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特許7545857タイヤ加硫金型及びタイヤ加硫金型の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】タイヤ加硫金型及びタイヤ加硫金型の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20240829BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20240829BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020170768
(22)【出願日】2020-10-08
(65)【公開番号】P2022062625
(43)【公開日】2022-04-20
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中林 隆之
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-263553(JP,A)
【文献】特開2013-173305(JP,A)
【文献】特開2014-162099(JP,A)
【文献】特開2005-225016(JP,A)
【文献】特開2017-154281(JP,A)
【文献】特開2005-193577(JP,A)
【文献】特開2014-213731(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061052(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 35/00-35/18
B29C 39/26-39/36
B29C 41/38-41/44
B29C 43/36-43/42
B29C 43/50
B29C 45/26-45/44
B29C 45/64-45/68
B29C 45/73
B29C 49/48-49/56
B29C 49/70
B29C 51/30-51/40
B29C 51/44
B29D 30/00-30/72
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に沿って延びる主溝と、前記主溝に面した陸部の側壁にタイヤ周方向に間隔をあけて設けられた複数の穴部とを備える空気入りタイヤを加硫成型するタイヤ加硫金型において、
前記主溝を形成する突条と、前記複数の穴部を形成する穴形成部材とを備え、
前記穴形成部材は、板部と前記板部の一方面から突出する複数の凸部とを備え、前記複数の凸部が前記突条の側面より突出するように前記板部が前記突条の側面に固定されているタイヤ加硫金型。
【請求項2】
前記穴形成部材は、前記板部の他方面から突出し、先端ほど断面形状が広がった突起を備える請求項1に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項3】
前記板部の一方面が、前記突条の側面と面一に、又は前記突条の側面より突出するように、前記板部が前記突条に固定されている請求項1又は2に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項4】
前記穴形成部材は、前記突条より耐摩耗性の高い材料で形成されている請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項5】
タイヤ周方向に沿って延びる主溝と、前記主溝に面した陸部の側壁にタイヤ周方向に間隔をあけて設けられた複数の穴部とを備える空気入りタイヤを加硫成型するタイヤ加硫金型において、
前記主溝を形成する突条と、前記複数の穴部を形成する穴形成部材とを備え、
前記穴形成部材は、板部と前記板部の一方面から突出する複数の凸部とを備え、前記複数の凸部が前記突条の側面より突出するように前記板部が前記突条に固定されているタイヤ加硫金型であって、
前記板部は、前記突条の幅方向全体を覆うように突条に固定されているタイヤ加硫金型。
【請求項6】
タイヤ周方向に沿って延びる主溝と、前記主溝に面した陸部の側壁にタイヤ周方向に間隔をあけて設けられた複数の穴部とを備える空気入りタイヤを加硫成型するタイヤ加硫金型の製造方法において、
前記タイヤ加硫金型は、前記主溝を形成する突条と、前記複数の穴部を形成する穴形成部材とを備え、
板部と前記板部の一方面から突出する複数の凸部とを備える穴形成部材を積層造形法により形成する第1工程と、
前記複数の凸部が前記突条の側面より突出するように前記板部を前記突条の側面に固定する第2工程と、を備えるタイヤ加硫金型の製造方法。
