IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミネベア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ナットアッセンブリおよび駆動装置 図1
  • 特許-ナットアッセンブリおよび駆動装置 図2
  • 特許-ナットアッセンブリおよび駆動装置 図3
  • 特許-ナットアッセンブリおよび駆動装置 図4
  • 特許-ナットアッセンブリおよび駆動装置 図5
  • 特許-ナットアッセンブリおよび駆動装置 図6
  • 特許-ナットアッセンブリおよび駆動装置 図7
  • 特許-ナットアッセンブリおよび駆動装置 図8
  • 特許-ナットアッセンブリおよび駆動装置 図9
  • 特許-ナットアッセンブリおよび駆動装置 図10
  • 特許-ナットアッセンブリおよび駆動装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ナットアッセンブリおよび駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/20 20060101AFI20240829BHJP
   H02K 7/06 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
F16H25/20 F
F16H25/20 B
H02K7/06 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020168385
(22)【出願日】2020-10-05
(65)【公開番号】P2022060734
(43)【公開日】2022-04-15
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】秦 将人
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-085102(JP,A)
【文献】特開昭61-062658(JP,A)
【文献】特開平10-110800(JP,A)
【文献】特開2018-070117(JP,A)
【文献】特開2019-203595(JP,A)
【文献】特開2000-029991(JP,A)
【文献】特開平09-273550(JP,A)
【文献】特開2003-156120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
H02K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードスクリューに挿通され、前記リードスクリューの軸方向に移動可能なスライダと係合するナットアッセンブリであって、
前記軸方向に互いに離間した一対のナット部と、
前記ナット部の間に配置された弾性部材と、
を備え
前記軸方向において、前記一対のナット部は、互いに接近しかつ離間可能であり、
前記一対のナット部のうち、一方のナット部は係合部を備え、
前記一対のナット部のうち、他方のナット部には被係合部を備え、
前記軸方向において、前記係合部と前記被係合部は空隙を介して対向し、
前記他方のナット部が前記一方のナット部から離間したときに、前記被係合部と前記係合部とが互いに係合する、
ナットアッセンブリ。
【請求項2】
前記弾性部材は前記ナット部によって圧縮されている請求項1に記載のナットアッセンブリ。
【請求項3】
前記ナット部に、前記ナット部同士が互いに接近および離間が可能なように保持するガイド部を設けた請求項1または2に記載のナットアッセンブリ。
【請求項4】
前記ナット部に、前記ナット部同士が所定以上接近することを阻止するストッパ部を設けた請求項1乃至のいずれかに記載のナットアッセンブリ。
【請求項5】
前記ナット部のいずれかの前記スライダ側に、ナット側係合部を設け、前記スライダに、前記ナット側係合部と係合するスライダ側係合部を設けた請求項1乃至のいずれかに記載のナットアッセンブリ。
【請求項6】
前記ナット部のいずれかに、前記スライダ側へ突出する凸部を設け、前記スライダに、前記凸部が嵌合する凹部を設けた請求項1乃至のいずれかに記載のナットアッセンブリ。
【請求項7】
前記一対のナット部は、同じ形状である請求項1乃至のいずれかに記載のナットアッセンブリ。
【請求項8】
リードスクリューと、
前記リードスクリューの軸方向に移動可能なスライダと、
前記リードスクリューに挿通され、前記スライダと係合するナットアッセンブリと、
を備え、
前記ナットアッセンブリは、
前記軸方向に互いに離間した一対のナット部と、
前記ナット部の間に配置された弾性部材と、
を備え
前記軸方向において、前記一対のナット部は、互いに接近しかつ離間可能であり、
前記一対のナット部のうち、一方のナット部は係合部を備え、
前記一対のナット部のうち、他方のナット部には被係合部を備え、
前記軸方向において、前記係合部と前記被係合部は空隙を介して対向し、
前記他方のナット部が前記一方のナット部から離間したときに、前記被係合部と前記係合部とが互いに係合する、
駆動装置。
【請求項9】
前記スライダと前記ナット部は、同じ樹脂素材で成形されている請求項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記樹脂素材はポリアセタールである請求項に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記樹脂素材はポリフェニレンスルファイドである請求項に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記スライダと前記ナット部は、異なる樹脂素材で成形されている請求項に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記スライダおよびナット部の一方はポリブチレンテレフタレートで構成され、他方はポリフェニレンスルファイドで構成されている請求項12に記載の駆動装置。
【請求項14】
前記スライダおよび前記ナット部の一方はポリエーテルエーテルケトンで構成され、他方はポリフェニレンスルファイドで構成されている請求項13に記載の駆動装置。
【請求項15】
前記スライダは、軸方向に延在するガイド軸を挿通させた脚部を有し、前記脚部の底面に、前記スライダが載置されたフレームの走行面に対して点接触または軸方向に添って線接触する摺動部を設けた請求項乃至14のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項16】
リードスクリューと、
前記リードスクリューの軸方向に移動可能なスライダと、
前記リードスクリューに挿通され、前記スライダと前記軸方向で係合するナット部と、
を備え、
前記スライダは、前記リードスクリューの軸方向に延在するガイド軸を挿通させた少なくとも一対の孔を備え、
前記孔の前記軸方向に直交する断面形状が互いに異なっており、
