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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】マルチカーエレベーター
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/34 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
B66B1/34 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020156969
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022050826
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 和久
(72)【発明者】
【氏名】大沼 直人
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-522792(JP,A)
【文献】特開2006-008394(JP,A)
【文献】特開2009-067508(JP,A)
【文献】特開2008-094597(JP,A)
【文献】特開2005-179014(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0010016(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103130071(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動路に設けた直線区間、及び前記直線区間に連続し、移動方向が変化する反転区間を移動する複数の乗りかごと、
前記移動路における前記直線区間に設けられた送電部と、
前記乗りかごに設けられ、前記乗りかごが前記直線区間を移動する際に、前記送電部から電力を受電する受電部と、
前記乗りかごに設けられ、前記受電部が受電した電力を蓄電し、前記乗りかごが前記反転区間を移動する際に前記乗りかごに設けたかご機器に電力を供給する蓄電装置と、
を備え、
前記直線区間は、
第1直線区間と、
前記第1直線区間と隣接して配置された第2直線区間と、を有し、
前記送電部は、前記第1直線区間に配置された第1送電部と、
前記第2直線区間に配置された第2送電部と、を有し、
前記受電部は、前記第1送電部から電力を受電する第1受電部と、
前記第2送電部から電力を受電する第2受電部と、を有し、
前記乗りかごは、
前記蓄電装置及び前記かご機器が設けられたかご受電回路と、
前記第1受電部及び前記第2受電部と前記かご受電回路における電力の接続及び遮断を行うかご給電切替部と、を有し、
前記かご給電切替部は、前記第1受電部が前記第1送電部と接触している際は、前記第2受電部と前記かご受電回路との接続を遮断し、前記第2受電部が前記第2送電部と接触している際は、前記第1受電部と前記かご受電回路との接続を遮断する
マルチカーエレベーター。
【請求項2】
前記受電部は、前記送電部に接触することで、前記送電部から電力を受電する
請求項1に記載のマルチカーエレベーター。
【請求項3】
前記受電部は、
前記送電部に接触するブラシと、
前記ブラシを前記送電部に付勢する付勢部材と、を有する
請求項2に記載のマルチカーエレベーター。
【請求項4】
前記送電部は、前記移動路において前記乗りかごが移動する領域を水平面に投影した範囲である走行領域の外側に配置される
請求項2に記載のマルチカーエレベーター。
【請求項5】
前記送電部は、前記移動路における壁面側に配置される
請求項に記載のマルチカーエレベーター。
【請求項6】
前記送電部は、固定部に固定されており、
前記固定部は、前記乗りかごを移動可能に支持するガイドレールを固定する固定ブラケットに設けられる
請求項1に記載のマルチカーエレベーター。
【請求項7】
前記かご機器は、前記乗りかごに設けたかご側ドアを開閉するドアマシンを有し、
前記ドアマシンは、前記乗りかごが前記反転区間を移動する際に、前記蓄電装置から電力が供給されない
請求項1に記載のマルチカーエレベーター。
【請求項8】
前記かご機器は、
前記受電部又は前記蓄電装置から電力が供給され、前記ドアマシンに電力を供給するドア電源と、
前記蓄電装置から前記ドア電源への電力の供給と遮断を切り替えるスイッチと、有する
請求項に記載のマルチカーエレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の乗りかごが1つの移動路内を移動するマルチカーエレベーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、乗りかごが上昇及び下降の直線移動だけでなく、乗りかごの移動方向が上昇から下降に反転し、移動方向が連続して変化する循環式のマルチカーエレベーターが提案されている。従来の、この種のマルチカーエレベーターとしては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。
【0003】
特許文献1には、乗りかごと主ロープとを締結するブラケットの側面に、乗りかごへ電力を供給するトロリ給電用の集電子を上下に配置することが記載されている。そして、特許文献1に記載された技術では、集電子をトロリ線に接触させることで、乗りかごに電力を供給している。
【0004】
また、乗りかごには、ドアの開閉の有無等の乗りかごが安全に可動しているか判断するかご側安全制御部、空調装置やドアマシン等の電気によって可動する装置が設けられており、安定して乗りかごに電力を供給することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-30998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、乗りかごの移動の向きが変化する反転部でも、乗りかごに設けた受電部と送電部とを接触させるために、受電部を乗りかごの移動に合わせて回転させていた。その結果、特許文献1に記載された技術では、受電部の構成が煩雑なものとなっていた。
【0007】
さらに、乗りかごに接続された主ロープの伸びによって直線区間と反転区間の間隔が変動する。そのため、直線区間と反転区間の間隔が変動すると、反転区間において受電部と送電部との接触が不十分となり、乗りかごに安定して電力を供給することができなくなる、という問題も有していた。
【0008】
