(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ロータ及び該ロータを用いたモータ、並びに、電子機器
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20240829BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K1/22 A
(21)【出願番号】P 2020176289
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】豊村 直人
(72)【発明者】
【氏名】山田 卓司
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-124112(JP,A)
【文献】特開2018-108028(JP,A)
【文献】特開2013-187954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状部、径方向に延在する複数の磁極片、及び、前記複数の磁極片のそれぞれと前記環状部とを連結する複数の連結部、を有するロータコアと、
周方向において、前記複数の磁極片における、隣接する2つの磁極片の間に配置された複数の第1のマグネットと、
周方向において、前記複数の連結部における、隣接する2つの連結部の間に形成された空間内に配置された複数の第2のマグネットと、を備え、
前記連結部は、径方向の成分、及び、周方向の成分、の両方の成分を有する方向に延在して
おり、
前記第2のマグネットの一方の端部と、前記第1のマグネットの内面側の端部との間には、前記空間の一部がある
ロータ。
【請求項2】
周方向において、前記第1のマグネットは、隣接する2つの磁極片の側面に接触しており、
径方向において、前記第2のマグネットは、前記磁極片の内面に接触している、
請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
周方向において、前記磁極片が有する2つの側面のうち、一方の側面側における前記第1のマグネットの磁極と、他方の側面側における前記第1のマグネットの磁極と、
径方向において、前記磁極片の内面側における前記第2のマグネットの磁極と、
が同じ磁極である、請求項1または2に記載のロータ。
【請求項4】
周方向における前記第2のマグネットの一方の端部の一部は、径方向における前記第1のマグネットの内面側の端部に対向している、
請求項1~3のいずれかに記載のロータ。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれかに記載のロータと、
前記ロータに固定されたシャフトと、
コイル及び該コイルが巻き回された磁性体を有するステータと、
を備える、モータ。
【請求項6】
請求項
5に記載のモータを備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ及び該ロータを用いたモータ、並びに、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な装置において、その駆動源としてモータが用いられている。モータには、様々な種類があり、その使用目的や場面に応じて、各種のモータが選択されている。その中でも、リラクタンストルクを積極的に活用したIPM(Interior Permanent Magnet)モータは、高効率であり、かつ、高いトルクを実現できる。IPMモータは、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の技術では、ロータコアにおける放射状に配置された磁極片は、隣接するフラックスバリアの間の細い連結部によってロータコア中心の環状部に支持されている状態であるため、強度が確保しづらく、モータの駆動時に磁極片に作用する力(遠心力や磁気力)によって、振動したり変位したりして、ノイズやロータ破損等の不具合を生じる懸念があった。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術では、剛性をある程度は確保できるものの、マグネットがロータの径方向に長いため、磁極面のうち、ロータの外周から離れた領域では、磁束が外周方向に向かいづらく、磁束を有効に活用できていなかった。そのため、磁極面を大きく取るべく大きめのマグネットを用いたとしても、大きさに見合う効率が得られず、また逆に、より大きな磁極面を確保しなければならないことから、モータの小型化を図ることができていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-177721号公報
