また筐体12の上方から作業を行うためのスペースを確保できない場合もある。これらに鑑みると、後カム部材51Rを分割構造とすることのメリットは大きい。
【0035】
図5(a)、図5(b)および図5(c)に示すように、後カム部材51Rは、その回動中心から半径方向に延在する第1部材53の回動端側(後カム部材51Rの回動端側)に、後コイルばね28Rの上端部を保持部85によって保持する第2部材63を組み合わせることにより構成されている。なお、第1部材53は、筐体12への設置状態では、図5(b)に示す側の面(裏面)が機前方を向く前面53aとなり、図5(a)に示す側の面(表面)が機後方を向く後面53bとなる。ここで、図5(c)および図5(d)に示すように、第1部材53の回動端側には、後カム部材51Rの起立姿勢(図5(a)および図5(b)に示す姿勢)での左右方向の中央部から第1部材53の一側端面53c(図5(b)参照)まで延在する切欠き状の溝部54が設けられており、第2部材63に設けられた嵌合部64を溝部54に嵌合させて第1部材53および第2部材63を固定するようになっている。すなわち、第1部材53の一側端面53c(図5(b)参照)に開口する当該溝部54の延在方向(長手方向)の一端側が、嵌合部64を嵌合させる際の入口(嵌合口54a)として機能している。また溝部54は、図5(c)および図7(a)に示すように、第1部材53の前後方向(厚み方向)の中央部よりも、第1部材53の後面53b側の部位の方が溝幅が広くなっている。以下の記載では便宜上、溝部54のうち第1部材53の厚み方向の中央部に設けられる部分(幅狭部分)を「中溝部55」と称し、この中溝部55よりも後面53b側を「後溝部57」と称する。なお、第1部材53の回動端部には、当該第1部材53の前面53aから後方に向けて凹むようになっており(符号60)、この凹み部分の底面側が溝部54(中溝部55)と連通している。すなわち、第1部材53の回動端部のうち溝部54よりも前側の部分が、前面53aから後方に向けて溝部54より広い範囲で凹んでいる。この凹み部分は、溝部54からの嵌合部64の固定(嵌合)解除時に後述するボルト67の締め付け操作および緩め操作に用いる操作具の移動を許容するための経路(以下「移動経路60」という)である。
【0036】
図5(c)、図5(d)、図7(a)および図7(b)等に示すように、第2部材63は、前記保持部85によって基本的に構成されるものであり、台座部87と、この台座部87より小径の小径部86と、この小径部86の突出端部に設けられる大径のフランジ88とを有する。第2部材63の保持部85は、後カム部材51Rにおいて後方に突出するように設けられており、台座部87よりも後側に小径部86およびフランジ88が位置している。そして、この保持部85における前面(小径部86およびフランジ88と反対側の面)に、嵌合部64が前方へ突出するように設けられている。すなわち、嵌合部64は、第2部材63を構成する台座部87の前面(以下、「第2部材63の前面63a」という)に設けられている。この嵌合部64は、突出基部65と、突出基部65の前面から前方へ突出する支持台66とからなり、後カム部材51Rの起立姿勢(図5(a)および図5(b)に示す姿勢)での左右方向に長い形状とされている。この嵌合部64は、突出基部65よりも支持台66の方が短手方向(後カム部材51Rが起立姿勢の時の上下方向)の幅寸法が小さくなるように形成されている。そして、嵌合部64は、その長手方向(後カム部材51Rの起立姿勢での左右方向)を溝部54の長手方向(後カム部材51Rの起立姿勢での左右方向)に合わせた状態で、当該長手方向に沿う特定方向(矢印Y1方向)に向けて嵌合口54aから溝部54に挿入されることで、第1部材53の後面53aと第2部材63の前面63aとが対向し、かつ、溝部54に嵌合部64が嵌合した状態(突出基部65が後溝部57に嵌合し、支持台66が中溝部55に嵌合した状態)となっている(図7(a)参照)。そして、後カム部材51Rは、溝部54に嵌合部64が嵌合した状態で、第2部材63に配設されているボルト67(後述)を締め付けることにより、第1部材53および第2部材63がしっかりと固定されるようになっている。
【0037】