前記軸方向において、前記一対のナット部は、互いに接近しかつ離間可能であり、
前記一対のナット部のうち、一方のナット部は係合部を備え、
前記一対のナット部のうち、他方のナット部には被係合部を備え、
前記軸方向において、前記係合部と前記被係合部は空隙を介して対向し、
前記他方のナット部が前記一方のナット部から離間したときに、前記被係合部と前記係合部とが互いに係合する、
駆動装置。
【請求項17】
一方の前記孔の断面形状は正円であり、他方の前記孔の断面形状は水平方向に長い長円である請求項16に記載の駆動装置。
【請求項18】
前記少なくとも一対の孔は、前記スライダに設けた脚部に形成された請求項16または17に記載の駆動装置。
【請求項19】
リードスクリューと、
前記リードスクリューの軸方向に移動可能なスライダと、
前記リードスクリューに挿通され、前記スライダと係合するナット部と、
を備え、
前記スライダは、軸方向に延在するガイド軸を貫通させた脚部を有し、
前記脚部の底面に、前記スライダが載置されたフレームの走行面に対して点接触または軸方向に添って線接触する摺動部を設けた駆動装置。
【請求項20】
前記係合部は、前記回転軸方向に延在するスリットが形成され、
前記回転軸方向において、前記スリットの先端部と前記被係合部は、空隙を介して対向する、
請求項1に記載のナットアッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被駆動部材を直線方向に移動させる駆動装置およびその部品であるナットアッセンブリに係り、ナット部および弾性部材のリードスクリューへの組付けを容易にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの回転力を直線運動に変換し、被駆動部材を直線方向に移動させる駆動装置が知られている(例えば特許文献1)。この駆動装置では、可動部材を支持する第1ナット部31および第2ナット部32にリードスクリュー2を挿通し、両ナット部31,32の間にコイルスプリング350を配置している(図15)。このような駆動装置では、コイルスプリング350により両ナット部31,32が互いに離間する方向に付勢されるので、リードスクリュー2に対する両ナット部31,32のバックラッシュが解消される。
【0003】
特許文献1に記載された駆動装置では、第1ナット部31および第2ナット部32を可動部材に装着した状態では、第1ナット部31とコイルスプリング350との間に第2支持板部617が配置されることにより、コイルスプリング350を圧縮している。この構成を得るに際して、特許文献1では、図18に示されるように、第2支持板部617と同一の厚さあるいはわずかに厚い治具200を挟んでおき、第2支持板部617を治具200に向けて押し込むことにより、第1ナット部31とコイルスプリング350との間に第2支持板部617が差し込まれ、これにより、リードスクリュー2の軸線に対して直交する方向に移動可能な治具200は、リードスクリュー2から離脱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2018/084312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、第1ナット部31、第2ナット部32およびコイルスプリング350とスライダとを組み付ける工程の作業性が悪く製造コストが上昇するという問題がある。また、特許文献1に記載の技術では、1本のガイド軸でスライダを案内している。このため、スライダの姿勢が不安定となる。
【0006】
このような背景において、本発明は、2つのナット部およびスプリングを簡単にスライダへ組み付けることができる駆動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、リードスクリューに挿通され、前記リードスクリューの軸方向に移動可能なスライダと係合するナットアッセンブリであって、前記軸方向に互いに離間した一対のナット部と、前記ナット部の間に配置された弾性部材と、を備え、前記軸方向において、前記一対のナット部は、互いに接近しかつ離間可能であり、
前記一対のナット部のうち、一方のナット部は係合部を備え、前記一対のナット部のうち、他方のナット部には被係合部を備え、前記軸方向において、前記係合部と前記被係合部は空隙を介して対向し、前記他方のナット部が前記一方のナット部から離間したときに、前記被係合部と前記係合部とが互いに係合する、ナットアッセンブリである。
【0008】
また、本発明は、リードスクリューと、前記リードスクリューの軸方向に移動可能なスライダと、前記リードスクリューに挿通され、前記スライダと前記軸方向で係合するナットアッセンブリとを備え、前記ナットアッセンブリは、前記軸方向に互いに離間した一対のナット部と、前記ナット部の間に配置された弾性部材とを備え、前記軸方向において、前記一対のナット部は、互いに接近しかつ離間可能であり、前記一対のナット部のうち、一方のナット部は係合部を備え、前記一対のナット部のうち、他方のナット部には被係合部を備え、前記軸方向において、前記係合部と前記被係合部は空隙を介して対向し、前記他方のナット部が前記一方のナット部から離間したときに、前記被係合部と前記係合部とが互いに係合する、駆動装置である。
【0009】
本発明によれば、ナットアッセンブリにナット部と弾性部材を備えているので、ナットアッセンブリをスライダに係合させ、一方のナット部を他方のナット部に接近させて弾性部材を圧縮し、その状態でリードスクリューをナット部に挿通させることができる。これにより、弾性部材が弾性復帰することでナット部とリードスクリューとのバックラッシュが解消される。このように、2つのナット部およびスプリングをスライダへ組み付ける一連の作業は、治具や特別な工具を用いることなく手作業にて行うことができ、作業は簡易で作業性が良い。
【0010】
ナットアッセンブリの状態で弾性部材がナット部に圧縮されていることが望ましい。これにより、ナット部と弾性部材の位置が固定され、ナットアッセンブリのハンドリングが容易となる。
【0011】
ナット部に、互いを接近しかつ離間することが可能なように保持するガイド部を設けると好適である。このような構成では、ガイド部によってナット部同士が分離し難くなり、作業性がさらに向上する。本発明においては、ナット部に、所定以上の離間を阻止する係合部を設けている。このような構成では、弾性部材を圧縮した状態でナット部を保持することができる。
【0012】
また、ナット部に、所定以上の接近を阻止するストッパ部を設けると好適である。これにより、作業者は、ナット部をストッパ部で止まるまで移動させることにより、弾性部材を限界まで圧縮することなく所定の予荷重を弾性部材に与えることができる。つまり、そのような操作を作業標準とすることができる。
【0013】
