(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォームとその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20240829BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20240829BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240829BHJP
C08K 3/017 20180101ALI20240829BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240829BHJP
C08K 3/11 20180101ALI20240829BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240829BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20240829BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20240829BHJP
C08K 5/541 20060101ALI20240829BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240829BHJP
C08L 75/08 20060101ALI20240829BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
C08G18/00 J
C08G18/08 038
C08K3/013
C08K3/017
C08K3/04
C08K3/11
C08K3/22
C08K5/01
C08K5/10
C08K5/541
C08L75/04
C08L75/08
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2020182587
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞杉 誠
(72)【発明者】
【氏名】榊原 弘和
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-051166(JP,A)
【文献】特開2002-003732(JP,A)
【文献】特表2014-517114(JP,A)
【文献】特開2000-336262(JP,A)
【文献】特開2003-301041(JP,A)
【文献】国際公開第02/069765(WO,A1)
【文献】特開2012-153828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00
C08G 18/08
C08K 3/013
C08K 3/017
C08K 3/04
C08K 3/11
C08K 3/22
C08K 5/01
C08K 5/10
C08K 5/541
C08L 75/04
C08L 75/08
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、イソシアネート、触媒、熱伝導性フィラー、希釈剤、破泡剤を含むポリウレタンフォーム原料から得られるポリウレタンフォームであって、
前記熱伝導性フィラーは、鱗片状黒鉛、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ素(金属シリコン)、窒化ホウ素のいずれかを含み、
前記熱伝導性フィラーの配合量は、ポリオール100重量部に対して50~400重量部であり、
前記希釈剤は、物理発泡剤であ
り、
前記破泡剤は、炭化水素系、エステル系、及びシリコーン系からなる群から選択される少なくとも1種の破泡剤であることを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項2】
ポリオール、イソシアネート、触媒、熱伝導性フィラー、希釈剤を含むポリウレタンフォーム原料から得られるポリウレタンフォームであって、
前記熱伝導性フィラーは、鱗片状黒鉛、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ素(金属シリコン)、窒化ホウ素のいずれかを含み、
