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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】塗装システム
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20240829BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240829BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20240829BHJP
   B05B 13/04 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/00 101
B05C11/00
B05B13/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020200113
(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公開番号】P2022087954
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】弓削 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】上原 義貴
(72)【発明者】
【氏名】内山 典子
(72)【発明者】
【氏名】福山 康弘
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-040037(JP,A)
【文献】特開2017-109339(JP,A)
【文献】特開2017-154135(JP,A)
【文献】特開2006-297176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 11/10
B05C 5/00
B05C 11/00
B05B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に供給された塗料を粒状化して吐出するプリントヘッドと、
被塗装物に対して前記プリントヘッドを移動させる移動操作部と、
前記プリントヘッドから前記被塗装物に至る距離を検出する距離検出部と、
前記プリントヘッドからの塗料の吐出速度を制御するための吐出制御部とを備え、
前記プリントヘッドが、
塗料吐出用の複数の吐出ノズルと、前記吐出ノズル毎に配置した塗料加圧用のアクチュエータとを備え、
前記距離検出部が、夫々の前記吐出ノズルから前記被塗装物に至る夫々のスポット距離を検出し、
前記吐出制御部が、前記スポット距離が大きいほど、前記吐出ノズルからの塗料の吐出速度が上がるように、前記アクチュエータを制御し、
前記吐出制御部が、夫々の前記スポット距離に基づいて、前記被塗装物の表面の傾斜角度を算出し、前記傾斜角度が所定値以上で且つその表面が下向きの傾斜面である場合に、前記傾斜面に該当する前記吐出ノズルからの塗料の粒の大きさが小さくなるように、前記アクチュエータを制御することを特徴とする塗装システム。
【請求項2】
前記吐出制御部が、夫々の前記スポット距離が所定値以上になった際、前記スポット距離が相対的に小さい前記吐出ノズルの前記アクチュエータを停止すると共に、前記スポット距離が相対的に大きい前記吐出ノズルの前記アクチュエータを駆動する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の塗装システム。
【請求項3】
前記プリントヘッドが、内部に供給された塗料の粘度を検出する粘度検出部を備え、
前記吐出制御部が、前記粘度検出部により検出した粘度が高くなるほど、前記吐出ノズルからの塗料の吐出速度が上がるように、前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項1に記載の塗装システム。
【請求項4】
前記プリントヘッドが、前記被塗装物における未塗装領域及び既塗装領域を検出する塗装検出部を備え、
前記吐出制御部が、前記塗装検出部により検出した前記既塗装領域に該当する前記吐出ノズルの前記アクチュエータを停止すると共に、前記未塗装領域に該当する前記吐出ノズルの前記アクチュエータを駆動する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の塗装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリントヘッドを使用する塗装システムに関し、自動車の車体塗装などに用いられる塗装システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリントヘッドを使用する塗装システムとしては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載の塗装機器は、多軸ロボットのハンド部に、塗装剤を吐出するプリントヘッドを設けた構造である。