第1部材53および第2部材63を組み付けた状態では、図4(a)および図9に示すように、第1部材53の後面53bと、第2部材63の保持溝部89との間に台座部87が位置し、保持溝部89が第1部材53の後面53bから後方に離間している。すなわち、保持部85の台座部87は、後コイルばね28Rのフック29bが係合する保持溝部89を第1部材53の後面53bから後方に離間させ、後コイルばね28Rが第1部材53の後面53bに接触しないようにするためのスペーサとして機能している。なお、台座部87は、その少なくとも一部が第1部材53側に設けられていても同様に、保持溝部89を第1部材53の後面53bより後方に位置させることができる。
【0038】
このように、実施例1の自動製氷機10は、後カム部材51Rにおける回動中心から半径方向に延在する第1部材53の回動端部に第2部材63を分離可能に接続することで構成されている。すなわち、後カム部材51Rにおける第1部材53および第2部材63の接続を解除することで水皿20の傾動端部が筐体12側から分離されるので、後コイルばね28Rの上端部または下端部のフック29bを変形させる(開口29cを拡大する)必要が生じない。すなわち、水皿20を取り外す場合に、水皿20の傾動端部を筐体12側と分離する作業が容易となり、当該作業を、天板12bを開放することなく筐体12の前側から行うことができる。
【0039】
嵌合部64(突出基部65)は、図6(a)および図6(b)に示すように、溝部54への挿入方向(矢印Y1方向)の末端側から先端側に向かうにつれて幅寸法が次第に小さくなるテーパ状に形成されている。また、溝部54(後溝部57)は、嵌合部64(突出基部65)の形状に合わせて、嵌合口54aから奥側に向かうにつれて幅寸法が次第に小さくなるように形成されている。すなわち、嵌合口54aの幅寸法に対して嵌合部64の挿入方向先端側の幅寸法が小さくなっており、第1部材53と第2部材63とを組み付ける際、溝部54に対して嵌合部64を容易に挿入することができる。また、嵌合部64(突出基部65)をその幅寸法の大きな側から溝部54(後溝部57)に挿入しようとすると、溝部54は嵌合口54aから奥側に向かうにつれて幅が狭くなることから、直ちに嵌合部64が溝部54に当接し、当該溝部54をそれ以上奥に移動することができない。このため、嵌合部64を逆向きで溝部54に挿入しようとするミスを防ぐことができる。
【0040】
図5(c)、図7(a)および図7(b)に示すように、嵌合部64には、ボルト(締結部材)67のネジ部67aが前方から後方に向けて挿入されるボルト固定穴(固定穴)68が、当該嵌合部64を前後方向(厚み方向)に貫通するように形成されており、突出基部65の前面にはボルト67の入口側が開口している。嵌合部64にはナット69(図7(a)参照)が埋設されており、このナット69がボルト固定穴68の途中に位置している。すなわち、ボルト固定穴68に挿入されたボルト67のネジ部67aが、ボルト固定穴68の内部でナット69に螺合する。ボルト67は、ネジ部67aの一部がボルト固定穴68の外側に露出した状態(一定程度緩んだ状態)で、ボルト固定穴68内部にあるナット69により抜け止め保持されている。なお、ボルト固定穴68は、突出基部65の前面のうち支持台66との近接位置に開口している。支持台66の突出端面(前面)には、ボルト67の締め付け限界位置を決める受部70が形成されている。すなわち、ボルト67をボルト固定穴68に挿入してナット69に螺合していくと、ボルト67の頭部67bが支持台66の受部70に当接してそれ以上の螺合が規制されるようになっている。このように、第2部材63には、ボルト67(或いはボルト67の頭部67b)が締め付け方向および緩み方向に移動可能な状態で配設されている。
【0041】
ここで、図5(c)に示すように嵌合部64をY1方向に移動させて溝部54に嵌合した場合に、支持台66(嵌合部64)における挿入方向先端部が、中溝部55(溝部54)における奥側(嵌合口54aから離間する他端側)の内面と離間して対向し、その対向間にボルト67が挿通した状態となる(図7(b)参照)。そして、溝部54に嵌合部64が完全に嵌合することに応じて、当該嵌合部64および溝部54に跨る収容部73(図7(b)参照)が形成されるようになっている。この収容部73は、第1部材53のうち中溝部55の前縁部に設けられている円弧凹状の規制部58(図5(c)参照)と、第2部材63の受部70(図5(c)参照)とにより、ボルト67の頭部67bの座面の形状に整合する凹状に形成される。そして、緩んだままとなっているボルト67をボックスドライバー等の操作具で操作して締め付け、受部70に当接させることにより、収容部73の外側にあったボルト67の頭部(被収容部)67bのうちの一部(座面に近い部分)が収容部73の内側に移動する。