前記熱伝導性フィラーの配合量は、ポリオール100重量部に対して50~400重量部であり、
前記希釈剤は、物理発泡剤であり、
前記希釈剤の配合量は、ポリオール100重量部に対して20~30重量部であることを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項3】
ポリオール、イソシアネート、触媒、熱伝導性フィラー、希釈剤、破泡剤を含むポリウレタンフォーム原料から得られるポリウレタンフォームであって、
前記熱伝導性フィラーの配合量は、ポリオール100重量部に対して50~400重量部であり、
前記ポリオールは、ポリエーテルポリオールであり、
前記希釈剤は、物理発泡剤であ
り、
前記破泡剤は、炭化水素系、エステル系、及びシリコーン系からなる群から選択される少なくとも1種の破泡剤であることを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項4】
ポリオール、イソシアネート、触媒、熱伝導性フィラー、希釈剤を含むポリウレタンフォーム原料から得られるポリウレタンフォームであって、
前記熱伝導性フィラーの配合量は、ポリオール100重量部に対して50~400重量部であり、
前記ポリオールは、ポリエーテルポリオールであり、
前記希釈剤は、物理発泡剤であり、
前記希釈剤の配合量は、ポリオール100重量部に対して20~30重量部であることを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項5】
ポリオール、イソシアネート、触媒、熱伝導性フィラー、希釈剤、破泡剤を含むポリウレタンフォーム原料から得られるポリウレタンフォームであって、
前記熱伝導性フィラーの配合量は、ポリオール100重量部に対して50~400重量部であり、
前記破泡剤は、ポリブテン、ダイマー酸ジエステル、シクロペンタンシロキサンのいずれかを含み、
前記希釈剤は、物理発泡剤であ
り、
前記破泡剤は、炭化水素系、エステル系、及びシリコーン系からなる群から選択される少なくとも1種の破泡剤であることを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項6】
前記物理発泡剤の沸点が、10℃~80℃である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項7】
請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の
ポリウレタンフォーム原料を用いるポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性が良好なポリウレタンフォームとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、OA機器や電気製品等には制振材や防音材としてポリウレタンフォームが使用されている。例えば、PCのハードディスクドライブや電気自動車の電気モータなどには、筐体の内部や外面にポリウレタンフォームを配置して制振や防音性を高めることが行われる。また、ハードディスクドライブや電気モータは、作動時の発熱で高温になることがあるため、ポリウレタンフォームには、外部への放熱性の観点から、良好な熱伝導性が求められる。
【0003】
ポリウレタンフォームに熱伝導性を付与する方法として、ポリウレタンフォーム原料に黒鉛などの熱伝導性フィラーを配合することが行われている。しかし、熱伝導性を高めるため、ポリウレタンフォーム原料に熱伝導性フィラーを大量に配合すると、ポリウレタンフォーム原料の粘度が著しく上昇して均一な撹拌混合が難しくなり、良好なポリウレタンフォームが得られなくなったり、撹拌時間が長くなりすぎて作業性に劣るようになったりする問題がある。
【0004】
また、熱伝導性粒子の表面にバインダーにより接着された磁性粒子を含む発泡ウレタン樹脂原料を、発泡型のキャビティに投入(注入)し、キャビティ内の磁束密度が略均一になるように磁場をかけながら発泡成形してポリウレタンフォームを製造する方法がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、磁場をかけながら発泡成形する方法は、磁場を発生させる装置などにコストが嵩む問題がある。
