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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/47 20100101AFI20240829BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
F16H61/47
E02F9/22 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020177418
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2022068632
(43)【公開日】2022-05-10
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武樋 公志
(72)【発明者】
【氏名】川原 章禄
(72)【発明者】
【氏名】中尾 文栄
(72)【発明者】
【氏名】石田 一雄
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-311420(JP,A)
【文献】特開2017-091061(JP,A)
【文献】特開2019-120010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/38-61/64
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪が設けられた車体と、
前記車体を構成するフレームに取り付けられた作業装置と、
前記フレーム上に載置された運転室と、
前記運転室内における運転席の左右の一側に設けられて前記作業装置を操作するための作業装置用操作装置と、
前記車体に搭載されたエンジンと、
前記エンジンにより駆動される可変容量型の走行用油圧ポンプと、
前記走行用油圧ポンプと閉回路接続されて前記エンジンの駆動力を前記複数の車輪に伝達する可変容量型の走行用油圧モータと、
前記走行用油圧ポンプと前記走行用油圧モータとをそれぞれ制御するコントローラと、
を備えた作業車両において、
前記車体の走行速度の上限値を制限するモードを切り替えるためのモード切替装置と、
前記車体の走行速度の前記上限値を設定するための上限車速設定装置と、
を有し、
前記コントローラは、
前記モード切替装置により前記モードが前記車体の走行速度の前記上限値を制限する制限モードに切り替えられ、かつ前記作業装置用操作装置が操作されているときに、前記車体の走行速度の前記上限値が前記上限車速設定装置で設定された設定値となるように、前記走行用油圧ポンプの押しのけ容積または前記走行用油圧モータの押しのけ容積を制御する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両において、
前記モード切替装置は、前記作業装置用操作装置に設けられている
ことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項2に記載の作業車両において、
前記作業装置は、
端部にアタッチメントを取り付け可能なアーム部材を有し、
前記作業装置用操作装置は、
記アーム部材を操作するための第1操作レバーと、
前記アーム部材の前記先端部に前記アタッチメントが取り付けられている場合に前記アタッチメントを操作するための第2操作レバーと、
を有し、
前記第1操作レバーおよび前記第2操作レバーはいずれも、傾けることにより操作入力を行うことが可能なジョイスティックレバーであって、
前記モード切替装置は、
前記第2操作レバーの上部または側部に設けられ、オン状態へ操作されることで前記制限モードに切り替わるオンオフスイッチである
ことを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項3に記載の作業車両において、
前記上限車速設定装置は、
前記第1操作レバーの上部または側部に設けられ、スライドさせることで前記設定値を無段階で調整することが可能なスイッチである
ことを特徴とする作業車両。
【請求項5】
請求項1に記載の作業車両において、
前記運転室内に設けられて前記複数の車輪を操舵するステアリング用操作装置を備え、
前記モード切替装置は、前記ステアリング用操作装置に設けられている
ことを特徴とする作業車両。
【請求項6】
請求項5に記載の作業車両において、
前記ステアリング用操作装置は、
前記運転席の前方において回転可能に設けられて回転量に応じて前記複数の車輪を操舵するステアリングホイールと、
前記ステアリングホイール上に前記運転席側に向かって突出して設けられて前記ステアリングホイールと共に回転するステアリングノブと、
を有し、
前記モード切替装置は、
前記ステアリングノブの上部または側部に設けられ、オン状態へ操作されることで前記制限モードに切り替わるオンオフスイッチである
ことを特徴とする作業車両。
【請求項7】
複数の車輪が設けられた車体と、
前記車体を構成するフレームに取り付けられた作業装置と、
前記フレーム上に載置された運転室と、
前記運転室内における運転席の左右の一側に設けられて前記作業装置を操作するための作業装置用操作装置と、
前記車体に搭載されたエンジンと、
前記エンジンにより駆動される発電機と、
前記発電機に接続されて前記エンジンの駆動力を前記複数の車輪に伝達する電動モータと、
前記エンジンと前記電動モータとを制御するコントローラと、
を備えた作業車両において、
前記車体の走行速度の上限値を制限するモードを切り替えるためのモード切替装置と、
前記車体の走行速度の前記上限値を設定するための上限車速設定装置と、
を有し、
前記コントローラは、
前記モード切替装置により前記モードが前記車体の走行速度の前記上限値を制限する制限モードに切り替えられ、かつ前記作業装置用操作装置が操作されているときに、前記車体の走行速度の前記上限値が前記上限車速設定装置で設定された設定値となるように、前記電動モータの回転数を制御する
ことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段変速式の走行駆動システムを搭載した作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダなどの作業車両の中には、滑らかな発進および停止を可能とする無段変速式の走行駆動システムが搭載されたものがある。この無段変速式の走行駆動システムとしては、例えば、エンジンで油圧ポンプを駆動させることによって発生した油圧を油圧モータで回転力に変換するHST(Hydraulic Static Transmission)式もしくはHMT(Hydraulic Mechanical Transmission)式、およびエンジンで発電機を駆動させることによって発生した電力を電動モータで回転力に変換するEMT(Electronically Mechanical Transmission)式などが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、連続無段変速機としてのHST装置と、HST装置の変速切換制御を行うコントローラと、HST装置の変速比を切り換えるシフトスイッチと、変速比を段階的に切り換える第1モードと第1モードよりも小刻みに設定した段階ずつ変速比を切り換える第2モードとの間で、シフトスイッチによる変速切換のモードを切り換えるシフトモード切換スイッチと、を備えたブルドーザが開示されている。
【0004】
このブルドーザでは、シフトスイッチがジョイスティック仕様の走行レバーの上部に設けられており、走行レバーを操作しながらシフトスイッチを操作することが可能となっている。また、シフトモード切換スイッチは、運転席の前方に設けられたモニタパネルの右側に配置されている。
【0005】
コントローラは、シフトスイッチの操作により検出される変速操作信号と、シフトモード切換スイッチの切換により検出されるモードを示すモード信号と、に基づいて、目標車速の設定を行う車速設定部を含み、この車速設定部において、シフトモード切換スイッチにより第1モードに切り換えられた場合にシフトスイッチが操作される度に変速比を1段変化させる目標車速が設定され、シフトモード切換スイッチにより第2モードに切り換えられた場合にシフトスイッチの操作時間に対応する値だけ変速比を連続的に変化させる目標車速が設定される。これにより、HSTの特徴を生かしたきめ細かな無段階変速を迅速に行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4956001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のブルドーザは、走行レバーの上部にシフトスイッチが設けられていることで、オペレータは走行レバーから手を離すことなく容易に走行レバーとシフトスイッチとを同時に操作することができるといった利便性を有するが、一方で、オペレータが走行レバーを操作する際にシフトスイッチを誤操作してしまう可能性がある。例えば、除雪用のアタッチメントを装着した作業車両は、交差点の進入時に、減速しながらもアタッチメントを道路の路肩側から中央側に向けて動作させる必要があり、この場合において、シフトスイッチが誤操作されるとオペレータの意図したタイミングで車速を制限することができなくなる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、オペレータの意図したタイミングで、アクセルペダルの踏込量にかかわらず車速を迅速に制限することが可能な作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、複数の車輪が設けられた車体と、前記車体を構成するフレームに取り付けられた作業装置と、前記フレーム上に載置された運転室と、前記運転室内における運転席の左右の一側に設けられて前記作業装置を操作するための作業装置用操作装置と、前記車体に搭載されたエンジンと、前記エンジンにより駆動される可変容量型の走行用油圧ポンプと、前記走行用油圧ポンプと閉回路接続されて前記エンジンの駆動力を前記複数の車輪に伝達する可変容量型の走行用油圧モータと、前記走行用油圧ポンプと前記走行用油圧モータとをそれぞれ制御するコントローラと、を備えた作業車両において、前記車体の走行速度の上限値を制限するモードを切り替えるためのモード切替装置と、前記車体の走行速度の前記上限値を設定するための上限車速設定装置と、を有し、前記コントローラは、前記モード切替装置により前記モードが前記車体の走行速度の前記上限値を制限する制限モードに切り替えられ、かつ前記作業装置用操作装置が操作されているときに、前記車体の走行速度の前記上限値が前記上限車速設定装置で設定された設定値となるように、前記走行用油圧ポンプの押しのけ容積または前記走行用油圧モータの押しのけ容積を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、オペレータの意図したタイミングで、アクセルペダルの踏込量にかかわらず車速を迅速に制限することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の各実施形態に係るホイールローダの一構成例を示す外観側面図である。
図2】プラウが装着された状態のホイールローダを上から見た上面図である。
図3】運転室内を上から見た図である。
図4】運転席の前側に配置された各機器を拡大して示した図である。
図5】第1操作レバーおよび第2操作レバーの一構成例を示す斜視図である。
図6】第1実施形態に係る駆動システムの一構成例を示すシステム構成図である。
図7】コントローラが有する機能を示す機能ブロック図である。
図8】コントローラで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図9】第2実施形態に係る駆動システムの一構成例を示すシステム構成図である。