【請求項7】
前記第2工程において、前記板部の一方面が、前記突条の側面と面一に、又は前記突条の側面より突出するように、前記板部を前記突条に固定する請求項6に記載のタイヤ加硫金型の製造方法。
【請求項8】
前記第2工程が、前記突条に前記板部を鋳込む工程を含む請求項6又は7に記載のタイヤ加硫金型の製造方法。
【請求項9】
前記第1工程は、前記凸部の少なくとも1つに前記凸部の先端から突出する突片を形成する工程を含み、
前記第2工程後に前記突片を除去する第3工程を備える請求項8に記載のタイヤ加硫金型の製造方法。
【請求項10】
前記第1工程が、前記板部の他方面から突出し、先端ほど断面形状が広がった突起を積層造形法により形成する工程を含む請求項8又は9に記載のタイヤ加硫金型の製造方法。
【請求項11】
前記第2工程が、前記突条の側面に凹部を形成する工程と、前記板部を前記凹部に締まり嵌めによって嵌合する工程と、を含む請求項6又は7に記載のタイヤ加硫金型の製造方法。
【請求項12】
前記第2工程が、前記突条の側面に凹部を形成する工程と、耐熱ボンドによって前記板部を前記凹部に固定する工程と、を含む請求項6又は7に記載のタイヤ加硫金型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ加硫金型及びタイヤ加硫金型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ周方向に延びる主溝をトレッド部に設けた空気入りタイヤでは、主溝に起因する気柱管共鳴音によって走行中にタイヤと路面との間からパターンノイズが発生することがある。気柱管共鳴音を減らすためには、接地された主溝の空間内を通過する空気の流速を小さくすることが効果的である。
【0003】
そこで、主溝に面した陸部の側壁にタイヤ周方向に沿って複数の穴部を設け、主溝に面した陸部の側壁と空気との摩擦抵抗を大きくすることで、主溝内を通過する空気の流速を小さくして発生する気柱管共鳴音を抑えることが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
このような穴部を主溝に面した陸部の側壁に形成するために、タイヤ加硫金型には、主溝を形成する突条の側面より凸部が突出している。
【0005】
しかしながら、突条の側面より突出する凸部は、突条に比べて突出量が非常に小さいため、ショットブラスト等によってタイヤ加硫金型を洗浄すると摩滅しやすく、金型寿命が短い。また、凸部は、通常、鋳造法によって形成した突条に切削加工を施すことで形成するため、切削工具によって凸部の形状が制限されることに伴って凸部によって形成される穴部の形状も制限されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-315711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、タイヤ周方向に沿って延びる主溝に面した陸部の側壁にタイヤ周方向に沿って複数の穴部を設けた空気入りタイヤを加硫成型するタイヤ加硫金型において、金型の長寿命化を図りつつ所望形状の穴部を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のタイヤ加硫金型は、タイヤ周方向に沿って延びる主溝と、前記主溝に面した陸部の側壁にタイヤ周方向に間隔をあけて設けられた複数の穴部とを備える空気入りタイヤを加硫成型するタイヤ加硫金型において、前記主溝を形成する突条と、前記複数の穴部を形成する穴形成部材とを備え、前記穴形成部材は、板部と前記板部の一方面から突出する複数の凸部とを備え、前記複数の凸部が前記突条の側面より突出するように前記板部が前記突条の側面に固定されているものである。
【0009】
また、本発明のタイヤ加硫金型の製造方法は、タイヤ周方向に沿って延びる主溝と、前記主溝に面した陸部の側壁にタイヤ周方向に間隔をあけて設けられた複数の穴部とを備える空気入りタイヤを加硫成型するタイヤ加硫金型の製造方法において、前記タイヤ加硫金型は、前記主溝を形成する突条と、前記複数の穴部を形成する穴形成部材とを備え、板部と前記板部の一方面から突出する複数の凸部とを備える穴形成部材を積層造形法により形成する第1工程と、前記複数の凸部が前記突条の側面より突出するように前記板部を前記突条の側面に固定する第2工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
上記のタイヤ加硫金型及びその製造方法では、金型の長寿命化を図りつつ所望形状の穴部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ加硫金型で成型される空気入りタイヤのトレッドパターンの展開平面図