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、コストが嵩む磁場発生装置などが不要であって、良好な熱伝導性を有するポリウレタンフォームの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の手段は、ポリオール、イソシアネート、触媒、熱伝導性フィラー、希釈剤を含むポリウレタンフォーム原料から得られるポリウレタンフォームであって、前記熱伝導性フィラーの配合量は、ポリオール100重量部に対して50~400重量部であり、前記希釈剤は、物理発泡剤である。
【0008】
第2の手段は、ポリオール、イソシアネート、触媒、熱伝導性フィラー、希釈剤を含むポリウレタンフォーム原料を金型に充填して発泡させるポリウレタンフォームの製造方法において、前記熱伝導性フィラーの配合量は、ポリオール100重量部に対して50~400重量部であり、前記希釈剤は、物理発泡剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ポリウレタンフォーム原料に希釈剤として物理発泡剤を含むため、熱伝導性フィラーの配合量を従来よりも多くしても、ポリウレタンフォーム原料の混合撹拌時の粘度増大を抑えることができ、撹拌不良及び撹拌時間の長時間化を防ぐことができる。その結果、良好に発泡した熱伝導性の高いポリウレタンフォームを、作業性よく得ることができる。また、ポリウレタンフォームは、発泡時に反応熱により徐々に発熱してポリウレタンフォームの内部温度が60℃以上に達するため、物理発泡剤からなる希釈剤が揮発し、残存希釈剤による悪影響を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例におけるポリウレタンフォーム原料の配合と撹拌性及び熱伝導性等の結果を示す表である。
【
図2】比較例におけるポリウレタンフォーム原料の配合と撹拌性及び熱伝導性等の結果を示す表である。
【
図3】一部の実施例と比較例に対する粘度測定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のポリウレタンフォームについて、実施形態を説明する。本発明のポリウレタンフォームは、ポリオール、イソシアネート、触媒、熱伝導性フィラー、希釈剤を含むポリウレタンフォーム原料から得られる。
【0012】
ポリオールとしては、ポリウレタンフォーム用のポリオールを使用することができ、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等の何れでもよく、それらの一種類あるいは二種類以上を使用してもよい。
【0013】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0014】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールを挙げることできる。
また、ポリエーテルエステルポリオールとしては、前記ポリエーテルポリオールと多塩基酸を反応させてポリエステル化したもの、あるいは1分子内にポリエーテルとポリエステルの両セグメントを有するものを挙げることができる。
【0015】
ポリオールについては、水酸基価(OHV)が10~280mgKOH/g、官能基数が2~4、数平均分子量が800~10000(より好適には2000~7000)であるポリオールを単独または複数用いることが好ましい。
【0016】
イソシアネートとしては、イソシアネート基を2以上有する脂肪族系または芳香族系ポリイソシアネート、それらの混合物、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートを使用することができる。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキサメタンジイソシアネート等を挙げることができ、芳香族ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックMDI(クルードMDI)等を挙げることができる。なお、その他プレポリマーも使用することができる。
【0017】
イソシアネートインデックス(INDEX)は75~120が好ましい。イソシアネートインデックスは、[(ポリウレタンフォーム原料中のイソシアネート当量/ポリウレタンフォーム原料中の活性水素の当量)×100]で計算される。
【0018】