図10】第3実施形態に係る駆動システムの一構成例を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態に係る作業車両の一態様として、例えば、土砂や鉱物などの作業対象物を掘削してダンプトラックやホッパーといった積込み先へ積み込む荷役作業を行うと共に、路面に積もった雪を取り除く除雪作業を行うことが可能なホイールローダを例に挙げて説明する。
【0013】
<ホイールローダ1の全体構成>
まず、ホイールローダ1の全体構成について、図1および図2を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の各実施形態に係るホイールローダ1の外観を示す側面図である。図2は、プラウ22が装着された状態のホイールローダ1を上から見た上面図である。
【0015】
以下の説明において、ホイールローダ1の車体の左右方向のうち、ホイールローダ1に搭乗したオペレータが前方を向いた状態での左手の方向を「左方向」とし、右手の方向を「右方向」とする。また、以下の説明では、「車体の左右方向」を単に「左右方向」とし、「車体の前後方向」を単に「前後方向」とし、「車体の上下方向」を単に「上下方向」とする場合がある。
【0016】
ホイールローダ1は、車体が中心付近で中折れすることにより操舵するアーティキュレート式の作業車両である。具体的には、車体の前部を構成する前フレーム1Aと車体の後部を構成する後フレーム1Bとが、センタジョイント10によって左右方向に回動自在に連結されており、前フレーム1Aが後フレーム1Bに対して左右方向に屈曲する。
【0017】
図2に示すように、車体には4つの車輪11が設けられており、2つの車輪11が前輪11Aとして前フレーム1Aの左右両側に、残り2つの車輪11が後輪11Bとして後フレーム1Bの左右両側に、それぞれ設けられている。なお、図1では、4つの車輪11のうち、左側の前輪11Aおよび後輪11Bのみを示している。
【0018】
前フレーム1Aの前部には、油圧駆動式の作業装置2が取り付けられている。作業装置2は、荷役作業に用いる荷役作業具としてのバケット21またはバケット21と交換可能なアタッチメントとしてのプラウ22と、バケット21またはプラウ22を駆動させる作業具シリンダ23と、バケット21またはプラウ22が先端部に取り付けられるアーム部材としてのリフトアーム24と、リフトアーム24を駆動させる2つのリフトアームシリンダ25と、リフトアーム24に回動可能に連結されてバケット21またはプラウ22と作業具シリンダ23とのリンク機構を構成するベルクランク26と、を有している。
【0019】
リフトアーム24は、基端部が前フレーム1Aに回動可能に取り付けられており、図1に示すように、ホイールローダ1が荷役作業を行う際には先端部にバケット21が装着され、図2に示すように、ホイールローダ1が除雪作業を行う際には先端部にプラウ22が装着される。
【0020】
2つのリフトアームシリンダ25は、作動油が供給されてロッド250が伸縮することによりリフトアーム24を駆動する。リフトアーム24は、2つのリフトアームシリンダ25の各ロッド250が伸びることにより前フレーム1Aに対して上方向に回動し、各ロッド250が縮むことにより前フレーム1Aに対して下方向に回動する。なお、図1では、2つのリフトアームシリンダ25のうち、左側に配置されたリフトアームシリンダ25のみを破線で示している。
【0021】
作業具シリンダ23は、作動油が供給されてロッド230が伸縮することによりバケット21またはプラウ22を駆動する。バケット21は、土砂や鉱物などを掬って積込み先に放土したり地面を均したりするための作業具であり、作業具シリンダ23のロッド230が伸びることによりチルト(リフトアーム24に対して上方向に回動)し、ロッド250が縮むことによりダンプ(リフトアーム24に対して下方向に回動)する。
【0022】
他方、プラウ22は、雪を路肩へかき寄せたりするための作業具であり、図2に示すように、連結部材220を介してリフトアーム24の先端部に取り付けられる。プラウ22は、作業具シリンダ23のロッド230が伸びることにより後傾し、ロッド230が縮むことにより前傾する。
【0023】
図2に示すプラウ22は、いわゆるマルチプラウであって、左右方向の中央に配置されて上下方向に延びる軸部221と、軸部221から左側に延在する左プレート222と、軸部221から右側に延在する右プレート223と、を有する。左プレート222および右プレート223はそれぞれ、連結部材220の左右の側部にそれぞれ取り付けられたオプションシリンダ27(図2では不図示、図6参照)によって軸部221に対して前後方向に回動する。
【0024】
具体的には、左プレート222は、左側のオプションシリンダ27のロッド270が伸びると軸部221を中心軸として前方向に回動して左端部が軸部221よりも前側に位置し、右斜め前を向くように傾斜する。また、左プレート222は、左側のオプションシリンダ27のロッド270が縮むと軸部221を中心軸として後方向に回動して左端部が軸部221よりも後側に位置し、左斜め前を向くように傾斜する(図2に示す状態)。
【0025】
同様にして、右プレート223は、右側のオプションシリンダ27のロッド270が伸びると軸部221を中心軸として前方向に回動して右端部が軸部221よりも前側に位置し、左斜め前を向くように傾斜する。また、右プレート223は、右側にオプションシリンダ27のロッド270が縮むと軸部221を中心軸として後方向に回動して右端部が軸部221よりも後側に位置し、右斜め前を向くように傾斜する(図2に示す状態)。
【0026】
このように、プラウ22では、左プレート222と右プレート223とが独立して駆動するため、1枚のプレートで形成されたプラウよりも多種多様な作業姿勢をとることが可能となっている。なお、プラウ22は、必ずしもマルチプラウである必要はなく、例えば、アングリングプラウやサイドスライドアングリングプラウなどであってもよく、プラウの種類については特に制限はない。