ナット部のいずれかのスライダ側に、ナット側係合部を設け、スライダに、ナット側係合部と軸方向で係合するスライダ側係合部を設けると好適である。このような簡易な構成により、ナットアッセンブリをスライダに係合させることができる。具体的には、ナット部のいずれかに、スライダ側へ突出する凸部を設け、スライダに、凸部が嵌合する凹部を設けることができる。なお、スライダにナット部側へ突出する凸部を設け、ナット部のいずれかに凸部が嵌合する凹部を設けることもできる。
【0014】
スライダとナット部は、同じ樹脂素材で構成すると好適である。これにより、スライダとナット部との熱膨張率の差に起因するガタの発生が抑制される。樹脂素材としては、たとえば、POM(ポリアセタール)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PA(ポリアミド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などを用いることができる。スライダとナット部をPOMとした構成は摺動性に優れるとともに廉価であるので好適である。あるいは、荷重が大きく環境温度が高い環境下を考慮した場合には、スライダとナット部とをPPSとした構成が好適である。
【0015】
あるいは、スライダとナット部を異なる樹脂素材で構成することも可能である。たとえば、スライダおよびナット部の一方をPPSで構成し、他方をPBTで構成することができる。また、スライダおよびナット部の一方をPEEKで構成し、他方をPPSで構成することもできる。これらの樹脂は、熱膨張係数において相違するものの、使用環境温度と嵌合サイズによっては、生じるガタの大きさはナットとスライダとを同樹脂とした構成によって生じるガタの大きさと僅かな差しかないため、そのような樹脂の組合せによってもガタを抑制することができる。樹脂の種類は使用条件によって適宜使い分ける。上記に例示した樹脂は、線膨張係数が1~3×10-5/℃なので、嵌合サイズが例えば1mmで環境温度が75℃上昇したとすると、生じるガタの大きさは0.75~2.25μmと僅かである。
【0016】
一対のナット部は、同じ形状とすることができる。これにより、同じ金型で射出成形することができるので、金型の種類を減らすことができるとともに、ナット部の製造工程を簡素化することができるので、製造コストを低減することができる。
【0017】
スライダは、リードスクリューの軸方向に延在するガイド軸を貫通させた脚部を有することにより、軸方向へ移動可能に構成することができる。ガイド軸を貫通させる構成としては、脚部に貫通孔を形成するか、脚部の側面に溝を形成する態様を採用することができる。
【0018】
本発明の他の特徴は、リードスクリューと、前記リードスクリューの軸方向に移動可能なスライダと、前記リードスクリューに挿通され、前記スライダと前記軸方向で係合するナット部とを備え、前記スライダには、前記リードスクリューの軸方向に延在するガイド軸を挿通させた少なくとも一対の孔が形成され、前記孔の前記軸方向に直交する断面形状が互いに異なっており、前記軸方向において、前記一対のナット部は、互いに接近しかつ離間可能であり、前記一対のナット部のうち、一方のナット部は係合部を備え、前記一対のナット部のうち、他方のナット部には被係合部を備え、前記軸方向において、前記係合部と前記被係合部は空隙を介して対向し、前記他方のナット部が前記一方のナット部から離間したときに、前記被係合部と前記係合部とが互いに係合する、駆動装置である。
【0019】
このような駆動装置にあっては、一方の孔にガイド軸を嵌合させ、他方の孔に他のガイド軸を隙間を有する状態で挿通させることにより、ガイド軸の組立精度に起因する孔とのコジリ(擦過)を抑制することができる。たとえば、一方の孔の断面形状を正円とし、他方の孔の断面形状を水平方向に長い長円とすることにより、スライドの位置精度は正円の孔とガイド軸によって確保され、長円の孔とガイド軸によってスライドの上下方向への傾きが規制される。
【0020】
本発明のさらに他の特徴は、リードスクリューと、前記リードスクリューの軸方向に移動可能なスライダと、前記リードスクリューに挿通され、前記スライダと前記軸方向で係合するナット部とを備え、前記スライダは、前記軸方向に延在する脚部を備え、前記脚部の底面に、前記スライダが載置されたフレームの走行面に対して点接触または軸方向に添って線接触する摺動部を設けた駆動装置である。
【0021】
このような駆動装置にあっては、スライダが摺動部によってフレームの走行面に支持されるから、ガイド軸を省略するか数を減らすことができる。そして、摺動部がフレームの走行面に対して点接触または軸方向に添って線接触するから、走行面に対する摩擦抵抗が小さく、スライダを円滑に移動させることができる。ここで、「点接触」とは、摺動部の走行面と接触する部分の直径が5mm以下の場合をいう。また、「線接触」とは、走行面と接触する部分の幅が5mm以下の場合をいう。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、2つのナット部およびスプリングを簡単にスライダへ組み付けることができる等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態の駆動装置を示す斜視図である。
図2】第1実施形態の駆動装置の上面図である。
図3】第1実施形態の駆動装置の正面図である。
図4】第1実施形態の駆動装置の側断面図である。
図5】第1実施形態の駆動装置の側面図である。
図6】(A)はスライダにナットアッセンブリを装着する状態を示す(B)のA-A線断面図、(B)は(A)の正面図、(C)はスライダにナットアッセンブリを装着してリードスクリューを挿通させる直前の状態を示す断面図である。
図7】(A)は第1実施形態におけるスライダの斜視図、(B)はその後面図、(C)は変更例を示す後面図である。
図8】(A)は図7の変更例におけるスライダを示す後面図、(B)はその変更例、(C)は他の変更例である。
図9】(A)は第1実施形態におけるナットアッセンブリを示す斜視図、(B)はその上面図、(C)はその側面図、(D)はその下面図である。
図10】(A)は第1実施形態における第2ナット部を示す斜視図、(B)は第1ナット部を示す斜視図、(C)は第2ナット部を別の方向から見た斜視図である。
図11】(A)は本発明の第2実施例におけるスライダを示す後面図、(B)はその変更例、(C)は他の変更例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.第1実施形態
(1)全体構成
図1図8を参照して本発明の第1実施形態の駆動装置100の全体構成について説明する。なお、図1等には、方向を示すために直交するX軸、Y軸、およびZ軸の矢印を記載した。以下の説明においては、矢印の向く方向を正の方向とし、その反対方向を負の方向とする。
【0025】