プリントヘッドは、塗装剤を粒状化して吐出する複数のノズルを備えると共に、塗装部品上のガイド経路の方向を検知するセンサを備えている。そして、塗装機器は、ロボット制御装置を備え、このロボット制御装置により、センサからの入力に基づいて、プリントヘッドがガイド経路に沿って移動するように多軸ロボットをフィードバック制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5976320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したようなプリントヘッドを使用する塗装システムでは、プリントヘッドの複数のノズルから塗料を吐出させて被塗装物に塗装を行うので、被塗装物の表面に起伏がある場合、ノズル毎に被塗装物に至る距離が異なる場合がある。このため、従来の塗装システムでは、ノズルから被塗装物に至る距離が相対的に大きい箇所で、吐出した塗料の着滴位置にずれが生じ易いという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。なお、塗料の着滴位置のずれは、塗装むらの原因にもなる。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたもので、プリントヘッドを使用する塗装において、被塗装物の表面に起伏がある場合でも、塗料の着滴位置のずれを防止して、良好な塗装品質を得ることができる塗装システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わる塗装システムは、内部に供給された塗料を粒状化して吐出するプリントヘッドと、被塗装物に対してプリントヘッドを移動させる移動操作部と、プリントヘッドから被塗装物に至る距離を検出する距離検出部と、プリントヘッドからの塗料の吐出速度を制御するための吐出制御部とを備えている。プリントヘッドは、塗料吐出用の複数の吐出ノズルと、吐出ノズル毎に配置した塗料加圧用のアクチュエータとを備えている。そして、塗装システムは、距離検出部が、夫々の吐出ノズルから被塗装物に至る夫々のスポット距離を検出し、吐出制御部が、スポット距離が大きいほど、吐出ノズルからの塗料の吐出速度が上がるように、アクチュエータを制御し、吐出制御部が、夫々のスポット距離に基づいて、被塗装物の表面の傾斜角度を算出し、傾斜角度が所定値以上で且つその表面が下向きの傾斜面である場合に、傾斜面に該当する吐出ノズルからの塗料の粒の大きさが小さくなるように、前記アクチュエータを制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係わる塗装システムは、上記構成を採用したことにより、プリントヘッドを使用する塗装において、被塗装物の表面に起伏がある場合でも、塗料の着滴位置のずれを防止して、良好な塗装品質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係わる塗装システムの第1実施形態において、プリントヘッドの構造を説明する断面図(A)及び正面図(B)である。
図2】塗装システムの全体を示す断面説明図である。
図3】塗装システムの制御工程を説明するフローチャートである。
図4】本発明に係わる塗装システムの第2実施形態を示す断面説明図である。
【0009】
〈第1実施形態〉
図1図3は、本発明に係わる塗装システムの第1実施形態を説明する図である。図1は、塗装システムに使用するプリントヘッドを説明する図である。
【0010】
図1(A)に示すプリントヘッド1は、周知のインクジェットプリンタと同様に、内部に供給された塗料を粒状化して吐出する。プリントヘッド1は、内部に塗料2の充填空間3を有し、図外の塗料供給源から塗料2が供給される。プリントヘッド1は、図1(B)に示す正面側に、塗料吐出用の複数の吐出ノズル4が配列してある。なお、図1(A)には、プリントヘッドの内部を図示する都合上、上下3段の吐出ノズル4を示しており、図1(B)には、吐出ノズル4の配置を示す都合上、11個の吐出ノズル4を示している。吐出ノズル4の数や配置は、とくに限定されるものではない。
【0011】
また、プリントヘッド1は、夫々の吐出ノズル4毎に配置した塗料加圧用のアクチュエータ5を備えている。各アクチュエータ5は、プリントヘッド1の背面側に配置したピエゾ素子5Aと、ピエゾ素子5Aに基端部を連結したロッド5Bとを備えている。各ロッド5Bは、基端側の部分で軸線方向に往復動可能に保持されていると共に、充填空間3内に突出し、先端部が、充填空間3に開口する吐出ノズル4の入口近傍に達している。
【0012】
各アクチュエータ5は、ピエゾ素子5Aに電圧を印加して変形させ、その変形に伴ってロッド5Bを軸線方向に往復動させることで吐出ノズル4内の塗料2を加圧し、塗料2を粒状化して吐出ノズル4から吐出させる。この際、各アクチュエータ5は、夫々のピエゾ素子5Aに印加する電圧の大きさを制御することにより、塗料2の吐出速度を変化させることができる。
【0013】