【0027】
図1に示すように、後フレーム1Bには、車体が傾倒しないように作業装置2とのバランスを保つカウンタウェイト12と、オペレータが搭乗する運転室13と、ホイールローダ1の駆動に必要な各機器を内部に収容する機械室14と、が設けられている。後フレーム1Bにおいて、カウンタウェイト12は後部に、運転室13は前部に、機械室14はカウンタウェイト12と運転室13との間に、それぞれ配置されている。
【0028】
<運転室13の構成>
次に、運転室13の構成について、図3~5を参照して説明する。
【0029】
図3は、運転室13内を上から見た図である。図4は、運転席31の前側に配置された各機器を拡大して示した図である。図5は、第1操作レバー351および第2操作レバー352の一構成例を示す斜視図である。
【0030】
図3に示すように、運転室3の内部には、オペレータが着座する運転席31が中央に設けられている。運転席31の前方には、4つの車輪11を操舵するステアリング用操作装置32と、ホイールローダ1の運転に係る各種機器が取り付けられたフロントコンソール33と、車体の走行操作および停止操作を行うためのペダル装置34と、が設けられている。また、運転席31の右側には、作業装置2を操作するための作業装置用操作装置35が設けられている。
【0031】
運転席31は、座面311と、背もたれとなるバックレスト312と、バックレスト312の上部に取り付けられた枕状のヘッドレスト313と、オペレータの左腕を載せるための左アームレスト314Lと、オペレータの右腕を載せるための右アームレスト314Rと、を有している。
【0032】
ステアリング用操作装置32は、運転席31の前方に回転可能に設けられて回転量(具体的には、回転角度)に応じて4つの車輪を操舵するステアリングホイール321と、ステアリングホイール321上に運転席31に向かって突出して設けられてステアリングホイール321と共に回転するステアリングノブ322と、を有している。
【0033】
ステアリングノブ322は、ステアリングホイール321を操作するにあたっての補助具である。したがって、オペレータは、ステアリングホイール321を持ってステアリング操作を行ってもよいし、ステアリングノブ322を掴んでステアリング操作を行ってもよい。
【0034】
オペレータがステアリングホイール321またはステアリングノブ322を右方向(時計回り)に回転させると車体は右方向に曲がり、オペレータがステアリングホイール321またはステアリングノブ322を左方向(反時計回り)に回転させると車体は左方向に曲がる。
【0035】
ホイールローダ1に設けられたステアリング用操作装置32では、ステアリングノブ322とステアリングホイール321とは一体に形成されている。なお、ステアリングホイール321とステアリングノブ322とは、必ずしも一体に形成されている必要はなく、例えば、ボルト締結などによってステアリングノブ322がステアリングホイール321に着脱可能に固定されていてもよい。また、ステアリング用操作装置32は、必ずしもホイール(ハンドル)式である必要はなくレバー式であってもよい。
【0036】
図4に示すように、フロントコンソール33は、車体の走行状態などを表示するメインモニタ331と、車体の設定を変更するためのスイッチなど各種の操作スイッチが取り付けられた設定パネル332と、を含んで構成される。設定パネル332は、メインモニタ331の左右両側にそれぞれ設けられており、複数の操作スイッチが上下方向に間隔を空けて並んでいる。
【0037】
右側の設定パネル332には、車体の上限車速を設定するための上限車速設定装置としての上限車速設定スイッチ332Aが一番上に取り付けられている。この上限車速設定スイッチ332Aは、上限車速を無段階で調整することが可能なダイヤル式のスイッチである。
【0038】
作業装置用操作装置35は、バケット21もしくはプラウ22、およびリフトアーム24を操作するための第1操作レバー351と、プラウ22の左プレート222および右プレート223を操作するための第2操作レバー352と、車体の駆動に係る操作を行うための複数の操作ボタン353と、を有する。図3では、作業装置用操作装置35は、運転席31の右側に載置された操作ユニット36に右アームレスト314Rと共に搭載されている。なお、作業装置用操作装置35は、必ずしも運転席31の右側に設けられている必要はなく、運転室3の仕様によっては運転席31の左側に設けられていてもよい。
【0039】
第1操作レバー351および第2操作レバー352はいずれも、傾けることにより操作入力を行うことが可能な二軸のジョイスティックレバーである。具体的には、図5に示すように、オペレータが第1操作レバー351を前後方向に倒すとリフトアーム24が動作し、オペレータが第1操作レバー351を左右方向に倒すとバケット21もしくはプラウ22が動作する。また、オペレータが第2操作レバー352を前後方向に倒すとプラウ22の右プレート223が動作し、オペレータが第2操作レバー352を左右方向に倒すとプラウ22の左プレート222が動作する。
【0040】
ホイールローダ1を用いて除雪作業を行うにあたってプラウ22を操作する場合には、オペレータは、第1操作レバー351を左右方向に操作してプラウ22の前傾および後傾を調整しつつ、第2操作レバー352を操作して左プレート222および右プレート223を調整する。また、路面の形状によっては、第1操作レバー351を前後方向に操作してリフトアーム24を上昇または下降させながらプラウ22を動作させることがある。したがって、オペレータは、第1操作レバー351および第2操作レバー352を同時に操作する場合がある。
【0041】
なお、プラウ22がアングリングプラウやサイドスライドアングリングプラウである場合には、オペレータが第2操作レバー352を前後方向に倒すとブレードがアングリングし、オペレータが第2操作レバー352を左右方向に倒すとブレードが左右方向にスライドする。
