(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20240829BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G02F1/1337
G02F1/1368
(21)【出願番号】P 2020174493
(22)【出願日】2020-10-16
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】321010863
【氏名又は名称】トライベイル テクノロジーズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100184527
【氏名又は名称】渡邉 賢二
(72)【発明者】
【氏名】吉良 修一
(72)【発明者】
【氏名】東 卓也
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-123098(JP,A)
【文献】国際公開第2018/212113(WO,A1)
【文献】特開2016-018134(JP,A)
【文献】特開2005-283691(JP,A)
【文献】特開2008-058573(JP,A)
【文献】特開2016-126178(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0094635(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/1368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された複数の画素によって画像を表示する表示領域を備える液晶表示装置であって、
前記複数の画素に対応してTFTが配置されたアレイ基板と、
前記アレイ基板に対向して配置され、前記複数の画素に対応して色材と遮光領域を有する対向基板と、
前記アレイ基板と前記対向基板に挟持される液晶からなる液晶層と、
前記アレイ基板の前記液晶層に対向する面に前記複数の画素に対応して設けられ、スリット
が形成された第1の電極と、
前記アレイ基板の前記液晶層に対向する面に前記複数の画素に対応して設けられ、前記第1の電極との電位差によって前記アレイ基板の基板面と平行方向の電界を形成する第2の電極と、
前記アレイ基板の前記液晶層に接する面に設けられ、前記液晶の配向方向を制御する第1の配向軸が形成された第1の配向膜と、
前記対向基板の前記液晶層に接する面に設けられ、前記第1の配向軸と平行方向であって前記液晶の配向方向を制御する第2の配向軸が形成された第2の配向膜と、
前記アレイ基板と前記対向基板の間に平面視で前記第1の電極と重なって前記第1の配向軸と平行方向に延在するように配置され、前記液晶の配向を制御する畝と、
を有
し、
前記スリットの延在方向であるスリット方向が前記第1の配向軸と異なることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記液晶表示装置は前記画素内に複数の異なる配向方向の領域を備えるマルチドメイン構造を有し、前記畝は前記複数の異なる配向方向の領域の間の前記第1の電極に平面視で重なって配置されることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記畝は、前記アレイ基板と前記対向基板の間隔であるセルギャップの方向の高さが前記セルギャップの大きさ以下であり、かつ前記セルギャップの大きさの半分以上であることを特徴とする請求項1~
2のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
マトリクス状に配置された複数の画素によって画像を表示する表示領域を備える液晶表示装置であって、
前記複数の画素に対応してTFTが配置されたアレイ基板と、
前記アレイ基板に対向して配置され、前記複数の画素に対応して色材と遮光領域を有する対向基板と、
前記アレイ基板と前記対向基板に挟持される液晶からなる液晶層と、
前記アレイ基板の前記液晶層に対向する面に前記複数の画素に対応して設けられ、スリット
が形成された第1の電極と、
前記アレイ基板の前記液晶層に対向する面に前記複数の画素に対応して設けられ、前記第1の電極との電位差によって前記アレイ基板の基板面と平行方向の電界を形成する第2の電極と、
前記アレイ基板の前記液晶層に接する面に設けられ、前記液晶の配向方向を制御する第1の配向軸が形成された第1の配向膜と、
前記対向基板の前記液晶層に接する面に設けられ、前記第1の配向軸と平行方向であって前記液晶の配向方向を制御する第2の配向軸が形成された第2の配向膜と、
前記アレイ基板と前記対向基板の間に平面視で前記遮光領域と重なって前記第1の配向軸と平行方向に延在するように配置され、前記液晶の配向を制御する畝と、
を有
し、
前記スリットの延在方向であるスリット方向が前記第1の配向軸と異なり、
前記畝は、前記アレイ基板と前記対向基板の間隔であるセルギャップの方向の高さが前記セルギャップの大きさ以下であり、かつ前記セルギャップの大きさの半分以上であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
前記畝は前記アレイ基板の前記液晶層に対向する面に配置されることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記畝は前記対向基板の前記液晶層に対向する面に配置されることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記液晶表示装置は、前記アレイ基板の前記液晶層に対向する面又は前記対向基板の前記液晶層に対向する面に形成され、前記アレイ基板と前記対向基板に挟まれて前記アレイ基板と前記対向基板の間隔を一定範囲に維持するスペーサを有し、
前記畝は前記スペーサが形成される面と同じ面に同じ材質で形成されることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
マトリクス状に配置された複数の画素によって画像を表示する表示領域を備える液晶表示装置であって、
前記複数の画素に対応してTFTが配置されたアレイ基板と、
前記アレイ基板に対向して配置され、前記複数の画素に対応して色材と遮光領域を有する対向基板と、
前記アレイ基板と前記対向基板に挟持される液晶からなる液晶層と、
前記アレイ基板の前記液晶層に対向する面に前記複数の画素に対応して設けられ、スリット
が形成された第1の電極と、
前記アレイ基板の前記液晶層に対向する面に前記複数の画素に対応して設けられ、前記第1の電極との電位差によって前記アレイ基板の基板面と平行方向の電界を形成する第2の電極と、
前記アレイ基板の前記液晶層に接する面に設けられ、前記液晶の配向方向を制御する第1の配向軸が形成された第1の配向膜と、
前記対向基板の前記液晶層に接する面に設けられ、前記第1の配向軸と平行方向であって前記液晶の配向方向を制御する第2の配向軸が形成された第2の配向膜と、