本目的は、上記の問題点を考慮し、乗りかごの移動方向が変化する反転区間においても安定して乗りかごに電力を供給することができるマルチカーエレベーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し、目的を達成するため、マルチカーエレベーターは、複数の乗りかごと、送電部と、受電部と、蓄電装置と、を備えている。乗りかごは、移動路に設けた直線区間、及び直線区間に連続し、移動方向が変化する反転区間を移動する。送電部は、移動路における直線区間に設けられている。受電部は、乗りかごに設けられ、乗りかごが直線区間を移動する際に、送電部から電力を受電する。蓄電装置は、乗りかごに設けられ、受電部が受電した電力を蓄電し、乗りかごが反転区間を移動する際に乗りかごに設けたかご機器に電力を供給する。
【発明の効果】
【0010】
上記構成のマルチカーエレベーターによれば、乗りかごの移動方向が変化する反転区間においても安定して乗りかごに電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターを示す概略構成図である。
図2】第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターにおける移動路を示す縦断面図である。
図3図3A及び図3Bは、第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターにおける移動路を示す平面図である。
図4】第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターにおける駆動制御部の構成を示すブロック図である。
図5】第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターにおける給電部及びかご搭載機器の構成を示すもので、かご搭載機器、受電部及び送電部の概略構成を示す図である。
図6】第2の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターを示す概略構成図である。
図7図7A及び図7Bは、第2の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターにおける移動路を示す平面図である。
図8】第2の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターにおける給電部及びかご搭載機器の概略構成を示す図である。
図9】第3の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターにおける給電部及びかご搭載機器の概略構成を示す図である。
図10】第4の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターにおける移動路を示す平面図である。
図11】第5の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターのかご受電回路の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターについて、図1図11を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0013】
1.第1の実施の形態例
1-1.マルチカーエレベーターの構成例
まず、第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかるマルチカーエレベーターの構成について、図1から図3Bを参照して説明する。
図1は、本例のマルチカーエレベーターを示す概略構成図である。図2は、本例のマルチカーエレベーターの移動路を示す縦断面図、図3A及び図3Bは、本例のマルチカーエレベーターの移動路を示す平面図である。なお、図2図3A及び図3Bでは、複数の組の乗りかごのうち1組の乗りかごのみを示している。
【0014】
図1に示すマルチカーエレベーター1は、建築構造物内に形成された移動路100内を複数の乗りかご10が移動するエレベーターである。複数の乗りかご10は、建築構造物の各階に設けられた乗降場120に停止可能に制御される。
【0015】
マルチカーエレベーター1は、人や荷物を載せる複数対(本例では、3対)の乗りかご10A、10B、10Cと、乗りかご10A、10B、10Cの運行を制御する駆動制御部6と、を備えている。また、マルチカーエレベーター1は、第1シーブ2と、第2シーブ3と、第1下部プーリ4と、第2下部プーリ5と、第1主ロープ8と、第2主ロープ9とを備えている。
【0016】
移動路100は、乗りかご10が上下方向に上昇移動する上昇路100Aと、下降移動する下降路100Bが設けられている。第1直線区間を示す上昇路100A及び第2直線区間を示す下降路100Bは、第1の方向である上下方向と直交する第2の方向である水平方向に隣接している。以下、上下方向を第1の方向とし、上下方向と交差する水平方向を第2の方向と称す。
【0017】
さらに、移動路100における上昇路100Aと下降路100Bの第1の方向の上端部、すなわち移動路100の天井110の近傍には、乗りかご10の移動方向の向きが上昇から下降に反転する第1反転路100Cが設けられている。また、移動路100における上昇路100Aと下降路100Bの第1の方向の下端部、すなわち移動路100の床面111の近傍には、乗りかご10の移動方向の向きが下降から上昇に反転する第2反転路100Dが設けられている。第1反転路100Cは、上昇路100A及び下降路100Bにおける第1の方向の上端部に連続しており、第2反転路100Dは、上昇路100A及び下降路100Bにおける第1の方向の下端部に連続している。
【0018】
そして、上昇路100Aと下降路100Bは、乗りかご10が第1の方向に沿って昇降移動(直線移動)する直線区間である。また、第1反転路100Cと第2反転路100Dは、乗りかご10が第1の方向と異なる方向に移動する反転区間である。
【0019】
複数の乗りかご10における一対の乗りかご10A、10Aは、第1主ロープ8と、第2主ロープ9に接続されている。第1主ロープ8と第2主ロープ9は、その両端が乗りかご10Aに設けられた連結機構11、12により連結されて、無端状に形成されている。そして、乗りかご10Aは、第1主ロープ8に第1連結機構11を介して接続され、第2主ロープ9に第2連結機構12を介して接続される。
【0020】
第1主ロープ8は、駆動部の一例を示す第1シーブ2と、第1下部プーリ4に巻き掛けられて、帳架されている。第1シーブ2は、移動路100における第1の方向の上部である第1反転路100Cに設置されており、第1下部プーリ4は、移動路100における第1の方向の下部である第2反転路100Dに設置されている。
【0021】
また、第2主ロープ9は、駆動部の一例を示す第2シーブ3と、第2下部プーリ5に巻き掛けられて、帳架されている。第2シーブ3は、移動路100における第1の方向の上部である第1反転路100Cに設置されており、第2下部プーリ5は、移動路100における第1の方向の下部である第2反転路100Dに設置されている。一対の乗りかご10A、10Aは、第1主ロープ8及び第2主ロープ9を把持した状態において、互いの釣り合い重りとして機能するように、対称となる位置に配置されている。