図1には、本発明の第1実施形態の駆動装置100が示されている。駆動装置100は、図示しない被駆動部材をY軸方向に直線移動させる。駆動装置100は、骨格となるベースプレート101を備えている。ベースプレート101が駆動装置100を固定する対象に締結部材(ネジ、その他公知の締結手段)により固定される。ベースプレート101は、金属板により構成されている。ベースプレート101の材質は、加工が行い易く、また強度が確保できるのであれば特に限定されない。
【0026】
ベースプレート101におけるY軸方向正側の端部およびY軸方向不側の端部は、図1の上方(Z軸正方向)に折れ曲がった構造とされ、ベースプレート101と一体となった前フレーム101aと後フレーム101bが形成されている。前フレーム101aには、駆動軸であるリードスクリュー102の一端が軸受105により回転可能な状態で支持されている。リードスクリュー102は、外周に雄ねじ102aが形成された円柱状の部材である。リードスクリュー102は、後フレーム101bを回転可能な状態で貫通し、その先端は後述するモータ107の樹脂で構成されたモータフレーム110に軸受106を介して回転自在な状態で支持されている。
【0027】
また、前フレーム101aと後フレーム101bには、円柱状のガイド軸103,104が固定されている。ガイド軸103,104は、後述するスライダ120の動きをリードスクリュー102の軸方向に規制するガイドとして機能する。
【0028】
後フレーム101bには、モータ107が固定されている。モータ107は、クローポール型PMステッピングモータであるが、その形式は限定されない。モータ107は、プレート108に固定され、プレート108が後フレーム101bに溶接によって固定されている。なお、プレート108を後フレーム101bにボルトとナットで取り付けることもできる。モータ107のロータ109の軸中心には、リードスクリュー102が固定されている。この構造により、モータ107のロータ109が回転すると、リードスクリュー102が回転する。
【0029】
リードスクリュー102の雄ねじ102aの部分には、内側に雌ねじが形成された前ナット部220および後ナット部240(図6参照)を備えたナットアッセンブリ200が噛み合った状態で結合されている。リードスクリュー102と前ナット部220および後ナット部240は、通常のボルトとナットの関係と同様な状態で噛合っている。ナットアッセンブリ200の構成については後に詳細に説明する。
【0030】
ナットアッセンブリ200には、ナットアッセンブリ200と共にリードスクリューの軸方向に移動するスライダ120が係合している。図7はスライダの詳細を示す図である。スライダ120は、樹脂製であり、リードスクリューの軸方向で離間した脚部121,122を備えている。脚部121,122は、図1におけるY方向負側とY方向正側にそれぞれ一対ずつ形成され、脚部121には貫通孔120aが形成され、脚部122には貫通孔120bが形成されている。貫通孔120aの断面形状は正円とされ、貫通孔120bの断面形状はX軸方向に長い長円とされている。貫通孔120aにはガイド軸103が摺動可能な状態で嵌合し、貫通孔120bには、ガイド軸104がX軸方向に隙間を持った状態で摺動可能に貫通している。
【0031】
なお、図7(C)に示すように、貫通孔120a,120bに代えて、脚部121,122の側面に溝120cを形成することもできる。図7(C)には脚部122を示したが、脚部121にも溝120cが形成されている。同様に、図8(A)に示すように、脚部122(121)に断面長円状の貫通孔120bを形成することができ、図8(B)に示すように、部122(121)に断面正円状の貫通孔120aを形成することができる。さらに、図8(C)に示すように、脚部122(121)に断面菱形状の貫通孔120dを形成することができる。なお、図8(C)の構成を図8(A)や(B)の構成と組み合わせることも可能である。
【0032】
スライダ120の内側には、窪み123が形成され(図4参照)、窪み123にナットアッセンブリ200が納められている。ナットアッセンブリ200は、スライダ120に対してX軸方向から見て矩形であり、その上面がスライダ120に接触するか僅かな隙間を空けており、スライダ120に対して回転できない状態とされている。
【0033】
スライダ120には、樹脂製のカバー130が軸134により回転可能な状態で支持されている。つまり、カバー130は、スライダ120に対して、X軸方向から見て、軸134を支点として左右に揺動する状態でスライダ120に支持されている。この揺動の範囲は、僅かであるが、この揺動により、スライダ120に対するカバー130のY軸上における相対位置が変化する。つまり、平行移動ではないが、スライダ120に対してカバー130がY軸上で移動する。カバー130の内側には空間135が形成され、空間135を2分するように、スライダ120から上方(Z軸方向)に延在したコイルばね接触部124が位置している。
【0034】
コイルばね接触部124には、図4におけるY軸方向負側に突出する凸部125が設けられ、凸部125は、コイルばね126の内側に嵌め込まれている。凸部125をコイルばね126に嵌め込むことで、コイルばね接触部124に対するコイルばね126が位置決めされている。
【0035】
コイルばね126の先端はカバー130の前壁部131の内側に接触している。また、前壁部131のコイルばね126が接触する部分には凹部136が形成されている。凹部136にコイルばね126の先端が嵌め込まれることで、前壁部131に対してコイルばね126が位置決めされている。
【0036】
また、カバー130は後壁部132を有している。後壁部132は、前壁部131に対してY軸方向正側に離間した位置に設けられている。後壁部132と、スライダ120のコイルばね接触部124との間の隙間が被駆動部材(図示せず)を保持する保持部133となる。
【0037】
スライダ120は、上方向に突出する柱状のリミットスイッチ接触部127を備えている。リミットスイッチ接触部127がリミットスイッチ128に接触することで、スライダ120のY軸方向における基準位置が電気的に検出される。リミットスイッチ128は、後フレーム101bの上端からカバー130の方向に延在したリミットスイッチ取付台114に固定されている。
【0038】
リミットスイッチ128からの出力端子とモータ107に設けられた駆動信号端子が接続端子基板115に半田接続されている。接続端子基板115に外部からのモータ駆動信号とリミットスイッチ128からの検出信号を伝送するコネクタが接続される。
【0039】
(2)ナットアッセンブリ
図9および図10はナットアッセンブリ200の詳細を示す図である。ナットアッセンブリ200は、前ナット部(ナット部)220と後ナット部(ナット部)240を備え、それら前ナット部220および後ナット部240の間にコイルばね(弾性部材)250を圧縮した状態で配置して構成されている。
【0040】