前記アレイ基板の前記液晶層に対向する面又は前記対向基板の前記液晶層に対向する面に平面視で前記第1の電極と重なって前記第1の配向軸と平行方向に延在するように設けられ、前記液晶の配向を制御する溝と、
を有
し、
前記スリットの延在方向であるスリット方向が前記第1の配向軸と異なることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項9】
前記液晶表示装置は前記画素内に複数の異なる配向方向の領域を備えるマルチドメイン構造を有し、前記溝は前記複数の異なる配向方向の領域の間の前記第1の電極に平面視で重なって配置されることを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
マトリクス状に配置された複数の画素によって画像を表示する表示領域を備える液晶表示装置であって、
前記複数の画素に対応してTFTが配置されたアレイ基板と、
前記アレイ基板に対向して配置され、前記複数の画素に対応して色材と遮光領域を有する対向基板と、
前記アレイ基板と前記対向基板に挟持される液晶からなる液晶層と、
前記アレイ基板の前記液晶層に対向する面に前記複数の画素に対応して設けられ、スリット
が形成された第1の電極と、
前記アレイ基板の前記液晶層に対向する面に前記複数の画素に対応して設けられ、前記第1の電極との電位差によって前記アレイ基板の基板面と平行方向の電界を形成する第2の電極と、
前記アレイ基板の前記液晶層に接する面に設けられ、前記液晶の配向方向を制御する第1の配向軸が形成された第1の配向膜と、
前記対向基板の前記液晶層に接する面に設けられ、前記第1の配向軸と平行方向であって前記液晶の配向方向を制御する第2の配向軸が形成された第2の配向膜と、
前記アレイ基板の前記液晶層に対向する面又は前記対向基板の前記液晶層に対向する面に平面視で前記遮光領域と重なって前記第1の配向軸と平行方向に延在するように設けられ、前記液晶の配向を制御する溝と、
を有
し、
前記スリットの延在方向であるスリット方向が前記第1の配向軸と異なることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項11】
前記第1の電極と前記第2の電極の間に第1の絶縁層が設けられており、
前記溝は前記第1の絶縁層を掘り込んで形成されることを特徴とする請求項8~10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記第1の電極と前記第2の電極の間に第1の絶縁層が設けられており、
前記溝は前記第1の電極及び前記第2の電極よりも前記液晶層から遠い位置に配設された第2の絶縁層を掘り込んで形成されることを特徴とする請求項8~10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記溝は前記対向基板の前記液晶層に対向する面に設けられることを特徴とする請求項8~10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、横電界方式の液晶表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示デバイスとして広く用いられている液晶表示装置においては、近年、視野角特性に優れている横電界方式の液晶表示装置の使用が多くの用途で広がっている。横電界方式とは液晶表示装置の基板面に平行である横電界によって液晶を駆動させる方式であり、代表的なものにはFlinge Field Switching方式(以下、FFS方式とする)やIn Plane Switching方式がある。これら横電界方式では液晶分子が基板面に平行な状態で回転動作するため、基板面に対し垂直方向に動く従来のTwisted Nematic方式のような縦電界方式と比較して視野角が広い利点を有する。しかしその一方で電界の変化に対して液晶が配向する時間が遅く、応答速度にすぐれないという課題がある。
【0003】
液晶の応答速度に関する対応とし、特許文献1においては、液晶表示装置を構成するアレイ基板の液晶層側もしくは対向基板の液晶層側に、液晶の配向を制御する突起を配置し、液晶の応答速度を向上させる技術が記載されている。
また、液晶の配向を制御する突起について、特許文献2においては、In Plane Switching方式の液晶表示装置において、対向基板の液晶と対向する面に設けられた色材に配向を制御する突起を設け、ラビング処理の代替とすることによってラビング工程を省略し、ラビング工程で発生する不良を低減する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/194269号
【文献】特開2003-279960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、突起はアレイ基板もしくは対向基板のブラックマトリクスが開口して光を透過する開口領域内に配置されている。その一方で、横電界方式は、液晶が駆動しない領域は遮光状態となるノーマリーブラックの方式であり、突起を配置した領域については電界の有無にかかわらず常に透過率が悪化する。このため特許文献1に示される構成を横電界方式の液晶表示装置に適用した場合、応答速度は向上するものの表示画像の輝度の低下を招くという課題がある。
また、特許文献2においては、ラビング処理のない状態では電界がかけられていないときに突起上の液晶の配向が制御されないため、黒表示時の輝度が高くなる課題がある。
【0006】
本開示は、上記の問題を解決するためになされたものであり、表示画像の輝度低下を起こさずに応答速度を向上させた横電界方式の液晶表示装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る液晶表示装置は、複数の画素によって表示領域に画像を表示する液晶表示装置にあって、TFTが配置されたアレイ基板と、アレイ基板に対向して配置され、色材と遮光領域を有する対向基板と、アレイ基板と対向基板に挟持される液晶からなる液晶層と、アレイ基板の液晶層に対向する面に設けられ、スリットが形成された第1の電極と、アレイ基板の液晶層に対向する面に設けられ、第1の電極との電位差によってアレイ基板と平行方向の電界を形成する第2の電極と、アレイ基板の液晶層に接する面に設けられ、液晶の配向方向を制御する第1の配向軸が形成された第1の配向膜と、対向基板の液晶層に接する面に設けられ、第1の配向軸と平行方向であって液晶の配向方向を制御する第2の配向軸が形成された第2の配向膜と、アレイ基板と対向基板の間に平面視で第1の電極と重なって第1の配向軸と平行方向に延在するように配置され、液晶の配向を制御する畝と、を有し、スリットの延在方向であるスリット方向が第1の配向軸と異なるものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、アレイ基板と対向基板の間に平面視で第1の電極と重なって第1の配向膜の配向軸と平行方向に延在するように液晶の配向を制御する畝を配置したので、表示画像の輝度低下を起こすことなく、応答速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1の液晶表示装置の分解斜視図である。