【0022】
また、第1下部プーリ4と第2下部プーリ5は、主ロープ8、9によって移動路100内に吊り下げられている。そして、第1下部プーリ4及び第2下部プーリ5は、主ロープ8、9の伸縮に対応して、上下方向に移動可能に配置されている。
【0023】
第1主ロープ8及び第2主ロープ9は、乗りかご10の対に合わせて3組設けられている。また、第1シーブ2、第2シーブ3、第1下部プーリ4及び第2下部プーリ5も乗りかご10の対に合わせて3組設けられている。
【0024】
3組の第1シーブ2及び第2シーブ3は、駆動制御部6に設けられた3つのループコントローラ7A、7B、7Cにそれぞれ接続されている。そして、駆動制御部6は、第1シーブ2及び第2シーブ3を駆動することで乗りかご10の移動又は停止を制御する。
【0025】
以上のように設置された3対の乗りかご10は、3つの第1シーブ2、及び3つの第2シーブ3のそれぞれの駆動により、所定の移動速度で移動路100内において、同一の軌道上を循環移動し、同一の軌道上において停止する構成となっている。例えば、3対の乗りかご10は、上昇路100Aに沿って上昇し、第1反転路100Cにおいてその移動方向の向きが上昇から下降に反転する。また、3対の乗りかご10は、第1反転路100Cにおいてその移動方向が第1の方向から第2の方向に連続して変化することで、上昇路100Aから下降路100Bに移動する。
【0026】
そして、3対の乗りかご10は、下降路100Bに沿って下降し、第2反転路100Dにおいてその移動方向の向きが下降から上昇に反転する。また、3対の乗りかご10は、第2反転路100Dにおいてその移動方向が第1の方向から第2の方向に連続して変化することで、下降路100Bから上昇路100Aに移動する。これにより、3対の乗りかご10は、移動路100を循環移動する。
【0027】
また、図2及び図3Aに示すように、マルチカーエレベーター1は、乗りかご10に電力を供給する2つの送電部81A、81Bを有している。第1送電部81Aは、移動路100における上昇路100Aに設けられており、第2送電部81Bは、移動路100における下降路100Bに設けられている。
【0028】
第1送電部81Aは、上昇路100Aにおける第2の方向において下降路100B側に配置されている。第2送電部81Bは、下降路100Bにおける第2の方向において、上昇路100Aとは反対側、すなわち移動路100の壁面113側に配置されている。すなわち、第1送電部81A及び第2送電部81Bは、第1の方向に沿って移動路100の直線区間に配置されている。
【0029】
また、図3Aに示すように、第1送電部81Aは、移動路100における上昇路100Aと下降路100Bの間に配置されている。そのため、図2に示すように、第1送電部81Aの第1の方向の上端部は、第1反転路100Cを通過する乗りかご10の下部よりも下方に位置している。また、第1送電部81Aの第1の方向の下端部は、第2反転路100Dを通過する乗りかご10の上部よりも上方に位置している。これにより、乗りかご10が第1反転路100C及び第2反転路100Dで反転移動する際に、第1送電部81Aが乗りかご10に干渉することを防ぐことができる。
【0030】
また、図3Aに示すように、第1送電部81A及び第2送電部81Bは、固定部85に固定されている。ここで、移動路100には、乗りかご10を移動可能に支持するガイドレール103が設けられている。ガイドレール103は、第1の方向に沿って立設されている。そして、固定部85は、ガイドレール103を移動路100内に固定する固定ブラケットに固定されている。また、第1送電部81Aは、第1配線801Aを介して電源800(図5参照)に接続されており、第2送電部81Bは、第2配線801Bを介して電源800に接続されている。第2配線801Bは、移動路100の壁面113に沿って配置されている。
【0031】
第1送電部81A及び第2送電部81Bは、固定部85を介してガイドレール103に隣接して配置している。これにより乗りかご10の揺れやや傾きによって、第1送電部81A及び第2送電部81Bと、後述する受電部15との接触不良が発生することを抑制することができる。
【0032】
さらに、第1送電部81A及び第2送電部81Bは、乗りかご10に設けたかご側ドア13や乗降場120に設けた乗場側ドア121が設けられた面とは異なる面に配置されている。これにより、乗りかご10の面積を縮小させたり、移動路100の平面面積を増大させたりすることなく、第1送電部81A及び第2送電部81Bを配置することができる。
【0033】
なお、図3Bに示すように、第1送電部81Aに接続された第1配線801Aの一部は、乗りかご10の走行領域T1に干渉している。ここで、走行領域T1は、乗りかご10が移動する範囲を、第1の方向と直交する水平面に投影した範囲である。そのため、第1配線801Aは、移動路100内に設置された中間梁115に固定されている。そして、第1配線801Aは、中間梁115から壁面113に向けて引き回されている。これにより、第1配線801Aが乗りかご10や主ロープ8、9と干渉することを防ぐことができる。
【0034】
これに対して、第2送電部81B及び第2配線801Bは、乗りかご10の走行領域T1の外側に配置されており、第2送電部81B及び第2配線801Bは、乗りかご10の走行領域T1と干渉していない。そのため、第2送電部81Bを第1反転路100C及び第2反転路100Dまで伸ばしてもよい。
【0035】
また、図2に示すように、第1送電部81Aの上端部は、第2送電部81Bよりも上方に位置している。なお、受電部15が第1送電部81Aと接触している状態から外れる状態への移行は、受電部15が第2送電部81Bと接触していない状態から接触する状態に移行する場合よりも乗りかご10への揺れが小さい。
【0036】
ここで、乗りかご10への揺れを考慮すると、第1送電部81A及び第2送電部81Bは、ガイドレール103がある区間に設置することが好ましい。しかしながら、第1送電部81Aと受電部15が接触する区間、すなわち乗りかご10への給電可能な区間を増やすことで、後述する乗りかご10に搭載する蓄電装置93(図5参照)の蓄電容量を低減させることができる。そのため、本例では、乗りかご10への給電可能な区間を増やすために、上述したように、第1送電部81Aの上端部を第2送電部81Bの上端部よりも上方に配置している。
【0037】
また、受電部15が第2送電部82Bと接触している状態から外れる状態に移行する第2送電部82Bの下端部は、第2反転路100Dの近傍まで伸びており、第1送電部81Aよりも下方に配置している。これにより、乗りかご10への給電可能な区間を増やすことができ、蓄電装置93(図5参照)の蓄電容量を減少させることができる。