【文献】特開2015-211623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、マグネットから生じる磁束を有効に活用することができるロータ、及び該ロータを用いたモータ、並びに、電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の本発明により解決される。即ち、本発明のロータは、環状部、径方向に延在する複数の磁極片、及び、前記複数の磁極片のそれぞれと前記環状部とを連結する複数の連結部、を有するロータコアと、
周方向において、前記複数の磁極片における、隣接する2つの磁極片の間に配置された複数の第1のマグネットと、
周方向において、前記複数の連結部における、隣接する2つの連結部の間に形成された空間内に配置された複数の第2のマグネットと、を備え、
前記連結部は、径方向の成分、及び、周方向の成分、の両方の成分を有する方向に延在している。
【0008】
本発明のロータにおいては、周方向において、前記第1のマグネットは、隣接する2つの磁極片の側面に接触しており、
径方向において、前記第2のマグネットは、前記磁極片の内面に接触していてもよい。
また、本発明のロータにおいては、周方向において、前記磁極片が有する2つの側面のうち、一方の側面側における前記第1のマグネットの磁極と、他方の側面側における前記第1のマグネットの磁極と、
径方向において、前記磁極片の内面側における前記第2のマグネットの磁極と、
が同じ磁極であるようにすることができる。
【0009】
本発明のロータにおいては、周方向における前記第2のマグネットの一方の端部の一部は、径方向における前記第1のマグネットの内面側の端部に対向していてもよい。
また、本発明のロータにおいては、前記第2のマグネットの前記一方の端部と、前記第1のマグネットの前記内面側の端部との間には、前記空間の一部があるようにすることができる。
【0010】
一方、本発明のモータは、上記本発明のロータと、
前記ロータに固定されたシャフトと、
コイル及び該コイルが巻き回された磁性体を有するステータと、を備える。
また、本発明の電子機器は上記本発明のモータを備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一例である実施形態にかかるロータを用いたモータの縦断面図であり、
図2におけるB-B断面図である。
【
図2】本発明の一例である実施形態にかかるロータを用いたモータの横断面図であり、
図1におけるA-A断面図である。
【
図3】本発明の一例である実施形態にかかるロータの部分断面図である。
【
図4】本発明の一例である実施形態にかかるロータにおける連結部及びその周辺の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一例である実施形態にかかるロータ3を用いたモータ1の縦断面図であり、
図2は横断面図である。
図1は
図2におけるB-B断面図に相当し、
図2は
図1におけるA-A断面図に相当する。
【0013】
なお、本実施形態の説明において、上方乃至下方と云う時は、
図1における上下関係を意味し、重力方向における上下関係とは、必ずしも一致しない。
さらに、軸線x方向(以下、「軸方向」ともいう。)において矢印a方向を上側aとし、矢印b方向を下側bとする。また、軸線xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線xから遠ざかる方向(矢印c方向)を外周側cとし、軸線xに向かう方向(矢印d方向)を内周側dとする。そして、回転軸xを中心とする円周方向(上側aから見た円周方向)の時計回りを周方向e、及び、反時計回りを周方向fとする。
【0014】
本実施形態におけるモータ1は、インナーロータタイプのブラシレスモータの一種であり、スポーク型のIPMモータである。
IPMモータとは、ロータにマグネットを埋め込んだものであり、埋込マグネット型モータとも呼ばれる。IPMモータにも種々の形態のものがあるが、断面が長方形のマグネットの長手方向を、ロータコア内に放射状に配置したスポーク型のIPMモータが知られている。このスポーク型のモータでは、長辺側の面が磁極となり、周方向において隣接するマグネットの対向する磁極面が同極になっている。
【0015】