ここで、収容部73を構成する規制部58は、中溝部55よりも幅寸法が大きく形成されている。従って、頭部67bが収容部73の外側から内側に移動すると、収容部73のうち溝部54による形成部分である規制部58によって、当該溝部54の奥側から嵌合口54a側への頭部67bの移動が規制される状態となり、これにより、溝部54からの嵌合部64の離脱が防がれることになる。またこの場合には、図7(a)に示すように、第1部材53の後面53aと第2部材63の前面63aとが対向するかたちでボルト67の頭部67bと第2部材63の前面63aとの間に第1部材53が挟み込まれ、この状態でボルト67が締め付けられるので、第1部材53に対して第2部材63がガタつかない状態で第1部材53および第2部材63を強固に接続することができる。
【0042】
また前述したように、第1部材53の前面53aには凹状の移動経路60が形成されている(図5(c)、図7(a)および図7(b)参照)。移動経路60は、後カム部材51R(第1部材53)の回動端部の中央部から一側端面53c(図5(b)および図7(b)参照)まで溝部54に沿って延在している。この移動経路60は、溝部54および規制部58の前側位置に、当該溝部54および規制部58(収容部73)よりも幅広に形成され、当該溝部54および規制部58を前側に露出するように形成されている。このため、ボルト67を締め付ける際或いは緩める際の操作具としてボックスドライバーを用いる場合、当該ボックスドライバーの先端部(すなわちボルト67の頭部67bの外周面に係合する筒状部分)を移動経路60の内側で収容部73の開口縁に当接させることができ、ボルト67の頭部67bを最後まで締め付けることができる。
【0043】
また、締め付け状態にあるボルト67を緩める操作に応じて頭部67bを収容部73の内側から外側に移動させることで、規制部58による頭部67bの移動規制が解除され、これによって溝部54に対する嵌合部64の離脱方向への移動が許容される。なお、第1部材53の前面53aには、溝部54より幅広の移動経路60が形成されているので、ボックスドライバーの先端部をボルト67の頭部67bに係合させた状態のまま、嵌合部64を溝部54の外まで移動させることができる。
【0044】
このように、嵌合部64が溝部54に嵌合した状態では、第2部材63に備えられる(ボルト67の)頭部67bの位置に応じて、溝部54からの嵌合部64の離脱方向への移動を防ぐ状態と、該移動を許容する状態とに切り換えることができる。すなわち、第1部材53および第2部材63の固定・固定解除作業を容易に行うことができる。この場合に、嵌合部64の前方からボルト67を締め付ける構成により、筐体12の前側から第1部材53および第2部材63の固定・固定解除作業を容易に行うことができる。
【0045】
また、嵌合部64(支持台66)は、図8に示すように、当該嵌合部64に対するボルト67の締め付け方向(すなわち前側から後側に向けた方向)に向かうにつれて幅寸法が次第に小さくなるテーパ状に形成されており、この嵌合部64の形状に合わせて、溝部54(中溝部55)が、ボルト67の締め付け方向(前側から後側に向けた方向)に向かうにつれて幅寸法が次第に小さくなるように形成されている。従って、溝部54に嵌合部64が嵌合した状態でボルト固定穴68にボルト67を締め付けていく場合に、作業者が嵌合部64にボルト67を押し付けることによる押圧力(ボルトの締め付け方向にかかる力)を溝部54(中溝部55)によって確実に受け止めることができる。すなわち、ボルト67の締め付けに応じて嵌合部64が溝部54から後方に向けて外れる不具合を防ぐことができる。
【0046】
図5(d)および図9に示すように、第1部材53の後面53bに、上方へ向けて突出する係止部59が設けられている。係止部59は、第1部材53における溝部54から特定方向(溝部54に対する嵌合部64の挿入方向、矢印Y1方向)にやや離間した位置に設けられている。一方で、第2部材63の前面63aには、図6(a)に示すように、嵌合部64から前記特定方向にやや離間した位置に、前方および前記特定方向に開口する凹状の被係止部71が形成されている。すなわち、係止部59は、嵌合部64を嵌合口54aから溝部54に挿入し嵌合させることに伴って被係止部71を係止するように構成されている。このように、第1部材53の溝部54に第2部材63の嵌合部64が嵌合する構成に加えて、第1部材53における溝部54と異なる位置に設けられる係止部59によって第2部材63の被係止部71を係止する構成を備えることにより、第1部材53および第2部材63の接続状態を安定させることができる。