【
図2】実施の形態1の液晶表示装置の画素の平面図である。
【
図3】実施の形態1の液晶表示装置の画素の断面図である。
【
図4】従来の液晶表示装置の画素の一部を拡大した平面図および断面図である。
【
図5】従来の液晶表示装置の画素の一部を拡大した平面図および断面図である。
【
図6】従来の液晶表示装置の画素の一部を拡大した平面図および断面図である。
【
図7】実施の形態1の液晶表示装置の画素の一部を拡大した平面図および断面図である。
【
図8】実施の形態1の液晶表示装置の画素の一部を拡大した平面図および断面図である。
【
図9】実施の形態1の液晶表示装置の画素の一部を拡大した平面図および断面図である。
【
図10】実施の形態1の液晶表示装置の画素の平面図である。
【
図11】実施の形態1の液晶表示装置の画素の平面図である。
【
図12】実施の形態2の液晶表示装置の画素の平面図である。
【
図13】実施の形態2の液晶表示装置の画素の断面図である。
【
図14】実施の形態2の液晶表示装置の変形例の画素の平面図である。
【
図15】実施の形態2の液晶表示装置の変形例の画素の断面図である。
【
図16】実施の形態1の液晶表示装置の変形例の画素の断面図である。
【
図17】実施の形態3の液晶表示装置の画素の平面図である。
【
図18】実施の形態3の液晶表示装置の画素の断面図である。
【
図19】実施の形態3の液晶表示装置の変形例の画素の平面図である。
【
図20】実施の形態3の液晶表示装置の変形例の画素の断面図である。
【
図21】実施の形態3の液晶表示装置のアレイ基板の画素の平面図である。
【
図22】実施の形態3の液晶表示装置のアレイ基板の製造工程における画素の断面図である。
【
図23】実施の形態3の液晶表示装置のアレイ基板の製造工程における画素の断面図である。
【
図24】実施の形態3の液晶表示装置のアレイ基板の製造工程における画素の断面図である。
【
図25】実施の形態3の液晶表示装置のアレイ基板の製造工程における画素の断面図である。
【
図26】実施の形態3の液晶表示装置のアレイ基板の製造工程における画素の断面図である。
【
図27】実施の形態3の液晶表示装置のアレイ基板の製造工程における画素の断面図である。
【
図28】実施の形態3の液晶表示装置のアレイ基板の製造工程における画素の断面図である。
【
図29】実施の形態3の液晶表示装置のアレイ基板の製造工程における画素の断面図である。
【
図30】実施の形態3の液晶表示装置のアレイ基板の製造工程における画素の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略されている。尚、各図において同一の符号を付されたものは同様の要素を示しており、適宜、説明が省略されている。
【0011】
実施の形態1
<実施の形態1の構成>
図1は本実施の形態1に係る液晶表示装置101の構成を示す分解斜視図である。液晶表示装置101は液晶パネル102とバックライト103を重ね合わせ、液晶パネル102の表示領域102aにマトリクス状に配置される複数の画素104によって画像を表示する構造となっている。さらに液晶パネル102はアレイ基板1と対向基板2が液晶層3を挟持して貼り合わされる構造となっている。アレイ基板1の表示領域102aに対応する領域には画素104毎に対応してスイッチング素子であるTFT(Thin Film Transista)と液晶層3の液晶を駆動させる電界を発生させる電極(図示しない)が配置されている。また、表示領域102aより外側の額縁領域102bには信号入力端子105が設けられている。信号入力端子105に入力された電気信号によってTFTから電極に電位が印加された際に、電極間の電位差によって発生した電界によって液晶層3を構成する液晶分子が配向する。そして液晶分子の配向によって画素104毎に液晶層3の透過と遮光が切り替えられるように制御される。また、対向基板2の表示領域102aに対応する領域には画素104毎に対応してRGB等の色を有する色材及び各画素104の間を遮光するブラックマトリクスが配置される。バックライト103から出射された照明光が画素104毎に透過と遮光が切り替えられた液晶層3と色材とを通過することによって、画素104が所望の色の画素として視認され、表示領域102aに画像が表示される。本実施の形態1に係る液晶表示装置101はTFTを有するアクティブマトリクス型の液晶表示装置とするが、TFT以外のスイッチング素子を用いたものでもよい。なおバックライト103については従来のものと同様のため説明を省略し、以降の説明では液晶パネル102について説明する。
【0012】
図2は本実施の形態1に係る液晶表示装置101の液晶パネル102に形成された画素104を示す平面図であり、
図3は
図2のA-A断面を示す断面図である。ここで本実施の形態1の液晶パネル102は横電界方式の一種であるFFS方式の液晶パネルである。
図2は一つの画素104のみを示しているが、表示領域102aにはこの画素104がマトリクス状に複数配置されている。液晶パネル102には、アレイ基板1と、対向基板2とが液晶層3を介して互いに対向して配置されている。
【0013】
本実施の形態1はFFS方式を採用するため、アレイ基板1においては、ガラス基板4の液晶層3に対向する面に第1の電極である対向電極6と第2の電極である画素電極5が第1の絶縁層である絶縁層8を介して積層形成されている。また、対向電極6はスリット7によって電極と開口部が交互に形成されたスリット電極であり、一方、画素電極5はベタ状の電極となっている。
図2及び
図3では示していないが、対向電極6は絶縁層8に設けられた第1のコンタクトホールであるコンタクトホール17を介してさらにガラス基板4に近い層に配設された第1の配線であるコモン配線30に接続され、コモン配線30よりコモン電圧が印加される。また
図2及び
図3では示していないが画素電極5はさらにガラス基板4に近い層に配設されたSiN膜27及び有機膜28からなる第2の絶縁層に設けられた第2のコンタクトホールであるコンタクトホール29を介してさらにその下層の第2の配線である信号配線23に接続され、信号配線23より画素電圧が印加される。画素電極5と対向電極6は例えばITO(Indium Tin Oxide)の透明導電膜からなる透明電極である。
【0014】
さらに
図2及び