図10(B)に前ナット部220を示す。前ナット部220はスライダ120と同じ材料の樹脂(例えばPOM)で構成され、図中符号221はナット部本体である。なお、スライダ120および前ナット部220の一方をPPSで構成し、他方をPBTで構成することができる。また、スライダ120および前ナット部220の一方をPEEKで構成し、他方をPPSで構成することもできる。ナット部本体221は矩形状をなし、その4つの角部にはY軸方向に突出する腕部222が形成されている。
【0041】
腕部222の端面は、後述する後ナット部240の腕部242の端面と当接することでストッパ部として機能する。4つの腕部222の内径は、コイルばね250の外径よりも僅かに大きく設定されている。また、ナット部本体221の一辺には、Y軸方向に突出するガイド(ガイド部)223が形成されている。ガイド223には、その先端の手前まで延在するスリット223aが形成され、スリット223aの先の部分は、傾斜した係合部223bとされている。
【0042】
ナット部本体221の中央部には、Y軸方向に貫通する雌ねじ224が形成されている。また、ナット部本体221の一面にはZ軸方向正側に突出する一対の凸部225が形成されている。一方、スライダ120には、凸部225が嵌合する凹部129が形成されている(図6参照)。凸部225の間には溝226が形成されている。例えば、図6に示されるようにナットアッセンブリ200が配置される場合、溝226には、図6におけるY軸負側を向く面が溝226に直交し、Y軸方向正側に向けて下り勾配の傾斜面とされた爪部(係合部)227が形成されている。
【0043】
次に、図10(A)を参照して後ナット部240について説明する。後ナット部240は、前ナット部220と同じ樹脂(例えばPOM)製で同じ形状のものである。なお、スライダ120および後ナット部240の一方をPPSで構成し、他方をPBTで構成することができる。また、スライダ120および後ナット部240の一方をPEEKで構成し、他方をPPSで構成することもできる。図中符号241はナット部本体である。ナット部本体241は矩形状をなし、その4つの角部にはY軸負の方向に突出する腕部242が形成されている。4つの腕部242の内径は、コイルばね250の外径よりも僅かに大きく設定されている。また、ナット部本体241の一辺には、Y軸方向負側に突出するガイド243が形成されている。ガイド243には、その先端の手前まで延在するスリット243aが形成され、スリット243aの先の部分は、傾斜した係合部243bとされている。
【0044】
ナット部本体241の中央部には、Y軸方向に貫通する雌ねじ244が形成されている。また、ナット部本体241の一面にはZ軸方向負側に突出する一対の凸部245が形成され、凸部245の間には溝246が形成されている。例えば、図6に示されるようにナットアッセンブリ200が配置される場合、溝246には、Y軸方向正側を向く面が溝246に直交し、Y軸方向負側に向けて傾斜面とされた爪部247が形成されている。
【0045】
(3)ナットアッセンブリの組立および組付方法
前ナット部220と後ナット部240とを組み付ける場合には、両者の間にコイルばね250を挟んで、後ナット部240のガイド243を前ナット部220の溝226に嵌合すると同時に、前ナット部220のガイド223を後ナット部240の溝246に嵌合する。この状態で両ナット部220,240を近づけると、後ナット部240のガイド243の係合部243bが前ナット部220の爪部227を乗り越えて係合し、同時に、前ナット部220のガイド223の係合部223bが後ナット部240の爪部247を乗り越えて係合し、前ナット部220、コイルばね250、および後ナット部240は一体となる。この状態で、コイルばね250は、両ナット部220,240によって若干圧縮されている。
【0046】
以上のようにして組み立てられたナットアッセンブリ200(図9(A)参照)をスライダ120の窪み123に配置し、凸部225をスライダ120の凹部129に嵌合させる(図6(A)参照)。そして、コイルばね250の付勢力に抗して両ナット部220,240を互いに接近させ(図6(C)参照)、前ナット部220の腕部222と後ナット部240の腕部242とを当接させる。その状態で、後ナット部240の雌ねじ244と前ナット部220の雌ねじ224にリードスクリュー102を挿通させる。
【0047】
次いで、両ナット部220,240に加えていた力を除くと、コイルばね250の反発力により、両ナット部220,240はY軸の逆方向に付勢され、前ナット部220の雌ねじ224がリードスクリュー102の雄ねじ102aに押し付けられ、後ナット部240の雌ねじ244がリードスクリュー102の雄ねじ102aに押し付けられる。これにより、リードスクリュー102に対する両ナット部220,240のバックラッシュが解消される。
【0048】
(4)被駆動部材の保持
図4に示されるように、保持部133に図示しない被駆動部材が保持されていない状態において、保持部133のY軸方向の隙間寸法は、被駆動部材のY軸方向の寸法よりも小さい。また、この状態において、コイルばね126は圧縮されており、この圧縮により発生する反発力により、図4,5の視点から見て、カバー130は反時計回りの方向に付勢されている。
【0049】
保持部133に被駆動部材が上方(Z軸正の方向)から押し込まれると、コイルばね接触部124と後壁部132との間の隙間(保持部133のY軸方向の隙間)が押し拡げられ、両者が離れる方向に力が働く。この結果、カバー130は、軸134を中心に図4における時計回り方向に僅かに回転する。この結果、前壁部131とコイルばね接触部124とがY軸方向で近づき、コイルばね126がY軸方向で更に圧縮される。圧縮されたコイルばね126は、前壁部131とコイルばね接触部124とをY軸方向で離そうとする反発力を発生し、それにより、コイルばね接触部124と後壁部132との間を狭めようとする付勢力が生じ、コイルばね接触部124と後壁部132との間に被駆動部材が挟まれる。つまり、コイルばね126の反発力により、コイルばね接触部124と後壁部132との間に被駆動部材が挟まれる。
【0050】
(5)動作
モータ107に駆動信号を供給し、モータ107を回転させると、リードスクリュー102が回転する。ナットアッセンブリ200は、スライダ120に対して回転できないので、リードスクリュー102が回転すると、ねじの作用により、リードスクリュー102に対してナットアッセンブリ200をY軸方向に動かそうとする駆動力が発生する。この結果、ナットアッセンブリ200は、リードスクリュー102の軸の延在方向に沿って、リードスクリュー102に対して相対的に移動する。
【0051】
たとえば、リードスクリュー102が回転することで、ナットアッセンブリ200がリードスクリュー102に対して、Y軸方向正側(図4の右方向)に動くとする。この場合、前ナット部220の雌ねじ224がリードスクリュー102の雄ねじ102aに押されてY軸方向正側へ移動しようとする。そして、前ナット部220の凸部225がスライダ120の凹部129に嵌合しているので、前ナット部220と共にスライダ120はY軸方向正側へ移動する。