【0047】
ここで、図9に示すように、係止部59は、第1部材53の後面53bから突出端に向かうにつれて幅寸法が大きくなる逆テーパ状に形成されている。また、被係止部71は、係止部59の形状に合わせて、第2部材63の前面63aから凹み方向(後方)に向かうにつれて次第に幅寸法が大きくなるように形成されている。従って、係止部59が前記特定方向(矢印Y1方向)への移動により被係止部71の内側に嵌まり込む(係止する)ことで、係止部59が被係止部71から前後方向に離脱しない状態となる。なお、係止部59のテーパ形状は、前述した嵌合部64のテーパ形状に対して逆向きに幅寸法が広がる形状であるので、嵌合部64(支持台66)および溝部54(中溝部55)の組み合わせと、係止部59および被係止部71の組み合わせとにより、第1部材53と第2部材63とを前後方向に引き離そうとする力に対する耐久性を向上することができる。
【0048】
ところで、筐体12から水皿20を取り外す作業は、水皿20を開放位置に傾動させたもとで行われる。ここで、実施例1の自動製氷機10では、図2に拡大して示すように、後カム部材51Rが傾倒姿勢の状態(水皿20を開放する回動位置にある状態)で、溝部54における嵌合口54aが左上方(水平方向より上側)を向くように構成されている。すなわち、作業者が水皿20を取り外す場合に、水皿20の荷重が、嵌合部64が溝部54から外れる方向への力として作用せず、作業中に、例えばボルト67を緩めた瞬間に突然に水皿20が外れるといった不具合を防止することができる。従って、作業者は、第1部材53および第2部材63の接続を安全に解除することができる。
【0049】
(運転時における水皿傾動機構50の作用について)
実施例1の自動製氷機10は、製氷運転の際、水皿傾動機構50における前後のカム部材51F,51Rが起立姿勢にあり、水皿20は、当該水皿20の保持部85とカム部材51F,51Rの保持部85との間に介装されているコイルばね28F,28Rの弾力によって、製氷室16を下方から閉成する閉成位置に保持される。この状態で製氷運転が行われ、製氷室16に氷塊が生成されると、製氷運転が終了して除氷運転に移行する。除氷運転に移行する場合、アクチュエータモータAMの正駆動によってカム部材51F,51Rが正転方向に回動を開始する。この時カム部材51F,51Rのカム部52cによって水皿20が押し下げられることにより、製氷室16の氷塊と水皿20上面との氷結が解除される。水皿20が製氷室16の氷塊から完全に剥離すると、水皿20は自重により下がり、回動中のカム部材51F,51Rとの間のコイルばね28F,28Rの弾力により保持されながら傾動する。カム部材51F,51Rが所定角度回動して傾倒姿勢に変化すると、アクチュエータモータAMによる正駆動が終了し、カム部材51F,51Rの回動が停止して、水皿20が開放位置に保持される。この状態で除氷運転が進行し、製氷室16から全ての氷塊が落下すると、アクチュエータモータAMが逆駆動され、傾倒姿勢のカム部材51F,51Rが逆転方向に回動して起立姿勢に変化する。これにより、水皿20が上方に傾動して閉成位置に保持され、再び製氷運転が開始される。
【0050】
(水皿20のメンテナンスを行う際の作業について)
筐体12から水皿20を取り外してメンテナンスを行う場合には、水皿20を開放位置(傾斜姿勢)に傾動させた状態(除氷運転時の状態)として、運転を停止させ、筐体12からフロントパネル12aを取り外すことで筐体12の前面側を開放して、水皿20を取り外すための作業を筐体12前側から行う。水皿20を取り外す際には先ず、水皿傾動機構50によって支持されている水皿20の傾動端部を筐体12から分離させ、次に、支持機構30によって支持されている水皿20の軸側端部を筐体12から分離させるようにする。水皿傾動機構50は、前カム部材51Fおよび前コイルばね28Fによって水皿20の傾動端部のうちの前側部位を支持すると共に、後カム部材51Rおよび後コイルばね28Rによって水皿20の傾動端部のうちの後側部位を支持しているので、水皿20の前側部位から順に筐体12からの分離作業を行う。
【0051】