このIPMモータにおいては、ロータ内部で磁束の短絡が生じると、平均磁束密度が低下してしまい、効率低下に繋がる。そのため、スポーク型のIPMモータでは、ロータコアに空隙を設けることでフラックスバリアを形成し、磁束をなるべく静止部へと向かわせることで動作効率の向上が図られている。
【0016】
モータ1は、回転軸となるシャフト2と、磁性体で形成されたロータコア33内にマグネット31,32が配置されてなり、シャフト2に固定されて共に回転するロータ3と、磁性体で形成されたステータコア41にコイル42が巻き回されてなり、ロータ3を取り囲むように配置されたステータ4と、ステータ4が固定され、モータ1の構成部品の一部または全部を内部に収容するハウジング5と、を備えてなる。
【0017】
ハウジング5は、ロータ3やステータ4等のモータ1の構成部品の一部又は全部を内部に収容し、ステータ4が固定されるハウジング本体51と、ハウジング本体51の上部に設けられた開口部を覆うカバー52と、を有する。ハウジング本体51は、突出部51aaを有する底部51aと筒部51bと外周部51cを備える。カバー52は、突出部52aaを有する環状の平板部52aと、外周部52cとを備える。カバー5の突出部52aaは、平板部52aに設けられており、シャフト2の長手方向(軸線x方向)において、ロータ3に向かう方向(下側b)に突出している。ハウジング本体51の外周部51cとカバー52の外周部52cとが固定(締結)されて、ハウジング5の内部が外部から遮蔽され、モータ1として完成する。
【0018】
モータ1には、シャフト2をハウジング5に対して回転可能に支持する複数(本実施形態においては2つ)の軸受61,62が設けられている。ハウジング本体51の底部51aには、複数の軸受61,62のうち一方の軸受61が設けられている。軸受61を支持するハウジング本体51の底部51aには、シャフト2の長手方向(軸線x方向)において、ロータ3に向かう方向(上側a)に向かって突出する突出部(以下、「軸受ハウジング」と称する。)51aaと孔部51abが設けられており、この軸受ハウジング51aaに、軸受61が圧入などにより固定されている。他方の軸受62は、カバー52の突出部(以下、「軸受ハウジング」と称する。)52aaに圧入等されて固定されている。径方向において、一方の軸受61の外径及び内径と他方の軸受62の外径及び内径は、それぞれ略同じとなっている。
【0019】
なお、一方の軸受61の外径及び内径と他方の軸受62の外径及び内径とは略同じであるが、一方の軸受61の外径または内径あるいはその両方より、他方の軸受62の外径または内径あるいはその両方を大きくしても構わない。また、底部51aには孔部51abを設けなくても構わない。
【0020】
シャフト2は、2つの端部2a,2bを備えており、ハウジング本体51側にある一方の端部2bが一方の軸受61によりハウジング本体51に対して回転可能に支持され、カバー52側にある他方の端部2aが他方の軸受62に回転可能に支持されている。よって、シャフト2は、軸受61を介してハウジング本体51、及び、軸受62を介してカバー52に、それぞれ回転自在に固定されており、カバー52からシャフト2の一方の端部2bが突き出している。シャフト2の一方の端部2aから外部に、回転力を取り出すことができるようになっている。シャフト2は、ロータ3に固定され、ステータ4とロータ3との電磁気的作用によってロータ3が回転すると、ロータ3とともに回転するようになっている。
【0021】
ステータ4は、ティース部43を含むステータコア41と、コイル42とからなる。
ステータコア41は、珪素鋼板等の磁性体の積層体となっており、シャフト2と同軸上に配された環状部(以下、「円環部」と称する。)44と、円環部44からシャフト2側へ向かって延びるように形成された複数の磁極部(以下、「ティース部」と称する。)43からなる。
コイル42は、複数のティース部43の各々の周囲に巻き回されている。ステータコア41とコイル42とは、絶縁体で形成されたインシュレータ45によって絶縁されている。
【0022】
次に、本実施形態にかかるロータ3について、詳細に説明する。
図3に、本実施形態にかかるロータ3の部分断面図を示す。
ロータ3の構成部品の一つであるロータコア33は、複数の磁性体の積層体により形成されており、シャフト2が挿入される孔部34を有する。ロータコア33は、孔部34が中央部に設けられた環状部33aと、環状部33aの外面33adから離間した位置を基点Dとしステータ4に向けて、径方向に放射状に形成された複数(本実施形態では20個)の磁極片33bと、複数の磁極片33bのそれぞれにおいて、その基点D側の端部と環状部33aの外面33adとを連結する連結部33cを備える。複数の磁極片33bは、径方向において、環状部33aから連結部33cを介し、外側c(ステータ4)に向けて放射状に延在している。なお、環状部33aは、外面33adと、孔部34を形成する内面33aeと、を備えている。