触媒としては、ポリウレタンフォーム用として公知のものを用いることができる。例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N-エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等のスズ触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができる。触媒の量は、ポリオール100重量部に対して0.5~3重量部程度が好ましい。
【0019】
発泡剤としては、化学的発泡剤及び物理的発泡剤からなる群から選択される。化学的発泡剤は、発泡成形において化学反応に基づいて気泡を形成するためのガスを発生させる物質であり、物理的発泡剤は、物質の状態変化により発泡成形において気泡を形成するものである。液状(液体)の化学的発泡剤又は物理的発泡剤が、原料混合および発泡性の観点で好ましく、特に10℃で液状(液体)の化学的発泡剤又は物理的発泡剤が好ましい。化学発泡剤としては、原材料の混合の観点で水が入っていることが好ましい。発泡剤(水)の量は、ポリオール100重量部に対して0.5~1.5重量部が好ましい。発泡剤(水)の量が0.5重量部未満の場合には原材料の混合、反応性が悪くなって成形不良が起きやすい。一方、1.5重量部を超えると発泡ガスが増大して成形物の内部にクラックが生じやすく、熱伝導性が低下するようになる。
【0020】
熱伝導性フィラーとしては、膨張黒鉛、膨張化黒鉛、鱗片状黒鉛、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ素(金属シリコン)、窒化ホウ素等を挙げることができる。ここで、膨張化黒鉛は、例えば、鱗片状黒鉛などの黒鉛を硫酸などで化学処理して得た膨張性黒鉛を、熱処理して膨張させた後、微細化することにより得ることができる。熱伝導性フィラーは、一種類に限られず、複数種類を併用してもよい。
【0021】
熱伝導性フィラーの配合量は、ポリオール100重量部に対し50~400重量部が好ましく、さらに100~350重量部が好ましく、より好ましくは200~300重量部である。熱伝導性フィラーの配合量が少なすぎると、ポリウレタンフォームの熱伝導性が低くなり、逆に多すぎるとポリウレタンフォームの発泡が悪くなる。
【0022】
希釈剤は、物理発泡剤からなる。物理発泡剤としては、沸点が10~80℃、好ましくは15~60℃のものが好ましい。希釈剤は、沸点が10~80℃であるため、ポリウレタンフォーム原料の混合撹拌時に液状であり、熱伝導性フィラーの配合量を増大させても、ポリウレタンフォーム原料の混合撹拌時の粘度増大を抑えることができ、撹拌不良及び撹拌時間の長時間化を防ぐことができる。その結果、良好に発泡した熱伝導性の高いポリウレタンフォームを、作業性よく得ることができるようになる。
【0023】
また、希釈剤は、ポリウレタンフォームの発泡時の発熱によって希釈剤が揮発し、残存希釈剤によるポリウレタンフォームへの悪影響を防ぐことができる。
【0024】
沸点が10~80℃の物理発泡剤からなる希釈剤としては、ペンタン等の炭化水素化合物、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、パーフルオロカーボン(PFC)等のフロン化合物等が挙げられる。希釈剤は、一種類に限られず、二種類以上を使用してもよい。
希釈剤の配合量は、ポリオール100重量部に対して10~30重量部が好ましい。
【0025】
ポリウレタンフォーム原料には、破泡剤を含むのが好ましい。破泡剤は、ポリウレタンフォームの発泡時に泡を破壊する作用を有するものである。破泡剤をポリウレタンフォーム原料に配合することにより、特にポリウレタンフォーム成形体の密度が高い領域(密度が1.1g/cm3以上~1.6g/cm3)で、ポリウレタンフォーム内のクラックや、モールド成形時のバリの発生を抑えることができ、優れた熱伝導性を有するポリウレタンフォームを良好に製造することができるようになる。
【0026】
破泡剤の種類としては、炭化水素系、エステル系、シリコーン系を挙げることができ、それらの二種類以上を使用してもよい。
炭化水素系の破泡剤としては、ポリブテン等のオイル類を挙げることができる。エステル系の破泡剤としては、ダイマー酸ジエステル等を挙げることができる。シリコーン系の破泡剤としては、シクロペンタシロキサン等を挙げることができる。
【0027】
破泡剤を配合する場合の配合量は、ポリオール100重量部に対して、1~15重量部が好ましい。破泡剤の配合量が多すぎると、ポリウレタンフォームの良好な発泡が難しくなる。
【0028】