つまり、各アクチュエータ5は、図1(A)中に矢印で示すように、ロッド5Bの往復動範囲を大きくするほど、粒状化した塗料2の吐出速度を上げることができる。また、各アクチュエータ5は、夫々のピエゾ素子5Aに印加する電圧の大きさや印加周期を制御することで、粒状化した塗料2の吐出ピッチや粒の大きさを変化させることができる。
【0014】
図2に示す塗装システムは、上記のプリントヘッド1と、被塗装物Wに対してプリントヘッド1を移動させる移動操作部11と、移動操作部11を制御する移動制御部12とを備えている。また、塗装システムは、プリントヘッド1から被塗装物Wに至る距離を検出する距離検出部13と、プリントヘッド1からの塗料2の吐出速度を制御するための吐出制御部14とを備えている。
【0015】
移動操作部11は、塗装面を竪にした被塗装物Wに対して、プリントヘッド1を進退方向及び上下左右方向に移動させる機能や、プリントヘッド1の角度を調整する機能を有する。このような移動操作部11には、好適な例として、多軸制御型の作業ロボットを使用することができる。
【0016】
移動制御部12は、主に演算器であって、被塗装物Wの形状データや距離検出部12で検出した距離データ等に基づいて、プリントヘッド1が所定の塗装経路に沿って移動するように移動操作部11をフィードバック制御する。
【0017】
距離検出部13は、プリントヘッド1から被塗装物Wに至る距離を検出する機能と、夫々の吐出ノズル4から被塗装物Wに至る夫々のスポット距離を検出する機能を有する。このような距離検出部13には、例えば、レーザレンジファインダやステレオカメラなどのように、所定範囲の距離を非接触で検出するものが好適である。このとき、距離検出部13の検出範囲は、被塗装物Wの表面上において、少なくともプリントヘッド1の正面に相対向する範囲である。
【0018】
吐出制御部14は、主に演算器であって、距離検出部13で検出したスポット距離に基づいて、各アクチュエータ5のピエゾ素子5Aに印加する電圧の大きさや印加周期を変化させて、粒状化した塗料2の吐出速度を吐出ノズル4毎に制御する。
【0019】
ここで、図2に例示する被塗装物Wは、表面の起伏により、上段及び中段の吐出ノズル4,4のスポット距離R1,R2に対して、下段の吐出ノズル4のスポット距離R3が相対的に大きい。このような状態で、各吐出ノズル4から塗料2を均等に吐出させると、スポット距離R3が最大である下段の吐出ノズル4から吐出した塗料2の滞空時間も相対的に長くなり、その着滴位置にずれが生じやすい。
【0020】
そこで、塗装システムでは、吐出制御部14が、スポット距離が大きいほど、吐出ノズル4からの塗料2の吐出速度が上がるように、アクチュエータ5を制御する。つまり、図2の状態では、最大のスポット距離R3となる下段の吐出ノズル4からの塗料2の吐出速度が上がるように、同吐出ノズル4に該当するアクチュエータ5を制御する。
【0021】
これにより、塗装システムでは、プリントヘッド1の各吐出ノズル4から被塗装物Wに至る塗料2の滞空時間を均等にして、夫々の塗料2を正しい着滴位置に到達させる。そして、塗装システムは、移動操作部11によりプリントヘッド1を所定経路に沿って移動させながら、距離検出部13によるスポット距離の検出、並びに吐出制御部14による各アクチュエータ5の制御を行って、被塗装物Wの所定範囲に塗装をする。
【0022】
図3は、上記の制御工程を示すフローチャートであり、制御を開始(START)すると、ステップS1において被塗装物Wの塗装位置を決定し、ステップS2において塗装位置の表面形状データを取得する。すなわち、距離検出部13により、プリントヘッド1から被塗装物Wに至る距離や、各吐出ノズル4から被塗装物Wに至る夫々のスポット距離を取得する。これらの距離のデータから、被塗装物Wの表面形状を把握することが可能である。
【0023】
その後、ステップS3において距離検出部13からの距離データを移動制御部12にフィードバックし、ステップS4において移動操作部11によりプリントヘッド1の位置や角度を調整する。その一方で、ステップS5において距離検出部13からのスポット距離データを吐出制御部14にフィードバックし、ステップS6において各吐出ノズル4からの吐出速度を決定する。その後、ステップS7において塗装を実行して、制御を終了(END)する。
【0024】
このようにして、塗装システムは、プリントヘッド1を使用する塗装において、被塗装物Wの表面に起伏がある場合でも、粒状化した塗料2の着滴位置のずれを防止して、良好な塗装品質を得ることができる。
【0025】
図4は、本発明に係わる塗装システムの第2実施形態を説明する図である。図示の塗装システムは、第1実施形態と同等の基本構成を有すると共に、吐出検出部14にさらなる機能を追加したものである。なお、第1実施形態と同一の構成部位に関しては、同一符を付して詳細な説明を省略する。
【0026】
図示の塗装システムは、吐出制御部14が、夫々のスポット距離が所定値以上になった際、スポット距離が相対的に小さい吐出ノズル4のアクチュエータ5を停止すると共に、スポット距離が相対的に大きい吐出ノズル4のアクチュエータ5を駆動する機能を有している。
【0027】