【0023】
複数の磁極片33bのそれぞれは、外面33bcと、環状部33a側にある内面33bdと、周方向efにおいて第1のマグネット31(後述する)の側面(31e)に対向する2つの側面33beと、複数の突出部33bfと、を備える。突出部33bfは、周方向efにおいて、隣接する他の磁極片33bに向かって突出している。また、周方向efにおいて、隣接する2つの磁極片33bのうち、一方の磁極片33bの突出部33bfと、他方の磁極片33bの突出部33bfとが対向し合うとともに、所定の間隙を形成するように離間している。
【0024】
周方向efに相互に隣接する磁極片33b,33bのそれぞれの間には、複数の第1のマグネット31が配置されている。これら複数の第1のマグネット31は、径方向cdにおいて、環状部33aから放射状に延在している。第1のマグネット31は、周方向cdと交差する2つの側面31eが磁極面31n,31sとなっており、これら磁極面31n,31sと磁極片33bの側面33beとが接触した状態になっている。
【0025】
なお、第1のマグネット31は、径方向cdにおいて磁極片33bの突出部33bfに対向する外面31c、径方向cdにおいて環状部33a側にある内面31a、周方向efにおいて磁極片33bに対向する2つの側面31eを備えており、磁極面31n、31sが2つの側面31eに対応している。
【0026】
また、それぞれの磁極片33bの内面33bdと、環状部33aの外面33adと、の間には、第2のマグネット32が配置されている。複数の第2のマグネット32は、周方向efにおいて、複数の連結部33cにおける、隣接する2つの連結部33cの間に形成された空間内のそれぞれに配置された状態になっている。
【0027】
第2のマグネット32は、環状部33a側にある内面32g、磁極片33b側にある外面32h、周方向の両側にある2つの端部32i,32iを備える。また、第2のマグネット32は、ロータ3の径方向と交差(直交)する内面32gと外面32hとが磁極面32n,32sとなっており、これら磁極面32n,32sのうちのいずれか一方が外面32hとなって、磁極片33bの環状部33a側の端部(内面33bd)と接触した状態になっている。
【0028】
図3における複数の磁極片33bのうち、33bn及び33bsの符号を付した2つに注目して説明する。
図3における連結部33c及びその周辺の部分拡大断面図を、
図4に示す。
周方向において、1つの磁極片(33bnまたは33bs)が有する2つの側面33be、33beのうち、一方の側面側における第1のマグネット31の磁極、他方の側面側における第1のマグネット31の磁極、径方向において磁極片(33bnまたは33bs)の内面33bd側における第2マグネット32の磁極が同じ磁極である。
【0029】
詳細には、磁極片33bnにおいては、周方向efにおける2つの側面33be,33beが接触する第1のマグネット31の2つの磁極面31n,31n、及び、径方向cdにおける内面33bdが接触する第2のマグネット32の磁極面32n、の全てがN極になっている。
【0030】
一方、磁極片33bsにおいては、周方向efにおける2つの側面33be,33beが接触する第1のマグネット31の2つの磁極面31s,31s、及び、径方向cdにおける内面33bdが接触する第2のマグネット32の磁極面32s、の全てがS極になっている。
【0031】
即ち、ある1つの磁極片33bにおいては、周方向efにおける2つの側面33be,33beの第1のマグネット31が接触する2つの磁極面31n,31nまたは31s,31s、及び、第2のマグネット32が接触する磁極面32nまたは32s、の全てが同じ磁極になるように、それぞれのマグネットが配置されている。
【0032】
磁極片33bには、N極あるいはS極の磁力が印加され、1つの磁束となって径方向において外方に放出される。磁極片33bの磁極は、周方向efにN極及びS極が交互に繰り返されるように構成されている。
例えば、磁極片33bnにおいては、ロータ3の径方向cdに長い第1のマグネット31の2つの磁極面31nから出た磁束が束となって、径方向cdにおける内側dから外側cに向かい、磁極片33bnの基点D側(環状部33a側)とは逆側の端部(外面33bc)から放出され、ステータ4に作用する。