【0042】
図5に示すように、第2操作レバー352の上部には、車体の車速を制限するモードを切り替えるためのモード切替装置としてのモード切替スイッチ352Aが設けられている。モードには、上限車速を制限しない通常モードと上限車速を制限する制限モードとがある。このモード切替スイッチ352Aは、オペレータによってオン状態に操作(押下)されることで制限モードに切り替わるオンオフスイッチである。したがって、オペレータがモード切替スイッチ352Aをオン状態に操作すると通常モードから制限モードに切り替わり、オペレータがモード切替スイッチ352Aをオフ状態に操作すると制限モードから通常モードにモードが切り替わる。すなわち、モード切替スイッチ352Aが操作されることで、通常モードおよび制限モードのいずれかが選択される。
【0043】
このように、モード切替スイッチ352Aが第2操作レバー352の上部に設けられていることにより、オペレータは、第2操作レバー352から手を離さずにモード切替スイッチ352Aを操作することができる。したがって、オペレータは、プラウ22の操作をしながらモードを制限モードに切り替えることができる。
【0044】
なお、図5では、モード切替スイッチ352Aは、第2操作レバー352の上部に設けられていたが、これに限らず、例えば、第2操作レバー352の側部に設けられていてもよい。また、モード切替スイッチ352Aは、ステアリングノブ322の上部または側部に設けられていてもよい。この場合には、オペレータは、ステアリングノブ322を操作しながらモードを制限モードに切り替えることができる。
【0045】
また、第1操作レバー351の側部(後方に対向する側)には、スライドさせることで設定値などを無段階で調整することが可能なプロポーショナルスイッチ351Aが設けられている。図3および図4では、上限車速設定スイッチ332Aは、フロントコンソール33の右側の設定パネル332内に設けられていたが、例えば、このプロポーショナルスイッチ351Aを上限車速設定スイッチ332Aとしてもよい。この場合、上限車速設定スイッチ332Aは、スライドさせることで上限車速を無段階で調整することができ、ダイヤル式の場合と比べてオペレータの手元で簡単に操作することが可能となる。
【0046】
ホイールローダ1が、除雪作業などを行う場合には、車速を制限して低速で走行しながら作業装置2を動作させることになるため、モード切替スイッチ352Aや上限車速設定スイッチ332A(少なくともモード切替スイッチ352A)が作業装置用操作装置35に設けられていることで、オペレータは作業装置用操作装置35(第1操作レバー351および第2操作レバー352)から手を離すことなく、車速の制限と作業装置2の操作とを同時に行うことができる。以下、ホイールローダ1の駆動システムについて、実施形態ごとに説明する。
【0047】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るホイールローダ1の駆動システム4について、図6~8を参照して説明する。
【0048】
(駆動システム4の構成)
まず、駆動システム4の構成について、図6を参照して説明する。
【0049】
図6は、第1実施形態に係る駆動システム4の一構成例を示すシステム構成図である。
【0050】
ホイールローダ1の駆動システム4は、閉回路の油圧回路を有したHST走行駆動装置401と、作業装置2を駆動する油圧式の荷役駆動装置402と、を含んで構成される。
【0051】
HST走行駆動装置401は、エンジン40と、エンジン40により駆動される走行用油圧ポンプとしてのHSTポンプ41と、HSTポンプ41を制御するための圧油を補給するHSTチャージポンプ41Aと、一対の管路400A,400Bを介してHSTポンプ41と閉回路接続された走行用油圧モータとしてのHSTモータ42と、エンジン40やHSTポンプ41およびHSTモータ42などを制御するコントローラ5と、を有する。
【0052】
HSTポンプ41は、傾転角に応じて押し退け容積が制御される斜板式あるいは斜軸式の可変容量型の油圧ポンプである。傾転角は、コントローラ5から出力された信号にしたがってポンプ用レギュレータ410により調整される。
【0053】
HSTモータ42は、傾転角に応じて押し退け容積が制御される斜板式あるいは斜軸式の可変容量型の油圧モータであり、エンジン40の駆動力を車輪11(前輪11Aおよび後輪11B)に伝達する。傾転角は、HSTポンプ41の場合と同様に、コントローラ5から出力された信号にしたがってモータ用レギュレータ420により調整される。
【0054】
HST走行駆動装置401では、まず、運転室13内に設けられたアクセルペダル(ペダル装置34に含まれる)をオペレータが踏み込むと、アクセルペダルの踏込量に応じてエンジン40が回転し、エンジン40の駆動力によりHSTポンプ41が駆動する。そして、HSTポンプ41から吐出した圧油によりHSTモータ42が回転し、HSTモータ42からの出力トルクがアクスル15を介して前輪11Aおよび後輪11Bに伝達されることにより、ホイールローダ1が走行する。
【0055】
具体的には、アクセルペダルの踏込量が大きくなると、エンジン40の回転数が増加してHSTポンプ41の吐出流量が増え、HSTポンプ41からHSTモータ42に流入する圧油の流量が増える。これにより、HSTモータ42の回転数が増加し、車速が速くなる。一方、アクセルペダルの踏込量が小さくなると、エンジン40の回転数が減少してHSTポンプ41の吐出流量が減り、HSTポンプ41からHSTモータ42に流入する圧油の流量が減る。これにより、HSTモータ42の回転数が減少し、車速が遅くなる。
【0056】