ポリウレタンフォーム原料には、その他の助剤を加えてもよい。助剤として、例えば、整泡剤、着色剤、難燃剤等を上げることができる。
整泡剤としては、ポリウレタンフォーム用として公知のものを使用することができる。例えば、シリコーン系整泡剤、フッ素系整泡剤および公知の界面活性剤を挙げることができる。整泡剤はポリウレタンフォーム原料を均一に混合する点で加えた方が好ましい。
着色剤としては、カーボン顔料等、ポリウレタンフォームの用途等に応じたものを使用できる。
難燃剤としては、リン系、ポリリン酸アンモニウム等の粉体難燃剤や、リン酸エステル系難燃剤等の液体難燃剤があり、何れか一方あるいは両方の併用であってもよい。
【0029】
本発明のポリウレタンフォームは、密度(JIS K 7222)が0.70~1.65g/cm3程度が好ましい。
また、本発明のポリウレタンフォームは、熱伝導率(熱線法を用いて熱伝導率を測定する京都電子工業社製測定器 QTM500を使用し測定)が0.5W/m・K以上が好ましい。
【0030】
本発明のポリウレタンフォームは、電気自動車、ハイブリッド自動車のモータ、インバーター、DCコンバーター、電池用の放熱部材、制振部材等の用途に好適である。
【0031】
ポリウレタンフォームの製造は、ポリウレタンフォーム原料を攪拌混合して金型に投入(注入)し、金型内で発泡させた後に金型を開け、成形品を取り出すモールド発泡成形法で行う。金型のキャビティは、ポリウレタンフォームの用途に応じた製品形状となっている。また、金型には、上型と下型の接触面に、ガス抜き用のスリットを設け、ポリウレタンフォーム発泡時の発生ガスを放出できるようになっている。
【実施例】
【0032】
以下の原料を用い、モールド発泡成形法で各実施例及び各比較例のポリウレタンフォームを製造した。具体的には、
図1又は
図2の配合でポリウレタンフォーム原料を調製し、攪拌混合後のポリウレタンフォーム原料を下型のキャビティに、
図1又は
図2に示す金型投入量で投入し、上型を被せて閉型し、8分後に金型を開けてポリウレタンフォームを得た。金型のキャビティは、100×150×t10mmであり、上型と下型の接触面にガス抜き用スリットが設けられている。
【0033】
なお、ポリウレタンフォーム原料の混合撹拌時の原料温度は、23℃とした。希釈剤を配合しない比較例についても同様に23℃とした。
また、金型温度は、希釈剤の沸点以上とし、64℃とした。
【0034】
・ポリオール:ポリエーテルポリオール、Mw5000、水酸基価34mgKOH/g、官能基数3、品番;サンニックスFA-703、三洋化成工業株式会社
・触媒:品番;DABCO 33LSI、EVONIK社
・熱伝導性フィラーA:膨張黒鉛、平均粒子径300μm、品番;SYZR502FP、三洋貿易株式会社
・熱伝導性フィラーB:金属シリコン、平均粒子径20μm、品番;#200、キンセイマテック株式会社
【0035】
・整泡剤:シリコーン整泡剤、品番;B8738LF2、EVONIK社
・破泡剤:ダイマー酸ジエステル、品番;ADDITIVE T、日立化成株式会社
・発泡剤:水
・希釈剤A:ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、沸点;19℃、品番;ソルスティス(登録商標)1233zd(E)、ハネウェル社
・希釈剤B:ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、沸点;39℃、品番; CELEFIN1233Z、セントラル硝子社
・希釈剤C:パーフルオロカーボン(PFC)、沸点;56℃、品番;PF-5060、3M社
・可塑剤:アルキルスルフォン酸エステル、沸点;300℃、品番;メモザール、ランクセス社
・イソシアネート:プレポリマー系MDI、NCO%=27%、品番;M249、住化コベストロウレタン株式会社
なお、
図1及び
図2における重量固形分割合は、ポリウレタンフォーム原料中の熱伝導性フィラーの割合である。
【0036】
ポリウレタンフォーム原料の20℃と30℃における粘度を、希釈剤の配合量や種類が異なる実施例1~5と実施例7、及び希釈剤と可塑剤の何れも配合されていない比較例1と比較例9、希釈剤に代えて可塑剤が配合されている比較例3~5について行った。粘度の測定方法は、B型粘度計(TVB-15、東機産業社製)を使用し測定した。粘度の測定結果を
図3の表及び
図4のグラフに示す。
【0037】
図1及び