すなわち、図4においては、被塗装物Wの起伏により、上段及び中段の吐出ノズル4,4から被塗装物Wに至るスポット距離R1,R2に対して、下段の吐出ノズル4から被塗装物Wに至るスポット距離R3が相対的に大きい。そこで、吐出制御部14は、これらのスポット距離R1,R2,R3が所定値以上になった際、上段及び中段の吐出ノズル4,4に配置したアクチュエータ5,5を停止し、下段の吐出ノズル4のアクチュエータ5だけを駆動する。
【0028】
これにより、塗装システムは、下段の吐出ノズル4に塗料2の圧力が集中して、同吐出ノズル4から吐出される塗料2の吐出速度が上がるので、被塗装物Wにおける正しい位置に塗料2が着滴する。このようにして、塗装システムは、プリントヘッド1を使用する塗装において、被塗装物Wの表面に起伏がある場合でも、粒状化した塗料2の着滴位置のずれを防止して、良好な塗装品質を確保する。なお、実際の吐出ノズル4は、微細な口径を有しており、塗料2も所定の粘性を有するので、開放したままでアクチュエータ5を停止させても塗料2が漏出する心配はない。
【0029】
さらに、この実施形態の塗装システムは、プリントヘッド1が、内部に供給された塗料2の粘度を検出する粘度検出部15を備えている。そして、吐出制御部14は、粘度検出部15により検出した粘度が高くなるほど、吐出ノズル4からの塗料2の吐出速度が上がるように、アクチュエータ5を制御する機能を有する。
【0030】
ここで、塗料2は、時間経過に伴って粘度が高くなる傾向にある。プリントヘッド1を用いた塗装では、塗料2の粘度変化によっても着滴位置にずれが生じる場合がある。そこで、塗装システムは、上述の如く塗料2の粘度が所定値を超えたところで、吐出ノズル4からの塗料2の吐出速度を上昇させ、これにより、粒状化した塗料2の着滴位置のずれを防止して、良好な塗装品質を確保する。
【0031】
さらに、この実施形態の塗装システムは、プリントヘッド1が、被塗装物Wにおける未塗装領域及び既塗装領域を検出する塗装検出部を備えている。そして、吐出制御部14は、塗装検出部により検出した既塗装領域に該当する吐出ノズル4のアクチュエータ5を停止すると共に、未塗装領域に該当する吐出ノズル4のアクチュエータ5を駆動する機能を有する。
【0032】
塗装検出部は、CCDカメラなどを採用し得るが、距離検出部13を応用することも可能である。つまり、距離検出部13は、先述の如くレーザレンジファインダやステレオカメラを採用し得るので、レーザレンジファインダを採用した場合には、塗装前のスポット距離と塗装後のスポット距離との差から、未塗装領域と既塗装領域とを区別することが可能である。また、ステレオカメラを採用した場合には、画像処理を行うことにより、未塗装領域と既塗装領域とを区別することが可能である。
【0033】
この実施形態の塗装システムは、上述の如く、既塗装領域に該当する吐出ノズル4のアクチュエータ5を停止して、未塗装領域に該当する吐出ノズル4のアクチュエータ5を駆動して塗装することで、過剰塗布を防止して良好な塗装品質を確保し、塗料2の無駄を解消する。
【0034】
さらに、この実施形態の塗装システムは、吐出制御部14が、夫々のスポット距離に基づいて、被塗装物Wの表面の傾斜角度を算出し、傾斜角度が所定値以上で且つその表面が下向きの傾斜面である場合に、傾斜面に該当する吐出ノズル4からの塗料2の粒の大きさが小さくなるように、アクチュエータ5を制御する機能を有する。
【0035】
すなわち、塗装システムでは、距離検出部13が、上下3段の各吐出ノズル4から被塗装物Wに至る夫々のスポット距離R1,R2,R3を検出する。ここで、図4に示す被塗装物Wでは、中段のスポット距離R2と下段のスポット距離R3との差から、被塗装物Wの下段の着滴位置が、下向きに傾斜したオーバーハングの傾斜面であることが判る。
【0036】
上記の塗装システムは、第1実施形態で説明したように、最大のスポット距離R3である下段の吐出ノズル4からの塗料2の吐出速度が上がるように、同吐出ノズル4に該当するアクチュエータ4を制御して、粒状化した塗料2の着滴位置のずれを防止する。
【0037】
この際、図示例のように、被塗装物Wが、傾斜角度が所定値以上である下向きの傾斜面を有する場合、各吐出ノズル4から同量の塗料2を吐出させると、傾斜面で塗料垂れが生じる虞がある。
【0038】
そこで、塗装システムでは、吐出制御部14が、傾斜面に該当する下段の吐出ノズル4からの塗料2の粒の大きさが小さくなるように、該当するアクチュエータ5を制御することで、傾斜面における正しい位置に塗料2を着滴させると同時に、塗料2の塗布量を少なくして塗料垂れを防止し、これにより良好な塗装品質を確保する。
【0039】
なお、本発明に係わる塗装システムは、その構成が上記各実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 プリントヘッド
2 塗料
4 吐出ノズル
5 アクチュエータ
11 移動操作部
13 距離検出部(塗装検出部)
14 吐出制御部
15 粘度検出部
R1~R3 スポット距離
W 被塗装物
図1
図2
図3
図4