このように、HST走行駆動装置401では、HSTポンプ41の吐出流量を連続的に増減させることにより車速を調整(変速)するため、ホイールローダ1は滑らかな発進、および衝撃の少ない停止が可能となる。なお、必ずしもHSTポンプ41側において吐出流量を調整することで車速を制御する必要はなく、HSTモータ42側において押しのけ容積を調整することで車速を制御してもよい。したがって、コントローラ5によりHSTポンプ41の押しのけ容積またはHSTモータ42の押しのけ容積を制御することで、アクセルペダルの踏込量にかかわらず(エンジン40の回転数にかかわらず)車速を調整することができる。
【0057】
本実施形態では、上限車速を1~4速度段に選択する速度段スイッチ332Bが設けられている。この速度段スイッチ332Bは、ホイールローダ1の前進走行に対して主に使用される。1~4速度段のうち、1速度段および2速度段が「低速度段」に、3速度段および4速度段が「中~高速度段」に、それぞれ相当する。例えば、「低速度段」は、積込作業や除雪作業など、ゆっくり走行しながら作業装置2を動作させるような作業の場合に選択される。他方、「中~高速度段」は、ホイールローダ1が空荷の状態で道路を走行するような場合に選択される。なお、前述した上限車速設定スイッチ332Aは、1~4速度段における各上限車速の値を設定する。
【0058】
荷役駆動装置402は、エンジン40により駆動されて作業具シリンダ23、リフトアームシリンダ25、およびオプションシリンダ27のそれぞれに作動油を供給する荷役用油圧ポンプ43と、作動油を貯留する作動油タンク44と、各シリンダ23,25,27と荷役用油圧ポンプ43との間に設けられて荷役用油圧ポンプ43から各シリンダ23,25,27のそれぞれに供給される作動油の流れ(方向および流量)を制御するコントロールバルブ45と、コントローラ5から出力された指令信号にしたがってコントロールバルブ45を制御する電磁比例弁46と、を有する。
【0059】
なお、図6では、リフトアームシリンダ25およびオプションシリンダ27はいずれも、2つのうちの片方のみを図示している。また、コントロールバルブ45は、実際には、各シリンダ23,25,27に対応してそれぞれ設けられており、電磁比例弁46は、各コントロールバルブ45に対して一対設けられているが、図6では図示を省略している。
【0060】
荷役用油圧ポンプ43は、固定容量式の油圧ポンプであり、エンジン40の回転数に応じた吐出流量の作動油が吐出する。荷役用油圧ポンプ43から吐出された作動油は、コントロールバルブ45を介して各シリンダ23,25,27に流入する。これにより、各シリンダ23,25,27のロッド230,250,270が伸縮する。なお、荷役用油圧ポンプ43は、必ずしも固定容量式の油圧ポンプである必要はなく、可変容量型の油圧ポンプであってもよい。
【0061】
(コントローラ5の構成)
次に、コントローラ5の構成について、図7を参照して説明する。
【0062】
図7は、コントローラ5が有する機能を示す機能ブロック図である。
【0063】
コントローラ5は、CPU、RAM、ROM、HDD、入力I/F、および出力I/Fがバスを介して互いに接続されて構成される。そして、モード切替スイッチ352A、上限車速設定スイッチ332A、第1操作レバー351、および第2操作レバー352といった各種の操作装置などが入力I/Fに接続され、ポンプ用レギュレータ410およびモータ用レギュレータ420がそれぞれ出力I/Fに接続されている。
【0064】
このようなハードウェア構成において、ROMやHDD若しくは光学ディスク等の記録媒体に格納された制御プログラム(ソフトウェア)をCPUが読み出してRAM上に展開し、展開された制御プログラムを実行することにより、制御プログラムとハードウェアとが協働して、コントローラ5の機能を実現する。
【0065】
なお、本実施形態では、コントローラ5をソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成されるコンピュータとして説明しているが、これに限らず、例えば他のコンピュータの構成の一例として、ホイールローダ1の側で実行される制御プログラムの機能を実現する集積回路を用いてもよい。
【0066】
コントローラ5は、データ取得部51と、モード判定部52と、操作判定部53と、信号出力部54と、含む。
【0067】
データ取得部51は、モード切替スイッチ352Aから出力されたモード切替信号、第1操作レバー351および第2操作レバー352のそれぞれから出力された操作信号、および上限車速設定スイッチ332Aから出力された設定値に関するデータを取得する。
【0068】
モード判定部52は、データ取得部51で取得されたモード切替信号に基づいて、モード切替スイッチ352Aが制限モードに切り替わったか否か、すなわちオン状態となったか否かを判定する。
【0069】
操作判定部53は、データ取得部51で取得された操作信号に基づいて、第1操作レバー351または第2操作レバー352が操作されたか否か、すなわち作業装置2が動作しているか否かを判定する。
【0070】
信号出力部54は、モード判定部52においてモード切替スイッチ352Aが制限モードに切り替わったと判定され、かつ、操作判定部53において第1操作レバー351または第2操作レバー352が操作されたと判定された場合に、上限車速がデータ取得部51で取得された値となるように、ポンプ用レギュレータ410およびモータ用レギュレータ420に対して制限信号を出力する。
【0071】
このように、コントローラ5は、モード切替スイッチ352Aが制限モードに切り替わること、および、第1操作レバー351または第2操作レバー352が操作されることの2つの条件が成立した場合に限り、上限車速を制限する。なお、コントローラ5は、上限車速を制限している場合においても、アクセルペダルの踏込量に応じたエンジン目標回転数のままとなるように、エンジン40の回転数を制御する。
【0072】
例えば、ホイールローダ1が道路で除雪作業を行う場合に、交差点では、進行方向の道路に対して交差する道路上に雪を溜めないようにする必要がある。ホイールローダ1は、交差点に差し掛かる前には除雪する対象の雪を車体の左側方へ除雪すべく、プラウ22を上面視において左傾斜させた状態(プラウ22の左端部がプラウ22の右端部よりも後方となる姿勢)で前進している。そして、ホイールローダ1が交差点に差し掛かると、オペレータは、プラウ22を上述した上面視左傾斜させた状態から上面視左右平行な状態となるように操作する。