図2図1に示す空気入りタイヤの陸部の斜視図
図3図2のA-A断面図
図4】本発明の一実施形態に係るタイヤ加硫金型の断面図
図5】本発明の一実施形態に係るタイヤ加硫金型の要部拡大斜視図
図6図4の要部拡大断面図
図7】(a)は穴形成部材の側面図、(b)は穴形成部材の平面図
図8図4に示すタイヤ加硫金型の製造方法を説明する図であって、(a)は穴形成部材を固定した石膏鋳型の要部拡大断面図、(b)はタイヤ加硫金型の要部拡大断面図
図9】本発明の変更例に係るタイヤ加硫金型の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図4は、空気入りタイヤ(以下、単にタイヤという)Tを加硫成型するために用いられる一実施形態に係るタイヤ加硫金型(以下、単に加硫金型という)10を示した図である。
【0013】
ここで、タイヤTは、接地面をなすトレッド1と、トレッド1の幅方向Y両端からタイヤ径方向内側に延びる一対のサイドウォール2及びビード3とを備えて構成されている。
【0014】
トレッド1の表面は、図1に示すように、タイヤ周方向Xにストレート状に延びる複数(図1では3つ)の主溝4によって複数の陸部5に区画されている。陸部5には、主溝4に交差する複数の横溝6及びサイプ7が、タイヤ周方向Xに間隔をあけて設けられている。
【0015】
図2及び図3に示すように、主溝4に面する陸部5の側壁5aには、タイヤ周方向Xに間隔をあけて凹形状の穴部8が複数設けられている。穴部8は、主溝4に開口する横溝6及びサイプ7の開口端と重ならないように当該開口端よりタイヤ周方向Xに離れた位置に設けられている。
【0016】
なお、図2に例示するタイヤTでは、タイヤ周方向Xに比べて主溝4の深さ方向Zに長い長穴形状の穴部8が、主溝4の深さ方向Zの同じ位置に配置されているが、穴部8の形状(主溝4に開口する部分の形状)や穴部8を側壁5aに設ける主溝4の深さ方向Zの位置は限定されない。例えば、穴部8の形状を円形に設けたり、形状の異なる複数種類の穴部8を側壁5aに設けたり、主溝4の深さ方向Zに穴部8を設ける位置を変化させてもよい。また、複数の主溝4に面する全ての陸部5の側壁5aに穴部8を設けても良く、タイヤ幅方向Yの外側に位置する主溝4に面する陸部5の側壁5aのみに穴部8を設けるなど、一部の主溝4に面する陸部5の側壁5aのみに穴部8を設けてもよい。
【0017】
次に、本実施形態の加硫金型10について説明する。加硫金型10は、グリーンタイヤ(生タイヤ)を上記したタイヤTのような形状に加硫成形する金型であり、コンテナを介して加硫機に取り付けられ、タイヤ加硫装置を構成するものである。
【0018】
加硫金型10は、トレッド1の外面を成型するセクタ12と、サイドウォール2の外面を成型する上下一対のサイドウォールモールド14と、ビード3の外面を成型する上下一対のビードモールド16を備え、空気入りタイヤの成形空間であるキャビティ18を形成する。
【0019】
セクタ12は、アルミニウムやアルミニウム合金や鉄などの金属材料からなり、タイヤTのトレッド1を形成する金型である。セクタ12は、タイヤ周方向に複数(例えば、7個)に分割され、それぞれがタイヤ放射方向(タイヤ径方向R)に拡縮変位可能に設けられており、各セクタ12が型閉め位置に配置した型閉め状態では互いに寄り集まって環状をなしている。セクタ12は、図4及び図5に示すように、トレッド1に主溝4を成型するための突条20と、突条20によって区画されトレッド1に陸部5を形成する陸部成型部22とを備える。陸部成型部22には、一端が突条20の側面20aに連結された横リブ24とブレード26が設けられている。横リブ24は陸部5に横溝6を形成し、ブレード26は陸部5にサイプ7を形成する。
【0020】
図4及び図5に示すように、セクタ12においてトレッド1に主溝4を形成する突条20は、陸部成型部22に面した側面20aに穴部8を形成する穴形成部材30と、この穴形成部材30が取り付けられる取付凹部28とを備える。
【0021】
穴形成部材30は、トレッド1の陸部5の側壁5aに穴部8を形成するための部材である。穴形成部材30は、SUS304やSUS630等のステンレスや、鉄やステンレス等の金属粉体を含有する樹脂材料など、セクタ12を構成する金属材料より耐摩耗性の高い金属材料や樹脂材料からなることが好ましく、また、熱膨張係数がセクタ12を構成する金属材料より大きい材料からなることが好ましい。穴形成部材30は、図5図7に示すように、平板状の板部32と、板部32の一方面32aから突出する複数の凸部34と、板部32の他方面32bから突出する突起36とを備える。