【0038】
乗りかご10には、乗降場に停止した際に、乗りかご10の床面の高さと乗降場120の床面の高さを合わせる不図示のインチング装置や、空調装置、かご側ドア13(図3A参照)を開閉させるドアマシン等の電力を必要とする装置(以下、単に「かご機器90(図5参照)」と称す)が設けられている。そのため、図2に示すように、乗りかご10は、かご搭載機器14を有している。かご搭載機器14は、第1送電部81A及び第2送電部81Bから電力を受電し、かご機器90に電力を供給する。また、かご搭載機器14は、第1送電部81A及び第2送電部81Bから電力を受電する受電部15が接続されている。
【0039】
図3Aに示すように、乗りかご10には、ガイドレール103を摺動するガイドローラ17と、第1連結機構11及び第2連結機構12を支持するクロスヘッド16と、受電部15が設置されている。受電部15及びクロスヘッド16は、乗りかご10の上部に配置されている。受電部15は、乗りかご10の第2の方向の一端部に配置されている。
【0040】
第1送電部81A、第2送電部81B、かご搭載機器14及び受電部15の詳細な構成については、後述する。
【0041】
1-2.マルチカーエレベーターの制御系
次に、図4を参照して上述した構成を有するマルチカーエレベーター1の制御系の構成について説明する。
図4は、駆動制御部6の構成を示すブロック図である。
【0042】
図4に示すように、駆動制御部6は、位置制御部61と、速度制御部62と、モータ制御部63と、電流検出器64と、速度検出器65とを有している。また、駆動制御部6は、第1シーブ2及び第2シーブ3に設けたブレーキ21に接続されるブレーキ回路22と、電源回路23を有している。さらに、駆動制御部6は、第1シーブ2及び第2シーブ3に設けたモータ20に接続された電源遮断部24及び電力変換器25を有している。
【0043】
モータ20は、電力変換器25及び電源遮断部24を介して外部の電源26から電力が供給される。なお、電源26と電源遮断部24との間には、遮断器27が設けられている。
【0044】
位置制御部61は、運行制御部51と判定部50に接続されている。判定部50は、複数の乗りかご10A、10B、10Cのかご側安全制御部と情報を送受信可能に接続されている。判定部50は、各乗りかご10A、10B、10Cのかご側安全制御部から出力された安全判定情報や、位置情報に基づいて、複数の乗りかご10A、10B、10Cが所定の間隔よりも接近しているか否かを判定する。そして、判定部50は、判定結果を位置制御部61に出力する。
【0045】
運行制御部51は、各階の乗降場120に設けた呼びボタンの操作に応じて、複数の乗りかご10A、10B、10Cのうちどの乗りかご10を割り当てるか決定し、決定した運行情報を駆動制御部6に出力する。位置制御部61は、運行情報と、判定部50の位置情報及び判定結果に基づいて、乗降場120間の高さや、停止する乗降場120までの距離を算出して速度指令を作成する。そして、位置制御部61は、作成した速度指令を速度制御部62に出力する。
【0046】
速度制御部62は、速度検出器65が検出したモータ20の速度情報に基づいて、位置制御部61から受信した速度指令をフィードバック制御し、トルク指令を作成する。そして、速度制御部62は、作成したトルク指令をモータ制御部63に出力する。また、モータ制御部63には、電流検出器64が検出したモータ20への電流情報が送信される。
【0047】
モータ制御部63は、電流検出器64が検出した電流情報に基づいて、トルク指令をフィードバック制御し、電流指令を電力変換器25に出力する。電力変換器25は、受信した電流指令に基づいて、モータ20に供給する電流値を制御する。これにより、モータ20は、所望のトルク及び速度で回転制御される。
【0048】
判定部50からの安全判定情報が安全でないという判定の場合には、駆動制御部6は、電源遮断部24及びブレーキ回路22を遮断する。これにより、モータ20への動力が遮断されると共に、ブレーキ21が作動し、乗りかご10が停止する。
【0049】
1-3.給電部及びかご搭載機器の構成例
次に、かご搭載機器14、受電部15及び送電部81A、81Bからなる給電部の詳細な構成について図5を参照して説明する。
図5は、かご搭載機器14、受電部15及び送電部81A、81Bの概略構成を示す図である。なお、第1送電部81A及び第2送電部81Bの構成は、同一である。
【0050】
図5に示すように、第1送電部81A及び第2送電部81Bは、3本のトロリ線811、812、813から構成されている。3本のトロリ線811、812、813は、トロリ線支持具810によって支持されている。トロリ線支持具810は、図3Aに示す固定部85に設けられている。また、トロリ線支持具810及び固定部85は、移動路100内において第1の方向に沿って間隔をあけて複数設置される。
【0051】
3本のトロリ線811、812、813のうち第1トロリ線811及び第2トロリ線812は、配線801を介して電源800に接続されている。電源800は、第1トロリ線811と第2トロリ線812に電圧を印加する単相交流電源である。そして、残りの第3トロリ線813は、接地されている。
【0052】
なお、本例では、電源800として単相交流電源を適用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、直流電源や三相交流電源を適用してもよい。三相交流電源の場合、トロリ線の数は、4本となるが、乗りかご10への送電効率を高めることができ、乗りかご10のかご機器90の消費電力が大きい場合にも対応できる。
【0053】
受電部15は、3つの集電部831、832、833を有している。3つの集電部831、832、833は、それぞれトロリ線811、812、813に接触するブラシ821、822、823を有している。第1集電部831のブラシ821は、第1トロリ線811に接触し、第2集電部832のブラシ822は、第2トロリ線812に接触する。そして、第3集電部833のブラシ823は、第3トロリ線813に接触する。
【0054】
また、3つの集電部831、832、833は、付勢部材87を介して支持具830に支持されている。付勢部材87は、3つの集電部831、832、833と支持具830の間に介在されている。そして、付勢部材87は、2つの集電部831、832、833をトロリ線811,812、813に向けて付勢している。これにより、乗りかご10が揺れた際に、ブラシ821、822、823を確実にトロリ線811、812、813に接触させることができる。また、乗りかご10が反転区間から直線区間に移行する際、すなわちトロリ線811、812、813が無い区間からトロリ線811、812、813がある区間に移行するときでも、確実にブラシ821、822、823をトロリ線811、812、813に接触させることができる。