図3では示していないがアレイ基板の1液晶層3と接する面には第1の配向膜である配向膜が形成されている。配向膜には例えばラビング処理や光配向処理などの配向処理が施されており、配向処理の向きによって画素電極5と対向電極6に電圧が印加されず電界が生じていないときの液晶層3を構成する液晶分子の配向方向が決められる。ラビング処理とはラビング布と呼ばれるシートを一定方向に擦りつけることによって配向膜表面に筋状の凹凸を形成する処理であり、光配向処理とは配光膜に直線偏光の紫外線を照射し、配向膜に異方性を持たせる処理である。これらの配向処理の向きを配向軸と呼び、本実施の形態1においては
図2で示すように、第1の配向軸である配向軸14が紙面右から左の方向になるように配向処理がなされている。なおこの配向処理はラビング処理あるいは光配向処理以外のものであってもよい。そして対向電極6及びスリット7は、延在する方向をスリット方向15としたときに、スリット方向15が配向軸14に対して角度θを有し、異なる方向であるように、すなわち平行ではないように形成されている。これはスリット方向15が配向軸14に対して平行であると電界が発生して液晶が回転動作する際の回転方向が一方向に定まらず、逆方向に回転する可能性が生じるためである。角度θは横電界方式では一般的に5~15°程度の角度で設定される。
【0015】
対向基板2においては、ガラス基板9の液晶層3と対向する面にブラックマトリクス10と色材11が形成され、更にその液晶層3に近い側にオーバーコート12が形成されている。ブラックマトリクス10は、各画素間の境界部や配線、TFTを遮光するために、遮光性を有する樹脂で形成される。色材11は画素104毎にRGB(赤、緑、青)などの色を有する樹脂で形成される。オーバーコート12はブラックマトリクス10及び色材11を保護する役割を持ち、透明な樹脂で形成される。図示しないがさらにオーバーコート12の液晶層3と接する面には第2の配向膜である配向膜がアレイ基板1と同様に形成され、第2の配向膜にはアレイ基板1の配向軸14と平行の方向、すなわち同方向もしくは180°逆方向に第2の配向軸が形成されるように配向処理がなされている。
【0016】
さらにアレイ基板1及び対向基板2のそれぞれの液晶層3と対向しない側の面には互いに直行する方向の偏光軸を有する偏光板(図示しない)が貼り付けられる。
ここで、本実施の形態1においては、アレイ基板1の液晶層3と対向する側の面に帯状の突起である畝13が形成される。畝13は例えばUV硬化性樹脂などの材料が用いられ、パターン露光によって形成される。畝13は
図2に示すように平面視で対向電極6に重なり、かつ配向軸14と平行に延在するように形成される。
【0017】
<実施の形態1の動作>
次に本実施の形態1に係る液晶表示装置101を構成する液晶パネル102の表示動作について説明する。説明にあたり、まず前提技術として畝13を有さない従来の液晶パネルの表示動作を説明する。
図4a、5a、6aはそれぞれ従来の液晶パネルの画素104の一部を示す平面図であり、
図4aは電界がかけられる前の初期状態、
図5aは電界がかけられて液晶層3の液晶分子18が配向した状態、
図6aは電界が消滅し、液晶分子18が初期状態に戻った状態を示している。また、配向処理の配向軸14は紙面右から左の方向に設定されている。
図4b、5b、6bはそれぞれ
図4a、5a、6aのB-B断面の一部を示す断面図である。液晶分子18は例えば
図4~6に示すように扁長楕円体の形状であり、正の誘電異方性を有する場合は、電界をかけられたときに長軸方向が電界の向きと平行となる方向に向かって回転する。液晶分子18が回転する角度は電界の強さによって設定することができる。以下では液晶分子18の向きとは長軸方向の向きを示すものとする。液晶分子18の内、平面視で、スリット7と重なる領域にあるものを液晶分子18a、スリット7と対向電極6の境界の領域にあるものを液晶分子18b、対向電極6の幅方向に対し中央付近にあるものを液晶分子18cとする。なお
図4a、5a、6a、4b、5b、6bにおいて液晶分子18は向きを示すために大きく記載しており、実際の画素104との相対的な大きさとは異なるものである。
【0018】
まず画素電極5と対向電極6に電圧が印加されず、電界が生じていない状態において、液晶分子18a、18b、18cは、
図4に示すように配向軸14と平行方向に向いている。FFS方式はノーマリーブラック方式であり、電界がかけられていない時は液晶層3が光を透過しない遮光状態となっている。
【0019】
次にTFTに信号が入力されると、画素電極5に信号電圧が印加され、対向電極6にコモン電圧が印加される。このとき画素電極5と対向電極6の間に信号電圧とコモン電圧によって電位差が生じ、アレイ基板1の基板面に平行でかつスリット7と直行する方向に電界が発生する。そして液晶分子18は正の誘電異方性を有するため、電界の方向に対して液晶分子18の向きが沿う方向に向けて回転する。これを
図5に示す。FFS方式を含む横電界方式においては、直行するように配置した2枚の偏光板の偏光軸に対して液晶分子18の向きが45°の角度を成すときに液晶層3が最大の透過率となる。本実施の形態1では2枚の偏光板の偏光軸はそれぞれ
図5aにおいて紙面上下及び左右の方向に設定しているため、液晶分子18aが紙面において45°まで回転するように電界の強さを制御することにより最大の透過率を得ることができる。
しかしながら対向電極6の隣接する2つのスリット7に挟まれた領域は、その両側のスリット7に向かって逆方向の電界が発生する境界部となっているため、電界が弱い領域が発生する。従ってスリット7に重なって位置する液晶分子18aが紙面に対し45°まで回転するのに対し、対向電極6の中央部に位置する液晶分子18cや対向電極6のスリット7に近い端部に位置する液晶分子18bの向きは紙面に対し45°に至らない。この結果、対向電極6上には透過率が低い領域が発生することとなる。
【0020】
続いてTFTに信号が入力され、画素電極5に印加された信号電圧と対向電極6に印加されたコモン電圧が切られると、画素電極5と対向電極6の間の電位差がなくなり、電界が消滅する。このとき液晶分子18は
図6に示すように配向軸14に平行であった初期状態の向きに戻るように回転し、液晶層3は再び光を透過しない遮光状態となる。
【0021】
従来の液晶パネルは上述したように液晶分子18の配向を制御して液晶層3の遮光と透過を切り替えるが、一般的に液晶分子18が基板面に平行な状態で回転動作する横電界方式は、他の液晶駆動方式と比較して応答速度が遅いこと、すなわち信号を入力してから液晶18が配向するまでの時間が長いことが課題となっている。これは液晶層3に電界を発生させる画素電極5及び対向電極6がアレイ基板1のみに形成されているため、液晶層3の層内でアレイ基板1から対向基板2に向かって遠くなるにしたがって電界が弱くなり、それに伴って液晶分子18を配向させる力が弱まるためである。
【0022】
次に本実施の形態1に係る液晶表示装置101の液晶パネル102の表示動作を説明する。
図7a、8a、9aはそれぞれ本実施の形態1に係る液晶パネル102の画素104の一部を示す平面図であり、
図7aは電界がかけられる前の初期状態、
図8aは電界がかけられて液晶分子18が配向した状態、