図2に示す各実施例及び各比較例について、ポリウレタンフォーム原料の撹拌時間を測定し、撹拌不良の有無を判断し、撹拌性を評価した。撹拌時間は、予め設定した。撹拌は、直径80mmの4枚羽根を用い、回転速度は2000rpmである。撹拌不良の有無は、目視で成形体の外観を観察し、成形体に未反応の原料が残存している場合に撹拌不良「有」とし、未反応の原料が無い場合に撹拌不良「無」とした。撹拌性の評価は、撹拌時間が13秒以下で、かつ撹拌不良「無」の場合に「〇」、撹拌時間が13秒より長い、または撹拌不良が「有」の場合に「×」とした。
【0038】
各実施例及び各比較例について成形性を評価した。成形性の評価は、成形体の成形異常の有無を目視で確認し、クラックや欠肉がない場合には「〇」、クラックや欠肉がある場合には「×」とした。
【0039】
また、ポリウレタンフォームの密度(g/cm3)、熱伝導率(W/m・K)を測定した。
密度(g/cm3)の測定は、JIS K 7222に基づいて行った。
熱伝導率(W/m・K)の測定は、熱線法を用いて熱伝導率を測定する測定器(QTM500、京都電子工業社製)を使用して行った。
熱伝導性の評価は、成形体の密度のバラツキを考慮し、熱伝導率を密度で除した値である、熱伝導率/密度[(W/m・K)/(g/cm3)]が、比較対象となる比較例の値と同等または上回る場合に「〇」、下回る場合に「×」とした。なお、比較対象は、検討する条件を揃えて比較した。
また、総合評価は、撹拌性評価が「〇」、成形性評価が「〇」、かつ熱伝導性評価が「〇」の場合に総合評価「〇」、撹拌性評価と成形性評価と熱伝導性評価のいずれか1つでも「×」の場合に総合評価「×」とした。
【0040】
図3及び
図4の粘度測定結果について説明する。
希釈剤A~Cが配合された実施例1~5、7は、20℃の粘度が29,000~200,000mPa・s、30℃の粘度が24,000~110,000であり、何れも低い値であったのに対し、希釈剤も可塑剤も配合されていない比較例1、9及び希釈剤に代えて可塑剤が配合された比較例3~5は、20℃の粘度が210,000~1,400,000mPa・s、30℃の粘度が130,000~1,800,000であり、実施例よりも高い値であった。このように、希釈剤A~Cを配合することによって、20℃及び30℃の粘度を低下させることができる。
【0041】
図1及び
図2に示す各実施例及び各比較例について、撹拌性、成形性、熱伝導性及び総合評価を説明する。
実施例1、2、3は、希釈剤Aの配合量を10~30重量部の範囲で変化させた例である。また、実施例2’は、実施例2における破泡剤の配合量10重量部を0重量部にし、他を実施例2と同様にした例である。実施例1、2、3及び実施例2’の比較対象は、希釈剤A~C及び可塑剤の何れも配合されていない比較例1である。
実施例1、2、3及び実施例2’は、撹拌時間が8~13秒、撹拌不良「無」、撹拌性評価「〇」、成形性評価「〇」、密度が1.00~1.08g/cm
3、熱伝導率/密度の値が0.97~1.00、熱伝導性の評価「〇」、総合評価「〇」であった。
なお、比較対象の比較例1は、撹拌時間が20秒、撹拌性評価「×」、成形性評価「〇」、密度が1.06g/cm
3、熱伝導率/密度の値が0.97、総合評価「×」であった。
【0042】
実施例4は、希釈剤Bを20重量部、実施例5は希釈剤Cを20重量部配合した例である。実施例4と実施例5は、撹拌時間が10秒、撹拌不良「無」、撹拌性評価「〇」、成形性評価「〇」、密度が0.94~0.96g/cm3、熱伝導率/密度の値が0.98と0.97、熱伝導性の評価「〇」、総合評価「〇」であった。
なお、比較対象の比較例1は、撹拌時間が20秒、撹拌性評価「×」、成形性評価「〇」、密度が1.06g/cm3、熱伝導率/密度の値が0.97、総合評価「×」であった。
【0043】
実施例6は金型へのポリウレタンフォーム原料の投入量を、実施例1の164gから200gに増加させて、密度を実施例1の1.02g/cm3から1.20g/cm3に高くした例である。比較対象は、密度がほぼ同じ値の1.23g/cm3である比較例6である。
実施例6は、撹拌時間が13秒、撹拌不良「無」、撹拌性評価「〇」、成形性評価「〇」、熱伝導率/密度の値が1.28、熱伝導性の評価「〇」、総合評価「〇」であった。
なお、比較対象の比較例6は、撹拌時間20秒、撹拌性評価「×」、成形性評価「〇」、熱伝導率/密度の値が1.24、総合評価「×」であった。
【0044】