水皿20の傾動端部の前側部位を筐体12から分離させる際、一般的には、コイルばね28F,28Rの上端部に設けられているフック29bを、カム部材51F,51Rに設けられる保持部85(保持溝部89)から離脱させるようにする。この際、フック29bを形成している素線の端部29d(図4(d)参照)をフック29bの外方に向けて引っ張ることで開口29cを強制的に拡大するように変形させ、この状態で保持溝部89に対する係合を解除する必要があり、非常に手間がかかる。これに対し、実施例1の自動製氷機10は、筐体12の前側からの作業が行い難い位置にある後カム部材51Rが第1部材53および第2部材63で構成されており、カムシャフト24と接続されている第1部材53に対して、前コイルばね28Fを保持する保持部85を有する第2部材63を分離することによって水皿20の傾動端部の後側部位を筐体12側から分離することができるので、後コイルばね28Rのフック29bを変形させる必要がない。なお、水皿20の傾動端部の前側部位については、前コイルばね28Fに設けられるフック29bを広げて保持溝部89から離脱させる作業によって、筐体12側から分離する。これは、前カム部材51Fおよび前コイルばね28Fが筐体12の手前側にあり、フック29bを広げる作業は手間ではあるものの不可能な作業ではないからである。
【0052】
後カム部材51Rを構成する第1部材53および第2部材63は、第1部材53に設けられた溝部54に対して第2部材63に設けられた嵌合部64が嵌合した状態で、第2部材63に配設されたボルト67の締め付けによって、第2部材63の前面63a(台座部87)と、ボルト67の頭部67bとの間に第1部材53が挟み込まれ、これによって第1部材53および第2部材63が相互に固定されている。このため、第1部材53に対して第2部材63を分離する際には、先ず、ボックスドライバー等の操作具を用いてボルト67を緩めるようにする。なおこの場合は、ボックスドライバーの先端部(筒状部分)を移動経路60の内側でボルト67の頭部67bの外面に係合させるようにして、収容部73の開口縁に当接させた状態で、ボルト67を緩める操作を行う。ボルト67がある程度緩まると、ボルト67の頭部67bは、その一部が嵌合部64および溝部54に跨る凹状の収容部73(規制部58および受部70からなる)の内側に位置する状態から、頭部67bの全体が収容部73の外側に位置する状態へと変化する。このようにボルト67の頭部67bが収容部73の外側に移動することで、収容部73のうち溝部54による形成部位である規制部58による頭部67bの移動規制(頭部67bの嵌合口54a側への移動に対する規制)が解除されることになり、嵌合部64の溝部54に対する嵌合解除方向への移動が許容される。この時、第1部材53の前面53aに形成されている移動経路60が溝部54および規制部58(収容部73)よりも幅広となっているから、ボックスドライバーの先端部をボルト67の頭部67bに係合させたままの状態であっても、嵌合部64を溝部54の嵌合口54a側に移動させる際はボックスドライバーの先端部が移動経路60を通過することとなり、問題なく嵌合部64を溝部54から離脱させる(嵌合を解除する)ことができる。そして、嵌合部64が溝部54から離脱することにより、水皿20、後コイルばね28Rおよび第2部材63が互いに接続した状態で、筐体12側の第1部材53から分離する。
【0053】
水皿20の傾動端部についての筐体12に対する分離作業が終了すると、次に水皿20の軸側端部を筐体12側から分離する作業を行う。ここで、支持機構30は、水皿20に設けられている前側の水皿支持板34Fが筐体12における前側の取付柱体12dに固定された前側の軸受け金具32Fで枢支されており、水皿20に設けられている後側の水皿支持板34Rが筐体12における後側の取付柱体12dに固定された後側の軸受け金具32Rで枢支されている(2組の支持組によって水皿20が枢支されている)が、前側の水皿支持板34Fおよび軸受け金具32Fからなる支持組と、後側の水皿支持板34Rおよび軸受け金具32Rからなる支持組とは、各部材の貫通穴38に1つの枢支ピン36を前側から閂状に挿通させることで一度に接続されており、その枢支ピン36の前方への抜けが抜け止め手段40で規制されている。このため、水皿20の軸側端部を筐体12側から取り外す場合には、筐体12内部の手前側に位置する抜け止め手段40を取り外して枢支ピン36の抜け止めを解除する。そして、枢支ピン36を手前側に抜き出すことで、軸受け金具32F,32Rと水皿支持板34F,34Rとの接続が解除される。これにより、水皿20が筐体12側から分離され、筐体12の外部での水皿20のメンテナンスが可能となる。
【0054】
(水皿20のメンテナンス終了後の取り付けについて)