【0055】
そして、受電部15と送電部81A、81Bによって電源800から乗りかご10に電力を供給する給電部19が構成される。
【0056】
給電部19とかご搭載機器14は、かご給電配線84により接続されている。そして、かご給電配線84を介して、給電部19からかご搭載機器14に給電される。かご搭載機器14は、かご給電切替部91と、かご受電回路92とを有している。かご給電切替部91は、第1集電部831及び第2集電部832とかご給電配線84を介して接続されている。また、接地線である第3集電部833は、かご給電配線84を介して直接かご受電回路92に接続されている。
【0057】
かご給電切替部91は、受電部15と、後述するかご受電回路92との電力の接続及び遮断を切り替え可能に構成されている。かご給電切替部91は、受電スイッチ911と、受電リレー912とを有している。受電スイッチ911を設けたことで、保守点検時に手動でかご受電回路92への電力供給をON・OFFを切り替えることができる。
【0058】
受電リレー912は、リレー回路であり、受電スイッチ911とかご受電回路92との間に配置されている。受電リレー912は、リレーコイル912aと、接点部912bとを有している。そして、送電部81A、81Bと受電部15が接触し、給電が開始された際、まず受電リレー912のリレーコイル912aに給電される。そして、リレーコイル912aの電磁作用により接点部912bが接続され、かご受電回路92に電力が給電される。これにより、給電開始時に生じる負荷となる突入電流がかご受電回路92に流れることを防止することができる。
【0059】
さらに、送電部81A、81Bと受電部15が接触していない時に、後述するかご受電回路92に設けた蓄電装置93から電力が受電部15に供給されることを防止することができる。その結果、乗りかご10が反転区間を移動する際に、ブラシ821,822、823が移動路100内の他の機器に接触し、放電が発生することを防止することができる。
【0060】
なお、本例では、かご給電切替部91としてリレー回路からなる受電リレー912を適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、乗りかご10の位置を検出するセンサからの情報に基づいて、かご受電回路92への給電のON・OFFを切り替えてもよい。しかしながら、乗りかご10の位置は、主ロープ8、9の伸びに応じて変化するおそれがあり、主ロープ8、9の伸びに応じて、送電部81A、81Bと受電部15が接触する位置も変化する。
【0061】
そのため、本例では、給電の状態に応じて自動的に接点部912bの開閉を切り替えるリレー回路を用いている。これにより、乗りかご10の位置の変化に影響を受けることなく、送電部81A、81Bと受電部15の接触及び離反に応じて、かご受電回路92への給電及び遮断を正確に切り替えることができる。
【0062】
かご受電回路92は、かご機器電源部921と、かご機器90とを有している。かご機器電源部921は、充放電回路922と、蓄電装置93と、不図示の電源回路を有している。充放電回路922は、かご給電切替部91を介して給電部19から給電された電力を蓄電装置93に充電する。蓄電装置93は、不図示の電源回路を介してかご機器90に給電する。
【0063】
なお、上述したように、送電部81A、81Bは、乗りかご10の上昇路100Aと下降路100Bの直線区間にのみ配置されている。そのため、乗りかご10が直線区間を移動する際では、かご機器90に、かご機器電源部921を介して給電部19から電力が供給される。そして、乗りかご10が第1反転路100C及び第2反転路100Dである反転区間を移動する際には、蓄電装置93からかご機器90に電力が供給される。
【0064】
これにより、本例のマルチカーエレベーター1によれば、直線区間だけでなく、反転区間においてもかご機器90に安定して電力を供給することができる。また、送電部81A、81Bは、直線区間にのみ配置すればよいため、受電部15の構成を簡略化することができると共に、送電部81A、81Bの据え付け作業を容易に行うことができる。
【0065】
2.第2の実施の形態例
次に、図6から図8を参照して第2の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターについて説明する。
図6は、第2の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターを示す概略構成図である。図7A及び図7Bは、マルチカーエレベーターの移動路を示す平面図である。なお、図6図7A及び図7Bでは、複数の組の乗りかごのうち1組の乗りかごのみを示している。また、図8は、給電部及びかご搭載機器の概略構成を示す図である。
【0066】
第2の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターが、第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1と異なる点は、送電部を配置する位置と、受電部及びかご搭載機器の構成である。そのため、ここでは、第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0067】
図6及び図7Aに示すように、マルチカーエレベーター1Aは、第1送電部81Lと、第2送電部81Rを有している。第1送電部81Lは、上昇路100Aにおける下降路100Bとは反対側の端部、すなわち移動路100の壁面113側に配置されている。第2送電部81Rは、下降路100Bにおける上昇路100Aとは反対側の端部、すなわち移動路100の壁面113側に配置されている。
【0068】
第1送電部81Lは、第1配線801Lに接続されており、第2送電部81Rは、第2配線801Rに接続されている。第1配線801L及び第2配線801Rは、壁面113に沿って配置されている。
【0069】
図7Bに示すように、第1送電部81L、第2送電部81R、第1配線801L及び第2配線801Rは、乗りかご10の走行領域T1と干渉しない位置に配置されている。そのため、図6に示すように、第2の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1Aによれば、第1送電部81L及び第2送電部81Rを第1の実施の形態例にかかる第1送電部81A及び第2送電部81Bよりも長くすることができる。これにより、第1送電部81L及び第2送電部81Rによって乗りかご10への給電可能な区間を増やすことができ、蓄電装置93の蓄電容量を減少させることができる。
【0070】