実施例7は、熱伝導性フィラーAとBの配合量を他の実施例よりも増加させた例である。比較対象は、熱伝導性フィラーAとBの配合量が多く、かつ成形体が得られた比較例9である。
実施例7は、撹拌時間が12秒、撹拌不良「無」、密度が0.98g/cm3、熱伝導率/密度の値が1.07、撹拌性評価「〇」、成形性評価「〇」、熱伝導率/密度の値が1.07、熱伝導性の評価「〇」、総合評価「〇」であった。
なお、比較対象の比較例9は、撹拌時間25秒、撹拌性評価「×」、成形性評価「〇」、密度が1.03g/cm3、熱伝導率/密度の値が1.07、総合評価「×」であった。
【0045】
比較例1は、実施例1の配合における希釈剤Aの配合量を0重量部にした例である。
比較例1は、撹拌時間が実施例1の13秒よりも長い20秒であり、撹拌性評価「×」、成形性評価「〇」、総合評価「×」であった。
比較例2は、比較例1と撹拌時間のみが異なる例である。比較対象は、比較例1である。
比較例2は、撹拌時間13秒、撹拌性評価「×」、成形性評価「〇」であり、撹拌性が悪かったために密度及び熱伝導性を測定できず、総合評価「×」であった。
比較例1及び比較例2のように、希釈剤Aの配合量を0重量部にすると、実施例1よりも長い撹拌時間が必要になった。
【0046】
比較例3~5は、実施例1、2、3の希釈剤Aに代えて希釈剤と同量の可塑剤を配合した例である。比較対象は、希釈剤も可塑剤も配合されていない比較例1である。
比較例3は、可塑剤の配合量が10.0重量部、撹拌時間15秒、撹拌性評価「×」、成形性評価「〇」、熱伝導率/密度の値が0.91、熱伝導性評価「×」、総合評価「×」であった。
比較例4は、可塑剤の配合量が20.0重量部、撹拌時間13秒、撹拌性評価「〇」、成形性評価「〇」、熱伝導率/密度の値が0.87、熱伝導性評価「×」、総合評価「×」であった。
比較例5は、可塑剤の配合量が30.0重量部、撹拌時間10秒、撹拌性評価「〇」、成形性評価「〇」、熱伝導率/密度の値が0.75、熱伝導性評価「×」、総合評価「×」であった。
比較例3~5では、可塑剤の配合量増加によって撹拌時間を短縮できるが、熱伝導率/密度の値が低く(悪く)なった。
【0047】
比較例6は、実施例6における希釈剤Aの配合量を0重量部とし、金型投入量を実施例6とほぼ等しくした例である。
比較例6は、撹拌時間20秒、撹拌性評価「×」、成形性評価「〇」、総合評価「×」であった。
比較例6は、希釈剤A及び可塑剤の何れも配合されていないため、撹拌時間を長くする必要があった。
【0048】
比較例7は、実施例7における希釈剤Aの配合量を0重量部とした例である。
比較例7は、撹拌時間20秒、撹拌性評価「×」、成形性評価「×」、熱伝導率は成形体に欠肉が存在して測定不可、総合評価「×」であった。
比較例7は、希釈剤A及び可塑剤の何れも配合されていないため、撹拌時間を長くしても成形性が悪くなった。
【0049】
比較例8は、比較例7における熱伝導性フィラー及び発泡剤(水)の配合量を増加させた例である。
比較例8は、撹拌時間12秒、撹拌不良「有」、撹拌性評価「×」、成形性評価「〇」、熱伝導率は撹拌性悪く測定不可、総合評価「×」であった。
比較例8は、希釈剤A及び可塑剤の何れも配合されていないため、撹拌時間12秒では撹拌不良となった。
【0050】
比較例9は、比較例8における撹拌時間を25秒に増加した例である。
比較例9は、撹拌時間25秒、撹拌不良「無」、撹拌性評価「×」、成形性評価「〇」、熱伝導率/密度の値が1.07、総合評価「×」であった。比較例9は、撹拌時間を長くしたことにより、撹拌不良「無」になったが、撹拌時間が長いために撹拌性評価「×」、総合評価「×」であった。
【0051】
比較例10は、比較例6に希釈剤Aを10重量部添加し、撹拌時間を12秒に短縮しており、かつ配合中から破泡剤を抜いた例である。比較対象は比較例6である。
比較例10は、撹拌性評価「〇」、破泡剤を含まず、かつ高密度のため成形品の内部にクラックが発生したため、成形性評価「×」、熱伝導性評価「×」、総合評価「×」であった。
【0052】
このように、本発明は、コストが嵩む磁場発生装置などが不要であり、熱伝導性フィラーの配合量を増加させても、撹拌不良及び撹拌時間の長時間化を抑えることができるため、良好な熱伝導性を有し、かつ成形性が良好で安価なポリウレタンフォームを得ることができる。
なお、本発明は、前記の実施例に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。