【0052】
一方、リードスクリュー102が回転することで、ナットアッセンブリ200がリードスクリュー102に対して、Y軸方向負側(図4の左の方向)に動くとする。この場合、コイルばね250の反発力によって後ナット部240がリードスクリュー102に対してY軸方向正側に押し付けられているので、後ナット部240の雌ねじ244はリードスクリュー102の雄ねじ102aに押されてY軸方向負側へ移動しようとする。その移動がコイルばね250を介して前ナット部220に伝わり、前ナット部220と共にスライダ120はY軸方向負側へ移動する。
【0053】
ここで、コイルばね250の反発力は、スライダ120を移動させる際の抵抗よりも充分大きく設定されている。このため、後ナット部240がY軸方向負側へ移動する際に、コイルばね250はさらに圧縮されることなく後ナット部240の移動をそのまま前ナット部220に伝える。こうして、前ナット部220および後ナット部240の雌ねじ224,244とリードスクリュー102の雄ねじ102aの間にバックラッシュのない状態を保ったままスライダ120の移動が行われ、リードスクリュー102の回転によるスライダ120の軸方向での移動制御の精度が確保されている。
【0054】
(6)効果
上記構成の駆動装置100では、ナットアッセンブリ200に前ナット部220、後ナット部240、およびコイルばね250を備えているので、ナットアッセンブリ200をスライダ120に係合させ、後ナット部240を前ナット部220に接近させてコイルばね250を圧縮し、その状態でリードスクリュー102を前ナット部220および後ナット部240に挿通させることができる。これにより、コイルばね250が弾性復帰することで前ナット部220および後ナット部240とリードスクリュー102とのバックラッシュが解消される。このように、前ナット部220、後ナット部240、およびコイルばね250をスライダ120に組み付け、その際にコイルばね250に予荷重を付ける一連の作業は、治具や特別な工具を用いることなく手作業にて簡単に行うことができるので、作業は簡易で作業性が良い。
【0055】
特に、上記第1実施形態では、前ナット部220にガイド223と溝226を設け、後ナット部240にガイド243と溝246を設けているので、溝226,246にガイド223,243を嵌合させることでナットアッセンブリ200が分解し難く、一体のものとしてハンドリングすることができ、作業性がさらに高められる。
【0056】
また、上記第1実施形態では、前ナット部220および後ナット部240に、係合部223b,243bと爪部227,247を設けているので、両者を係合させることでコイルばね250を圧縮した状態で前ナット部220および後ナット部240を保持することができる。
【0057】
さらに、上記実施形態では、前ナット部220および後ナット部240に、軸方向に突出する腕部222,242を設け、腕部222,242の端面がストッパ部として機能し、両者の所定以上の接近を阻止しているので、作業者は、後ナット部240を前ナット部220で止まるまで移動させることにより、コイルばね250を限界まで圧縮することなく所定の予荷重をコイルばね250に与えることができる。
【0058】
加えて、上記実施形態では、図7に示したように、脚部121,122の貫通孔120aの断面形状は正円とされてガイド軸103が摺動可能な状態で貫通し、脚部121,122の貫通孔120bの断面形状はX軸方向に長い長円とされてガイド軸104が摺動可能な状態で貫通しているから、スライド120のX軸方向の位置精度は貫通孔120aとガイド軸103によって確保され、貫通孔120bとガイド軸104によってスライド120のZ軸方向正側への傾きが規制される。さらに、貫通孔120a,120bが両方とも断面正円の場合と比較して、ガイド軸103,104の組立精度に起因するガイド軸103,104の貫通孔120a,120bとのコジリ(擦過)を抑制することができる。
【0059】
(7)変更例
i)ガイド軸103,104の代わりに、ベースプレート101に溝やレール、その他公知の構造を有するガイド部を設け、それに沿ってスライダ120が動くようにしてもよい。なお、そのような構成の具体例を以下の第2実施形態に示す。また、スライダ120の動きを規制するガイド軸やガイド部は、1つでもよく、あるいは3つ以上であってもよい。
【0060】
ii)上記実施形態では、図4に示したように、スライダ120のコイルばね接触部124とカバー130の後壁部132との間に被駆動部材が弾性的に挟まれるように構成しているが、被駆動部材の支持構造はそのような構成に限定されず任意である。たとえば、スライダ120のY軸方向負側の部分に、Y軸方向に互いに離間した一対の壁部を設け、壁部の向かい合った面をZ軸方向正側へ向けて拡開する傾斜面にしてそこに被駆動部材を挿入するように構成することができる。
【0061】
2.第2実施形態
図11(A)は本発明の第2実施形態を示す図である。なお、以下の説明において前記第1実施形態と同等の部材には同符号を付してその説明を省略する。第2実施形態は、スライダ120を変更したものであり、他の構成要素は前記第1実施形態のものと同一である。
【0062】
スライダ120のほぼ中央部には貫通孔102dが形成され、貫通孔102dにはガイド軸(図示略)が挿通されている。後側の脚部122の下端部は半球状に形成され、その下端が摺動部122aとされている。なお、図示は省略しているが、前側の脚部121の下端部も半球状に形成され、その下端が摺動部とされている。
【0063】
脚部121,122の摺動部122aは、ベースプレート101に載置され、ベースプレート101の上面を走行面として摺動する。摺動部122aは、球体の表面の1点であるから、走行面に対して点接触する。摺動部122aの耐摩耗性を向上させるために、摺動部122aは、PPSなどの硬さの高い樹脂で構成される。また、ベースプレート101の走行面は、金属表面を鏡面仕上げするなどして摩擦抵抗を低減させることが望ましい。
【0064】
上記構成のスライダ120を用いた駆動装置では、スライダ120が摺動部122aによってベースプレート101の走行面に支持されるから、ガイド軸を1本に減らすことができる。そして、摺動部122aが走行面に対して点接触するから、走行面に対する摩擦抵抗が小さく、スライダ120を円滑に移動させることができる。
【0065】
図11(B)は上記実施形態の変更例を示すものである。この図に示すスライダ120は、脚部122の下端部を断面三角形状としたものである。これにより、摺動部122bは、Y軸方向に添う線状となり、走行面に対して線接触する。なお、前側の脚部121も同様に構成されている。このようなスライダ120を用いた駆動装置においても、前記第2実施形態と同等の作用、効果を奏する。なお、脚部122の下端部を三角錐状や四角錐状、あるいは円錐状として走行面に対して点接触させることもできる。