【0022】
穴形成部材30は、板部32の一方面32aに設けた凸部34が突条20の側面20aより陸部成型部22へ突出するように、板部32及び突起36が取付凹部28に嵌め込まれることで、突条20の側面20aに固定されている。ここで、板部32の一方面32aが、突条20の側面20aと面一又は突条20の側面20aより陸部成型部22へ突出するように、板部32を取付凹部28に嵌め込むことが好ましい。
【0023】
凸部34は、タイヤ周方向Xに比べて主溝4の深さ方向Zに長く延びる突条状をなしており、突条20の側面20aから陸部成型部22へ突出するように設けられ、陸部5の側壁5aに長穴状の穴部8を成型する。
【0024】
突起36は、板部32の他方面32bに設けられたタイヤ周方向Xに延びる突条状をなしている。図6に示すように、突起36の断面形状は、板部32の他方面32bから先端へ向かうほど主溝4の深さ方向Zに長くなっており、先端ほど断面形状が広がった形状をなしている。
【0025】
次に、加硫金型10の製造方法について、図7及び図8を参照して説明する。
【0026】
まず、板部32、凸部34及び突起36を備える上記した穴形成部材30に突片38が一体に設けられた図7に示すようなインサート部材40を形成する。このインサート部材40は、穴形成部材30を構成する複数の凸部34の1つまたは複数から突片38が突出している。突片38は、板部32の一方面32aから離れる方向へ突出する平板状をなしており、その先端に幅広のアンカ部39が設けられている。
【0027】
このようなインサート部材40は、例えば、積層造形法によって形成することができる。ここで、積層造形法とは、3次元CADデータ等からなるソリッドモデルから、当該ソリッドモデルに対応する形状を直ちに造形可能な造形法である。具体的にはソリッドモデルを複数層に分割して生成したスライスデータ(積層データ)を成形機に送信する。複数のスライスデータを受信した成形機では、予め層状に敷き詰められた素材粉末に対してレーザーを照射し、素材粉末を加熱しつつ各スライスデータの形状に対応する層を焼結により成形する。このような加熱及び焼結は、スライスデータの数に対応して繰り返し実行され、加熱,焼結によって成形される各層は、予め設定された所定の方向に順次積層されて互いに一体化される。
【0028】
積層造形法により形成されるインサート部材40は、ソリッドモデルを例えば凸部34が延びる方向に分割したスライスデータに基づいて、各層を焼結しつつ積層することにより形成することができる。
【0029】
ここで、図7に基づいてインサート部材40の各種寸法の一例を挙げると、主溝4を形成すると突条20の幅が10mm、深さが10mmの場合に、凸部34の突出高さJが0.3mm~0.5mm、板部32の厚みKが0.5mm~3mm、凸部34から板部32の周縁までの長さHが0.5mm~1mm、板部32のタイヤ周方向Xの長さLが50mm以下とすることができる。
【0030】
次に、石膏でタイヤTの石膏鋳型Mを製作する。この石膏鋳型Mは、図8(a)に示すように、サイプ7を除く主溝4、陸部5及び横溝6等に相当する主溝対応部M4、陸部対応部M5及び横溝対応部M6等を備える。陸部対応部M5には、タイヤTの穴部8に相当する位置に、インサート部材40の突片38及び凸部34が埋設されている。ここで、インサート部材40の板部32の一方面32aが、陸部対応部M5の側面M5aと面一又は側面M5aより陸部対応部M5側に位置する(つまり、一方面32aが陸部対応部M5に埋設される)ように、インサート部材40を陸部対応部M5に埋設することが好ましい。
【0031】
次に、石膏鋳型Mの周りにアルミニウムやアルミニウム合金等の金属を流し込むことで、陸部対応部M5の側面M5aから突出する板部32及び突起36が突条20に鋳込まれる。
【0032】
そして、石膏鋳型Mを壊して取り除いて鋳造した加硫金型を取り出すと、板部32及び突起36が突条20に埋設され、凸部34及び突片38が突条20から陸部成型部22へ突出するように、インサート部材40が突条20に固定された加硫金型が得られる(図8(b)参照)。
【0033】
次に、得られた加硫金型において突条20から陸部成型部22へ突出する突片38を除去し、更に、サイプ7を形成するためのブレード26を陸部成型部22の所定位置に固定することで、加硫金型10が得られる。なお、突片38の除去は、図8(b)に示すように、付け根側(凸部34側)を残して突片38を除去してもよく、また、凸部34のみが残るように突片38を全て除去してもよい。
【0034】
なお、突条20を挟んで対向する位置に穴形成部材30を設ける場合や、穴形成部材30をタイヤ周方向Xに並べて突条20に設ける場合に、穴形成部材30の板部32を異なる厚みに設定することが好ましい。