また、乗りかご10には、かご搭載機器214と、第1受電部15Lと、第2受電部15Rとを有している。第1受電部15Lは、乗りかご10における第2の方向の一端部に配置され、第2受電部15Rは、乗りかご10における第2の方向の他端部に配置されている。乗りかご10が上昇路100Aを移動する際は、第1受電部15Lが第1送電部81Lに接触し、かご搭載機器214に給電される。そして、乗りかご10が下降路100Bを移動する際は、第2受電部15Rが第2送電部81Rに接触し、かご搭載機器214に給電される。
【0071】
また、図8に示すように、第1送電部81Lは、3本のトロリ線811L、812L、813Lを有している。同様に、第2送電部81Rは、3本のトロリ線811R、812R、813Rを有している。第1トロリ線811L、811R及び第2トロリ線812L、812Rは、配線801L、801Rを介して電源800に接続され、第3トロリ線813L、813Rは、接地されている。
【0072】
接地線である第3トロリ線813L、813Rは、第1トロリ線811L、811Rと第2トロリ線812L、812Rの間に配置されている。これにより、第1送電部81Lと第2送電部81Rを反対に接続しても、地絡故障を防止することができる。
【0073】
第1受電部15Lは、3つのブラシ821L、822L、823Lを有する集電部83を有している。そして、集電部83は、付勢部材87を介して支持具830に支持されている。このように、集電部83を1つにまとめることで、部品点数を削減することができる。第1ブラシ821Lは、第1トロリ線811Lに接触し、第2ブラシ822Lは、第2トロリ線812Lに接触する。そして、第3ブラシ823Lは、接地線である第3トロリ線813Lに接触する。そして、集電部83は、第1かご給電配線84Lを介して後述するかご搭載機器214の第1かご給電切替部91Lに接続されている。なお、第1かご給電配線84Lのうち、第3ブラシ823Lに接続される接地線は、かご受電回路92に接続される。
【0074】
第2受電部15Rは、3つのブラシ821R、822R、823Rを有する集電部83を有している。そして、集電部83は、付勢部材87を介して支持具830に支持されている。第1ブラシ821Rは、第1トロリ線811Rに接触し、第2ブラシ822Rは、第2トロリ線812Rに接触する。そして、第3ブラシ823Rは、接地線である第3トロリ線813Rに接触する。そして、集電部83は、第2かご給電配線84Rを介して後述するかご搭載機器214の第2かご給電切替部91Rに接続されている。なお、第2かご給電配線84Rのうち、第3ブラシ823Rに接続される接地線は、かご受電回路92に接続される。
【0075】
そして、第1受電部15Lと第1送電部81Lによって第1給電部19Lが構成され、第2受電部15Rと第2送電部81Rによって第2給電部19Rが構成される。
【0076】
かご搭載機器214は、第1かご給電切替部91Lと、第2かご給電切替部91Rと、かご受電回路92とを有している。かご受電回路92の構成は、第1の実施の形態例にかかるかご受電回路92と同様であるため、その説明は、省略する。
【0077】
第1かご給電切替部91Lは、第1受電スイッチ911Lと、第1受電リレー912Lとを有している。第1受電スイッチ911L及び第1受電リレー912Lは、第1の実施の形態例にかかる受電スイッチ911及び受電リレー912と同様の構成を有している。第1受電リレー912Lは、第1受電部15Lと第1送電部81Lが接触した際に、接点部を接続し、第1受電部15Lと第1送電部81Lが離反した際に、接点部の接続を遮断する。
【0078】
同様に、第2かご給電切替部91Rは、第2受電スイッチ911Rと、第2受電リレー912Rとを有している。第2受電スイッチ911R及び第2受電リレー912Rは、第1の実施の形態例にかかる受電スイッチ911及び受電リレー912と同様の構成を有している。第2受電リレー912Rは、第2受電部15Rと第2送電部81Rが接触した際に、接点部を接続し、第2受電部15Rと第2送電部81Rが離反した際に、接点部の接続を遮断する。
【0079】
これにより、乗りかご10が上昇路100Aを移動する際、第2受電部15Rには、課電されず、乗りかご10が下降路100Bを移動する際、第1受電部15Lには、課電されない。これにより、第1受電部15Lと第2受電部15Rのうち送電部81L、81Rと接触していない受電部が移動路100内の他の部品と接触し、放電が発生することを防止することができる。その結果、移動路100内に接地する部品と受電部15L、15Rとの絶縁距離を考慮する必要がなくなり、乗りかご10や他の部品の配置する箇所の自由度を向上させることができる。
【0080】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有するマルチカーエレベーター1Aによっても、上述した第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1と同様の作用効果を得ることができる。
【0081】
3.第3の実施の形態例
次に、図9を参照して第3の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターについて説明する。
図9は、第3の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターの給電部及びかご搭載機器の概略構成を示す図である。
【0082】
第3の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターは、第2の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1Aにおける第1かご給電切替部91Lと第2かご給電切替部91Rを1つにまとめたものである。そのため、ここでは、第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1及び第2の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1Aと共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0083】
図9に示すように、かご搭載機器214Bは、かご給電切替部91Bと、かご受電回路92とを有している。かご給電切替部91Bは、受電リレー913を有している。受電リレー913は、リレーコイル913aと、接点部913bとを有している。接点部913bは、第1受電部15Lと第1送電部81Lが接触した際に、第1かご給電配線84L側に接点に接続する。そして、接点部913bは、第2受電部15Rと第2送電部81Rが接触した際に、第2かご給電配線84R側の接点に接続する。
【0084】