図9aは電界が消滅し、液晶分子18が初期状態に戻った状態を示している。また、配向処理の配向軸14は紙面右から左の方向に設定されている。
図7b、8b、9bはそれぞれ
図7a、8a、9aのB-B断面の一部を示す断面図である。なお
図7a、8a、9a、7b、8b、9bにおいて液晶分子18は向きを示すために大きく記載しており、実際の画素104との相対的な大きさとは異なるものである。
本実施の形態1においては前述した従来の液晶パネルと異なり、畝13が対向電極6に重なり、配向軸14と平行に延在するように形成されている。液晶分子18の内、平面視で、スリット7と重なる領域にあるものを液晶分子18a、対向電極6の上にあって畝13に隣接するものを液晶分子18dとする。
【0023】
まず画素電極5と対向電極6に電圧が印加されず、電界が生じていない状態において、液晶分子18は
図7に示すように配向軸14と平行方向に向いている。FFS方式はノーマリーブラック方式であり、電界がかけられていない時は液晶層3が光を透過しない遮光状態となっている。
【0024】
次にTFTに信号が入力されると、画素電極5に信号電圧が印加され、対向電極6にコモン電圧が印加される。このとき画素電極5と対向電極6の間に信号電圧とコモン電圧によって電位差が生じ、アレイ基板1の基板面に平行でかつスリット7と直行する方向に電界が発生する。液晶分子18が正の誘電異方性を有する場合、電界の方向に対して沿う方向に向けて回転する。これを
図8に示す。FFS方式を含む横電界方式においては、互いに直行するように配置した2枚の偏光板の偏光軸に対して液晶分子18の向きが45°の角度を成すときに液晶層3が最大の透過率となる。本実施の形態1では2枚の偏光板の偏光軸はそれぞれ
図8aにおいて紙面上下及び左右の方向であり、スリット7に位置する液晶分子18aを紙面において45°まで回転するように電界の強さを制御することにより最大の透過率を得ることができる。
しかしながら対向電極6に重なって、畝13に隣接する位置にある液晶分子18dは、畝13によって回転動作が妨げられる。従って液晶分子18dの向きは電界がかかった状態においても初期状態と同様に畝13の延在方向に平行に沿った方向のままとなり、すなわち配向軸14と同方向となる。なお対向電極6に重なる領域は従来の液晶パネルにおいても電界が生じないか、もしくは電界が弱い領域であるため、液晶分子18の回転動作が不十分な領域であった。従って畝13の有無にかかわらず、対向電極6と重なる領域では液晶分子18はスリット7と重なる領域と同じ角度まで回転動作することはないこととなり、電界がかかった場合の本実施の形態1の液晶パネルの輝度は従来の液晶パネルと輝度と同等となる。
【0025】
続いてTFTに信号が入力され、画素電極5に印加された信号電圧と対向電極6に印加されたコモン電圧が切られると、画素電極5と対向電極6の間の電位差がなくなり、電界が消滅する。このとき
図9に示すように回転していた液晶分子18は配向軸14に平行の初期状態の向きに戻るように回転し、液晶層3は再び遮光状態となる。
ここで本実施の形態1の場合、対向電極6と重なる位置にあって畝13に隣接する液晶分子18dは電界がかけられた際にも
図8に示すように配向軸14と平行の向きのままであった。一方、液晶分子には隣接する液晶分子同士が同じ向きに配列しやすくなるという特性がある。このため、電界が消滅したときに、スリット7の位置にある液晶分子18aは、対向電極6の位置にある液晶分子18dと同じ向きに配列しやすくなる作用によって畝13が無い場合と比較して短時間に初期状態まで回転して戻ることとなる。従って畝13を有さない従来の液晶表示装置の液晶パネルと比較し、本実施の形態1に係る液晶表示装置101の液晶パネル102は電界が消滅して透過状態から遮光状態に戻るときの応答速度が速くなる。
【0026】
<実施の形態1の製造方法>
次に本実施の形態1に係る液晶表示装置101の製造方法について説明する。液晶表示装置101の製造方法は従来のFFS方式の液晶表示装置に対し、液晶パネル102のアレイ基板1の製造工程において対向電極6が形成された後に畝13を形成する工程が追加されるのみであり、その他の工程は従来の製造方法と同様である。従ってここでは畝13を形成する工程について説明する。
アレイ基板1に対向電極6が形成された後、その液晶層3に対向する面の全面に畝13の部材である絶縁性の材料を塗布する。そしてその上にレジストを塗布し、露光、現像、エッチング、レジスト剥離からなるパターン形成工程によって畝13を形成する。畝13の部材にUV硬化樹脂を使用する場合にはエッチング、レジスト剥離は不要となる。また材料によっては畝13を形成した後に加熱処理をしてさらに硬化させる場合もある。さらにその後にアレイ基板1の液晶層3に対向する面の畝13を含む全面に配向膜を形成し、その配向膜に配向処理を行う。
【0027】
畝13の形成方法については前述の方法に限定されるものではなく、例えばパターン露光を使用せずに塗布のみで形成してもよい。また対向電極6が形成された後ではなく、その前のいずれかの工程において前述した畝13の形成工程を追加してもよい。すなわち畝13を形成する層が直接液晶層3に接していなくても、液晶層3に対向する面に畝13の形状が存在すれば同様の効果を奏する。従ってアレイ基板1に形成された配線層や絶縁層などのいずれかの層の上に畝13を形成してもよく、またアレイ基板1に形成された配線層や絶縁層などのいずれかの層でその層を構成する部材によって畝13を形成してもよい。
また、対向電極6を形成後に配向膜形成と配向処理を実施し、その後に畝13を形成してもよい。但しこの場合、畝13の液晶層3に対する面に配向処理がなされないこととなるため、畝13を形成後に配向膜形成と配向処理を実施した場合と比較して遮光状態における輝度がやや上昇する。
【0028】
<実施の形態1の効果>
本実施の形態1においてはアレイ基板1の液晶層3と対向する面に、対向電極6と平面視において重なり、かつ配向軸14と平行の方向に延在するように畝13を形成した。この畝13の近傍の液晶分子18dが電界の有無にかかわらず畝13と平行方向に向いた状態を維持するため、スリット7と重なる領域にある液晶分子18aに電界がかけられて配向した状態から電界が消滅して初期状態に戻る際に、液晶分子18dの影響によって戻る速度が速くなる。従って畝13が無い従来の液晶表示装置と比較し、画素104が信号を受けて点灯状態から遮光状態に変わる際の応答速度が速くなるという効果を奏する。
【0029】
本実施の形態1における畝13は対向電極6と重なるように配置される。このことによって畝13が配置されていない時と比較し、画素104が点灯状態となったときに遮光状態である領域が増加し表示画像の輝度が低下することを抑制している。但しスリット方向15と配向軸14となす角度が大きく、しかも対向電極6の幅が小さい場合、畝13を対向電極6上からスリット7にはみ出さないように配置することが難しくなる。また、畝13の幅は製造上の限界があり、一定以上小さくすることは困難である。そのような場合、畝13を例えば