【0035】
以上のような加硫金型10では、陸部5の側壁5aに複数の穴部8を形成する穴形成部材30が、トレッド1の外面を成型するセクタ12と別体に設けられているため、穴形成部材30の形状が制限されることなく所望形状の穴部8をタイヤTに形成することができる。しかも、穴形成部材30をセクタ12より耐摩耗性の高い材料で形成することで、穴形成部材30の凸部34の摩滅を抑えることができ、加硫金型10の耐久性を向上することができる。
【0036】
本実施形態の加硫金型10では、板部32の他方面32bから先端ほど断面形状が広がった突起36が突出しているため、穴形成部材30のセクタ12からの脱落を防止することができる。
【0037】
本実施形態の加硫金型10では、板部32の一方面32aが、突条20の側面20aと面一又は突条20の側面20aより陸部成型部22へ突出するように、板部32が取付凹部28に嵌め込まれているため、穴形成部材30の板部32の一方面32aと取付凹部28とで形成される突起が、タイヤの主溝の側壁から突出して主溝の排水性能を損なうことがない。
【0038】
また、本実施形態では、セクタ12を鋳造により成型し、穴形成部材30のみを積層造形法によって成型するため、加硫金型10全体を積層造形法によって成型する場合に比べて製造コストを大幅に抑えつつ、所望形状に穴形成部材30を成型することができる。
【0039】
本実施形態では、凸部34の先端から突出する突片38を穴形成部材30に設け、板部32とともに突片38を石膏鋳型Mに埋設しているため、穴形成部材30の位置ずれを抑えることができ、所望位置に穴形成部材30を配置することができる。
(変更例)
上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0040】
例えば、上記の実施形態では、穴形成部材30を石膏鋳型Mに埋設して鋳造することで、セクタ12と穴形成部材30を一体化する場合について示したが、取付凹部28を設けたセクタ12を鋳造法などによって成型した後、取付凹部28より所定寸法(例えば、0.05~0.15mm)大きく形成した板部32を締まり嵌めによって嵌合することで穴形成部材30をセクタ12に固定したり、板部32を耐熱ボンドによって取付凹部28に接着することで穴形成部材30をセクタ12に固定してもよい。
【0041】

例えば、上記の実施形態では、穴形成部材30を石膏鋳型Mに埋設して鋳造することで、セクタ12と穴形成部材30を一体化する場合について示したが、取付凹部28を設けたセクタ12を鋳造法などによって成型した後、取付凹部28より所定寸法(例えば、0.05~0.15mm)大きく形成した板部32を締まり嵌めによって嵌合することで穴形成部材30をセクタ12に固定してもよい。この場合、穴形成部材30がセクタ12を構成する金属材料より熱膨張係数の大きい材料からなることが好ましい。これにより、加硫金型10の加熱によって穴形成部材30がセクタ12から脱落するのを防止することができる。
【0042】
また、取付凹部28を設けたセクタ12を鋳造法などによって成型した後、板部32を耐熱ボンドによって取付凹部28に接着することで穴形成部材30をセクタ12に固定してもよい。この場合、取付凹部28に対して接着される板部32の他方面32bに微少(例えば、0.5mm程度)な凹凸を設けることが好ましい。これにより、耐熱ボンドによる接着力が向上し、穴形成部材30がセクタ12から脱落しにくくなる。
【0043】
また、図9に示すように、穴形成部材130が、断面略U字状に形成された板部132と、板部132の外側面132aに設けられた複数の凸部134とを備え、突条20の両側面20aに跨がるように突条20の幅方向全体にわたって設けられた取付凹部128に、突条20の幅方向全体を覆うように板部132を固定することで、突条20の側面20aから凸部134を突出させてもよい。このような場合、穴形成部材130の位置ずれを抑えつつ、幅狭な突条20に凸部134を配置することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…トレッド、2…サイドウォール、3…ビード、4…主溝、5…陸部、6…横溝、7…サイプ、8…穴部、10…加硫金型、12…セクタ、14…サイドプレート、16…ビードリング、18…キャビティ、20…突条、22…陸部成型部、24…横リブ、26…ブレード、28…取付凹部、30…穴形成部材、32…板、34…凸部、36…突起、38…突片、39…アンカ部、40…インサート部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9