筐体12の外部での水皿20のメンテナンスが終了すると、水皿20を筐体12の内部に取り付ける作業を行う。この場合には先ず、水皿20の軸側端部を支持機構30で支持するように組み付け、次に、水皿20の傾動端部を水皿傾動機構50で支持するように組み付けるようにする。水皿20の軸側端部を筐体12側に組み付ける場合には、前側の水皿支持板34Fと前側の軸受け金具32Fとで貫通穴38の位置を合わせるようにすると共に、後側の水皿支持板34Rと後側の取付柱体12dとで貫通穴38の位置を合わせるようにし、この状態で各部材の貫通穴38を通過するように枢支ピン36を前側から差し込む。この時、枢支ピン36の差し込み方向の先端部36aはテーパ状となっていることから、各貫通穴38を容易に通過させることができる。また、枢支ピン36の末端部36bが他の部位よりも大径となっているので、枢支ピン36が各貫通穴38を通過して前方に抜け出ることはない。そして、枢支ピン36を各貫通穴38に挿通させた状態で、抜け止め手段40を前側の軸受け金具32Fの前面に取り付けることで、当該抜け止め手段40が枢支ピン36の末端部36bに近接し、枢支ピン36の後方への抜けが規制される。これにより、水皿20の軸側端部が支持機構30によって支持された状態となる(筐体12に取り付けられる)。
【0055】
水皿20の軸側端部を筐体12側に取り付ける作業が終了すると、次に水皿20の傾動端部を筐体12側に取り付ける作業を行う。筐体12内部の奥側(後側)では、後カム部材51Rにおける第1部材53が傾倒姿勢で位置している。これに対し、水皿20の傾動端部には、後コイルばね28Rが接続され、この後コイルばね28Rには後カム部材51Rにおける第2部材63が接続されている。このため、先ず、水皿20側に接続されている第2部材63の嵌合部64を、筐体12側にある第1部材53の溝部54に嵌合口54a側から挿入して嵌合させる。なお、嵌合部64を溝部54に嵌合させる場合、嵌合部64の突出基部65・支持台66を、その幅寸法の小さい側を挿入先端側として、溝部54における後溝部57・中溝部55に夫々嵌合させる。溝部54に嵌合部64が嵌合すると、当該嵌合部64および溝部54に跨る凹状の収容部73が形成される。この状態で次に、ボックスドライバー等の操作具で第2部材63のボルト67を締め付け操作する。これにより、第2部材63の前面63aとボルト67の頭部67bとの間に第1部材53が挟み込まれ、第1部材53と第2部材63とが強固に接続されて、水皿20の傾動端部のうち後側部位が筐体12側に組み付けられた状態となる。このため次に、水皿20の傾動端部のうち前側部位を筐体12側に組み付ける作業を行う。筐体12内部の前側では、前カム部材51Fが傾倒姿勢で位置している。これに対し、水皿20の傾動端部には、後コイルばね28Rが接続されている。このため、水皿20側に接続されている前コイルばね28Fのうち水皿20と反対側に位置するフック29bを強制的に広げ、この状態で前カム部材51Fの保持部85の保持溝部89に引っ掛けるようにして係合させる。これにより、水皿20の傾動端部のうち後側部位および前側部位の両方が筐体12側に組み付けられ、水皿傾動機構50によって水皿20の傾動端部が支持された状態となる。すなわち、水皿20が筐体12側に正しく組み付けられた状態となり、運転を再開させることができる。
【実施例2】
【0056】
次に、実施例2に係る自動製氷機10について、図10を参照して以下に説明する。なお、実施例1と相違する構成について基本的に説明を行い、実施例1と同じ構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。実施例2の自動製氷機10は、後カム部材51Rの構成が前述した実施例1と異なっており、他の構成は実施例1と同じであるので、後カム部材51Rの構成について主に説明する。
【0057】
実施例2における後カム部材51Rは、図10(a)および図10(b)に示すように、回動中心からの半径方向に延在する第1部材90と、この第1部材90の回動端側に装着される第2部材95とを備えており、第1部材90の回動端側と第2部材95との間に後コイルばね28Rの上端部(フック29b)を保持するように構成されている。第1部材90の後面90bにおける回動端部には、後方へ突出する円筒状の被着部91が設けられている。図10(b)に示すように、被着部91の底部には係止穴92が形成されており、この係止穴92は第1部材90の前面90aを貫通している。一方、第2部材95は、図10(a)に示すように、前後方向に延在する柱状の本体部96を備えており、この本体部96の前端面には、前方に突出する係止片97が設けられている。この係止片97の先端側は二股に分かれており、弾性変形可能な一対の弾性片となっている。各弾性片は、背中合わせでやや離間するように設けられ、先端に係止爪97aが設けられている。また、本体部96の後端部に、本体部96より大径の円盤状をなすフランジ98が設けられている。