【0066】
図11(C)はさらに他の変更例を示すものである。この図に示すスライダ120は、脚部122の下端部を断面が2つの円弧を合わせた形状となるようにしたものである。これにより、摺動部122cは、Y軸方向に添う線状となり、走行面に対して線接触する。なお、前側の脚部121も同様に構成されている。このようなスライダ120を用いた駆動装置においても、前記第2実施形態と同等の作用、効果を奏するのは勿論のこと、摺動部122cのシャープエッジがより長期に亘って維持されるという利点もある。
【0067】
なお、特許請求の範囲には、駆動装置に関する発明が記載 されているが、本明細書には、以下の発明も記載されているので、その発明を以下に付記する。
[付記]
【0068】
<発明1>
リードスクリューに挿通され、前記リードスクリューの軸方向に移動可能なスライダと係合するナットアッセンブリであって、
前記軸方向に互いに離間した一対のナット部と、
前記ナット部の間に配置された弾性部材と、
を備えたナットアッセンブリ。
【0069】
<発明2>
前記弾性部材は前記ナット部によって圧縮されている発明1に記載のナットアッセンブリ。
【0070】
<発明3>
前記ナット部に、前記ナット部同士が互いに接近および離間が可能なように保持するガイド部を設けた発明1または2に記載のナットアッセンブリ。
【0071】
<発明4>
前記ナット部に、前記ナット部同士が所定以上離間することを阻止する係合部を設けた発明1乃至3のいずれかに記載のナットアッセンブリ。
【0072】
<発明5>
前記ナット部に、前記ナット部同士が所定以上接近することを阻止するストッパ部を設けた発明1乃至4のいずれかに記載のナットアッセンブリ。
【0073】
<発明6>
前記ナット部のいずれかの前記スライダ側に、ナット側係合部を設け、前記スライダに、前記ナット側係合部と係合するスライダ側係合部を設けた発明1乃至5のいずれかに記載のナットアッセンブリ。
【0074】
<発明7>
前記ナット部のいずれかに、前記スライダ側へ突出する凸部を設け、前記スライダに、前記凸部が嵌合する凹部を設けた発明1乃至6のいずれかに記載のナットアッセンブリ。
【0075】
<発明8>
前記スライダと前記ナット部は、同じ樹脂素材で成形されている発明1乃至7のいずれかに記載のナットアッセンブリ。
【0076】
<発明9>
前記樹脂素材はポリアセタールである発明8に記載のナットアッセンブリ。
【0077】
<発明10>
前記スライダと前記ナット部は、異なる樹脂素材で成形されている発明1乃至7のいずれかに記載のナットアッセンブリ。
【0078】
<発明11>
前記スライダはポリアセタールで構成され、前記ナット部はポリフェニレンスルファイドで構成されている発明10に記載のナットアッセンブリ。
【0079】
<発明12>
前記一対のナット部は、同じ形状である発明1乃至11のいずれかに記載のナットアッセンブリ。
【0080】
<発明13>
前記スライダには、前記リードスクリューの軸方向に延在するガイド軸を挿通させた少なくとも一対の孔が形成され、前記孔の前記軸方向に直交する断面形状が互いに異なっている発明1乃至12のいずれかに記載のナットアッセンブリ。
【0081】
<発明14>
一方の前記孔の断面形状は正円であり、他方の前記孔の断面形状は水平方向に長い長円である発明13に記載のナットアッセンブリ。
【0082】
<発明15>
前記スライダは、軸方向に延在するガイド軸を貫通させた脚部を有する発明1乃至14のいずれかに記載のナットアッセンブリ。
【0083】
<発明16>
前記脚部の底面に、前記スライダが載置されたフレームの走行面に対して点接触または軸方向に添って線接触する摺動部を設けた発明15に記載のナットアッセンブリ。
【0084】
<発明17>
リードスクリューと、
前記リードスクリューの軸方向に移動可能なスライダと、
前記リードスクリューに挿通され、前記スライダと係合するナットアッセンブリと、
を備え、
前記ナットアッセンブリは、
前記軸方向に互いに離間した一対のナット部と、
前記ナット部の間に配置された弾性部材と、
を備えた駆動装置。
【0085】
<発明18>
前記弾性部材は前記ナット部によって圧縮されている発明17に記載の駆動装置。
【0086】
<発明19>
前記ナット部に、前記ナット部同士が互いに接近および離間が可能なように保持するガイド部を設けた発明17または18に記載の駆動装置。
【0087】
<発明20>
前記ナット部に、前記ナット部同士が所定以上離間することを阻止する係合部を設けた発明17乃至19のいずれかに記載の駆動装置。
【0088】
<発明21>
前記ナット部に、前記ナット部同士が所定以上接近することを阻止するストッパ部を設けた発明17乃至20のいずれかに記載の駆動装置。
【0089】
<発明22>
前記ナット部のいずれかの前記スライダ側に、ナット側係合部を設け、前記スライダに、前記ナット側係合部と係合するスライダ側係合部を設けた発明17乃至21のいずれかに記載の駆動装置。
【0090】
<発明23>
前記ナット部のいずれかに、前記スライダ側へ突出する凸部を設け、前記スライダに、前記凸部が嵌合する凹部を設けた発明17乃至22のいずれかに記載の駆動装置。
【0091】
<発明24>
前記スライダと前記ナット部は、同じ樹脂素材で成形されている発明17乃至23のいずれかに記載の駆動装置。
【0092】
<発明25>
前記樹脂素材はポリアセタールである発明24に記載の駆動装置。
【0093】
<発明26>
前記スライダと前記ナット部は、異なる樹脂素材で成形されている発明17乃至23のいずれかに記載の駆動装置。
【0094】
<発明27>
前記スライダはポリアセタールで構成され、前記ナット部はポリフェニレンスルファイドで構成されている発明26に記載の駆動装置。
【0095】
<発明28>
前記一対のナット部は、同じ形状である発明17乃至27のいずれかに記載の駆動装置。
【0096】
<発明29>
前記スライダには、前記リードスクリューの軸方向に延在するガイド軸を挿通させた少なくとも一対の孔が形成され、前記孔の前記軸方向に直交する断面形状が互いに異なっている発明17乃至28のいずれかに記載の駆動装置。
【0097】
<発明30>
一方の前記孔の断面形状は正円であり、他方の前記孔の断面形状は水平方向に長い長円である発明29に記載の駆動装置。
【0098】
<発明31>
前記スライダは、軸方向に延在するガイド軸を貫通させた脚部を有する発明17乃至30のいずれかに記載の駆動装置。
【0099】
<発明32>
前記脚部の底面に、前記スライダが載置されたフレームの走行面に対して点接触または軸方向に添って線接触する摺動部を設けた発明31に記載の駆動装置。
【0100】
<発明33>
リードスクリューと、
前記リードスクリューの軸方向に移動可能なスライダと、
前記リードスクリューに挿通され、前記スライダと係合するナット部と、
を備え、