図10に示すように畝13a、13b、13cに分割した状態で配置してもよく、同様の効果を奏する。
【0030】
一方、液晶表示装置101においては、視野角の拡大のため、電界をかけたときに液晶分子18の配向する方向が異なる領域(ドメイン)を有するマルチドメイン構造をとることがあり、配向方向が異なる2種類の領域を有する構造を特にデュアルドメイン構造と呼ぶ。
図11は本実施の形態1に係るデュアルドメイン構造の液晶パネルの画素104を示す平面図である。ここでは対向電極6及びスリット7はデュアルドメインとなるようにスリット方向15が画素開口部の紙面上下で対称に異ならせるように設計され、画素の上半分と下半分に二つの異なる配向方向の領域が形成されている。このようなデュアルドメイン構造において本実施の形態1に係る畝13を配置する場合、
図11に示すように対向電極6の上であってスリット方向15が異なる領域の間に配置することが好ましい。
図2に示した構造と比較し、
図11に示したデュアルドメイン構造の場合は、スリット方向15が異なる領域の間は対向電極6の幅が広くなるため、畝13を対向電極6からスリット7にはみ出さないように配置することが容易になる。
【0031】
実施の形態2
実施の形態1では、対向基板2のブラックマトリックス10が開口している領域内で平面視において対向電極6に重なるように畝13を配置した液晶表示装置101について説明したが、本実施の形態2では、平面視においてブラックマトリクス10に重なるように畝13を配置した液晶表示装置101について説明する。なお以降の説明においては本実施の形態1と異なる部分について説明し、重複する部分の説明は省略する。
【0032】
図12は本実施の形態2に係る液晶表示装置101の液晶パネル102に形成された画素104を示す平面図であり、
図13は
図12のC-C断面を示す断面図である。
図12に示されるように画素104は配向膜の配向軸14が紙面左右方向で、画素の上半分と下半分に配向方向の異なる領域を二つ有するデュアルドメイン構造となっている。このような構成の画素104の場合、実施の形態1における
図11のようにドメイン間の領域で対向電極6に重なるように畝13を配置することも可能であるが、実施の形態1で説明したように対向電極6の幅や配向軸14とスリット方向15のなす角度θの影響により畝13の配置に制約が生じる。それに対し、本実施の形態2に係る液晶表示装置101の画素104では
図12に示すように畝13をブラックマトリックス10が開口している領域内で対向電極6に重なるよう配置するのではなく、平面視でブラックマトリクス10によって形成される遮光領域に重なるように配置している。このような配置であっても畝13の延在方向が配向軸14と平行になるように配置されていればブラックマトリクス10と重なる領域で畝13の近傍の液晶分子18の配向を制御し、それによってブラックマトリクス10が開口している領域の液晶分子18の応答速度を改善することが可能となる。またブラックマトリクス10と重なる領域は遮光領域であるため、畝13を配置しても画素104の輝度には影響を及ぼさない。
【0033】
また、
図14は本実施の形態2に係る変形例の液晶表示装置101の液晶パネル102に形成された画素104を示す平面図であり、
図15は
図14のD-D断面を示す断面図である。
図14に示されるように画素104は配向膜の配向軸14が紙面上下方向で、画素の上半分と下半分にスリット方向15の異なる領域を二つ有するデュアルドメイン構造となっている。このような構成の画素104の場合、
図11に示すものと異なり、ドメイン間の領域が配向軸14と直行して延在するため、配向軸14と平行に畝13を設けることは困難である。また、対向電極6と重なるように畝13を配置することも考えられるが対向電極6の幅や配向軸14とスリット方向15のなす角度の大きさにより畝13の配置に制約が生じる。
図14に示すように紙面で画素104の左右両側にあるブラックマトリクス10と重なる領域に畝13を配置することで、画素104の輝度を低下させることなくブラックマトリクス10が開口している領域の液晶分子18の応答速度を改善することが可能となる。
なお本実施の形態2に係る液晶表示装置101は実施の形態1で説明した製造方法で同様に製造することができる。
【0034】
実施の形態1及び実施の形態2における畝13はアレイ基板1の液晶層3に対向する面に配置したが、対向基板2の液晶層3に対向する面に配置しても同様の効果を奏することができる。
図16は
図2に示した実施の形態1において畝13を対向基板2に配置した変形例のA-A断面の断面図である。畝13をアレイ基板1もしくは対向基板2のどちらに配置するかは、液晶パネル102を構成する膜の構造や製造工程などを考慮し、配置しやすいほうを選択すればよい。例えば、実施の形態1のように対向電極6の形状に合わせた位置に畝13を配置する場合は同じアレイ基板1に畝13を形成したほうが対向電極6との位置精度を得やすい効果がある。一方で、実施の形態2のように畝13を対向基板2に設けられたブラックマトリクス10に重なるように形成する場合、畝13は対向基板2に形成したほうがブラックマトリクス10との位置精度を得やすい効果がある。
【0035】
実施の形態1及び2において液晶パネル102はアレイ基板1と対向基板2の間隔を一定範囲に維持するスペーサを有する場合がある。スペーサはアレイ基板1の液晶層3に対向する面又は対向基板2の液晶層3に対向する面にパターン露光によって形成され、形成時には想定するアレイ基板1と対向基板2の間隔よりもやや大きい高さを有する。そしてアレイ基板1と対向基板2が貼り合わされたときにアレイ基板1と対向基板2に挟まれてややつぶれるように変形し、アレイ基板1と対向基板2の間隔を一定範囲に維持する機能を果たす。この場合、スペーサと同時に同じ材質で畝13を形成してもよい。スペーサと畝13を同時に形成することにより、畝13を形成するために新たに工程を追加することが不要となり、製造工程の追加による製造コストや製造工期の増加を抑制することができる。なお、スペーサと畝13の形成においてはパターン露光に使用する露光マスクにグレーの色調を有するハーフトーンマスクを用いることによってスペーサ及び畝13に照射する露光量を変え、スペーサと畝13の高さを異なるように形成することが可能となる。
【0036】
実施の形態1及び2において畝13の高さの寸法はアレイ基板1と対向基板2の間隔であるセルギャップの大きさに対し半分以上とする方がより高い効果を奏する。この理由について以下に説明する。
図17は実施の形態1の画素104を示す平面図である
図2のA-A断面を示す断面図であり、
図3に配向した液晶分子18を追加して記載したものである。
図4(b)~
図9(b)の断面図において液晶分子18の回転動作を示したが、これらの図は液晶分子の動きを説明するために簡略化したものであり、実際の液晶分子18は
図17に示すように、セルギャップ方向の位置によって異なる回転動作をする。ここで