【0073】
このとき、ホイールローダ1は、交差点進入にあたって車速を制限しながらも、プラウ22を動作させる必要がある。ここで、仮に、モード切替スイッチ352Aをオンにしただけで上限車速に制限をかけると、必要のない場面においても上限車速が制限されてしまい、除雪作業の効率の低下につながる。また、交差点で上限車速を制限させないと、プラウ22が上面視左右平行な状態になったときには、ホイールローダ1は交差点を通過した後となってしまう。
【0074】
しかしながら、本実施形態では、コントローラ5は、プラウ22を上面視左傾斜させた状態から上面視左右平行な状態にすべく第2操作レバー352が操作されたことを判定しているため、除雪作業に適したオペレータの意図するタイミングで迅速に車速を制限することができる。すなわち、このホイールローダ1では、走行しながら作業装置2を用いて作業を行っている際に、オペレータは、第2操作レバー352(またはステアリングノブ322)から手を離すことなく、必要な場面に限って、車速を制限させて低速走行しつつ、作業装置2の駆動力を増大させる操作を行うことができる。一方で、ホイールローダ1が走行しながら作業装置2を用いて作業を行っている際において、車速制限が不要な場面では、車速は制限されない。したがって、オペレータの意図したタイミングや作業場面に合わせて、アクセルペダルの踏込量にかかわらずに(作業装置2の駆動力を低下させることなく)車速を制限することができ、作業効率の向上につながる。
【0075】
なお、本実施形態では、コントローラ5は、ポンプ用レギュレータ410およびモータ用レギュレータ420の両方を制御することにより上限車速を制限しているが、上限車速の大きさによっては、ポンプ用レギュレータ410およびモータ用レギュレータ420のうちのいずれかを制御してもよい。
【0076】
(コントローラ5内における処理)
次に、コントローラ5内で実行される処理について、図8を参照して説明する。
【0077】
図8は、コントローラ5で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0078】
コントローラ5は、まず、データ取得部51が、上限車速設定スイッチ332Aで設定された設定値を取得する(ステップS501)。続いて、データ取得部51は、モード切替スイッチ352Aから出力されたモード切替信号を取得する(ステップS502)。
【0079】
次に、モード判定部52は、ステップS502において取得されたモード切替信号に基づいて、モード切替スイッチ352Aが制限モードに切り替わったか否かを判定する(ステップS503)。
【0080】
ステップS503においてモード切替スイッチ352Aが制限モードに切り替わったと判定された場合(ステップS503/YES)、データ取得部51は、第1操作レバー351または第2操作レバー352から出力された操作信号を取得する(ステップS504)。他方、ステップS503においてモード切替スイッチ352Aが制限モードに切り替わっていない、すなわちモード切替スイッチ352Aがオフ状態であると判定された場合(ステップS503/NO)、ステップS502に戻って繰り返す。
【0081】
次に、操作判定部53は、ステップS504において取得された操作信号に基づいて、第1操作レバー351または第2操作レバー352が操作されたか否かを判定する(ステップS505)。
【0082】
ステップS505において第1操作レバー351または第2操作レバー352が操作されたと判定された場合(ステップS505/YES)、信号出力部54は、上限車速がステップS501で取得された値となるように、ポンプ用レギュレータ410およびモータ用レギュレータ420に対して制限信号を出力し(ステップS506)、コントローラ5における処理が終了する。
【0083】
他方、ステップS505において第1操作レバー351および第2操作レバー352のいずれも操作されなかった、すなわち作業装置2が動作していないと判定された場合(ステップS505/NO)、ステップS502に戻って繰り返す。
【0084】
なお、ステップS503でNOとなった場合およびステップS505でNOとなった場合はいずれも、上限車速は制限されず、速度段スイッチ332Bで選択された速度段に対応した上限車速となる。また、コントローラ5における上限車速の制限制御は、主に、速度段スイッチ332Bで低速度段(1速度段または2速度段)が選択されている場合に行われる。
【0085】
図8では、ステップS503においてモード切替スイッチ352Aが制限モードに切り替わったか否かを判定した後に、ステップS505において第1操作レバー351または第2操作レバー352が操作されたか否かを判定しているが、これに限らず、例えば、第1操作レバー351または第2操作レバー352が操作されたか否かを判定した後にモード切替スイッチ352Aが制限モードに切り替わったか否かを判定してもよいし、両者を同時並行で判定してもよい。
【0086】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るホイールローダ1の駆動システム4Aについて、図9を参照して説明する。図9において、第1実施形態に係るホイールローダ1の駆動システム4について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。以下、第3実施形態についても同様とする。
【0087】
図9は、第2実施形態に係る駆動システム4Aの一構成例を示すシステム構成図である。
【0088】