【0058】
第1部材90の被着部91に第2部材95を装着して被着部91と第2部材95との間に後コイルばね28Rのフック29bを保持する場合には、フック29bの内側に第2部材95の本体部96を通してフランジ98側に寄せた状態とし、この状態で、第2部材95を前方に向けて(矢印Y2方向に)移動させ、前端側(係止片97側)から第1部材90の被着部91に挿入していく。このようにすることで、図10(b)に示すように一対の係止片97の係止爪97aが係止穴92を通過して前面90a側の縁に引っ掛かり、この係止爪97aの係止により、第2部材95が被着部91に対して離脱方向に移動できない接続状態となる。この接続状態では、被着部91の突出端面(後端面)と、第2部材95のフランジ98とが隙間を介して対向するようになり、この隙間に後コイルばね28Rのフック29bが保持される。このように、実施例2の後カム部材51Rは、第1部材90の被着部91と第2部材95との間に後コイルばね28Rの上端部(フック29b)を保持する構成であり、係止爪97aによる係止を解除することで被着部91から第2部材95を分離可能となり、これにより後コイルばね28Rを外すことができるので、作業者が水皿20を取り外す場合に後コイルばね28Rのフック29bを変形させる(拡開する)必要が生じない。
【0059】
ここで、図10(b)に示すように、係止爪97aによる係止状態において第1部材90の前面90a側(後カム部材51Rの前面側)に係止爪97aが位置する構成となっていることで、作業者が機前方から係止爪97aを操作して係止状態を解除可能である。すなわち、作業者が水皿20を取り外す場合に、水皿20の傾動端部に対する後カム部材51Rの接続を筐体12の前側から容易に解除することができる。
【0060】
なお、図10(a)に示すように、第2部材95の本体部96は多角柱状となっており、被着部91の内面も本体部96の外周面に整合する多角形状とされている。従って、被着部91および第2部材95の接続状態では、被着部91の内側での第2部材95の回転移動が規制され、被着部91に対し余分な負荷がかからないようにすることができる。
【実施例3】
【0061】
次に、実施例3に係る自動製氷機10について、図11を参照して以下に説明する。なお、実施例1,2と相違する構成について基本的に説明を行い、実施例1,2と同じ構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。実施例3の自動製氷機10は、水皿20を枢支する支持機構30に関する構成(より具体的には、筐体12の取付柱体12dに対する軸受け金具32F,32Rの取付構造)が前述した実施例1,2と異なっており、他の構成は実施例1(または実施例2)と同じであるので、支持機構30の構成について主に説明する。
【0062】
前述した実施例1,2に係る自動製氷機10では、前側の取付柱体12dに対して前側の軸受け金具32Fが直接的に固定されていると共に、後側の取付柱体12dに対して後側の軸受け金具32Rが直接的に固定されており、筐体12から水皿20の軸側端部を取り外す場合には、枢支ピン36による各軸受け金具32F,32Rおよび各水皿支持板34F,34Rの連結を解除するようにしていた。これに対し、実施例3では、各軸受け金具32F,32Rと各水皿支持板34F,34Rとの連結を解除することなく、筐体12から水皿20の軸側端部を取り外すことができるようにしている。
【0063】