【0033】
このとき、磁極面31nのうち、ロータ3の外面33bcから離れた(基点D、内面33bdに近い。)領域(例えば、
図3における領域X。以下、単に「領域X」と示す。)では、領域Xから外面33bcまでの道程が長いため、磁束が外面33bc方向に向かいづらい。
【0034】
しかし、本実施形態では、磁極面31nと同じN極である磁極面32nが、径方向cdにおける外側c方向に向いた第2のマグネット32が、磁極片33bnの基点D側の端部(内面33bd)に配置されている。そのため、当該磁極面32nからの磁束とともに、領域Xからの磁束が有効に外面33bc方向に向かう。したがって、ロータ3の径方向cdに長い第1のマグネット31から生じる磁束を有効に活用することができる。
第1のマグネット31から生じる磁束が第2のマグネット32から生じる磁束とともに有効に外面33bc方向に向かうのは、磁極片33bnのみならず、磁極片33bsを含む全ての磁極片33bにおいても同様である。
【0035】
以上のように、本実施形態によれば、マグネット(マグネット31,マグネット32)から生じる磁束を有効に活用することができるため、マグネットの使用量を減らすことができ、コスト削減やモータ1の軽量化、小型化を実現することができる。本発明者らの研究によれば、第2のマグネットの無い従来の構成(以下、単に「従来の構成」と称する。)に比べて、マグネットの使用量(体積基準)をおよそ20%削減しても、モータ1の性能に差がないことが確認されている。
【0036】
本実施形態では、従来の構成に比して、径方向cdにおける磁極片33bの長さが短く、径方向cdにおける第1のマグネット31の長さも短くなっている。第2のマグネット32の分を計算に入れても、マグネットの使用量(体積基準)はおよそ20%少なくなっている。それでも、従来の構成の場合と本実施形態の場合とで、磁極片33bにおける外周側から放出される磁束の密度は同程度となっている。
あるいは、本実施形態によれば、マグネットの使用量を減らさず、または、あまり減らさず、従来の構成よりも高効率で高性能なモータを提供することもできる。
【0037】
図4に示される通り、連結部33cは、磁極片33bの環状部33a側(内側d)の端部(内面33bd)における、周方向efの一方側の端部(詳しくは、時計回り方向eの上流側の端部)と連結している。そして、連結部33cにおける、磁極片33bとの連結側とは逆側の端部は、環状部33aの外面33adと連結している。
【0038】
連結部33cは、径方向cdの成分、及び、周方向efの成分、の両方を有する方向(即ち、いわゆる「斜め方向」)に延在している。磁極片33bとの連結側から環状部33aとの連結側へ向かうベクトル成分で云えば、反時計回り方向fのベクトル成分と内側d方向のベクトル成分との合成である矢印C(
図4)のベクトルの方向が、連結部33cの延在方向と一致している。
【0039】
この連結部33cの延在方向における径方向cdの成分(cd)と、周方向efの成分(ef)の割合(cd/ef)は、本実施形態においては√3(即ち、cd/ef=√3/1)になっている。これは、連結部33cと環状部33aの連結点における環状部33aの接線Tと、連結部33cの延在方向(矢印Cの方向に等しい)と、の成す角θが60°であることを意味する。この成す角θとしては、45°以上75°以下程度の範囲から選択すればよく、55°以上70°以下程度の範囲から選択することが好ましい。
【0040】
なお、「周方向efの成分」は、厳密には円弧を描く成分となるが、上記において「周方向efの成分(ef)」を考慮する際には、連結部33cと環状部33aの連結点における環状部33aの外周への接線の直線(接線T)を成分(ef)とする。このとき、環状部33aの外面33adは、必ずしも円を描いていないが、連結部33cと環状部33aの連結点の全てを通る仮想円Vを環状部33aの外周とする。
【0041】
このように連結部33cを斜め方向に延在させることで、磁路となる連結部33cの長さを長くすることができ、矢印C方向への漏洩磁束に対する磁気抵抗を高めることができる。また、個々の磁極片33bと環状部33aとの間を、細い1本の(
図2~
図4の奥行方向の存在を考慮すれば、連結部33cは板状であるため、正確には「薄い1枚の」)連結部33cのみで連結しているので、例えば2本以上(同「2枚以上」)の連結部や太い(同「厚い」)連結部で連結した場合に比べて磁路が狭くなり、磁極片33bから環状部33aへの磁束の漏洩を抑制することができる。