本実施形態に係る駆動システム4Aは、HMT走行駆動装置401Aと、荷役駆動装置402と、を含んで構成される。HMT走行駆動装置401Aは、HSTポンプ41およびHSTモータ42が一対の管路400A,400Bを介して閉回路接続されたHST走行駆動装置401と、機械伝動部80と、を備えており、エンジン40の駆動力が遊星歯車機構81を経由してHST走行駆動装置401および機械伝動部80へパラレルに伝達される。
【0089】
遊星歯車機構81は、入力軸82に固定されたサンギア811と、サンギア811の外周に歯合された複数のプラネタリギア812と、複数のプラネタリギア812をそれぞれ軸支する遊星キャリア813と、複数のプラネタリギア812の外周に歯合されたリングギア814と、リングギア814の外周に歯合されたポンプ入力ギア815と、を有している。
【0090】
エンジン40の出力トルクは、前進用油圧クラッチ83A、後進用油圧クラッチ83B、およびクラッチシャフト83Cを有するクラッチ装置83を経由して入力軸82に伝達され、入力軸82から遊星歯車機構81に伝達される。
【0091】
ここで、遊星歯車機構81の遊星キャリア813は出力軸84に固定されており、これにより、エンジン40の駆動力が機械伝動部80に伝達される。機械伝動部80に伝達されたエンジン40の駆動力は、出力軸84に接続されたプロペラシャフト85を介してアクスル15に伝達され、これにより、複数の車輪11(前輪11Aおよび後輪11B)が駆動される。
【0092】
また、遊星歯車機構81のポンプ入力ギア815はHSTポンプ41の回転軸に固定されており、エンジン40の駆動力がHST走行駆動装置401にも伝達される。HSTモータ42の回転軸には、モータ出力ギア86が固定されており、モータ出力ギア86は、出力軸84のギア840に歯合している。したがって、HST走行駆動装置401に伝達されたエンジン40の駆動力についても、出力軸84に接続されたプロペラシャフト85を介してアクスル15に伝達され、これにより、複数の車輪11(前輪11Aおよび後輪11B)が駆動される。
【0093】
このように、HST走行駆動装置401と機械伝動部80とを組み合わせて変速機を構成することにより、第1実施形態で説明したHST式の走行駆動システムよりも伝達効率を高めることができる。なお、図9では、遊星歯車機構81からの出力をHST走行駆動装置401へ入力する入力分割型のHMT式の走行駆動システムを示しているが、これに限らず、HST走行駆動装置401からの出力を遊星歯車機構81に入力する出力分割型のHMT式の走行駆動システムであってもよい。
【0094】
本実施形態においても、第1実施形態で記載した作用および効果と同様の作用および効果を得ることができる。
【0095】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係るホイールローダ1の駆動システム4Bについて、図10を参照して説明する。
【0096】
図10は、第3実施形態に係る駆動システム4Bの一構成例を示すシステム構成図である。
【0097】
本実施形態に係る駆動システム4Bは、EMT走行駆動装置401Bと、荷役駆動装置402と、を含んで構成される。EMT走行駆動装置401Bでは、前述したHMT走行駆動装置401Aにおいて、HSTポンプ41に代えて発電機91が、HSTモータ42に代えて電動モータ92が、それぞれ設けられている。
【0098】
本実施形態では、コントローラ5は、モード切替スイッチ352Aが制限モードに切り替わり、かつ第1操作レバー351または第2操作レバー352が操作された場合に、電動モータ92の回転数を減少させて上限車速を制限する。なお、電動モータ92の回転数は、電動モータ92への電流値又は電圧値を変化させることにより調整する。
【0099】
具体的には、図8に示すステップS506に相当するステップにおいて、信号出力部54は、上限車速がステップS501で取得された値となるように、電動モータ92へ制限信号(制限に係る電流値又は電圧値)を出力する。これにより、本実施形態においても、第1実施形態で記載した作用及び効果と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0100】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0101】
例えば、上記実施形態では、バケット21とバケット21以外の作業具であるプラウ22とを交換することにより、荷役作業および除雪作業を行うことが可能なホイールローダ1について説明したが、これに限らず、荷役作業具と荷役作業具以外のアタッチメントとを交換可能することにより、荷役作業および荷役作業以外の種々の作業を行うことが可能な作業車両であればよい。
【0102】
また、上記実施形態では、オペレータの手動操作によりモード切替スイッチ352Aが制限モードに切り替わったが、これに限らず、例えば、車体に取り付けられたGPSセンサを用いてホイールローダ1の位置データを取得し、コントローラ5がホイールローダ1の交差点への進入を判定した場合にモード切替スイッチ352Aを制限モードに切り替える仕組みを構築しても良い。この場合、モード切替スイッチ352Aは、作業装置用操作装置35やステアリング用操作装置32に設けられていなくとも良い。
【符号の説明】
【0103】
1:ホイールローダ(作業車両)
1A:前フレーム
1B:後フレーム
2:作業装置
5:コントローラ
11:車輪
13:運転室
21:バケット(荷役作業具)
22:プラウ(アタッチメント)
24:リフトアーム(アーム部材)
31:運転席
32:ステアリング用操作装置
35:作業装置用操作装置
40:エンジン
41:HSTポンプ(走行用油圧ポンプ)
42:HSTモータ(走行用油圧モータ)
91:発電機
92:電動モータ
321:ステアリングホイール
322:ステアリングノブ
332A:上限車速設定スイッチ(上限車速設定装置)
351:第1操作レバー
352:第2操作レバー
352A:モード切替スイッチ(モード切替装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10