図11に示すように、実施例3の自動製氷機10は、前側および後側の各軸受け金具32F,32Rを繋ぐ連結ブラケット100を備えている。この連結ブラケット100の上面には、前側の取付柱体12dの前面に固定される第1連結板101と、後側の取付柱体12dの前面に固定される第2連結板102とが立設されている。各連結板101,102には、各取付柱体12dのスリット106に前側から挿入される鉤部103が形成されている。また、前側の取付柱体12dおよび第1連結板101の互いに対応する位置に、ネジ部材104を螺合可能なネジ穴105が夫々形成されている。従って、各取付柱体12dのスリット106に対して前側から第1連結板101および第2連結板102の各鉤部103を挿入して位置決めしたもとで、ネジ穴105にネジ部材104を締め付けることで、水皿20の軸側端部を筐体12側に取り付けることができる。また、水皿20の軸側端部を筐体12側から取り外す際は、筐体12の内部空間の前側に位置しているネジ部材104を緩め、連結ブラケット100を前側にずらすようにすればよい。すなわち、水皿20を取り外すために水皿20の軸側端部を筐体12側から分離する作業を、天板12bを開放することなく、筐体12の前側から容易に行うことができる。
【0064】
〔変更例〕
本願は前述した実施例の構成に限定されるものではなく、例えば以下の構成を適宜に採用することができる。
(1) 実施例1,2では、前側および後側のカム部材のうち後カム部材のみに発明の構成を採用し、前カム部材は従来構造と同じとしたが、実施例1,2の何れかで後カム部材に採用した発明の構成を前カム部材にも採用することができる。また、実施例1,2の何れかで後カム部材に採用した発明の構成を前カム部材のみに採用し、後カム部材については従来構造と同じとしてもよい。
なお、前カム部材に発明の構成を採用する場合には、前カム部材を、回動中心からの半径方向に延在する第1部材と、後コイルばねの上端部を保持する第2部材とで構成し、第1部材および第2部材を分離可能に接続するようにする。なお、実施例1における後カム部材の構成を前カム部材に採用する場合は、締結部材の頭部(被収容部)が嵌合部の前面側に位置するようにすることが好ましい。また、実施例2における後カム部材の構成を前カム部材にも採用する場合は、係止片の係止爪が被着部の前面側に位置するようにすることが好ましい。
(2) 実施例1,2では、後カム部材について、第1部材および第2部材を分離可能に接続する構成とするにあたり、第1部材に溝部を備え、第2部材の突状の嵌合部が嵌合するようにしたが、第2部材に溝部を備え、第1部材の突状の嵌合部が嵌合するようにしてもよい。
(3) 実施例1では、第2部材に備えられるボルトの頭部(被収容部)が、ボルトを締め付けることに応じて収容部の外側から内側に移動し、ボルトを緩めることに応じて収容部の内側から外側に移動するよう構成したが、被収容部はボルトの頭部に限られない。例えば、第2部材の固定的なネジ軸に沿って移動するナットを被収容部として採用してもよい。この場合には、ナットを正回転させることでナットがネジ軸に沿って収容部の外側から内側に移動し、逆回転させることでネジ軸に沿って収容部の内側から外側に移動する構成とすることができる。この他、被収容部は、収容部の外側から内側に移動して固定でき、かつ収容部の内側から外側にも移動できる構成であればよく、例えばワイヤー等で第2部材に接続された固定具のように移動方向が限られない部材であってもよい。
(4) 実施例1では、嵌合部の内部にナットを埋設し、嵌合部のボルト固定穴に挿入されるボルトのネジ部がナットに螺合するように構成したが、ボルト固定穴の内周面にネジ溝を形成してボルトのネジ部が螺合するようにしてもよい。
(5) 実施例1では、ボルトの頭部が溝部の嵌合口側に移動するのを規制する規制部を、嵌合部のうち中溝部の縁部に凹状に形成したが、当該規制部を中溝部の縁部に突状に形成してもよい。
(6) 実施例1では、第1部材に設けられる係止部を突状にすると共に、第2部材に設けられた被係止部を凹状としたが、第1部材に設けられる係止部を凹状にし、第2部材に設けられた被係止部を突状としてもよい。
(7) 実施例2では、第1部材の被着部に係止穴を設けると共に、第2部材に係止爪を設けるようにしたが、第1部材の被着部に係止爪を設け、第2部材に係止穴を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
12 筐体,16 製氷室,20 水皿,50 水皿傾動機構,
52 後カム部材(カム部材),53 第1部材,53c 第1部材の一側端面(側端面),
54 溝部,54a 嵌合口,58 規制部(収容部のうち溝部による形成部分),
59 係止部,63 第2部材,64 嵌合部,67 ボルト(締結部材),
67b 頭部(被収容部),68 ボルト固定穴(固定穴),71 被係止部,
80 後コイルばね(コイルばね),90 第1部材,95 第2部材,97a 係止爪,
AM アクチュエータモータ
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