図17において、配向軸14は紙面で奥から手前の方向に設定されている。アレイ基板1及び対向基板2の近傍においては各々に形成された配向膜による配向規制力が強いため、電界をかけてもアレイ基板1の近傍に位置する液晶分子18e及び対向基板2の近傍に位置する液晶分子18fの回転量は小さい(
図17では液晶分子18e及び18fは配向軸14に沿うように紙面奥から手前の方向に向いている)。一方、アレイ基板1及び対向基板2の間の中央付近では配向膜による配向規制力が最も小さくなるため、液晶分子18gの回転量は大きくなる(
図17では液晶分子18gは液晶分子18e及び18fよりも紙面左右の方向に向けて回転量が大きい)。従って畝13の高さがセルギャップの中央あたりまであるとその影響がセルギャップの中央付近に位置する回転量の大きい液晶分子18gまで及ぶこととなり、液晶分子18全体の回転動作を制御する効果が大きくなるので応答速度の改善効果も増大する。
しかしながら一方で、畝13の高さをセルギャップと同じ大きさとすると、液晶表示装置101が低温環境下に置かれた場合に液晶層3の体積収縮に追従してセルギャップが変化することを妨げ、液晶層3の内部に発泡が生じて表示不具合が発生する可能性がある。よって、畝13の高さは低温環境下で発泡が発生しないようにセルギャップよりは低くする設定する方が良い。
【0037】
実施の形態3
実施の形態1及び実施の形態2においては液晶分子18の配向制御のために畝13を設けた液晶表示装置101について説明したが、本実施の形態3においては、畝13の代わりに、帯状の凹みである溝16を配置した液晶表示装置101について説明する。なお以降の説明においては本実施の形態1及び実施の形態2と異なる部分について説明し、重複する部分の説明は省略する。
【0038】
図18は本実施の形態3に係る液晶表示装置101の液晶パネル102に形成された画素104を示す平面図であり、
図19は
図18のE-E断面を示す断面図である。
図18に示すようにここでは画素104の対向電極6に平面視で重なる位置のアレイ基板1の絶縁層8が掘りこまれて溝16が形成されている。溝16は配向軸14と平行に延在している。この溝16は実施の形態1における畝13と同様に電界がかけられた際に近傍の液晶分子18が電界によって回転して配向するのを抑制する作用を持つ。従って電界が消滅したときに液晶分子18が配向軸14と平行な位置まで戻る時間が短縮され、応答速度の改善効果が得られる。また、溝16は対向電極6と重なり、液晶分子18が配向しない領域に設けられるため、画素104の輝度を低下させることもない。
【0039】
また、
図20は本実施の形態3に係る変形例の液晶表示装置101の画素104を示す平面図であり、
図21は
図20のF-F面を示す断面図である。
図20に示すようにここでは画素104のブラックマトリクス10に重なる位置のアレイ基板1の液晶層8が掘りこまれて溝16が形成されており、さらに溝16は配向軸14と平行に延在している。すなわち実施の形態2における畝13を溝16に置き換えた形態となっている。この溝16は実施の形態2における畝13と同様に電界がかけられた際に近傍の液晶分子18が電界によって回転して配向するのを抑制する作用を持つ。従って電界が消滅したときに液晶分子18が配向軸14と平行な位置まで戻る時間が短縮され、応答速度の改善効果が得られる。また、溝16はもともとブラックマトリクス10によって遮光されている領域に設けられるため、画素104の輝度を低下させることもない。
【0040】
なお
図19及び
図20においては、溝16はアレイ基板1の絶縁層8が掘りこまれて形成されている。しかしこの溝16は絶縁層8を掘り込むことによって形成されるものに限定されず、例えば画素電極5のさらに液晶層3から遠い位置に配置されている絶縁層を掘り込んで形成されてもよい。この構成については、後述する本実施の形態3の製造方法の説明において詳細に述べる。
【0041】
<実施の形態3の製造方法>
本実施の形態3で示した溝16を配置する構造は実施の形態1及び実施の形態2で示した畝13を配置する構造と比較して製造工程数を少なくすることができる。実施の形態1及び実施の形態2においては、畝13をアレイ基板1に配置する際に画素電極5が形成された後に畝13を形成した場合、新たに畝13となる膜を形成する成膜工程、及びその膜から畝13を形成するパターン露光工程及び現像工程を追加する必要があった。それに対し本実施の形態3における溝16の形成は画素電極5の上層に絶縁層8を形成した後に絶縁層8の掘り込みを行うが、この掘り込みは対向電極6とコモン配線30を接続するために絶縁層8にコンタクトホール17を形成する工程において同時に行うことで工程数を増やすことなく実施できる。従って溝16を形成するために新たに工程を追加する必要がない。この実施の形態3の製造工程について以下に詳細に説明する。
【0042】
図22は実施の形態3に係る液晶表示装置101の液晶パネル102に用いられるアレイ基板1の画素104を示す平面図である。
図23~
図29は
図22のアレイ基板1の画素104の各製造工程における断面X-Xを示す断面図である。以下に
図23~
図29に基づき、本実施の形態3においてアレイ基板1に溝16を設ける製造工程を説明する。なお
図23~
図29においてはガラス基板4に対し紙面上方に各層を重ねるように形成していくため、紙面上方の層を上層、下方の層を下層と称する。
【0043】
まずアレイ基板1のガラス基板4の液晶層3に対向する面にゲート配線20を形成する(
図23)。ゲート配線20はアレイ基板1の主面上に例えばAlNiNd(アルミ-ニッケル-ネオジウム)合金などの金属膜をスパッタで成膜し、その後レジスト塗布、露光、現像、エッチング、剥離からなるパターン形成工程によって形成する。
【0044】
次に、アレイ基板の上層全面にゲート絶縁層21を成膜する。さらにゲート絶縁層21の上層に半導体層22を成膜し、レジスト塗布、露光、現像、ドライエッチング、剥離からなるパターン形成工程によってゲート配線20と重なる部分を有するようにTFTパターンを形成する(
図24)。ゲート絶縁層21は例えばSiN(窒化シリコン)であり、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置によって成膜することができる。半導体層22は例えばSi(n)からなる半導体層22aとSi(i)からなる半導体層22bの2層で構成されるものであり、ゲート絶縁層21と同様にCVD装置によって成膜することができる。
【0045】
次に、アレイ基板の上層全面に例えばAlNiNd(アルミ-ニッケル-ネオジウム)合金などの金属膜をスパッタで成膜し、その後レジスト塗布、露光、現像、エッチング、剥離からなるパターン形成工程によって信号配線23、ソース電極24及びドレン電極25を形成する(
図25)。ソース電極24とドレン電極25は半導体層22のTFTパターンに重なるように配置され、TFTのチャネル26を形成する。
【0046】