これにより、乗りかご10が上昇路100Aを移動する際、第2受電部15Rには、課電されず、乗りかご10が下降路100Bを移動する際、第1受電部15Lには、課電されない。その結果、第3の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターによれば、かご給電切替部91Bの部品点数を削減することができ、かご搭載機器214Bの小型化を図ることができる。
【0085】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1及び第2の実施の形態例にかかる1Aと同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有するマルチカーエレベーターによっても、上述した第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1及び第2の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1Aと同様の作用効果を得ることができる。
【0086】
4.第4の実施の形態例
次に、図10を参照して第4の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターについて説明する。
図10は、第4の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターの移動路を示す平面図である。
【0087】
第4の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターは、乗りかごに2つのかご側ドアを設けたものである。そのため、ここでは、第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0088】
図10に示すように、乗りかご310には、第1かご側ドア13Aと、第2かご側ドア13Bと、ガイドローラ17が設けられている。第1かご側ドア13Aは、乗りかご310における第2の方向の一端部に配置され、第2かご側ドア13Bは、乗りかご310における第2の方向の他端部に配置されている。そして、第1かご側ドア13A及び第2かご側ドア13Bは、第2の方向において対向する。
【0089】
ガイドローラ17は、乗りかご310における第1かご側ドア13A及び第2かご側ドア13Bが設けられた側面部とは異なる側面部に配置されている。ガイドローラ17は、移動路300に設けたガイドレール303を摺動する。すなわち、ガイドローラ17は、乗りかご310における第1の方向及び第2の方向と直交する第3の方向に設けられている。
【0090】
移動路300における乗りかご310が停止する乗降場には、乗場側ドア321A、321Bが設けられている。第1乗場側ドア321Aは、移動路300における第2の方向の一端部側に配置され、第1かご側ドア13Aと対向する。また、第2乗場側ドア321Bは、移動路300における第2の方向の他端部側に配置され、第2かご側ドア13Bと対向する。
【0091】
また、移動路300には、乗りかご310を移動可能に支持するガイドレール303が設けられている。そして、ガイドレール303は、乗りかご310の第3の方向の両端部に配置される。
【0092】
このような構成を有するマルチカーエレベーターによれば、例えば、第1かご側ドア13A及び第1乗場側ドア321Aを乗車用とし、第2かご側ドア13B及び第2乗場側ドア321Bを降車用とする。これにより、乗降場において人の流れを分けることができ、スムーズに乗降することができる。
【0093】
また、乗りかご310には、第1受電部15Aと、第2受電部15Bが設けられている。第1受電部15Aは、乗りかご310における第3の方向の一端部側に配置されており、第2受電部15Bは、乗りかご310における第3の方向の他端部側に配置されている。なお、第1受電部15A及び第2受電部15Bの構成は、第2の実施の形態例にかかる第1受電部15L及び第2受電部15Rと同様であるため、その説明は省略する。
【0094】
さらに、移動路300には、第1受電部15Aが接触及び離反する第1送電部81Aと、第2受電部15Bが接触及び離反する第2送電部81Bが設けられている。第1送電部81Aは、移動路300の第3の方向の一端部側に配置されており、第2送電部81Bは、移動路300の第3の方向の他端部側に配置されている。なお、第1送電部81A及び第2送電部81Bの構成は、第2の実施の形態例にかかる第1受電部15L及び第2受電部15Rと同様であるため、その説明は省略する。
【0095】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1及び第2の実施の形態例にかかる1Aと同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有するマルチカーエレベーターによっても、上述した第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1及び第2の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1Aと同様の作用効果を得ることができる。
【0096】
なお、上述した実施の形態例では、給電方式としてトロリ線を用いて接触給電を適用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、高周波電源を用いた非接触給電方式を適用してもよい。図10に示すように、第1送電部81A及び第2送電部81Bを、トロリ線ではなく、複数の高周波コイルとして構成する。そして、複数の高周波コイルを第1の方向に沿って並べて配置する。そして、第1送電部81A及び第2送電部81Bに非接触給電用の高周波電源86A、86Bを接続させ、高周波コイルに給電する。
【0097】
そして、送電部81A、81Bが、乗りかご310に設けた受電部15A、15Bと対向することで、高周波磁界から磁界共振などによって乗りかご310に電力が給電される。なお、非接触方式の給電方式としては、磁界を利用したものだけでなく、例えば、電界結合による非接触給電でもよい。
【0098】
5.第5の実施の形態例
次に、図11を参照して第5の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターについて説明する。
図11は、第5の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターのかご受電回路の概略構成を示す図である。
【0099】
第5の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーターが、第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1と異なる点は、かご受電回路の構成である。そのため、ここでは、かご受電回路について説明し、第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0100】