【0042】
モータ1を駆動させてロータ3を回転させた際には、ロータ3に対して径方向の外側cへの遠心力が作用する。本実施形態にかかるモータ1においては、個々の磁極片33bと環状部33aとの間に第2のマグネット32を介在させているので、ロータ3の曲げ剛性が高められている。
【0043】
本実施形態にかかるモータ1において、周方向efにおける第2のマグネット32の一方の端部(詳しくは、時計周り方向eの下流側の端部)の一部は、径方向cdにおける第1のマグネット31の内面側dの端部(内面31a)に、
図4において矢印kで示されるように、対向している。第2のマグネット32が、周方向efにおける一方の端部で、第1のマグネット31の内面31aと、矢印kで示されるように対向配置されることで、磁極片33bの内面33bd側を広く第2のマグネット32で囲うことができ、第2のマグネット32による磁力が磁極片33bに有効に作用する。
【0044】
第2のマグネット32の前記一方の端部(即ち、時計周り方向eの下流側の端部)と、第1のマグネット31の内面側dの端部(内面31a)との間には、隣接する2つの連結部33cの間に形成された空間の一部となる空間Sがある。当該箇所に空間Sがあることで、隣接する磁極片33bのいわゆるフラックスバリアが形成され、ロータコア33内部で磁束の短絡を抑制することができる。
【0045】
また、モータ1を駆動させてロータ3を回転させた際、第2のマグネット32には、周方向efへの慣性力が作用する。本実施形態にかかるモータ1においては、周方向efにおける第2のマグネット32の他方の端部(詳しくは、時計周り方向eの上流側の端部)に連結部33cが対向しており、第2のマグネット32の移動を抑制することができる。特に、ロータ3を専ら、あるいは主として、時計周り方向eに回転するようにモータ1を設計することで、第2のマグネット32の移動を連結部33cによって阻むことができ、第2のマグネット32を安定に配置することができる。
【0046】
以上の如き、実施形態にかかるロータ3を用いたモータ1は、電気自動車等の移動体の駆動装置や、空気調和機(エアコン)のコンプレッサー等の家庭で用いられる電子機器、その他各種電子機器の回転駆動装置として、使用することができる。特に、高出力、高トルク、省エネルギー、省スペース等が要求される用途において好適に使用することができる。
【0047】
以上、本発明のロータ及び該ロータを用いたモータ、並びに、電子機器について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明のロータ及び該ロータを用いたモータ、並びに、電子機器は上記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記実施形態における連結部33cの延在方向における径方向cdの成分と周方向efの成分の割合(即ち、斜めの程度、既述の「成す角θ」)としては、上記実施形態の割合(成す角θ=45°)に限定されない。
【0048】
また、ロータ3の磁極(磁極片33b)の数やステータ4のスロット数(ティース部43の数)についても、上記実施形態はあくまでも例示であり、目的とするモータの特性や性能等に応じて適宜選択して設計することができる。
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のロータ及び該ロータを用いたモータ、並びに、電子機器を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0049】
1…モータ、2…シャフト、2a,2b…端部、3…ロータ、31…第1のマグネット、31a…内面、31c…外面、31e…側面、31n,31s…磁極面、32…第2のマグネット、32n,32s…磁極面、32a,32b…両側部、32c,32d,32e,32f…角部、32g…内面、32h…外面、32i…端部、32j…間隙、33…ロータコア、33a…環状部、33ad…外面、33ae…内面、33b…磁極片、33bc…外面、33bd…内面、33be…側面、33bf…突出部、33c…連結部、34…孔部、35…第1の空隙、36a,36b…第2の空隙、4…ステータ、41…ステータコア、42…コイル、43…ティース部、44…円環部、45…インシュレータ、5…ハウジング、51…ハウジング本体、51a…底部、51aa…軸受ハウジング(突出部)、51b…筒部、51c…外周部、52…カバー、52a…平板部、52aa…軸受ハウジング(突出部)、52c…外周部、D…基点、S…空間、X…領域