次に、例えばSiN(窒化シリコン)膜27及び有機膜28からなる絶縁層を成膜し、その後レジスト塗布、露光、現像、ドライエッチング、剥離からなるパターン形成工程によってドレン電極25に重なるようにコンタクトホール29を形成する(
図26)。
【0047】
次に、例えばITOなどの透明導電膜を成膜し、その後レジスト塗布、露光、現像、エッチング、剥離からなるパターン形成工程によって画素電極5を形成する(
図27)。画素電極5はベタ形状の電極であり、透明導電膜がコンタクトホール29の内壁にも成膜されるため、コンタクトホール29を介して下層のドレン電極25と接続される。また、この工程において、同時に透明導電膜によってコモン配線30を形成する。コモン配線30にはコモン電位が印加される。
【0048】
次に、アレイ基板の上層全面に絶縁層8を成膜し、その後レジスト塗布、露光、現像、エッチング、剥離からなるパターン形成工程によってコンタクトホール17を形成する(
図28)。コンタクトホール17は対向電極6とコモン配線30を電気的に接続するためものであり、対向電極6とコモン配線30が平面視で重なった位置に形成される。さらに本実施の形態3においてはこのコンタクトホール17の形成と同時に溝16を形成する。溝16の形成についてはコンタクトホール17の形成で使用される露光用のマスクに溝16のパターンを追加すればよい。なおコンタクトホール17に対して溝16の深さを変えたい場合は露光用マスクをハーフトーンマスクと呼ばれるグレーの色調を有するものとし、レジストに照射される露光量を変えることによって深さを変えることができる。また、絶縁層8は例えばSiN(窒化シリコン)膜のような無機膜でも構わないが、溝16の深さを深くしたい場合は有機膜を使用することで厚みを大きくし、より深い溝16を得ることもできる。
【0049】
次に画素電極5と同様にITOなどの透明導電膜を成膜し、その後レジスト塗布、露光、現像、エッチング、剥離からなるパターン形成工程によって対向電極6を形成する(
図29)。このとき絶縁層8に形成されたコンタクトホール17の内壁にも透明導電膜が形成されるため、コンタクトホール17を介して対向電極6と下層のコモン配線30が接続されることとなる。そして最後にアレイ基板の上層全面に配向膜を付与し、配向処理を実施する。
【0050】
なお上記で説明した製造工程では絶縁層8にコンタクトホール17を形成する際に、同時に溝16を形成した。しかしSiN膜27及び有機膜28からなる絶縁層にコンタクトホール29を形成する際に同時に溝16を形成してもよい。このように溝16を形成したアレイ基板1のX-X断面を
図30に示す。このように溝16を形成しても製造工程数を増やすことなく同様の効果を奏することができる。
【0051】
以上の工程によって本実施の形態3に係る液晶表示装置101のアレイ基板1が製造される。上述した製造方法を適用することにより、溝16を設けるために専用の工程を新たに追加することなく、従来の製造工程で対応ができるため、製造工数の増加によるコストアップや工期の増加を抑制しながら、表示画像の輝度低下を起こすことなく、応答速度を向上させることができる液晶表示装置を製造することが可能となる。
【0052】
なお溝16は対向基板2の液晶層3に対向する面に配置してもよい。溝16を対向基板2の液晶層3に対向する面に配置するためには、例えばパターン露光及びエッチングを用いてオーバーコート12を掘りこむことによって実施することができる。アレイ基板1と対向基板2のどちらに配置するかで溝16と対向電極6あるいはブラックマトリクス10の位置精度合わせなどの点で異なる効果が発生するのは実施の形態1及び実施の形態2で畝13の配置について説明したのと同様である。
【0053】
実施の形態1~3において画素電極5はベタ形状を有し、対向電極6はスリット形状を有するものとした。しかしFFS方式においてはこれに制限されることはなく、画素電極5がスリット形状を有し、対向電極6がベタ形状を有するものとしてもよい。すなわち少なくともいずれかの一方がスリット形状を有し、他方がベタ形状を有して、横電界を形成するものであればよい。
【0054】
さらに対向電極6は画素電極5よりもアレイ基板1の液晶層3に対向する面の液晶層3に近い側に配置されるものとしたが、FFS方式においてはこれに制限されることはなく、画素電極5が対向電極6よりも液晶層3に近い側に配置されてもよい。液晶層3に近い側に対向電極6が配置された場合には前述したように絶縁層8に設けられたコンタクトホール17により対向電極6とコモン配線30が接続される。一方で液晶層3に近い側に画素電極5が配置された場合には信号配線23を有機膜28と絶縁層8の間にまで引き回しておき、絶縁層8に設けられたコンタクトホール17により画素電極5と信号配線23が接続される。
【0055】
ここまでの説明は本開示の技術を横電界方式の一種であるFFS方式の液晶表示装置に適用した形態について説明した。但し本開示の技術は同じ横電界方式の一種であるIn Plane Switching方式の液晶表示装置にも適用することができる。FFS方式においてはアレイ基板1の液晶層3に対向する面に配置された画素電極5と対向電極6は、絶縁層8を介して対向して配置されていた。しかしIn Plane Switching方式においては画素電極5と対向電極6が絶縁層を介さずに同層に配置され、さらに両方の電極がスリット電極で櫛歯状に組み合わされた形状となっている。このような構造を有するIn Plane Switching方式であってもいずれか片方、もしくは両方の電極に平面視で重なるように畝13もしくは溝16を設けることによって実施の形態1あるいは実施の形態3と同様の効果を得ることができる。また実施の形態2については電極の形状と関係なく遮光領域と平面視で重なるように畝13を設けるため、In Plane Switching方式についても同様の効果を得ることができる。In Plane Switching方式においては画素電極5と対向電極6が同層に配置されるため、画素電極5と対向電極6を絶縁する絶縁層8は存在しないが、画素電極5または対向電極6に電圧を印加するためにさらにガラス基板4に近い位置に配設される絶縁層にコンタクトホールを設ける場合には、このコンタクトホールと同時に溝16を形成すればよい。
【符号の説明】
【0056】
1 アレイ基板、2 対向基板、3 液晶層、4 ガラス基板、5 画素電極、6 対向電極、7 スリット、8 絶縁層、9 ガラス基板、10 ブラックマトリクス、11 色材、12 オーバーコート、13 畝、14 配向軸、15 スリット方向、16 溝、17 コンタクトホール、18 液晶分子、20 ゲート配線、21 ゲート絶縁層、22 半導体層、23 信号配線、24 ソース電極、25 ドレン電極、26 チャネル、27 SiN膜、28 有機膜、29 コンタクトホール、30 コモン配線
101 液晶表示装置、102 液晶パネル、102a 表示領域、102b 額縁領域、103 バックライト、104 画素、105 信号入力端子