図11に示すように、かご受電回路92Bは、かご機器90と、かご機器電源部921Bとを有している。かご機器電源部921Bは、充放電回路922と、蓄電装置93と、電源回路94と、ドア電源95と、を有している。電源回路94は、蓄電装置93に接続されている。また、電源回路94は、かご機器90におけるドアマシン904を除く他の機器901、902、903に接続されている。そして、乗りかご10が反転区間を移動する際には、電源回路94は、蓄電装置93から電力を機器901、902、903に供給する。
【0101】
なお、機器901、902、903は、乗りかご10が直線区間だけでなく反転区間を移動する際にも電力を必要とする機器であり、例えば、乗りかご10の制御盤、かご側安全制御部、インチングマシン、空調装置等が挙げられる。
【0102】
ドア電源95は、かご機器90のドアマシン904に接続されており、ドアマシン904に電力を供給する。ドア電源95は、スイッチ97を介して電源回路94に接続されている。また、ドア電源95は、かご給電切替部91(図5参照)を介して給電部19に接続されている。スイッチ97は、蓄電装置93からドア電源95への電力の供給と遮断を切り替える。そして、通常時では、スイッチ97がOFFとなり、蓄電装置93からドア電源95に給電されず、ドア電源95は、給電部19から直接電力が供給される。
【0103】
ここで、乗りかご10が反転区間を移動する際、かご側ドア13の開閉動作は行われない。したがって、乗りかご10が反転区間を移動する際に、ドアマシン904への電力の供給は不要となる。そのため、上述したように、ドア電源95を蓄電装置93から給電しなくてもよい。これにより、蓄電装置93の出力仕様を低減することができると共に、蓄電装置93の蓄電容量を減少させることができる。
【0104】
また、非常時において乗客が乗りかご10に乗っている状態で、乗りかご10が反転区間に停止した場合は、スイッチ97がONとなり、蓄電装置93からドア電源95に電力が供給される。
【0105】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有するマルチカーエレベーターによっても、上述した第1の実施の形態例にかかるマルチカーエレベーター1と同様の作用効果を得ることができる。
【0106】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0107】
さらに、マルチカーエレベーターとして、複数の乗りかご10が一方向に循環移動するマルチカーエレベーターを説明したが、これに限定されるものではない。例えば、複数の乗りかごが移動路100を上昇と下降の両方向に移動可能に構成されたマルチカーエレベーターにも適用できるものである。
【0108】
また、マルチカーエレベーター1に設けられる乗りかごの数は、6つに限定されるものではなく、乗りかごの数は、5つ以下、あるいは7つ以上設けてもよい。
【0109】
上述した実施の形態例では、乗りかごが移動する第1の方向として、鉛直方向である上下方向を適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、鉛直方向と直交する水平方向や、水平方向、上下方向及び水平方向から傾斜した斜め方向を第1の方向としてもよい。そして、マルチカーエレベーターとしては、少なくとも乗りかごが第1の方向と、この第1の方向と交差する第2の方向に移動可能なマルチカーエレベーターが適用される。
【0110】
また、マルチカーエレベーターとしては、第1の方向に沿って乗降場が設けられたマルチカーエレベーターに限定されるものではない。例えば、移動路が第1の方向と第2の方向に延在し、第1の方向と第2の方向の両方に乗降場が設けられたマルチカーエレベーターにも適用できるものである。
【0111】
また、上述した実施の形態例では、送電部を乗りかごが昇降移動する方向である第1の方向に沿って連続して設けた例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、送電部を分割して配置してもよい。さらに、乗りかごに設ける受電部を第1の方向に間隔を開けて複数設けてもよい。そして、複数の受電部の間隔は、複数に分割した送電部の間隔よりも長くすることが好ましい。これにより、乗りかごが直線区間を移動する際に、複数の受電部のうち少なくとも1つの受電部を送電部に接触又は対向させることができる。
【0112】
また、受電部を乗りかごの上部に設けた例を説明したが、これに限定されるものではなく、受電部を乗りかごの下部や側部に設けてもよい。なお、受電部を乗りかごの側部に設けた場合、乗りかごの面積が縮小、または移動路の平面面積を広げる必要がある。さらに、受電部を乗りかごの下部に設けた場合、乗りかごのメンテナンスをする際に、乗りかごの下部に入り込む必要がある。そのため、受電部は、乗りかごの上部に設けることが好ましい。
【0113】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0114】
1、1A…マルチカーエレベーター、 2、3…シーブ、 4、5…下部プーリ、 6…駆動制御部、 8、9…主ロープ、 10、310…乗りかご、 11、12…連結機構、 13、13A、13B…かご側ドア、 14、214、214B…かご搭載機器、 15、15A、15B、15L、15R…受電部、 19、19L、19R…給電部、 81A、81B、81L、81R…送電部、 83、831、832、833…集電部、 84、84L、84R…かご給電配線、 85…固定部、 87…付勢部材、 90、901、902、903…かご機器、 91、91B、91L、91R…かご給電切替部、 92、92B…かご受電回路、 93…蓄電装置、 94…電源回路、 95…ドア電源、 97…スイッチ、 100、300…移動路、 100A…上昇路(直線区間)、 100B…下降路(直線区間)、 100C…第1反転路(反転区間)、 100D…第2反転路(反転区間)、 113…壁面、 115…中間梁、 120…乗降場、 121…乗場側ドア、 214…搭載機器、 800…電源、 801、801A、801B、801L、801R…配線、 810…トロリ線支持具、 811、811L、811R、812L、812R、813L、813R…トロリ線、 821、821L、821R、822L、822R、823L、823R…ブラシ、 830…支持具、 904…ドアマシン、 911、911L、911R…受電スイッチ 912、912L、912R、913…受電リレー、 912a、913a…リレーコイル、 912b、913b…接点部、 921、921B…かご機器電源部、 922…充放電回路、 T1…走行領域
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