前記スライダには、前記リードスクリューの軸方向に延在するガイド軸を挿通させた少なくとも一対の孔が形成され、
前記孔の前記軸方向に直交する断面形状が互いに異なっている駆動装置。
【0101】
<発明34>
一方の前記孔の断面形状は正円であり、他方の前記孔の断面形状は水平方向に長い長円である発明33に記載の駆動装置。
【0102】
<発明35>
前記軸方向に互いに離間した一対の前記ナット部と前記ナット部の間に配置された弾性部材とによりナットアッセンブリが構成されている発明33または34に記載の駆動装置。
【0103】
<発明36>
前記弾性部材は前記ナット部によって圧縮されている発明35に記載の駆動装置。
【0104】
<発明37>
前記ナット部に、前記ナット部同士が互いに接近および離間が可能なように保持するガイド部を設けた発明35または36に記載の駆動装置。
【0105】
<発明38>
前記ナット部に、所定以上の離間を阻止する係合部を設けた発明35乃至37のいずれかに記載の駆動装置。
【0106】
<発明39>
前記ナット部に、所定以上の接近を阻止するストッパ部を設けた発明35乃至38のいずれかに記載の駆動装置。
【0107】
<発明40>
前記ナット部のいずれかの前記スライダ側に、ナット側係合部を設け、前記スライダに、前記ナット側係合部と係合するスライダ側係合部を設けた発明33乃至39のいずれかに記載の駆動装置。
【0108】
<発明41>
前記ナット部のいずれかに、前記スライダ側へ突出する凸部を設け、前記スライダに、前記凸部が嵌合する凹部を設けた発明33乃至40のいずれかに記載の駆動装置。
【0109】
<発明42>
前記スライダと前記ナット部は、同じ樹脂素材で成形されている発明33乃至41のいずれかに記載の駆動装置。
【0110】
<発明43>
前記樹脂素材はポリアセタールである発明42に記載の駆動装置。
【0111】
<発明44>
前記スライダと前記ナット部は、異なる樹脂素材で成形されている発明33乃至41のいずれかに記載の駆動装置。
【0112】
<発明45>
前記スライダはポリアセタールで構成され、前記ナット部はポリフェニレンスルファイドで構成されている発明44に記載の駆動装置。
【0113】
<発明46>
前記一対のナット部は、同じ形状である発明33乃至45のいずれかに記載の駆動装置。
【0114】
<発明47>
前記少なくとも一対の孔は、前記スライダに設けた脚部に形成された発明33乃至46のいずれかに記載の駆動装置。
【0115】
<発明48>
前記脚部の底面に、前記スライダが載置されたフレームの走行面に対して点接触または軸方向に添って線接触する摺動部を設けた発明33乃至47のいずれかに記載の動装置。
【0116】
<発明49>
リードスクリューと、
前記リードスクリューの軸方向に移動可能なスライダと、
前記リードスクリューに挿通され、前記スライダと係合するナット部と、
を備え、
前記スライダは、軸方向に延在するガイド軸を貫通させた脚部を有し、
前記脚部の底面に、前記スライダが載置されたフレームの走行面に対して点接触または軸方向に添って線接触する摺動部を設けた駆動装置。
【0117】
<発明50>
前記軸方向に互いに離間した一対の前記ナット部と前記ナット部の間に配置された弾性部材とによりナットアッセンブリが構成されている発明49に記載の駆動装置。
【0118】
<発明51>
前記弾性部材は前記ナット部によって圧縮されている発明50に記載の駆動装置。
【0119】
<発明52>
前記ナット部に、前記ナット部同士が互いに接近および離間が可能なように保持するガイド部を設けた発明50または51に記載の駆動装置。
【0120】
<発明53>
前記ナット部に、所定以上の離間を阻止する係合部を設けた発明50乃至52のいずれかに記載の駆動装置。
【0121】
<発明54>
前記ナット部に、所定以上の接近を阻止するストッパ部を設けた発明50乃至53のいずれかに記載の駆動装置。
【0122】
<発明55>
前記ナット部のいずれかの前記スライダ側に、ナット側係合部を設け、前記スライダ側に、前記ナット側係合部と係合するスライダ側係合部を設けた発明50乃至54のいずれかに記載の駆動装置。
【0123】
<発明56>
前記ナット部のいずれかに、前記スライダ側へ突出する凸部を設け、前記スライダに、前記凸部が嵌合する凹部を設けた発明50乃至55のいずれかに記載の駆動装置。
【0124】
<発明57>
前記スライダと前記ナット部は、同じ樹脂素材で成形されている発明49乃至56のいずれかに記載の駆動装置。
【0125】
<発明58>
前記樹脂素材はポリアセタールである発明57に記載の駆動装置。
【0126】
<発明59>
前記スライダと前記ナット部は、異なる樹脂素材で成形されている発明49乃至56のいずれかに記載の駆動装置。
【0127】
<発明60>
前記スライダはポリアセタールで構成され、前記ナット部はポリフェニレンスルファイドで構成されている発明59に記載の駆動装置。
【0128】
<発明61>
前記一対のナット部は、同じ形状である発明49乃至60のいずれかに記載の駆動装置。
【0129】
<発明62>
前記スライダは、前記リードスクリューの軸方向に延在するガイド軸を挿通させた少なくとも一対の孔を備え、前記孔の前記軸方向に直交する断面形状が互いに異なっている発明49乃至61のいずれかに記載の駆動装置。
【0130】
<発明63>
一方の前記孔の断面形状は正円であり、他方の前記孔の断面形状は水平方向に長い長円である発明62に記載の駆動装置。
【符号の説明】
【0131】
100…駆動装置、101…ベースプレート101a…前フレーム、101b…後フレーム、102…リードスクリュー、102a…雄ねじ、103…ガイド軸、104…ガイド軸、105…軸受、106…軸受、107…モータ、108…プレート、109…ロータ、110…モータフレーム、111…ナット、112…ナット、113…コイルばね、114…リミットスイッチ取付台、120…スライダ、120a,120b,120d…貫通孔、120c…溝、121…脚部、122…脚部、122a,122b,122c…摺動部、123…窪み、124…コイルばね接触部、125…凸部、126…コイルばね、127…リミットスイッチ接触部、128…リミットスイッチ、129…凹部、130…カバー、131…前壁部、132…後壁部、133…保持部、134…軸、135…空間、136…凹部、200…ナットアッセンブリ、220…前ナット部(ナット部)、221…ナット部本体、222…腕部、223…ガイド(ガイド部)、223a…スリット、223b…係合部、224…雌ねじ、225…凸部、226…溝、227…爪部(係合部)、240…後ナット部(ナット部)、241…ナット部本体、242…腕部、243…ガイド、243a…スリット、243b…係合部、244…雌ねじ、245…凸部、246…溝、247…爪部(係合部)、250…コイルばね(弾性部材)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11